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  • 特許-接合方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】接合方法
(51)【国際特許分類】
   F16B 37/04 20060101AFI20240123BHJP
   E04B 1/41 20060101ALI20240123BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
F16B37/04 A
E04B1/41 502A
F16B5/02 U
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020038080
(22)【出願日】2020-03-05
(65)【公開番号】P2021139444
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】辻 靖彦
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-259832(JP,A)
【文献】特開平05-106625(JP,A)
【文献】実開昭55-035102(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 37/04
E04B 1/41
F16B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側接合材と内側接合材とを接合する接合方法であって、
前記外側接合材と前記内側接合材とを接合する接合部材を、外周に外周螺条が形成された外周面と、前記外周と同心の内周に内周螺条が形成された内周面と、を有する筒状に形成するとともに、前記外周螺条と前記内周螺条とを同寸法の螺条ピッチとし、
前記外側接合材には、前記外周螺条が螺合する雌ねじ部が貫通形成されており、
前記内側接合材には、前記内周螺条が螺合する雄ねじ部が形成されており、
前記外側接合材の前記雌ねじ部に対して前記内側接合材の前記雄ねじ部を貫通させた状態において、前記接合部材の前記内周螺条を前記内側接合材に螺合させながら前記接合部材の前記外周螺条を前記外側接合材の前記雌ねじ部に螺合させる
接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合部材を用いた接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
柱材や梁材などの構造材においては、木材などの耐火性の低い構造部材を石膏材などの耐火性の高い被覆部材で被覆することにより耐火性が高められる。こうした構造材に外装材などの外部取付部材が取り付けられる場合、その外部取付部材は固定金具を介して構造材に取り付けられる。固定金具は、構造部材に設けられたアンカーボルトにナットを螺合させ、そのナットと被覆部材とで挟持されることにより、アンカーボルトに接合される。このようにアンカーボルトといった内側に位置する内側接合材と、固定金具といった内側接合材の外側に位置する外側接合材とをねじ結合を利用して接合する技術は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭52-50413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したように内側接合材と外側接合材とを接合すると、外側接合材を被覆部材に押し付ける外力が外側接合材に作用したときに、その外力が被覆部材に直接的に伝達される。このため、被覆部材が壊れやすい場合に用いることができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する接合部材は、外周に外周螺条が形成された外周面と、前記外周と同心の内周に内周螺条が形成された内周面と、を有する筒状の接合部材であって、前記外周螺条と前記内周螺条とが、同寸法の螺条ピッチである。これにより、外側接合材に作用する外力を内側接合材に伝達させることができる。
【0006】
上記構成の接合部材は、前記外周の直径よりも大きく形成された頭部を有することが好ましい。これにより、接合部材の締結作業を容易に行うことができる。
上記課題を解決する接合構造は、上述した接合部材と、前記外周螺条と螺合する外側接合材と、前記内周螺条と螺合する内側接合材と、を有する。これにより、外側接合材に作用する外力を内側接合材に伝達させることができる。
【0007】
上記課題を解決する接合方法は、外側接合材と内側接合材とを接合する接合方法であって、前記外側接合材と前記内側接合材とを接合する接合部材を、外周に外周螺条が形成された外周面と、前記外周と同心の内周に内周螺条が形成された内周面と、を有する筒状に形成するとともに、前記外周螺条と前記内周螺条とを同寸法の螺条ピッチとし、前記外側接合材には、前記外周螺条が螺合する雌ねじ部が貫通形成されており、前記内側接合材には、前記内周螺条が螺合する雄ねじ部が形成されており、前記外側接合材の前記雌ねじ部に対して前記内側接合材の前記雄ねじ部を貫通させた状態において、前記接合部材の前記内周螺条を前記内側接合材に螺合させながら前記接合部材の前記外周螺条を前記外側接合材の前記雌ねじ部に螺合させる。これにより、外側接合材に作用する外力を内側接合材に伝達させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】接合部材の一実施形態を示す斜視図。
図2】接合部材によって接合される外側接合材と内側接合材とを、内側接合材が固定される構造部材と該構造部材を覆う被覆部材とともに模式的に示す断面図。
図3】接合部材で外側接合材と内側接合材とを接合する手順を説明するための図であって、(a)位置合わせ工程を示す図、(b)重ね合わせ工程を示す図、(c)配置工程を示す図、(d)第1螺合工程を示す図、(e)第2螺合工程が完了した状態を示す図。
図4】外側接合材と内側接合材とを接合する接合構造において、(a)外側接合材に圧縮力が作用した場合の力の伝達経路を模式的に示す図、(b)外側接合材に引張力が作用した場合の力の伝達経路を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1図4を参照して、接合部材、接合構造、および、接合方法の一実施形態について説明する。
図1に示すように、接合部材10は、中心軸Cを有する筒状をなしており、外周に外周螺条11が形成された外周面を有する軸部12と、軸部12の基端部に対して一体に連結された頭部13と、を有している。
【0010】
頭部13は、軸部12の外周の直径よりも大きく形成されている。具体的には、頭部13は、中心軸Cに沿う方向から接合部材10を見たときに、その外形形状が軸部12の外周の直径に基づく円が内側に配置される六角形形状に形成されている。
【0011】
接合部材10は、軸部12の外周と同心の内周に内周螺条15が形成された内周面を有している。この内周螺条15は、接合部材10を貫通するように軸部12および頭部13にわたって形成されている。
【0012】
外周螺条11と内周螺条15は、同寸法の螺条ピッチで、かつ締結方向が同じ回転方向に形成されている。外周螺条11および内周螺条15は、接合部材10に必要とされる機械的強度を考慮したうえで、例えばJISB0205に規定されたメートルねじに応じた呼び径や螺条ピッチが選択される。
【0013】
接合部材10は、金属製ボルトに対して内周螺条15を追加工することにより作製してもよいし、金属部材に対する機械加工、すなわち削り出しによって作製されてもよい。また、接合部材10は、樹脂製ボルトに対して内周螺条15を追加工することにより作製されてもよい。
【0014】
図2に示すように、接合部材10は、外側接合材16と内側接合材17とを接合する。
外側接合材16は、例えばコンクリート材や木材、金属材などで構成される。外側接合材16には、接合部材10の外周螺条11が螺合可能な雌ねじ部18が貫通形成されている。この雌ねじ部18は、例えば外側接合材16に対する加工によって外側接合材16に直接形成されてもよいし、雌ねじ部18を有する機械部品が埋め込まれることにより外側接合材16に形成されてもよい。接合部材10の軸部12の長さL1は、この外側接合材16の厚さtと略等しい値に設定される。
【0015】
内側接合材17は、例えばコンクリート材や木材、金属材などで構成される構造部材19に対して固定されたアンカーボルトで構成されている。内側接合材17は、構造部材19に固定される定着部20と、構造部材19から突出して接合部材10の内周螺条15が螺合可能な雄ねじ部21と、を有している。内側接合材17は、構造部材19に固定された状態において、構造部材19を覆う被覆部材22から雄ねじ部21が突出長さL2だけ突出する。この突出長さL2は、接合部材10の軸方向長さL3よりも僅かに長いことが好ましい。
【0016】
被覆部材22は、外側接合材16と内側接合材17とが接合された状態において、外側接合材16に隣接する部材である。被覆部材22は、例えば石膏材など、外側接合材16および構造部材19よりも機械的強度が弱く、壊れやすい材料で形成されている。被覆部材22には、内側接合材17が貫通可能な貫通孔23が形成される。貫通孔23は、雌ねじ部18の呼び径に基づく直径よりも小さな直径を有する円形孔である。
【0017】
(接合方法)
図3を参照して、接合部材10による外側接合材16と内側接合材17との接合方法について説明する。
【0018】
まず、図3(a)に示すように、被覆部材22に形成された貫通孔23に通じて構造部材19に内側接合材17を固定した状態で位置合わせ工程が行われる。位置合わせ工程においては、内側接合材17の雄ねじ部21と、雌ねじ部18が形成された外側接合材16との位置合わせが行われる。具体的には、内側接合材17の中心軸方向に沿って内側接合材17と外側接合材16とを近づけたときに、内側接合材17の雄ねじ部21が外側接合材16の雌ねじ部18を貫通するように位置合わせが行われる。
【0019】
次に、図3(b)に示すように、重ね合わせ工程が行われる。重ね合わせ工程においては、内側接合材17の中心軸方向に沿って内側接合材17と外側接合材16とを近づけて、外側接合材16の雌ねじ部18に内側接合材17の雄ねじ部21を貫通させ、被覆部材22に重あるように外側接合材16が配置される。
【0020】
次に、図3(c)に示すように、配置工程が行われる。配置工程においては、内側接合材17の雄ねじ部21に対して接合部材10の内周螺条15が軸部12側から螺合可能な位置に接合部材10が配置される。
【0021】
次に、図3(d)に示すように、第1螺合工程が行われる。第1螺合工程においては、中心軸Cを回転中心として接合部材10を締結方向に回転させることにより、内側接合材17の雄ねじ部21のうちで外側接合材16から突出する部分に接合部材10の内周螺条15を螺合させる。接合部材10の締結作業は、頭部13を操作可能な工具を用いて行うことができる。
【0022】
最後に、図3(e)に示すように、第2螺合工程が行われる。第2螺合工程においては、中心軸Cを回転中心として接合部材10を締結方向に回転させることにより、内側接合材17の雄ねじ部21のうちで外側接合材16の雌ねじ部18の内側に位置する部分に対する内周螺条15の螺合が行われる。また、この内周螺条15の螺合と同時期に、外側接合材16の雌ねじ部18に対する外周螺条11の螺合が行われる。そして、接合部材10の頭部13が外側接合材16に当接する位置まで接合部材10を回転させることにより外側接合材16と内側接合材17との接合が完了する。
【0023】
(作用)
上述した接合構造の作用について説明する。
図4(a)に示すように、被覆部材22に外側接合材16を押し付けようとする圧縮力F11が外力として外側接合材16に作用したとする。このとき、その圧縮力F11は、外側接合材16の雌ねじ部18と接合部材10の外周螺条11との螺合部分、接合部材10の内周螺条15と内側接合材17の雄ねじ部21との螺合部分、構造部材19に対する内側接合材17の定着部20を介して構造部材19に力F12として伝達される。すなわち、圧縮力F11は、その力が被覆部材22に伝達されにくい経路で構造部材19に伝達される。
【0024】
図4(b)に示すように、被覆部材22から外側接合材16を引き離そうとする引張力F21が外力として外側接合材16に作用したとする。このとき、その引張力F21は、外側接合材16の雌ねじ部18と接合部材10の外周螺条11との螺合部分、接合部材10の内周螺条15と内側接合材17の雄ねじ部21との螺合部分、構造部材19に対する内側接合材17の定着部20を介して構造部材19に力F22として伝達される。すなわち、引張力F21は、その力が被覆部材22に伝達されにくい経路で構造部材19に伝達される。
【0025】
本実施形態の効果について説明する。
(1)外側接合材16に外力が作用したとしても、その外力が被覆部材22に伝達することが抑えられる。
【0026】
(2)接合部材10は、外周螺条11の直径よりも大きく形成された頭部13を有している。これにより、頭部13を操作可能な工具を用いた接合部材10の締結作業を容易に行うことができる。その結果、締結作業の作業負荷を軽減することができる。
【0027】
(3)軸部12の長さL1が外側接合材16の厚さtよりも大きい場合には、外側接合材16と被覆部材22との間に僅かな隙間が形成される。これにより、外側接合材16に作用した圧縮力F11が被覆部材22に伝達されたとしても、その圧縮力F11に基づく力が作用する領域を限定することができる。
【0028】
(4)軸部12の長さL1が外側接合材16の厚さtよりも小さい場合には、外側接合材16と被覆部材22とが面接触する。これにより、外側接合材16に作用した圧縮力F11が被覆部材22に伝達されたとしても、その圧縮力F11に基づく力を被覆部材22の接触面全体で受けることができる。
【0029】
(5)軸部12の長さL1が外側接合材16の厚さtと等しい場合には、被覆部材22は、外側接合材16および接合部材10と接触する。これにより、外側接合材16に作用した圧縮力F11が被覆部材22に伝達されたとしても、被覆部材22は、その圧縮力F11に基づく力を外側接合材16および接合部材10の双方と接触する部分で受けることができる。
【0030】
(6)内側接合材17の突出長さL2が接合部材10の軸方向長さL3よりも長いことにより、接合部材10を、その長さ方向の全域にわたって内側接合材17と接合させることができる。
【0031】
(7)被覆部材22に形成される貫通孔23は、雌ねじ部18の呼び径に基づく直径よりも小さな直径を有する円形孔である。これにより、構造部材19に対する被覆部材22の位置ずれを小さくすることができる。
【0032】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・外周螺条11および内周螺条15は、JISB0205に規定されたメートルねじに応じた呼び径や螺条ピッチが選択される構成に限らず、例えばウィットねじやユニファイねじなど、1インチあたりの山数で表現されるインチねじであってもよい。
【0033】
・接合部材10の頭部13は、工具を用いた締結作業が可能であればよく、軸部12の外周の直径よりも小さく形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0034】
10…接合部材、11…外周螺条、12…軸部、13…頭部、15…内周螺条、16…外側接合材、17…内側接合材、18…雌ねじ部、19…構造部材、20…定着部、21…雄ねじ部、22…被覆部材、23…貫通孔。
図1
図2
図3
図4