(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/113 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
G03G9/113 362
G03G9/113 351
(21)【出願番号】P 2020042288
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉原 宏太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤田 麻史
(72)【発明者】
【氏名】八和田 鉄兵
(72)【発明者】
【氏名】坂井 素子
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-203292(JP,A)
【文献】特開2019-184831(JP,A)
【文献】特開2009-116319(JP,A)
【文献】特開2010-169840(JP,A)
【文献】特開平04-116663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粒子と、
前記磁性粒子を被覆し、潤滑剤を含有する樹脂層と、を有し、
前記樹脂層が、前記潤滑剤の分散相を有し、且つ下記の要件(1)を満足
し、
下記上層の潤滑剤含有率と下記中層の潤滑剤含有率との比の値(上層/中層)が1.5以上4.0以下である、
静電荷像現像用キャリア。
要件(1):上層の潤滑剤含有率>中層の潤滑剤含有率>下層の潤滑剤含有率
ここに、上層、中層及び下層は、前記樹脂層を厚さ方向に3分割したときの各層であり、潤滑剤含有率は、各層の厚さ方向の断面における前記潤滑剤の分散相の面積率である。
【請求項2】
磁性粒子と、
前記磁性粒子を被覆し、潤滑剤を含有する樹脂層と、を有し、
前記樹脂層が、前記潤滑剤の分散相を有し、且つ下記の要件(1)
及び要件(2)を満足する、
静電荷像現像用キャリア。
要件(1):上層の潤滑剤含有率>中層の潤滑剤含有率>下層の潤滑剤含有率
要件(2):上層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径>中層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径>下層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径
ここに、上層、中層及び下層は、前記樹脂層を厚さ方向に3分割したときの各層であり、潤滑剤含有率は、各層の厚さ方向の断面における前記潤滑剤の分散相の面積率であ
り、潤滑剤の分散相の平均長径は、各層に含まれる前記潤滑剤の分散相の長径の算術平均である。
【請求項3】
磁性粒子と、
前記磁性粒子を被覆し、潤滑剤を含有する樹脂層と、を有し、
前記樹脂層が、前記潤滑剤の分散相を有し、且つ下記の要件(1)を満足
し、
前記樹脂層に含まれる前記潤滑剤の分散相のアスペクト比(長径/短径)の平均値が1.2以上2.5以下である、
静電荷像現像用キャリア。
要件(1):上層の潤滑剤含有率>中層の潤滑剤含有率>下層の潤滑剤含有率
ここに、上層、中層及び下層は、前記樹脂層を厚さ方向に3分割したときの各層であり、潤滑剤含有率は、各層の厚さ方向の断面における前記潤滑剤の分散相の面積率である。
【請求項4】
磁性粒子と、
前記磁性粒子を被覆し、潤滑剤を含有する樹脂層と、を有し、
前記樹脂層が、前記潤滑剤の分散相を有し、且つ下記の要件(1)を満足
し、
下記上層の潤滑剤含有率が20%以上60%以下であり、
下記中層の潤滑剤含有率が10%以上50%以下である、
静電荷像現像用キャリア。
要件(1):上層の潤滑剤含有率>中層の潤滑剤含有率>下層の潤滑剤含有率
ここに、上層、中層及び下層は、前記樹脂層を厚さ方向に3分割したときの各層であり、潤滑剤含有率は、各層の厚さ方向の断面における前記潤滑剤の分散相の面積率である。
【請求項5】
前記上層の潤滑剤含有率と前記中層の潤滑剤含有率との比の値(上層/中層)が2.0以上2.5以下である、請求項
1に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項6】
前記上層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径と前記中層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径との比の値(上層/中層)が1.0以上2.0以下である、請求項
2に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項7】
前記上層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径と前記中層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径との比の値(上層/中層)が1.2以上1.5以下である、請求項
6に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項8】
前記樹脂層に含まれる前記潤滑剤の分散相のアスペクト比(長径/短径)の平均値が1.2以上1.5以下である、請求項
3に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項9】
前記上層の潤滑剤含有率が30%以上50%以下であり、
前記中層の潤滑剤含有率が10%以上30%以下である、
請求項
4に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項10】
前記樹脂層の平均厚が0.3μm以上10μm以下である、請求項1~請求項
9のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項11】
前記潤滑剤が脂肪酸金属塩及び層状構造化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~請求項
10のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項12】
前記樹脂層が脂環構造を有する(メタ)アクリル樹脂を含有する、請求項1~請求項
11のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項13】
請求項1~請求項
12のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリアと、静電荷像現像用トナーと、を含む静電荷像現像剤。
【請求項14】
請求項
13に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【請求項15】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
請求項
13に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、
を備える画像形成装置。
【請求項16】
像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
請求項
13に記載の静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、
を有する画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、磁性粒子と、磁性粒子表面を被覆する被覆層と、磁性粒子及び被覆層からなるキャリア母粒子表面に付着した潤滑剤を含む粒子とを有し、潤滑剤を含む粒子の体積平均粒径がキャリア母粒子の体積平均粒径の1/50以上1/3以下の範囲内である静電荷現像用キャリアが開示されている。
特許文献2には、脂肪酸金属塩を含むシリコン樹脂被覆層を有する電子写真用キャリアが開示されている。
特許文献3には、ドメイン-マトリックス構造を有し脂肪酸金属塩を含有した樹脂組成物で被覆された電子写真用キャリアが開示されている。
特許文献4には、導電性球状粒子及び潤滑剤粒子を含有した樹脂被覆層を有する電子写真用キャリアが開示されている。
特許文献5には、非磁性粒子を含有する内側樹脂コート層と外側樹脂コート層とを備える電子写真用キャリアが開示されている。
特許文献6には、脂肪酸金属塩を含有する樹脂被覆層であって、芯材粒子側に含まれる脂肪酸金属塩量が表面側に含まれる脂肪酸金属塩量よりも多い樹脂被覆層を設けた電子写真用キャリアが開示されている。
特許文献7には、脂肪酸金属塩と金属酸化物粒子とを含むコート層を備える電子写真用キャリアが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-304772号公報
【文献】特開昭64-33559号公報
【文献】特開平5-61261号公報
【文献】特開平10-333363号公報
【文献】特開2007-121911号公報
【文献】特開2012-203292号公報
【文献】特開2019-184831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、磁性粒子と当該磁性粒子を被覆し潤滑剤を含有する樹脂層とを有する静電荷像現像用キャリアであって、樹脂層の上層、中層及び下層の潤滑剤含有率が上層<中層<下層の関係である静電荷像現像用キャリアに比べて、長期にわたり像保持体の偏摩耗を抑制する静電荷像現像用キャリアを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段には、下記の態様が含まれる。
【0006】
<1> 磁性粒子と、
前記磁性粒子を被覆し、潤滑剤を含有する樹脂層と、を有し、
前記樹脂層が、前記潤滑剤の分散相を有し、且つ下記の要件(1)を満足する、
静電荷像現像用キャリア。
要件(1):上層の潤滑剤含有率>中層の潤滑剤含有率>下層の潤滑剤含有率
ここに、上層、中層及び下層は、前記樹脂層を厚さ方向に3分割したときの各層であり、潤滑剤含有率は、各層の厚さ方向の断面における前記潤滑剤の分散相の面積率である。
<2> 前記上層の潤滑剤含有率と前記中層の潤滑剤含有率との比の値(上層/中層)が1.5以上4.0以下である、<1>に記載の静電荷像現像用キャリア。
<3> 前記上層の潤滑剤含有率と前記中層の潤滑剤含有率との比の値(上層/中層)が2.0以上2.5以下である、<2>に記載の静電荷像現像用キャリア。
<4> 前記樹脂層がさらに下記の要件(2)を満足する、<1>~<3>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリア。
要件(2):上層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径>中層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径>下層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径
ここに、上層、中層及び下層は、前記樹脂層を厚さ方向に3分割したときの各層であり、潤滑剤の分散相の平均長径は、各層に含まれる前記潤滑剤の分散相の長径の算術平均である。
<5> 前記上層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径と前記中層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径との比の値(上層/中層)が1.0以上2.0以下である、<4>に記載の静電荷像現像用キャリア。
<6> 前記上層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径と前記中層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径との比の値(上層/中層)が1.2以上1.5以下である、<5>に記載の静電荷像現像用キャリア。
<7> 前記樹脂層に含まれる前記潤滑剤の分散相のアスペクト比(長径/短径)の平均値が1.2以上2.5以下である、<1>~<6>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリア。
<8> 前記樹脂層に含まれる前記潤滑剤の分散相のアスペクト比(長径/短径)の平均値が1.2以上1.5以下である、<7>に記載の静電荷像現像用キャリア。
<9> 前記上層の潤滑剤含有率が20%以上60%以下であり、前記中層の潤滑剤含有率が10%以上50%以下である、<1>~<8>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリア。
<10> 前記上層の潤滑剤含有率が30%以上50%以下であり、前記中層の潤滑剤含有率が10%以上30%以下である、<9>に記載の静電荷像現像用キャリア。
<11> 前記樹脂層の平均厚が0.3μm以上10μm以下である、<1>~<10>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリア。
<12> 前記潤滑剤が脂肪酸金属塩及び層状構造化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、<1>~<11>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリア。
<13> 前記樹脂層が脂環構造を有する(メタ)アクリル樹脂を含有する、<1>~<12>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリア。
<14> <1>~<13>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリアと、静電荷像現像用トナーと、を含む静電荷像現像剤。
<15> <14>に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
<16> 像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
<14>に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、
を備える画像形成装置。
<17> 像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
<14>に記載の静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、
を有する画像形成方法。
【発明の効果】
【0007】
<1>、<9>、<10>、<11>、<12>又は<13>に係る発明によれば、磁性粒子と当該磁性粒子を被覆し潤滑剤を含有する樹脂層とを有する静電荷像現像用キャリアであって、樹脂層の上層、中層及び下層の潤滑剤含有率が上層<中層<下層の関係である静電荷像現像用キャリアに比べて、長期にわたり像保持体の偏摩耗を抑制する静電荷像現像用キャリアが提供される。
<2>に係る発明によれば、上層の潤滑剤含有率と中層の潤滑剤含有率との比の値(上層/中層)が1.5未満又は4.0超である場合に比べて、長期にわたり像保持体の偏摩耗を抑制する静電荷像現像用キャリアが提供される。
<3>に係る発明によれば、上層の潤滑剤含有率と中層の潤滑剤含有率との比の値(上層/中層)が2.0未満又は2.5超である場合に比べて、長期にわたり像保持体の偏摩耗を抑制する静電荷像現像用キャリアが提供される。
<4>に係る発明によれば、樹脂層の上層、中層及び下層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径が等しい静電荷像現像用キャリアに比べて、長期にわたり像保持体の偏摩耗を抑制する静電荷像現像用キャリアが提供される。
<5>に係る発明によれば、上層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径と中層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径との比の値(上層/中層)が1.0未満又は2.0超である場合に比べて、長期にわたり像保持体の偏摩耗を抑制する静電荷像現像用キャリアが提供される。
<6>に係る発明によれば、上層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径と中層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径との比の値(上層/中層)が1.2未満又は1.5超である場合に比べて、長期にわたり像保持体の偏摩耗を抑制する静電荷像現像用キャリアが提供される。
<7>に係る発明によれば、樹脂層に含まれる潤滑剤の分散相のアスペクト比(長径/短径)の平均値が1.2未満又は2.5超である場合に比べて、長期にわたり像保持体の偏摩耗を抑制する静電荷像現像用キャリアが提供される。
<8>に係る発明によれば、樹脂層に含まれる潤滑剤の分散相のアスペクト比(長径/短径)の平均値が1.2未満又は1.5超である場合に比べて、長期にわたり像保持体の偏摩耗を抑制する静電荷像現像用キャリアが提供される。
【0008】
<14>に係る発明によれば、磁性粒子と当該磁性粒子を被覆し潤滑剤を含有する樹脂層とを有する静電荷像現像用キャリアであって、樹脂層の上層、中層及び下層の潤滑剤含有率が上層<中層<下層の関係である静電荷像現像用キャリアを適用する場合に比べて、長期にわたり像保持体の偏摩耗を抑制する静電荷像現像剤が提供される。
<15>に係る発明によれば、磁性粒子と当該磁性粒子を被覆し潤滑剤を含有する樹脂層とを有する静電荷像現像用キャリアであって、樹脂層の上層、中層及び下層の潤滑剤含有率が上層<中層<下層の関係である静電荷像現像用キャリアを適用する場合に比べて、長期にわたり像保持体の偏摩耗を抑制するプロセスカートリッジが提供される。
<16>に係る発明によれば、磁性粒子と当該磁性粒子を被覆し潤滑剤を含有する樹脂層とを有する静電荷像現像用キャリアであって、樹脂層の上層、中層及び下層の潤滑剤含有率が上層<中層<下層の関係である静電荷像現像用キャリアを適用する場合に比べて、長期にわたり像保持体の偏摩耗を抑制する画像形成装置が提供される。
<17>に係る発明によれば、磁性粒子と当該磁性粒子を被覆し潤滑剤を含有する樹脂層とを有する静電荷像現像用キャリアであって、樹脂層の上層、中層及び下層の潤滑剤含有率が上層<中層<下層の関係である静電荷像現像用キャリアを適用する場合に比べて、長期にわたり像保持体の偏摩耗を抑制する画像形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係るキャリアの樹脂層を説明するための模式的断面図である。
【
図3】本実施形態に係るキャリアの樹脂層における上層、中層及び下層を説明するための模式的断面図である。
【
図4】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【
図5】本実施形態に係る画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0011】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0012】
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0013】
本開示において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0014】
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0015】
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
【0016】
本開示において「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方を意味する。
【0017】
本開示において、「静電荷像現像用トナー」を「トナー」ともいい、「静電荷像現像用キャリア」を「キャリア」ともいい、「静電荷像現像剤」を「現像剤」ともいう。
【0018】
<静電荷像現像用キャリア>
本実施形態に係るキャリアは、磁性粒子と、磁性粒子を被覆し潤滑剤を含有する樹脂層と、を有し、樹脂層が潤滑剤の分散相を有する。樹脂層に含まれる潤滑剤の分散相の諸量を、
図1及び
図2を用いて説明する。
【0019】
図1は、キャリアの断面を模式的に示した図である。
図1に示すキャリア40は、磁性粒子50と、磁性粒子50を被覆する樹脂層60とを有する。樹脂層60は、潤滑剤を含有しており、潤滑剤の分散相60aを含む。
本実施形態に係るキャリアは、
図1に示すように磁性粒子50の全体が樹脂層60に被覆されていてもよく、磁性粒子50の一部が樹脂層60に被覆されていてもよい(言い換えると、磁性粒子50の一部が露出していてもよい。)。
【0020】
図2は、
図1の一部の拡大図であり、磁性粒子50及び樹脂層60の一部を示す。
図2において樹脂層60の内部の破線は、樹脂層60を厚さ方向に3分割した位置を示し(3分割の仕方については後述する。)、樹脂層60の表面側から順に、上層62、中層64、下層66である。
樹脂層60は、潤滑剤の分散相60aを含む。分散相60aは、分散相62a、分散相63a、分散相64a、分散相65a、分散相66a及び分散相67aからなる。分散相62aは、上層62に含まれる潤滑剤の分散相である。分散相63aは、上層62及び中層64にまたがって含まれる潤滑剤の分散相である。分散相64aは、中層64に含まれる潤滑剤の分散相である。分散相65aは、中層64及び下層66にまたがって含まれる潤滑剤の分散相である。分散相66aは、下層66に含まれる潤滑剤の分散相である。分散相67aは、上層62、中層64及び下層66にまたがって含まれる潤滑剤の分散相である。
【0021】
上層62の潤滑剤含有率は、上層62の面積全体に対する、上層62に含まれる分散相の面積率(%)である。上層62に含まれる分散相の面積は、分散相62aの面積と、分散相63aのうち上層62に含まれている部分の面積と、分散相67aのうち上層62に含まれている部分の面積との合計である。
中層64の潤滑剤含有率は、中層64の面積全体に対する、中層64に含まれる分散相の面積率(%)である。中層64に含まれる分散相の面積は、分散相64aの面積と、分散相63aのうち中層64に含まれている部分の面積と、分散相65aのうち中層64に含まれている部分の面積と、分散相67aのうち中層64に含まれている部分の面積との合計である。
下層66の潤滑剤含有率は、下層66の面積全体に対する、下層66に含まれる分散相の面積率(%)である。下層66に含まれる分散相の面積は、分散相66aの面積と、分散相65aのうち下層66に含まれている部分の面積と、分散相67aのうち下層66に含まれている部分の面積との合計である。
【0022】
上層62に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径は、分散相62aの各長径の算術平均である。
中層64に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径は、分散相64aの各長径の算術平均である。
下層66に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径は、分散相66aの各長径の算術平均である。
各層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径を求めるとき、2層又は3層にまたがって存在する分散相である分散相63a、分散相65a及び分散相67aは対象外とする。
【0023】
樹脂層60に含まれる潤滑剤の分散相のアスペクト比は、潤滑剤の分散相60a(すなわち、分散相62a、分散相63a、分散相64a、分散相65a、分散相66a及び分散相67a)を対象とし、各分散相のアスペクト比(長径/短径)を算術平均して求める。
【0024】
次に、樹脂層の諸量及び潤滑剤の分散相の諸量の測定方法を説明する。
【0025】
測定用の試料及び画像は、下記の方法により調製する。
キャリアをエポキシ樹脂に混合して、エポキシ樹脂を固化する。得られた固化物を、ウルトラミクロトーム装置により切断し、厚さ100nm以上200nm以下の薄片試料を作製する。薄片試料を超高分解能電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)(例えば日立ハイテクノロジーズ社製S-4800)にて撮像しSEM画像を得る。SEM画像について、画像解析ソフト(WinROOF2015、三谷商事株式会社)を用いて画像解析を行う。
一般的に、潤滑剤と、樹脂層の連続相を構成する樹脂成分とは、輝度差(コントラスト)があるので、潤滑剤の分散相の輪郭を判別することができる。輝度差によっては潤滑剤の分散相の輪郭の判別が難しい場合は、薄片試料をデシケータ内で四酸化ルテニウムにより染色して、SEM画像を撮像する。上記染色によっても潤滑剤の分散相の輪郭の判別が難しい場合は、薄片試料断面の金属元素マッピングを行って潤滑剤の分散相の輪郭を判別する。
【0026】
前記SEM画像には様々な大きさのキャリア粒子断面が含まれるところ、径がキャリアの体積平均粒径の85%以上であるキャリア粒子断面を選択し、その中から無作為に100個のキャリア粒子断面を選択し、これを観察する。ここで、キャリア粒子断面の径とは、キャリア粒子断面の輪郭線上の任意の2点間の距離の最大値(いわゆる絶対最大長)をいう。
上記のとおりにキャリア粒子断面を選択する理由は、径が体積平均粒径の85%未満の断面はキャリア粒子端部の断面であると予測されるところ、キャリア粒子端部の断面には、樹脂層に含まれる分散相の状態がよく反映されていないからである。
100個のキャリア粒子断面は、樹脂層の諸量と潤滑剤の分散相の諸量とを求めることにおいて共通の観察対象である。
【0027】
樹脂層の平均厚は、キャリア粒子1個あたり100箇所を無作為に選んで樹脂層の厚さ(μm)を測定して求める。キャリア粒子それぞれの樹脂層の平均厚(μm)は、100箇所の算術平均であり、キャリア粒子全体の樹脂層の平均厚(μm)は、さらにキャリア粒子100個を算術平均した値である。
【0028】
樹脂層の上層、中層及び下層は、下記のとおり決定する。
キャリア粒子それぞれの重心を求める。重心は、キャリア粒子の断面(磁性粒子及び樹脂層からなる領域)の面積重心であり、画像解析ソフトによって求める。
樹脂層表面の各点とキャリア粒子の重心とを結ぶ線上において、樹脂層の平均厚に基づき3分割する。樹脂層表面から平均厚の3分の1までを上層とし、平均厚の3分の1から3分の2までを中層とし、平均厚の3分の2から磁性粒子表面までを下層とする。ここでの樹脂層の平均厚は、キャリア粒子それぞれの樹脂層の平均厚である。
磁性粒子が露出している周囲(樹脂層が比較的薄い部位)においては、中層及び下層がなくてよく、磁性粒子の凹部(樹脂層が比較的厚い部位)においては、下層が上層及び中層に比べて厚くてよい。
図3に、磁性粒子50が露出している近傍の樹脂層60、上層62、中層64及び下層66を模式的に示す。
樹脂層の上層、中層及び下層の各面積は、画像解析ソフトによって求める。
【0029】
潤滑剤の分散相は、樹脂層に見出されるすべてを観察対象とする。
潤滑剤の分散相の面積は、画像解析ソフトによって求める。
潤滑剤の分散相の長径は、分散相の輪郭線上の任意の2点間の距離の最大値(いわゆる絶対最大長)(μm)である。キャリア粒子全体の潤滑剤の分散相の長径(μm)は、キャリア粒子100個の樹脂層に見出されるすべての潤滑剤の分散相の長径を算術平均した値である。
潤滑剤の分散相の短径は、分散相をその長径に平行な2直線で挟んだときの2直線間の距離(μm)である。キャリア粒子全体の潤滑剤の分散相の短径(μm)は、キャリア粒子100個の樹脂層に見出されるすべての潤滑剤の分散相の短径を算術平均した値である。
潤滑剤の分散相のアスペクト比は、分散相の長径(μm)を分散相の短径(μm)で除算した値(長径/短径)である。キャリア粒子全体における潤滑剤の分散相のアスペクト比の平均値は、キャリア粒子100個の樹脂層に見出されるすべての潤滑剤の分散相のアスペクト比を算術平均した値である。
【0030】
以下、本実施形態に係るキャリアの特徴を説明する。
本実施形態に係るキャリアは、要件(1)を満足する。
要件(1):上層の潤滑剤含有率>中層の潤滑剤含有率>下層の潤滑剤含有率
ここに、上層、中層及び下層は、樹脂層を厚さ方向に3分割したときの各層であり、潤滑剤含有率は、各層の厚さ方向の断面における前記潤滑剤の分散相の面積率である。
【0031】
本実施形態に係るキャリアは、要件(1)を満足することにより、長期にわたり像保持体の偏摩耗を抑制する。その理由として、下記のことが推測される。
【0032】
従来、潤滑剤をトナー粒子に外添して像保持体表面に潤滑剤を付与する技術が知られている。この技術によると、画像の形成頻度が相対的に低い像保持体端部(像保持体の軸方向の両端)への潤滑剤付与量が相対的に少なく、像保持体端部が摩耗しやすい。そして、像保持体端部で画像を形成したとき、像保持体端部によって形成される画像に画像欠陥(例えば、かぶり、白抜け、黒点)が発生することがある。
これに対し、潤滑剤をキャリア表面に付着させて又はキャリアの樹脂層に内添して像保持体表面に潤滑剤を付与する技術がある。キャリアは、現像手段表面に軸方向全体にわたって付着し、像保持体の軸方向全体にわたって像保持体表面に接触するので、像保持体端部の偏摩耗を抑制することができる。
しかし、潤滑剤をキャリア表面に付着させた場合は、潤滑剤が比較的初期に消費されてしまい、像保持体の摩耗抑制の効果が比較的短期しか得られない。また、潤滑剤をキャリアの樹脂層に内添した場合は、比較的初期に像保持体の摩耗を抑制する効果が得られなかったり、樹脂層が磁性粒子から剥がれてキャリアの劣化が早まったりすることがある。
これに対し、本実施形態に係るキャリアは、樹脂層における潤滑剤の分散相について要件(1)の勾配を作ることによって、下記(a)~(d)の効果を奏すると推測される。
(a)上層の潤滑剤含有率が、中層の潤滑剤含有率及び下層の潤滑剤含有率よりも高いことにより、比較的初期から像保持体表面に潤滑剤が付与されて被膜を形成し、像保持体の摩耗が抑制される。
(b)中層の潤滑剤含有率が、上層の潤滑剤含有率に次いで高いことにより、画像形成の繰り返しに従って上層が摩耗した後でも、像保持体表面に潤滑剤が付与され、像保持体の摩耗が抑制される。
(c)下層の潤滑剤含有率が、中層の潤滑剤含有率及び上層の潤滑剤含有率よりも低いことにより、樹脂層が磁性粒子から剥がれにくく、キャリアからの像保持体表面への潤滑剤付与が維持され、像保持体の摩耗抑制が維持される。
(d)キャリアから像保持体への潤滑剤付与であるので、像保持体の軸方向全体に潤滑剤が行き渡り、偏摩耗が抑制される。
上記(a)~(d)があいまって、本実施形態に係るキャリアは、長期にわたり像保持体の偏摩耗を抑制すると推測される。
【0033】
上層の潤滑剤含有率は、20%以上70%以下が好ましく、20%以上60%以下がより好ましく、25%以上50%以下が更に好ましく、30%以上50%以下が更に好ましい。
中層の潤滑剤含有率は、10%以上60%以下が好ましく、10%以上50%以下がより好ましく、10%以上35%以下が更に好ましく、10%以上30%以下が更に好ましい。
下層の潤滑剤含有率は、0%以上35%以下が好ましく、0%以上30%以下がより好ましく、0%以上25%以下が更に好ましく、0%以上20%以下が更に好ましい。
【0034】
上層の潤滑剤含有率と中層の潤滑剤含有率との比の値(上層/中層)は、1.5以上4.0以下が好ましく、1.8以上4.0以下がより好ましく、2.0以上3.0以下が更に好ましく、2.0以上2.5以下が更に好ましい。
【0035】
樹脂層全体の潤滑剤含有率は、20%以上50%以下が好ましく、30%以上50%以下がより好ましく、40%以上50%以下が更に好ましい。
【0036】
本実施形態に係るキャリアは、さらに要件(2)を満足することが好ましい。
要件(2):上層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径>中層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径>下層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径
ここに、上層、中層及び下層は、樹脂層を厚さ方向に3分割したときの各層であり、潤滑剤の分散相の平均長径は、各層に含まれる潤滑剤の分散相の長径の算術平均である。
【0037】
要件(2)の勾配を作ることによって、先述の(a)~(c)がより効率的に発現され、長期にわたり像保持体の偏摩耗を抑制すると推測される。
【0038】
各層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径は、潤滑剤が脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸亜鉛)の場合は、下記の範囲であることが好ましい。
上層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径は、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1.0μm以上が更に好ましく、また、2.5μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましく、1.8μm以下が更に好ましい。
中層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径は、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1.0μm以上が更に好ましく、また、2.0μm以下が好ましく、1.8μm以下がより好ましく、1.5μm以下が更に好ましい。
下層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径は、0.1μm以上が好ましく、0.3μm以上がより好ましく、0.5μm以上が更に好ましく、また、2.0μm以下が好ましく、1.8μm以下がより好ましく、1.5μm以下が更に好ましい。
樹脂層全体において潤滑剤の分散相の平均長径は、0.5μm以上2.0μm以下が好ましく、1.0μm以上1.8μm以下がより好ましく、1.2μm以上1.5μm以下が更に好ましい。
【0039】
各層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径は、潤滑剤が層状構造化合物(例えばメラミンシアヌレート)の場合は、下記の範囲であることが好ましい。
上層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径は、0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましく、また、1.5μm以下が好ましく、1.2μm以下がより好ましく、1.0μm以下が更に好ましい。
中層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径は、0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましく、また、1.5μm以下が好ましく、1.2μm以下がより好ましく、1.0μm以下が更に好ましい。
下層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径は、0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましく、また、1.5μm以下が好ましく、1.0μm以下がより好ましく、0.8μm以下が更に好ましい。
樹脂層全体において潤滑剤の分散相の平均長径は、0.3μm以上1.5μm以下が好ましく、0.4μm以上1.2μm以下がより好ましく、0.5μm以上1.0μm以下が更に好ましい。
【0040】
上層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径と中層に含まれる潤滑剤の分散相の平均長径との比の値(上層/中層)は、1.0以上2.0以下が好ましく、1.0以上1.5以下がより好ましく、1.2以上1.5以下が更に好ましい。
【0041】
樹脂層全体において潤滑剤の分散相のアスペクト比(長径/短径)の平均値は、1.2以上2.5以下が好ましく、1.2以上1.8以下がより好ましく、1.2以上1.5以下が更に好ましい。
【0042】
樹脂層の平均厚は、0.1μm以上が好ましく、0.3μm以上がより好ましく、1μm以上が更に好ましく、2μm以上が更に好ましく、3μm以上が更に好ましく、また、10μm以下が好ましく、8μm以下がより好ましく、5μm以下が更に好ましい。
【0043】
以下、本実施形態に係るキャリアの構成を詳細に説明する。
【0044】
[磁性粒子]
磁性粒子は、特に限定されるものではなく、キャリアの芯材として用いられる公知の磁性粒子が適用される。磁性粒子として、具体的には、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属の粒子;フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物の粒子;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸磁性粒子;樹脂中に磁性粉が分散して配合された磁性粉分散樹脂粒子;などが挙げられる。本実施形態において磁性粒子としては、フェライト粒子が好ましい。
【0045】
磁性粒子の体積平均粒径は、15μm以上100μm以下が好ましく、20μm以上80μm以下がより好ましく、30μm以上60μm以下が更に好ましい。ここで体積平均粒径とは、体積基準の粒度分布において小径側から累積50%となる粒径D50vを意味する。
【0046】
磁性粒子の磁力は、3000エルステッドの磁場における飽和磁化が、50emu/g以上が好ましく、60emu/g以上がより好ましい。上記飽和磁化の測定は、振動試料型磁気測定装置VSMP10-15(東英工業社製)を用いて行う。測定試料は内径7mm、高さ5mmのセルに詰めて前記装置にセットする。測定は印加磁場を加え、最大3000エルステッドまで掃引する。次いで、印加磁場を減少させ、記録紙上にヒステリシスカーブを作製する。カーブのデータより、飽和磁化、残留磁化、保持力を求める。
【0047】
磁性粒子の体積電気抵抗(体積抵抗率)は、1×105Ω・cm以上1×109Ω・cm以下が好ましく、1×107Ω・cm以上1×109Ω・cm以下がより好ましい。
磁性粒子の体積電気抵抗(Ω・cm)は以下のように測定する。20cm2の電極板を配した円形の治具の表面に、測定対象物を1mm以上3mm以下の厚さになるように平坦に載せ、層を形成する。この上に前記20cm2の電極板を載せて層を挟み込む。測定対象物間の空隙をなくすため、層上に配置した電極板の上に4kgの荷重をかけてから層の厚み(cm)を測定する。層の上下の両電極には、エレクトロメーターおよび高圧電源発生装置に接続されている。両電極に電界が103.8V/cmとなるように高電圧を印加し、このとき流れた電流値(A)を読み取る。測定環境は、温度20℃、相対湿度50%とする。測定対象物の体積電気抵抗(Ω・cm)の計算式は、下記式に示す通りである。
R=E×20/(I-I0)/L
上記式中、Rは測定対象物の体積電気抵抗(Ω・cm)、Eは印加電圧(V)、Iは電流値(A)、I0は印加電圧0Vにおける電流値(A)、Lは層の厚み(cm)をそれぞれ表す。係数20は、電極板の面積(cm2)を表す。
【0048】
[樹脂層]
樹脂層を構成する樹脂としては、スチレン・アクリル酸共重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン等のポリビニル系又はポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体;オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂又はその変性物;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素・ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂;などが挙げられる。
【0049】
樹脂層は、脂環構造を有する(メタ)アクリル樹脂を含有することが好ましい。脂環構造を有する(メタ)アクリル樹脂の重合成分としては、(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステル(例えば、アルキル基の炭素数が1以上9以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステル)が好ましく、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単量体は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
脂環構造を有する(メタ)アクリル樹脂は、重合成分としてシクロヘキシル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。脂環構造を有する(メタ)アクリル樹脂に含まれるシクロヘキシル(メタ)アクリレートに由来するモノマー単位の含有量は、脂環構造を有する(メタ)アクリル樹脂の全質量に対して、75質量%以上100質量%以下が好ましく、85質量%以上100質量%以下がより好ましく、95質量%以上100質量%以下が更に好ましい。
【0050】
樹脂層に含まれる潤滑剤としては、例えば、脂肪酸金属塩、層状構造化合物が挙げられる。
脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸金属塩、ラウリン酸金属塩が挙げられる。ステアリン酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸鉄が挙げられる。ラウリン酸金属塩としては、例えば、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸アルミニウム、ラウリン酸リチウム、ラウリン酸カリウム、ラウリン酸鉄が挙げられる。
層状構造化合物は、層間距離がオングストローム級の積層構造を有する化合物であり、層どうしが互いにずれ合うことで潤滑作用を示すと考えられている。層状構造化合物としては、例えば、メラミンシアヌレート、チッ化ホウ素、フッ化黒鉛、二硫化モリブデン、マイカが挙げられる。
【0051】
樹脂層には、無機粒子又は有機粒子が含まれていてもよい。無機粒子としては、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ等の金属酸化物粒子;硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の金属化合物粒子;金、銀、銅等の金属粒子;などが挙げられる。有機粒子としては、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)粒子が挙げられる。
【0052】
無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていてもよい。疎水化処理剤としては、例えば、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)を有する公知の有機珪素化合物が挙げられ、具体例には、アルコキシシラン化合物、シロキサン化合物、シラザン化合物等が挙げられる。疎水化処理剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0053】
樹脂層には、帯電や抵抗を制御する目的で、導電性粒子が含まれていてもよい。導電性粒子としては、例えば、カーボンブラック、前述の無機粒子のなかで導電性を有する粒子が挙げられる。
【0054】
樹脂層を磁性粒子表面に形成する方法としては、例えば、湿式製法及び乾式製法が挙げられる。湿式製法は、樹脂層を構成する樹脂を溶解又は分散させる溶剤を用いる製法である。一方、乾式製法は、上記溶剤を用いない製法である。
【0055】
湿式製法としては、例えば、磁性粒子を樹脂層形成用樹脂液中に浸漬して被覆する浸漬法;樹脂層形成用樹脂液を磁性粒子表面に噴霧するスプレー法;磁性粒子を流動床中に流動化させた状態で樹脂層形成用樹脂液を噴霧する流動床法;ニーダーコーター中で磁性粒子と樹脂層形成用樹脂液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法;などが挙げられる。これらの製法を繰り返したり、組み合わせたりしてもよい。
湿式製法において用いられる樹脂層形成用樹脂液は、樹脂、無機粒子及びその他の成分を溶剤に溶解又は分散させて調製する。溶剤としては、特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;などが使用される。
【0056】
乾式製法としては、例えば、乾燥状態において磁性粒子の表面に樹脂及び潤滑剤を付着させて樹脂層を形成する方法が挙げられる。磁性粒子の表面に樹脂及び潤滑剤を付着させる方法としては、例えば、乾式粒子複合化装置(例えば、ホソカワミクロン社製ノビルタ)を用いる方法が挙げられる。
【0057】
樹脂層の上層、中層及び下層に含まれる潤滑剤の分散相の含有率、大きさ及びアスペクト比は、例えば、樹脂層を3層に分けて形成する製造方法において、各層の形成に用いる潤滑剤粒子の添加量、大きさ及び形状を調整することにより制御できる。また、乾式粒子複合化装置(例えば、ホソカワミクロン社製ノビルタ)を用いる製造方法においては、材料に与える剪断力を調整することにより分散相の形状及びアスペクト比を制御できる。
【0058】
キャリア表面における磁性粒子の露出面積率は、0%以上5%以下であることが好ましい。キャリアにおける磁性粒子の露出面積率は、樹脂層の形成に用いる樹脂の量で制御でき、磁性粒子の量に対する樹脂の量が多いほど露出面積率は小さくなる。
【0059】
キャリア表面における磁性粒子の露出面積率は、以下の方法で求める値である。
対象となるキャリアと、対象となるキャリアから樹脂層を除いた磁性粒子とを用意する。キャリアから樹脂層を除く方法としては、例えば、有機溶剤で樹脂成分を溶解させて樹脂層を除去する方法、800℃程度の加熱により樹脂成分を消失させて樹脂層を除去する方法などが挙げられる。キャリアと磁性粒子とをそれぞれ測定試料にして、XPSにより試料表面のFe濃度(atomic%)を定量し、(キャリアのFe濃度)÷(磁性粒子のFe濃度)×100を算出し、磁性粒子の露出面積率(%)とする。
【0060】
キャリアの体積平均粒径は、10μm以上120μm以下が好ましく、20μm以上100μm以下がより好ましく、30μm以上80μm以下が更に好ましい。ここで体積平均粒径とは、体積基準の粒度分布において小径側から累積50%となる粒径D50vを意味する。
【0061】
<静電荷像現像剤>
本実施形態に係る現像剤は、本実施形態に係るキャリアと、トナーと、を含む二成分現像剤である。トナーは、トナー粒子と、必要に応じて外添剤と、を含む。
【0062】
現像剤おけるキャリアとトナーとの混合比(質量比)は、キャリア:トナー=100:1乃至100:30が好ましく、100:3乃至100:20がより好ましい。
【0063】
[トナー粒子]
トナー粒子は、例えば、結着樹脂と、必要に応じて、着色剤と、離型剤と、その他添加剤と、を含んで構成される。
【0064】
-結着樹脂-
結着樹脂としては、例えば、スチレン類(例えばスチレン、パラクロロスチレン、α-メチルスチレン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル類(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(例えばビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体からなるビニル系樹脂が挙げられる。
結着樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらと前記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。
これらの結着樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
結着樹脂としては、ポリエステル樹脂が好適である。
ポリエステル樹脂としては、例えば、公知の非晶性ポリエステル樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂と共に、結晶性ポリエステル樹脂を併用してもよい。但し、結晶性ポリエステル樹脂は、全結着樹脂に対して、含有量が2質量%以上40質量%以下(好ましくは2質量%以上20質量%以下)の範囲で用いることがよい。
【0066】
樹脂の「結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することを指し、具体的には、昇温速度10(℃/min)で測定した際の吸熱ピークの半値幅が10℃以内であることを指す。
一方、樹脂の「非晶性」とは、半値幅が10℃を超えること、階段状の吸熱量変化を示すこと、又は明確な吸熱ピークが認められないことを指す。
【0067】
・非晶性ポリエステル樹脂
非晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。非晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0068】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)、脂環式ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、多価カルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル等が挙げられる。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0069】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等)、芳香族ジオール(例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。これらの中でも、多価アルコールとしては、例えば、芳香族ジオール、脂環式ジオールが好ましく、より好ましくは芳香族ジオールである。
多価アルコールとしては、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上の多価アルコールを併用してもよい。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0070】
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上65℃以下がより好ましい。
ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0071】
非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000以上1000000以下が好ましく、7000以上500000以下がより好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、2000以上100000以下が好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の分子量分布Mw/Mnは、1.5以上100以下が好ましく、2以上60以下がより好ましい。
重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC-8120GPCを用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM-M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0072】
非晶性ポリエステル樹脂は、公知の製造方法により得られる。具体的には、例えば、重合温度を180℃以上230℃以下とし、必要に応じて反応系内を減圧し、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる方法により得られる。
原料の単量体が、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。この場合、重縮合反応は溶解補助剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪い単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い単量体とその単量体と重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と重縮合させるとよい。
【0073】
・結晶性ポリエステル樹脂
結晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合体が挙げられる。結晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
ここで、結晶性ポリエステル樹脂は、結晶構造を容易に形成するため、芳香環を有する重合性単量体よりも直鎖状脂肪族の重合性単量体を用いた重縮合体が好ましい。
【0074】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸等の二塩基酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価のカルボン酸としては、例えば、芳香族カルボン酸(例えば1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。
多価カルボン酸としては、これらジカルボン酸と共に、スルホン酸基を持つジカルボン酸、エチレン性二重結合を持つジカルボン酸を併用してもよい。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えば主鎖部分の炭素数が7以上20以下である直鎖型脂肪族ジオール)が挙げられる。脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンデカンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジオールとしては、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオールが好ましい。
多価アルコールは、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のアルコールを併用してもよい。3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0076】
ここで、多価アルコールは、脂肪族ジオールの含有量を80モル%以上とすることがよく、好ましくは90モル%以上である。
【0077】
結晶性ポリエステル樹脂の融解温度は、50℃以上100℃以下が好ましく、55℃以上90℃以下がより好ましく、60℃以上85℃以下がさらに好ましい。
融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0078】
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、6,000以上35,000以下が好ましい。
【0079】
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、非晶性ポリエステルと同様に、公知の製造方法により得られる。
【0080】
結着樹脂の含有量は、トナー粒子全体に対して、40質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上85質量%以下が更に好ましい。
【0081】
-着色剤-
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレート等の顔料;アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系等の染料;が挙げられる。
着色剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
【0083】
着色剤の含有量は、トナー粒子全体に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0084】
-離型剤-
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
【0085】
離型剤の融解温度は、50℃以上110℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。
融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0086】
離型剤の含有量は、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0087】
-その他の添加剤-
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の公知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0088】
-トナー粒子の特性等-
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。
コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤及び離型剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、結着樹脂を含んで構成された被覆層と、で構成されていることがよい。
【0089】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)は、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用い、電解液はISOTON-II(ベックマン・コールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5質量%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。サンプリングする粒子数は50000個である。体積基準の粒度分布を小径側から描いて、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとする。
【0090】
トナー粒子の平均円形度は、0.94以上1.00以下が好ましく、0.95以上0.98以下がより好ましい。
トナー粒子の平均円形度は、(円相当周囲長)/(周囲長)[(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)]により求められる。具体的には、次の方法で測定される値である。
まず、測定対象となるトナー粒子を吸引採取し、扁平な流れを形成させ、瞬時にストロボ発光させることにより静止画像として粒子像を取り込み、その粒子像を画像解析するフロー式粒子像解析装置(シスメックス社製のFPIA-3000)によって求める。そして、平均円形度を求める際のサンプリング数は3500個とする。
トナーが外添剤を有する場合、界面活性剤を含む水中に、測定対象となるトナー(現像剤)を分散させた後、超音波処理を行って外添剤を除去したトナー粒子を得る。
【0091】
-トナー粒子の製造方法-
トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば、凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。これらの製法に特に制限はなく、公知の製法が採用される。これらの中でも、凝集合一法により、トナー粒子を得ることがよい。
【0092】
具体的には、例えば、トナー粒子を凝集合一法により製造する場合、結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液を準備する工程(樹脂粒子分散液準備工程)と、樹脂粒子分散液中で(必要に応じて他の粒子分散液を混合した後の分散液中で)、樹脂粒子(必要に応じて他の粒子)を凝集させ、凝集粒子を形成する工程(凝集粒子形成工程)と、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を加熱し、凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程(融合・合一工程)と、を経て、トナー粒子を製造する。
【0093】
以下、各工程の詳細について説明する。
以下の説明では、着色剤、及び離型剤を含むトナー粒子を得る方法について説明するが、着色剤、離型剤は、必要に応じて用いられるものである。無論、着色剤、離型剤以外のその他添加剤を用いてもよい。
【0094】
-樹脂粒子分散液準備工程-
結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と共に、例えば、着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液、離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液を準備する。
【0095】
樹脂粒子分散液は、例えば、樹脂粒子を界面活性剤により分散媒中に分散させることにより調製する。
【0096】
樹脂粒子分散液に用いる分散媒としては、例えば水系媒体が挙げられる。
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0097】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも特に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0098】
樹脂粒子分散液において、樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等の一般的な分散方法が挙げられる。また、樹脂粒子の種類によっては、転相乳化法によって分散媒に樹脂粒子を分散させてもよい。転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて中和したのち、水系媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの転相を行い、樹脂を水系媒体中に粒子状に分散する方法である。
【0099】
樹脂粒子分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径としては、例えば0.01μm以上1μm以下が好ましく、0.08μm以上0.8μm以下がより好ましく、0.1μm以上0.6μm以下がさらに好ましい。
樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製LA-700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
【0100】
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量は、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0101】
樹脂粒子分散液と同様にして、例えば、着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液も調製される。つまり、樹脂粒子分散液における粒子の体積平均粒径、分散媒、分散方法、及び粒子の含有量に関しては、着色剤粒子分散液中に分散する着色剤粒子、及び離型剤粒子分散液中に分散する離型剤粒子についても同様である。
【0102】
-凝集粒子形成工程-
次に、樹脂粒子分散液と、着色剤粒子分散液と、離型剤粒子分散液と、を混合する。
そして、混合分散液中で、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とをヘテロ凝集させ目的とするトナー粒子の径に近い径を持つ、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とを含む凝集粒子を形成する。
【0103】
具体的には、例えば、混合分散液に凝集剤を添加すると共に、混合分散液のpHを酸性(例えばpH2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、樹脂粒子のガラス転移温度に近い温度(具体的には、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度-30℃以上ガラス転移温度-10℃以下)に加熱し、混合分散液に分散された粒子を凝集させて、凝集粒子を形成する。
凝集粒子形成工程においては、例えば、混合分散液を回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温(例えば25℃)で凝集剤を添加し、混合分散液のpHを酸性(例えばpH2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、加熱を行ってもよい。
【0104】
凝集剤としては、例えば、混合分散液に含まれる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
凝集剤と共に、該凝集剤の金属イオンと錯体もしくは類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0105】
無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩;ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体;などが挙げられる。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸;イミノ二酸酢(IDA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のアミノカルボン酸;などが挙げられる。
キレート剤の添加量は、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。
【0106】
-融合・合一工程-
次に、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度以上(例えば樹脂粒子のガラス転移温度より10℃から30℃高い温度)に加熱して、凝集粒子を融合・合一し、トナー粒子を形成する。
【0107】
以上の工程を経て、トナー粒子が得られる。
凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を得た後、当該凝集粒子分散液と、樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と、をさらに混合し、凝集粒子の表面にさらに樹脂粒子を付着するように凝集して、第2凝集粒子を形成する工程と、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱をし、第2凝集粒子を融合・合一して、コア・シェル構造のトナー粒子を形成する工程と、を経て、トナー粒子を製造してもよい。
【0108】
融合・合一工程終了後、溶液中に形成されたトナー粒子に、公知の洗浄工程、固液分離工程、及び乾燥工程を施して乾燥した状態のトナー粒子を得る。洗浄工程は、帯電性の観点から、イオン交換水による置換洗浄を充分に施すことがよい。固液分離工程は、生産性の観点から、吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。乾燥工程は、生産性の観点から、凍結乾燥、気流乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
【0109】
そして、本実施形態に係るトナーは、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー等によって行うことがよい。更に、必要に応じて、振動篩分機、風力篩分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0110】
-外添剤-
外添剤としては、例えば、無機粒子が挙げられる。該無機粒子として、SiO2、TiO2、Al2O3、CuO、ZnO、SnO2、CeO2、Fe2O3、MgO、BaO、CaO、K2O、Na2O、ZrO2、CaO・SiO2、K2O・(TiO2)n、Al2O3・2SiO2、CaCO3、MgCO3、BaSO4、MgSO4等が挙げられる。
【0111】
外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量は、通常、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である。
【0112】
外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0113】
外添剤の外添量は、トナー粒子に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0114】
<画像形成装置、画像形成方法>
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を備える。そして、静電荷像現像剤として、本実施形態に係る静電荷像現像剤が適用される。
【0115】
本実施形態に係る画像形成装置では、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、本実施形態に係る静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法(本実施形態に係る画像形成方法)が実施される。
【0116】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前の像保持体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー画像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;等の公知の画像形成装置が適用される。
本実施形態に係る画像形成装置が中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0117】
本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、現像手段を含む部分が、画像形成装置に着脱するカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0118】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。以下の説明においては、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0119】
図4は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図4に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づく、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジであってもよい。
【0120】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの上方には、各ユニットを通して中間転写ベルト(中間転写体の一例)20が延設されている。中間転写ベルト20は、駆動ロール22及び支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行するようになっている。支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段の一例)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナーの供給がなされる。
【0121】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成及び動作を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。
【0122】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yによって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール5Y(一次転写手段の一例)、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)6Yが順に配置されている。
一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。各ユニットの一次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各一次転写ロールに印加する転写バイアスの値を変える。
【0123】
以下、第1のユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。
まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が-600V乃至-800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(例えば20℃における体積抵抗率1×10-6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂の抵抗)であるが、レーザ光線が照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3からレーザ光線3Yを照射する。それにより、イエローの画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0124】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転する。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによってトナー画像として現像され可視化される。
【0125】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体の一例)上に保持されている。そして、感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0126】
感光体1Y上のイエロートナー画像が一次転写位置へ搬送されると、一次転写ロール5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー画像に作用し、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と逆極性の(+)極性であり、第1のユニット10Yでは制御部(図示せず)によって例えば+10μAに制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーは感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0127】
第2のユニット10M以降の一次転写ロール5M、5C、5Kに印加される一次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエローのトナー画像が転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0128】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と、中間転写ベルトの内面に接する支持ロール24と、中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写手段の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体の一例)Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と同極性の(-)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用し、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。この際の二次転写バイアスは二次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0129】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段の一例)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれ、トナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。
【0130】
トナー画像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙が挙げられる。記録媒体としては、記録紙P以外にも、OHPシート等も挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録紙Pの表面も平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
【0131】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0132】
<プロセスカートリッジ>
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0133】
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、上記構成に限られず、現像手段と、その他、必要に応じて、例えば、像保持体、帯電手段、静電荷像形成手段、及び転写手段等のその他手段から選択される少なくとも一つと、を備える構成であってもよい。
【0134】
以下、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示すが、これに限定されるわけではない。以下の説明においては、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0135】
図5は、本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
図5に示すプロセスカートリッジ200は、例えば、取り付けレール116及び露光のための開口部118が備えられた筐体117により、感光体107(像保持体の一例)と、感光体107の周囲に備えられた帯電ロール108(帯電手段の一例)、現像装置111(現像手段の一例)、及び感光体クリーニング装置113(クリーニング手段の一例)を一体的に組み合わせて保持して構成し、カートリッジ化されている。
図5中、109は露光装置(静電荷像形成手段の一例)、112は転写装置(転写手段の一例)、115は定着装置(定着手段の一例)、300は記録紙(記録媒体の一例)を示している。
【実施例】
【0136】
以下、実施例により発明の実施形態を詳細に説明するが、発明の実施形態は、これら実施例に限定されるものではない。以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0137】
<トナーの作製>
[非晶性ポリエステル樹脂分散液(A1)の作製]
・エチレングリコール :37部
・ネオペンチルグリコール:65部
・1,9-ノナンジオール:32部
・テレフタル酸 :96部
上記の材料をフラスコに仕込み、1時間かけて温度200℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認したのち、ジブチル錫オキサイドを1.2部投入した。生成する水を留去しながら6時間かけて240℃まで温度を上げ、240℃で4時間攪拌を継続し、非晶性ポリエステル樹脂(酸価9.4mgKOH/g、重量平均分子量13,000、ガラス転移温度62℃)を得た。非晶性ポリエステル樹脂を溶融状態のまま、乳化分散機(キャビトロンCD1010、ユーロテック社)に毎分100gの速度で移送した。別途、試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した0.37%濃度の希アンモニア水をタンクに入れ、熱交換器で120℃に加熱しながら毎分0.1リットルの速度で非晶性ポリエステル樹脂と同時に乳化分散機に移送した。乳化分散機を回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cm2の条件で運転し、体積平均粒径160nm、固形分20%の非晶性ポリエステル樹脂分散液(A1)を得た。
【0138】
[結晶性ポリエステル樹脂分散液(C1)の作製]
・デカン二酸 :81部
・ヘキサンジオール:47部
上記の材料をフラスコに仕込み、1時間かけて温度160℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認したのち、ジブチル錫オキサイドを0.03部投入した。生成する水を留去しながら6時間かけて200℃まで温度を上げ、200℃で4時間攪拌を継続した。次いで、反応液を冷却し、固液分離を行い、固形物を温度40℃/減圧下で乾燥し、結晶性ポリエステル樹脂(C1)(融点64℃、重量平均分子量15,000)を得た。
【0139】
・結晶性ポリエステル樹脂(C1) :50部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK):2部
・イオン交換水 :200部
上記の材料を120℃に加熱して、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50、IKA社)で十分に分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理した。体積平均粒径が180nmになったところで回収し、固形分20%の結晶性ポリエステル樹脂分散液(C1)を得た。
【0140】
[離型剤粒子分散液(W1)の作製]
・パラフィンワックス(日本精蝋(株)製 HNP-9) :100部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK):1部
・イオン交換水 :350部
上記の材料を混合して100℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、体積平均粒径200nmの離型剤粒子が分散した離型剤粒子分散液を得た。この離型剤粒子分散液にイオン交換水を加えて固形分量を20%に調製して、離型剤粒子分散液(W1)とした。
【0141】
[着色剤粒子分散液(K1)の作製]
・カーボンブラック(キャボット社製、Regal330) :50部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK):5部
・イオン交換水 :195部
上記の材料を混合し、高圧衝撃式分散機(アルティマイザーHJP30006、スギノマシン社)を用いて60分間分散処理し、固形分量20%の着色剤粒子分散液(K1)を得た。
【0142】
[黒トナー粒子(K1)の作製]
・イオン交換水 :200部
・非晶性ポリエステル樹脂分散液(A1) :150部
・結晶性ポリエステル樹脂分散液(C1) :10部
・離型剤粒子分散液(W1) :10部
・着色剤粒子分散液(K1) :15部
・アニオン性界面活性剤(TaycaPower):2.8部
上記の材料を丸型ステンレス製フラスコに入れ、0.1Nの硝酸を添加してpHを3.5に調整した後、ポリ塩化アルミニウム(王子製紙(株)製、30%粉末品)2部をイオン交換水30部に溶解させたポリ塩化アルミニウム水溶液を添加した。ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて30℃において分散した後、加熱用オイルバス中で45℃まで加熱し、体積平均粒径が5.9μmとなるまで保持した。次いで、非晶性ポリエステル樹脂分散液(A1)60部を追加し30分間保持した。次いで、体積平均粒径6.2μmとなったところで、さらに非晶性ポリエステル樹脂分散液(A1)60部を追加し30分間保持した。続いて、10%のNTA(ニトリロ三酢酸)金属塩水溶液(キレスト70、キレスト株式会社製)20部を加え、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを9.0に調整した。次いで、アニオン性界面活性剤(TaycaPower)1部を投入して攪拌を継続しながら85℃まで加熱し、5時間保持した。次いで、20℃/分の速度で20℃まで冷却した。次いで、濾過し、イオン交換水で充分に洗浄し、乾燥させることにより、体積平均粒径6.5μmの黒トナー粒子(K1)を得た。
【0143】
[黒トナー(K1)の作製]
黒トナー粒子(K1)100部と、疎水性シリカ粒子(日本アエロジル社製、RY50)1.5部とをサンプルミルに入れ、回転速度10000rpmで30秒間混合した。次いで、目開き45μmの振動篩いで篩分して、体積平均粒径6.5μmの黒トナー(K1)を得た。
【0144】
<キャリアの作製>
[実施例1:キャリア(1)]
潤滑剤としてステアリン酸亜鉛(StZn)を使用し、下記の3段階に分けて樹脂層を形成した。以下、CHMAはシクロヘキシルメタクリレートを意味する。
-第1段階-
・フェライト粒子(体積平均粒径50μm) :100部
・CHMA樹脂(重量平均分子量10万、体積平均粒径0.5μm):1.2部
・カーボンブラック(VXC72、キャボット) :0.08部
上記の材料をヘンシェルミキサーで混合した。この混合物を乾式粒子複合化装置(ホソカワミクロン社製、ノビルタNOB130)に投入し、回転速度1000rpmで3分間処理し、フェライト粒子の表面にCHMA樹脂及びカーボンブラックを付着させた粒子を得た。この粒子を第1粒子という。
【0145】
-第2段階-
・第1粒子 :100部
・CHMA樹脂(重量平均分子量10万、体積平均粒径0.5μm):0.8部
・ステアリン酸亜鉛(体積平均粒径1.2μm) :0.3部
・カーボンブラック(VXC72、キャボット) :0.08部
上記の材料をヘンシェルミキサーで混合した。この混合物を乾式粒子複合化装置(ホソカワミクロン社製、ノビルタNOB130)に投入し、回転速度1000rpmで5分間処理し、第1粒子の表面にCHMA樹脂、ステアリン酸亜鉛及びカーボンブラックを付着させた粒子を得た。この粒子を第2粒子という。
【0146】
-第3段階-
・第2粒子 :100部
・CHMA樹脂(重量平均分子量10万、体積平均粒径0.5μm):0.7部
・ステアリン酸亜鉛(体積平均粒径2.0μm) :0.9部
・カーボンブラック(VXC72、キャボット) :0.08部
上記の材料をヘンシェルミキサーで混合した。この混合物を乾式粒子複合化装置(ホソカワミクロン社製、ノビルタNOB130)に投入し、回転速度1200rpmで10分間処理し、第2粒子の表面にCHMA樹脂、ステアリン酸亜鉛及びカーボンブラックを付着させた粒子を得た。75μメッシュの篩分網で篩分を行い、キャリア(1)を得た。
【0147】
[比較例1~2:キャリア(C1)~(C2)]
キャリア(1)の作製と同様にして、ただし、第1段階、第2段階及び第3段階の材料の使用量を表1のとおり変更し、また、使用するステアリン酸亜鉛の粒径を調製して、キャリア(C1)~(C2)を作製した。
【0148】
[実施例2~9:キャリア(2)~(9)]
キャリア(1)の作製と同様にして、ただし、第1段階、第2段階及び第3段階のいずれかの材料を表1のとおり変更し、また、使用するステアリン酸亜鉛の粒径を調製して、キャリア(2)~(9)を作製した。
【0149】
[実施例101:キャリア(101)]
潤滑剤としてメラミンシアヌレート(MC)を使用し、下記の3段階に分けて樹脂層を形成した。
-第1段階-
・フェライト粒子(体積平均粒径50μm) :100部
・CHMA樹脂(重量平均分子量10万、体積平均粒径0.5μm):1.3部
・カーボンブラック(VXC72、キャボット) :0.08部
上記の材料をヘンシェルミキサーで混合した。この混合物を乾式粒子複合化装置(ホソカワミクロン社製、ノビルタNOB130)に投入し、回転速度1000rpmで3分間処理し、フェライト粒子の表面にCHMA樹脂及びカーボンブラックを付着させた粒子を得た。この粒子を第1粒子という。
【0150】
-第2段階-
・第1粒子 :100部
・CHMA樹脂(重量平均分子量10万、体積平均粒径0.5μm):1.0部
・メラミンシアヌレート(体積平均粒径1.0μm) :0.3部
・カーボンブラック(VXC72、キャボット) :0.08部
上記の材料をヘンシェルミキサーで混合した。この混合物を乾式粒子複合化装置(ホソカワミクロン社製、ノビルタNOB130)に投入し、回転速度1000rpmで5分間処理し、第1粒子の表面にCHMA樹脂、メラミンシアヌレート及びカーボンブラックを付着させた粒子を得た。この粒子を第2粒子という。
【0151】
-第3段階-
・第2粒子 :100部
・CHMA樹脂(重量平均分子量10万、体積平均粒径0.5μm):0.6部
・メラミンシアヌレート(体積平均粒径1.8μm) :0.8部
・カーボンブラック(VXC72、キャボット) :0.08部
上記の材料をヘンシェルミキサーで混合した。この混合物を乾式粒子複合化装置(ホソカワミクロン社製、ノビルタNOB130)に投入し、回転速度1200rpmで5分間処理し、第2粒子の表面にCHMA樹脂、メラミンシアヌレート及びカーボンブラックを付着させた粒子を得た。75μメッシュの篩分網で篩分を行い、キャリア(101)を得た。
【0152】
[比較例101~102:キャリア(C101)~(C102)]
キャリア(101)の作製と同様にして、ただし、第1段階、第2段階及び第3段階の材料の使用量を表2のとおり変更し、また、使用するメラミンシアヌレートの粒径を調製して、キャリア(C101)~(C102)を作製した。
【0153】
[実施例102~107:キャリア(102)~(107)]
キャリア(101)の作製と同様にして、ただし、第1段階、第2段階及び第3段階のいずれかの材料を表2のとおり変更し、また、使用するメラミンシアヌレートの粒径を調製して、キャリア(102)~(107)を作製した。
【0154】
<現像剤の作製>
上記のキャリアのいずれかと、黒トナー(K1)とを、キャリア:トナー=100:8(質量比)の混合比でVブレンダーに入れ20分間攪拌し、目開き212μmの篩で篩分して、黒色の現像剤をそれぞれ得た。
【0155】
<性能評価>
画像形成装置として、富士ゼロックス社DocuPrint5100dの改造機を用意した。画像形成前に、感光体の最外層(電荷輸送層)の膜厚を、渦電流式膜厚測定装置(フィッシャー・インストルメンツ社)にて測定した。測定は、感光体の軸方向に21mm刻みで15点測定し、周方向に30°刻みで12点測定し、合計180点測定した。
【0156】
[比較的初期の画質]
温度10℃且つ相対湿度10%の環境下で、A4縦サイズの紙に画像密度2%のテストチャートを1000枚連続出力した。一晩放置後、A4横サイズの紙に画像濃度50%の全面ハーフトーン画像を10枚出力した。10枚の全面ハーフトーン画像を目視観察し、下記のとおり分類した。
G1:濃度ムラが認められない。
G2:濃度ムラがあるが、極めて小さい。
G3:濃度ムラがあるが、実用上の許容範囲である。
G4:濃度ムラがあり、実用上許容できない程度である。
【0157】
[偏摩耗の量]
上記画像形成後にさらに、温度10℃且つ相対湿度10%の環境下で、A4縦サイズの紙に画像密度2%のテストチャートを50万枚連続出力した。
画像形成後に、感光体の最外層の膜厚を、渦電流式膜厚測定装置(フィッシャー・インストルメンツ社)にて測定した。測定は、画像形成前の測定点と同じとした。
画像形成前と画像形成後の膜厚差を摩耗量(μm)とし、全測定点のうちの最大摩耗量と最小摩耗量との差分(μm)を求めた。
【0158】
[偏摩耗による画質欠陥]
上記画像形成後に温度10℃且つ相対湿度10%の環境下に一晩放置後、A4横サイズの白紙画像を10枚出力した。10枚の白紙画像を目視観察し、黒筋及び黒点(1cm以上の黒線の個数/0.5mm以上の黒点が発生した枚数)を下記のとおり分類した。
G1:未発生。
G2:1個又は2個/10枚。
G3:3個以上10個未満/10枚。
G4:10個以上/10枚。
【0159】
【0160】
【符号の説明】
【0161】
40 キャリア
50 磁性粒子
60 樹脂層
62 上層
64 中層
66 下層
60a、62a、63a、64a、65a、66a、67a 分散相
【0162】
1Y、1M、1C、1K 感光体(像保持体の一例)
2Y、2M、2C、2K 帯電ロール(帯電手段の一例)
3 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
3Y、3M、3C、3K レーザ光線
4Y、4M、4C、4K 現像装置(現像手段の一例)
5Y、5M、5C、5K 一次転写ロール(一次転写手段の一例)
6Y、6M、6C、6K 感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)
8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10Y、10M、10C、10K 画像形成ユニット
20 中間転写ベルト(中間転写体の一例)
22 駆動ロール
24 支持ロール
26 二次転写ロール(二次転写手段の一例)
28 定着装置(定着手段の一例)
30 中間転写体クリーニング装置
P 記録紙(記録媒体の一例)
107 感光体(像保持体の一例)
108 帯電ロール(帯電手段の一例)
109 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
111 現像装置(現像手段の一例)
112 転写装置(転写手段の一例)
113 感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)
115 定着装置(定着手段の一例)
116 取り付けレール
117 筐体
118 露光のための開口部
200 プロセスカートリッジ
300 記録紙(記録媒体の一例)