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特許7424130配電系統における負荷按分方法、負荷按分プログラム、及び配電系統制御システム
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  • 特許-配電系統における負荷按分方法、負荷按分プログラム、及び配電系統制御システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】配電系統における負荷按分方法、負荷按分プログラム、及び配電系統制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20240123BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J13/00 301A
H02J13/00 311S
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020044924
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021150965
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】関 孝二郎
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-079530(JP,A)
【文献】特開2006-246683(JP,A)
【文献】特開2007-082346(JP,A)
【文献】特開2010-068604(JP,A)
【文献】特開2015-056930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電線に設置されたセンサ付き開閉器による電圧、電流、力率の計測値から、前記配電線上の計測区間にて消費される有効電力、無効電力、電流を算出する第1ステップと、
前記第1ステップにより算出した前記計測区間の有効電力、無効電力、電流を、前記計測区間内の複数の分割配電線ごとに接続された複数の需要家の按分指標に応じて各需要家に按分する第2ステップと、
前記計測区間への流入電流と、前記第2ステップにより按分した前記各需要家への流入電流とに基づいて、前記複数の分割配電線を流れる電流をそれぞれ算出する第3ステップと、
前記第3ステップにより算出した前記複数の分割配電線の電流と各分割配電線のインピーダンスとから、前記複数の分割配電線における損失をそれぞれ算出する第4ステップと、
前記第4ステップにより算出した前記複数の分割配電線における損失の合計値を求め、この合計値を前記各需要家の按分指標に応じて按分することにより前記各需要家の損失配分量を算出する第5ステップと、
前記第2ステップにより按分した前記各需要家の有効電力、無効電力から、前記第5ステップにより算出した前記各需要家の損失配分量をそれぞれ減算した値を、前記各需要家が消費する新たな有効電力、無効電力として設定する第6ステップと、
を有し、
前記第1ステップ~前記第6ステップの処理を順次実行することを特徴とする、配電系統における負荷按分方法。
【請求項2】
配電線に設置された少なくとも二つのセンサ付き開閉器による電圧、電流、力率の計測値から、前記二つのセンサ付き開閉器により挟まれた計測区間にて消費される有効電力、無効電力、電流を算出する第1ステップと、
前記第1ステップにより算出した前記計測区間の有効電力、無効電力、電流を、前記計測区間内の複数の分割配電線ごとに接続された複数の需要家の按分指標に応じて各需要家に按分する第2ステップと、
前記計測区間への流入電流と、前記第2ステップにより按分した前記各需要家への流入電流とに基づいて、前記複数の分割配電線を流れる電流をそれぞれ算出する第3ステップと、
前記第3ステップにより算出した前記複数の分割配電線の電流と各分割配電線のインピーダンスとから、前記複数の分割配電線における損失をそれぞれ算出する第4ステップと、
前記第4ステップにより算出した前記複数の分割配電線における損失の合計値を求め、この合計値を前記各需要家の按分指標に応じて按分することにより前記各需要家の損失配分量を算出する第5ステップと、
前記第2ステップにより按分した前記各需要家の有効電力、無効電力から、前記第5ステップにより算出した前記各需要家の損失配分量をそれぞれ減算した値を、前記各需要家が消費する新たな有効電力、無効電力として設定する第6ステップと、
を有し、
前記第1ステップ~前記第6ステップの処理を順次実行することを特徴とする、配電系統における負荷按分方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載した負荷按分方法において、
前記按分指標が、個々の前記需要家の設備容量比であることを特徴とする、配電系統における負荷按分方法。
【請求項4】
コンピュータシステムからなる配電系統制御システムに搭載され、演算処理装置により実行される負荷按分プログラムであって、
前記演算処理装置に、
配電線に設置されたセンサ付き開閉器による電圧、電流、力率の計測値から、前記配電線上の計測区間にて消費される有効電力、無効電力、電流を算出する第1手順と、
前記第1手順により算出した前記計測区間の有効電力、無効電力、電流を、前記計測区間内の複数の分割配電線ごとに接続された複数の需要家の按分指標に応じて各需要家に按分する第2手順と、
前記計測区間への流入電流と、前記第2手順により按分した前記各需要家への流入電流とに基づいて、前記複数の分割配電線を流れる電流をそれぞれ算出する第3手順と、
前記第3手順により算出した前記複数の分割配電線の電流と各分割配電線のインピーダンスとから、前記複数の分割配電線における損失をそれぞれ算出する第4手順と、
前記第4手順により算出した前記複数の分割配電線における損失の合計値を求め、この合計値を前記各需要家の按分指標に応じて按分することにより前記各需要家の損失配分量を算出する第5手順と、
前記第2手順により按分した前記各需要家の有効電力、無効電力から、前記第5手順により算出した前記各需要家の損失配分量をそれぞれ減算した値を、前記各需要家が消費する新たな有効電力、無効電力として設定する第6手順と、
を順次実行させることを特徴とする負荷按分プログラム。
【請求項5】
コンピュータシステムからなる配電系統制御システムに搭載され、演算処理装置により実行される負荷按分プログラムであって、
前記演算処理装置に、
配電線に設置された少なくとも二つのセンサ付き開閉器による電圧、電流、力率の計測値から、前記二つのセンサ付き開閉器により挟まれた計測区間にて消費される有効電力、無効電力、電流を算出する第1手順と、
前記第1手順により算出した前記計測区間の有効電力、無効電力、電流を、前記計測区間内の複数の分割配電線ごとに接続された複数の需要家の按分指標に応じて各需要家に按分する第2手順と、
前記計測区間への流入電流と、前記第2手順により按分した前記各需要家への流入電流とに基づいて、前記複数の分割配電線を流れる電流をそれぞれ算出する第3手順と、
前記第3手順により算出した前記複数の分割配電線の電流と各分割配電線のインピーダンスとから、前記複数の分割配電線における損失をそれぞれ算出する第4手順と、
前記第4手順により算出した前記複数の分割配電線における損失の合計値を求め、この合計値を前記各需要家の按分指標に応じて按分することにより前記各需要家の損失配分量を算出する第5手順と、
前記第2手順により按分した前記各需要家の有効電力、無効電力から、前記第5手順により算出した前記各需要家の損失配分量をそれぞれ減算した値を、前記各需要家が消費する新たな有効電力、無効電力として設定する第6手順と、
を順次実行させることを特徴とする負荷按分プログラム。
【請求項6】
請求項4または5に記載した負荷按分プログラムにおいて、
前記按分指標が、個々の前記需要家の設備容量比であることを特徴とする負荷按分プログラム。
【請求項7】
配電線上の計測区間にセンサ付き開閉器が設置され、かつ、前記計測区間に複数の需要家が接続されている配電系統モデルの構成と、配電線上の前記複数の需要家の接続点によって分割される複数の分割配電線のインピーダンスと、前記センサ付き開閉器による電圧、電流、力率の計測値と、が記憶される記憶手段、
及び、
前記計測値に基づき前記計測区間において消費される有効電力、無効電力、電流を算出する第1演算手段と、前記第1演算手段により算出した前記計測区間の有効電力、無効電力、電流を前記複数の需要家の按分指標に応じて各需要家に按分する第2演算手段と、前記計測区間への流入電流及び前記第2演算手段により按分した前記各需要家への流入電流に基づいて前記分割配電線を流れる電流をそれぞれ算出する第3演算手段と、前記第3演算手段により算出した複数の前記分割配電線の電流と当該分割配電線のインピーダンスとから複数の前記分割配電線の損失をそれぞれ算出する第4演算手段と、前記第4演算手段により算出した複数の前記分割配電線の損失の合計値を前記按分指標に応じて前記各需要家に按分することにより前記各需要家の損失配分量を算出する第5演算手段と、前記第2演算手段により按分した前記各需要家の有効電力、無効電力から、前記第5演算手段により算出した前記各需要家の損失配分量をそれぞれ減算した値を前記各需要家が消費する新たな有効電力、無効電力として設定する第6演算手段と、を備えると共に、前記第1演算手段~前記第6演算手段による演算処理を順次実行するようにした演算処理手段、
を備え、
前記記憶手段及び前記演算処理手段をコンピュータシステムにより構成したことを特徴とする配電系統制御システム。
【請求項8】
配電線上の少なくとも二つのセンサ付き開閉器により挟まれた計測区間に複数の需要家が接続されている配電系統モデルの構成と、配電線上の前記複数の需要家の接続点によって分割される複数の分割配電線のインピーダンスと、前記二つのセンサ付き開閉器による電圧、電流、力率の計測値と、が記憶される記憶手段、
及び、
前記計測値に基づき前記計測区間において消費される有効電力、無効電力、電流を算出する第1演算手段と、前記第1演算手段により算出した前記計測区間の有効電力、無効電力、電流を前記複数の需要家の按分指標に応じて各需要家に按分する第2演算手段と、前記計測区間への流入電流及び前記第2演算手段により按分した前記各需要家への流入電流に基づいて前記分割配電線を流れる電流をそれぞれ算出する第3演算手段と、前記第3演算手段により算出した複数の前記分割配電線の電流と当該分割配電線のインピーダンスとから複数の前記分割配電線の損失をそれぞれ算出する第4演算手段と、前記第4演算手段により算出した複数の前記分割配電線の損失の合計値を前記按分指標に応じて前記各需要家に按分することにより前記各需要家の損失配分量を算出する第5演算手段と、前記第2演算手段により按分した前記各需要家の有効電力、無効電力から、前記第5演算手段により算出した前記各需要家の損失配分量をそれぞれ減算した値を前記各需要家が消費する新たな有効電力、無効電力として設定する第6演算手段と、を備えると共に、前記第1演算手段~前記第6演算手段による演算処理を順次実行するようにした演算処理手段、
を備え、
前記記憶手段及び前記演算処理手段をコンピュータシステムにより構成したことを特徴とする配電系統制御システム。
【請求項9】
請求項7または8に記載した配電系統制御システムにおいて、
前記按分指標が、個々の前記需要家の設備容量比であることを特徴とする配電系統制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電系統に設置されたセンサ付き開閉器による電圧、電流、力率(電圧と電流との位相角)等の計測値に基づいてコンピュータシステムにより配電系統各部の電圧や電力潮流等を求める際に、配電線損失を考慮しながら各需要家に負荷(有効電力及び無効電力)を按分する負荷按分方法、負荷按分プログラム、及び、この負荷按分プログラムを実行する配電系統制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、配電系統に設置されたセンサ付き開閉器による計測値に基づいてコンピュータシステムが演算処理を行い、負荷を複数の区間に按分する配電線自動制御システムが開示されている。
【0003】
この従来技術では、図5に示すように、電圧、電流、位相角(力率)等を測定可能なセンサ付き開閉器30A~30Dと開閉器41~48とを有する詳細配電系統モデルM1をコンピュータシステム内に構築し、センサ付き開閉器30A~30Dをノードとして各ノード間の区間をブランチとした簡易配電系統モデルM2を作成する。次に、図6に示す如く、例えば区間A(ブランチ1)を対象として、センサ付き開閉器30A,30Bによりそれぞれ測定した通過有効電力P,P及び通過無効電力Q,Qから区間Aで消費される有効電力P(=P-P)、無効電力Q(=Q-Q)を求める。
【0004】
更に、区間A内の小区間における負荷を一様分布と仮定したうえで、有効電力P、無効電力Qを両端ノードに分配して各ノードにおける有効電力Pn1A,Pn2A、無効電力Qn1A,Qn2Aを求める。
ここで、区間A内の配電線損失をPlossA,QlossAとすると、P’=Pn1A+Pn2A+PlossA,Q’=Qn1A+Qn2A+QlossAであるから、潮流計算により求めた(Pn1A+Pn2A),(Qn1A+Qn2A)とP,Qとの差分ΔP,ΔQから配電線損失PlossA,QlossAを算出することができる。従って、これらの配電線損失PlossA,QlossAを考慮して有効電力P、無効電力Qを区間A内の小区間に按分すれば、詳細配電系統モデルM1を対象として一層正確に潮流分布を計算することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-246683号公報([0038]~[0047]、図10図12等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術では、配電線損失を求めるために事前に潮流計算を行う必要があるので、一連の按分処理に必要な計算時間が長くなる。また、この潮流計算は配電線損失を含む負荷設定のもとで行われるため、実際よりも大きい電流値を用いて計算することになり、配電線損失も実際より大きくなって計算精度も低くなる等の問題があった。
【0007】
そこで、本発明の解決課題は、事前の潮流計算を必要とせずに配電線損失を算出し、配電系統内の各需要家に対して簡単な演算処理によって負荷を正確に按分可能とした負荷按分方法、負荷按分プログラム、及び、この負荷按分プログラムを実行する配電系統制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に係る負荷按分方法は、配電線に設置されたセンサ付き開閉器による電圧、電流、力率の計測値から、前記配電線上の計測区間にて消費される有効電力、無効電力、電流を算出する第1ステップと、
前記第1ステップにより算出した前記計測区間の有効電力、無効電力、電流を、前記計測区間内の複数の分割配電線ごとに接続された複数の需要家の按分指標に応じて各需要家に按分する第2ステップと、
前記計測区間への流入電流と、前記第2ステップにより按分した前記各需要家への流入電流とに基づいて、前記複数の分割配電線を流れる電流をそれぞれ算出する第3ステップと、
前記第3ステップにより算出した前記複数の分割配電線の電流と各分割配電線のインピーダンスとから、前記複数の分割配電線における損失をそれぞれ算出する第4ステップと、
前記第4ステップにより算出した前記複数の分割配電線における損失の合計値を求め、この合計値を前記各需要家の按分指標に応じて按分することにより前記各需要家の損失配分量を算出する第5ステップと、
前記第2ステップにより按分した前記各需要家の有効電力、無効電力から、前記第5ステップにより算出した前記各需要家の損失配分量をそれぞれ減算した値を、前記各需要家が消費する新たな有効電力、無効電力として設定する第6ステップと、
を有し、
前記第1ステップ~前記第6ステップの処理を順次実行することを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る負荷按分方法は、配電線に設置された少なくとも二つのセンサ付き開閉器による電圧、電流、力率の計測値から、前記二つのセンサ付き開閉器により挟まれた計測区間にて消費される有効電力、無効電力、電流を算出する第1ステップと、
前記第1ステップにより算出した前記計測区間の有効電力、無効電力、電流を、前記計測区間内の複数の分割配電線ごとに接続された複数の需要家の按分指標に応じて各需要家に按分する第2ステップと、
前記計測区間への流入電流と、前記第2ステップにより按分した前記各需要家への流入電流とに基づいて、前記複数の分割配電線を流れる電流をそれぞれ算出する第3ステップと、
前記第3ステップにより算出した前記複数の分割配電線の電流と各分割配電線のインピーダンスとから、前記複数の分割配電線における損失をそれぞれ算出する第4ステップと、
前記第4ステップにより算出した前記複数の分割配電線における損失の合計値を求め、この合計値を前記各需要家の按分指標に応じて按分することにより前記各需要家の損失配分量を算出する第5ステップと、
前記第2ステップにより按分した前記各需要家の有効電力、無効電力から、前記第5ステップにより算出した前記各需要家の損失配分量をそれぞれ減算した値を、前記各需要家が消費する新たな有効電力、無効電力として設定する第6ステップと、
を有し、
前記第1ステップ~前記第6ステップの処理を順次実行することを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る負荷按分方法は、請求項1または2に記載した負荷按分方法において、
前記按分指標が、個々の前記需要家の設備容量比であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る負荷按分プログラムは、コンピュータシステムからなる配電系統制御システムに搭載され、演算処理装置により実行される負荷按分プログラムであって、
前記演算処理装置に、
配電線に設置されたセンサ付き開閉器による電圧、電流、力率の計測値から、前記配電線上の計測区間にて消費される有効電力、無効電力、電流を算出する第1手順と、
前記第1手順により算出した前記計測区間の有効電力、無効電力、電流を、前記計測区間内の複数の分割配電線ごとに接続された複数の需要家の按分指標に応じて各需要家に按分する第2手順と、
前記計測区間への流入電流と、前記第2手順により按分した前記各需要家への流入電流とに基づいて、前記複数の分割配電線を流れる電流をそれぞれ算出する第3手順と、
前記第3手順により算出した前記複数の分割配電線の電流と各分割配電線のインピーダンスとから、前記複数の分割配電線における損失をそれぞれ算出する第4手順と、
前記第4手順により算出した前記複数の分割配電線における損失の合計値を求め、この合計値を前記各需要家の按分指標に応じて按分することにより前記各需要家の損失配分量を算出する第5手順と、
前記第2手順により按分した前記各需要家の有効電力、無効電力から、前記第5手順により算出した前記各需要家の損失配分量をそれぞれ減算した値を、前記各需要家が消費する新たな有効電力、無効電力として設定する第6手順と、
を順次実行させることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る負荷按分プログラムは、コンピュータシステムからなる配電系統制御システムに搭載され、演算処理装置により実行される負荷按分プログラムであって、
前記演算処理装置に、
配電線に設置された少なくとも二つのセンサ付き開閉器による電圧、電流、力率の計測値から、前記二つのセンサ付き開閉器により挟まれた計測区間にて消費される有効電力、無 効電力、電流を算出する第1手順と、
前記第1手順により算出した前記計測区間の有効電力、無効電力、電流を、前記計測区間内の複数の分割配電線ごとに接続された複数の需要家の按分指標に応じて各需要家に按分する第2手順と、
前記計測区間への流入電流と、前記第2手順により按分した前記各需要家への流入電流とに基づいて、前記複数の分割配電線を流れる電流をそれぞれ算出する第3手順と、
前記第3手順により算出した前記複数の分割配電線の電流と各分割配電線のインピーダンスとから、前記複数の分割配電線における損失をそれぞれ算出する第4手順と、
前記第4手順により算出した前記複数の分割配電線における損失の合計値を求め、この合計値を前記各需要家の按分指標に応じて按分することにより前記各需要家の損失配分量を算出する第5手順と、
前記第2手順により按分した前記各需要家の有効電力、無効電力から、前記第5手順により算出した前記各需要家の損失配分量をそれぞれ減算した値を、前記各需要家が消費する新たな有効電力、無効電力として設定する第6手順と、
を順次実行させることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る負荷按分プログラムは、請求項4または5に記載した負荷按分プログラムにおいて、前記按分指標が、個々の前記需要家の設備容量比であることを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る配電系統制御システムは、配電線上の計測区間にセンサ付き開閉器が設置され、かつ、前記計測区間に複数の需要家が接続されている配電系統モデルの構成と、配電線上の前記複数の需要家の接続点によって分割される複数の分割配電線のインピーダンスと、前記センサ付き開閉器による電圧、電流、力率の計測値と、が記憶される記憶手段、
及び、
前記計測値に基づき前記計測区間において消費される有効電力、無効電力、電流を算出する第1演算手段と、前記第1演算手段により算出した前記計測区間の有効電力、無効電力、電流を前記複数の需要家の按分指標に応じて各需要家に按分する第2演算手段と、前記計測区間への流入電流及び前記第2演算手段により按分した前記各需要家への流入電流に基づいて前記分割配電線を流れる電流をそれぞれ算出する第3演算手段と、前記第3演算手段により算出した複数の前記分割配電線の電流と当該分割配電線のインピーダンスとから複数の前記分割配電線の損失をそれぞれ算出する第4演算手段と、前記第4演算手段により算出した複数の前記分割配電線の損失の合計値を前記按分指標に応じて前記各需要家に按分することにより前記各需要家の損失配分量を算出する第5演算手段と、前記第2演算手段により按分した前記各需要家の有効電力、無効電力から、前記第5演算手段により算出した前記各需要家の損失配分量をそれぞれ減算した値を前記各需要家が消費する新たな有効電力、無効電力として設定する第6演算手段と、を備えると共に、前記第1演算手段~前記第6演算手段による演算処理を順次実行するようにした演算処理手段、
を備え、
前記記憶手段及び前記演算処理手段をコンピュータシステムにより構成したことを特徴とする。
【0015】
請求項8に係る配電系統制御システムは、配電線上の少なくとも二つのセンサ付き開閉器により挟まれた計測区間に複数の需要家が接続されている配電系統モデルの構成と、配電線上の前記複数の需要家の接続点によって分割される複数の分割配電線のインピーダンスと、前記二つのセンサ付き開閉器による電圧、電流、力率の計測値と、が記憶される記憶手段、
及び、
前記計測値に基づき前記計測区間において消費される有効電力、無効電力、電流を算出する第1演算手段と、前記第1演算手段により算出した前記計測区間の有効電力、無効電力、電流を前記複数の需要家の按分指標に応じて各需要家に按分する第2演算手段と、前記計測区間への流入電流及び前記第2演算手段により按分した前記各需要家への流入電流に基づいて前記分割配電線を流れる電流をそれぞれ算出する第3演算手段と、前記第3演算手段により算出した複数の前記分割配電線の電流と当該分割配電線のインピーダンスとから複数の前記分割配電線の損失をそれぞれ算出する第4演算手段と、前記第4演算手段により算出した複数の前記分割配電線の損失の合計値を前記按分指標に応じて前記各需要家に按分することにより前記各需要家の損失配分量を算出する第5演算手段と、前記第2演算手段により按分した前記各需要家の有効電力、無効電力から、前記第5演算手段により算出した前記各需要家の損失配分量をそれぞれ減算した値を前記各需要家が消費する新たな有効電力、無効電力として設定する第6演算手段と、を備えると共に、前記第1演算手段~前記第6演算手段による演算処理を順次実行するようにした演算処理手段、
を備え、
前記記憶手段及び前記演算処理手段をコンピュータシステムにより構成したことを特徴とする。
【0016】
請求項9に係る配電系統制御システムは、請求項7または8に記載した配電系統制御システムにおいて、前記按分指標が、個々の前記需要家の設備容量比であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、事前に潮流計算を行うことなく配電線損失を短時間で正確に推定して各需要家に有効電力及び無効電力を按分することができる。これにより、配電自動化システムや系統計画支援システム等において、配電系統の各部における電圧や電力潮流を高精度に推定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る負荷按分方法を示すフローチャートである。
図2】本発明の実施形態に係る負荷按分方法を説明するための配電系統モデルの第1実施例の構成図である。
図3】本発明の実施形態に係る負荷按分方法を説明するための配電系統モデルの第2実施例の構成図である。
図4】本発明の実施形態に係る配電系統制御システムの構成図である。
図5】特許文献1に記載された従来技術が適用される配電系統モデルの構成図である。
図6図5の区間Aを中心とした有効電力、無効電力の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は、この実施形態に係る負荷按分方法を示すフローチャートであり、図2は、この負荷按分方法を説明するための配電系統モデルの模式図である。以下では、図1の各ステップS10~S90の手順を、図2に示す配電系統モデルの第1実施例を参照しつつ順に説明する。
なお、図1の各ステップS10~S90は、後述する配電系統制御システム及びこれに搭載されるプログラムによって実行されるものである。
【0020】
(1)ステップS10(第1ステップ)
まず、配電線上に設置されたセンサ付き開閉器10A,10Bによる計測値から、これらのセンサ付開閉器10A,10Bに挟まれた計測区間において消費される有効電力P、無効電力Q及び電流Iを計算する。ここで、センサ付き開閉器10A,10Bによる計測値には、各開閉器10A,10Bの設置位置における有効電力P,P、無効電力Q,Qを求めるための電圧V,V、電流I,I、及び力率(言い換えれば、電圧と電流との位相角φ,φ)等が含まれる。
なお、図2において、11,12,13,14は計測区間を構成する分割配電線、101,102,103は需要家、r~rは分割配電線11~14の抵抗、x~xは同じくリアクタンスであり、計測区間において消費される有効電力P、無効電力Q及び電流I(何れもベクトル量)は、P=P-P、Q=Q-Q、I=I-Iによって求められる。
【0021】
(2)ステップS20(第2ステップ)
ステップS10により求めたP,Q,Iを、需要家101,102,103の設備容量比により一旦按分し、P~P,Q~Q,I~Iを求める。ここで、P,Q,Iを各需要家101,102,103に按分するための指標としては、設備容量比の他に定格消費電力比を用いても良い。これらの設備容量比や定格消費電力比は、請求項における「按分指標」に相当する。
【0022】
(3)ステップS30(第3ステップ)
ステップS20により按分した各需要家101,102,103の電流I~Iを用いて、分割配電線11~14にそれぞれ流れる電流IL1~IL4を算出する。図2に示すように、これらの電流は、IL1=I,IL2=IL1-I,IL3=IL2-I,IL4=IL3-Iとなる。
【0023】
(4)ステップS40(第4ステップ)
ステップS30により求めた電流IL1~IL4と分割配電線11~14のインピーダンスとから、分割配電線11~14の損失(有効電力及び無効電力)Pls1~Pls4,Qls1~Qls4を求める。
分割配電線11~14が三相配電系統である場合、図2に示すように、これらの損失は、Pls1=3rL1 ,Qls1=3xL1 ,Pls2=3rL2 ,Qls2=3xL2 ,Pls3=3rL3 ,Qls3=3xL3 ,Pls4=3rL4 ,Qls4=3xL4 となる。
【0024】
(5)ステップS50(第5ステップ)
ステップS40により求めた分割配電線11~14の損失Pls1~Pls4,Qls1~Qls4の合計値Ploss(=Pls1+Pls2+Pls3+Pls4),Qloss(=Qls1+Qls2+Qls3+Qls4)を求め、これらの合計値Ploss,Qlossに各需要家101,102,103の設備容量比(前述したステップS20で用いた按分指標)としてのP/P,Q/Q,P/P,Q/Q,P/P,Q/Qをそれぞれ乗算して、各需要家101,102,103の損失配分量Paj1,Qaj1,Paj2,Qaj2,Paj3,Qaj3を算出する。
これらの損失配分量Paj1,Qaj1,Paj2,Qaj2,Paj3,Qaj3は、ステップS20により一旦按分した各需要家101,102,103の有効電力P~P及び無効電力Q~Qにそれぞれ含まれる配電線損失分に相当している。
【0025】
(6)ステップS60(第6ステップ)
ステップS20により一旦按分した各需要家101,102,103の有効電力P(P~P)、無効電力Q(Q~Q)から、ステップS50により求めた損失配分量Paj1,Qaj1,Paj2,Qaj2,Paj3,Qaj3をそれぞれ減算することにより、各需要家101,102,103によって消費される負荷、すなわち有効電力Pnew1~Pnew3及び無効電力Qnew1~Qnew3を求める。
これにより、センサ付き開閉器10A,10Bによる計測値から算出した計測区間の負荷(有効電力P、無効電力Q)を、分割配電線11~14における損失を除いて需要家101,102,103にそれぞれ按分し、新たな有効電力Pnew1~Pnew3及び無効電力Qnew1~Qnew3として設定することが可能になる。
【0026】
(7)ステップS70(第7ステップ)
以上の処理を、配電系統内の全計測区間について繰り返し実行することにより、負荷の按分処理を完了する。
【0027】
(8)ステップS80(第8ステップ)
その後、全計測区間について各需要家に按分した負荷のもとで、配電系統全体の各部の電圧や電力潮流を、BFS法やニュートンラフソン法等の既存の計算アルゴリズムを用いて計算する。これにより、例えば複数の分散型電源が連系されている配電系統の状態を正確に把握して配電自動化システムや系統計画支援システム等の構築に役立てることができる。
【0028】
(9)ステップS90(第9ステップ)
更に、計算結果をディスプレイ等に表示すると共に、必要に応じて上位の監視システム等に伝送することにより、一連の処理を終了する。
【0029】
次に、図3は本実施形態に係る負荷按分方法を説明するための配電系統モデルの第2実施例の構成図である。
この第2実施例は、配電線上に単一のセンサ付き開閉器10Aが設置されている場合のものであり、センサ付き開閉器10Aによる計測値P,Q,I,I、及び力率(位相角φ)に基づいて、図1の各ステップS10~S70による負荷の按分、及びステップS80,S90による潮流計算等を実行する。
各ステップにおける処理は、ステップS10においてP=P、Q=Q、I=Iとおき、ステップS50において、配電線損失の合計値をPloss=Pls1+Pls2+Pls3,Qloss=Qls1+Qls2+Qls3によってそれぞれ求める点以外は、図2の第1実施例と基本的に同一であるため、重複を避けるために説明を省略する。
【0030】
次いで、図4は、本発明の実施形態に係る配電系統制御システムの構成図である。
この配電系統制御システムは、パソコンやワークステーションとその周辺機器から構成されており、CPU1、前述したステップS10~S90をCPU1に実行させる負荷按分プログラムが格納されたROM、RAM等のメモリ2、オペレータが操作するキーボードやタッチパネル等の入力部3、ディスプレイやプリンタ等の出力部4、ハードディスク等の固定的な記憶部5、CD-RやUSBメモリ等の着脱可能な記憶媒体7、そのドライバである記憶媒体駆動部6、及び、これらをネットワーク20に接続するための無線または有線通信手段としてのネットワーク接続部8を備えている。
【0031】
例えば、図2の第1実施例に示した計測区間に設置されたセンサ付き開閉器10A,10Bは、配電系統側のネットワーク接続部21を介してネットワーク20に接続されている。そして、センサ付き開閉器10A,10Bにより計測した各種の計測値は、配電系統モデル(配電系統の構成、分割配電線11~14のインピーダンス、需要家101~103の設備容量等の情報を含む)と共に記憶部5に一旦記憶され、これらのデータはCPU1が負荷按分プログラムを実行する際にメモリ2に読み出されるようになっている。
なお、図4に示した配電系統制御システムは、図3のように単一のセンサ付き開閉器10Aが設置された配電系統にも適用可能であることは言うまでもない。
【0032】
配電系統制御システムの構成は図4に示した例に何ら限定されるものではなく、センサ付き開閉器による計測値と配電系統モデルとに基づいて負荷按分プログラムにより所定の演算処理、記憶処理、入出力処理、通信処理等を実行可能なコンピュータシステムであれば、いかなる構成であっても良い。
【符号の説明】
【0033】
1:CPU
2:メモリ
3:入力部
4:出力部
5:記憶部
6:記録媒体駆動部
7:記録媒体
8:ネットワーク接続部
10A,10B:センサ付き開閉器
11,12,13,14:分割配電線
20:ネットワーク
21:ネットワーク接続部
101,102,103:需要家
図1
図2
図3
図4
図5
図6