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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】道路舗装用組成物および成形体
(51)【国際特許分類】
   E01C 7/26 20060101AFI20240123BHJP
   C08L 95/00 20060101ALI20240123BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240123BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
E01C7/26
C08L95/00 ZNM
C08L101/00
C08L1/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020027253
(22)【出願日】2020-02-20
(65)【公開番号】P2021130980
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】清水 宏祐
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-249386(JP,A)
【文献】国際公開第2019/208801(WO,A1)
【文献】特開2014-212712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00- 17/00
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルトに少なくとも1種類の樹脂粒子を含むアスファルト組成物と、骨材とを混練した道路舗装用組成物であって、
前記樹脂粒子の表面は微細繊維で被覆されて微細繊維/樹脂複合粒子を構成しており、
前記アスファルト組成物は、前記アスファルト100質量部に対して前記微細繊維/樹脂複合粒子を0.01~30質量部を添加したものであることを特徴とする道路舗装用組成物。
【請求項2】
前記微細繊維の表面にイオン性官能基が導入されていることを特徴とする請求項1に記載の道路舗装用組成物。
【請求項3】
前記微細繊維が、セルロースナノファイバーより構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の道路舗装用組成物。
【請求項4】
前記セルロースナノファイバーのイオン性官能基含有量が、セルロースナノファイバーの乾燥質量に対して0.5mmol/g以上3.0mmol/g以下であることを特徴とする請求項3に記載の道路舗装用組成物。
【請求項5】
前記微細繊維/樹脂複合粒子が、熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の道路舗装用組成物。
【請求項6】
前記微細繊維/樹脂複合粒子の平均粒径が、0.05μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の道路舗装用組成物。
【請求項7】
前記樹脂粒子の含水率が、0.01%以上30%以下であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の道路舗装用組成物。
【請求項8】
前記アスファルト組成物と前記骨材の組成比が、前記アスファルト組成物1~15質量部、前記骨材85~99質量部であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の道路舗装用組成物。
【請求項9】
前記アスファルトと前記骨材との質量比(アスファルトの質量:骨材の質量)が、10:75~10:50の範囲内であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の道路舗装用組成物。
【請求項10】
前記微細繊維/樹脂複合粒子と前記骨材との質量比(微細繊維/樹脂複合粒子の質量:骨材の質量)が、0.001:990~2.5:990の範囲内であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の道路舗装用組成物。
【請求項11】
前記微細繊維/樹脂複合粒子と前記骨材との質量比(微細繊維/樹脂複合粒子の質量:骨材の質量)が、0.1:60~2.5:75の範囲内であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の道路舗装用組成物。
【請求項12】
前記骨材は、石英斑岩であり、且つ13mmフルイを通過し5mmフルイに止まるものであることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の道路舗装用組成物。
【請求項13】
請求項1から12の何れか一項に記載の前記道路舗装用組成物からなることを特徴とする成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路舗装用組成物および成形体に関し、特に道路の舗装などに使用することができる微細繊維/樹脂複合粒子を含む道路舗装用組成物および成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルトは、古くから周知の最も一般的な道路舗装の材料であり、加熱装置内でアスファルトと骨材を加熱、混合して得られる100~200℃のアスファルト混合物を流動性のある高温状態で舗装施工し、冷えると道路として大きな強度が得られる材料である。
一般的なアスファルトは、アスファルトにゴム及び/又は熱可塑性エラストマーが混入され、骨材飛散、流動化現象が発生し難く、バインダーとして高耐久性を維持できるように設計されている。しかし、水浸状態に置かれやすいことや、季節により発生する温度差から変形を繰り返すため、アスファルトと骨材との界面の接着性が低下し、骨材飛散が発生しやすい状態となることは避けられない。
【0003】
また車両の大型化、重量化、交通量の増大に伴い、アスファルト舗装は、わだち掘れや流動化現象が発生し、交通の円滑化と走行性を損なっている。その対策としてこの用途においてもアスファルトにゴム及び/又は熱可塑性エラストマーを混入する方法が採用されているが、効果が不十分でありアスファルトの流動化を抑止するような改善が求められている。
このようにアスファルトと骨材の付着性改善やアスファルトの流動化抑止の技術課題はアスファルト舗装の性能向上のため極めて重要な問題であり、その解決のため従来種々の方法が提案されている。
【0004】
例えば特許文献1によれば、アスファルトと骨材の付着性の対策として高級脂肪族ポリアルキレンポリアミンとカルボキシル基を有する変性ポリオレフィン樹脂の塩が用いられている。しかし、高級脂肪族ポリアミン及びその誘導体はアスファルトへ添加した際の骨材との密着性は一時的に改良されるが、高温でこのアスファルトを保存しておくと効果が低減するといった問題がある。
また、シラン化合物を添加してアスファルトと骨材の付着性を改善する方法も提案されているが、加熱アスファルトに添加する際、また加熱合材の製造時に有害な臭気及び蒸気発生があり安全衛生面に問題がある。
【0005】
また、特許文献2等では、特定の酸性有機リン化合物が液体状でアスファルトと骨材の付着性の問題点を解決し、さらにアスファルトに添加後、付着性や剥離防止効果を比較的短い混合で効果を発現させる即効性を備える技術が開示されている。しかし、資源の有効利用の観点から、舗装廃材を利用する再生工法が提案され、品質の低下したアスファルトを使用するケースが増加しているので、より強固な付着を有することが望まれる。さらに、アスファルトそのものの流動化を抑止する効果は不十分である。
このように、アスファルトと骨材を用いた道路舗装材では、アスファルトの改質がますます強く望まれる傾向にあるが、未だ上述した問題点及び市場が要求する諸性能をすべて解消できる手段は開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-2928号公報
【文献】特開平11-189725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる事情を鑑みてなされたものであり、アスファルトの流動化を抑止することができ、アスファルトと骨材の接着強度を改善する道路舗装用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の一態様の道路舗装用組成物は、アスファルトに少なくとも1種類の樹脂粒子を含むアスファルト組成物と、骨材とを混練した道路舗装用組成物であって、上記樹脂粒子の表面は微細繊維で被覆されて微細繊維/樹脂複合粒子を構成しており、上記アスファルト組成物は、上記アスファルト100質量部に対して上記微細繊維/樹脂複合粒子を0.01~30質量部を添加したものである。
微細繊維層を有する微細繊維/樹脂複合粒子を含有する道路舗装用組成物によって、微細繊維と樹脂を十分にアスファルト中に分散できるためアスファルトそのものの流動化を抑止することができ、かつ、アスファルトと骨材の強い接着強度を有する道路舗装用組成物を提供することができる。
【0009】
また、本発明の一態様の道路舗装用組成物は、上記道路舗装用組成物において、上記微細繊維表面にイオン性官能基が導入されてもよい。
また、本発明の一態様の道路舗装用組成物は、上記道路舗装用組成物において、上記微細繊維が、セルロースナノファイバーより構成されていてもよい。
また、本発明の一態様の道路舗装用組成物は、上記道路舗装用組成物において、上記セルロースナノファイバーのイオン性官能基含有量が、セルロースナノファイバーの乾燥質量に対して0.5mmol/g以上3.0mmol/g以下であってもよい。
【0010】
また、本発明の一態様の道路舗装用組成物は、上記道路舗装用組成物において、上記微細繊維/樹脂複合粒子が、熱可塑性樹脂であってもよい。
また、本発明の一態様の道路舗装用組成物は、上記道路舗装用組成物において、上記微細繊維/樹脂複合粒子の平均粒径が、0.05μm以上100μm以下であってもよい。
また、本発明の一態様の道路舗装用組成物は、上記道路舗装用組成物において、上記樹脂粒子の含水率が、0.01%以上30%以下であってもよい。
また、本発明の一態様の道路舗装用組成物は、上記道路舗装用組成物において、上記アスファルト組成物と上記骨材の組成比が、上記アスファルト組成物1~15質量部、上記骨材85~99質量部であってもよい。
また、本発明の一態様の成形体は、上記道路舗装用組成物からなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、微細繊維層を有する微細繊維/樹脂複合粒子を含有する道路舗装用組成物によって、微細繊維と樹脂を十分にアスファルト中に分散できるためアスファルトそのものの流動化を抑止することができ、かつ、アスファルトと骨材の強い接着強度を有する道路舗装用組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】微細繊維/樹脂複合粒子の断面図
図2】本発明の一実施形態における微細繊維/樹脂複合粒子の製造手順の概略図
図3】本発明の一実施形態における道路舗装用組成物の概略図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下に説明する各図において相互に対応する部分には同一符号を付し、重複部分においては後述での説明を適宜省略する。また、本実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、各部の材質、形状、構造、配置、寸法等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
<微細繊維層を有する微細繊維/樹脂複合粒子10>
本発明の道路舗装用組成物の一実施形態は、樹脂2を芯材として、壁剤である微細繊維(以下、セルロースナノファイバーと称する場合もある)1により被覆した微細繊維/樹脂複合粒子10を含有する。図1は微細繊維/樹脂複合粒子の断面模式図である。本実施形態の道路舗装用組成物は、微細繊維/樹脂複合粒子10をアスファルトに添加して調整し、さらに骨材と混練して得られる。
また、本発明の道路舗装用組成物の製造方法の一実施形態は、微細繊維分散液を調製する工程(第1工程)、樹脂成分を含む溶液を調整する工程(第2工程)、微細繊維分散液と樹脂成分を含む溶液を混合しエマルションを形成する工程(第3工程)、微細繊維/樹脂複合粒子10をアスファルトに添加して調整し、さらに骨材と混練する工程(第4工程)を含む。
【0015】
図2は微細繊維/樹脂複合粒子の製造手順の概略図である。図2に示すように、微細繊維1を溶媒中に分散した微細繊維分散液101と樹脂成分含有溶液102を混合し、第3工程において適宜乳化処理を行うと、樹脂成分含有溶液102の液滴界面に微細繊維1が吸着したO/W型ピッカリングエマルションの微細繊維/樹脂複合粒子10を形成し、コアシェル型複合粒子分散液103となる。乳化処理の手法としては、攪拌、超音波、ホモジナイザー、マイクロリアクターなど公知の手法から選択することができる。コアシェル型複合粒子分散液103をそのまま微細繊維/樹脂複合粒子分散液104として用いることもできるが、必要に応じて重合、精製および溶媒置換を行って分散媒(溶剤またはバインダー)30に分散してもよい。なお、ここでO/W型エマルションは、水中油滴型(Oil-in-Water)とも言われ、水を連続相とし、その中に油が油滴として分散しているものである。
【0016】
図3は、本実施形態の道路舗装用組成物の概略図である。本実施形態においては微細繊維/樹脂複合粒子10に壁材として含まれる微細繊維1をアスファルト4に均一に分散できるため、実際に道路舗装用組成物として骨材3と混合した場合であっても、図3(a)に示すように微細繊維1が系内に均一に分散した状態を維持できる。さらに、道路舗装用組成物を所定の温度で混合すると、微細繊維/樹脂複合粒子10が物理的に破泡し、図3(b)に示すようにアスファルト4中に微細繊維1や樹脂2成分を均一に混練することができる。そのためアスファルト4の流動化を抑止することができ、かつ、アスファルト4と骨材3の接着強度を改善することができる。
【0017】
<微細繊維1>
微細繊維1は特に限定されないが、セルロース繊維の結晶表面にアニオン性官能基を有しており、当該アニオン性官能基の含有量が、セルロース1g当たり0.1mmol以上5.0mmol以下であることが好ましい。セルロースの結晶表面に導入されるアニオン性官能基の種類や導入方法は特に限定されないが、カルボキシ基やリン酸基が好ましい。セルロース結晶表面への選択的な導入のしやすさから、カルボキシ基が好ましい。
さらに、微細繊維1は、ミクロフィブリル構造由来の繊維形状であることが好ましい。具体的には、微細繊維1は繊維状であって、数平均短軸径が1nm以上1000nm以下、数平均長軸径が50nm以上であり、かつ数平均長軸径が数平均短軸径の5倍以上であることが好ましい。また、微細繊維1の結晶構造は、セルロースI型であることが好ましい。
【0018】
<微細繊維分散液101の製造方法(第1工程)>
次に、製造方法の第1工程に当たる、微細繊維分散液101の製造方法について説明する。具体的には、セルロース原料を溶媒中で解繊して微細繊維分散液101を得る工程である。
まず、各種セルロース原料を溶媒中に分散し、懸濁液とする。懸濁液中のセルロース原料の濃度としては0.1%以上10%未満が好ましい。0.1%未満であると、溶媒過多となり生産性を損なうため好ましくない。10%以上になると、セルロース原料の解繊に伴い懸濁液が急激に増粘し、均一な解繊処理が困難となるため好ましくない。懸濁液作製に用いる溶媒としては、水を50%以上含むことが好ましい。懸濁液中の水の割合が50%以下になると、後述するセルロース原料を溶媒中で解繊して微細繊維分散液101を得る工程において、微細繊維1の分散が阻害される。また、水以外に含まれる溶媒としては親水性溶媒が好ましい。親水性溶媒については特に制限はないが、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン等の環状エーテル類が好ましい。必要に応じて、セルロース原料や生成する微細繊維1の分散性を上げるために、懸濁液のpH調整を行ってもよい。pH調整に用いられるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム水溶液などの有機アルカリなどが挙げられる。コストなどの面から水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
【0019】
続いて、懸濁液に物理的解繊処理を施して、セルロース原料を微細化する。物理的解繊処理の方法としては特に限定されないが、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、カッターミル、遊星ミル、ジェットミル、アトライター、グラインダー、ジューサーミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、ナノジナイザー、水中対向衝突などの機械的処理が挙げられる。このような物理的解繊処理を行うことで、懸濁液中のセルロース原料が微細化され、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーになるまで微細化された微細繊維1の分散液を得ることができる。また、このときの物理的解繊処理の時間や回数により、得られる微細繊維1の数平均短軸径および数平均長軸径を調整することができる。
【0020】
上記のようにして、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーになるまで微細化された微細繊維1の分散体が得られる。得られた分散体は、そのまま、または希釈、濃縮等を行って、後述するO/W型エマルションの安定化剤として用いることができる。
通常、微細繊維1は、ミクロフィブリル構造由来の繊維形状であるため、本実施形態の製造方法に用いる微細繊維1としては、以下に示す範囲にある繊維形状のものが好ましい。すなわち、微細繊維1の形状としては、繊維状であることが好ましい。また、繊維状の微細繊維1は、短軸径において数平均短軸径が1nm以上1000nm以下であればよく、好ましくは2nm以上500nm以下であればよい。ここで、数平均短軸径が1nm未満では高結晶性の剛直なCNF繊維構造をとることができず、エマルションの安定化と、エマルションを鋳型とした重合反応とを実施することができない。一方、1000nmを超えると、エマルションを安定化させるにはサイズが大きくなり過ぎるため、得られる微細繊維/樹脂複合粒子10のサイズや形状を制御することが困難となる。また、数平均長軸径においては特に制限はないが、好ましくは数平均短軸径の5倍以上であればよい。数平均長軸径が数平均短軸径の5倍未満であると、微細繊維/樹脂複合粒子10のサイズや形状を十分に制御することができないために好ましくない。
【0021】
なお、微細繊維1の数平均短軸径は、透過型電子顕微鏡観察および原子間力顕微鏡観察により100本の繊維の短軸径(最小径)を測定し、その平均値として求められる。一方、CNF繊維の数平均長軸径は、透過型電子顕微鏡観察および原子間力顕微鏡観察により100本の繊維の長軸径(最大径)を測定し、その平均値として求められる。
【0022】
微細繊維1の原料として用いることができるセルロース原料の種類や結晶構造も特に限定されない。具体的には、セルロースI型結晶からなる原料としては、例えば、木材系天然セルロースに加えて、コットンリンター、竹、麻、バガス、ケナフ、バクテリアセルロース、ホヤセルロース、バロニアセルロースといった非木材系天然セルロースを用いることができる。さらには、セルロースII型結晶からなるレーヨン繊維、キュプラ繊維に代表される再生セルロースも用いることができる。材料調達の容易さから、木材系天然セルロースを原料とすることが好ましい。木材系天然セルロースとしては、特に限定されず、針葉樹パルプや広葉樹パルプ、古紙パルプ、など、一般的にセルロースナノファイバーの製造に用いられるものを用いることができる。精製および微細化のしやすさから、針葉樹パルプが好ましい。
【0023】
さらにセルロース原料は化学改質されていることが好ましい。より具体的には、セルロース原料の結晶表面にアニオン性官能基が導入されていることが好ましい。セルロース結晶表面にアニオン性官能基が導入されていることによって浸透圧効果でセルロース結晶間に溶媒が浸入しやすくなり、セルロース原料の微細化が進行しやすくなるためである。
セルロース原料の結晶表面に導入されるアニオン性官能基の種類や導入方法は特に限定されないが、カルボキシ基やリン酸基が好ましい。セルロース原料の結晶表面への選択的な導入のしやすさから、カルボキシ基が好ましい。
【0024】
セルロースの原料の表面にカルボキシ基を導入する方法は、特に限定されない。具体的には、例えば、高濃度アルカリ水溶液中でセルロース原料をモノクロロ酢酸またはモノクロロ酢酸ナトリウムと反応させることによりカルボキシメチル化を行ってもよい。また、オートクレーブ中でガス化したマレイン酸やフタル酸等の無水カルボン酸系化合物とセルロース原料を直接反応させてカルボキシ基を導入してもよい。さらには、水系の比較的温和な条件で、可能な限り構造を保ちながら、アルコール性一級炭素の酸化に対する選択性が高い、TEMPOをはじめとするN-オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いた手法を用いてもよい。カルボキシ基導入部位の選択性および環境負荷低減のためにはN-オキシル化合物を用いた酸化がより好ましい。
【0025】
ここで、N-オキシル化合物としては、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシラジカル)、2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン-1-オキシル、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-エトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-アセトアミド-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、等が挙げられる。そのなかでも、反応性が高いTEMPOが好ましい。N-オキシル化合物の使用量は、触媒としての量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理するセルロース原料の固形分に対して0.01~5.0質量%程度である。
【0026】
N-オキシル化合物を用いた酸化方法としては、例えば木材系天然セルロースを水中に分散させ、N-オキシル化合物の共存下で酸化処理する方法が挙げられる。このとき、N-オキシル化合物とともに、共酸化剤を併用することが好ましい。この場合、反応系内において、N-オキシル化合物が順次共酸化剤により酸化されてオキソアンモニウム塩が生成し、上記オキソアンモニウム塩によりセルロースが酸化される。この酸化処理によれば、温和な条件でも酸化反応が円滑に進行し、カルボキシ基の導入効率が向上する。酸化処理を温和な条件で行うと、セルロース原料の結晶構造を維持しやすい。
【0027】
共酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸、またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物など、酸化反応を推進することが可能であれば、いずれの酸化剤も用いることができる。入手の容易さや反応性から、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。上記共酸化剤の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理するセルロース原料の固形分に対して1~200質量%程度である。
【0028】
また、N-オキシル化合物および共酸化剤とともに、臭化物およびヨウ化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに併用してもよい。これにより、酸化反応を円滑に進行させることができ、カルボキシ基の導入効率を改善することができる。このような化合物としては、臭化ナトリウムまたは臭化リチウムが好ましく、コストや安定性から、臭化ナトリウムがより好ましい。化合物の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理するセルロース原料の固形分に対して1~50質量%程度である。
【0029】
酸化反応の反応温度は、4~80℃が好ましく、10~70℃がより好ましい。4℃未満であると、試薬の反応性が低下し反応時間が長くなってしまう。80℃を超えると副反応が促進して試料が低分子化して高結晶性の剛直なセルロースナノファイバーの繊維構造が崩壊し、O/W型エマルションの安定化剤として用いることができない。
また、酸化処理の反応時間は、反応温度、所望のカルボキシ基量等を考慮して適宜設定でき、特に限定されないが、通常、10分~5時間程度である。
【0030】
酸化反応時の反応系のpHは特に限定されないが、9~11が好ましい。pHが9以上であると反応を効率良く進めることができる。pHが11を超えると副反応が進行し、試料の分解が促進されてしまうおそれがある。また、酸化処理においては、酸化が進行するにつれて、カルボキシ基が生成することにより系内のpHが低下してしまうため、酸化処理中、反応系のpHを9~11に保つことが好ましい。反応系のpHを9~11に保つ方法としては、pHの低下に応じてアルカリ水溶液を添加する方法が挙げられる。
【0031】
アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム水溶液などの有機アルカリなどが挙げられる。コストなどの面から水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
N-オキシル化合物による酸化反応は、反応系にアルコールを添加することにより停止させることができる。このとき、反応系のpHは上記の範囲内に保つことが好ましい。 添加するアルコールとしては、反応をすばやく終了させるためメタノール、エタノール、プロパノールなどの低分子量のアルコールが好ましく、反応により生成される副産物の安全性などから、エタノールが特に好ましい。
【0032】
酸化処理後の反応液は、そのまま微細化工程に供してもよいが、N-オキシル化合物等の触媒、不純物等を除去するために、反応液に含まれる酸化セルロースを回収し、洗浄液で洗浄することが好ましい。酸化セルロースの回収は、ガラスフィルターや20μm孔径のナイロンメッシュを用いたろ過等の公知の方法により実施できる。酸化セルロースの洗浄に用いる洗浄液としては純水が好ましい。
得られた酸化セルロースに対し解繊処理を行うと、3nmの均一な繊維幅を有するセルロースナノファイバー(微細繊維1)が得られる。セルロースナノファイバーを微細繊維/樹脂複合粒子10の微細繊維1として用いると、その均一な構造に由来して、得られるO/W型エマルションの粒径も均一になりやすい。
【0033】
以上のように、本実施形態で用いられるセルロースナノファイバーは、セルロース原料を酸化する工程と、微細化して分散液化する工程と、によって得ることができる。また、CNFに導入するカルボキシ基の含有量としては、0.1mmol/g以上5.0mmol/g以下が好ましく、0.5mmol/g以上3.0mmol/g以下がより好ましい。ここで、カルボキシ基量が0.1mmol/g未満であると、セルロースミクロフィブリル間に浸透圧効果による溶媒進入作用が働かないため、セルロースを微細化して均一に分散させることは難しい。また、5.0mmol/gを超えると化学処理に伴う副反応によりセルロースミクロフィブリルが低分子化するため、高結晶性の剛直なセルロースナノファイバーの繊維構造をとることができず、O/W型エマルションの安定化剤として用いることができない。
【0034】
<樹脂成分を含む溶液を調整する工程(第2工程)>
第2工程は、樹脂2の溶液または分散液を調整する工程である。本実施形態に用いる樹脂としては、ポリマーの単量体であって、その構造中に重合性の官能基を有し、常温で液体であって、水と相溶せず、重合反応によってポリマー(高分子重合体)を形成できるものであれば特に限定されない。重合性モノマーは少なくとも一つの重合性官能基を有する。重合性官能基を一つ有する重合性モノマーは単官能モノマーとも称する。また、重合性官能基を二つ以上有する重合性モノマーは多官能モノマーとも称する。重合性モノマーの種類としては特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル系モノマー、ビニル系モノマーなどが挙げられる。また、エポキシ基やオキセタン構造などの環状エーテル構造を有する重合性モノマー(例えばε-カプロラクトン等、)を用いることも可能である。
【0035】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」の表記は、「アクリル」と「メタクリル」の両方を含むことを示し、「(メタ)アクリレート」の表記は、「アクリレート」と「メタクリレート」との両方を含むことを示す。
単官能の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-アダマンタンおよびアダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレートなどのアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
2官能の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ-ルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
3官能以上の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2-ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε-カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0038】
単官能のビニル系モノマーとしては例えば、ビニルエーテル系、ビニルエステル系、芳香族ビニル系、特にスチレンおよびスチレン系モノマーなど、常温で水と相溶しない液体が好ましい。
単官能ビニル系モノマーのうち(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘプタフルオロデシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0039】
また、単官能芳香族ビニル系モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロペニルトルエン、イソブチルトルエン、tert-ブチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、1,1-ジフェニルエチレンなどが挙げられる。
多官能のビニル系モノマーとしてはジビニルベンゼンなどの不飽和結合を有する多官能基が挙げられる。常温で水と相溶しない液体が好ましい。
【0040】
例えば多官能性ビニル系モノマーとしては、具体的には、(1)ジビニルベンゼン、1,2,4-トリビニルベンゼン、1,3,5-トリビニルベンゼン等のジビニル類、(2)エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-プロピレングリコールジメタクリレート、1,4-ブチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサメチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2-ビス(4-メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジメタクリレート類、(3)トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリエチロールエタントリメタクリレート等のトリメタクリレート類、(4)エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,3-ジプロピレングリコールジアクリレート、1,4-ジブチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキシレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2-ビス(4-アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジアクリレート類、(5)トリメチロールプロパントリアクリレート、トリエチロールエタントリアクリレート等のトリアクリレート類、(6)テトラメチロールメタンテトラアクリレート等のテトラアクリレート類、(7)その他に、例えばテトラメチレンビス(エチルフマレート)、ヘキサメチレンビス(アクリルアミド)、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートが挙げられる。
【0041】
例えば官能性スチレン系モノマーとしては、具体的には、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルナフタレン、ジビニルキシレン、ジビニルビフェニル、ビス(ビニルフェニル)メタン、ビス(ビニルフェニル)エタン、ビス(ビニルフェニル)プロパン、ビス(ビニルフェニル)ブタン等が挙げられる。
また、これらの他にも重合性の官能基を少なくとも1つ以上有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができ、特にその材料を限定しない。
【0042】
上記重合性モノマーは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
また、樹脂2には予め重合開始剤が含まれていてもよい。一般的な重合開始剤としては有機過酸化物やアゾ重合開始剤などのラジカル開始剤が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えばパーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシカーボネート、パーオキシエステルなどが挙げられる。
【0043】
アゾ重合開始剤としては、例えば、2,2-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(AMBN)、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、1,1-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN)、ジメチル-2,2-アゾビスイソブチレート(MAIB)、4,4-アゾビス(4-シアノバレリアン酸)(ACVA)、1,1-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、2,2-アゾビス(2-メチルブチルアミド)、2,2-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2-メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2-シアノ-2-プロピルアゾホルムアミド、2,2-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)等が挙げられる。
【0044】
第2工程において用いることができる重合性モノマーと重合開始剤の質量比については特に限定されないが、通常、重合性モノマー100質量部に対し、重合性開始剤が0.1質量部以上であることが好ましい。重合性モノマーが0.1質量部未満となると重合反応が充分に進行せずに微細繊維/樹脂複合粒子10の収量が低下するため好ましくない。
また、第2工程で用いることができる樹脂2としては、既存の樹脂を各種溶媒に溶解させた、溶解樹脂液滴を用いることも可能である。例えば既存の樹脂を微細繊維分散液101への相溶性が低い溶媒で溶解させて溶解液とし、該溶解液を前述のように超音波ホモジナイザー等による機械処理を加えながら微細繊維分散液101に添加することによって、エマルションとして安定化することが好ましい。
【0045】
具体的な樹脂2としては、例えばセルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースアセテート誘導体、キチン、キトサン等の多糖類、ポリ乳酸、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体等のポリ乳酸類;ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート等の二塩基酸ポリエステル類、ポリカプロラクトン、カプロラクトンとヒドロキシカルボン酸との共重合体等のポリカプロラクトン類、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレートとヒドロキシカルボン酸との共重合体等のポリヒドロキシブチレート類、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ酪酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体等の脂肪族ポリエステル類、ポリアミノ酸類、ポリエステルポリカーボネート類、ロジン等の天然樹脂等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を併用して用いることができる。
【0046】
また、上記樹脂2を溶解させる溶媒としては、微細繊維分散液101への相溶性が低い溶媒が好ましい。水への溶解度が高い場合、溶解樹脂液滴相から水相へ溶媒が容易に溶解してしまうため、粒子化が困難となる。一方で、水への溶解性がない溶媒の場合、溶解樹脂液滴相から溶媒が微細繊維分散液101相に移動することができないため、エマルションを得ることができない。具体的には、20℃における水1Lへの溶解量が500g以下が好ましく、300g以下であることがより好ましい。また、上記溶媒は沸点が90℃以下が好ましい。沸点が90℃より高い場合、上記溶媒よりも先に微細繊維分散液101が蒸発してしまいエマルションを得ることができない。用いることができる溶媒として、具体的にはジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。
【0047】
<微細繊維分散液101と樹脂2成分を含む溶液を混合しエマルションを形成する工程(第3工程)>
具体的には第1工程で得られた微細繊維分散液101に樹脂2を添加し、分散させ、樹脂2の表面を微細繊維1によって被覆し、エマルションとする工程である。
樹脂2の表面を微細繊維1によって被覆し、エマルションとする方法としては特に限定されないが、一般的な分散処理、例えば各種ホモジナイザー処理や機械攪拌処理を用いることができ、具体的には高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、万能ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、カッターミル、遊星ミル、ジェットミル、アトライター、グラインダー、ジューサーミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、ナノジナイザー、水中対向衝突、ペイントシェイカーなどの機械的処理が挙げられる。また、複数の機械的処理を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
例えば超音波ホモジナイザーを用いる場合、第1工程にて得られた微細繊維分散液101に対し樹脂2の溶液を添加して混合溶媒とし、混合溶媒に超音波ホモジナイザーの先端を挿入して超音波処理を実施する。超音波ホモジナイザーの処理条件としては特に限定されないが、例えば周波数は20kHz以上が一般的であり、出力は10W/cm以上が一般的である。処理時間についても特に限定されないが、通常10秒から1時間程度である。
【0049】
上記超音波処理により、微細繊維分散液101中に樹脂2が分散してエマルション化が進行し、表面に微細繊維1が吸着し、微細繊維/樹脂複合粒子10を形成する。
微細繊維/樹脂複合粒子10の構造は、光学顕微鏡観察により確認することができる。微細繊維/樹脂複合粒子10の粒径サイズは特に限定されないが、通常0.05μm~100μm程度である。100μm以上であるとアスファルト中に均一に分散できないため好ましくない。
微細繊維/樹脂複合粒子10の構造において、樹脂2の混合物の表層に形成された微細繊維1層の厚みは特に限定されないが、通常3nm~1000nm程度である。微細繊維1層の厚みは、例えばクライオTEMを用いて計測することができる。
【0050】
第3工程において用いることができる微細繊維分散液101と樹脂2の質量比については特に限定されないが、微細繊維分散液101の100質量部に対し、樹脂2が1質量部以上50質量部以下であることが好ましい。樹脂2が1質量部未満となると微細繊維/樹脂複合粒子10の収量が低下するため好ましくなく、50質量部を超えると樹脂2を微細繊維1で均一に被覆することが困難となり好ましくない。
樹脂2を固体化する方法については特に限定されず、用いた重合性モノマーの種類および重合開始剤の種類によって適宜選択可能であるが、例えば懸濁重合法が挙げられる。
【0051】
具体的な懸濁重合の方法についても特に限定されず、公知の方法を用いて実施することができる。例えば第2工程で作製された、重合開始剤を含む樹脂2が微細繊維1によって被覆され安定化した微細繊維/樹脂複合粒子10を攪拌しながら加熱することによって実施することができる。攪拌の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができ、具体的にはディスパーや攪拌子を用いることができる。また、攪拌せずに加熱処理のみでもよい。また、加熱時の温度条件については重合性モノマーの種類および重合開始剤の種類によって適宜設定することが可能であるが、20度以上150度以下が好ましい。20度未満であると重合の反応速度が低下するため好ましくなく、150度を超えると微細繊維1が変性する可能性があるため好ましくない。重合反応に供する時間は重合性モノマーの種類および重合開始剤の種類によって適宜設定することが可能であるが、通常1時間~24時間程度である。また、重合反応は電磁波の一種である紫外線照射処理によって実施してもよい。また、電磁波以外にも電子線などの粒子線を用いても良い。重合反応において酸素阻害が生じる場合、反応系内の雰囲気を不活性ガスに置換したり、微細繊維1の水分散液中の酸素を除去して用いても良い。
【0052】
また、樹脂2を固体化する方法については特に限定されない。例えば溶媒を用いた溶解樹脂液滴を用いる場合、微細繊維1分散液中で微細繊維/樹脂複合粒子10を形成した後、前述のように水への溶解性の低い溶媒が経時的に水相へと拡散して行くことで、溶解樹脂が析出して粒子として固体化させることができる。また、例えば樹脂2を加熱して液体化した溶融樹脂液滴を用いる場合、微細繊維1分散液中でエマルションを形成した後、該エマルションを冷却することにより溶融樹脂液滴を粒子として固体化することができる。
【0053】
上述の工程を経て、樹脂2が微細繊維1によって被覆された微細繊維/樹脂複合粒子10を作製することができる。
なお、微細繊維/樹脂複合粒子10を作製する際、分散液中に多量の水と微細繊維/樹脂複合粒子10の被覆層に形成に寄与していない遊離した微細繊維1が混在した状態となっている。そのため、微細繊維/樹脂複合粒子10を回収・精製する必要があり、回収・精製方法としては、遠心分離による洗浄またはろ過洗浄が好ましい。遠心分離による洗浄方法としては公知の方法を用いることができ、具体的には遠心分離によって微細繊維/樹脂複合粒子10を沈降させて上澄みを除去し、水・メタノール混合溶媒に再分散する操作を繰り返し、最終的に遠心分離によって得られた沈降物から残留溶媒を除去して微細繊維/樹脂複合粒子10を回収することができる。ろ過洗浄についても公知の方法を用いることができ、例えば孔径0.1μmのPTFEメンブレンフィルターを用いて水とメタノールで吸引ろ過を繰り返し、最終的にメンブレンフィルター上に残留したペーストからさらに残留溶媒を除去して微細繊維/樹脂複合粒子10を回収することができる。
【0054】
残留溶媒の除去方法は特に限定されず、風乾やオーブンなどの簡便な熱乾燥にて実施することが可能である。こうして得られた微細繊維/樹脂複合粒子10を含む乾燥固形物は上述のように膜状や凝集体状にはならず、肌理細やかな粉体として得られる。
なお、微細繊維/樹脂複合粒子10の乾燥粉体は溶媒をほとんど含まず、さらに溶媒に再分散可能であることを特長とする乾燥固形物であり、具体的には含水率を0.01%以上30%以下とすることができ、さらに10%以下とすることができ、さらに5%以下とすることができる。溶媒をほぼ除去することができるため、輸送費の削減、腐敗防止、添加率向上、樹脂との混練効率向上、といった観点から好ましい効果を得る。なお、微細繊維/樹脂複合粒子10は乾燥粉体として容易扱うことが可能で、含水率を30%以下とすることによりアスファルト4に対して良好に分散できることから、含水率30%以下とする工程を含む乾燥固形物であれば、本発明の技術的範囲に含まれると定義する。
【0055】
得られた微細繊維/樹脂複合粒子10から成る粉体は、表面に結合した微細繊維1に由来した特性を有している。そのため、公知の種々のセルロース改質方法を用いて改質しても構わない。例えば、セルロースナノファイバーの結晶表面にイオン性官能基を有する場合、末端アミノ化ポリエチレングリコール鎖を導入する方法や、4級アルキルアンモニウム塩を導入する方法を用いて疎水化変換することが可能である。このように疎水化処理することにより、クロロホルムやトルエンなどの低極性有機溶媒中でも高い分散安定性を示す。
【0056】
<微細繊維/樹脂複合粒子10をアスファルト4に添加して調整し、さらに骨材3と混練する工程(第4工程)>
第4工程は、第3工程で得られた微細繊維/樹脂複合粒子10をアスファルト4に添加してアスファルト組成物を調整し、さらに骨材3と混練することで道路舗装用組成物を得る工程である。
本実施形態に使用するアスファルト4としては、レーキアスファルト等の天然アスファルト、カットバックアスファルト、石油タール、ピッチ、ストレートアスファルト、ブローンアスファルト、セミブローンアスファルト、溶剤脱瀝アスファルト(例えば、プロパン脱瀝アスファルト)等の石油アスファルトが挙げられ、これらのアスファルトは単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。そのほかに人工アスファルトを任意の割合でブレンドしたものも、原料アスファルトとして使用できる。
【0057】
本実施形態の微細繊維/樹脂複合粒子10のアスファルト4への添加方法は、特に限定されるものではないが、100~200℃、好ましくは120~200℃に加熱溶融したアスファルト4に撹拌下、アスファルト4の100質量部に対して0.01~30質量部添加すればよい。用いる微細繊維1の結晶表面にイオン性官能基が導入されていると、微細繊維/樹脂複合粒子10の表面にイオン性官能基が配置されることより電気的に反発しあうため、微細繊維/樹脂複合粒子10はアスファルト中でも凝集することなく、均一に分散させたアスファルト組成物を得ることができる。微細繊維/樹脂複合粒子10の添加量が0.01質量%以下の場合、アスファルト4中に分散する微細繊維1の量が不十分なためアスファルト4の流動性を抑制することができないため好ましくない。また、微細繊維/樹脂複合粒子10の添加量が30質量%以上の場合、アスファルト4中でムラが発生し、強度が低下するため好ましくない。
【0058】
本実施形態の道路舗装用組成物に使用する骨材3として、砕石、砂、及びフィラーは各種低品位骨材や再生骨材など材質に関わりなく本発明に供することができる。砕石、砂、フィラーからなる骨材の配合割合は、本実施形態のアスファルト組成物1~15質量部、骨材99~85質量部が好ましい。
本実施形態の道路舗装用組成物は、アスファルト組成物を100~200℃に加熱し、予め100~200℃に加熱した砕石、砂、及びフィラー等の骨材3と混練することにより製造する。混練する際に100℃以上とすることで、微細繊維/樹脂複合粒子10が破泡し、アスファルト4中に均一に微細繊維1が分散するため、アスファルト4の流動性を抑制することができる。また樹脂2がアスファルト4中に分散し、アスファルト4と骨材3の界面に存在することで密着性を改善し骨材飛散が発生しにくくなる。
本実施形態の道路舗装用組成物は、道路舗装材料、ルーフィング材料、防水材料等に使用できるが、剥離防止性能が優れることから、その中でも特に本実施形態の道路舗装用混合物を用いた舗装に好適である。
【実施例
【0059】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明の技術範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の各例において、「%」は、特に断りのない限り、質量%を示す。
[実施例1]
<微細繊維分散液101を調整する工程>
(セルロース原料のTEMPO酸化)
セルロースン繊維70gを蒸留水3500gに懸濁し、蒸留水350gにTEMPOを0.7g、臭化ナトリウムを7g溶解させた溶液を加え、20℃まで冷却した。ここに2mol/L、密度1.15g/mLの次亜塩素酸ナトリウム水溶液450gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。系内の温度は常に20℃に保ち、反応中のpHの低下は0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加することでpH10に保ち続けた。セルロースの質量に対して、水酸化ナトリウムの添加量の合計が3.50mmol/gに達した時点で、約100mLのエタノールを添加し反応を停止させた。その後、ガラスフィルターを用いて蒸留水によるろ過洗浄を繰り返し、酸化セルロースを得た。
【0060】
(セルロース繊維の解繊処理)
上記TEMPO酸化で得た酸化セルロース10gを990gの蒸留水に分散させ、ジューサーミキサーで30分間微細化処理し、濃度1%の微細セルロース繊維分散液を得た。微細セルロース繊維分散液を光路長1cmの石英セルに入れ、分光光度計(島津製作所社製、「UV-3600」)を用いて分光透過スペクトルの測定を行ったところ、660nmで91%の透過率であり、セルロースナノファイバー(微細繊維1)分散液は高い透明性を示した。また、セルロースナノファイバー(微細繊維1)の数平均短軸径は3nm、数平均長軸径は1110nmであった。
【0061】
(セルロースナノファイバー(微細繊維1)のカルボキシ基量測定)
上記解繊処理で得た濃度1%のセルロースナノファイバー分散液100gに、塩酸を加えてpHを2.5とした。その後0.5M水酸化ナトリウム水溶液を用いた電導度滴定法により、カルボキシ基量(mmol/g)を求めた。結果は1.6mmol/gであった。
【0062】
<エマルションを作製する工程>
次に、重合性モノマーであるジビニルベンゼン(以下、DVBとも称する。)100gに対し、重合開始剤である2、2-アゾビス-2、4-ジメチルバレロニトリル(以下、ADVNとも称する。)を10g溶解させた。得られたDVB/ADVNの混合溶液全量を、濃度1%のセルロースナノファイバー(微細繊維1)分散液400gに対し添加したところ、DVB/ADVN混合溶液とセルロースナノファイバー(微細繊維1)分散液はそれぞれ透明性の高い状態で2層に分離した。
【0063】
次に、上記2層分離した状態の混合液における上層の液面から超音波ホモジナイザーのシャフトを挿入し、周波数24kHz、出力400Wの条件で、超音波ホモジナイザー処理を3分間行った。超音波ホモジナイザー処理後の混合液の外観は白濁した乳化液の様態であった。混合液一滴をスライドグラスに滴下し、カバーガラスで封入して光学顕微鏡で観察したところ、1~数μm程度のエマルション液滴が無数に生成し、エマルションとして分散安定化している様子が確認された。
【0064】
エマルション分散液を、ウォーターバスを用いて70℃の湯浴中に供し、攪拌子で攪拌しながら8時間処理し、重合反応を実施した。8時間処理後に上記分散液を室温まで冷却した。重合反応の前後で分散液の外観に変化はなかった。得られた分散液に対し、遠心力75,000gで5分間処理したところ、沈降物を得た。デカンテーションにより上澄みを除去して沈降物を回収し、さらに孔径0.1μmのPTFEメンブレンフィルターを用いて、純水とメタノールで繰り返し洗浄した。こうして得られた精製・回収物を1%濃度で再分散させ、粒度分布計(NANOTRAC UPA-EX150、日機装株式会社)を用いて粒径を評価したところ平均粒径2.1μmであった。次に精製・回収物を風乾し、さらに室温25度にて真空乾燥処理を24時間実施したところ、肌理細やかな乾燥粉体(微細繊維/樹脂複合粒子10)を得た。
得られた乾燥紛体を25℃50%RH環境にて一晩調湿した後、電量法水分計CA200(三菱化学アナリティック社製)を用いて含水率を測定したところ、含水率は0.1%であった。
【0065】
<アスファルト4に添加して調整し、さらに骨材3と混練する工程>
170℃で加熱溶融したストレートアスファルトと微細繊維/樹脂複合粒子10を所定量加え、170℃でタービン型撹拌羽根を用いて10分間混合することにより、アスファルト組成物を得た。ストレートアスファルトとは原油を常圧蒸留装置,減圧蒸留装置などにかけて得られる残留瀝青物質のことであり、本実験ではJIS K 2207に規定された針入度が50のものを使用した。アスファルト組成物を170℃の恒温乾燥機中で2時間加熱乾燥した。
骨材3としては、石英斑岩を使用した。13mmフルイを通過し5mmフルイに止まる粒度のものをとり、よく洗浄し次に金属製容器に入れて170℃の温度に保ってある恒温乾燥機に入れて10時間加熱して乾燥させたものを使用した。170℃のアスファルト組成物に乾燥直後の骨材を恒温槽内で添加して実施例1の道路舗装用組成物を得た。
【0066】
[実施例2~6、比較例1~5]
表1に示すアスファルト組成物における構成要素の質量比、およびアスファルト組成物と骨材との質量比のようにした以外は、実施例1と同様にして実施例2~6、および比較例1~5の道路舗装用組成物を得た。
【0067】
(剥離試験方法)
実施例1~6および比較例1~5の舗装用組成物を使用し、アスファルト4が完全に骨材3の表面を被覆するようにヘラでよく攪拌した。次にこれをガラス板上に広げ1時間放置し室温まで冷却してアスファルト4を硬化させた。上記の硬化物を、80℃に保った恒温水槽の温水中に60分間浸漬した後に取り出して室温で乾燥し、上方より硬化物の状態を肉眼で観察し、アスファルト組成物皮膜の被覆面積の面積百分率を求めた。これを剥離率とし、その結果を表1に示した。
剥離率は、成形体として本発明の目的を達成するために10%以下が好ましく、5%未満がより好ましく、3%未満がさらに好ましい。
【0068】
(乾燥強度試験方法)
上記の舗装用組成物を、温度を維持したまま、内径101.6mm、外径114.3mm、高さ177.8mmの円筒状成形機に入れ、加圧器(Compaction hydraulic press)(Mecanica Cientifica , S.A., model Ref. 10.2196)を用いて3分かけて21MPaまで上げて成型を行った。2分間21MPaを維持した後、脱圧し、室温まで24時間かけて冷却し、アスファルトブロックを脱型した。アスファルトブロックを24時間室温(25℃)で保存し、25℃で2時間水に浸漬させ、その後、水浴から回収し、拭取り、直ちに、以下の機器で5.08mm/minで圧力をかけていき、どの荷重まで耐えられるかで算出した。このように算出された値を乾燥強度(kPa)とし、その結果を表1に示した。
【0069】
乾燥強度は、成形体として本発明の目的を達成するために3000kPa以上が好ましく、3600kPa以上がより好ましく、4000kPa以上がさらに好ましい。
なお、上記圧力はKiloNewton/表面積 で算出した。
機器:Resistance assessment press (Mecanica Cientifica, S.A., model Ref. 41.000)
【0070】
【表1】
【0071】
表1に示すように、実施例1~6の舗装用組成物は、骨材3に対しても強固な付着性を示し剥離しにくいため、骨飛散が発生しにくい。さらに、乾燥強度にも優れるためアスファルト4の流動性を抑制することができ、変形しにくい道路舗装用組成物を提供することができる。
上述の実施形態は一例であって、その他、具体的な細部構造などについては適宜に変更可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、道路舗装材料、ルーフィング材料、防水材料等に使用できるが、剥離防止性能が優れることから、その中でも特に本発明の道路舗装用混合物を用いた舗装に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1…微細繊維
2…樹脂(樹脂粒子)
3…骨材
4…アスファルト
10…微細繊維/樹脂複合粒子
101…微細繊維分散液
102…樹脂成分含有溶液
103…コアシェル型複合粒子分散液
104…樹脂複合粒子分散液
図1
図2
図3