(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】放射電磁波推定プログラム,情報処理装置および放射電磁波推定方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/398 20200101AFI20240123BHJP
【FI】
G06F30/398
(21)【出願番号】P 2020046263
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【氏名又は名称】真田 有
(74)【代理人】
【識別番号】100189201
【氏名又は名称】横田 功
(72)【発明者】
【氏名】大石 裕介
(72)【発明者】
【氏名】山根 昇平
(72)【発明者】
【氏名】巨智部 陽一
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 洋彰
(72)【発明者】
【氏名】大原 敏靖
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-165974(JP,A)
【文献】特開平04-130278(JP,A)
【文献】特開平11-120214(JP,A)
【文献】特開2000-174087(JP,A)
【文献】特開2019-200676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00-30/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
電子回路基板の回路図を複数の部分的な回路の組合せに変換し、
変換された前記部分的な回路ごとの放射電磁波予測結果を用いて、前記電子回路基板の放射電磁波を予測する、
処理を実行させ
、
前記複数の部分的な回路は、2つの端点と、前記2つの端点の間の少なくとも1つの分岐点と、前記複数の部分的な回路で共用される少なくとも一つの励振源とをそれぞれ有する、
放射電磁波推定プログラム。
【請求項2】
前記部分的な回路ごとの放射電磁波予測結果に基づき、複数の前記放射電磁波予測結果における周波数毎の最大値をとることで、前記電子回路基板の放射電磁波を予測する
処理を前記コンピュータに実行させる、請求項1記載の放射電磁波推定プログラム。
【請求項3】
前記電子回路基板の回路図の中から
前記励振源に接続された励振回路に対して前記放射電磁波予測を行なう
処理を前記コンピュータに実行させる、請求項1または2記載の放射電磁波推定プログラム。
【請求項4】
前記励振回路の形状を単純化し
て端点と分岐点とを有する
単純化励振回路を作成し、前記単純化励振回路から、
前記2つの端点と前記2つの端点の間に少なくとも1つの分岐点とを有する前記部分的な回路を抽出する
処理を前記コンピュータに実行させる、請求項3記載の放射電磁波推定プログラム。
【請求項5】
前記励振回路の概形形状を複数の正方形セルの並んだグリッド上に投射し、前記概形形状と前記正方形セルとの交点に基づいて抽出した点を連結することで、前記単純化励振回路を作成する
処理を前記コンピュータに実行させる、請求項4記載の放射電磁波推定プログラム。
【請求項6】
前記励振回路に含まれる複数の回路部分からそれぞれ中線を抽出し、
抽出した複数の前記中線のうちの第1の中線に、当該第1の中線に最も近接する第2の中線の端部を連結直線を介して接続する処理と、当該連結直線と前記第2の中線を前記第1の中線に含める処理とを繰り返し行なうことで、前記励振回路の概形形状を作成する
処理を前記コンピュータに実行させる、請求項5記載の放射電磁波推定プログラム。
【請求項7】
前記単純化励振回路における閾値以下の線路長部分を省略する
処理を前記コンピュータに実行させる、請求項5または6記載の放射電磁波推定プログラム。
【請求項8】
前記単純化励振回路が複数の前記分岐点を有する場合に、前記複数の分岐点のそれぞれについて、前記単純化励振回路に含まれる前記複数の端点の中から前記分岐点を介して連結される2つの前記端点を特定し、
前記単純化励振回路において連結される2つの分岐点について、各分岐点に対して特定した前記2つの端点どうしを組み合わせることで、前記部分的な回路を特定する
処理を前記コンピュータに実行させる、請求項4~7のいずれか1項に記載の放射電磁波推定プログラム。
【請求項9】
電子回路基板の放射電磁波を推定する情報処理装置であって、
前記電子回路基板の回路図を複数の部分的な回路の組合せに変換する回路変換部と、
変換された前記部分的な回路ごとの放射電磁波予測結果を用いて、前記電子回路基板の放射電磁波を予測する放射電磁波予測部と
を備え
、
前記複数の部分的な回路は、2つの端点と、前記2つの端点の間の少なくとも1つの分岐点と、前記複数の部分的な回路で共用される少なくとも一つの励振源とをそれぞれ有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項10】
電子回路基板の放射電磁波を推定する
放射電磁波推定方法であって、
前記電子回路基板の回路図を複数の部分的な回路の組合せに変換
し、
変換された前記部分的な回路ごとの放射電磁波予測結果を用いて、前記電子回路基板の放射電磁波を予測する
、
処理
をコンピュータが実行し、
前記複数の部分的な回路は、2つの端点と、前記2つの端点の間の少なくとも1つの分岐点と、前記複数の部分的な回路で共用される少なくとも一つの励振源とをそれぞれ有することを特徴とする放射電磁波推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射電磁波推定プログラム,情報処理装置および放射電磁波推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路に電流を流すことで電磁波が放射される。放射電磁波(EMI)には周波数毎の規制値(10m遠方)が設けられており、回路設計においては、放射電磁波が規制値以内となるようにする必要がある。EMIはElectro Magnetic Interferenceの略語である。
【0003】
近年、ディープラーニング(Deep Learning:DL)などの機械学習技術を利用して、放射電磁波の遠方界を推定することが行なわれている。ここでいう遠方界とは、対象の回路から放射される電磁波の遠方(所定の距離)の領域のことをいい、電磁波の状況を含むものとする。所定の距離は、例えば、10メートル(m)である。
【0004】
例えば、DLによる推定方法は、学習用の回路と、当該回路に対する電磁波解析のシミュレーション結果とを対にした学習用データから生成される学習モデルを用いて、実用回路に基づく電磁波の遠方界を推定する。なお、ここでいう回路とは、回路を画像に展開した画像上の回路を意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、複雑な実用回路の推定には、無数の学習用回路が必要である。
複雑な電子回路の推定を実現するためには、膨大な数の学習用回路を用意し、機械学習させる必要がある。すなわち、従来の電磁波予測手法においては、解析対象の回路が複雑化することにより処理コストが増大するという課題がある。
【0007】
1つの側面では、本発明は、電子回路基板の電磁波予測における予測処理コストを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの案では、コンピュータに、電子回路基板の回路図を複数の部分的な回路の組合せに変換し、変換された前記部分的な回路ごとの放射電磁波予測結果を用いて、前記電子回路基板の放射電磁波を予測する、処理を実行させる。前記複数の部分的な回路は、2つの端点と、前記2つの端点の間の少なくとも1つの分岐点と、前記複数の部分的な回路で共用される少なくとも一つの励振源とをそれぞれ有する。
【発明の効果】
【0009】
1つの側面では、電子回路基板の電磁波予測における予測処理コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の一例としての推定装置の構成を例示する機能ブロック図である。
【
図3】実施形態の一例としての推定装置の励振回路抽出部の処理を説明するための図である。
【
図4】実施形態の一例としての推定装置の単純化処理部の処理を説明するための図である。
【
図5】実施形態の一例としての推定装置の単純化処理部による単純化励振回路および分岐回路パターンの生成方法の概要を説明するための図である。
【
図6】実施形態の一例としての推定装置における回路上の距離の測定方法を説明するための図である。
【
図7】実施形態の一例としての推定装置における回路上の距離の測定方法を説明するための図である。
【
図8】実施形態の一例としての推定装置の単純化処理部による中線の接続方法を説明するための図である。
【
図9】実施形態の一例としての推定装置の単純化処理部によるグリッドの細分化判断処理の例を説明するための図である。
【
図10】実施形態の一例としての推定装置の分岐回路パターン抽出部の処理の概要を説明するための図である。
【
図11】単純化励振回路に複数の分岐点が含まれている場合における、分岐回路パターン抽出部による分岐回路パターンの抽出法方法を説明するための図である。
【
図12】単純化励振回路に複数の分岐点が含まれている場合における、分岐回路パターン抽出部による分岐回路パターンの抽出法方法を説明するための図である。
【
図13】単純化励振回路に複数の分岐点が含まれている場合における、分岐回路パターン抽出部による分岐回路パターンの抽出法方法を説明するための図である。
【
図14】実施形態の一例としての推定装置のノイズ推定部による分岐回路パターン毎のノイズの推定方法を説明する図である。
【
図15】実施形態の一例としての推定装置のノイズ推定部の処理の概要を説明するための図である。
【
図16】実施形態の一例としての推定装置のノイズ推定部の処理の概要を説明するための図である。
【
図17】実施形態の一例としての推定装置のノイズ推定部の処理の概要を説明するための図である。
【
図18】実施形態の一例としての推定装置において、同一の励振回路から抽出した各分岐回路パターンの周波数毎のノイズのMAX値をとる理由を説明するための図である。
【
図19】実施形態の一例としての推定装置において、同一の励振回路から抽出した各分岐回路パターンの周波数毎のノイズのMAX値をとる理由を説明するための図である。
【
図20】実施形態の一例としての推定装置において、同一の励振回路から抽出した各分岐回路パターンの周波数毎のノイズのMAX値をとる理由を説明するための図である。
【
図21】実施形態の一例としての推定装置において、同一の励振回路から抽出した各分岐回路パターンの周波数毎のノイズのMAX値をとる理由を説明するための図である。
【
図22】折れ曲がり回数が5回までの回路を例示する図である。
【
図23】回路構成に基づく学習データのパターン数を例示する図である。
【
図25】実施形態の一例としての推定装置におけるノイズ推定部による電磁ノイズ強度の予測方法を説明するための図である。
【
図26】実施形態の一例としての推定装置におけるノイズ推定部による電磁ノイズ強度の予測方法を説明するための図である。
【
図27】実施形態の一例としての推定装置におけるノイズ推定部による電磁ノイズ強度の予測方法を説明するための図である。
【
図28】実施形態の一例としての推定装置において解析対象回路に対して行なわれる処理の概要を例示する図である。
【
図29】実施形態の一例としての推定装置における電気回路における放射電磁波の推定方法の概要を説明するためのフローチャートである。
【
図30】実施形態の一例としての推定装置の単純化処理部による励振回路の中線の抽出方法を説明するためのフローチャートである。
【
図31】実施形態の一例としての推定装置における単純化励振回路の生成方法を説明するためのフローチャートである。
【
図32】実施形態の一例としての推定装置における、単純化励振回路に複数の分岐点が含まれている場合の分岐回路パターン抽出部による処理を説明するためのフローチャートである。
【
図33】実施形態の一例としての推定装置のハードウェア構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本放射電磁波推定プログラム,情報処理装置および放射電磁波推定方法にかかる実施の形態を説明する。ただし、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、実施形態で明示しない種々の変形例や技術の適用を排除する意図はない。すなわち、本実施形態を、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、各図は、図中に示す構成要素のみを備えるという趣旨ではなく、他の機能等を含むことができる。
【0012】
(A)構成
図1は、実施形態の一例としての推定装置1の構成を例示する機能ブロック図である。
図1に例示する推定装置1は、電子回路基板から放射される電磁波(放射電磁波:EMI)を推定する。
【0013】
図1に例示する推定装置1は、制御部10および記憶部20を備える。
【0014】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)などの電子回路に対応する。そして、制御部10は、各種の処理手順を規定したプログラムや制御データを格納するための内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行する。制御部10は、回路変換部100およびノイズ推定部104を備える。
【0015】
記憶部20は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)などの半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスクなどの記憶装置である。記憶部20は、回路データ21、励振回路データ22および分岐回路パターンデータ23を有する。
【0016】
回路データ21は、回路のパターン画像を生成するために用いられるデータである。回路データ21には、学習モデルを生成するために用いられる教師データ用の回路データと、対象の回路データとを含んでもよい。回路データ21は、例えば、回路に含まれる要素ごとに、画像上に当該要素を配置する位置および当該要素と他の要素との接続に関する情報などを対応付けたデータであってもよい。回路データ21が、回路ごとに記憶部20に記憶される。回路データ21には、回路データ21を展開した回路のパターン画像(回路パターン画像)を含んでもよい。
【0017】
また、記憶部20には、教師データ用の回路データ21に対する電磁波解析におけるシミュ―レーションの結果のデータ(シミュレーション結果データ)を格納してもよい。シミュレーション結果データは、回路データを電磁波解析のシミュ―レーションの入力とした場合に、シミュ―レーションによって実行された遠方界のデータであってもよい。
【0018】
さらに、記憶部20には、解析対象の回路データ21を学習モデルに適用した場合のデータである遠方界データを格納してもよい。遠方界データは、対象の回路から放射される電磁波の遠方(所定の距離)の領域におけるそれぞれの周波数の電磁波の強度を示す。シミュレーション結果データは、教師データ用の回路データ21に対する電磁波解析におけるシミュ―レーションの結果のデータである。
【0019】
遠方界データは、対象の回路データ21を学習モデルに適用した場合のデータである。遠方界データは、対象の回路から放射される電磁波の遠方(所定の距離)の領域におけるそれぞれの周波数の電磁波の強度を示す。
【0020】
回路変換部100は、電子回路基板の回路図を複数の部分的な回路である分岐回路パターンの組合せに変換する。なお、回路とは、回路を画像に展開した画像上の回路を意味するものとする。
【0021】
回路変換部100は、
図1に示すように、励振回路抽出部101,単純化処理部102および分岐回路パターン抽出部103としての機能を備える。
【0022】
励振回路抽出部101は、解析対象回路の回路データ21に基づき、解析対象回路の中から励振源に接続された回路(部分回路)である励振回路を抽出する。
【0023】
回路データ21は、例えば、回路に含まれる要素ごとに、画像上に当該要素を配置する位置および当該要素と他の要素との接続に関する情報などを対応付けたデータであってもよい。回路データ21は、例えば、記憶装置13(
図33参照)に記憶されてもよい。回路データ21には、当該回路データ21を展開した回路のパターン画像を含んでもよい。
【0024】
励振源は、例えば、交流電源であり、回路基板において、交流電源が接続される電源ピン(電極)に直接接続された電子回路が励振回路に相当する。以下、回路基板における電源ピンを励振源という場合がある。
【0025】
図2は励振回路を説明するための図である。
この
図2に例示する回路基板上においては、矩形の複数の電源ピンに接続された複数の回路(励振回路)が形成されている。
【0026】
EMI検査では励振電源を回路に入力して調査を行なう、その際、電源(電源ピン)に接続される回路に強い電流が流れ、電磁ノイズを出力(放射)するノイズ源となっている。
【0027】
そこで、本推定装置1の励振回路抽出部101は、解析対象の電子回路基板上に形成された電子回路(回路図,解析対象電子回路)において、励振源(電源ピン)に接続された励振回路のみを抽出する。
【0028】
例えば、本推定装置1のオペレータが、キーボード15aやマウス15b(
図33参照)を用いて、回路基板における励振源を指定する入力を行なってもよく、励振回路抽出部101は、このように指定された励振源に直接接続されている回路を励振回路として抽出する。
【0029】
図3は実施形態の一例としての推定装置1の励振回路抽出部101の処理を説明するための図である。
【0030】
図3において、符号A1は励振回路の抽出前の状態を例示し、符号A2は抽出された励振回路を例示する。また、符号A3は励振源を示す。
【0031】
符号A1に示す状態において、符号A4を付して示す回路は励振源に接続されている一方で、符号A5を付して示す回路は励振源と接続されていない。
【0032】
このような符号A1に示す状態において、励振回路抽出部101は、励振源に接続されている回路(励振回路)のみを抽出する(符号A2参照)。
【0033】
励振回路抽出部101によって抽出された励振回路を示す情報は、励振回路データ22として記憶部20の所定の記憶領域に記憶される。
【0034】
単純化処理部102は、励振回路抽出部101によって抽出された励振回路の形状を単純化して単純化励振回路を作成する。単純化励振回路は、形状の単純化が行なわれた励振回路である。単純化処理部102は単純化励振回路を生成する。
【0035】
単純化処理部102は、励振回路抽出部101によって抽出された励振回路の形状を単純化して、当該励振回路中における端点と分岐点とを抽出する。すなわち、単純化励振回路は、励振回路の形状を単純化したものであり、端点と分岐点とを有する。
【0036】
図4は実施形態の一例としての推定装置1の単純化処理部102の処理を説明するための図である。
【0037】
なお、図中、既述の符号と同一の符号は同様の部分を示しているので、その説明は省略する。
【0038】
図4において、符号B1は励振回路を示し、符号B2は符号B1に示す励振回路を単純化した単純化励振回路を示す。
【0039】
図4の符号B2に例示する単純化励振回路においては、励振回路の回路形状が、縦方向の直線(鉛直線)と横方向の直線(水平線)との、互いに直交する2成分の直線で表すことで単純化されている。また、この
図4に例示する単純化励振回路においては、励振回路における所定の閾値以下の線長の分岐線が省略されている。また、
図4に符号B2で示す単純化励振回路の端部には、端点Tを示す白丸(○)と、分岐点Bを示す黒丸(●)とがそれぞれ配置されている。
【0040】
後述する分岐回路パターン抽出部103は、単純化処理部102によって作成された単純化励振回路を用いて分岐回路パターンを抽出する。
【0041】
図5は実施形態の一例としての推定装置1の単純化処理部102による単純化励振回路および分岐回路パターンの生成方法の概要を説明するための図である。
【0042】
以下、単純化処理部102による単純化励振回路の生成方法を
図5を用いて説明する。
まず、単純化処理部102は、励振回路の回路部分の中線を抽出する。以下、励振回路の回路部分の中線を、単に、励振回路の中線という場合がある。単純化処理部102は、例えば、ボロノイ分割手法を用いて、励振回路の中線を抽出してもよい。
【0043】
例えば、単純化処理部102は、励振回路から抽出した回路部分を所定間隔の複数位置において第1の方向(
図5に示す例では縦方向)に走査する。そして、単純化処理部102は、走査方向における回路幅の中点の抽出を、第2の方向(
図5に示す例では横方向)に沿う複数位置において行ない、各位置において抽出した中点を連結することで、部分回路の中線を生成(抽出)する(
図5のステップSA1参照)。
図5中においては走査方向を破線で示す。
【0044】
なお、単純化処理部102による励振回路の中線の抽出方法の詳細は、
図30に示すフローチャートを用いて後述する。
【0045】
単純化処理部102は、励振回路の残りの回路部分に対しても、同様に中線を抽出する(
図5のステップSA2参照)。
【0046】
その後、単純化処理部102は、抽出した中線を接続する(
図5のステップSA3参照)。単純化処理部102は、中線どうしを励振回路上において最短距離で接続する。
【0047】
図6および
図7は実施形態の一例としての推定装置1における回路上の距離の測定方法を説明するための図である。
図6は励振回路を例示する図であり、回路部と回路外の誘電体と回路部の中線とを示している。
【0048】
図7の符号C1は、
図6に例示する励振回路を数値で表しており、回路部を“0”で、回路外の誘電体を“-1”で、中線を“1”でそれぞれ表している。また、
図7の符号C2は、符号C1において数値で表された各位置を中線からの距離を表す値を用いて表している。このように、単純化処理部102は、励振回路上の各位置に対して中線からの距離に応じて増加する値を付与する。
【0049】
このような手法を用いることで、単純化処理部102は、励振回路上の各点を容易に中線からの距離で表すことができる。
【0050】
図8は実施形態の一例としての推定装置1の単純化処理部102による中線の接続方法を説明するための図である。
【0051】
単純化処理部102は、以下の処理a1~a3を繰り返し行なうことで中線の接続を行なう。
【0052】
処理a1:単純化処理部102は、励振回路上に設定した複数の中線のうち一の中線(例えば、最初に設定した中線)をメイン線として選択する(
図8の符号D1参照)。このメイン線は複数の中線の中からランダムに選択してもよく、また、線長が最も長い中線を選択してもよく、適宜変形して実施することができる。
図8中においてはメイン線を太線で示す一方、メイン線以外の中線を細線で示している。
【0053】
処理a2:単純化処理部102は、メイン線に対して最も距離が近い位置に端点(接続状態点)がある中線を選択し、この端点と中線とを直線で連結する。このメイン線と中線の端点とを接続する直線を連結直線という場合がある。
図8中においては連結直線を点線で示している(符号D2,D3参照)。
【0054】
処理a3:単純化処理部102は、処理a2において接続した連結直線および中線をメイン線に含める。
【0055】
すなわち、単純化処理部102は、メイン線に対して複数の中線を、一つ一つ順番に、段階的に接続(および組み込み)を行なっている。
図8の符号D3に示す例においては、(1)~(4)で示される順番でメイン線への中線の接続と組み込みとが行なわれることが示されている。また、この符号D3においては、メイン線に対して(1)において接続された中線がメイン線に含められた状態を示している。
【0056】
また、
図8に示す例において、符号D2は中線の接続方法として望ましく無い(NG:Not Good)例を示している。この符号D2に示す例においては、メイン線に対して複数の中線の端点を、段階的ではなく一度に接続した状態を示している。
【0057】
図5の説明に戻り、単純化処理部102は、励振回路から抽出した回路部分を、所定間隔で、ステップSA1とは異なる第2の方向(
図5に示す例では横方向:第1の方向と直交する方向)に走査する。そして、単純化処理部102は、走査方向における回路幅の中点の抽出を、第1の方向(
図5に示す例では縦方向)に沿う複数位置において行ない、各位置において抽出した中点を連結することで、部分回路の中線を生成(抽出)する(
図5のステップSA4参照)。
図5においては、ステップSA4において生成した縦方向の中線を破線で示す。
【0058】
その後、単純化処理部102は、ステップSA4において生成した縦方向の中線の上端と下端とを、それぞれステップSA3において生成した中線に最短距離で連結する(
図5のステップSA5参照)。このようにして作成された励振回路の中線(メイン線)は、励振回路の概形形状を表す。
【0059】
次に、単純化処理部102は、ステップSA5において生成した中線(メイン線)を仮想的に設けた検査グリッド(格子空間)上に投射する(
図5のステップSA6参照)。すなわち、単純化処理部102は、励振回路の概形形状(中線,メイン線)を検査グリッド上に投射する。
【0060】
検査グリッドにおいては所定サイズ(格子間隔)の正方形のセル(枡)が縦横に並んでいる。
【0061】
単純化処理部102は、検査グリッドと中線との交点、すなわち、セル境界上の交点を抽出する。
図5のステップSA6に示す例においては、セル境界上の交点を白丸(○)で表す。
【0062】
また、単純化処理部102は、一のセルにおいて、当該セル境界上における中線との交点が4つ以上あり、且つ、当該セル内部において中線の交点が含まれている、すなわち当該セル内で2つの中線が接続されている場合に、グリッドの細分化を行なう。
【0063】
従って、単純化処理部102は、セル境界上に4つの交点がある場合に、当該セル内における中線の接触(接続)の有無を判断する。
【0064】
図9は実施形態の一例としての推定装置1の単純化処理部102によるグリッドの細分化判断処理の例を説明するための図である。
【0065】
以下に示す例においては、単純化処理部102は、中線を複数の直線の連結で近似(多直線近似)して取り扱う。当該近似において複数の直線を連結する点を、「中線を形成する点」もしくは「連結点」という場合がある。
【0066】
単純化処理部102は、セル境界上に4つの交点があると判断したセルについて、当該セル内に含まれる連結点を計数する。以下、セル内の連結点の数をNで表す。単純化処理部102は、セル内のN個の連結点がそれぞれ繋がっている他の連結点の数の合計を求める。以下、セル内のN個の各連結点が繋がっている連結点の数の合計を、接続連結点合計数といい符号Sを用いて表す。
【0067】
例えば、
図9の符号E1に示す例においては、セル内に3つの連結点が存在する(N=3)。そして、これらの3つの連結点はそれぞれ2つの他の連結点に接続されている。従って、
図9の符号E1に示す例においては、接続連結点合計数S=6(=2+2+2)である。
【0068】
一方、
図9の符号E2に示す例においては、セル内に3つの連結点が存在する(N=3)。そして、これらの3つの連結点のうち1つの連結点に2つの他の連結点に接続され、2つの連結点にはそれぞれ3つの他の連結点に接続されている。従って、
図9の符号E2に示す例においては、接続連結点合計数S=8(=2+3+3)である。
【0069】
単純化処理部102は、接続連結点合計数Sが2N+2である場合には、
図9の符号E2に例示するように、当該セル内部において中線の交点が含まれている、すなわち中線が接続していると判断する。
【0070】
一方、単純化処理部102は、接続連結点合計数Sが2Nである場合には、
図9の符号E1に例示するように、当該セル内部において接続しない複数の中線が含まれていると判断する。この場合に、単純化処理部102は、検査グリッドの解像度を2倍にする。すなわち、検査グリッドの格子間隔を現在適用中の格子グリッドの1/2に細分化する。また、接続・非接続情報は維持する。
【0071】
次に、単純化処理部102は、中線が投射された検査グリッドにおいて、セル境界線上に交点を持つセル境界線上の中点と、セル中心点とを抽出する(
図5のステップSA7参照)。
【0072】
ここで、セル境界線上に交点を持つセル境界線上の中点とは、中線がセル境界線と交差する場合における、この中線が交差するセルの境界線(辺)の中点を示す。
【0073】
図5のステップSA7に示す例においては、セルの中心点を白抜き四角(◇)で表し、セルの境界線(辺)の中点を白丸(○)で表す。
【0074】
単純化処理部102は、これらのセルの中心点およびセルの境界線上の中点を連結することで単純化励振回路を作成する。すなわち、単純化処理部102は、励振回路の概形形状を複数の正方形セルが並ぶ検査グリッド上に投射し、概形形状と正方形セルとの交点に基づいて抽出した点(セル境界線上の中点およびセルの中心点)を連結することで、単純化励振回路を作成する。
【0075】
このように、ステップSA7において抽出した中心点および中点により、単純化励振回路が生成される。すなわち、単純化処理部102により単純化励振回路が生成される(
図5のステップSA8参照)。なお、単純化励振回路を構成するセル境界線上の中点およびセル中心点を単純化励振回路の構成要素といってもよい。単純化励振回路は、単純化励振回路の構成要素を連結することにより表される。
【0076】
また、単純化処理部102は、単純化励振回路に含まれる線分(分岐)が予め設定された閾値よりも短い場合に、当該分岐を削除することで、単純化励振回路の更なる単純化を行なってもよい。
【0077】
単純化処理部102によって作成された単純化励振回路を構成する情報は、メモリ12(
図33参照)や記憶装置13等の所定の記憶領域に格納してもよい。これにより、単純化処理部102によって作成された単純化励振回路を分岐回路パターン抽出部103に受け渡すことができる。
【0078】
分岐回路パターン抽出部103は、単純化処理部102によって作成された単純化励振回路から分岐回路パターンを抽出する。分岐回路パターン抽出部103は、単純化処理部102によって抽出された部分回路に基づき、後続するノイズ推定部104によるシミュレーション対象となる分岐回路パターンを抽出する。
【0079】
図10は実施形態の一例としての推定装置1の分岐回路パターン抽出部103の処理の概要を説明するための図である。
【0080】
図10において符号F1は単純化励振回路を例示する。分岐回路パターン抽出部103は、この単純化励振回路から2つの端点(符号T参照)を選択し、これらの端点を一筆書きで接続する1つ以上の回路部分(分岐回路パターン)を抽出する。
【0081】
図10においては、符号F2で示す分岐回路パターンと符号F3で示す分岐回路パターンとを例示している。また、これらの符号F2,F3で示す各分岐回路パターンには、それぞれ励振源(符号A3参照)が接続されている。
【0082】
また、単純化励振回路に複数の分岐点が含まれている場合には、分岐回路パターン抽出部103は、これらの分岐点毎に分岐回路パターンの抽出を行なう(
図5のステップSA9参照)。
【0083】
単純化励振回路に複数の分岐点が含まれている場合における、分岐回路パターン抽出部103による分岐回路パターンの抽出法方法を、
図11~
図13を用いて説明する。
【0084】
図11の符号G1は、4つの端点T1~T4と2つの分岐点B1,B2を備える単純化励振回路の例を示す。
【0085】
この符号G1で示される単純化励振回路においては、分岐点B1と分岐点B2とが連結され、分岐点B1における分岐点B2と反対側に端点T1と端点T2とが並列に接続されている。また、分岐点B2における分岐点B1と反対側に端点T3と端点T4とが並列に接続されている。
【0086】
分岐回路パターン抽出部103は、分岐点B1,B2のそれぞれについて、分岐回路パターンの抽出を行なう。また、分岐回路パターン抽出部103は、一の分岐点に他の分岐点が接続されている場合に、他の分岐点を端点と仮定(偽装)して一の分岐点について分岐回路パターンの抽出を行なう。
【0087】
そして、分岐回路パターン抽出部103は、これらの分岐点毎に抽出した分岐回路パターンを組み合わせる(結合/連結する)ことで、単純化励振回路全体における分岐回路パターンを生成する。
【0088】
図11の符号G1に示す例においては、分岐点B1を端点T5と仮定し、分岐点B2を端点T6と仮定する。
【0089】
また、以下、分岐回路パターンを、()内に当該分岐回路パターンに含まれる端点を並べることで表現するものとする。例えば、端点T1とT6とを繋ぐ分岐回路パターンを(T1,T6)と表す。
【0090】
分岐回路パターン抽出部103は、
図11の符号G1に例示する単純化励振回路において、分岐点B1を通る分岐回路パターンとして、(T1,T6),(T2,T6)および(T1,T2)を抽出する。また、分岐点B2を通る分岐回路パターンとして、(T3,T5),(T4,T5)および(T3,T4)を抽出する。
【0091】
以下、このように一の分岐点について抽出した、当該分岐点を通る分岐回路パターンを分岐回路パターン要素という場合がある。
【0092】
分岐回路パターン抽出部103は、これらの分岐点B1について抽出した分岐回路パターンと、分岐点B2について抽出した分岐回路パターンとを結合することで、単純化励振回路全体における分岐回路パターンを生成する。
【0093】
図11の符号G1に示す単純化励振回路においては、端点T5と端点T6とが接続されている。そこで、分岐回路パターン抽出部103は、これらの端点T5,T6を中継とするように、分岐点B1について抽出した分岐回路パターン要素と、分岐点B2について抽出した分岐回路パターン要素とを接続する。
【0094】
分岐回路パターン抽出部103は、分岐点B1について抽出した端点T6を含む2つの分岐回路パターン要素(T1,T6),(T2,T6)を選択する。また、分岐回路パターン抽出部103は、分岐点B2について抽出した端点T5を含む2つの分岐回路パターン要素(T3,T5),(T4,T5)を選択する。
【0095】
分岐回路パターン抽出部103は、これらの2つの分岐回路パターン要素(T1,T6),(T2,T6)と、2つの分岐回路パターン要素(T3,T5),(T4,T5)とを組み合わせることで構成される4通りの組合せを、端点T5,T6を繋ぐことで作成する。
【0096】
これにより、分岐回路パターン抽出部103は、以下に示す4通りの分岐回路パターンを作成する。
【0097】
(T1,T5,T6,T3),
(T2,T5,T6,T3),
(T1,T5,T6,T4),
(T2,T5,T6,T4)
【0098】
なお、単純化励振回路に3つ以上の分岐点が含まれる場合においても、分岐点毎に抽出した分岐回路パターン要素を、単純化励振回路における接続関係に応じて組み合わせることで同様に分岐回路パターンを作成することができる。
【0099】
上述の如く、本推定装置1においては、分岐回路パターン抽出部103は分岐点毎に分岐回路パターン要素を決定し、これらの分岐回路パターン要素を組み合わせることで分岐回路パターンを作成する。すなわち、分岐回路パターン抽出部103は分岐回路パターンの作成に際し、分岐点に着目して処理を行なう。
【0100】
分岐回路パターン抽出部103は、生成した分岐回路パターンを記憶部20に分岐回路パターンデータ23として記憶させる。
【0101】
次に、
図12および
図13を用いて、本推定装置1において分岐回路パターン抽出部103が分岐点に着目する理由を説明する。
図12は単純化励振回路において分岐点に着目せずに端点のみを考慮して分岐回路パターンの生成を行なう手法を例示する図、
図13は、単純化励振回路において分岐点に着目して分岐回路パターンの生成を行なう手法を例示する図である。
【0102】
図12の符号G3に例示する単純化励振回路においては、
図11に符号G1で示した単純化励振回路の分岐点B1,B2の連結に代えて、2つの平行なパスP1,P2が備えられている。すなわち、
図12中において単純化励振回路の左側に備えられている2つの端点T1,T2は、パスP1を介して、単純化励振回路の右側に備えられている2つ端点T3,T4に接続されている。同様に、2つの端点T1,T2は、パスP2を介しても、単純化励振回路の右側に備えられている2つ端点T3,T4に接続されている。
【0103】
ここで、
図12に符号G3で示す単純化励振回路に備えられた4つの端点T1~T4に着目すると、これらの4つの端点T1~T4の中から2つの端点の組合せ(分岐回路パターン)は、
4C
2=6通りが得られる(
図12の符号G4参照)。しかし、このような端点の組合せでは、パスP1,P2のいずれを通るかを特定することができない。
【0104】
これに対して、本推定装置1においては、
図13の符号G5に示すように、パスP1における端点T1,T2と接続される側の分岐点を符号B1で表し、端点T3,T4と接続される側の分岐点を符号B2で表す。なお、分岐点B1を端点T5と表し、分岐点B2を端点T6と表す場合がある。
【0105】
同様に、パスP2における端点T1,T2と接続される側の分岐点を符号B3で表し、端点T3,T4と接続される側の分岐点を符号B4で表す。また、分岐点B3を端点T7と表し、分岐点B4を端点T8と表す場合がある。
【0106】
分岐回路パターン抽出部103は、各分岐点に着目して分岐回路パターン要素の抽出を行なう。なお、この時点において、分岐点どうしの接続は行なわない。
【0107】
すなわち、
図13に符号G6で示すように、分岐回路パターン抽出部103は、分岐点B1について抽出した端点T6を含む3つの分岐回路パターン要素(T1,T6),(T2,T6),(T1,T2)を抽出する。また、分岐回路パターン抽出部103は、分岐点B2について抽出した端点T5を含む3つの分岐回路パターン要素(T5,T3),(T5,T4),(T3,T4)を抽出する。
【0108】
また、分岐回路パターン抽出部103は、分岐点B2について抽出した端点T8を含む3つの分岐回路パターン要素(T1,T8),(T2,T8),(T1,T2)を抽出する。さらに、分岐回路パターン抽出部103は、分岐点B4について抽出した端点T7を含む3つの分岐回路パターン要素(T7,T3),(T7,T4),(T3,T4)を抽出する。
【0109】
分岐回路パターン抽出部103は、端点T5(分岐点B1)と端点T6(分岐点B2)とを接続するとともに、端点T7(分岐点B3)と端点T8(分岐点B4)とを接続し(
図13の符号G7参照)、各分岐点毎に抽出した分岐回路パターン要素の組合わを行なう。
【0110】
これにより、
図13に符号G8に示すように、パスP1,P2のいずれを通るかの情報を含む10通りの分岐回路パターンを作成することができる。例えば、(T1,T5,T6,T3)によって示される分岐回路パターンは、端点T5,T6を含むので、分岐点B1,B2を連結するパスP1を含むことがわかる。
【0111】
分岐回路パターン抽出部103によって作成された分岐回路パターンを構成する情報は、メモリ12(
図33参照)や記憶装置13等の所定の記憶領域に格納してもよい。これにより、分岐回路パターン抽出部103によって作成された分岐回路パターンをノイズ推定部104に受け渡すことができる。
【0112】
ノイズ推定部104は、分岐回路パターン抽出部103によって作成された分岐回路パターン毎に遠方電磁ノイズの推定を行なう。そして、ノイズ推定部104は、これらの分岐回路パターン毎に行なった遠方電磁ノイズの推定結果を組み合わせ、スペクトル毎の最大ノイズ強度(MAX値)を求めることで、励振回路の遠方界の遠方電磁ノイズ(放射電磁波)を予測する。以下、遠方電磁ノイズを単にノイズという場合がある
【0113】
回路に分岐がある場合に、この分岐によって分けられる各回路を流れる電流(分岐電流)のうち最も強い電流が回路全体のノイズレベルを決める。そこで、本推定装置1において、ノイズ推定部104は、励振回路に基づいて作成された複数の分岐回路パターン(分岐回路)のそれぞれに対して推定した各ノイズの推定値のMAX値をとる。
【0114】
図14は実施形態の一例としての推定装置1のノイズ推定部104による分岐回路パターン毎のノイズの推定方法を説明する図である。
【0115】
図14においては、符号K1で示す分岐回路パターンと符号K3で示す分岐回路パターンとが示されている。
【0116】
ノイズ推定部104は、符号K1で示す分岐回路パターンついてAIを用いてシミュレーションの結果を用いることで符号K2に示すような電磁ノイズ強度を予測する。同様に、ノイズ推定部104は、符号K3で示す分岐回路パターンについて、AIを用いてシミュレーションの結果を用いることで符号K4に示すような電磁ノイズ強度を予測する。
【0117】
なお、分岐回路パターンについてのAIを用いた電磁ノイズ強度の予測は既知の手法で実現することができ、その説明は省略する。
【0118】
図15~
図17を用いて、実施形態の一例としての推定装置1のノイズ推定部104の処理の概要を説明する。
【0119】
図15は励振回路と当該励振回路から抽出される分岐回路パターンとを例示する図である。この
図15中において、符号H1は励振回路(Y型)を示し、符号H2~H4は符号H1で示される励振回路から抽出された分岐回路パターン(LL型,LI型,L型)を示す。
【0120】
図16は
図15に示した分岐回路パターンのそれぞれの電磁ノイズの推定値を例示するグラフである。この
図16に示すグラフにおいて、横軸は周波数(単位:例えば、Hz)を示し、縦軸は電磁ノイズ強度(単位:例えば、μV/m)を示す。
【0121】
図16において、符号NAは
図15の符号H2で示したLL型の分岐回路パターンの電磁ノイズを、符号NBは
図15の符号H3で示したLI型の分岐回路パターンの電磁ノイズを、符号NCは
図15の符号H4で示したL型の分岐回路パターンの電磁ノイズを、それぞれ示す。
【0122】
この
図16において、符号NAで示すLL型の分岐回路パターンと、符号NBで示すLI型の分岐回路パターンとでは、電磁ノイズがピークとなる周波数が異なる(符号H4,H5参照)。従って、分岐回路パターン毎に励起される周波数が異なることがわかる。
【0123】
ノイズ推定部104は、同一の励振回路から抽出した各分岐回路パターンの周波数毎のノイズの最大値をとる。ノイズ推定部104は、例えばMAX関数を用いる。
【0124】
ノイズ推定部104は、例えば、同一の励振回路から抽出した各分岐回路パターンの周波数毎のノイズの値を重ね合わせ(
図16参照)、周波数毎に最大値をとる。例えば、
図16に示す例において、0.6Hz以下の周波数においては、符号NAで示す
図15の符号H2で示したLL型の分岐回路パターンの電磁ノイズの値が選択される。また、約0.6Hzより大きい周波数では、符号NBで示す
図15の符号H3で示したLI型の分岐回路パターンの電磁ノイズの値が選択される。
【0125】
以下、同一の励振回路から抽出した各分岐回路パターンの周波数毎のノイズの最高値を、単にMAX値をいう場合がある。
【0126】
図17は
図16に示した各分岐回路パターンの電磁ノイズのMAX値を例示するグラフである。この
図17に示すグラフにおいても、横軸は周波数を示し、縦軸は電磁ノイズ強度を示す。
【0127】
この
図17において、符号NEは、
図16に示した各分岐回路パターンの電磁ノイズのMAX値を示す。また、
図17において、符号NDは、
図15に示した励振回路(Y型)について行なった遠方電磁ノイズのシミュレーションの結果を示す。
【0128】
ここで、
図18~
図21を用いて、本推定装置1において、同一の励振回路から抽出した各分岐回路パターンの周波数毎のノイズのMAX値をとる理由を説明する。
【0129】
図18において、符号J1,J2はそれぞれ励振回路を示す。また、符号J1で示す励振回路は分岐を含んでおらず、符号J2で示す励振回路は同じ長さを有する3分岐を備える。
【0130】
符号J1に示すような分岐のない回路からは、電源からのエネルギーと、回路長で決まる周波数に応じた電磁ノイズ(最大ノイズ強度α)が放出される。これに対して、符号J2に示すような同じ長さの3分岐の回路に同じ電源からエネルギーを与えると、それぞれの回路から1/3の電磁ノイズが放出される。各分岐から放出される最大ノイズ強度の合計が最大ノイズ強度αと等しい。
【0131】
図19は
図18の符号J2で示した3分岐回路を分解して示す図である。
この
図19において、符号J3~J4は、符号J2で示した3分岐回路を構成する3つの回路をそれぞれ示す。符号J3で示す回路を分岐回路#1と、符号J4で示す回路を分岐回路#2と、符号J5で示す回路を分岐回路#3と、それぞれ表す。
【0132】
AIを用いて、一の3分岐回路から抽出したこれらの分岐回路#1~#3毎にノイズ強度の予測を行なうと、AIは、分岐回路#1~#3のそれぞれが電源から供給される全エネルギーを受け取ったものとする予測値を出力する。すなわち、これらの分岐回路#1~#3のノイズ強度を合計すると最大ノイズ強度が3αとなる。
【0133】
本推定装置1においては、ノイズ推定部104が同一の励振回路から抽出した各分岐回路パターンの周波数毎のノイズのMAX値をとることで、AIによるノイズ強度の推定値の精度を向上させる。
【0134】
図20において、符号J6は励振回路を示す。この符号J6で示す励振回路は、最大ノイズ強度がαの分岐回路と最大ノイズ強度がβの分岐回路との異なる長さの2つの分岐回路を有する。
【0135】
上述の如く、分岐のない回路からは、電源からのエネルギーと、回路長で決まる周波数に応じた電磁ノイズ(最大ノイズ強度α)が放出される。
【0136】
図21は
図20の符号J6で示した2分岐回路を分解して示す図である。
【0137】
この
図21において、符号J7,J8は、符号J6で示した2分岐回路を構成する2つの回路をそれぞれ示す。符号J7で示す回路を分岐回路#4と、符号J8で示す回路を分岐回路#5と、それぞれ表す。
【0138】
長さの異なる分岐回路#4と分岐回路#5は異なる周波数のノイズを発生するが、各周波数間成分のエネルギーの受け渡しをしない線形現象であるため、異なる周波数同士のカップリングは起きない。そのため、「足し合わせ」か「MAX関数」で組み合わせることで、励振回路全体の電磁ノイズが予測可能である。本推定装置1においては、同じ長さの分岐も考慮して、「足し合わせ」の代わりに「周波数毎のMAX関数」を用いて励振回路のノイズを予測する。
【0139】
また、本推定装置1においては、ノイズ推定部104における一筆書き回路の網羅的学習を実現するために、折れ曲がり回数が5回まで(5回以下)の回路をAIの学習データとして保持してもよい。学習データは記憶部20に記憶してもよい。
【0140】
図22は折れ曲がり回数が5回までの回路を例示する図である。
なお、ノイズ推定部104は交差がある回路は学習データから省くものとする。単純計算ではΣ2^i = 63通りであるが、点対称となるケースおよび線対称となるケースをそれぞれ除外することで23通りに減らすことができる。
【0141】
各線分の長さを3パターンに振ったとすると合計9057パターンとなる。これは、学習データの組合せによって得られる回路のバリエーション(種類数)と比較して少ない数である。つまり、多種多様な電子回路の放射電磁波の推定に対応する上での、学習データの数が少なくなる。さらに、交差やはみ出しなどが含まれるため実際のパターン数はより少ない。
【0142】
なお、折れ曲り回数は5回までに限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
【0143】
図23は回路構成に基づく学習データのパターン数を例示する図である。
この
図23においては、曲り回数,曲りパターン数および線長パターン数の組合せによるパターン数を示す。
【0144】
この
図23に示すように、折れ曲がり回数が5回までである場合には、学習データは最大で7290パターンとなる。
【0145】
また、本推定装置1においては、学習データを削減するために回路の対称性も考慮する。
図24は回路の対称性を説明するための図である。この
図24においては、折れ曲りの回数(0~4回)に応じて網羅的に回路形状を抽出して示す(図中、点線および実線で表す各回路形状を参照)。
【0146】
遠方電磁ノイズ強度は、回路の平面上の向きに寄らないため、回転対称の回路および線対称の回路においては同じとなる。このような特定に基づき、本推定装置1においては、回転対称の回路および線対称の回路を除外することで学習データを削減する(符号Q1~Q3参照)。これにより、
図24に示す例においては、破線で示す回路のみが学習データとして記憶され、用いられる。
【0147】
なお、
図24に示す例においては、便宜上、折れ曲りの回数として0~4を示しているがこれに限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
【0148】
ノイズ推定部104においては、分岐なし回路において学習したAIを用いて電磁ノイズ強度の予測(シミュレーション)を行なう。
【0149】
ノイズ推定部104は、分岐回路パターンの画像を学習モデルに入力し、学習モデルにより電磁波の遠方界を推定する。かかる学習モデルは、学習用回路のデータである学習データ(回路画像)と、当該学習用回路のシミュレーション結果を示す電磁波の遠方界のデータ(「遠方界データ」)とを対にした教師データから生成される学習用のモデルである。遠方界データには、周波数ごとの電磁波の強度が含まれる。
【0150】
これにより、ノイズ推定部104は、電磁波の途中の影響(近傍界)を考慮した学習モデルを用いることで、対象の回路について、電磁波の遠方界を精度良く推定できる。また、推定装置1は、対象の回路にシミュレーションを施さないで、分岐回路パターンの画像を学習モデルの入力に利用することで、電磁波の遠方界を高速に推定できる。
【0151】
ノイズ推定部104は、分岐回路パターンの形状に基づき、学習データを参照して、学習データの中から分岐回路パターンと形状が似た回路を選択する。そして、ノイズ推定部104は、この選択した学習データに対応する遠方界を用いることで分岐回路パターンの電磁ノイズ強度を推定する。
【0152】
図25~
図27は、それぞれ実施形態の一例としての推定装置1におけるノイズ推定部104による電磁ノイズ強度の予測方法を説明するための図である。
図25および
図26はノイズ推定部104による分岐回路パターンの電磁ノイズ強度の推定方法を説明するための図である。
図27は分岐回路パターンの電磁ノイズ強度に基づいて励振回路の電磁ノイズ強度の予測方法を説明するための図である。
【0153】
図25および
図26に示す例において、ノイズ推定部104は、符号M1や符号M3で示す分岐回路パターンの画像データに基づいて学習データを参照して、曲がり回数,曲がりパターン,線長パターンが一致する回路を選択する。ノイズ推定部104は、選択した学習データの回路に対応する遠方界を用いて、分岐回路パターンの電磁ノイズ強度を推定する(符号M2,M4参照)。
【0154】
図27に示すように、ノイズ推定部104は、これらの各分岐回路パターンの電磁ノイズ強度のMAX値をとることで(
図27の符号M5参照)、励振回路の電磁ノイズ強度を予測する(
図27の符号M6参照)。
【0155】
(B)動作
上述の如く構成された実施形態の一例としての推定装置1における電気回路における放射電磁波の推定方法の概要を、
図28を参照しながら、
図29に示すフローチャート(ステップS11~S17)に従って説明する。
図28は実施形態の一例としての推定装置1において解析対象回路に対して行なわれる処理の概要を例示する図である。
【0156】
図29のステップS11において、本推定装置1のオペレータは、解析対象回路の回路データ(
図28の符号S1参照)と励振源の位置を示す情報とを入力する。
【0157】
励振回路抽出部101は、解析対象回路の回路データに基づき、解析対象回路の中から励振源に接続された回路である励振回路を抽出する。
図28の符号S2においては、励振回路が電磁ノイズの発生源となっている状態を示す。
【0158】
単純化処理部102が、励振回路抽出部101によって抽出された励振回路に基づき部分回路を抽出する。
【0159】
図29のステップS12において、単純化処理部102は、励振回路抽出部101によって抽出された励振回路の形状を単純化して単純化励振回路を作成する(
図28の符号S3参照)。また、単純化処理部102は、単純化励振回路において端点と分岐点とを抽出する。
【0160】
図29のステップS13において、分岐回路パターン抽出部103が、単純化処理部102によって作成された単純化励振回路から、一筆書き回路である分岐回路パターンを、複数、抽出する(
図28の符号S4参照)。
【0161】
図29のステップS14において、ノイズ推定部104が、分岐回路パターン毎に遠方界での電磁波スペクトルをAIで予測する(
図28の符号S5参照)。
図29のステップS15において、ノイズ推定部104は、スペクトル毎の最大ノイズ強度(MAX値)を求める。ノイズ推定部104は、このように複数の分岐回路パターンのノイズ強度のMAX値をとることで求めたスペクトル毎の最大ノイズ強度を、励振回路の遠方界のノイズとして予測値とする(
図29のステップS16,
図28の符号S6参照)。
図29のステップS17において、ノイズ推定部104は決定した予測値(遠方界のノイズ強度)をモニタ14a等に出力し、処理を終了する。
【0162】
次に、実施形態の一例としての推定装置1の単純化処理部102による励振回路の中線の抽出方法を、
図30に示すフローチャート(ステップS21~S32)に従って説明する。
【0163】
ステップS21において、単純化処理部102に解析対象回路の励振回路のデータ等が入力される。
【0164】
以下、ステップS22~S26において、単純化処理部102は、励振回路に対して横方向(右方向)への中線の抽出を行なう。
【0165】
ステップS22において、単純化処理部102は、メモリ12等の記憶領域(走査空間)に励振回路の画像データを展開し、例えば、この励振回路の左上位置を基点に右方向に向かって走査しながら、回路部分の中線の抽出を行なう。
【0166】
ステップS23において、単純化処理部102は、右方向に対する中線の抽出が行なわれていない回路があるかを確認する。確認の結果、右方向への走査による中線の抽出が行なわれていない回路部分がある場合には(ステップS23のYESルート参照)、ステップS24に移行する。ステップS24においては、右方向への中線の抽出が行なわれていない回路部分を抽出した後、ステップS22に戻り、この抽出した回路部分に対して中線の抽出を行なう。
【0167】
ステップS23における確認の結果、右方向への走査による中線の抽出が行なわれていない回路がない場合には(ステップS23のNOルート参照)、ステップS25に移行する。
【0168】
ステップS25において、単純化処理部102は、ステップS22において最初に引いた(設定した)横方向の中線(メイン線)に対して、回路上の距離が最も近い、メイン線以外の横方向の中線(横中線)を連結直線により連結する。また、単純化処理部102は、メイン線に連結した連結直線および横中線をメイン線に含める。
【0169】
ステップS26において、単純化処理部102は、励振回路上にメイン線以外の横中線があるかを確認する。確認の結果、メイン線以外の横中線が残っている場合には(ステップS26のYESルート参照)、ステップS25に戻る。
【0170】
また、ステップS26における確認の結果、メイン線以外の横中線が残っていない場合には(ステップS26のNOルート参照)、ステップS27に移行する。
【0171】
以下、ステップS27~S31において、単純化処理部102は、励振回路に対して縦方向(下向き方向)への中線の抽出を行なう。
【0172】
ステップS27において、単純化処理部102は、メモリ12等の記憶領域(走査空間)に展開された励振回路の画像データに対して、この励振回路の左上位置を基点に下方向に向かって走査しながら、回路部分の中線の抽出を行なう。
【0173】
ステップS28において、単純化処理部102は、縦方向への中線の抽出が行なわれていない回路があるかを確認する。確認の結果、縦方向への走査による中線の抽出が行なわれていない回路部分がある場合には(ステップS28のYESルート参照)、ステップS29に移行する。ステップS29においては、縦中線の抽出が行なわれていない回路部分を抽出した後、ステップS27に戻り、この抽出した回路部分に対して中線の抽出を行なう。
【0174】
ステップS28における確認の結果、縦方向への走査による中線の抽出が行なわれていない回路がない場合(ステップS28のNOルート参照)、すなわち、全ての回路において縦方向への走査による中線の抽出が行なわれた場合には、ステップS30に移行する。
【0175】
ステップS30において、単純化処理部102は、ステップS27において最初に引いた(設定した)縦方向の中線(縦メイン線)に対して、回路上の距離が最も近い、メイン線以外の縦中線を連結直線により連結する。また、単純化処理部102は、縦メイン線に連結した連結直線および縦中線を縦メイン線に含める。
【0176】
ステップS31において、単純化処理部102は、励振回路上に縦メイン線以外の縦方向の中線(縦中線)があるかを確認する。確認の結果、メイン線以外の縦中線が残っている場合には(ステップS31のYESルート参照)、ステップS30に戻る。
【0177】
また、ステップS31における確認の結果、縦メイン線以外の縦中線が残っていない場合には(ステップS31のNOルート参照)、ステップS32に移行する。
【0178】
ステップS32において、単純化処理部102は、メイン線に対して最も回路上の距離が近い縦メイン線の端点を連結直線を用いて結ぶ。単純化処理部102は、これらの連結直線および縦メイン線をメイン線に含める。
【0179】
その後、処理を終了する。単純化処理部102により生成されたメイン線は、励振回路の中線として出力される。
【0180】
次に、実施形態の一例としての推定装置1における単純化励振回路の生成方法を、
図31に示すフローチャート(ステップS41~S50)に従って説明する。
【0181】
なお、本処理においては、
図30に示したフローチャートによる処理で生成されたメイン線(回路中線)が用いられる。
【0182】
ステップS41において、単純化処理部102は、回路中線(メイン線)を仮想的に設けた検査グリッド(格子空間)上に投射する。また、グリッドサイズΔに初期値Δ0が設定される(Δ=Δ0)。この初期値Δ0は、例えば、本推定装置1のオペレータが設定してもよい。
【0183】
ステップS42において、単純化処理部102は、検査グリッドと中線との交点、すなわち、セル境界上の交点を抽出する。
【0184】
ステップS43において、単純化処理部102は、セル境界線上の交点が4つ以上あるセルがあるかを確認する。確認の結果、セル境界線上の交点が4つ以上あるセルがある場合には(ステップS43のYESルート参照)、ステップS48に移行する。
【0185】
ステップS48において、単純化処理部102は、セル境界線上の交点が4つ以上あるセルの内部で2つの中線が接続しているかを確認する。確認の結果、当該セル内で2つの中線の接続が無い場合には(ステップS48のNOルート参照)、ステップS49に移行する。
【0186】
ステップS49において、単純化処理部102は、グリッドサイズΔを半分にする(Δ=0.5Δ)。すなわち、単純化処理部102はセルの解像度を2倍にする。その後、ステップS42に戻る。
【0187】
ステップS48における確認の結果、セル境界線上の交点が4つ以上あるセルの内部で2つの中線が接続している場合には(ステップS48のYESルート参照)、ステップS44に移行する。
【0188】
また、ステップS43における確認の結果、セル境界線上の交点が4つ以上あるセルがない場合にも(ステップS43のNOルート参照)、ステップS44に移行する。
【0189】
ステップS44において、単純化処理部102は、中線が投射された検査グリッドにおいて、セル境界線上に交点を持つセル境界線上の中点と、セル中心点とを抽出する。
【0190】
ステップS45において、単純化処理部102は、ステップS44において抽出されたセル境界線上の中点とセル中心点とを連結することで単純化励振回路を完成させる。単純化処理部102は、単純化励振回路を構成する線分(分岐)が予め設定された閾値よりも短い場合に、当該分岐を除去する。
【0191】
ステップS46において、分岐回路パターン抽出部103が、分岐点毎に分岐回路パターンを抽出する。
【0192】
ステップS47において、単純化処理部102は、グリッドサイズΔが初期値Δ0よりも小さいか(Δ<Δ0)を確認する。確認の結果、リッドサイズΔが初期値Δ0よりも小さい場合に(ステップS47のYESルート参照)、ステップS50に移行する。
【0193】
ステップS50において、単純化処理部102は、Δ0の分岐毎の回路を入力する。単純化処理部102は、ステップS46で抽出された分岐回路パターンを検査グリッド上に投射する。また、ステップS41と同様に、グリッドサイズΔに初期値Δ0が設定される(Δ=Δ0)。その後、ステップS42に移行する。すなわち、ステップS50実行後のステップS42では、回路中線(メイン線)に代えて、検査グリッドとステップS46で抽出された分岐回路パターンとの交点が抽出されることとなる。これにより、抽出された分岐回路パターンが単純化される。抽出された分岐回路が、Δ<Δ0のグリッド上で抽出された場合、Δ=Δ0のグリッド上で抽出しなおす。これにより、抽出された分岐回路を単純化できる。
【0194】
なお、ステップS42では、中線を最初に処理フローに入れて分岐回路を抽出するが、分岐回路抽出が、Δ<Δ0で行なわれた場合は、処理がステップS47を介して戻ってきて、ステップS42からの処理フローに抽出された分岐回路それぞれを入れる。これにより、Δ=Δ0のグリッド上に抽出された分岐回路をマッピングし、構造を単純化する。
【0195】
一方、ステップS47における確認の結果、グリッドサイズΔが初期値Δ0以上である場合には(ステップS47のNOルート参照)、処理を終了する。
【0196】
単純化処理部102は、分岐毎の単純化励振回路を出力する。この単純化励振回路の情報は、分岐回路パターン抽出部103に入力されてもよい。
【0197】
次に、実施形態の一例としての推定装置1における、単純化励振回路に複数の分岐点が含まれている場合の分岐回路パターン抽出部103による処理を、
図32に示すフローチャート(ステップS51~S55)に従って説明する。
【0198】
ステップS51において、分岐回路パターン抽出部103に、単純化励振回路における端点および分岐点の位置と、これらの端点や分岐点の接続関係を示す接続情報とが入力される。
【0199】
ステップS52において、分岐回路パターン抽出部103は、単純化励振回路における、分岐点毎に、端点-分岐点-端点の3点からなる分岐部分回路(分岐回路パターン要素)を全て抽出する。この際、分岐回路パターン抽出部103は、着目する分岐点(自分)以外の分岐点を端点として扱う。
【0200】
ステップS53において、分岐回路パターン抽出部103は、抽出された分岐部分回路のうち、分岐点兼端点である点を端点に含まないものを分岐回路パターンとして登録する。
【0201】
ステップB54において、分岐回路パターン抽出部103は、分岐回路パターンとして登録されていない分岐点兼端点の点を含む分岐部分回路(分岐回路パターン要素)があるかを確認する。
【0202】
確認の結果、分岐回路パターンとして登録されていない分岐点兼端点の点を含む分岐部分回路(分岐回路パターン要素)がある場合には(ステップS54のYESルート参照)、ステップS55に移行する。
【0203】
ステップS55において、分岐回路パターン抽出部103は、1つの分岐点(α)について、抽出された分岐点兼端点(β)を含む分岐回路パターンについて、αとβとを結ぶ新しい分岐回路部分回路(分岐回路パターン要素)を抽出する。その後、ステップS53に戻る。
【0204】
また、ステップS54における確認の結果、分岐回路パターンとして登録されていない分岐点兼端点の点を含む分岐部分回路(分岐回路パターン要素)がない場合には(ステップS54のNOルート参照)、処理を終了する。分岐回路パターン抽出部103は、分岐回路パターン(分岐回路)を出力する。
【0205】
(C)効果
このように、本発明の一実施形態としての推定装置1によれば、励振回路抽出部101が、解析対象回路からノイズ源となる励振回路を抽出し、この励振回路に基づいて放射電磁波予測を行なう。説明した実施形態においては、前述のように、多種多様な電子回路の放射電磁波の推定に対応する上での、学習データの数が少なくなる。そのため、放射電磁波予測に関する処理対象のデータ量を削減することができる。
【0206】
ノイズ推定部104が、解析対象回路から抽出された単純化励振回路に含まれる複数の分岐回路パターンに対してAIを用いた放射電磁波予測(ノイズ強度の推定)を行ない、これらの複数の分岐回路パターンのノイズ強度のMAX値をとることで、解析対象回路の放射電磁波予測を実現する。
【0207】
これにより、分岐回路パターンに基づく演算負荷の低い処理で解析対象回路の放射電磁波予測を実現することができる。従って、放射電磁波予測に要する処理時間を短縮することができるとともに、本推定装置1の負荷を軽減することができる。すなわち、電子回路基板の電磁波予測における予測処理コストを低減することができる。
【0208】
単純化処理部102が、励振回路の構成を単純化した単純化励振回路を作成することで、分岐回路パターン抽出部103が、この単純化励振回路に基づいて分岐回路パターンの抽出を低負荷で行なうことができる。
【0209】
単純化処理部102が、励振回路の中線を抽出することで、励振回路の概形形状を求める。これにより、励振回路の単純化を容易且つ低負荷で実現することができる。また、単純化処理部102が、励振回路の中線を検査グリッド上に投射し、概形形状と正方形セルとの交点に基づいて抽出した点(セル境界線上の中点およびセルの中心点)を連結することで、単純化励振回路を作成する。これによっても、単純化励振回路を容易且つ低負荷で作成することができる。
【0210】
単純化処理部102が、単純化励振回路において、閾値以下の線路長部分を省略することでも、単純化励振回路を容易且つ低負荷で作成することができる。
【0211】
(D)その他
図33は実施形態の一例としての推定装置1のハードウェア構成を例示する図である。
【0212】
推定装置1は、例えば、プロセッサ11,RAM(Random Access Memory)12,HDD13,グラフィック処理装置14,入力インタフェース15,光学ドライブ装置16,機器接続インタフェース17およびネットワークインタフェース18を構成要素として有する。これらの構成要素11~18は、バス19を介して相互に通信可能に構成される。
【0213】
プロセッサ(処理部)11は、推定装置1全体を制御する。プロセッサ11は、マルチプロセッサであってもよい。プロセッサ11は、例えばCPU,MPU(Micro Processing Unit),DSP(Digital Signal Processor),ASIC(Application Specific Integrated Circuit),PLD(Programmable Logic Device),FPGA(Field Programmable Gate Array)のいずれか一つであってもよい。また、プロセッサ11は、CPU,MPU,DSP,ASIC,PLD,FPGAのうちの2種類以上の要素の組合わせであってもよい。このプロセッサ11が
図1に示した制御部10として機能してもよい。
【0214】
メモリ12は、ROM(Read Only Memory)およびRAMを含む記憶メモリである。メモリ12のRAMは、推定装置1の主記憶装置として使用される。RAMには、プロセッサ11に実行させるOS(Operating System)プログラムやアプリケーションプログラムの少なくとも一部が一時的に格納される。また、RAMには、プロセッサ11による処理に必要な各種データが格納される。アプリケーションプログラムには、推定装置1によって本実施形態の放射電磁波推定機能を実現するためにプロセッサ11によって実行される放射電磁波推定プログラムが含まれてもよい。このメモリ12が
図1に示す記憶部20として機能してもよい。
【0215】
記憶装置13は、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)、SSD(Solid State Drive)、ストレージクラスメモリ(Storage Class Memory:SCM)等の記憶装置であって、種々のデータを格納するものである。記憶装置13は、推定装置1の補助記憶装置として使用される。記憶装置13には、OSプログラム,制御プログラム、アプリケーション102および各種データが格納される。なお、補助記憶装置としては、SCMやフラッシュメモリ等の半導体記憶装置を使用することもできる。この記憶装置13が
図1に示す記憶部20として機能してもよい。
【0216】
グラフィック処理装置14には、モニタ14aが接続されている。グラフィック処理装置14は、プロセッサ11からの命令に従って、画像をモニタ14aの画面に表示させる。モニタ14aとしては、CRT(Cathode Ray Tube)を用いた表示装置や液晶表示装置等が挙げられる。
【0217】
入力インタフェース15には、キーボード15aおよびマウス15bが接続されている。入力インタフェース15は、キーボード15aやマウス15bから送られてくる信号をプロセッサ11に送信する。なお、マウス15bは、ポインティングデバイスの一例であり、他のポインティングデバイスを使用することもできる。他のポインティングデバイスとしては、タッチパネル,タブレット,タッチパッド,トラックボール等が挙げられる。
【0218】
光学ドライブ装置16は、レーザ光等を利用して、光ディスク26aに記録されたデータの読み取りを行なう。光ディスク16aは、光の反射によって読み取り可能にデータを記録された可搬型の非一時的な記録媒体である。光ディスク16aには、DVD(Digital Versatile Disc),DVD-RAM,CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory),CD-R(Recordable)/RW(ReWritable)等が挙げられる。
【0219】
機器接続インタフェース17は、推定装置1に周辺機器を接続するための通信インタフェースである。例えば、機器接続インタフェース17には、メモリ装置17aやメモリリーダライタ17bを接続することができる。メモリ装置17aは、機器接続インタフェース17との通信機能を搭載した非一時的な記録媒体、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリである。メモリリーダライタ17bは、メモリカード17cへのデータの書き込み、またはメモリカード17cからのデータの読み出しを行なう。メモリカード17cは、カード型の非一時的な記録媒体である。
【0220】
ネットワークインタフェース18は、図示しないネットワークに接続される。ネットワークインタフェース18は、ネットワークを介して、他のコンピュータまたは通信機器との間でデータの送受信を行なう。
【0221】
以上のようなハードウェア構成を有する推定装置1において、プロセッサ11が放射電磁波推定プログラムを実行することで、上述した回路変換部100(励振回路抽出部101,単純化処理部102,分岐回路パターン抽出部103)およびノイズ推定部104としての機能が実現される。
【0222】
なお、これらの回路変換部100(励振回路抽出部101,単純化処理部102,分岐回路パターン抽出部103)およびノイズ推定部104としての機能を実現するためのプログラム(放射電磁波予測プログラム)は、例えばフレキシブルディスク,CD(CD-ROM,CD-R,CD-RW等),DVD(DVD-ROM,DVD-RAM,DVD-R,DVD+R,DVD-RW,DVD+RW,HD DVD等),ブルーレイディスク,磁気ディスク,光ディスク,光磁気ディスク等の、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録された形態で提供される。そして、コンピュータはその記録媒体からプログラムを読み取って内部記憶装置または外部記憶装置に転送し格納して用いる。また、そのプログラムを、例えば磁気ディスク,光ディスク,光磁気ディスク等の記憶装置(記録媒体)に記録しておき、その記憶装置から通信経路を介してコンピュータに提供するようにしてもよい。
【0223】
回路変換部100(励振回路抽出部101,単純化処理部102,分岐回路パターン抽出部103)およびノイズ推定部104としての機能を実現する際には、内部記憶装置(本実施形態ではメモリ12のRAMやROM)に格納されたプログラムがコンピュータのマイクロプロセッサ(本実施形態ではプロセッサ11)によって実行される。このとき、記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータが読み取って実行するようにしてもよい。
【0224】
また、RAM12に、上述した回路データ21,励振回路データ22および分岐回路パターンデータ23が記憶される。これらの回路データ21,励振回路データ22および分岐回路パターンデータ23は、記憶装置13に記憶されてもよい。
【0225】
開示の技術は上述した実施形態に限定されるものではなく、本実施形態の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成および各処理は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
【0226】
また、記憶部20を推定装置1の外部装置としてネットワーク経由で接続するようにしても良い。
【0227】
また、上述した開示により本実施形態を当業者によって実施・製造することが可能である。
【0228】
(E)付記
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0229】
(付記1)
コンピュータに、
電子回路基板の回路図を複数の部分的な回路の組合せに変換し、
変換された前記部分的な回路ごとの放射電磁波予測結果を用いて、前記電子回路基板の放射電磁波を予測する、
処理を実行させる。放射電磁波推定プログラム。
【0230】
(付記2)
前記部分的な回路ごとの放射電磁波予測結果に基づき、複数の前記放射電磁波予測結果における周波数毎の最大値をとることで、前記電子回路基板の放射電磁波を予測する
処理を前記コンピュータに実行させることを特徴とする、付記1記載の放射電磁波推定プログラム。
【0231】
(付記3)
前記電子回路基板の回路図の中から励振源に接続された励振回路に対して前記放射電磁波予測を行なう
処理を前記コンピュータに実行させることを特徴とする、付記1または2記載の放射電磁波推定プログラム。
【0232】
(付記4)
前記励振回路の形状を単純化し、端点と分岐点とを有する単純化励振回路から、2つの端点と前記2つの端点の間に少なくとも1つの分岐点とを有する前記部分的な回路を抽出する
処理を前記コンピュータに実行させる、付記3記載の放射電磁波推定プログラム。
【0233】
(付記5)
前記励振回路の概形形状を複数の正方形セルの並んだグリッド上に投射し、前記概形形状と前記正方形セルとの交点に基づいて抽出した点を連結することで、前記単純化励振回路を作成する
処理を前記コンピュータに実行させる、付記4記載の放射電磁波推定プログラム。
【0234】
(付記6)
前記励振回路に含まれる複数の回路部分からそれぞれ中線を抽出し、
抽出した複数の前記中線のうちの第1の中線に、当該第1の中線に最も近接する第2の中線の端部を連結直線を介して接続する処理と、当該連結直線と前記第2の中線を前記第1の中線に含める処理とを繰り返し行なうことで、前記励振回路の概形形状を作成する
処理を前記コンピュータに実行させる、付記5記載の放射電磁波推定プログラム。
【0235】
(付記7)
前記単純化励振回路における閾値以下の線路長部分を省略する
処理を前記コンピュータに実行させる、付記5または6記載の放射電磁波推定プログラム。
【0236】
(付記8)
前記単純化励振回路が複数の前記分岐点を有する場合に、前記複数の分岐点のそれぞれについて、前記単純化励振回路に含まれる前記複数の端点の中から前記分岐点を介して連結される2つの前記端点を特定し、
前記単純化励振回路において連結される2つの分岐点について、各分岐点に対して特定した前記2つの端点どうしを組み合わせることで、前記部分的な回路を特定する
処理を前記コンピュータに実行させる、付記4~7のいずれか1項に記載の放射電磁波推定プログラム。
【0237】
(付記9)
電子回路基板の放射電磁波を推定する情報処理装置であって、
前記電子回路基板の回路図を複数の部分的な回路の組合せに変換する回路変換部と、
変換された前記部分的な回路ごとの放射電磁波予測結果を用いて、前記電子回路基板の放射電磁波を予測する放射電磁波予測部と
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【0238】
(付記10)
前記放射電磁波予測部が、
前記部分的な回路ごとの放射電磁波予測結果に基づき、複数の前記放射電磁波予測結果における周波数毎の最大値をとることで、前記電子回路基板の放射電磁波を予測する
ことを特徴とする、付記9記載の情報処理装置。
【0239】
(付記11)
前記回路変換部が、
前記電子回路基板の回路図の中から励振源に接続された励振回路に対して前記放射電磁波予測を行なう
ことを特徴とする、付記9または10記載の情報処理装置。
【0240】
(付記12)
前記回路変換部が、
前記励振回路の形状を単純化し、端点と分岐点とを有する単純化励振回路から、2つの端点と前記2つの端点の間に少なくとも1つの分岐点とを有する前記部分的な回路を抽出する部分回路抽出部と
を備えることを特徴とする、付記11記載の情報処理装置。
【0241】
(付記13)
前記単純化処理部が、
前記励振回路の概形形状を複数の正方形セルの並んだグリッド上に投射し、前記概形形状と前記正方形セルとの交点に基づいて抽出した点を連結することで、前記単純化励振回路を作成する
ことを特徴とする、付記12記載の情報処理装置。
【0242】
(付記14)
前記単純化処理部が、
前記励振回路に含まれる複数の回路部分からそれぞれ中線を抽出し、
抽出した複数の前記中線のうちの第1の中線に、当該第1の中線に最も近接する第2の中線の端部を連結直線を介して接続する処理と、当該連結直線と前記第2の中線を前記第1の中線に含める処理とを繰り返し行なうことで、前記励振回路の概形形状を作成する
ことを特徴とする、付記13記載の情報処理装置。
【0243】
(付記15)
前記単純化処理部が、
前記単純化励振回路における閾値以下の線路長部分を省略する
ことを特徴とする、付記13または14記載の情報処理装置。
【0244】
(付記16)
前記部分回路抽出部が、
前記単純化励振回路が複数の前記分岐点を有する場合に、前記複数の分岐点のそれぞれについて、前記単純化励振回路に含まれる前記複数の端点の中から前記分岐点を介して連結される2つの前記端点を特定し、
前記単純化励振回路において連結される2つの分岐点について、各分岐点に対して特定した前記2つの端点どうしを組み合わせることで、前記部分的な回路を特定する
ことを特徴とする、付記12~15のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【0245】
(付記17)
電子回路基板の放射電磁波を推定する情報処理装置において、
前記電子回路基板の回路図を複数の部分的な回路の組合せに変換する処理と、
変換された前記部分的な回路ごとの放射電磁波予測結果を用いて、前記電子回路基板の放射電磁波を予測する処理と
を備えることを特徴とする放射電磁波推定方法。
【0246】
(付記18)
前記部分的な回路ごとの放射電磁波予測結果に基づき、複数の前記放射電磁波予測結果における周波数毎の最大値をとることで、前記電子回路基板の放射電磁波を予測する処理
を備えることを特徴とする、付記17記載の放射電磁波推定方法。
【0247】
(付記19)
前記電子回路基板の回路図の中から励振源に接続された励振回路に対して前記放射電磁波予測を行なう処理と
を備えることを特徴とする、付記17または18記載の放射電磁波推定方法。
【0248】
(付記20)
前記励振回路の形状を単純化し、端点と分岐点とを有する単純化励振回路から、2つの端点と前記2つの端点の間に少なくとも1つの分岐点とを有する前記部分的な回路を抽出する処理と
を備えることを特徴とする、付記19記載の放射電磁波推定方法。
【0249】
(付記21)
前記励振回路の概形形状を複数の正方形セルの並んだグリッド上に投射し、前記概形形状と前記正方形セルとの交点に基づいて抽出した点を連結することで、前記単純化励振回路を作成する処理
を備えることを特徴とする、付記20記載の放射電磁波推定方法。
【0250】
(付記22)
前記励振回路に含まれる複数の回路部分からそれぞれ中線を抽出する処理と、
抽出した複数の前記中線のうちの第1の中線に、当該第1の中線に最も近接する第2の中線の端部を連結直線を介して接続し、当該連結直線と前記第2の中線を前記第1の中線に含める処理とを繰り返し行なうことで、前記励振回路の概形形状を作成する処理と
を備えることを特徴とする、付記21記載の放射電磁波推定方法。
【0251】
(付記23)
前記単純化励振回路における閾値以下の線路長部分を省略する処理
を備えることを特徴とする、付記21または22記載の放射電磁波推定方法。
【0252】
(付記24)
前記単純化励振回路が複数の前記分岐点を有する場合に、前記複数の分岐点のそれぞれについて、前記単純化励振回路に含まれる前記複数の端点の中から前記分岐点を介して連結される2つの前記端点を特定する処理と、
前記単純化励振回路において連結される2つの分岐点について、各分岐点に対して特定した前記2つの端点どうしを組み合わせることで、前記部分的な回路を特定する処理と
を備えることを特徴とする、付記20~23のいずれか1項に記載の放射電磁波推定方法。
【符号の説明】
【0253】
1 推定装置
11 プロセッサ
12 メモリ
13 記憶装置
14 グラフィック処理装置
14a モニタ
15 入力インタフェース
15a キーボード
15b マウス
16 光学ドライブ装置
16a 光ディスク
17 機器接続インタフェース
17a メモリ装置
17b メモリリーダライタ
17c メモリカード
18 ネットワークインタフェース
18a ネットワーク
19 バス
20 記憶部
21 回路データ
22 励振回路データ
23 分岐回路パターンデータ
100 回路変換部
101 励振回路抽出部
102 単純化処理部
103 分岐回路パターン抽出部
104 ノイズ推定部