IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田中央研究所の特許一覧

<>
  • 特許-蓄電デバイス 図1
  • 特許-蓄電デバイス 図2
  • 特許-蓄電デバイス 図3
  • 特許-蓄電デバイス 図4
  • 特許-蓄電デバイス 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20240123BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20240123BHJP
   H01M 10/38 20060101ALI20240123BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20240123BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20240123BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240123BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240123BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20240123BHJP
   H01G 11/40 20130101ALI20240123BHJP
   H01G 11/26 20130101ALI20240123BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/04 Z
H01M10/38
H01M4/133
H01M4/02 Z
H01M4/02 A
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M50/46
H01G11/40
H01G11/26
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020041007
(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公開番号】P2021144799
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡 秀亮
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-160733(JP,A)
【文献】特開2018-152230(JP,A)
【文献】特開2019-216071(JP,A)
【文献】特開2019-075198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/058
H01M 10/04
H01M 10/38
H01M 4/133
H01M 4/02
H01M 4/13
H01M 4/62
H01M 50/40
H01G 11/40
H01G 11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素材料により構成されその断面形状が短径a及び長径bとしたときにb/aの平均値が5以上60以下の範囲であり、単位長さあたりの放電容量が0.05mAh/cm以上1.0mAh/cm以下である柱状負極と、
各柱状負極の周囲を囲うように設けられた分離膜と、
正極活物質を含み、隣合う前記分離膜同士の間を埋めるように設けられた正極と、を備え
前記柱状負極は、断面積が0.005mm 2 以上0.4mm 2 以下の範囲である、蓄電デバイス。
【請求項2】
前記柱状負極は、b/aが平均値で6以上10以下である、請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項3】
前記柱状負極は、炭素繊維が結束された構造、及び炭素材料が固形化した構造のうち1以上を有する、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス。
【請求項4】
前記柱状負極は、前記長径方向に等間隔に複数が配列されており、前記短径方向にはオフセットされて配列されている、請求項1~のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
【請求項5】
前記正極は、導電材としての炭素繊維を含み、該炭素繊維が前記柱状負極の長径方向に配向している、請求項1~のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、蓄電デバイスを開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の蓄電デバイスとしては、電解質を含むリチウムイオン供給コア部と、このコア部の外面を囲んで形成され内部電極活物質が外面にコーティングされた3次元網状構造の集電体を含む内部電極と、内部電極の外面を囲んで形成され外部電極活物質層を含む外部電極を含むケーブル型二次電池が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この二次電池では、コア部の電解質が電極の活物質に浸透しやすく、電池の容量特性及びサイクル特性に優れる、としている。また、蓄電デバイスとしては、分離膜を介して正極と隣り合う状態で複数の負極が結束された構造を有するものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。この蓄電デバイスでは、出力特性をより向上した新規なものを提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2014-532277号公報
【文献】特開2019-75198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の二次電池では、変形が容易であり、電解質が電極の活物質に流入し易い新規な線型構造の二次電池を提供することができるとしているが、出力特性をより向上することについては、十分検討されていなかった。また、特許文献2の二次電池では、出力特性をより向上することができるが、まだ十分ではなく、更なる改良が望まれていた。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、高エネルギー密度と高入出力を両立した蓄電デバイスを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、アスペクト比の大きな柱状負極を用いて配列させた柱状電極構造とすると、高エネルギー密度を維持しつつ、出入力特性を向上させることができることを見いだし、本明細書で開示する発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本開示の蓄電デバイスは、
炭素繊維が結束された構造を有しその断面形状が短径a及び長径bとしたときにb/aの平均値が5以上60以下の範囲であり、単位長さあたりの放電容量が0.05mAh/cm以上1.0mAh/cm以下である柱状負極と、
各柱状負極の周囲を囲うように設けられた分離膜と、
正極活物質を含み、隣合う前記分離膜同士の間を埋めるように設けられた正極と、
を備えたものである。
【0008】
あついは、本開示の蓄電デバイスは、
炭素繊維が結束された構造を有しその断面形状が短径a及び長径bとしたときにb/aが5以上を有し、断面積が0.005mm2以上0.4mm2以下の範囲である柱状負極と、
各柱状負極の周囲を囲うように設けられた分離膜と、
正極活物質を含み、隣合う前記分離膜同士の間を埋めるように設けられた正極と、
を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、高エネルギー密度と高入出力とを両立した蓄電デバイスを提供することができる。このような効果が得られる理由は、例えば、以下のように推察される。炭素材料を含む柱状負極では、短径a、長径bとした場合のb/aの平均値が5以上である扁平形状とすることで、イオン拡散距離を短くすることが可能となり、入出力特性を向上させることができるものと推察される。ただし、柱状負極の単位長さあたりの放電容量や断面積が小さい場合には、セル内の体積における正負極での分離膜の割合が増加してしまうなどにより、エネルギー密度が低下する。一方、柱状負極の単位長さあたりの放電容量や断面積が大きい場合には、内部までキャリアイオンを拡散するのに時間を要するため、入出力特性が低下する。このため、柱状負極の単位長さあたりの放電容量が0.05mAh/cm以上1.0mAh/cm以下の範囲や、断面積が0.005mm2以上0.4mm2以下の範囲となるように柱状負極の形状を制御することで、上記のエネルギー密度の低下や入出力特性の低下をより抑制し、高エネルギー密度と高入出力とを両立した蓄電デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】蓄電デバイス10の一例を示す模式図。
図2】柱状負極12の一例を示す説明図。
図3】柱状負極12を配列した電極構造体及び正極16の導電材の説明図。
図4】実験例1、9の断面のSEM写真。
図5】実験例1、9の0.2C及び3Cでの放電曲線。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態で説明する本開示の蓄電デバイスは、複数の柱状負極と、分離膜と、正極とを備えている。この蓄電デバイスは、正極に電気的に接続された正極集電体と、負極に電気的に接続された負極集電体とを備えているものとしてもよい。この蓄電デバイスは、例えば、電気二重層キャパシタやハイブリッドキャパシタ、疑似電気二重層キャパシタ、アルカリ金属二次電池、アルカリ金属イオン電池などとしてもよい。蓄電デバイスのキャリアイオンは、リチウムイオンやナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオンやマグネシウムイオンやストロンチウムイオン、カルシウムイオンなどの第2族イオンなどが挙げられる。また、正極は、柱状負極の周りに存在するものとしてもよいし、柱状負極の間の空間に充填されているものとしてもよい。また、この蓄電デバイスは、分離膜を介して正極と隣り合う状態で複数の柱状負極が結束された構造を有するものとしてもよい。更に、この蓄電デバイスは、柱状負極、正極及び分離膜のうち1以上に電解液を含むものとしてもよい。正極及び柱状負極には、集電線などの集電部材が埋設されているものとしてもよいし、この集電部材を備えないものとしてもよい。ここでは、説明の便宜のため、リチウムイオンをキャリアとするリチウムイオン二次電池をその主たる一例として以下説明する。
【0012】
ここで、本実施形態で開示する蓄電デバイスについて図面を用いて説明する。図1は、蓄電デバイス10の一例を示す模式図である。図2は、柱状負極12の一例を示す説明図である。蓄電デバイス10は、柱状負極12と、負極集電体13と、分離膜15と、正極16と、正極集電体17とを備えている。単セル11は、柱状負極12と、分離膜15と、正極16とにより構成されている。この蓄電デバイス10は、炭素材料により構成された負極活物質を含む柱状負極12と、柱状負極12の周りに分離膜15を介して形成された正極活物質を含む正極16とを備えている。この蓄電デバイス10は、分離膜15及び正極16が形成された柱状負極12を含む単セル11を複数結束した構造を有するものとしてもよい。また、この蓄電デバイス10では、350本以上の単セル11が結束された構造を有しているものとしてもよい。あるいは、蓄電デバイス10は、柱状負極12と、柱状負極12の表面に形成された分離膜15と、柱状負極12の間に分離膜15を介して正極16が充填された構造を有するものとしてもよい。
【0013】
柱状負極12は、炭素材料により構成された負極活物質を含む部材である。ここで、「柱状」とは、屈曲しない太さのもののほか、屈曲可能な繊維状の太さのものも含むものとする。この柱状負極12は、短径aと長径bとのアスペクト比b/aの平均値が5以上である扁平状の形状を有するものであればよく、その断面は楕円形であってもよいし、側面が曲面からなるものとしてもよい。なお、「平均値」とは、各柱状負極12の絶対値ではなく、複数の柱状負極12の測定を平均した値で評価する趣旨である。柱状負極12は、断面視したときに、長方形の角が円弧状に形成された形状としてもよいし、端部側に行くほど短径a方向の長さが短くなるような形状としてもよい。蓄電デバイス10では、複数の柱状負極12が所定方向に配列されている。この柱状負極12は、蓄電デバイス10の長い辺の方向と長径bの方向とが同じ方向に配列されているものとしてもよい。この柱状負極12は、長径方向に等間隔に複数が配列されており、短径方向にはオフセットされて配列されていることが好ましい。この蓄電デバイス10では、配列された列の柱状負極12の中心と、隣の列の柱状負極12の端部とが交互になるように柱状負極12が配列されるものとしてもよい(図1、3参照)。このような電極構造体では、柱状負極12の充填効率が高く、活物質密度を向上する観点から好ましい。
【0014】
柱状負極12は、負極集電体13に接続される端部以外の外周が分離膜15に覆われている。例えば、柱状負極12は、蓄電デバイス10全体の負極容量の1/nの容量を有し、n個が負極集電体13に並列接続されているものとしてもよい。この柱状負極12は、短径aが20μm以上であることが好ましく、30μm以上がより好ましく、50μm以上が更に好ましい。また、短径aは、250μm以下であることが好ましく、200μm以下がより好ましく、190μm以下が更に好ましい。また、柱状負極12は、長径bが200μm以上であることが好ましく、300μm以上がより好ましく、400μm以上が更に好ましい。また、長径bは、1900μm以下であることが好ましく、1800μm以下がより好ましく、1600μm以下が更に好ましい。更にb/aは、平均値で6以上が好ましく、7以上であるものとしてもよい。また、b/aは、平均値で30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が更に好ましい。特に、b/aは、平均値で6以上10以下であることが好ましい。上述の範囲では、蓄電デバイス10のエネルギー密度の向上と入出力特性の向上とを好適な範囲で両立することができ好ましい。また、この径がより長いものでは、電極構造体としての強度を担保することができ安定した充放電ができる。また、径がより小さいものでは、キャリアイオンの移動距離が長くなりすぎず、高出力性能が得られる。
【0015】
柱状負極12は、単位長さあたりの放電容量が0.05mAh/cm以上1.0mAh/cm以下であるものとしてもよい。この放電容量は、Li金属を対極とし、Li基準電位で0.005V~1.5Vの電位範囲、0.2Cの定電流で放電したときの容量をいうものとする。柱状負極12は、この放電容量ができるだけ大きいことが好ましく、0.08mAh/cm以上が好ましく、0.15mAh/cm以上がより好ましく、0.20mAh/cm以上が更に好ましい。また、この放電容量は、0.9mAh/cm以下が好ましく、0.85mAh/cm以上以下がより好ましく、0.82mAh/cm以下としてもよい。
【0016】
柱状負極12は、断面積が0.005mm2以上0.4mm2以下の範囲であるものとしてもよい。この柱状負極12は、断面積ができるだけ大きいことが好ましく、0.015mm2以上が好ましく、0.018mm2以上がより好ましく、0.020mm2以上が更に好ましい。また、柱状負極12の断面積は、0.25mm2以下が好ましく、0.20mm2以下がより好ましく、0.50mm2以下が更に好ましい。この柱状負極12の長手方向の長さは、蓄電デバイス10の用途などに応じて適宜定めることができ、例えば、20mm以上200mm以下の範囲などとしてもよい。柱状負極12の長さが20mm以上では、電池容量をより高めることができ好ましく、200mm以下では、負極の電気抵抗をより低減することができ好ましい。
【0017】
柱状負極12は、負極活物質としての炭素材料を含むものが好ましく、炭素繊維14が結束された構造、及び炭素材料が固形化した構造のうち1以上を有するものとしてもよい。図1、2には、炭素繊維14が結束されたものを示した。炭素材料は、導電性が高く、負極活物質になり、柱状負極12として好ましい。炭素材料としては、例えば、グラファイト類や、コークス類、ガラス状炭素類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類のうち1以上が挙げられる。このうち、人造黒鉛、天然黒鉛などのグラファイト類が好ましい。また、グラファイト構造を有する炭素繊維14としてもよい。このような炭素繊維14は、例えば、繊維方向である長手方向に結晶が配向したものが好ましい。また、長手方向(繊維方向)に直交する方向に断面視したときに結晶が中心から外周面側に放射状に配向したものであることが好ましい。炭素繊維14の直径dは、例えば、5μm以上としてもよいし、7.5μm以上としてもよいし、10μm以上としてもよい。また、炭素繊維14の直径dは、50μm以下の範囲としてもよいし、25μm以下としてもよいし、20μm以下としてもよい。柱状負極12は、複数の炭素繊維14を撚糸して得られたものとしてもよいし、複数の炭素繊維14を結着材により結着させたものとしてもよい。結着材は、キャリアイオンの伝導性を有するものが好ましく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)や、PVdFとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(PVdF-HFP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、及びPMMAとアクリルポリマーとの共重合体などが挙げられる。炭素繊維14の本数は、その太さなどにもよるが、例えば、200本以上が好ましく、350本以上がより好ましく、500本以上としてもよい。また、炭素繊維14の本数は、5000本以下が好ましく、3500本以下がより好ましく、3000本以下としてもよい。また、柱状負極12は、炭素材料の原料を柱状に成形したものを炭素化した一体物としてもよいし炭化した炭素材料を結着材などで固形化したものとしてもよい。
【0018】
負極集電体13は、導電性を有する部材であり、柱状負極12に電気的に接続されている。この負極集電体13は、蓄電デバイス10の上面側に配設されている。この負極集電体13は、例えば、カーボンペーパー、アルミニウム、銅、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、白金、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化(還元)性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタン、銀、白金、金などで処理したものも用いることができる。負極集電体13の形状は、柱状負極12が接続できるものであれば特に限定されず、例えば、板状、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。
【0019】
分離膜15は、キャリアイオン(例えばリチウムイオン)のイオン伝導性を有し柱状負極12と正極16とを絶縁するものであり、柱状負極12の周囲に設けられている。分離膜15は、正極16と対向する柱状負極12の外周面の全体に形成されており、柱状負極12と正極16との短絡を防止している。この分離膜15は、例えば、樹脂を含む原料溶液から自立膜を作製し、柱状負極12の表面をこの自立膜で被覆させることにより形成されてもよいし、原料溶液へ柱状負極12を浸漬させてその表面にコートすることにより形成されるものとしてもよい。この分離膜15の樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)や、PVdFとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(PVdF-HFP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、及びPMMAとアクリルポリマーとの共重合体などが挙げられる。例えば、PVdFとHFPとの共重合体では、電解液の一部がこの膜を膨潤ゲル化し、イオン伝導膜となる。この分離膜15の厚さは、例えば、2μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、8μm以上であるものとしてもよい。この厚さが2μm以上では、絶縁性を確保する上で好ましい。特に、分離膜15の厚さが2μm以上であれば、作製しやすい。また、分離膜15の厚さは、15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。この厚さが15μm以下では、イオン伝導性の低下を抑制できる点や、セルに占める体積をより低減する上で好ましい。分離膜15の厚さが2~15μmの範囲では、イオン伝導性及び絶縁性が好適である。
【0020】
分離膜15は、キャリアであるイオンを伝導する電解液を含むものとしてもよい。この電解液は、例えば、非水系溶媒などが挙げられる。電解液の溶媒としては、例えば、非水電解液の溶媒などが挙げられる。この溶媒としては、例えば、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート類としてエチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート、エチル-n-ブチルカーボネート、メチル-t-ブチルカーボネート、ジ-i-プロピルカーボネート、t-ブチル-i-プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、γ-ブチルラクトン、γ-バレロラクトンなどの環状エステル類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチルなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、などのフラン類、スルホラン、テトラメチルスルホランなどのスルホラン類、1,3-ジオキソラン、メチルジオキソランなどのジオキソラン類などが挙げられる。この電解液には、蓄電デバイス10のキャリアであるイオンを含む支持塩を溶解したものとしてもよい。支持塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、LiSbF6、LiSiF6、LiAlF4、LiSCN、LiClO4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlCl4などが挙げられる。このうち、LiPF6、LiBF4、LiClO4などの無機塩、及びLiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23などの有機塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の塩を組み合わせて用いることが電気特性の点から見て好ましい。この支持塩は、電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。
【0021】
正極16は、正極活物質を含み、隣合う分離膜15同士の間を埋めるように設けられている。正極16は、正極活物質と、必要に応じて導電材と、結着材とを含むものとしてもよい。正極16は、蓄電デバイス10の作製時において、柱状負極12の外周にコートされて形成されたものとしてもよい(図1参照)。この形状であれば、正極活物質が外周に形成された柱状負極12を結束すると、正極16が柱状負極12の間に充填されやすく好ましい。この正極16は、複数の柱状負極12の間に存在するものとすればよい。正極16は、導電材を含み、それ自体に導電性を有するものとし、集電部材などは省略されているものとしてもよい。正極16には、いずれかの領域に正極集電体17が接続されている。この正極16は、例えば、柱状負極12の外周に分離膜15を形成したのち、その外周に正極16の原料を塗布して形成されたものとしてもよい。
【0022】
正極16は、例えば、正極活物質と、導電材と、必要に応じて結着材とを混合した正極合材からなるものとしてもよい。正極活物質は、例えば、キャリアであるリチウムを吸蔵放出可能な材料が挙げられる。正極活物質としては、例えば、リチウムと遷移金属とを有する化合物、例えば、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物や、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物などが挙げられる。具体的には、基本組成式をLi(1-x)MnO2(0≦x≦1など、以下同じ)やLi(1-x)Mn24などとするリチウムマンガン複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoO2などとするリチウムコバルト複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiO2などとするリチウムニッケル複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoaNibMnc2(a>0、b>0、c>0、a+b+c=1)、Li(1-x)CoaNibMnc4(0<a<1、0<b<1、1≦c<2、a+b+c=2)などとするリチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物、基本組成式をLiV23などとするリチウムバナジウム複合酸化物、基本組成式をV25などとする遷移金属酸化物などを用いることができる。また、基本組成式をLiFePO4とするリン酸鉄リチウム化合物などを正極活物質として用いることができる。これらのうち、リチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物、例えば、LiCo1/3Ni1/3Mn1/32やLiNi0.4Co0.3Mn0.32などが好ましい。なお、「基本組成式」とは、他の元素、例えば、AlやMgなどの成分を含んでもよい趣旨である。
【0023】
正極16に含まれる導電材は、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。正極16は、図1、3に示すように、導電材18としての炭素繊維を含み、炭素繊維が柱状負極12の長径方向に配向していることが好ましい。この正極16では、正極合材内の電子伝導性を向上させることができる。ここで、「配向」とは、炭素繊維が長径bの方向に沿っている趣旨であり、種々の方向に傾いているものが存在していてもよい。正極導電体18は、例えば、本数で40%以上、より好ましくは50%以上が長径bの方向に沿っていればよい。ここで、炭素繊維は、長径方向以外の方向に傾いている炭素繊維でも長径方向に沿っていれば、配向しているものとする。結着材は、活物質粒子や導電材粒子を繋ぎ止めて所定の形状を保つ役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。
【0024】
正極16において、正極活物質の含有量は、より多いことが好ましく、正極16の質量全体に対して70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。導電材の含有量は、正極16の全体の質量に対して0質量%以上20質量%以下の範囲であることが好ましく、0質量%以上10質量%以下の範囲であることがより好ましい。このような範囲では、電池容量の低下を抑制し、導電性を十分に付与することができる。また、結着材の含有量は、正極16の質量全体に対して0.1質量%以上5質量%以下の範囲であることが好ましく、0.2質量%以上3質量%以下の範囲であることがより好ましい。
【0025】
正極集電体17は、導電性を有する部材であり、正極16に電気的に接続されている。この正極集電体17は、蓄電デバイス10の側面側に配設されている。正極集電体17は、導電性の観点から、柱状負極12の長径方向に直交する面に配設されることが好ましい(図1参照)。この正極集電体17は、負極集電体13で挙げられたいずれかの材料や形状を採用することができる。
【0026】
この蓄電デバイス10において、体積エネルギー密度は、より高いことがより好ましく、例えば、400Wh/L以上であることが好ましく、500Wh/L以上であることがより好ましく、600Wh/L以上であることが更に好ましい。また、蓄電デバイス10において、入出力特性としてのレート特性を0.2Cの放電容量に対する3Cの放電容量(3C/0.2C)としたときに、このレート特性は、より高いことが好ましく、0.50以上が好ましく、0.60以上がより好ましく、0.70以上が更に好ましく、0.80以上が最も好ましい。この放電容量は、Li金属を対極とし、Li基準電位で0.005V~1.5Vの電位範囲、0.2C及び3Cの定電流で放電したときの容量をいうものとする。この蓄電デバイス10において、正極活物質の容量に対する負極活物質の容量の比である正負極容量比(負極容量/正極容量)は、1.0以上1.5以下の範囲とすることが好ましく、より好ましくは1.2以下の範囲である。正極16の形成厚さは、柱状負極12の直径D及び正負極容量比に応じて適宜設定されるが、例えば、5μm以上50μm以下の範囲としてもよい。正極16の形成厚さは、例えば、柱状負極12上に形成された部分のうち最大の厚さをいうものとする。
【0027】
以上詳述した実施形態の蓄電デバイス10では、高エネルギー密度と高入出力とを両立することができる。このような効果が得られる理由は、例えば、以下のように推察される。炭素材料を含む柱状負極12では、短径a、長径bとした場合のb/aの平均値が5以上である扁平形状とすることで、イオン拡散距離を短くすることが可能となり、入出力特性を向上させることができるものと推察される。ただし、柱状負極12の単位長さあたりの放電容量や断面積が小さい場合には、セル内の体積における正負極での分離膜15の割合が増加してしまうなどにより、エネルギー密度が低下する。一方、柱状負極12の単位長さあたりの放電容量や断面積が大きい場合には、内部までキャリアイオンを拡散するのに時間を要するため、入出力特性が低下する。このため、柱状負極の単位長さあたりの放電容量が0.05mAh/cm以上1.0mAh/cm以下の範囲や、断面積が0.005mm2以上0.4mm2以下の範囲となるように柱状負極12の形状を制御することで、上記のエネルギー密度の低下や入出力特性の低下をより抑制し、高エネルギー密度と高入出力とを両立した蓄電デバイスを提供することができる。特に、柱状負極12を上記範囲の放電容量や断面積の扁平形状とすることによって、円柱状の柱状負極を結束した電極構造体の長所と、シート状の電極構造体の長所とを両立することができるものと推察される。
【0028】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0029】
例えば、上述した実施形態では、蓄電デバイスのキャリアをリチウムイオンとしたが、特にこれに限定されず、ナトリウムイオンやカリウムイオンなどのアルカリ金属イオン、カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの2族元素イオンとしてもよい。また、正極活物質は、キャリアのイオンを含むものとすればよい。また、電解液を非水系電解液としたが、水溶液系電解液としてもよい。
【0030】
上述した実施形態では、正極活物質を遷移金属複合酸化物としたが、特に限定されず、例えば、キャパシタに用いられる炭素材料としてもよい。炭素材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、活性炭類、コークス類、ガラス状炭素類、黒鉛類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維類、カーボンナノチューブ類、ポリアセン類などが挙げられる。このうち、高比表面積を示す活性炭類が好ましい。炭素材料としての活性炭は、比表面積が1000m2/g以上であることが好ましく、1500m2/g以上であることがより好ましい。比表面積が1000m2/g以上では、放電容量をより高めることができる。この活性炭の比表面積は、作製の容易性から3000m2/g以下であることが好ましく、2000m2/g以下であることがより好ましい。なお、正極では、イオン伝導媒体に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を吸着、脱離して蓄電するものと考えられるが、さらに、イオン伝導媒体に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を挿入、脱離して蓄電するものとしてもよい。
【実施例
【0031】
以下には、上述した蓄電デバイスを具体的に作製した例を実験例として説明する。蓄電デバイスの構造及び性能を考察した結果を説明する。なお、実験例1~8が本開示の実施例であり、実験例9~11が比較例に相当する。
【0032】
(実験例1)
柱状電極を作製した。まず、炭素繊維ヤーン(日本グラファイトファイバー製YS-90A-10S、直径d=7μm)を1000本用意し、適当な長さに切断したのち、N-メチルピロリドン(NMP)に溶解させたポリフッ化ビニリデン(PVdF)溶液を含むノズルを通過させた。その後、ロールで展伸し、乾燥して溶媒を除去することで断面構造を扁平化した炭素繊維結束体を得た(実験例1)。実験例1~11において、ノズル通過後の結束体に対しロールで展伸する条件を調整することによって、扁平形状のアスペクト比b/aを制御した。
【0033】
(炭素繊維結束体の柱状負極のSEM観察)
炭素繊維結束体の柱状負極の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。SEM観察は、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製S-3600N)を用いて、10kV、倍率150で行った。観察結果として、断面積(mm2)、および短径a(μm)と長径b(μm)を求めた。測定は、5点行い、平均値として求めた。実験例1は、短径aが110μm、長径bが660μm、断面積が0.057mm2であった。
【0034】
(実験例2~8)
炭素繊維の本数を350本、短径aを70μm、長径bを350μmとした以外は実験例1と同様に作製したものを実験例2とした。炭素繊維の本数を3500本、短径aを230μm、長径bを1150μmとした以外は実験例1と同様に作製したものを実験例3とした。炭素繊維の本数を350本、短径aを60μm、長径bを420μmとした以外は実験例1と同様に作製したものを実験例4とした。炭素繊維の本数を3500本、短径aを190μm、長径bを1330μmとした以外は実験例1と同様に作製したものを実験例5とした。炭素繊維の本数を350本、短径aを50μm、長径bを500μmとした以外は実験例1と同様に作製したものを実験例6とした。炭素繊維の本数を3500本、短径aを160μm、長径bを1600μmとした以外は実験例1と同様に作製したものを実験例7とした。炭素繊維の本数を3500本、短径aを30μm、長径bを1800μmとした以外は実験例1と同様に作製したものを実験例8とした。
【0035】
(実験例9~11)
炭素繊維の本数を1000本、短径aを270μm、長径bを270μmの円柱形とした以外は実験例1と同様に作製したものを実験例9とした。炭素繊維の本数を75本、短径aを30μm、長径bを180μmとした以外は実験例1と同様に作製したものを実験例10とした。炭素繊維の本数を7500本、短径aを300μm、長径bを1800μmとした以外は実験例1と同様に作製したものを実験例11とした。
【0036】
(炭素繊維結束体の柱状負極のハーフセル充放電評価)
炭素繊維結束体の柱状負極の両端をAgペーストを介してNiタブに接続したのち、ポリエチレンセパレータおよび対極となる金属リチウム箔を炭素繊維結束体の周囲に配置した。Li基準電位で0.005V~1.5Vの電位範囲でコンディショニング充放電を行い放電容量を評価したあと、0.2C及び3Cで定電流放電容量を測定し、0.2Cの定電流放電容量に対する3Cの定電流放電容量(上限Li基準電位で1V)の比率を測定した。なお、柱状負極は、総長さを6cm、金属リチウム箔との対向部の長さを4cmとしてハーフセルを作製した。
【0037】
(セルエネルギー密度の試算)
炭素繊維結束体の柱状負極のサイズから、分離膜の厚さを20(μm)、正極合材密度を2.8(g/cm3)、正負極容量比を1.05に統一した際のセルのエネルギー密度を試算した。実験例9を100として、各サンプルの値を規格化した。
【0038】
(結果と考察)
図4は、実験例9(図4A)及び実験例1(図4B)の断面のSEM写真である。図5は、実験例9の0.2C及び3Cでの放電曲線(図5A)及び実験例1の0.2C及び3Cでの放電曲線(図5B)である。また、実験例1~11の短径a(μm)、長径b(μm)、アスペクト比b/a、繊維本数(本)、断面積(mm2)、柱状負極の単位長さあたりの放電容量(mAh/cm)、レート特性(3C/0.2C)、エネルギー密度の相対値をまとめて示した。エネルギー密度は、実験例9を100として各値を規格化した。
【0039】
表1に示すように、実験例1~8の扁平状の炭素繊維結束体を柱状負極とすると、レート特性が円柱状の実験例9に比して高いレート特性を示した。また、実験例1~8では、実験例9と同等のエネルギー密度を示した。特に、扁平状の柱状負極において、単位長さあたりの放電容量が0.05mAh/cm以上1.0mAh/cm以下であるものや、断面積が0.005mm2以上0.4mm2以下の範囲であり、アスペクト比b/aが5以上60以下の柱状負極(実験例1~8)において、高エネルギー密度と高入出力を両立することができることがわかった。この効果は、例えば、扁平な形状を有することによって、イオン拡散経路が短縮されるため、入出力の特性が向上し、更に分離膜を有する柱状負極を配列した構造によって、体積割合が低減されて高エネルギー密度を示すものと推察された。一方、単位長さあたりの放電容量が0.05mAh/cm未満であり、断面積が0.005mm2未満の実験例10では、アスペクト比b/aが扁平であってもサイズが小さすぎるため、扁平である効果が発揮できなかった。また、単位長さあたりの放電容量が1.0mAh/cmを超え、断面積が0.4mm2以を超える実験例11では、アスペクト比b/aが扁平であっても、サイズが大きすぎるため、上記効果を得られないことがわかった。
【0040】
表1に示すように、b/aが6以上10以下の範囲では高エネルギー密度と高入出力との両立がより良好であった。また、短径aは20μm~250μm、長径bは200μm~1900μmの範囲が好ましく、直径dが7μmの炭素繊維においては、炭素繊維の本数が200本~5000本の範囲が好ましいことが示唆された。柱状負極の断面積は、0.015mm2以上0.25mm2以下の範囲がより好ましく、柱状負極の放電容量は、0.08mAh/cm以上0.9mAh/cm以下の範囲がより好ましいことが示唆された。
【0041】
【表1】
【0042】
(炭素繊維結束体の柱状負極を用いた蓄電デバイスの抵抗率評価:実験例12)
実験例1の柱状負極を用いて蓄電デバイスを作製し、抵抗率の評価を行った。実験例1の柱状負極に対し、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP)をN-メチルピロリドン(NMP)に溶解させた溶液をディップ法で被覆、乾燥することで、5μmの膜厚で負極の表面に分離膜としてのポリマー膜を均一塗布した。次に、正極活物質(LiNi0.5Co0.2Mn0.32)と、導電材としての高結晶性炭素繊維(日本グラファイトファイバー製XN-90-60S:繊維径10μm、平均繊維長200μm)と、導電材としての気相成長炭素繊維(昭和電工製VGCF)と、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(クレハ製PVdF7305)とを質量比で90:4:2:4となるよう配合したものにN-メチルピロリドンを加えて正極合材ペーストとした。上記のポリマー被覆負極の長径方向に導電材の炭素繊維が配向するように、正極スラリーをポリマー被覆負極の表面に塗布して、正極合材の厚さが35μmとなるように正極合材層を形成した。このように作製した負極/ポリマー膜/正極合材層の単セルを12列×7行でオフセット状に積層し(図3参照)、静水圧プレスを用いてプレスすることで、電極構造体を得た。この電極構造体をケースに収容し、配向した正極導電材の炭素繊維に直交する方向の端面(図1参照)に正極集電体としてのAl箔(厚さ100μm)を貼付し、正極から露出した柱状負極の先端側に負極集電体としての銅箔(厚さ100μm)を貼付し、押厚して固着させた。このケースに非水電解液を注液して封止することにより得られた蓄電デバイスを実験例12とした。非水電解液には、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)を体積比で30/40/30で混合した混合溶媒に、LiPF6を1Mの濃度で溶解させたものを用いた。
【0043】
(実験例13、14)
正極集電体としてのAl箔を、正極導電材としての炭素繊維に沿った面(図1の正面側)に貼付した以外は、実験例12と同様に作製したものを実験例13の蓄電デバイスとした。また、正極導電材の炭素繊維の代わりに導電材としてのアセチレンブラック(デンカ社製HS-100)を用いた以外は、実験例13と同様に作製したものを実験例14とした。
【0044】
(蓄電デバイスの測定結果と考察:実験例12~14)
実験例12の正極表面の5点をSEM観察し、炭素繊維の配向性を求めた。1視野での炭素繊維の全本数に対する、柱状負極の長径方向(水平方向)に傾き角度が±30°以内である本数を求めこれの平均値を配向度とした。実験例12の配向度は、65%であった。また、4端子法を用いて抵抗率を測定したところ、実験例12は、実験例13の半分の抵抗率であった。また、実験例14は、実験例13の4倍の抵抗率を示した。この結果より、正極導電材は、炭素繊維が好ましく、柱状負極の長径方向に配向させることが好ましいことがわかった。また、正極集電体は、配向した正極導電材としての炭素繊維の配向端面に配設することがより好ましいことがわかった。
【0045】
なお、本開示は上述した実施例に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0046】
10 蓄電デバイス、11 単セル、12 柱状負極、13 負極集電体、14 炭素繊維、15 分離膜、16 正極、17 正極集電体、18 導電材、a 短径、b 長径、d 直径。
図1
図2
図3
図4
図5