(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】スレーブ装置、情報処理装置、マスタスレーブ制御システム、スレーブ装置の制御方法、および情報処理装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/05 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
G05B19/05 L
(21)【出願番号】P 2020053105
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】武田 孝史
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-167594(JP,A)
【文献】特開2009-147997(JP,A)
【文献】特開2017-162413(JP,A)
【文献】特開2016-108122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/04 -19/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続された複数の外部デバイスに電力を供給する複数の電力供給コネクタと、
前記複数の電力供給コネクタへの電力の供給を、個別にオン/オフする複数のスイッチング回路と、
前記複数のスイッチング回路が電力の供給を開始するタイミングを互いに異ならせる制御部とを備え
、
前記複数の電力供給コネクタは、第1電力供給コネクタと第2電力供給コネクタとを含み、
前記第1電力供給コネクタに出力される電流または電圧を測定する測定回路を備え、
前記制御部は、電源装置から電力の供給が開始された後、前記第1電力供給コネクタへの電力の供給を開始させ、
前記第1電力供給コネクタに出力される突入電流が所定値より小さくなった後に、前記制御部は、前記スイッチング回路に前記第2電力供給コネクタへの電力の供給を開始させる、スレーブ装置。
【請求項2】
マスタ装置から、電力供給を開始する開始指示を受け付ける第2受付部を備え、
前記制御部は、前記開始指示を受けてから、前記複数のスイッチング回路に電力の供給を順次開始させる、請求項1に記載のスレーブ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のスレーブ装置を複数個と、
複数の前記スレーブ装置に接続されるマスタ装置とを含み、
前記マスタ装置は、それぞれ異なるタイミングで複数の前記スレーブ装置に前記開始指示を送信する開始制御部を備える、マスタスレーブ制御システム。
【請求項4】
前記開始制御部は、複数の前記スレーブ装置間において、1つの前記スレーブ装置の各電力供給コネクタへ電力の供給を開始するタイミングと、他の前記スレーブ装置の各電力供給コネクタへ電力の供給を開始するタイミングとを互いに異ならせる、請求項3に記載のマスタスレーブ制御システム。
【請求項5】
接続された複数の外部デバイスに電力を供給するスレーブ装置の制御方法であって、
電源装置から電力の供給が開始された後、前記複数の外部デバイスのうち、第1外部デバイスへ電力の供給を開始する第1ステップと、
前記第1外部デバイスへ電力の供給を開始してから、時間を空けて、前記複数の外部デバイスのうち、第2外部デバイスへ電力の供給を開始する第2ステップとを含み、
前記第2ステップが、前記第1外部デバイスに出力される電流または電圧を測定し、前記第1外部デバイスに出力される突入電流が所定値より小さくなった後に、前記第2外部デバイスへの電力の供給を開始させる、スレーブ装置の制御方法。
【請求項6】
請求項1に記載のスレーブ装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、前記制御部としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスレーブ装置、情報処理装置、およびマスタスレーブ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のIO-Link(登録商標)デバイスが接続されたスレーブ装置が記載されている。スレーブ装置は、複数のデバイスと通信を行い、入力データを上位コントローラに伝送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の外部デバイスが接続されたスレーブ装置は、複数のデバイスに電力も供給する。システムの起動時において、外部デバイスに電力の供給を開始すると、外部デバイスに突入電流が流れる。スレーブ装置が複数の外部デバイスに同時に電力の供給を開始すると、複数の外部デバイスに流れる突入電流が重なり、電源装置には一時的に大きな突入電流が流れる。
【0005】
本発明の一態様は、電源装置に流れる電流のピークを抑制することを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るスレーブ装置は、接続された複数の外部デバイスに電力を供給する複数の電力供給コネクタと、前記複数の電力供給コネクタへの電力の供給を、個別にオン/オフする複数のスイッチング回路と、前記複数のスイッチング回路が電力の供給を開始するタイミングを互いに異ならせる制御部とを備える。
【0007】
上記の構成によれば、複数のスイッチング回路に接続された複数の外部デバイスに突入電流が流れるタイミングを互いにずらすことができる。そのため、スレーブ装置において流れる合計電流のピークを抑制することができる。それゆえ、スレーブ装置に電力を供給する電源装置に流れる電流のピークを抑制することができる。
【0008】
前記スレーブ装置では、前記複数の電力供給コネクタは、第1電力供給コネクタと第2電力供給コネクタとを含み、前記第1電力供給コネクタに出力される電流または電圧を測定する測定回路を備え、前記第1電力供給コネクタに出力される突入電流が所定値より小さくなった後に、前記制御部は、前記スイッチング回路に前記第2電力供給コネクタへの電力の供給を開始させる構成であってもよい。
【0009】
上記の構成によれば、制御部は、突入電流が所定値より小さくなった後に、次の第2電力供給コネクタへの電力の供給を開始させる。それゆえ、複数の外部デバイスの突入電流が重なるのを防ぎ、かつ迅速に複数の外部デバイスへの電力供給を順次行うことができる。
【0010】
前記スレーブ装置では、前記複数の電力供給コネクタは、第1電力供給コネクタと第2電力供給コネクタとを含み、外部装置から、遅延時間の指示を受け付ける第1受付部と、指示された前記遅延時間を記憶する記憶部とを備え、前記制御部は、前記第1電力供給コネクタに電力の供給を開始させてから前記遅延時間が経過した後、前記スイッチング回路に前記第2電力供給コネクタへの電力の供給を開始させる、構成であってもよい。
【0011】
上記の構成によれば、電圧または電流を計測せずとも、複数の外部デバイスの突入電流が重なるのを防ぐことができる。
【0012】
前記スレーブ装置は、マスタ装置から、電力供給を開始する開始指示を受け付ける第2受付部を備え、前記制御部は、前記開始指示を受けてから、前記複数のスイッチング回路に電力の供給を順次開始させる構成であってもよい。
【0013】
上記の構成によれば、複数のスレーブ装置間で、複数のスイッチング回路に電力の供給を開始するタイミングをずらすことができる。それゆえ、複数のスレーブ装置に電力を供給する電源装置に流れる電流のピークを抑制することができる。
【0014】
本発明の一態様に係るマスタスレーブ制御システムは、前記スレーブ装置を複数個と、複数の前記スレーブ装置に接続されるマスタ装置とを含み、前記マスタ装置は、それぞれ異なるタイミングで複数の前記スレーブ装置に前記開始指示を送信する開始制御部を備える。
【0015】
上記の構成によれば、複数のスレーブ装置間で、複数のスイッチング回路に電力の供給を開始するタイミングをずらすことができる。
【0016】
前記開始制御部は、複数の前記スレーブ装置間において、1つの前記スレーブ装置の各電力供給コネクタへ電力の供給を開始するタイミングと、他の前記スレーブ装置の各電力供給コネクタへ電力の供給を開始するタイミングとを互いに異ならせる構成であってもよい。
【0017】
上記の構成によれば、複数の前記スレーブ装置の複数の電力供給コネクタにそれぞれ異なるタイミングで電力の供給が開始される。それゆえ、複数の電力供給コネクタに突入電流が流れるタイミングをより分散させることができる。
【0018】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、取得部であって、電源装置から電力を供給される少なくとも1つのスレーブ装置が、前記少なくとも1つのスレーブ装置に接続された複数の外部デバイスに電力の供給を開始するタイミングの情報と、各外部デバイスに流れる突入電流の情報と、を取得する取得部と、前記タイミングの情報と前記突入電流の情報とに基づいて、前記電源装置を流れる電流が許容範囲に収まるか否かを判定する判定部とを備える。
【0019】
上記の構成によれば、想定している構成および設定で、突入電流の大きさが許容範囲に収まるかを事前に判定することができる。例えば、ユーザは、マスタスレーブ制御システムが稼働して電源装置に大きな突入電流が流れる前に、設定情報の修正を行うことができる。
【0020】
前記情報処理装置では、前記突入電流の情報は、前記突入電流が流れる期間の情報を含み、前記判定部は、前記複数の外部デバイスについて、前記突入電流が流れる期間が重なっているか否かを判定する構成であってもよい。
【0021】
上記の構成によれば、突入電流の大きさが分からなくとも、簡易に判定を行うことができる。
【0022】
前記情報処理装置では、前記突入電流の情報は、前記突入電流の大きさの情報を含み、前記判定部は、電力の供給を開始するタイミングが重なっている複数の外部デバイスの突入電流の合計値が、前記許容範囲に収まるか否かを判定する構成であってもよい。
【0023】
上記の構成によれば、より正確に突入電流が許容範囲に収まるか否かの判定を行うことができる。
【0024】
本発明の一態様に係るスレーブ装置の制御方法は、接続された複数の外部デバイスに電力を供給するスレーブ装置の制御方法であって、前記複数の外部デバイスのうち、第1外部デバイスへ電力の供給を開始するステップと、前記第1外部デバイスへ電力の供給を開始してから、時間を空けて、前記複数の外部デバイスのうち、第2外部デバイスへ電力の供給を開始するステップとを含む。
【0025】
本発明の一態様に係る情報処理装置の制御方法は、電源装置から電力を供給される少なくとも1つのスレーブ装置が、前記少なくとも1つのスレーブ装置に接続された複数の外部デバイスに電力の供給を開始するタイミングの情報を取得するステップと、各外部デバイスに流れる突入電流の情報を取得するステップと、前記タイミングの情報と前記突入電流の情報とに基づいて、前記電源装置を流れる電流が許容範囲に収まるか否かを判定する判定ステップとを含む。
【0026】
本発明の各態様に係るスレーブ装置および情報処理装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記スレーブ装置および情報処理装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記スレーブ装置および情報処理装置をコンピュータにて実現させるスレーブ装置および情報処理装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様によれば、電源装置に流れる電流のピークを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】一実施形態のマスタスレーブ制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】参考例のスレーブ装置による電圧および電流の波形を示す図である。
【
図3】一実施形態のスレーブ装置による電圧および電流の波形を示す図である。
【
図4】上記スレーブ装置の処理フローを示す図である。
【
図5】一実施形態のマスタスレーブ制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図6】情報処理装置が構成情報を取得する処理フローを示す図である。
【
図7】情報処理装置が設定情報を取得する処理フローを示す図である。
【
図8】上記マスタスレーブ制御システムにおいて、電源装置に流れる電圧および電流の波形を示す図である。
【
図9】情報処理装置による合計電流が許容範囲に収まるか否かを判定する処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一側面に係る各実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。
【0030】
〔実施形態1〕
§1 適用例
図1は、本実施形態のマスタスレーブ制御システムの構成を示すブロック図である。マスタスレーブ制御システム1は、マスタ装置3、スレーブ装置4、電源装置5、および複数の外部デバイス6a~6hを備える。スレーブ装置4には、マスタ装置3、電源装置5、および複数の外部デバイス6a~6hが接続されている。スレーブ装置4は、電源装置5から電力を受け取り、複数の外部デバイス6a~6hに電力を供給する。
【0031】
外部デバイスへの電力の供給の開始時に、該外部デバイスに突入電流が流れる。マスタスレーブ制御システムの起動時において、もし複数の外部デバイスに同時に電力の供給を開始すると、各外部デバイスの突入電流が重なり、スレーブ装置および電源装置を流れる電流が一時的に大きくなる。
【0032】
本実施形態のスレーブ装置4は、複数の外部デバイス6a~6hに電力の供給を開始するタイミングを互いに異ならせる。このように、時間間隔を空けて複数の外部デバイス6a~6hに電力の供給を開始することにより、各外部デバイス6a~6hに突入電流が流れるタイミングをずらすことができる。これにより、大きな突入電流がスレーブ装置および電源装置を流れることを防止することができる。
【0033】
§2 構成例
図1において、実線は制御信号の流れを示し、破線は電源配線の接続を示す。スレーブ装置4は、受付部41、スレーブ記憶部42、制御部43、複数のスイッチング回路44a~44h、複数の測定回路45a~45h、複数の電力供給コネクタ46a~46h、および電力入力コネクタ47を備える。ここでは、スレーブ装置4は、互いに対応するスイッチング回路、測定回路、および電力供給コネクタの組を8つ備える。
【0034】
例えば、スレーブ装置4は、IO-Link(登録商標)マスタであり、複数の外部デバイス6a~6hは、IO-Linkデバイスである。例えば、スレーブ装置4は、アナログIO(入出力)ユニット、デジタル入力ユニット、またはデジタル出力ユニットであってもよい。複数の外部デバイス6a~6hは、センサ、バルブ、または負荷(モータ等)であってもよい。
【0035】
電力入力コネクタ47は、電源装置5に接続される。複数の電力供給コネクタ46a~46hは、それぞれ、複数の外部デバイス6a~6hに接続される。スレーブ装置4の内部において、電力入力コネクタ47は、互いに並列に接続された複数のスイッチング回路44a~44hに接続されている。各スイッチング回路44a~44hは、対応する電力供給コネクタ46a~46hに接続されている。各測定回路45a~45hは、対応するスイッチング回路44a~44hと電力供給コネクタ46a~46hとの間の配線に接続されている。各電力供給コネクタ46a~46hは、対応する外部デバイス6a~6hに電力を供給する。
【0036】
各スイッチング回路44a~44hは、制御部43の指示に応じて、個別に導通/遮断(オン/オフ)を切り替える。これにより、各スイッチング回路44a~44hは、対応する電力供給コネクタ46a~46hへの電力の供給を個別にオン/オフする。
【0037】
測定回路45a~45hは、対応する電力供給コネクタ46a~46hに出力される電圧を測定する。測定回路45a~45hは、測定結果(電圧)を制御部43に出力する。
【0038】
受付部41(第2受付部)は、マスタ装置3から、電力供給を開始する開始指示を受け付ける。受付部41は、開始指示を制御部43に出力する。また、受付部41は、スレーブ装置4に関する設定情報をマスタ装置3から受け付けて、スレーブ記憶部42に記憶させる。例えば、設定情報は、外部デバイスへの電源供給を第1モードで行うか第2モードで行うかのモード設定の情報を含む。
【0039】
スレーブ記憶部42は、メモリまたはハードディスクによって構成される。また、スレーブ記憶部42は、演算処理装置を受付部41および制御部43として機能させるための制御プログラムを記憶している。
【0040】
制御部43は、受付部41から開始指示を受け取り、各測定回路45a~45hから電圧の測定結果を受け取る。制御部43は、開始指示および出力される電圧に応じて、順次各スイッチング回路44a~44hにオン/オフを切り替える指示を出力する。
【0041】
§3 動作例
(参考例)
図2は、参考例のスレーブ装置による電圧および電流の波形を示す図である。
図2には、外部デバイス6aの電圧波形および電流波形、外部デバイス6bの電圧波形および電流波形、ならびに、スレーブ装置および電源装置5を流れる合計電流が示されている。参考例のスレーブ装置では、複数の外部デバイス6a~6hへの電力供給を同時に開始する。そのため、各外部デバイス6a~6hに同時に突入電流が流れる。スレーブ装置および電源装置5には、複数の外部デバイス6a~6hに流れる突入電流を合計した大きな合計電流が流れる。これにより、電源装置5が過電流を感知して電源を遮断したり、電源装置5とスレーブ装置との間に配置されたヒューズが溶断したり、または、突入電流により一時的な電圧降下が生じることでスレーブ装置のシステムが誤動作したりする。
【0042】
(動作例)
図3は、本実施形態のスレーブ装置4による電圧および電流の波形を示す図である。
図3には、外部デバイス6aの電圧波形および電流波形、外部デバイス6bの電圧波形および電流波形、ならびに、スレーブ装置4および電源装置5を流れる合計電流が示されている。
【0043】
本実施形態のスレーブ装置4では、複数の外部デバイス6a~6hへの電力供給を順次開始する。例えば、時刻t1において、スレーブ装置4は、外部デバイス6aへの電力供給を開始する。外部デバイス6aに突入電流が流れ、時刻t2で突入電流が収まる。その後、時刻t3において、スレーブ装置4は、次の外部デバイス6bへの電力供給を開始する。外部デバイス6bに突入電流が流れ、時刻t4で突入電流が収まる。
【0044】
このように、スレーブ装置4では、1つの外部デバイスに流れる突入電流が収まった後に、次の外部デバイスへの電力供給を開始する。それゆえ、スレーブ装置4は、複数の突入電流のピークを互いにずらすことができ、合計電流のピークを抑制することができる。これにより、電源装置5およびスレーブ装置4に大きな突入電流が流れることを防止することができる。
【0045】
なお、
図2、3において、簡略化のため、電圧はオンのタイミング(時刻t1、t3)で0Vから24Vに上がるように描いている。実際には、突入電流が流れるため、電圧降下が生じ、各外部デバイス6a~6hに出力される電圧はなだらかに上昇する。
【0046】
図4は、スレーブ装置4の処理フローを示す図である。まず、電源装置5からスレーブ装置4に電力の供給が開始される(S1)。この時点では、各スイッチング回路44a~44hは、オフの状態である。
【0047】
制御部43は、スレーブ記憶部42から設定情報(モード設定の情報)を取得する。制御部43は、スレーブ装置4が第1モードに設定されているか否かを判定する(S2)。
【0048】
スレーブ装置4が第1モードに設定されている場合(S2でYES)、制御部43はマスタ装置3からの開始指示を待つ(S3)。受付部41がマスタ装置3から開始指示を受信すると(S3でYES)、制御部43は外部デバイス6aへの電力の供給を開始する(S4)。
【0049】
スレーブ装置4が第2モードに設定されている場合(S2でNO)、制御部43はマスタ装置3からの開始指示を待たずに外部デバイス6aへの電力の供給を開始する(S4)。
【0050】
S4では、制御部43は、スイッチング回路44aにオンに切り替える指示を出力する(
図3の時刻t1)。これにより、スイッチング回路44aがオンになり、対応する電力供給コネクタ46aおよび外部デバイス6aに電力の供給が開始される。
【0051】
測定回路45aは、対応する電力供給コネクタ46a(第1電力供給コネクタ)に出力される電圧を測定する(S5)。制御部43は、測定回路45aの測定結果に基づいて、突入電流が所定値より小さくなったか否かを判定する(S6)。突入電流が流れている期間では、電圧降下が生じるため、電力供給コネクタ46aに出力される電圧は、定常時の電圧より低い。それゆえ、制御部43は、電力供給コネクタ46aに出力される電圧が第1閾値より高いか否かを判定する。電力供給コネクタ46aに出力される電圧が第1閾値より高ければ、制御部43は、突入電流が所定値より小さくなったと見なす(
図3の時刻t2)。
【0052】
突入電流が所定値より小さくなると(S6でYES)、時刻t2の後の時刻t3に、制御部43は、次のスイッチング回路44bにオンに切り替える指示を出力する。これにより、スイッチング回路44bがオンになり、対応する電力供給コネクタ46b(第2電力供給コネクタ)および外部デバイス6bに電力の供給が開始される(S7)。この後も、外部デバイス6aの時と同様に、測定回路45bは、対応する電力供給コネクタ46bに出力される電圧を測定する(S8)。制御部43は、測定回路45bの測定結果に基づいて、突入電流が所定値より小さくなったか否かを判定する(S9)。突入電流が所定値より小さくなると(S9でYES、時刻t4)、制御部43は、次のスイッチング回路44cにオンに切り替える指示を出力する。
【0053】
残りの外部デバイス6c~6hについても同様に、前の外部デバイスに流れる突入電流が所定値より小さくなった後に、次の外部デバイスへの電力供給を開始する。最後の外部デバイス6hについて、突入電流が所定値より小さくなると(S10でYES)、制御部43は、接続されている複数の外部デバイス6a~6hへの電力供給が実行されたことを示す完了通知を、マスタ装置3に通知する(S11)。その後、制御部43は処理を終了する。なお、制御部43による完了通知の送信は省略することもできる。
【0054】
このようにして、制御部43は、ある外部デバイスへの電力供給を開始してから、時間を空けて、他の外部デバイスへの電力供給を開始する。これにより、制御部43は、複数のスイッチング回路44a~44hが電力の供給を開始するタイミングを互いに異ならせる。突入電流の大きさを判定することで、制御部43は、次のスイッチング回路をオンにするタイミングを動的に決定することができる。スレーブ装置4は、ある外部デバイスへの突入電流が所定値より小さくなったか否かを判定することにより、複数の外部デバイス6a~6hの突入電流が重なるのを防ぎ、かつ迅速に複数の外部デバイス6a~6hへの電力供給を順次行うことができる。
【0055】
(変形例)
各測定回路は、対応する電力供給コネクタに出力される電流を測定してもよい。制御部は、測定された電流に基づいて、突入電流が所定値より小さくなったか否かを判定することができる。電流で判定する場合、スイッチング回路がオンになってから時間を空けて(少なくとも突入電流が上昇した後に)、制御部は、測定された電流が所定値より小さくなったか否かを判定する。
【0056】
なお、スレーブ装置は、外部装置(マスタ装置または情報処理装置)から指定された遅延時間に基づいて、複数の外部デバイスへの電力の供給を順次開始してもよい。例えば、受付部(第1受付部)は、外部装置から遅延時間の指示を受け付ける。受付部は、遅延時間をスレーブ記憶部に記憶させる。電源装置5からスレーブ装置に電力が供給されると、制御部は、スレーブ記憶部から遅延時間の情報を取得し、まず外部デバイス6aへの電力の供給を開始する。外部デバイス6aへの電力の供給を開始してから遅延時間が経過した後、制御部は、次の外部デバイス6bへの電力の供給を開始する。遅延時間は、
図3に示す時刻t1から時刻t3の間隔に対応する。このように、制御部は、ある外部デバイスへの電力供給を開始した後、固定の遅延時間を空けて次の外部デバイスへの電力供給を開始してもよい。なお、遅延時間は、あらかじめ(製造時に)スレーブ記憶部に記憶されていてもよい。
【0057】
なお、最後の外部デバイス6hについての突入電流の判定(S10)、およびマスタ装置3への通知(S11)を省略することも可能である。この場合、測定回路45hを省略してもよい。
【0058】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0059】
§1 構成例
図5は、本実施形態のマスタスレーブ制御システム10の構成を示すブロック図である。マスタスレーブ制御システム10は、情報処理装置2、マスタ装置3、複数のスレーブ装置4、電源装置5、および複数の外部デバイスを備える。
図5では、複数の外部デバイスの図示を省略している。各スレーブ装置4の複数の電力供給コネクタ46a~46hには、複数の外部デバイスが接続されている。情報処理装置2は、マスタ装置3に接続されている。複数のスレーブ装置4は、マスタ装置3に産業用ネットワークでデイジーチェーン接続されている。
【0060】
スレーブ装置4は、電力入力コネクタ47および電力出力コネクタ48を備える。複数のスレーブ装置4は、電源装置5にデイジーチェーン接続されている。具体的には、電源装置5は、1番目のスレーブ装置4の電力入力コネクタ47に接続されている。1番目のスレーブ装置4の電力出力コネクタ48は、2番目のスレーブ装置4の電力入力コネクタ47に接続されている。2番目のスレーブ装置4の電力出力コネクタ48は、3番目のスレーブ装置4の電力入力コネクタ47に接続されている。各スレーブ装置4は、他のスレーブ装置4に電力出力コネクタ48を介して電力を供給する。
【0061】
情報処理装置2は、入力部21、情報記憶部22、取得部23、判定部24、報知制御部25、および指示部26を備える。
【0062】
入力部21は、ユーザから設定情報および構成情報の入力を受け付ける。入力部21は、設定情報および構成情報を情報記憶部22に記憶させる。設定情報は、マスタ装置3または複数のスレーブ装置4の動作に関する設定の情報を含む。構成情報は、マスタ装置3、複数のスレーブ装置4、および複数の外部デバイスの接続構成に関する情報、および、マスタ装置3、複数のスレーブ装置4、複数の外部デバイス、および電源装置5の機器の特性に関する情報を含む。設定情報および構成情報の詳細については後述する。
【0063】
情報記憶部22は、メモリまたはハードディスクによって構成される。また、情報記憶部22は、演算処理装置を情報処理装置2の各ブロックとして機能させるための制御プログラムを記憶している。
【0064】
取得部23は、情報記憶部22から、設定情報および構成情報を取得する。取得部23は、設定情報および構成情報を判定部24に出力する。なお、取得部23は、入力部21から設定情報および構成情報を取得してもよい。
【0065】
判定部24は、設定情報および構成情報に基づいて、電源装置5を流れる突入電流が許容範囲に収まるか否かを判定する。判定部24は、判定結果を報知制御部25に出力する。
【0066】
報知制御部25は、判定部24による判定結果をユーザに報知する制御を行う。例えば、報知制御部25は、表示装置に判定結果を表示させる、または、スピーカにより判定結果を出力させる。
【0067】
指示部26は、情報記憶部22から設定情報を取得する。指示部26は、設定情報をマスタ装置3に送信する。
【0068】
マスタ装置3は、指示入力部31、マスタ記憶部32、および開始制御部33を備える。
【0069】
マスタ記憶部32は、メモリまたはハードディスクによって構成される。また、マスタ記憶部32は、演算処理装置を指示入力部31および開始制御部33として機能させるための制御プログラムを記憶している。
【0070】
指示入力部31は、情報処理装置2から設定情報を受信する。指示入力部31は、設定情報をマスタ記憶部32に記憶させる。
【0071】
開始制御部33は、マスタ記憶部32から設定情報を取得する。開始制御部33は、設定情報に基づいて、複数のスレーブ装置4のそれぞれに、電力供給を開始する開始指示、および電源供給を第1モードで行うか第2モードで行うかを指定するモード設定の情報を送信する。モードは、スレーブ装置4毎に異なっていてもよい。開始制御部33は、それぞれ異なるタイミングで複数のスレーブ装置4に開始指示を送信する。
【0072】
これにより、複数のスレーブ装置4間で、各スレーブ装置4に接続された複数の外部デバイスに電力供給を開始するタイミングを互いに異ならせることができる。それゆえ、複数のスレーブ装置4に接続された電源装置5に流れる合計電流のピークを抑制することができる。なお、あるスレーブ装置4に接続された複数の外部デバイスに突入電流が流れる期間と、他のスレーブ装置4に接続された複数の外部デバイスに突入電流が流れる期間とが全く重なっていないことが好ましいが、限定されない。あるスレーブ装置4に接続された複数の外部デバイスに突入電流が流れる期間と、他のスレーブ装置4に接続された複数の外部デバイスに突入電流が流れる期間とが部分的に重なっていてもよい。複数のスレーブ装置4の1番目の外部デバイスに電力供給を開始するタイミングが互いに異なっていれば、電源装置5を流れる突入電流のピークを抑制する効果は得られる。
【0073】
開始制御部33は、複数のスレーブ装置4間において、あるスレーブ装置4の各電力供給コネクタ46a~46hへ電力の供給を開始するタイミングと、他のスレーブ装置4の各電力供給コネクタ46a~46hへ電力の供給を開始するタイミングとが互いに異なるよう、複数のスレーブ装置4へ開始指示を送信してもよい。これにより、複数のスレーブ装置4間において、各電力供給コネクタ46a~46hに突入電流が流れる期間をずらすことができる。例えば、開始制御部33は、あるスレーブ装置4から接続されている複数の外部デバイス6a~6hへの電力供給が実行されたことを示す完了通知を受信してから、他のスレーブ装置4に開始指示を送信してもよい。
【0074】
各スレーブ装置4に開始指示を送信するタイミングは、ユーザによってあらかじめ設定されていてもよい。ユーザによる設定は、情報処理装置2において行われる。情報処理装置2は、設定情報および構成情報から、電源装置5を流れる突入電流が許容範囲に収まるか否かを判定する。この場合、スレーブ装置4は、接続されている複数の外部デバイス6a~6hへの電力供給が実行されたことを示す完了通知をマスタ装置3に送信する必要は無い。
【0075】
(設定情報および構成情報)
構成情報は、接続構成情報、許容電流情報、スレーブ装置情報、および外部デバイス情報等を含む。接続構成情報は、電源装置5にいずれの機器が接続されているかを示す情報を含む。例えば、接続構成情報は、電源装置5を示す情報と、電源装置5に接続されている複数のスレーブ装置4を示す情報と、各スレーブ装置4に接続されている複数の外部デバイス6a~6hを示す情報とを含む。許容電流情報は、電源装置5に流れる電流の許容範囲(許容される上限値)を示す。スレーブ装置情報は、各スレーブ装置4の型式および特性を示す情報を含む。外部デバイス情報は、各外部デバイスの型式および特性を示す情報を含む。例えば、外部デバイス情報は、各外部デバイスに流れる突入電流の最大値、および/または突入電流が流れる期間の情報を含む。
【0076】
許容電流情報および/または外部デバイス情報は、情報記憶部22にあらかじめ記憶されていてもよい。情報処理装置2のソフトウェアのメーカーと電源装置5または外部デバイス6a~6hのメーカーとが同じであれば、ソフトウェアは許容電流情報および/または外部デバイス情報をあらかじめ含むことができる。他の情報については、ユーザによって情報処理装置2に入力される。
【0077】
設定情報は、モード設定情報、開始タイミング情報、およびオンタイミング情報を含む。モード設定情報は、スレーブ装置4が第1モードで動作するか第2モードで動作するかを示す。開始タイミング情報は、マスタ装置3が各スレーブ装置4に開始指示を送信するタイミングを示す。または、開始タイミング情報は、電源装置5が電力供給を開始してから各スレーブ装置4が1番目のスイッチング回路をオンにするまでの期間を示す。オンタイミング情報は、スレーブ装置4が各スイッチング回路をオンにするタイミングを示す、または、あるスイッチング回路をオンにしてから次のスイッチング回路をオンにするまでの期間(遅延時間)を示す。
【0078】
設定情報は、ユーザによって情報処理装置2に入力される。遅延時間が固定の場合、スレーブ装置4は、あらかじめオンタイミング情報をスレーブ記憶部42に記憶していてもよい。情報処理装置2は、マスタ装置3を介して、スレーブ装置4からオンタイミング情報を取得してもよい。
【0079】
§2 動作例
図6は、情報処理装置2が構成情報を取得する処理フローを示す図である。入力部21は、ユーザから接続構成情報の入力を受け付ける(S21)。入力部21は、電源装置5の許容電流情報が情報記憶部22に記憶されているか否かを判定する(S22)。例えば、情報処理装置2のソフトウェアのメーカーと電源装置5のメーカーとが同じであれば、情報記憶部22はあらかじめ電源装置5の許容電流情報を記憶している。
【0080】
電源装置5の許容電流情報が情報記憶部22に記憶されている場合(S22でYES)、入力部21は、該許容電流情報を使用するよう取得部23に指示を出力する。取得部23は、情報記憶部22から該許容電流情報を取得する(S23)。
【0081】
電源装置5の許容電流情報が情報記憶部22に記憶されていない場合(S22でNO)、入力部21は、ユーザから許容電流情報の入力を受け付ける(S24)。
【0082】
S23またはS24の後、入力部21は、各外部デバイスの外部デバイス情報が情報記憶部22に記憶されているか否かを判定する(S25)。例えば、情報処理装置2のソフトウェアのメーカーと各外部デバイスのメーカーとが同じであれば、情報記憶部22はあらかじめ各外部デバイスの外部デバイス情報を記憶している。
【0083】
各外部デバイスの外部デバイス情報が情報記憶部22に記憶されている場合(S25でYES)、入力部21は、該外部デバイス情報を使用するよう取得部23に指示を出力する。取得部23は、情報記憶部22から該外部デバイス情報を取得する(S26)。
【0084】
各外部デバイスの外部デバイス情報が情報記憶部22に記憶されていない場合(S25でNO)、入力部21は、ユーザから外部デバイス情報の入力を受け付ける(S27)。
【0085】
S25~S27の処理については、外部デバイス毎に行われる。各外部デバイスについて処理が終わると、構成情報の取得の処理は終了する。
【0086】
図7は、情報処理装置2が設定情報を取得する処理フローを示す図である。入力部21は、スレーブ装置情報から、各スレーブ装置4が第1モードに設定可能な装置であるか否かを判定する(S31)。マスタ装置3には複数のスレーブ装置が接続されるので、一部のスレーブ装置が実施形態1で説明したスレーブ装置4とは異なる場合もある。
【0087】
各スレーブ装置4がモード設定可能な装置である場合(S31でYES)、入力部21は、各スレーブ装置4についてユーザからモード設定情報の入力を受け付ける(S32)。第1モードは、スレーブ装置4がマスタ装置3からの開始指示を待って電力供給を開始するモードである。入力部21は、モード設定情報が第1モードを示すか否かを判定する(S33)。
【0088】
モード設定情報が第1モードを示す場合(S33でYES)、入力部21は、ユーザから開始タイミング情報(マスタ装置3が各スレーブ装置4に開始指示を送信するタイミング)の入力を受け付ける(S34)。
【0089】
モード設定情報が第1モードを示さない(第2モードを示す)場合(S33でNO)、または各スレーブ装置4がモード設定可能な装置ではない場合(S31でNO)、入力部21は、電源装置5が電源供給を開始してから各スレーブ装置4が1番目のスイッチング回路44aをオンにするまでの期間の入力をユーザから受け付ける(S35)。電源装置5が電源供給を開始してから各スレーブ装置4が1番目のスイッチング回路44aをオンにするまでの期間は、スレーブ装置4毎に固定であってもよい。電源装置5が電源供給を開始してからすぐに各スレーブ装置4が1番目のスイッチング回路44aをオンにする場合、該期間は0である。
【0090】
S34またはS35の後、入力部21は、ユーザからオンタイミング情報の入力を受け付ける(S36)。スレーブ装置4において突入電流の大きさを判定しない場合、遅延時間をあらかじめ決めるため、入力部21は、ユーザから、遅延時間の入力を受け付ける。スレーブ装置4において突入電流の大きさを判定する(動的に遅延時間を変える)場合、入力部21は、ユーザから、想定される遅延時間の入力を受け付ける。なお、マスタ装置3に接続された複数のスレーブ装置に、複数の外部デバイス6a~6hに同時に電力供給を開始するスレーブ装置(参考例のスレーブ装置)が含まれている場合、入力部21は、該スレーブ装置の遅延時間を0とする。
【0091】
S31~S36の処理については、スレーブ装置4毎に行われる。各スレーブ装置4について処理が終わると、設定情報の取得の処理は終了する。
【0092】
(電流波形の例)
図8は、マスタスレーブ制御システム10において、電源装置5に流れる電圧および電流の波形を示す図である。ここでは、電源装置5に対して、3つのスレーブ装置4a~4c(動作例のスレーブ装置)と1つの参考例のスレーブ装置とが接続されている例を示す。各スレーブ装置には、8つの外部デバイスが接続されている。なお、図示の電流波形の高さおよび幅は厳密なものではない。
【0093】
スレーブ装置4aに接続されている各外部デバイスの突入電流の最大値は1Aである。スレーブ装置4aに接続されている各外部デバイスの突入電流が流れる期間は3msである。マスタ装置3は、電源装置5の電力供給の開始から10ms後に、スレーブ装置4aに開始指示を送信する。スレーブ装置4aは、5msの遅延時間で順次各外部デバイスへの電力供給を開始する。
【0094】
スレーブ装置4bに接続されている各外部デバイスの突入電流の最大値は2Aである。スレーブ装置4bに接続されている各外部デバイスの突入電流が流れる期間は3msである。マスタ装置3は、電源装置5の電力供給の開始から50ms後に、スレーブ装置4bに開始指示を送信する。スレーブ装置4bは、5msの遅延時間で順次各外部デバイスへの電力供給を開始する。
【0095】
スレーブ装置4cに接続されている各外部デバイスの突入電流の最大値は3Aである。スレーブ装置4cに接続されている各外部デバイスの突入電流が流れる期間は3msである。マスタ装置3は、電源装置5の電力供給の開始から100ms後に、スレーブ装置4cに開始指示を送信する。スレーブ装置4cは、5msの遅延時間で順次各外部デバイスへの電力供給を開始する。
【0096】
参考例のスレーブ装置に接続されている各外部デバイスの突入電流の最大値は1Aである。参考例のスレーブ装置に接続されている各外部デバイスの突入電流が流れる期間は3msである。電源装置5の電力供給の開始直後に、参考例のスレーブ装置は、同時に複数の外部デバイスへの電力供給を開始する。
【0097】
電源装置5において許容される電流の上限値は10Aである。電源装置5が電力供給を開始するとすぐに、参考例のスレーブ装置に接続された8つの外部デバイスの突入電流(最大8A)が電源装置5に流れる。次に、10ms~48msの間に、スレーブ装置4aに接続された各外部デバイスの突入電流(最大1A)が順次流れる。50ms~88msの間に、スレーブ装置4bに接続された各外部デバイスの突入電流(最大2A)が順次流れる。100ms~138msの間に、スレーブ装置4cに接続された各外部デバイスの突入電流(最大3A)が順次流れる。マスタ装置3は、複数のスレーブ装置4a~4cが電力供給を開始するタイミングを互いに異ならせ、かつ、各スレーブ装置4a~4cは、複数の外部デバイス6a~6hに電力供給を開始するタイミングを互いに異ならせている。それゆえ、マスタスレーブ制御システム10は、突入電流が流れるタイミングを分散させ、電源装置5を流れる合計電流を、許容範囲(10A以下)に抑えることができる。
【0098】
(判定フロー)
図9は、情報処理装置2による合計電流が許容範囲に収まるか否かを判定する処理フローを示す図である。情報処理装置2は、設定情報が示す設定で、電源装置5を流れる電流が許容範囲に収まるか否かを判定する。
【0099】
取得部23は、構成情報と、設定情報とを取得する(S41)。構成情報は、接続構成情報、許容電流情報、スレーブ装置情報、および外部デバイス情報を含む。外部デバイス情報は、各外部デバイスに流れる突入電流の最大値、および/または突入電流が流れる期間の情報(突入電流の情報)を含む。設定情報は、モード設定情報、開始タイミング情報、およびオンタイミング情報を含む。オンタイミング情報は、スレーブ装置4が各スイッチング回路をオンにするタイミングを示す、または、あるスイッチング回路をオンにしてから次のスイッチング回路をオンにするまでの期間(遅延時間)を示す。
【0100】
判定部24は、モード設定情報、開始タイミング情報、およびオンタイミング情報から、各スイッチング回路がオンになるタイミングを特定する(S42)。なおマスタ装置3に接続されたスレーブ装置4が1つだけの場合、モード設定情報、および開始タイミング情報は不要である。
【0101】
判定部24は、各スイッチング回路がオンになるタイミング、および外部デバイス情報から、電源装置5を流れる電流が許容範囲に収まるか否かを判定する(S43)。例えば、判定部24は、電力供給を開始するタイミングが重なっている複数の外部デバイスの突入電流(の最大値)の合計値が、許容範囲に収まるか否かを判定する。
【0102】
またはより簡単に、判定部24は、複数の外部デバイスについて突入電流が流れる期間が重なっているか否かを判定してもよい。複数の外部デバイスについて突入電流が流れる期間が重なっていれば、判定部24は、電源装置5を流れる電流が許容範囲に収まらないと見なしてもよい。いずれの外部デバイスについても突入電流が流れる期間が重なっていなければ、判定部24は、電源装置5を流れる電流が許容範囲に収まると見なしてもよい。この場合、突入電流の大きさに関する情報は不要である。
【0103】
または、突入電流のピーク(頂点)が重ならなければよいと考えてもよい。突入電流が流れる期間(例えば3ms)は部分的に重なっていても、複数の外部デバイスに電力供給を開始するタイミングが(例えば1ms以上)ずれていれば、判定部24は、電源装置5を流れる電流が許容範囲に収まると見なしてもよい。
【0104】
報知制御部25は、判定部24による判定結果(電源装置5を流れる電流が許容範囲に収まる/収まらない)をユーザに報知する(S44)。報知制御部25は、特に電源装置5を流れる電流が許容範囲に収まらない場合、表示装置にアラートを表示させ、ユーザに設定情報の修正を促すメッセージを表示させてもよい。
【0105】
本実施形態の情報処理装置2によれば、ユーザは、想定しているマスタスレーブ制御システム10の構成および設定で、突入電流の大きさが許容範囲に収まるかを事前に知ることができる。それゆえ、ユーザは、マスタスレーブ制御システム10が稼働して問題が生じる前に、設定情報の修正を行うことができる。
【0106】
(変形例)
スレーブ装置4は、スレーブ装置4が制御部43で突入電流の大きさを判定する(動的に遅延時間を変える)か否かの設定(判定設定)を、ユーザから受け付けてもよい。この場合、ユーザは、情報処理装置2の入力部21に、スレーブ装置4に関する判定設定を入力する。情報処理装置2の指示部26は、マスタ装置3を介して、または直接スレーブ装置4に接続されて、スレーブ装置4に判定設定を送信する。
【0107】
〔ソフトウェアによる実現例〕
情報処理装置2、マスタ装置3、およびスレーブ装置4の制御ブロック(特に入力部21、取得部23、判定部24、報知制御部25、指示部26、指示入力部31、開始制御部33、受付部41、および制御部43)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0108】
後者の場合、情報処理装置2、マスタ装置3、およびスレーブ装置4は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0109】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0110】
1、10 マスタスレーブ制御システム
2 情報処理装置(外部装置)
3 マスタ装置(外部装置)
4 スレーブ装置
5 電源装置
6a~6h 外部デバイス
21 入力部
22 情報記憶部
23 取得部
24 判定部
25 報知制御部
26 指示部
31 指示入力部
32 マスタ記憶部
33 開始制御部
41 受付部
42 スレーブ記憶部
43 制御部
44a~44h スイッチング回路
45a~45h 測定回路
46a~46h 電力供給コネクタ
47 電力入力コネクタ
48 電力出力コネクタ