(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】樹脂組成物、樹脂組成物の硬化物、樹脂シート、プリント配線板、半導体チップパッケージ及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08G 59/40 20060101AFI20240123BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240123BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240123BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20240123BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20240123BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240123BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20240123BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20240123BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
C08G59/40
C08L63/00 C
C08K3/013
C08L101/12
B32B27/38
H05K1/03 610L
H05K3/28 F
H05K3/28 C
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2020063137
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-11-02
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池平 秀
(72)【発明者】
【氏名】阪内 啓之
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-044128(JP,A)
【文献】特開2017-043767(JP,A)
【文献】特開2015-017247(JP,A)
【文献】特開2013-253220(JP,A)
【文献】特開2016-027097(JP,A)
【文献】特開2017-179279(JP,A)
【文献】特開2013-104029(JP,A)
【文献】国際公開第2013/030998(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤
、(C)無機充填剤
及び(D)熱可塑性樹脂を含み、(B)成分が、分子中に、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキル基、及び置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基の少なくともいずれかの炭化水素鎖を有するマレイミド化合物を含み、(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、60質量%以上であ
り、(D)成分が、分子内に、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、及びポリカーボネート構造から選択される1種以上の構造を有する樹脂を含む、樹脂組成物であって、
当該樹脂組成物を180℃で90分硬化させることによって得られる硬化物の平均線熱膨張係数α(ppm/K)を、当該硬化物の架橋密度n(mol/cm
3)で除した値Z
f(ppm・cm
3/mol・K)が、下記式:
145<Z
f<1300
を満たす、
樹脂組成物。
【請求項2】
(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、70質量%以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(C)成分の平均粒子径が、10μm以下である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.5質量%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(D)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、25質量%以下である、請求項
1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
(D)成分が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、ビニル基、アクリロイル基、及びメタクリロイル基からなる群から選択される官能基を有する、請求項
1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
(D)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.5質量%以上25質量%以下である、請求項
1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
(A)成分が、(A-2)固体状エポキシ樹脂を含み、該(A-2)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.01質量%以上10質量%以下である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記硬化物のガラス転移温度Tg(℃)が、150~240℃の範囲内にある、請求項1~
8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記硬化物の平均線熱膨張係数αが、25ppm/K以下である、請求項1~
9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記硬化物の平均線熱膨張係数αが、20ppm/K以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記硬化物の所定の温度T(K)における貯蔵弾性率E’が、1.50×10
9Pa未満であり、ここで、所定の温度T(K)は、当該硬化物のガラス転移温度Tg(℃)と353(K)との和を示す温度である、請求項1~11のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
前記硬化物の架橋密度nが、0.15mol/cm
3以下である、請求項1~12のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
前記値Z
fが、下記式:
150≦Z
f<≦1000
を満たす、
請求項1~13のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
絶縁層形成用である、請求項1~14のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
ソルダーレジスト層形成用である、請求項1~15のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項18】
支持体と、該支持体上に設けられた、請求項1~16のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含む、樹脂シート。
【請求項19】
請求項1~16のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物又は請求項17に記載の硬化物により形成された絶縁層を含む、プリント配線板。
【請求項20】
請求項17に記載のプリント配線板と、当該プリント配線板に搭載された半導体チップとを含む、半導体チップパッケージ。
【請求項21】
半導体チップと、当該半導体チップを封止する請求項1~16のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物又は請求項17に記載の硬化物とを含む、半導体チップパッケージ。
【請求項22】
請求項19に記載のプリント配線板、又は、請求項20若しくは21に記載の半導体チップパッケージを含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。さらには、当該樹脂組成物の硬化物、樹脂シート、プリント配線板、半導体チップパッケージ及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置用のプリント配線板は、通常、絶縁層を含む。この絶縁層を構成する絶縁材料として樹脂組成物が用いられている。特許文献1には、熱硬化性化合物と、硬化剤とを含む絶縁材料が開示されている(請求項1参照)。このような樹脂組成物は、半導体チップを封止する場合にも用いられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体チップを封止する場合(特に、半導体チップの片面を封止する場合)、応力の偏りに起因して、反りが発生することがある。そのため、反りを抑制することが求められる。
【0005】
ところで、樹脂組成物に、熱可塑性樹脂を含ませる場合がある。そして、樹脂組成物が熱可塑性樹脂を含むことにより、当該樹脂組成物の硬化物の弾性率が低下し、その結果、半導体チップに生じる反りが抑制されることが期待できる。しかしながら、本発明者の検討の結果、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を用いると、長期信頼性に劣る場合があることが判明した。ここで、長期信頼性は、例えば、試験片に対しHTS試験(High Thermal Storage test)を施し、試験前後における物性を比較してその変化度が小さいことによって確認することができる。すなわち、反りを抑制し、かつ、長期信頼性を優れたものとするためには、樹脂組成物の硬化物の弾性率を調整するだけでは不十分であることが判明した。そこで、弾性率以外の調整項目が得られれば、熱可塑性樹脂の有無又は熱可塑性樹脂の含有量によらずに、反りが抑制され、かつ、長期信頼性に優れた硬化物を得ることができる樹脂組成物を提供できるようになることが期待される。
【0006】
本発明の課題は、反りが抑制され、かつ、長期信頼性に優れた硬化物を得ることができる樹脂組成物;並びに、当該樹脂組成物の硬化物、樹脂シート、プリント配線板、半導体チップパッケージ及び半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤を含む樹脂組成物について鋭意検討した結果、樹脂組成物の硬化物の平均線熱膨張係数αと、当該硬化物の架橋密度nとをパラメーターとして用い、平均線熱膨張係数αを架橋密度nで除した値Zf(ppm・cm3/mol・K)が、145<Zf<1300を満たすことで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤を含む樹脂組成物であって、
当該樹脂組成物を180℃で90分硬化させることによって得られる硬化物の平均線熱膨張係数α(ppm/K)を、当該硬化物の架橋密度n(mol/cm3)で除した値Zf(ppm・cm3/mol・K)が、下記式:
145<Zf<1300
を満たす、樹脂組成物。
[2] さらに、(C)無機充填剤を含む、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] (C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、70質量%以上である、[2]に記載の樹脂組成物。
[4] (C)成分の平均粒子径が、10μm以下である、[2]又は[3]に記載の樹脂組成物。
[5] (B)成分が、分子中に、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキル基、及び置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基の少なくともいずれかの炭化水素鎖を有するマレイミド化合物を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6] (B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.5質量%以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7] さらに、(D)熱可塑性樹脂を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8] (D)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、25質量%以下である、[7]に記載の樹脂組成物。
[9] 前記硬化物のガラス転移温度Tgが、150~240℃の範囲内にある、[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10] 前記硬化物の平均線熱膨張係数αが、25ppm/K以下である、[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[11] 前記硬化物の所定の温度T(K)における貯蔵弾性率E’が、1.50×109Pa未満であり、ここで、所定の温度T(K)は、当該硬化物のガラス転移温度Tg(℃)と353(K)との和を示す温度である、[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[12] 前記硬化物の架橋密度nが、0.15mol/cm3以下である、[1]~[11]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[13] 前記値Zfが、下記式:
150≦Zf<≦1000
を満たす、[1]~[12]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[14] 絶縁層形成用である、[1]~[13]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[15] ソルダーレジスト層形成用である、[1]~[14]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[16] [1]~[15]のいずれかに記載に記載の樹脂組成物の硬化物。
[17] 支持体と、該支持体上に設けられた、[1]~[15]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含む、樹脂シート。
[18] [1]~[15]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物又は[16]に記載の硬化物により形成された絶縁層を含む、プリント配線板。
[19] [18]に記載のプリント配線板と、当該プリント配線板に搭載された半導体チップとを含む、半導体チップパッケージ。
[20] 半導体チップと、当該半導体チップを封止する[1]~[15]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物又は[16]に記載の硬化物とを含む、半導体チップパッケージ。
[21] [18]に記載のプリント配線板、又は、[19]若しくは[20]に記載の半導体チップパッケージを含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、反りが抑制され、かつ、長期信頼性に優れた硬化物を得ることができる樹脂組成物;並びに、当該樹脂組成物の硬化物、樹脂シート、プリント配線板、半導体チップパッケージ及び半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の樹脂組成物、当該樹脂組成物の硬化物、樹脂シート、プリント配線板、半導体チップパッケージ及び半導体装置について詳細に説明する。
【0011】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤を含む樹脂組成物であり、当該樹脂組成物を180℃で90分硬化することによって得られる硬化物の平均線熱膨張係数αを、当該硬化物の架橋密度nで除した値Zf(ppm・cm3/mol・K)が後述する数値範囲内にある。この樹脂組成物によれば、反りが抑制され、かつ、長期信頼性に優れた硬化物を得ることができる。このような樹脂組成物を用いれば、樹脂組成物の硬化物、樹脂シート、プリント配線板、半導体チップパッケージ及び半導体装置を提供することができる。
【0012】
本発明の樹脂組成物は、(A)成分及び(B)成分に組み合わせて、さらに任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、(C)無機充填材、(D)熱可塑性樹脂、(E)硬化促進剤及び(F)その他の添加剤(ただし、(A)成分~(E)成分を除く。)等が挙げられる。以下、樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。なお、本発明において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
【0013】
<(A)エポキシ樹脂>
樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂を含有する。エポキシ樹脂とは、分子中に1個以上のエポキシ基を有する樹脂をいう。樹脂組成物が(A)エポキシ樹脂を含有することで、架橋構造を有する硬化物を得ることができる。
【0014】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
エポキシ樹脂は、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分を100質量%とした場合に、50質量%以上は分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるのが好ましい。
【0016】
エポキシ樹脂は、(A-1)液状エポキシ樹脂であってもよいし、(A-2)固体状エポキシ樹脂であってもよい。樹脂組成物は、(A-1)液状エポキシ樹脂と、(A-2)固体状エポキシ樹脂を組み合わせて含んでいてもよい。
【0017】
((A-1)液状エポキシ樹脂)
(A-1)液状エポキシ樹脂とは、温度20℃で液状のエポキシ樹脂をいう。樹脂組成物は、(A-1)液状エポキシ樹脂を含むことが好ましい。ここで、液状エポキシ樹脂は、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度を低下させる傾向にある成分の1つであるが、本発明によれば、樹脂組成物が斯かる成分を含んでいても平均線熱膨張係数が十分に低く耐熱性に優れる硬化物を得ることが可能である。
【0018】
液状エポキシ樹脂としては、分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましく、分子中に2個以上のエポキシ基を有する芳香族系液状エポキシ樹脂がより好ましい。本発明において、芳香族系のエポキシ樹脂とは、その分子内に芳香環を有するエポキシ樹脂を意味する。
【0019】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0020】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP-4032-SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX7400」(可撓性エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
樹脂組成物中の(A-1)成分の含有量は、(A-1)成分を含むことによる効果(例えば、樹脂ワニスの取り扱い性向上、相溶性の向上)を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、特に好ましくは2質量%以上である。(A-1)成分の含有量の上限は、本発明の効果が過度に損なわれない限り特に限定されないが、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下又は25質量%以下とし得る。
【0022】
((A-2)固体状エポキシ樹脂)
固体状エポキシ樹脂とは、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂をいう。樹脂組成物は、(A)成分として、(A-2)固体状エポキシ樹脂だけを含んでいてもよいが、平均線熱膨張係数を低くする観点又は架橋密度を高める観点から、(A-1)液状エポキシ樹脂と組み合わせて(A-2)固体状エポキシ樹脂を含むことが好ましい。固体状エポキシ樹脂としては、分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましい。
【0023】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフトール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0024】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200L」、「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」、「HP6000L」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「157S70」(ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
樹脂組成物中の(A-2)成分の含有量は、(A-2)成分を含むことによる効果(例えば、平均線熱膨張係数の低下、耐熱性向上、又は良好な架橋密度)を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.2質量%以上である。(A-2)成分の含有量の上限は、本発明の効果が過度に損なわれない限り特に限定されないが、架橋密度を適度に抑える観点から、10質量%以下、8質量%以下、5質量%以下又は3質量%以下とし得る。
【0026】
(A)成分として、(A-1)液状エポキシ樹脂と(A-2)固体状エポキシ樹脂とを併用する場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.01~1:20の範囲が好ましい。(A-1)液状エポキシ樹脂と(A-2)固体状エポキシ樹脂との量比を斯かる範囲とすることにより、i)樹脂シートの形態で使用する場合に適度な粘着性がもたらされる、ii)樹脂シートの形態で使用する場合に十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する、並びにiii)十分な破断強度を有する硬化物を得ることができる等の効果が得られる。上記i)~iii)の効果を得る観点及び架橋密度を適度に抑える観点から、(A-1)液状エポキシ樹脂と(A-2)固体状エポキシ樹脂の量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.01~1:10の範囲がより好ましく、1:0.01~1:8の範囲がさらに好ましい。
【0027】
樹脂組成物中の(A)成分の含有量は、本発明の所期の効果を奏する観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、特に好ましくは3質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、70質量%以下、60質量%以下、50質量%又は35質量%以下とし得る。
【0028】
(A)成分のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは70g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは70g/eq.~1000g/eq.である。この範囲となることで、硬化物の架橋密度が十分となり強度及び耐熱性に優れる硬化物をもたらすことができる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
【0029】
(A)成分の重量平均分子量は、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。ここで、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0030】
<(B)硬化剤>
樹脂組成物は、(B)硬化剤を含有する。(B)成分としては、(A)成分を硬化する機能を有するものを用いることができる。樹脂組成物が(A)エポキシ樹脂とともに(B)硬化剤を含有することで、耐熱性に優れる硬化物を得ることができる。
【0031】
(B)硬化剤としては、例えば、(B-1)マレイミド系硬化剤、並びに、(B-2)マレイミド系硬化剤以外の硬化剤が挙げられる。(B-2)マレイミド系硬化剤以外の硬化剤としては、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、及び、シアネートエステル系硬化剤から選択される1種以上の硬化剤(ただし、マレイミド基を含む硬化剤を除く)などが挙げられる。硬化剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0032】
中でも、本発明の所期の効果を奏する観点から、(B)成分は、(B-1)マレイミド系硬化剤を含むことが好ましい。また、(B)成分は、(B-1)マレイミド系硬化剤と、(B-2)マレイミド系硬化剤以外の硬化剤から選択される1種以上の硬化剤とを含むことが好ましい。より好ましくは、(B)成分は、(B-1)マレイミド系硬化剤と、(B-2)成分としての活性エステル系硬化剤及びフェノール系硬化剤から選択される1種以上の硬化剤とを含む。
【0033】
((B-1)マレイミド系硬化剤)
マレイミド系硬化剤としては、(B-1a)分子中に、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキル基、及び置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基の少なくともいずれかの炭化水素鎖を有するマレイミド化合物を挙げることができる。また、マレイミド系硬化剤としては、(B-1b)(B-1a)成分以外のマレイミド系硬化剤を挙げることができる。マレイミド系硬化剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。マレイミド系硬化剤は(B-1a)成分を含むことが好ましく、さらに組み合わせて(B-1b)成分を含んでいてもよい。
【0034】
(B-1)成分は、下記式で表されるマレイミド基を少なくとも1つ分子中に含有する化合物であり、脂肪族構造含有マレイミド化合物であることが好ましい。下記式に示す構造において、窒素原子の3つの結合手のうち他の原子と結合していない1つの結合手は単結合を意味する。
【0035】
【0036】
(B-1)成分における1分子当たりのマレイミド基の数は、1個以上であり、本発明の所期の効果を高める観点から、好ましくは2個以上、より好ましくは3個以上であり、上限は限定されるものではないが、10個以下、6個以下、4個以下、又は3個以下とし得る。
【0037】
脂肪族構造含有マレイミド化合物が有する炭素原子数が5以上のアルキル基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。炭素原子数が5以上のアルキル基は、炭素原子数が5以上のアルキレン基の置換基であってもよい。
【0038】
炭素原子数が5以上のアルキレン基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。ここで、環状のアルキレン基とは、環状のアルキレン基のみからなる場合と、直鎖状のアルキレン基と環状のアルキレン基との両方を含む場合も含める概念である。このようなアルキレン基としては、例えば、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、ヘプタデシレン基、ヘキサトリアコンチレン基、オクチレン-シクロヘキシレン構造を有する基、オクチレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基、プロピレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基等が挙げられる。
【0039】
脂肪族構造含有マレイミド化合物は、本発明の所期の効果を高める観点から、(B-1a)分子中に、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキル基、及び置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基の少なくともいずれかの炭化水素鎖を有するマレイミド化合物であり、炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基の両方を有するマレイミド化合物であることが好ましい。
【0040】
炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基は、鎖状であってもよいが、少なくとも一部の炭素原子が互いに結合して環を形成していてもよく、環構造は、スピロ環や縮合環も含む。互いに結合して形成された環としては、例えば、シクロヘキサン環等が挙げられる。
【0041】
炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基は、置換基を有していなくても、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、-OH、-O-C1-10アルキル基、-N(C1-10アルキル基)2、C1-10アルキル基、C6-10アリール基、-NH2、-CN、-C(O)O-C1-10アルキル基、-COOH、-C(O)H、-NO2等が挙げられる。ここで、「Cx-y」(x及びyは正の整数であり、x<yを満たす。)という用語は、この用語の直後に記載された有機基の炭素原子数がx~yであることを表す。例えば、「C1-10アルキル基」という表現は、炭素原子数1~10のアルキル基を示す。これら置換基は、互いに結合して環を形成していてもよく、環構造は、スピロ環や縮合環も含む。ここで、置換基の炭素原子数は、炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基の炭素原子数には含めない。上述の置換基は、さらに置換基(以下、「二次置換基」という場合がある。)を有していてもよい。二次置換基としては、特に記載のない限り、上述の置換基と同じものを用いてよい。
【0042】
脂肪族構造含有マレイミド化合物において、炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基は、マレイミド基の窒素原子に直接結合していることが好ましい。
【0043】
脂肪族構造含有マレイミド化合物の1分子当たりのマレイミド基の数は、1個でもよいが、好ましくは2個以上であり、好ましくは10個以下、より好ましく6個以下、特に好ましくは3個以下である。脂肪族構造含有マレイミド化合物が1分子当たり2個以上のマレイミド基を有することにより、本発明の所期の効果を高めることができる。
【0044】
脂肪族構造含有マレイミド化合物は、下記一般式(B1)で表されるマレイミド化合物であることが好ましい。
【化2】
【0045】
Mは、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基を表す。Mのアルキレン基は、上記した炭素原子数が5以上のアルキレン基と同様である。Mの置換基としては、例えば、ハロゲン原子、-OH、-O-C1-10アルキル基、-N(C1-10アルキル基)2、C1-10アルキル基、C6-10アリール基、-NH2、-CN、-C(O)O-C1-10アルキル基、-COOH、-C(O)H、-NO2等が挙げられる。ここで、「Cx-y」(x及びyは正の整数であり、x<yを満たす。)という用語は、この用語の直後に記載された有機基の炭素原子数がx~yであることを表す。例えば、「C1-10アルキル基」という表現は、炭素原子数1~10のアルキル基を示す。これら置換基は、互いに結合して環を形成していてもよく、環構造は、スピロ環や縮合環も含む。上述の置換基は、さらに置換基(以下、「二次置換基」という場合がある。)を有していてもよい。二次置換基としては、特に記載のない限り、上述の置換基と同じものを用いてよい。Mの置換基は、好ましくは炭素原子数が5以上のアルキル基である。ここで、置換基の炭素原子数は、炭素原子数が5以上のアルキレン基の炭素原子数には含めない。
【0046】
Lは単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-NR0-(R0は水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基)、酸素原子、硫黄原子、C(=O)NR0-、フタルイミド由来の2価の基、ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基、及びこれら2種以上の2価の基の組み合わせからなる基等が挙げられる。アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、フタルイミド由来の2価の基、ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基、及び2種以上の2価の基の組み合わせからなる基は、炭素原子数が5以上のアルキル基を置換基として有していてもよい。
【0047】
フタルイミド由来の2価の基とは、フタルイミドから誘導される2価の基を表し、具体的には以下の一般式で表される基である。式中、「*」は結合手を表す。
【化3】
【0048】
ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基とは、ピロメリット酸ジイミドから誘導される2価の基を表し、具体的には以下の一般式で表される基である。式中、「*」は結合手を表す。
【化4】
【0049】
Lにおける2価の連結基としてのアルキレン基は、炭素原子数1~50のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~45のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~40のアルキレン基が特に好ましい。このアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。このようなアルキレン基としては、例えば、メチルエチレン基、シクロヘキシレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、ヘプタデシレン基、ヘキサトリアコンチレン基、オクチレン-シクロヘキシレン構造を有する基、オクチレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基、プロピレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基等が挙げられる。
【0050】
Lにおける2価の連結基としてのアルケニレン基は、炭素原子数2~20のアルケニレン基が好ましく、炭素原子数2~15のアルケニレン基がより好ましく、炭素原子数2~10のアルケニレン基が特に好ましい。このアルケニレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。このようなアルケニレン基としては、例えば、メチルエチレニレン基、シクロヘキセニレン基、ペンテニレン基、へキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基等が挙げられる。
【0051】
Lにおける2価の連結基としてのアルキニレン基は、炭素原子数2~20のアルキニレン基が好ましく、炭素原子数2~15のアルキニレン基がより好ましく、炭素原子数2~10のアルキニレン基が特に好ましい。このアルキニレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。このようなアルキニレン基としては、例えば、メチルエチニレン基、シクロヘキシニレン基、ペンチニレン基、へキシニレン基、ヘプチニレン基、オクチニレン基等が挙げられる。
【0052】
Lにおける2価の連結基としてのアリーレン基は、炭素原子数6~24のアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~18のアリーレン基がより好ましく、炭素原子数6~14のアリーレン基がさらに好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基がさらにより好ましい。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基等が挙げられる。
【0053】
Lにおける2価の連結基であるアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、及びアリーレン基は置換基を有していてもよい。置換基としては、一般式(B1)中のMの置換基と同様であり、好ましくは炭素原子数が5以上のアルキル基である。
【0054】
Lにおける2種以上の2価の基の組み合わせからなる基としては、例えば、アルキレン基、フタルイミド由来の2価の基及び酸素原子との組み合わせからなる2価の基;フタルイミド由来の2価の基、酸素原子、アリーレン基及びアルキレン基の組み合わせからなる2価の基;アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる2価の基;等が挙げられる。2種以上の2価の基の組み合わせからなる基は、それぞれの基の組み合わせにより縮合環等の環を形成してもよい。また、2種以上の2価の基の組み合わせからなる基は、繰り返し単位数が1~10の繰り返し単位であってもよい。
【0055】
中でも、一般式(B1)中のLとしては、酸素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数6~24のアリーレン基、置換基を有していてもよい炭素原子数が1~50のアルキレン基、炭素原子数が5以上のアルキル基、フタルイミド由来の2価の基、ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基、又はこれらの基の2以上の組み合わせからなる2価の基であることが好ましい。中でも、Lとしては、アルキレン基;アルキレン基-フタルイミド由来の2価の基-酸素原子-フタルイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキレン基-フタルイミド由来の2価の基-酸素原子-アリーレン基-アルキレン基-アリーレン基-酸素原子-フタルイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキレン-ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基がより好ましい。
【0056】
脂肪族構造含有マレイミド化合物は、下記一般式(B2)で表されるマレイミド化合物であることが好ましい。
【化5】
【0057】
M1はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基を表す。M1は、一般式(B1)中のMと同様である。
【0058】
Aはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基又は置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表す。Aにおけるアルキレン基としては、鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも環状、即ち置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の環状のアルキレン基が好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このようなアルキレン基としては、例えば、オクチレン-シクロヘキシレン構造を有する基、オクチレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基、プロピレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基等が挙げられる。
【0059】
Aが表す芳香環を有する2価の基における芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フタルイミド環、ピロメリット酸ジイミド環、芳香族複素環等が挙げられ、ベンゼン環、フタルイミド環、ピロメリット酸ジイミド環が好ましい。即ち、芳香環を有する2価の基としては、置換基を有していてもよいベンゼン環を有する2価の基、置換基を有していてもよいフタルイミド環を有する2価の基、置換基を有していてもよいピロメリット酸ジイミド環を有する2価の基が好ましい。芳香環を有する2価の基としては、例えば、フタルイミド由来の2価の基及び酸素原子との組み合わせからなる基;フタルイミド由来の2価の基、酸素原子、アリーレン基及びアルキレン基の組み合わせからなる基;アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる基;ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基;フタルイミド由来の2価の基及びアルキレン基の組み合わせからなる基;等が挙げられる。上記アリーレン基及びアルキレン基は、一般式(B1)中のLが表す2価の連結基におけるアリーレン基及びアルキレン基と同様である。
【0060】
Aが表す、アルキレン基及び芳香環を有する2価の基は置換基を有していてもよい。置換基としては、一般式(B1)中のMの置換基が表す置換基と同様である。
【0061】
Aが表す基の具体例としては、以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【化6】
【化7】
【0062】
一般式(B2)で表されるマレイミド化合物は、下記一般式(B2-1)で表されるマレイミド化合物、及び下記一般式(B2-2)で表されるマレイミド化合物のいずれかであることが好ましい。
【化8】
【化9】
【0063】
M2及びM3はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基を表す。M2及びM3は、一般式(B1)中のMが表す炭素原子数が5以上のアルキレン基と同様であり、ヘキサトリアコンチレン基が好ましい。
【0064】
R30はそれぞれ独立に、酸素原子、アリーレン基、アルキレン基、又はこれら2種以上の2価の基の組み合わせからなる基を表す。アリーレン基、アルキレン基は、一般式(B1)中のLが表す2価の連結基におけるアリーレン基及びアルキレン基と同様である。R30としては、2種以上の2価の基の組み合わせからなる基又は酸素原子であることが好ましい。
【0065】
R
30における2種以上の2価の基の組み合わせからなる基としては、酸素原子、アリーレン基、及びアルキレン基の組み合わせが挙げられる。2種以上の2価の基の組み合わせからなる基の具体例としては、以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【化10】
【0066】
M4、M6及びM7はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基を表す。M4、M6及びM7は、一般式(B1)中のMが表す置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基と同様であり、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基が好ましく、オクチレン基がより好ましい。
【0067】
M5はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表す。M5は、一般式(B2)中のAが表す置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基と同様であり、アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる基;フタルイミド由来の2価の基及びアルキレン基の組み合わせからなる基が好ましく、アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる基がより好ましい。
【0068】
M
5が表す基の具体例としては、例えば以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【化11】
【0069】
R31及びR32はそれぞれ独立に炭素原子数が5以上のアルキル基を表す。R31及びR32は、上記した炭素原子数が5以上のアルキル基と同様であり、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が好ましく、ヘキシル基、オクチル基がより好ましい。
【0070】
u1及びu2はそれぞれ独立に1~15の整数を表し、1~10の整数が好ましい。
【0071】
脂肪族構造含有マレイミド化合物の具体例としては、以下の(b1)、(b2)、(b3)及び(b4)の化合物を挙げることができる。但し、脂肪族構造含有マレイミド化合物はこれら具体例に限定されるものではない。式(b1)、(b2)、(b3)中、n9、n10、n11は1~10の整数を表す。
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【0072】
脂肪族構造含有マレイミド化合物((B-1)成分)の具体例としては、デザイナーモレキュールズ社製の「BMI-1500」(式(b1)の化合物)、「BMI-1700」(式(b2)の化合物)、「BMI-3000J」(式(b3)の化合物)及び「BMI-689」(式(b4)の化合物)等が挙げられる。
【0073】
(B-1)成分のマレイミド基当量は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、好ましくは50g/eq.~2000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.、さらに好ましくは150g/eq.~500g/eq.である。マレイミド基当量は、1当量のマレイミド基を含むマレイミド化合物の質量である。
【0074】
(B-1)成分の含有量は、樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、(A)成分及び(B-1)成分以外の成分の含有量に依存するものの、本発明の所期の効果を高める観点からは、0.2質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上又は2.0質量%以上とし得る。本発明の所期の効果を高める観点から、上限は、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。(B-1)成分の(B)成分に占める割合は、本発明の所期の効果を高める観点からは、30質量%以上、40質量%以上又は50質量%以上であることが好ましく、上限は、100質量%である。
【0075】
((B-2)マレイミド系硬化剤以外の硬化剤)
活性エステル系硬化剤としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0076】
具体的には、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が好ましく、中でもナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0077】
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB―9451」、「EXB―9460」、「EXB―9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「HPC-8000L-65TM」(DIC社製)、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として、「EXB―9416-70BK」、「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150-65T」、「EXB-8150L-65T」、「HPC-8150-60T」、「HPC-8150-62T」、「HP-B-8151-62T」(DIC社製)、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱ケミカル社製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製)、スチリル基を含む活性エステル化合物として「PC1300-02-65MA」(エア・ウォーター社製)等が挙げられる。
【0078】
フェノール系硬化剤(活性エステル化合物を除く)及びナフトール系硬化剤(活性エステル化合物を除く)としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造又はクレゾールノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。
【0079】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金化学社製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN-495V」、「SN375」、「SN395」、DIC社製の「TD-2090」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」、「KA-1160」等が挙げられる。
【0080】
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル社製の「V-03」、「V-05」、「V-07」、「V-09」、「Elastostab H01」等が挙げられる。
【0081】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OP100D」、「ODA-BOZ」、昭和高分子社製の「HFB2006M」、四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」が挙げられる。ベンゾオキサジン系硬化剤は、ベンゾオキサジン構造を有する化合物である。ベンゾオキサジン構造とは、置換若しくは非置換のベンゾオキサジン環(例えば、1,2-ベンゾオキサジン環、1,3-ベンゾオキサジン環)、又は、一部の二重結合が水素化されたベンゾオキサジン環(例えば、3,4-ジヒドロ-2H-1,3-ベンゾオキサジン環)をいう。
酸無水物系硬化剤としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する硬化剤が挙げられ、1分子内中に2個以上の酸無水物基を有する硬化剤が好ましい。酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物系硬化剤の市販品としては、新日本理化社製の「HNA-100」、「MH-700」、「MTA-15」、「DDSA」、「OSA」、三菱ケミカル社製の「YH-306」、「YH-307」、日立化成社製の「HN-2200」、「HN-5500」等が挙げられる。
【0082】
アミン系硬化剤としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のアミノ基を有する硬化剤が挙げられ、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、本発明の所望の効果を奏する観点から、芳香族アミン類が好ましい。アミン系硬化剤は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、ジフェニルジアミノスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系硬化剤は市販品を用いてもよく、例えば、日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
【0083】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL-950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0084】
(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.01~1:2の範囲が好ましく、1:0.05~1:3がより好ましく、1:0.1~1:1.5がさらに好ましい。ここで、(B)硬化剤の反応基とは、活性エステル基、活性水酸基等であり、(B)硬化剤の種類によって異なる。また、(A)エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、(A)エポキシ樹脂の各々の不揮発分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、(B)硬化剤の反応基の合計数とは、(B)硬化剤の各々の不揮発分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との量比を斯かる範囲とすることにより、本発明の所期の効果を高めることができる。
【0085】
(B)成分の含有量は、上述した(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤の量比の範囲を満たすように決定されることが好ましい。本発明の所期の効果を高める観点から、(B)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上又は3質量%以上、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下又は25質量%以下としうる。
【0086】
<(C)無機充填材>
樹脂組成物は、(C)無機充填材を含有していてもよい。樹脂組成物の硬化物の平均線熱膨張係数を小さくする観点からは、樹脂組成物が無機充填材を含むことが好ましい。
【0087】
無機充填材の材料は無機化合物であれば特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。またシリカとしては球状シリカが好ましい。無機充填材は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。シリカの市販品として、アドマテックス社製「SO-C2」、「SO-C1」、デンカ社製「UFP-30」、「UFP-40」等が挙げられる。
【0088】
無機充填材の平均粒径は、通常、20μm以下であり、本発明の所期の効果を高める観点から、好ましくは10μm以下、より好ましくは5.0μm以下、さらに好ましくは2.5μm以下、さらに好ましくは2.0μm以下である。平均粒径の下限は、特に限定されないが、1nm(0.001μm)以上、又は5nm以上、又は10nm以上等とし得る。
【0089】
無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波によりメチルエチルケトン中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒径分布測定装置としては、堀場製作所社製「LA-500」、島津製作所社製「SALD-2200」等を使用することができる。
【0090】
無機充填材は、埋め込み性を良好にする観点等から、表面処理剤で処理されていることが好ましく、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン化合物、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等の1種以上の表面処理剤で処理されていることがより好ましく、アミノシラン系シランカップリング剤で処理されていることがさらに好ましい。表面処理剤は、他の成分、例えば樹脂と反応する官能基、例えばエポキシ基、アミノ基又はメルカプト基を有することが好ましく、当該官能基が末端基に結合していることがより好ましい。表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製シラン系カップリング剤「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製シラン系カップリング剤「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製シラン系カップリング剤「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製シラン系カップリング剤「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製シラン系カップリング剤「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製アルコキシシラン化合物「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製シラン系カップリング剤「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製シラン系カップリング剤「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0091】
表面処理剤による表面処理の程度は、埋め込み性を良好にする観点等から、(C)成分100質量部に対して、0.2質量部~5質量部の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量部~4質量部で表面処理されていることが好ましく、0.3質量部~3質量部で表面処理されていることが好ましい。
【0092】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、埋め込み性を良好にする観点等から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下が更に好ましい。
【0093】
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、不揮発成分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0094】
(C)成分の比表面積としては、好ましくは1m2/g以上、より好ましくは2m2/g以上、特に好ましくは3m2/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m2/g以下、50m2/g以下又は40m2/g以下である。比表面積は、BET法に従って、BET全自動比表面積測定装置(マウンテック社製「Macsorb HM-1210」)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0095】
(C)成分の含有量は、樹脂組成物の硬化物の平均線熱膨張係数を小さくする観点等から、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上又は71質量%以上である。上限は、特に限定されないが、通常95質量%以下であり、94質量%以下又は93質量%以下とし得る。本発明では実施例で例証されたように、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、(C)成分の含有量が70質量%以上であっても、反りが抑制され、かつ、長期信頼性に優れる硬化物が得られたことが確認されている。
【0096】
<(D)熱可塑性樹脂>
樹脂組成物は、任意の成分として(D)熱可塑性樹脂を含有していてもよい。樹脂組成物を樹脂シート又はフィルム形状にて扱う場合には、樹脂組成物が(D)成分を含むことが好ましい。ただし、後述する値Zfが所定の範囲にある限りにおいて樹脂組成物は(D)成分を含まなくてもよい。
【0097】
(D)成分のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1000以上、より好ましくは1500以上、さらに好ましくは2000以上、3000以上である。上限は、好ましくは1000000以下、より好ましくは900000以下である。(D)成分のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、好ましくは1000以上、より好ましくは1500以上、さらに好ましくは2000以上、3000以上である。上限は、好ましくは1000000以下、より好ましくは900000以下である。(D)成分のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される。具体的には、(D)成分のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、測定装置として島津製作所社製LC-9A/RID-6Aを、カラムとして昭和電工社製Shodex K-800P/K-804L/K-804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度を40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0098】
(D)熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられ、フェノキシ樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0099】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)が挙げられ、その他にも、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」、三菱ケミカル社製の「YX7200B35」、「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
【0100】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、例えば、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」、積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
【0101】
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。
【0102】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0103】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、三菱ガス化学社製のオリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂「OPE-2St 1200」等が挙げられる。ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「スミプロイK」等が挙げられる。ポリエーテルイミド樹脂の具体例としては、GE社製の「ウルテム」等が挙げられる。
【0104】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0105】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合樹脂;ポリプロピレン、エチレン-プロピレンブロック共重合体等のポリオレフィン系エラストマー等が挙げられる。
【0106】
ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0107】
(D)成分としては、分子内に、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、及びポリカーボネート構造から選択される1種以上の構造を有する樹脂であることが好ましく、ポリブタジエン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造及びポリカーボネート構造から選択される1種または2種以上の構造を有する樹脂であることがより好ましく、ポリブタジエン構造及びポリカーボネート構造から選択される1種以上の構造を有する樹脂であることがさらに好ましい。なお、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート及びアクリレート並びにそれらの組み合わせを包含する用語である。これらの構造は主鎖に含まれていても側鎖に含まれていてもよい。
【0108】
(D)成分は、反応性を有する官能基(以下、「反応性官能基」ともいう)を有することが好ましく、これにより、(A)成分及び(B)成分で構成される架橋構造に組み入れることが可能となる。なお、反応性官能基には、加熱又は光照射によって反応性が発現するものであってもよい。
【0109】
(D)成分が有する反応性基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基が挙げられる。ビニル基に代えて、炭素-炭素間に二重結合を有する基であってもよい。ヒドロキシ基は、架橋構造の耐熱性を高める観点からフェノール性水酸基であることが好ましい。
【0110】
(D)成分の好適な一実施形態は、ポリブタジエン構造を含有する樹脂であり、ポリブタジエン構造は主鎖に含まれていても側鎖に含まれていてもよい。なお、ポリブタジエン構造は、一部又は全てが水素添加されていてもよい。ポリブタジエン構造を含有する樹脂をポリブタジエン樹脂という。
【0111】
ポリブタジエン樹脂の具体例としては、クレイバレー社製の「Ricon 130MA8」、「Ricon 130MA13」、「Ricon 130MA20」、「Ricon 131MA5」、「Ricon 131MA10」、「Ricon 131MA17」、「Ricon 131MA20」、「Ricon 184MA6」(酸無水物基含有ポリブタジエン)、日本曹達社製の「GQ-1000」(水酸基、カルボキシル基導入ポリブタジエン)、「G-1000」、「G-2000」、「G-3000」(両末端水酸基ポリブタジエン)、「GI-1000」、「GI-2000」、「GI-3000」(両末端水酸基水素化ポリブタジエン)、ナガセケムテックス社製の「FCA-061L」(水素化ポリブタジエン骨格エポキシ樹脂)等が挙げられる。また、ポリブタジエン樹脂として、後述する<熱可塑性樹脂溶液Aの調製>において調製された熱可塑性樹脂溶液Aに含まれる反応性官能基を有する熱可塑性樹脂A又はその改変物を用いてもよい。また、ポリブタジエン樹脂として、特開2006-37083号公報に開示される、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンのヒドロキシル基を除いた残基を有する樹脂又はその改変物を用いてもよく、このうち、柔軟性に優れる硬化物を得る観点からは、平均分子量が800~1000である2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンのヒドロキシル基を除いた残基を有する樹脂若しくはその改変物、又は、ポリブタジエン構造の含有率が45質量%以上の樹脂若しくはその改変物を用いることが好ましい。また、ポリブタジエン樹脂として、国際公開第2008/153208号に開示される、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリブタジエンポリオール化合物を原料とするポリブタジエン構造を有する樹脂又はその改変物を用いてもよく、このうち、柔軟性に優れる硬化物を得る観点からは、数平均分子量が300~5000のポリブタジエンポリオール化合物を原料とするポリブタジエン構造を有する樹脂又はその改変物を用いることが好ましい。ポリブタジエン樹脂におけるブタジエン構造の含有率は、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは60質量%以上、65質量%以上又は70質量%以上であり、ブタジエン構造の含有率の上限は、分子中の他の構造部位によっておのずと定まる。
【0112】
(D)成分の好適な一実施形態は、ポリ(メタ)アクリレート構造を含有する樹脂である。ポリ(メタ)アクリレート構造を含有する樹脂をポリ(メタ)アクリル樹脂という。ポリ(メタ)アクリル樹脂としては、ナガセケムテックス社製のテイサンレジン、根上工業社製の「ME-2000」、「W-116.3」、「W-197C」、「KG-25」、「KG-3000」等が挙げられる。
【0113】
(D)成分の好適な実施形態は、ポリカーボネート構造を含有する樹脂である。ポリカーボネート構造を含有する樹脂をポリカーボネート樹脂という。ポリカーボネート樹脂としては、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。また、ポリカーボネート樹脂として、後述する<熱可塑性樹脂溶液Bの調製>において調製された熱可塑性樹脂溶液Bに含まれる反応性官能基を有する熱可塑性樹脂B又はその改変物を用いてもよい。また、ポリカーボネート樹脂として、国際公開第2016/129541号に開示される、ポリカーボネートジオールのヒドロキシル基を除いた残基を有する樹脂又はその改変物を用いてもよく、このうち、柔軟性及び耐薬品性に優れる硬化物を得る観点からは、水酸基当量が250~1250であるポリカーボネートジオールのヒドロキシル基を除いた残基を有する樹脂若しくはその改変物を用いることが好ましい。また、ポリカーボネート樹脂として、ポリカーボネートポリオールのヒドロキシル基を除いた残基を有する樹脂又はその改変物を用いてもよい。ポリカーボネート樹脂におけるカーボネート構造の含有率は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは65質量%以上であり、さらに好ましくは75質量%以上であり、カーボネート構造の含有率の上限は、分子中の他の構造部位によっておのずと定まる。
【0114】
また、(D)成分の他の実施形態としては、シロキサン構造を含有する樹脂である。シロキサン構造を含有する樹脂をシロキサン樹脂という。シロキサン樹脂としては、例えば、信越シリコーン社製の「SMP-2006」、「SMP-2003PGMEA」、「SMP-5005PGMEA」、アミン基末端ポリシロキサンおよび四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミド(国際公開第2010/053185号公報、特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等)等が挙げられる。
【0115】
(D)成分の他の実施形態としては、アルキレン構造、アルキレンオキシ構造を含有する樹脂である。アルキレン構造を含有する樹脂をアルキレン樹脂といい、アルキレンオキシ構造を含有する樹脂をアルキレンオキシ樹脂という。ポリアルキレンオキシ構造は、炭素原子数2~15のポリアルキレンオキシ構造が好ましく、炭素原子数3~10のポリアルキレンオキシ構造がより好ましく、炭素原子数5~6のポリアルキレンオキシ構造がさらに好ましい。アルキレン樹脂、アルキレンオキシ樹脂の具体例としては、旭化成せんい社製の「PTXG-1000」、「PTXG-1800」等が挙げられる。
【0116】
(D)成分の他の実施形態としては、イソプレン構造を含有する樹脂である。イソプレン構造を含有する樹脂をイソプレン樹脂という。イソプレン樹脂の具体例としては、クラレ社製の「KL-610」、「KL613」等が挙げられる。
【0117】
(D)成分の他の実施形態としては、イソブチレン構造を含有する樹脂である。イソブチレン構造を含有する樹脂をイソブチレン樹脂という。イソブチレン樹脂の具体例としては、カネカ社製の「SIBSTAR-073T」(スチレン-イソブチレン-スチレントリブロック共重合体)、「SIBSTAR-042D」(スチレン-イソブチレンジブロック共重合体)等が挙げられる。
【0118】
(D)成分の含有量は、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、0.1質量%以上、0.3質量%以上又は0.5質量%以上とし得る。下限は、(D)成分を含有させることの所期の効果を奏する観点からは、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。上限は、長期信頼性に優れる硬化物を得る観点から、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下である。樹脂成分とは、樹脂組成物に含まれる全成分から、(C)無機充填材及び(F)その他の添加剤を除外した成分をいう。
【0119】
(D)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.1質量%以上、0.3質量%以上又は0.5質量%以上とし得る。下限は、(D)成分を含有させることの所期の効果を奏する観点からは、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。上限は、長期信頼性に優れる硬化物を得る観点から、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0120】
<(E)硬化促進剤>
樹脂組成物は、(E)硬化促進剤を含有し得る。硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられ、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤が好ましく、アミン系硬化促進剤がより好ましい。硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0121】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0122】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
【0123】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
【0124】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、四国化成社製イミダゾール化合物「1B2PZ」、三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0125】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
【0126】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0127】
樹脂組成物が(E)成分を含有する場合、(E)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上である。上限は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。これにより、樹脂組成物の硬化を確実に促進することができる。
【0128】
<(F)任意の添加剤>
一実施形態において、樹脂組成物は、さらに必要に応じて、(F)他の添加剤(ただし、(A)成分~(E)成分を除く。)を含んでいてもよく、斯かる他の添加剤としては、例えば、有機充填材、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物、並びに増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、及び着色剤等の樹脂添加剤等が挙げられる。
【0129】
有機充填材としては、プリント配線板の絶縁層を形成するに際し使用し得る任意の有機充填材を使用してよく、例えば、ゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子等が挙げられる。ゴム粒子としては、市販品を用いてもよく、例えば、ダウ・ケミカル日本社製の「EXL2655」、アイカ工業社製の「AC3401N」、「AC3816N」等が挙げられる。
【0130】
(F)成分の含有量は、本発明の所期の効果を過度に損なわない限り、任意であるが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、0.1質量%以上、0.3質量%以上又は0.5質量%以上であり、例えば、15質量%以下、13質量%以下又は10質量%以下とし得る。
【0131】
<樹脂組成物の特性>
(値Zf)
本発明の樹脂組成物は、180℃で90分硬化して得られる硬化物について、平均線熱膨張係数αを、架橋密度nで除した値Zf(ppm・cm3/mol・K)が、145<Zf<1300を満たし、好ましくは150≦Zf≦1000を満たす。これにより、本発明の樹脂組成物は、実施例の欄で実証されたとおり、比較例に比べて、反りが抑制され、かつ、長期信頼性に優れた硬化物を得ることができる。好ましくは、ここで、Zfは、後述する<値Zfの取得>にしたがって取得することができる。Zfは、通常、145(ppm・cm3/mol・K)超であり、好ましくは150(ppm・cm3/mol・K)以上であり、本発明の所期の効果(反りの抑制及び長期信頼性)を高める観点から、好ましくは155(ppm・cm3/mol・K)以上、より好ましくは160(ppm・cm3/mol・K)以上であり、通常、1300(ppm・cm3/mol・K)未満であり、好ましくは1000(ppm・cm3/mol・K)以下であり、本発明の所期の効果を高める観点から、好ましくは700(ppm・cm3/mol・K)以下、より好ましくは500(ppm・cm3/mol・K)以下である。ここで、値Zfは、例えば、樹脂組成物が含む(A)成分及び(B)成分等の成分の種類及び量によって調整し得る。値Zfは、平均線熱膨張係数αと架橋密度nとの関係式で表されるパラメーターであって、反りの抑制及び長期信頼性に関するパラメーターであることから、(i)一般に平均線熱膨張係数αを下げる成分である(C)成分の有無及びその含有量、(ii)エポキシ樹脂及び硬化剤によって形成される架橋構造の形成を阻害するか又は架橋密度の高まりを抑え得る成分又は部位(例えば、(C)成分及び(D)成分)の有無及びその含有量、及び、(iii)前記架橋構造の形成を促進し得る成分(例えば、(E)成分)の有無及びその含有量に関するパラメーターが既に反映された指標の一つであると把握し得る。
【0132】
(ガラス転移温度Tg)
本発明の樹脂組成物は、耐熱性に優れる硬化物を得る観点から、180℃で90分硬化して得られる硬化物のガラス転移温度Tg(℃)が、150~240℃の範囲内にあることが好ましい。ガラス転移温度Tg(℃)は、後述する<動的弾性率の測定>に際し取得することができる。ガラス転移温度Tg(℃)は、通常、150℃以上であり、耐熱性に優れる硬化物を得る観点から、好ましくは165℃超、より好ましくは176℃以上である。ガラス転移温度Tg(℃)の上限は、通常、240℃以下であるが、例えば、取り扱い性に優れる硬化物を得る観点から、210℃以下、209℃以下、又は205℃以下とし得る。
【0133】
(平均線熱膨張係数α)
本発明の樹脂組成物は、本発明の所期の効果を高める観点から、180℃で90分硬化して得られる硬化物の平均線熱膨張係数αが小さいことが好ましい。ここで、平均線熱膨張係数αの値は、例えば、樹脂組成物が含む(A)成分及び(B)成分等の成分の種類及び量によって低下させる調整を行い得る。平均線熱膨張係数αは、後述する<平均線熱膨張係数(CTE)αの測定>にしたがって測定することができる。斯かる硬化物の平均線熱膨張係数αは、通常、30ppm/K未満であり、好ましくは25ppm/K以下であり、より好ましくは20ppm/K以下であり、下限は限定されるものではないが、例えば、1ppm/K以上又は2ppm/K以上とし得る。斯かる硬化物の平均線熱膨張係数αは、上記値Zfが上記数値範囲を満たす観点からは、例えば、5ppm/K以上又は7ppm/K以上とし得る。
【0134】
(所定の温度T(K)における貯蔵弾性率E’)
本発明の樹脂組成物は、180℃で90分硬化して得られる硬化物につき、所定の温度T(K)における貯蔵弾性率E’が、通常、2.00×109Pa以下である。所定の温度T(K)は、所定の温度T(K)は、当該硬化物のガラス転移温度Tg(℃)と353(K)との和を示す温度(すなわち、ガラス転移温度Tg(℃)を単位Kに換算すべく273Kを加算しかつ80Kを加算した値)である。ここで、所定の温度T(K)における貯蔵弾性率E’の値は、例えば、樹脂組成物が含む(A)成分及び(B)成分等の成分の種類及び量によって調整し得る。本発明の所期の効果を高める観点からは、斯かる貯蔵弾性率E’は、好ましくは1.50×109Pa未満、より好ましくは1.40×109Pa以下、さらに好ましくは1.30×109Pa以下又は1.20×109Pa以下であり、通常、0.10×109Pa以上であり、本発明の所期の効果を高める観点から、好ましくは0.30×109Pa超、より好ましくは0.35×109Pa以上、さらに好ましくは0.40×109Pa以上である。斯かる硬化物は、上記値Zfが上記数値範囲を満たして本発明の所期の効果を高める観点からは、平均線熱膨張係数αが25ppm/K以下であり、かつ、所定の温度T(K)における貯蔵弾性率E’が1.50×109Pa未満であることが好ましく、又は、平均線熱膨張係数αが25ppm/K以下であり、かつ、所定の温度T(K)における貯蔵弾性率E’が0.30×109Pa超であることが好ましい。所定の温度T(K)は、例えば、473K~673Kの範囲内にある。
【0135】
(架橋密度n)
本発明の樹脂組成物は、本発明の所期の効果を高める観点から、180℃で90分硬化して得られる硬化物の架橋密度nが0.15mol/cm3以下であることが好ましい。ここで、架橋密度nの値は、例えば、樹脂組成物が含む(A)成分及び(B)成分等の成分の種類及び量によって調整し得る。架橋密度nは、後述する<動的弾性率の測定>における測定結果を用いることにより取得することができる。本発明の所期の効果を高める観点からは、斯かる架橋密度nは、好ましくは0.15mol/cm3以下、より好ましくは0.15mol/cm3以下、さらに好ましくは0.15mol/cm3以下又は0.15mol/cm3以下であり、通常、0.01mol/cm3以上であり、本発明の所期の効果を高める観点から、好ましくは0.02mol/cm3以上、より好ましくは0.03mol/cm3以上である。
【0136】
本発明の樹脂組成物は、反りが抑制され、かつ、長期信頼性に優れる硬化物で形成された絶縁層を得ることができる。したがって、本発明の樹脂組成物は、プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶縁層形成用樹脂組成物)として好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の層間絶縁層形成用樹脂組成物)としてより好適に使用することができる。また、本発明の樹脂組成物は、反りが抑制され、かつ、長期信頼性に優れる硬化物で形成された絶縁層をもたらすことから、プリント配線板が部品内蔵回路板である場合にも好適に使用することができる。さらに、本発明の樹脂組成物は、反りが抑制され、かつ、長期信頼性に優れる硬化物で形成された絶縁層をもたらすことから、ソルダーレジスト層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板のソルダーレジスト層形成用樹脂組成物)としてより好適に使用することができる。また、本発明の樹脂組成物は、反りが抑制された硬化物で形成された絶縁層をもたらすことから、半導体チップパッケージ用の半導体チップを封止する封止層を形成するための樹脂組成物(半導体チップパッケージの封止層形成用樹脂組成物)として好適に使用することができる。また、本発明の樹脂組成物は、半導体チップパッケージの再配線形成層を形成するための樹脂組成物(半導体チップパッケージ用の再配線形成層形成用の樹脂組成物)として好適に使用することができる。
【0137】
再配線形成層を含む半導体チップパッケージは、例えば、以下の(1)~(6)工程を経て製造される。
(1)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(2)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(3)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(4)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(5)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程、及び
(6)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程
また、封止層を含む半導体チップパッケージが製造される際、封止層上に更に再配線層が形成されてもよい。
【0138】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、配合成分を、必要により溶媒等と混合し、回転ミキサーなどを用いて分散する方法などが挙げられる。本発明の樹脂組成物を製造するにあたり、(A)成分及び(B)成分の選択と、(A)成分の含有量及び(B)成分の含有量を調整することにより、上記の値Zfを上述した範囲内に収めることが可能である。
【0139】
樹脂組成物は、例えば溶媒を含むことにより、樹脂ワニスとして得ることができる。また、本発明の所期の効果を奏する観点から、樹脂ワニスを乾燥させて、樹脂組成物をBステージの状態で又はフィルム形状にして用いることが好ましい。
【0140】
<樹脂組成物の硬化物の物性、用途>
(長期信頼性)
本発明の樹脂組成物を熱硬化して得られる硬化物は、通常、長期信頼性に優れている。長期信頼性は、後述する<長期信頼性の評価>の記載に従って評価することができる。例えば、樹脂組成物を180℃で90分間の条件で熱硬化して得られる硬化物は、HTS試験の前後における引張破断点強度の変化度の絶対値が小さい(例えば、20%未満又は10%以下である)ことが好ましい。
【0141】
(反りの抑制)
本発明の樹脂組成物を熱硬化して得られる硬化物は、基板上に形成された場合、通常、基板の反りが抑制されている。反りは、後述する<反りの評価>の記載に従って評価することができる。例えば、樹脂組成物を180℃で90分間の条件で熱硬化して得られる厚さ300μmの硬化物が形成された基板に生じ得る最大反り量が2000μm以下であり得る。
【0142】
(耐薬品性)
本発明の樹脂組成物を熱硬化して得られる硬化物は、通常、耐薬品性に優れるという特性を示す。耐薬品性は、後述する<耐薬品性の評価>の記載に従って評価することができる。例えば、樹脂組成物を180℃で90分間の条件で熱硬化して得られる厚さ100μmの硬化物は、強アルカリ水溶液(例えば、水酸化カリウム水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム溶液、水酸化ナトリウム水溶液又は炭酸ナトリウム水溶液)に浸漬してもその前後における質量減少率が1質量%以下であり得る。
【0143】
(ガラス転移温度Tg)
本発明の樹脂組成物を熱硬化して得られる硬化物は、耐熱性に優れる観点から、ガラス転移温度Tg(℃)が、150~240℃の範囲内にあることが好ましい。より好ましい範囲等は、樹脂組成物について先述したとおりである。
【0144】
(平均線熱膨張係数α)
本発明の樹脂組成物を熱硬化して得られる硬化物は、本発明の所期の効果を高める観点から、平均線熱膨張係数αが小さいことが好ましい。より好ましい範囲等は、樹脂組成物について先述したとおりである。
【0145】
(所定の温度T(K)における貯蔵弾性率E’)
本発明の樹脂組成物を熱硬化して得られる硬化物は、所定の温度T(K)における貯蔵弾性率E’が、通常、2.00×109Pa以下である。好ましい範囲等は、樹脂組成物について先述したとおりである。
【0146】
(架橋密度n)
本発明の樹脂組成物を熱硬化して得られる硬化物は、本発明の所期の効果を高める観点から、架橋密度nが0.15mol/cm3以下であることが好ましい。より好ましい範囲等は、樹脂組成物について先述したとおりである。
【0147】
(値Zf)
本発明の樹脂組成物を熱硬化して得られる硬化物は、前記平均線熱膨張係数αを、前記架橋密度nで除した値Zf(ppm・cm3/mol・K)が、145<Zf<1300を満たすことが好ましく、より好ましくは150≦Zf≦1000を満たす。そのような硬化物は、実施例の欄で実証されたとおり、反りが抑制されており、かつ、長期信頼性に優れている。より好ましい範囲等は、樹脂組成物について先述したとおりである。
【0148】
本発明の樹脂組成物の硬化物は、反りが抑制されており、かつ、長期信頼性に優れている。そのため、本発明の樹脂組成物の硬化物は、プリント配線板の絶縁層として好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層としてより好適に使用することができる。また、本発明の樹脂組成物の硬化物は、反りが抑制され、かつ、長期信頼性に優れる絶縁層をもたらすことから、プリント配線板が部品内蔵回路板である場合にも好適に使用することができる。さらに、本発明の樹脂組成物の硬化物は、反りが抑制され、かつ、長期信頼性に優れる硬化物で形成された絶縁層をもたらすことから、ソルダーレジスト層としてより好適に使用することができる。また、本発明の樹脂組成物の硬化物は、反りが抑制された硬化物で形成された絶縁層をもたらすことから、半導体チップパッケージ用の半導体チップを封止する封止層として好適に使用することができる。また、本発明の樹脂組成物の硬化物は、半導体チップパッケージの再配線層を形成するための再配線形成層(絶縁層)として好適に使用することができる。
【0149】
[樹脂シート]
本発明の樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた、本発明の樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含む。樹脂組成物層は、Bステージの状態にあってもよい。
【0150】
樹脂シートの樹脂組成物層の厚さは、通常150μm以下であり、好ましくは110μm以下であり、プリント配線板の薄型化の観点から、50μm以下又は40μm以下とし得る。さらに厚さを小さくしてもよい。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、1μm以上、1.5μm以上、2μm以上等とし得る。
【0151】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0152】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0153】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0154】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。
【0155】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0156】
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0157】
一実施形態において、樹脂シートは、さらに必要に応じて、その他の層を含んでいてもよい。斯かるその他の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、支持体に準じた保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
【0158】
樹脂シートは、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0159】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶剤等を挙げることができる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0160】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0161】
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0162】
本発明の樹脂シートは、反りが抑制され、かつ、長期信頼性に優れる硬化物で形成された絶縁層をもたらす。したがって本発明の樹脂シートは、プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂シート(プリント配線板の絶縁層形成用樹脂シート)として好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための樹脂シート(プリント配線板の層間絶縁層用樹脂シート)としてより好適に使用することができる。また、本発明の樹脂シートは、プリント配線板のソルダーレジスト層を形成するための樹脂シート(プリント配線板のソルダーレジスト層形成用樹脂シート)として好適に使用することができる。また、本発明の樹脂シートは、反りが抑制された硬化物で形成された絶縁層をもたらすことから、半導体チップパッケージ用の半導体チップを封止する封止層を形成するための樹脂組成物(半導体チップパッケージの封止層形成用樹脂シート)として好適に使用することができる。また、本発明の樹脂シートは、半導体チップパッケージの再配線形成層(絶縁層)を形成するための樹脂シート(半導体チップパッケージ用の再配線形成層形成用樹脂シート)として好適に使用することができる。
【0163】
<プリント配線板>
本発明のプリント配線板は、本発明の樹脂組成物の硬化物を含んで形成された絶縁層を含む。このプリント配線板は、例えば、下記の工程(1)及び工程(2)を含む製造方法によって、製造できる。
(1)基材上に、本発明の樹脂組成物を用いて、樹脂組成物を含む樹脂組成物層を形成する工程。
(2)樹脂組成物層を熱硬化して、絶縁層を形成する工程。
【0164】
工程(1)では、基材を用意する。基材としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板(ステンレスや冷間圧延鋼板(SPCC)など)、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板が挙げられる。また、基材は、当該基材の一部として表面に銅箔等の金属層を有していてもよい。例えば、両方の表面に剥離可能な第一金属層及び第二金属層を有する基材を用いてもよい。このような基材を用いる場合、通常、回路配線として機能できる配線層としての導体層が、第二金属層の第一金属層とは反対側の面に形成される。このような金属層を有する基材としては、例えば、三井金属鉱業社製のキャリア銅箔付極薄銅箔「Micro Thin」が挙げられる。
【0165】
また、基材の一方又は両方の表面には、導体層が形成されていてもよい。以下の説明では、基材と、この基材表面に形成された導体層とを含む部材を、適宜「配線層付基材」ということがある。導体層に含まれる導体材料としては、例えば、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む材料が挙げられる。導体材料としては、単金属を用いてもよく、合金を用いてもよい。合金としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性の観点から、単金属としてのクロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅;及び、合金としてのニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金;が好ましい。その中でも、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属;及び、ニッケル・クロム合金;がより好ましく、銅の単金属が特に好ましい。
【0166】
導体層は、例えば配線層として機能させるために、パターン加工されていてもよい。この際、導体層のライン(回路幅)/スペース(回路間の幅)比は、特に制限されないが、好ましくは20/20μm以下(即ちピッチが40μm以下)、より好ましくは10/10μm以下、さらに好ましくは5/5μm以下、よりさらに好ましくは1/1μm以下、特に好ましくは0.5/0.5μm以上である。ピッチは、導体層の全体にわたって同一である必要はない。導体層の最小ピッチは、例えば、40μm以下、36μm以下、又は30μm以下であってもよい。
【0167】
導体層の厚さは、プリント配線板のデザインによるが、好ましくは3μm~35μm、より好ましくは5μm~30μm、さらに好ましくは10μm~20μm、特に好ましくは15μm~20μmである。
【0168】
導体層は、例えば、基材上にドライフィルム(感光性レジストフィルム)を積層する工程、フォトマスクを用いてドライフィルムに対して所定の条件で露光及び現像を行ってパターンを形成してパターンドライフィルムを得る工程、現像したパターンドライフィルムをめっきマスクとして電解めっき法等のメッキ法によって導体層を形成する工程、及び、パターンドライフィルムを剥離する工程を含む方法によって、形成できる。ドライフィルムとしては、フォトレジスト組成物からなる感光性のドライフィルムを用いることができ、例えば、ノボラック樹脂、アクリル樹脂等の樹脂で形成されたドライフィルムを用いることができる。基材とドライフィルムとの積層条件は、後述する基材と樹脂シートとの積層の条件と同様でありうる。ドライフィルムの剥離は、例えば、水酸化ナトリウム溶液等のアルカリ性の剥離液を使用して実施することができる。
【0169】
基材を用意した後で、基材上に、樹脂組成物層を形成する。基材の表面に導体層が形成されている場合、樹脂組成物層の形成は、導体層が樹脂組成物層に埋め込まれるように行うことが好ましい。
【0170】
樹脂組成物層の形成は、例えば、樹脂シートと基材とを積層することによって行われる。この積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを基材に加熱圧着することにより、基材に樹脂組成物層を貼り合わせることで、行うことができる。樹脂シートを基材に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ということがある。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール等)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、基材の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0171】
基材と樹脂シートとの積層は、例えば、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲である。加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲である。加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力13hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0172】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。なお、積層と平滑化処理は、真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0173】
また、樹脂組成物層の形成は、例えば、圧縮成型法によって行うことができる。成型条件は、後述する半導体チップパッケージの封止層を形成する工程における樹脂組成物層の形成方法と同様な条件を採用してもよい。
【0174】
基材上に樹脂組成物層を形成した後、樹脂組成物層を熱硬化して、絶縁層を形成する。樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類によっても異なるが、硬化温度は通常120℃~240℃の範囲(好ましくは150℃~220℃の範囲、より好ましくは170℃~200℃の範囲)、硬化時間は5分間~120分間の範囲(好ましくは10分間~100分間、より好ましくは15分間~90分間)である。
【0175】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層に対して、硬化温度よりも低い温度で加熱する予備加熱処理を施してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、通常50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を、通常5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間)、予備加熱してもよい。
【0176】
以上のようにして、絶縁層を有するプリント配線板を製造できる。また、プリント配線板の製造方法は、更に、任意の工程を含んでいてもよい。
例えば、樹脂シートを用いてプリント配線板を製造した場合、プリント配線板の製造方法は、樹脂シートの支持体を剥離する工程を含んでいてもよい。支持体は、樹脂組成物層の熱硬化の前に剥離してもよく、樹脂組成物層の熱硬化の後に剥離してもよい。
【0177】
プリント配線板の製造方法は、例えば、絶縁層を形成した後で、その絶縁層の表面を研磨する工程を含んでいてもよい。研磨方法は特に限定されない。例えば、平面研削盤を用いて絶縁層の表面を研磨することができる。
【0178】
プリント配線板の製造方法は、例えば、導体層を層間接続する工程(3)、例えば、絶縁層に穴あけをする工程を含んでいてもよい。これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。ビアホールの形成方法としては、例えば、レーザー照射、エッチング、メカニカルドリリング等が挙げられる。ビアホールの寸法や形状はプリント配線板の出デザインに応じて適宜決定してよい。なお、工程(3)は、絶縁層の研磨又は研削によって層間接続を行ってもよい。
【0179】
ビアホールの形成後、ビアホール内のスミアを除去する工程を行うことが好ましい。この工程は、デスミア工程と呼ばれることがある。例えば、絶縁層上への導体層の形成をめっき工程により行う場合には、ビアホールに対して、湿式のデスミア処理を行ってもよい。また、絶縁層上への導体層の形成をスパッタ工程により行う場合には、プラズマ処理工程などのドライデスミア工程を行ってもよい。さらに、デスミア工程によって、絶縁層に粗化処理が施されてもよい。
【0180】
また、絶縁層上に導体層を形成する前に、絶縁層に対して、粗化処理を行ってもよい。この粗化処理によれば、通常、ビアホール内を含めた絶縁層の表面が粗化される。粗化処理としては、乾式及び湿式のいずれの粗化処理を行ってもよい。乾式の粗化処理の例としては、プラズマ処理等が挙げられる。また、湿式の粗化処理の例としては、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、及び、中和液による中和処理をこの順に行う方法が挙げられる。
【0181】
ビアホールを形成後、絶縁層上に導体層を形成してもよい。ビアホールが形成された位置に導体層を形成することで、新たに形成された導体層と基材表面の導体層とが導通して、層間接続が行われる。導体層の形成方法は、例えば、めっき法、スパッタ法、蒸着法などが挙げられ、中でもめっき法が好ましい。好適な実施形態では、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の適切な方法によって絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成する。また、樹脂シートにおける支持体が金属箔である場合、サブトラクティブ法により、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。形成される導体層の材料は、単金属でもよく、合金でもよい。また、この導体層は、単層構造を有していてもよく、異なる種類の材料の層を2層以上含む複層構造を有していてもよい。
【0182】
ここで、絶縁層上に導体層を形成する実施形態の例を、詳細に説明する。絶縁層の表面に、無電解めっきにより、めっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応して、めっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより電解めっき層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等の処理により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成できる。なお、導体層を形成する際、マスクパターンの形成に用いるドライフィルムは、上記ドライフィルムと同様である。
【0183】
プリント配線板の製造方法は、基材を除去する工程(4)を含んでいてもよい。基材を除去することにより、絶縁層と、この絶縁層に埋め込まれた導体層とを有するプリント配線板が得られる。この工程(4)は、例えば、剥離可能な金属層を有する基材を用いた場合に、行うことができる。
【0184】
<半導体チップパッケージ>
本発明の第一実施形態に係る半導体チップパッケージは、上述したプリント配線板と、このプリント配線板に搭載された半導体チップとを含む。この半導体チップパッケージは、プリント配線板に半導体チップを接合することにより、製造することができる。
【0185】
プリント配線板と半導体チップとの接合条件は、半導体チップの端子電極とプリント配線板の回路配線とが導体接続できる任意の条件を採用できる。例えば、半導体チップのフリップチップ実装において使用される条件を採用できる。また、例えば、半導体チップとプリント配線板との間に、絶縁性の接着剤を介して接合してもよい。
【0186】
接合方法の例としては、半導体チップをプリント配線板に圧着する方法が挙げられる。圧着条件としては、圧着温度は通常120℃~240℃の範囲(好ましくは130℃~200℃の範囲、より好ましくは140℃~180℃の範囲)、圧着時間は通常1秒間~60秒間の範囲(好ましくは5秒間~30秒間)である。
【0187】
また、接合方法の他の例としては、半導体チップをプリント配線板にリフローして接合する方法が挙げられる。リフロー条件は、120℃~300℃の範囲としてもよい。
【0188】
半導体チップをプリント配線板に接合した後、半導体チップをモールドアンダーフィル材で充填してもよい。このモールドアンダーフィル材として、上述した樹脂組成物を用いてもよく、また、上述した樹脂シートを用いてもよい。
【0189】
本発明の第二実施形態に係る半導体チップパッケージは、半導体チップと、この半導体チップを封止する前記樹脂組成物の硬化物とを含む。このような半導体チップパッケージでは、通常、樹脂組成物の硬化物は封止層として機能する。第二実施形態に係る半導体チップパッケージとしては、例えば、Fan-out型WLPが挙げられる。
【0190】
このような半導体チップパッケージの製造方法は、
(A)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(B)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(C)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(D)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(E)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程、
(F)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程、並びに、
(G)再配線層上にソルダーレジスト層を形成する工程、
を含みうる。また、前記の半導体チップパッケージの製造方法は、
(H)複数の半導体チップパッケージを、個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程
を含んでいてもよい。
【0191】
(工程(A))
工程(A)は、基材に仮固定フィルムを積層する工程である。基材と仮固定フィルムとの積層条件は、プリント配線板の製造方法における基材と樹脂シートとの積層条件と同様でありうる。
【0192】
基材としては、例えば、シリコンウェハ;ガラスウェハ;ガラス基板;銅、チタン、ステンレス、冷間圧延鋼板(SPCC)等の金属基板;FR-4基板等の、ガラス繊維にエポキシ樹脂等をしみこませ熱硬化処理した基板;BT樹脂等のビスマレイミドトリアジン樹脂からなる基板;などが挙げられる。
【0193】
仮固定フィルムは、半導体チップから剥離でき、且つ、半導体チップを仮固定することができる任意の材料を用いうる。市販品としては、日東電工社製「リヴァアルファ」等が挙げられる。
【0194】
(工程(B))
工程(B)は、半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程である。半導体チップの仮固定は、例えば、フリップチップボンダー、ダイボンダー等の装置を用いて行うことができる。半導体チップの配置のレイアウト及び配置数は、仮固定フィルムの形状、大きさ、目的とする半導体チップパッケージの生産数等に応じて適切に設定できる。例えば、複数行で、かつ複数列のマトリックス状に半導体チップを整列させて、仮固定してもよい。
【0195】
(工程(C))
工程(C)は、半導体チップ上に封止層を形成する工程である。封止層は、上述した樹脂組成物の硬化物によって形成する。封止層は、通常、半導体チップ上に樹脂組成物層を形成する工程と、この樹脂組成物層を熱硬化させて封止層を形成する工程とを含む方法で形成する。
【0196】
樹脂組成物層の形成は、圧縮成型法によって行うことが好ましい。圧縮成型法では、通常、半導体チップ及び樹脂組成物を型に配置し、その型内で樹脂組成物に圧力及び必要に応じて熱を加えて、半導体チップを覆う樹脂組成物層を形成する。
【0197】
圧縮成型法の具体的な操作は、例えば、下記のようにしうる。圧縮成型用の型として、上型及び下型を用意する。また、前記のように仮固定フィルム上に仮固定された半導体チップに、樹脂組成物を塗布する。樹脂組成物を塗布された半導体チップを、基材及び仮固定フィルムと一緒に、下型に取り付ける。その後、上型と下型とを型締めして、樹脂組成物に熱及び圧力を加えて、圧縮成型を行う。
【0198】
また、圧縮成型法の具体的な操作は、例えば、下記のようにしてもよい。圧縮成型用の型として、上型及び下型を用意する。下型に、樹脂組成物を載せる。また、上型に、半導体チップを、基材及び仮固定フィルムと一緒に取り付ける。その後、下型に載った樹脂組成物が上型に取り付けられた半導体チップに接するように上型と下型とを型締めし、熱及び圧力を加えて、圧縮成型を行う。
【0199】
成型条件は、樹脂組成物の組成により異なり、良好な封止が達成されるように適切な条件を採用できる。例えば、成型時の型の温度は、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、特に好ましくは90℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下、特に好ましくは150℃以下である。また、成型時に加える圧力は、好ましくは1MPa以上、より好ましくは3MPa以上、特に好ましくは5MPa以上であり、好ましくは50MPa以下、より好ましくは30MPa以下、特に好ましくは20MPa以下である。キュアタイムは、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、特に好ましくは3分以上であり、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下、特に好ましくは20分以下である。通常、樹脂組成物層の形成後、型は取り外される。型の取り外しは、樹脂組成物層の熱硬化前に行ってもよく、熱硬化後に行ってもよい。
【0200】
樹脂組成物層の形成は、樹脂シートと半導体チップとを積層することによって行ってもよい。例えば、樹脂シートの樹脂組成物層と半導体チップとを加熱圧着することにより、半導体チップ上に樹脂組成物層を形成することができる。樹脂シートと半導体チップとの積層は、通常、基材の代わりに半導体チップを用いて、プリント配線板の製造方法における樹脂シートと基材との積層と同様にして行うことができる。
【0201】
半導体チップ上に樹脂組成物層を形成した後で、この樹脂組成物層を熱硬化させて、半導体チップを覆う封止層を得る。これにより、樹脂組成物の硬化物による半導体チップの封止が行われる。樹脂組成物層の熱硬化条件は、プリント配線板の製造方法における樹脂組成物層の熱硬化条件と同じ条件を採用してもよい。さらに、樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層に対して、硬化温度よりも低い温度で加熱する予備加熱処理を施してもよい。この予備加熱処理の処理条件は、プリント配線板の製造方法における予備加熱処理と同じ条件を採用してもよい。
【0202】
(工程(D))
工程(D)は、基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程である。剥離方法は、仮固定フィルムの材質に応じた適切な方法を採用することが望ましい。剥離方法としては、例えば、仮固定フィルムを加熱、発泡又は膨張させて剥離する方法が挙げられる。また、剥離方法としては、例えば、基材を通して仮固定フィルムに紫外線を照射して、仮固定フィルムの粘着力を低下させて剥離する方法が挙げられる。
【0203】
仮固定フィルムを加熱、発泡又は膨張させて剥離する方法において、加熱条件は、通常、100℃~250℃で1秒間~90秒間又は5分間~15分間である。また、紫外線を照射して仮固定フィルムの粘着力を低下させて剥離する方法において、紫外線の照射量は、通常、10mJ/cm2~1000mJ/cm2である。
【0204】
(工程(E))
工程(E)は、半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程である。
【0205】
再配線形成層の材料は、絶縁性を有する任意の材料を用いることができる。中でも、半導体チップパッケージの製造のしやすさの観点から、感光性樹脂及び熱硬化性樹脂が好ましい。また、この熱硬化性樹脂として、本発明の樹脂組成物を用いてもよい。
【0206】
再配線形成層を形成した後、半導体チップと再配線層とを層間接続するために、再配線形成層にビアホールを形成してもよい。
【0207】
再配線形成層の材料が感光性樹脂である場合のビアホールの形成方法では、通常、再配線形成層の表面に、マスクパターンを通して活性エネルギー線を照射して、照射部の再配線形成層を光硬化させる。活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、X線等が挙げられ、特に紫外線が好ましい。紫外線の照射量及び照射時間は、感光性樹脂に応じて適切に設定できる。露光方法としては、例えば、マスクパターンを再配線形成層に密着させて露光する接触露光法、マスクパターンを再配線形成層に密着させずに平行光線を使用して露光する非接触露光法、などが挙げられる。
【0208】
再配線形成層を光硬化させた後で、再配線形成層を現像し、未露光部を除去して、ビアホールを形成する。現像は、ウェット現像、ドライ現像のいずれを行ってもよい。現像の方式としては、例えば、ディップ方式、パドル方式、スプレー方式、ブラッシング方式、スクラッピング方式等が挙げられ、解像性の観点から、パドル方式が好適である。
【0209】
再配線形成層の材料が熱硬化性樹脂である場合のビアホールの形成方法としては、例えば、レーザー照射、エッチング、メカニカルドリリング等が挙げられる。中でも、レーザー照射が好ましい。レーザー照射は、炭酸ガスレーザー、UV-YAGレーザー、エキシマレーザー等の光源を用いる適切なレーザー加工機を用いて行うことができる。
【0210】
ビアホールの形状は、特に限定されないが、一般的には円形(略円形)とされる。ビアホールのトップ径は、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。ここで、ビアホールのトップ径とは、再配線形成層の表面でのビアホールの開口の直径をいう。
【0211】
(工程(F))
工程(F)は、再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程である。再配線形成層上に再配線層を形成する方法は、プリント配線板の製造方法における絶縁層上への導体層の形成方法と同様でありうる。また、工程(E)及び工程(F)を繰り返し行い、再配線層及び再配線形成層を交互に積み上げて(ビルドアップ)もよい。
【0212】
(工程(G))
工程(G)は、再配線層上にソルダーレジスト層を形成する工程である。ソルダーレジスト層の材料は、絶縁性を有する任意の材料を用いることができる。中でも、半導体チップパッケージの製造のしやすさの観点から、感光性樹脂及び熱硬化性樹脂が好ましい。また、熱硬化性樹脂として、本発明の樹脂組成物を用いてもよい。
【0213】
また、工程(G)では、必要に応じて、バンプを形成するバンピング加工を行ってもよい。バンピング加工は、半田ボール、半田めっきなどの方法で行うことができる。また、バンピング加工におけるビアホールの形成は、工程(E)と同様に行うことができる。
【0214】
(工程(H))
半導体チップパッケージの製造方法は、工程(A)~(G)以外に、工程(H)を含んでいてもよい。工程(H)は、複数の半導体チップパッケージを個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程である。半導体チップパッケージを個々の半導体チップパッケージにダイシングする方法は特に限定されない。
【0215】
<半導体装置>
半導体装置は、半導体チップパッケージを備える。半導体装置としては、例えば、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、スマートフォン、タブレット型デバイス、ウェラブルデバイス、デジタルカメラ、医療機器、及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例】
【0216】
以下、本発明について、実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものでは無い。以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示の無い限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。また、以下に説明する操作は、別途明示の無い限り、常温常圧の環境で行った。
【0217】
<熱可塑性樹脂溶液Aの調製>
反応容器に、2官能性ヒドロキシ基末端ポリブタジエン(日本曹達社製「G-3000」、数平均分子量:3000、ヒドロキシ基当量:1800g/eq.)69gと、芳香族炭化水素系混合溶剤(出光石油化学社製「イプゾール150」)40gと、ジブチル錫ラウレート0.005gとを入れ、混合して均一に溶解させた。これにより溶液を得た。溶液を60℃に昇温し、更に撹拌しながらイソホロンジイソシアネート(エボニックデグサジャパン社製「IPDI」、イソシアネート基当量:113g/eq.)8gを添加し、約3時間反応を行った。これにより、第1の反応溶液を得た。
【0218】
次いで、第1の反応溶液に、クレゾールノボラック樹脂(DIC社製「KA-1160」、水酸基当量:117g/eq.)23gと、エチルジグリコールアセテート(ダイセル社製)60gとを添加し、攪拌しながら150℃まで昇温し、約10時間反応を行った。これにより、第2の反応溶液を得た。FT-IRによって2250cm-1のNCOピークの消失の確認を行った。NCOピークの消失の確認をもって反応の終点とみなし、第2の反応溶液を室温まで降温した。そして、第2の反応溶液を、100メッシュの濾布で濾過した。これにより、濾液として、反応性官能基を有する熱可塑性樹脂A(フェノール性水酸基含有ポリブタジエン樹脂)を不揮発成分として含む溶液(不揮発成分50質量%;以下、「熱可塑性樹脂溶液A」とする)を得た。熱可塑性樹脂Aの数平均分子量は5900、ガラス転移温度は-7℃であった。
【0219】
<熱可塑性樹脂溶液Bの調製>
撹拌装置、温度計及びコンデンサーを取り付けられたフラスコに、溶剤として、エチルジグリコールアセテート368.41g及びエクソンモービル社製「ソルベッソ150(登録商標)」(芳香族系溶剤)368.41gを仕込んだ。さらに、前記のフラスコに、ジフェニルメタンジイソシアネート100.1g(0.4モル)と、ポリカーボネートジオール(クラレ社製「C-2015N」、数平均分子量:約2000、水酸基当量:1000g/eq.、不揮発成分:100質量%)400g(0.2モル)とを仕込んで、70℃で4時間反応を行った。これにより、第1の反応溶液を得た。
【0220】
ついで、前記のフラスコに、更にノニルフェノールノボラック樹脂(水酸基当量:229.4g/eq、平均4.27官能、平均計算分子量:979.5g/モル)195.9g(0.2モル)と、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート41.0g(0.1モル)とを仕込んで、2時間かけて150℃に昇温し、12時間反応させた。これにより、第2の反応溶液を得た。FT-IRによって2250cm-1のNCOピークの消失の確認を行った。NCOピークの消失の確認をもって反応の終点とみなし、第2の反応溶液を室温まで降温した。そして、第2の反応溶液を、100メッシュの濾布で濾過した。これにより、濾液として、反応性官能基を有する熱可塑性樹脂B(フェノール性水酸基含有ポリカーボネート樹脂)を不揮発成分として含む溶液(不揮発成分50質量%;以下、「熱可塑性樹脂溶液B」とする)を得た。熱可塑性樹脂Bの数平均分子量は6100、ガラス転移温度は5℃であった。
【0221】
[実施例1]
<樹脂ワニスAの調製>
(A)成分としてのビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER828EL」、エポキシ当量:184~194g/eq.)3部、(A)成分としてのビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量:276g/eq.)1部、(A)成分としてのグリシジルアミン型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「630」、エポキシ当量:95g/eq.)2部、(B-2)成分としてのクレゾールノボラック樹脂(DIC社製「KA-1160」、フェノール性水酸基当量:117g/eq.)2部、(B-2)成分としての活性エステル樹脂(DIC社製、「HPC-8000-65T」、活性基当量:約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)1.54部、(B-1)成分としてのマレイミド化合物(デザイナーモレキュールズ製「BMI-689」)4部、(C)成分としての無機充填材A70部、(D)成分としての熱可塑性樹脂溶液A(不揮発成分:50%)20部、(E)成分としての硬化促進剤(四国化成工業社製、「1B2PZ」)0.05部、及び溶媒としてのメチルエチルケトン15部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した。このようにして、樹脂ワニスを調製した。以下、このように調製される樹脂ワニスを総称して「樹脂ワニスA」ともいう。
【0222】
ここで、無機充填材Aは、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」)であり、その平均粒径を測定したところ、0.5μmであり、その比表面積を測定したところ、5.8m2/gであった。
【0223】
<樹脂シートBの作製>
支持体として、一方の主面をアルキド樹脂系離型剤(リンテック社製「AL-5」)で離型処理したPETフィルム(東レ社製「ルミラーR80」;厚み:38μm、軟化点:130℃、以下「離型PET」ということがある。)を用意した。
【0224】
樹脂ワニスAを、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが100μmとなるよう、離型PETの離型処理面上にダイコーターにて均一に塗布した。その後、樹脂ワニスAを80℃~120℃(平均100℃)で6分間乾燥させた。これにより、支持体と該支持体上に設けられた樹脂組成物を含む樹脂組成物層を含む樹脂シートを得た。以下、このように作製される樹脂シートを総称して「樹脂シートB」ともいう。
【0225】
<評価用硬化物Cの作製>
樹脂シートBの一部を切り出し、180℃にて90分間加熱して、樹脂組成物層を熱硬化させた。その後、支持体を剥離し、評価用硬化物を得た。以下、このように作製される評価用硬化物を総称して「評価用硬化物C」ともいう。
【0226】
<樹脂組成物の硬化物の各種パラメーターの取得及び評価>
樹脂シートBの樹脂組成物層又は評価用硬化物Cを用いて、樹脂組成物の硬化物につき、各種パラメーターを取得するとともに、反り及び長期信頼性の観点から、後述する評価方法に従って評価した。さらに、評価用硬化物Cを用いて、耐薬品性の観点から、後述する評価方法に従って評価した。
【0227】
[実施例2]
実施例1において、(A)成分としての無機充填材A70部を、無機充填材B115部に変更した。ここで、無機充填材Bとしては、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)で処理された球状アルミナであり、最大カット径が5μmのものを用いた。測定したところ、無機充填材Bの平均粒径は1.5μmであり、比表面積は2.0m2/gであった。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を含む樹脂ワニスAを調製した。そして、樹脂ワニスAを用いて、実施例1と同様にして、樹脂シートB及び評価用硬化物Cを得て、樹脂シートBの樹脂組成物層及び評価用硬化物Cを用いて実施例1と同様にして樹脂組成物の硬化物を評価に供した。
【0228】
[実施例3]
実施例1において、(A)成分としてのビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER828EL」)3部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」)1部及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「630」)2部を、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER828EL」、エポキシ当量:184~194g/eq.)2部、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP4032」、エポキシ当量:135~165g/eq.)2部及びビフェニル型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX4000」、エポキシ当量:約185g/eq.)2部に変更した。
さらに、実施例1において、(B-2)成分としてのクレゾールノボラック樹脂(DIC社製「KA-1160」)2部、(B-2)成分としての活性エステル樹脂(DIC社製、「HPC-8000-65T」)1.54部及び(B-1)成分としてのマレイミド化合物(デザイナーモレキュールズ製「BMI-689」)4部を、(B-2)成分としてのクレゾールノボラック樹脂(DIC社製「KA-1160」)1部及び(B-1)成分としてのマレイミド化合物(デザイナーモレキュールズ製「BMI-689」)4部に変更した。
さらに、実施例1において、(D)成分としての熱可塑性樹脂溶液A(不揮発成分:50%)20部を、(D)成分としての熱可塑性樹脂溶液A(不揮発成分:50%)12部及び(D)成分としての熱可塑性樹脂溶液B(不揮発成分:50%)12部に変更した。また、実施例1において、(E)成分としての硬化促進剤(四国化成工業社製、「1B2PZ」)0.05部を、(E)成分としての硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP))0.05部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を含む樹脂ワニスAを調製した。そして、樹脂ワニスAを用いて、実施例1と同様にして、樹脂シートB及び評価用硬化物Cを得て、樹脂シートBの樹脂組成物層及び評価用硬化物Cを用いて実施例1と同様にして樹脂組成物の硬化物を評価に供した。
【0229】
[比較例1]
実施例1において、(A)成分としてのビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER828EL」)3部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」)1部及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「630」)2部を、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER828EL」、エポキシ当量:184~194g/eq.)1部、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP4032」、エポキシ当量:135~165g/eq.)6部及びビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量:276g/eq.)1部に変更した。
さらに、実施例1において、(B-2)成分としてのクレゾールノボラック樹脂(DIC社製「KA-1160」)2部、(B-2)成分としての活性エステル樹脂(DIC社製、「HPC-8000-65T」)1.54部及び(B-1)成分としてのマレイミド化合物(デザイナーモレキュールズ製「BMI-689」)4部を、(B-2)成分としての活性エステル樹脂(DIC社製、「HPC-8000-65T」)4.62部に変更した。(B-1)成分は用いなかった。
さらに、実施例1において、(C)成分としての無機充填材A70部を、無機充填材A60部に変更した。さらに、実施例1において、(D)成分としての熱可塑性樹脂溶液A(不揮発成分:50%)20部を、(D)成分としての熱可塑性樹脂溶液B(不揮発成分:50%)16部に変更した。また、実施例1において、(E)成分としての硬化促進剤(四国化成工業社製、「1B2PZ」)0.05部を、硬化促進剤(四国化成工業社製、「1B2PZ」)0.10部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を含む樹脂ワニスAを調製した。そして、樹脂ワニスAを用いて、実施例1と同様にして、樹脂シートB及び評価用硬化物Cを得て、樹脂シートBの樹脂組成物層及び評価用硬化物Cを用いて実施例1と同様にして樹脂組成物の硬化物を評価に供した。
【0230】
[比較例2]
実施例1において、(A)成分としてのビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER828EL」)3部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」)1部及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「630」)2部を、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER828EL」、エポキシ当量:184~194g/eq.)1部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量:276g/eq.)4部、ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX4000」、エポキシ当量:約185g/eq.)2部に変更した。
さらに、実施例1において、(B-2)成分としてのクレゾールノボラック樹脂(DIC社製「KA-1160」、フェノール性水酸基当量:117g/eq.)2部、(B-2)成分としての活性エステル樹脂(DIC社製、「HPC-8000-65T」)1.54部及び(B-1)成分としてのマレイミド化合物(デザイナーモレキュールズ製「BMI-689」)4部を、(B-2)成分としてのクレゾールノボラック樹脂(DIC社製「KA-1160」、フェノール性水酸基当量:117g/eq.)2部及び(B-2)成分としての活性エステル樹脂(DIC社製、「HPC-8000-65T」)6.16部に変更した。(B-1)成分は用いなかった。
さらに、実施例1において、(C)成分としての無機充填材A70部を、無機充填材A50部に変更した。さらに、実施例1において、(D)成分としての熱可塑性樹脂溶液A(不揮発成分:50%)20部に代えて、エポキシ基含有フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7200B35」、エポキシ当量:3000~16000g/eq.、不揮発成分:35%)5.71部を用いた。実施例1において、(E)成分としての硬化促進剤(四国化成工業社製、「1B2PZ」)0.05部を、硬化促進剤(四国化成工業社製、「1B2PZ」)0.10部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を含む樹脂ワニスAを調製した。そして、樹脂ワニスAを用いて、実施例1と同様にして、樹脂シートB及び評価用硬化物Cを得て、樹脂シートBの樹脂組成物層及び評価用硬化物Cを用いて実施例1と同様にして樹脂組成物の硬化物を評価に供した。
【0231】
[比較例3]
実施例1において、(A)成分としてのビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER828EL」)3部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」)1部及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER630」)2部を、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER828EL」、エポキシ当量:184~194g/eq.)2部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量:276g/eq.)1部及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「630」、エポキシ当量:95g/eq.)1部に変更した。
さらに、実施例1において、(B-2)成分としてのクレゾールノボラック樹脂(DIC社製「KA-1160」)2部、(B-2)成分としての活性エステル樹脂(DIC社製、「HPC-8000-65T」)1.54部及び(B-1)成分としてのマレイミド化合物(デザイナーモレキュールズ製「BMI-689」)4部を、(B-2)成分としてのクレゾールノボラック樹脂(DIC社製「KA-1160」、フェノール性水酸基当量:117g/eq.)2部及び(B-2)成分としての活性エステル樹脂(DIC社製、「HPC-8000-65T」)1.54部に変更した。(B-1)成分は用いなかった。
さらに、実施例1において、(C)成分としての無機充填材A70部を、無機充填材A40部に変更した。さらに、実施例1において、(D)成分としての熱可塑性樹脂溶液A(不揮発成分:50%)20部を、熱可塑性樹脂溶液A(不揮発成分:50%)32部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を含む樹脂ワニスAを調製した。そして、樹脂ワニスAを用いて、実施例1と同様にして、樹脂シートB及び評価用硬化物Cを得て、樹脂シートBの樹脂組成物層及び評価用硬化物Cを用いて実施例1と同様にして樹脂組成物の硬化物を評価に供した。
【0232】
[評価方法]
上述した実施例及び比較例で得た樹脂シートBの樹脂組成物層又は評価用硬化物Cを用いて、樹脂組成物の硬化物につき、各種パラメーターを取得するとともに、耐熱性、反り及び長期信頼性の観点から、下記の方法によって評価した。さらに、評価用硬化物Cを用いて、耐薬品性の観点から、下記の方法によって評価した。なお、表1には、取得したパラメーターのうち、評価に用いたパラメーターが記載されている。また、評価結果は表1に示されている。
【0233】
<各種パラメーターの取得>
(平均線熱膨張係数(CTE)αの測定)
評価用硬化物Cを、幅約5mm、長さ約15mmに切断して、試験片Dを得た。試験片Dにつき、熱機械分析装置(リガク社製「Thermo Plus TMA8310」)を使用して、引張加重法にて熱機械分析を行った。詳細には、試験片Dを前記熱機械分析装置に装着した後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて連続して2回熱膨張率を測定した。そして2回目の測定結果に基づき、25℃(298K)から150℃(423K)までの範囲における平均線熱膨張係数α(ppm/K)を算出した。
【0234】
(動的弾性率の測定;ガラス転移温度Tg、貯蔵弾性率E’及び架橋密度nの取得)
評価用硬化物Cを幅5mm、長さ15mmに切断して、試験片Eを得た。この試験片Eについて、粘弾性測定装置(日立ハイテクサイエンス社製「DMA7100」)を用いて、引張加重法にて熱機械分析を行った。具体的には、試験片Eを前記熱機械分析装置に装着した後、荷重200mN、昇温速度5℃/分の測定条件にて、貯蔵弾性率及び損失弾性率を測定した。
【0235】
まず、測定結果として得られるtanδ(貯蔵弾性率及び損失弾性率の比の温度依存曲線)のピークトップからガラス転移温度Tg(℃)を取得した。
【0236】
続いて、所定の温度T(K)を決定した。具体的には、所定の温度T(K)を、取得済みのガラス転移温度Tg(℃)を単位Kに換算すべく273Kを加算しかつ80Kを加算した温度とすることによって決定した。なお、所定の温度T(K)近傍の温度領域では、貯蔵弾性率の値は大きく変動しない傾向にあることから、決定した所定の温度T(K)に関し、-5℃~+5℃の範囲内において誤差が生じ得ることは許容される。そして、決定した所定の温度T(K)における貯蔵弾性率の測定値E’(単位:GPa、すなわち109Pa)を取得した。
【0237】
次に、取得した貯蔵弾性率のE’(Pa)を以下の式に代入することにより、架橋密度n(mol/cm3)を算出した。ここで、架橋密度nは、単位体積あたりに存在する架橋分子の数を示す指標として考えることが可能である。
n=E’/3RT
(上記式中、Tは、所定の温度T(K)であり、E’は、所定の温度T(K)における貯蔵弾性率の測定値(Pa)であり、Rは、気体定数としての8310000(Pa・cm3/mol・K)である。なお、E’/3として、所定の温度T(K)におけるせん断弾性率G’の測定値(109Pa)を用いてもよい。)
【0238】
(値Zfの取得)
値Zfを、硬化物の平均線熱膨張係数α(ppm/K)を、当該硬化物の架橋密度n(mol/cm3)で除した値として定義し、この値Zf(ppm・cm3/mol・K)を樹脂組成物の硬化物のパラメーターとして取得した。取得した値Zfを後述する各評価の評価結果と照らし合わせることにより、本発明の課題を解決し得る範囲を検討した。
【0239】
<長期信頼性の評価>
長期信頼性の評価は、樹脂組成物の硬化物に対してHTS試験を施し、HTS試験の前後に破断点強度を測定し、破断点強度の変化度(%)を算出することにより行った。
【0240】
(HTS試験)
評価用硬化物CをHTS試験(High Thermal Storage test)に供した。HTS試験では、150℃で1000時間の条件で評価用硬化物Cを保持した。これにより、HTS試験後の評価用硬化物C’を得た。
【0241】
(HTS試験前後の破断点強度の測定)
評価用硬化物Cを、平面視ダンベル形状の1号形に切り出すことにより5個の試験片Fを得た。同様に、評価用硬化物C’を、平面視ダンベル形状の1号形に切り出すことにより5個の試験片F’を得た。試験片F、F’の各々につき、オリエンテック社製引張試験機「RTC-1250A」を用いて、23℃、試験速度5mm/minの測定条件で引張試験を行い、応力-ひずみ曲線から引張破断点強度(以下、単に「破断点強度」ともいう)を求めた。測定は、JIS K7127:1999に準拠して実施した。5個の試験片Fの破断点強度の平均値をHTS試験前の引張破断点強度σ0とした。5個の試験片F’の破断点強度の平均値をHTS試験後の引張破断点強度σ1とした。
(変化度(%)の算出)
続いて、HTS試験前後における引張破断点強度の変化度(%)を下記式に基づき算出した。
変化度(%)={(σ1-σ0)/σ0}×100
(評価)
上述したように得られた変化度(%)を以下の基準にしたがって評価した。
「○」:変化度(%)が-10%~+10%の範囲内にある場合、変化度が小さく、長期信頼性に優れている
「×」:変化度(%)が-10%~+10%の範囲内になく、変化度が大きく、長期信頼性に劣る
また、長期信頼性に劣ると評価された比較例3の試験片F’を観察すると、酸化による劣化が認められた。
【0242】
<反りの評価>
(反り測定用の絶縁層付きシリコンウエハの作製)
樹脂シートBを、12インチ円盤状のシリコンウエハ(厚さ775μm)の片面全体に、樹脂組成物層が接合するように、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いてラミネートし、その後、支持体を剥離した。シリコンウエハにラミネートした樹脂組成物層の上に、さらに、同様の手順による樹脂シートのラミネート及び支持体の剥離を2回繰り返した。これにより、シリコンウエハの上に、計3層の樹脂組成物層からなる厚さ300μmの樹脂組成物層の積層体を形成した。得られた樹脂組成物層の積層体付きシリコンウエハをオーブン内で180℃および90分の条件で熱処理した。これにより、硬化が進行した樹脂組成物層付きシリコンウエハ(即ち、絶縁層付きシリコンウエハ)が得られた。
(反りの測定)
得られた絶縁層付きシリコンウエハの一端を平坦な台に押さえつけた状態で、絶縁層付きシリコンウエハの端部の下面と台の上面の間の鉛直方向における距離を反り量として測定し、最大反り量(μm)を示す端部を特定した。
(評価)
上述したように特定された最大反り量(μm)を以下の基準にしたがって評価した。
「○」:最大反り量が0μm以上2000μm以下の範囲内にある場合、反りが小さく、反りが十分に抑制されている
「×」:最大反り量が2000μm超である場合、反りが大きく、反りが十分に抑制されていない
【0243】
<耐薬品性の評価>
(薬品浸漬試験)
評価用硬化物Cを1辺5cmの正方形に切断することにより複数の試験片Gを得た。試験片Gを、70℃の強アルカリ水溶液中に1時間浸漬した。強アルカリ水溶液としては、1質量%の水酸化カリウム水溶液を用いた。その後に、試験片Gを取り出して、蒸留水で洗浄し、130℃のオーブン内で1時間乾燥させた。これにより、薬品浸漬試験後の試験片G’を得た。
【0244】
(薬品浸漬試験前後の質量の測定及び質量減少率の算出)
試験片Gの質量を測定し、これを薬品浸漬試験前の質量M0とした。また、試験片G’の質量を測定し、これを薬品浸漬試験前の質量M1とした。
続いて、薬品浸漬試験前後における質量減少率(%)を下記式に基づき算出した。
質量減少率(%)={(M0-M1)/M0}×100
(評価)
上述したように得られた質量減少率(%)を以下の基準にしたがって評価した。
「○」:質量減少率(%)が1質量%未満である場合、薬品に対して溶解した部分が十分に少なく、耐薬品性に優れている
「×」:質量減少率(%)が1質量%以上である場合、薬品に対して溶解した部分が多く、耐薬品性に劣る
【0245】
[結果]
上述した実施例及び比較例の結果を、下記の表1に示す。下記の表1において、各成分の量は、不揮発成分換算量を表す。また、表1に示す「無機充填材含有割合」は、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合における(C)成分の含有量を示している。また、αは、平均線熱膨張係数を表し、Tは、所定の温度を表し、E’は、所定の温度Tにおける貯蔵弾性率を表し、nは、架橋密度を表し、Zfは、平均線熱膨張係数αを所定の温度Tにおける貯蔵弾性率E’で除した値を表し、Tgは、ガラス転移温度を表す。
【0246】
【0247】
<検討>
表1から分かるように、実施例と比較例の対比から、実施例においては、(A)成分及び(B)成分を含む樹脂組成物において、硬化物の平均線熱膨張係数α(ppm/K)を、当該硬化物の架橋密度n(mol/cm3)で除した値Zf(ppm・cm3/mol・K)が、下記式:
145<Zf<1300
を満たすことにより、反りが抑制され、かつ、長期信頼性に優れた硬化物を得ることができる樹脂組成物を提供できる傾向にあることが分かった。
【0248】
さらに、値Zfが上記式を満たすことにより、耐薬品性に優れた硬化物を得ることができる樹脂組成物を提供できることも分かった。また、実施例に係る樹脂組成物の硬化物、当該樹脂組成物の硬化物、樹脂シート、プリント配線板、半導体チップパッケージ及び半導体装置を提供することも可能となることが分かった。
【0249】
なお、実施例1~3において、(C)成分~(E)成分を含有しない場合であっても、程度に差はあるものの、上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。また、実施例1~3において、耐薬品性の評価に用いる強アルカリ水溶液を、水酸化カリウム水溶液に代えて、水酸化テトラメチルアンモニウム溶液、水酸化ナトリウム水溶液及び炭酸ナトリウム水溶液のいずれを用いても、上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。