(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】車両用導光体及び車両用灯具ユニット
(51)【国際特許分類】
F21S 41/24 20180101AFI20240123BHJP
F21S 41/147 20180101ALI20240123BHJP
F21W 102/155 20180101ALN20240123BHJP
F21W 102/20 20180101ALN20240123BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240123BHJP
F21Y 115/15 20160101ALN20240123BHJP
【FI】
F21S41/24
F21S41/147
F21W102:155
F21W102:20
F21Y115:10
F21Y115:15
(21)【出願番号】P 2020063691
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野間 慶
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-109871(JP,A)
【文献】特開2017-212068(JP,A)
【文献】特開2012-129002(JP,A)
【文献】特開2018-060808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/24
F21S 41/147
F21W 102/155
F21W 102/20
F21Y 115/10
F21Y 115/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を入射する入射面と、
前記入射面から入射した前記光を内面反射して略平行光とする第1反射面と、
回転放物面を基調とする形状を有し、前記第1反射面からの前記光を車両搭載状態における前後方向の前方に内面反射する第2反射面と、
前記第2反射面に対して前記前後方向の前方であって車両搭載状態における左右方向の少なくとも一方側の端面の一部に設けられる第3反射面と、
前記第2反射面で反射された前記光の一部を遮光する遮光部と、
前記第2反射面で内面反射されて前記遮光部を通過した前記光を出射して車両前方に前照灯パターンを照射する出射面と
を備え、
前記第2反射面は、前記第1反射面からの前記光の一部を前記第3反射面に向けて反射する拡散パターン形成面を有し、
前記第3反射面は、
前記前後方向の前側が前記左右方向の内側に傾くように形成され、前記出射面に向けて前記拡散パターン形成面からの前記光を内面反射する
車両用導光体。
【請求項2】
光源からの光を入射する入射面と、
前記入射面から入射した前記光を内面反射して略平行光とする第1反射面と、
回転放物面を基調とする形状を有し、前記第1反射面からの前記光を車両搭載状態における前後方向の前方に内面反射する第2反射面と、
前記第2反射面に対して前記前後方向の前方であって車両搭載状態における左右方向の少なくとも一方側の端面の一部に設けられる第3反射面と、
前記第2反射面で反射された前記光の一部を遮光する遮光部と、
前記第2反射面で内面反射されて前記遮光部を通過した前記光を出射して車両前方に前照灯パターンを照射する出射面と
を備え、
前記第2反射面は、前記第1反射面からの前記光の一部を前記第3反射面に向けて反射する拡散パターン形成面を有し、
前記第3反射面は、
前記第2反射面の焦点よりも前記出射面側に配置され、前記出射面に向けて前記拡散パターン形成面からの前記光を内面反射する
車両用導光体。
【請求項3】
光源からの光を入射する入射面と、
前記入射面から入射した前記光を内面反射して略平行光とする第1反射面と、
回転放物面を基調とする形状を有し、前記第1反射面からの前記光を車両搭載状態における前後方向の前方に内面反射する第2反射面と、
前記第2反射面に対して前記前後方向の前方であって車両搭載状態における左右方向の少なくとも一方側の端面の一部に設けられる第3反射面と、
前記第2反射面で反射された前記光の一部を遮光する遮光部と、
前記第2反射面で内面反射されて前記遮光部を通過した前記光を出射して車両前方に前照灯パターンを照射する出射面と
を備え、
前記第2反射面は、前記第1反射面からの前記光の一部を前記第3反射面に向けて反射する拡散パターン形成面を有し、
前記第3反射面は、
前記光を拡散する光拡散部を有し、前記出射面に向けて前記拡散パターン形成面からの前記光を内面反射する
車両用導光体。
【請求項4】
光源からの光を入射する入射面と、
前記入射面から入射した前記光を内面反射して略平行光とする第1反射面と、
回転放物面を基調とする形状を有し、前記第1反射面からの前記光を車両搭載状態における前後方向の前方に内面反射する第2反射面と、
前記第2反射面に対して前記前後方向の前方であって車両搭載状態における左右方向の少なくとも一方側の端面の一部に設けられる第3反射面と、
前記第2反射面で反射された前記光の一部を遮光する遮光部と、
前記第2反射面で内面反射されて前記遮光部を通過した前記光を出射して車両前方に前照灯パターンを照射する出射面と
を備え、
前記第2反射面は、前記第1反射面からの前記光の一部を前記第3反射面に向けて反射する拡散パターン形成面
と、前記第1反射面からの前記光の一部が前記回転放物面の焦点及び前記焦点の近傍を通過するように当該光を内面反射する集光パターン形成面とを有し、
前記第3反射面は、前記出射面に向けて前記拡散パターン形成面からの前記光を内面反射
し、
前記集光パターン形成面は、前記左右方向の中央に配置され、
前記拡散パターン形成面は、前記集光パターン形成面に対して前記左右方向の外側に配置される
車両用導光体。
【請求項5】
前記入射面は、複数設けられ、
前記左右方向の中央側に配置される前記入射面は、前記集光パターン形成面に対応して設けられ、
前記左右方向の外側に配置される前記入射面は、前記拡散パターン形成面に対応して設けられる
請求項
4に記載の車両用導光体。
【請求項6】
前記第3反射面は、平面状である
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の車両用導光体。
【請求項7】
光源を備え、
前記光源からの光を導光して出射する、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の車両用導光体を複数備える
車両用灯具ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用導光体及び車両用灯具ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばリフレクタ、シェード、投影レンズ等のそれぞれに対応する機能を1つの車両用導光体に集約させた構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。つまり、このような車両用導光体は、光源からの光を入射する入射部と、入射した光を内面反射する内面反射部(リフレクタに対応)と、内面反射された光の一部を遮光する遮光部(シェードに対応)と、内面反射されて遮光部を通過する光を出射して車両前方に前照灯パターンを照射する出射部(投影レンズに対応)とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の車両用導光体は、入射部で制御された光が焦点に集光する構成である。例えばロービームのような細やかな配光制御が必要な場合、入射部だけで光を制御する構成では、細やかな配光制御ができない場合がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、細やかな配光制御が可能な車両用導光体及び車両用灯具ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用導光体は、光源からの光を入射する入射面と、前記入射面から入射した前記光を内面反射して略平行光とする第1反射面と、回転放物面を基調とする形状を有し、前記第1反射面からの前記光を車両搭載状態における前後方向の前方に内面反射する第2反射面と、前記第2反射面に対して前記前後方向の前方であって車両搭載状態における左右方向の少なくとも一方側の端面の一部に設けられる第3反射面と、前記第2反射面で反射された前記光の一部を遮光する遮光部と、前記第2反射面で内面反射されて前記遮光部を通過した前記光を出射して車両前方に前照灯パターンを照射する出射面とを備え、前記第2反射面は、前記第1反射面からの前記光の一部を前記第3反射面に向けて反射する拡散パターン形成面を有し、前記第3反射面は、前記出射面に向けて前記拡散パターン形成面からの前記光を内面反射する。
【0007】
また、前記第3反射面は、平面状であり、前記前後方向の前側が前記水平方向の内側に傾くように形成されてもよい。
【0008】
また、前記第3反射面は、前記光を拡散する光拡散部を有してもよい。
【0009】
また、前記第2反射面は、前記第1反射面からの前記光の一部が前記回転放物面の焦点及び前記焦点の近傍を通過するように当該光を内面反射する集光パターン形成面を有してもよい。
【0010】
また、前記集光パターン形成面は、前記水平方向の中央に配置され、前記拡散パターン形成面は、前記集光パターン形成面に対して前記水平方向の外側に配置されてもよい。
【0011】
また、前記入射面は、複数設けられ、前記左右方向の中央側に配置される前記入射面は、前記集光パターン形成面に対応して設けられ、前記左右方向の外側に配置される前記入射面は、前記拡散パターン形成面に対応して設けられてもよい。
【0012】
本発明に係る車両用灯具ユニットは、光源を備え、前記光源からの光を導光して出射する、上記の車両用導光体を複数備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、細やかな配光制御が可能な車両用導光体及び車両用灯具ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る車両用灯具ユニットの一例を示す平面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る車両用灯具ユニットの一例を示す側面図である。
【
図3】
図3は、
図2におけるC方向から見た場合の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、
図1におけるA-A断面に沿った構成を示す図である。
【
図5】
図5は、
図2におけるB-B断面に沿った構成を示す図である。
【
図6】
図6は、
図2におけるB-B断面に沿った構成を示す図である。
【
図7】
図7は、車両前方の仮想のスクリーンに照射される集光パターン及び拡散パターンの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、車両前方の仮想のスクリーンに照射される前照灯パターンの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、他の例に係る車両用灯具ユニットを示す図である。
【
図10】
図10は、本実施形態に係る車両用灯具の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る車両用導光体及び車両用灯具ユニットの実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。以下の説明において、前後、上下、左右の各方向は、車両用前照灯が車両に搭載された車両搭載状態における方向であって、運転席から車両の進行方向を見た場合における方向を示す。なお、本実施形態では、上下方向は鉛直方向に平行であり、左右方向は水平方向であるとする。
【0016】
図1は、本実施形態に係る車両用灯具ユニット100の一例を示す平面図である。
図2は、本実施形態に係る車両用灯具ユニット100の一例を示す側面図である。
【0017】
車両用灯具ユニット100は、後述する前照灯パターンPF(
図8参照)を車両前方に照射する。本実施形態では、前照灯パターンPFとして、ロービームパターンを例に挙げて説明する。車両用灯具ユニット100は、光源10と、車両用導光体20とを備えている。なお、車両用灯具ユニット100は、光源、リフレクタ、シェード、投影レンズ等を有する他のユニットをさらに備える構成であってもよい。以下、本実施形態では、右側通行の道路を走行する車両に搭載する車両用灯具ユニット100の構成を例に挙げて説明する。
【0018】
[光源]
光源10は、例えば半導体光源が用いられる。このような半導体光源としては、例えばLEDやOLEDなどが挙げられる。発光面11は、後述の車両用導光体20の入射面21に対向して配置される。発光面11が車両用導光体20に向けられた状態で配置される。本実施形態において、光源10は、左右方向に複数、例えば4つ配置される。なお、光源10の個数は、4つに限定されず、3つ以下であってもよいし、5つ以上であってもよい。
【0019】
[車両用導光体]
図2は、車両用導光体の一例を示す側面図である。車両用導光体20は、光源10からの光を導光して車両搭載状態における前方に出射する。本実施形態に係る車両用導光体20は、例えば従来のプロジェクタ型の車両用前照灯におけるリフレクタ、シェード、投影レンズ等のそれぞれに対応する機能を集約させた構成である。
図1及び
図2に示すように、車両用導光体20は、入射面21と、第1反射面22と、第2反射面23と、第3反射面24と、遮光部25と、出射面26とを備える。
【0020】
[入射面]
入射面21は、複数、例えば光源10毎に設けられる。なお、入射面21は、光源10とは1対1に対応しない位置に設けられてもよい。例えば、1つの光源10に対して、入射面21が複数設けられる構成であってもよい。複数の入射面21は、車両搭載状態における左右方向に並んで配置される。入射面21は、例えば円錐台状に形成される。本実施形態では、例えば4つの入射面21が配置される。左右方向の中央側に配置される入射面21の径r1よりも、左右方向の外側に配置される入射面21の径r2の方が小さい。本実施形態では、左右方向の中央側の2つの入射面21の径r1よりも、左右方向の外側に配置される2つの入射面21の径r2の方が小さい。径r1と径r2との比r1/r2は、例えば0.5以上、1未満とすることができる。以下、左右方向の中央側の2つの入射面21を中央側入射面21Mと表記し、左右方向の外側の2つの入射面を外側入射面21Nと表記して、両者を区別する場合がある。
【0021】
各入射面21は、第1面21a及び第2面21bと、を有する。第1面21a及び第2面21bは、光源10からの光が入射する。第1面21aは、発光面11に対向する。第1面21aは、平面又は光源10側に突出する凸面である。第2面21bは、光源10の側方に配置され、光源10の発光面11及び第1面21aを囲うように円筒面状に配置される。
【0022】
[第1反射面]
第1反射面22は、入射面21から入射した光を内面反射して略平行光にする。第1反射面22は、入射面21の第2面21bを囲うように配置され、当該第2面21bから入射した光を第2反射面23に向けて反射する。本実施形態において、第1反射面22は、入射面21に対応して設けられる。
【0023】
図3は、
図2における矢印C方向から見た構成を示す。
図3に示すように、左右方向の中央側に配置される2つの第1反射面22は、互いに一部同士が重なった状態で配置される。具体的には、当該2つの第1反射面22は、中央部分22Jが直線状に連結された状態で配置される。
【0024】
[第2反射面]
図4は、
図1におけるA-A断面に沿った構成を示す図である。第2反射面23は、
図4に示すように、回転放物面PRを基調とする形状を有する。第2反射面23は、焦点Pを有する。焦点Pは、後述する出射面26の焦点の近傍の位置に配置される。第2反射面23は、第1反射面22からの光を焦点P側、つまり車両前方に向けて反射する。第2反射面23は、第1反射面22で反射される光の光軸AX1に平行な軸AX2を有し、光を回転放物面PRの焦点P側に向けて内面反射する。
【0025】
図5は、
図2におけるB-B断面に沿った構成を示す図である。
図5に示すように、本実施形態において、第2反射面23は、車両搭載状態における左右方向に複数並んで配置される。複数の第2反射面23は、集光パターン形成面23Mと、拡散パターン形成面23Nとを含む。
【0026】
図5に示すように、集光パターン形成面23Mは、光が焦点P及び焦点Pの近傍を通過するように当該光を内面反射する。複数の第2反射面23のうち、光源10の光軸AX1に対して車両搭載状態における鉛直方向上に配置される第2反射面23が、集光パターン形成面23Mである。集光パターン形成面23Mは、左右方向の中央に配置される。集光パターン形成面23Mは、2つの中央側入射面21Mに対応して配置される。集光パターン形成面23Mは、2つの中央側入射面21Mに入射し、第1反射面22で反射された光を反射する。
【0027】
拡散パターン形成面23Nは、第1反射面22からの光の一部を後述する第3反射面24に向けて反射する。このため、拡散パターン形成面23Nは、例えば左右方向で集光パターン形成面23M側の端部が、回転放物面PRを基調とする形状に対して、前方に変形した形状となっている。拡散パターン形成面23Nは、集光パターン形成面23Mに対して左右方向の外側に1つずつ配置される。拡散パターン形成面23Nは、それぞれの外側入射面21Nに対応して配置される。拡散パターン形成面23Nは、それぞれの外側入射面21Nに入射し、第1反射面22で反射された光を反射する。拡散パターン形成面23Nにおける光の経路については、後述する。
【0028】
[第3反射面]
第3反射面24は、第2反射面23の前方であって左右方向の両側の端面の一部に設けられる。第3反射面24は、拡散パターン形成面23Nで反射された光を内面反射する。第3反射面24は、出射面26に向けて拡散パターン形成面23Nからの光を内面反射する。第3反射面24は、例えば平面状であり、前側が水平方向の内側に傾くように形成される。第3反射面24は、後述する遮光部25の左右方向の両端に接続する位置に配置される。第3反射面24は、光を拡散する光拡散部24aを有する。光拡散部24aは、第3反射面24で反射される光を水平方向に拡散する。
【0029】
図6は、
図2におけるB-B断面に沿った構成を示す図である。
図6に示すように、拡散パターン形成面23Nは、第1反射面22からの光の一部を第3反射面24に向けて反射する。拡散パターン形成面23Nで反射された光は、第3反射面24に到達する。第3反射面24は、出射面26に向けて当該光を内面反射する。これにより、出射面26で光が車両用導光体20の内側に全反射することを抑制できる。
【0030】
[遮光部]
遮光部25は、第2反射面23及び第3反射面24で内面反射される光の一部を遮光する。遮光部25は、例えば
図2に示すように、車両用導光体20のうち車両搭載状態における下側に配置される面20eと面20fとで角部20gを形成するように屈曲された形状を有する。面20eは、水平面に沿った状態で形成される。また、面20fは、例えば前方に向けて下方に傾いた状態で形成される。角部20gは、車両用導光体20を外部側(下方)から見た場合に凹状であり、車両用導光体20の内部側に向けて突出している。角部20gは、左右方向に線状に延びている。遮光部25は、角部20gにおいて、例えば後述する前照灯パターンのカットオフラインPcを形成する。カットオフラインPcは、水平カットオフラインと斜めカットオフラインとを含む。この場合、角部20gは、水平カットオフラインを形成するための水平部分(不図示)と、斜めカットオフラインを形成するための傾斜部分(不図示)とを有する。
【0031】
遮光部25は、当該角部20gを含む領域に設けられる。遮光部25は、例えば当該遮光部25に到達する光を出射面26の方向とは異なる方向に屈折または内面反射させることで光を遮光してもよいし、角部20gを含む面20eのうち当該遮光部25に対応する部分に光吸収層を配置しておき、当該光吸収層により光を吸収することで遮光してもよい。なお、遮光部25によって内面反射又は屈折される光は、車両用導光体20の外部に出射され、当該車両用導光体20の外部に配置されるインナーハウジング等によって吸収される。
【0032】
[出射面]
出射面26は、第2反射面23で内面反射されて遮光部25を通過した光を出射して車両前方に前照灯パターンPF(
図8参照)を照射する。出射面26は、例えば曲面状である。出射面26は、不図示の焦点と、光軸とを有する。出射面26の焦点は、第2反射面23の焦点Pの近傍の位置に配置される。
【0033】
車両用導光体20の上面20dには、プリズム部20hが形成される。プリズム部20hは、第2反射面23で内面反射された光を拡散する。このため、上面から車両用導光体20の外部に出射される光がグレアとなるのを抑制できる。
【0034】
[動作]
次に、上記のように構成された車両用灯具ユニット100の動作を説明する。
図7は、車両前方の仮想のスクリーンに照射される集光パターン及び拡散パターンの一例を示す図である。また、
図8は、車両前方の仮想のスクリーンに照射される前照灯パターンの一例を示す図である。
図7及び
図8では、左側通行の車両に対応するパターンを示している。なお、右側通行の車両においては、
図7及び
図8に示すパターンを左右反転させたパターンを照射する構成とすればよい。また、
図7及び
図8において、V-V線がスクリーンの垂直線を示し、H-H線がスクリーンの左右の水平線を示す。また、ここでは、垂直線と水平線との交点が、水平方向の基準位置であるとする。
【0035】
車両用灯具ユニット100におけるそれぞれの光源10を点灯させることにより、発光面11から光が放射される。この光のうち、入射面21の第1面21aに入射した光は、当該第1面21aによって略平行光となる。また、入射面21の第2面21bに入射した光は、第1反射面22によって内面反射されて略平行光となる。このように形成された光は、第2反射面23において出射面26に向けて内面反射される。
【0036】
例えば、中央側入射面21Mから入射し、第1反射面22により内面反射されて略平行光となった光L1は、
図5に示すように、集光パターン形成面23Mによって内面反射され、遮光部25のうち焦点P及び焦点Pの近傍を通過して出射面26から出射される。この光L1により、
図7に示すように、車両前方には、集光パターンP1が形成される。
【0037】
また、外側入射面21Nから入射し、第1反射面22により内面反射されて略平行光となった光L2、L3は、
図6に示すように、
図2のB-B断面、つまり、水平面に平行な平面による断面(横断面)視において、拡散パターン形成面23Nによって内面反射される。拡散パターン形成面23Nによって内面反射された光L2は、遮光部25のうち焦点P及び焦点Pに対して車両搭載状態における水平方向の外側にずれた位置を通過して、出射面26から出射される。この光L2により、
図7に示すように、車両前方には、拡散パターンP2が形成される。また、拡散パターン形成面23Nによって内面反射された光L3は、遮光部25よりも出射面26側で第3反射面24に到達し、当該第3反射面24によって内面反射される。光L3は、第3反射面24で内面反射される際、第3反射面24に設けられる光拡散部24aにより水平方向に拡散される。第3反射面24によって内面反射された光L3は、出射面26に到達する。出射面26に到達した光L3は、出射面26から車両前方に出射される。この光L3により、
図7に示すように、車両前方には、拡散パターンP3が形成される。拡散パターンP2、P3は、集光パターンP1に比べて、左右方向に広がった状態で形成される。また、光L3は、第3反射面24の光拡散部24aにより拡散されているため、拡散パターンP3の輪郭が明確になることが抑制される。このため、周囲になじんだ状態で拡散パターンP3を形成することができる。なお、
図6では、図中上側の拡散パターン形成面23Nで内面反射された光L2、L3を例に挙げて示しているが、図中下側の拡散パターン形成面23Nで内面反射された光も同様に光L2、L3に含まれる。つまり、光L2、L3は、
図6における図中の上下の両方の拡散パターン形成面23Nで内面反射された光を含む。
【0038】
したがって、車両用灯具ユニット100の各光源10を点灯させる場合、
図8に示すように、上記の集光パターンP1と拡散パターンP2、P3とが重なった前照灯パターンPFが車両前方に形成される。このため、車両前方には、左右方向の内部側と外部側とで光度が適正に調整された前照灯パターンPFが形成される。
【0039】
なお、上記した説明では、2つの中央側入射面21M及び2つの外側入射面21Nのそれぞれに光を入射する光源10が配置された構成としたが、これに限定されない。例えば、2つの中央側入射面21Mに光を入射する光源10のみが配置され、2つの外側入射面21Nに光を入射する光源10が配置されない構成であってもよい。この場合、光源10からの光は2つの中央側入射面21Mにのみ入射するため、車両用導光体20によって集光パターンP1のみが形成される。また、2つの外側入射面21Nに光を入射する光源10のみが配置され、2つの中央側入射面21Mに光を入射する光源10が配置されない構成であってもよい。この場合、光源10からの光は2つの外側入射面21Nにのみ入射するため、車両用導光体20によって拡散パターンP2、P3のみが形成される。この組み合わせにより、前照灯として機能を満たすユニットを適宜配置することにより、レンズ部材を複数の配光パターンにおいて共通化できるため、コストを低減できる。
【0040】
図9は、他の例に係る車両用灯具ユニット100Aを示す図である。
図9に示すように、車両用灯具ユニット100Aは、光源10及び車両用導光体20Aを有する。車両用導光体20Aは、左右方向の外側に配置される外側入射面21Nと、当該外側入射面21Nに対応する第1反射面22A,第2反射面23A及び第3反射面24Aとを有する。この第2反射面23Aは、拡散パターン形成面23Nである。車両用導光体20Aは、
図1等に示す車両用導光体20の構成に対して、左右方向の中央側に配置される中央側入射面21Mと、当該中央側入射面21Mに対応する第1反射面22及び第2反射面23(集光パターン形成面23M)とが設けられない構成である。このため、光源10から車両用導光体20Aに入射する光は、車両前方において拡散パターンP2、P3を形成する。このように、車両用導光体20Aは、全ての第2反射面23Aが拡散パターン形成面23Nであり、車両前方に拡散パターンP2、P3を形成する拡散用導光体である。なお、車両用導光体(拡散用導光体)20Aの他の構成については、上記の車両用導光体20と同様である。
【0041】
図10は、本発明に係る車両用灯具200の一例を示す図である。
図10は、車両搭載状態における前方から見た例を示している。
図10に示す車両用灯具200は、ハウジング201と、アウターレンズ202と、光源210と、複数の車両用導光体220とを有する。車両用灯具200は、ハウジング201とアウターレンズ202とで囲まれる灯室内に、ここでは例えば2つの車両用導光体220が配置された構成である。なお、灯室内に配置される車両用導光体220は、1つ又は3つ以上であってもよい。また、車両用導光体220は、前方から見た場合において、左右方向に並ぶ配置に限定されず、上下方向に並ぶ配置であってもよいし、斜め方向に並ぶ配置であってもよいし、左右方向、上下方向、斜め方向の2つ以上を組み合わせた状態で並ぶ配置であってもよい。車両用導光体220は、上記した車両用導光体20、20Aのうち、同一種類又は異なる種類の車両用導光体を組み合わせて配置することができる。また、車両用導光体220は、少なくとも1つが車両用導光体20、20Aであり、残りを他の構成の車両用導光体としてもよい。
【0042】
以上のように、本実施形態に係る車両用導光体20は、光源10からの光を入射する入射面21と、入射面21から入射した光を内面反射して略平行光とする第1反射面22と、回転放物面PRを基調とする形状を有し、第1反射面22からの光を車両搭載状態における前後方向の前方に内面反射する第2反射面23と、第2反射面23に対して前後方向の前方であって車両搭載状態における左右方向の少なくとも一方側の端面の一部に設けられる第3反射面24と、第2反射面23で反射された光の一部を遮光する遮光部25と、第2反射面23で内面反射されて遮光部25を通過した光を出射して車両前方に前照灯パターンを照射する出射面26とを備え、第2反射面23は、第1反射面22からの光の一部を第3反射面24に向けて反射する拡散パターン形成面23Nを有し、第3反射面24は、出射面26に向けて拡散パターン形成面23Nからの光を内面反射する。
【0043】
この構成によれば、第2反射面23において配光を制御することができるため、例えば入射部だけで配光を制御する構成に比べて、細やかな配光制御が可能となる。これにより、例えばロービームのような細やかな配光制御が必要な場合においても、適切な配光制御が可能となる。また、第3反射面24が出射面26に対して全反射角以上の角度で光が到達するように拡散パターン形成面23Nからの光を内面反射することにより、出射面26で光が車両用導光体20の内側に全反射してしまうことを抑制できる。このため、光源からの光を無駄なくパターン照射に寄与させることができる。
【0044】
本実施形態に係る車両用導光体20において、第3反射面24は、平面状であり、前後方向の前側が水平方向の内側に傾くように形成されてもよい。これにより、出射面26に対して角度をつけた状態で光を到達させることができる。
【0045】
本実施形態に係る車両用導光体20において、第3反射面24は、光を拡散する光拡散部24aを有してもよい。これにより、拡散パターンP3の輪郭が明確になることが抑制され、周囲になじんだ状態で拡散パターンP3を形成することができる。
【0046】
本実施形態に係る車両用導光体20において、第2反射面23は、第1反射面22からの光の一部が回転放物面PRの焦点及び焦点の近傍を通過するように当該光を内面反射する集光パターン形成面23Mを有してもよい。集光パターン形成面23Mと拡散パターン形成面23Nとを1つの車両用導光体20に備えることにより、1つの車両用導光体20によって集光パターンP1及び拡散パターンP2、P3の一方又は両方を形成することができる。
【0047】
本実施形態に係る車両用導光体20において、集光パターン形成面は、水平方向の中央に配置され、拡散パターン形成面23Nは、集光パターン形成面に対して水平方向の外側に配置されてもよい。左右方向の中央側に集光パターン形成面23Mを配置することで、例えば左右方向の外側に配置する場合に比べて、光を焦点P及び焦点Pの近傍に集光しやすい構成となるため、容易に集光パターンP1を形成できる。左右方向の外側に拡散パターン形成面23Nを配置することで、例えば左右方向の中央側に配置する場合に比べて、光を左右方向に拡散しやすい構成となるため、容易に拡散パターンP2、P3を形成できる。
【0048】
本実施形態に係る車両用導光体20において、入射面21は、複数設けられ、左右方向の中央側に配置される入射面21は、集光パターン形成面23Mに対応して設けられ、左右方向の外側に配置される入射面21は、拡散パターン形成面23Nに対応して設けられてもよい。これにより、入射面21から入射した光を精度よく制御することができる。
【0049】
本実施形態に係る車両用灯具ユニット200は、光源210を備え、光源210からの光を導光して出射する、上記の車両用導光体220を複数備える。この構成によれば、車両用灯具ユニット200全体として、複数の車両用導光体220の照射パターンを組み合わせた前照灯パターンを得ることができる。
【0050】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。上記実施形態では、右側通行の道路を走行する車両に搭載する車両用灯具ユニット100の構成を例に挙げて説明したが、これに限定されず、左側通行の道路を走行する車両に車両用前照灯を搭載する場合においても同様の説明が可能である。
【0051】
また、上記実施形態では、前照灯パターンPFとして、ロービームパターンを例に挙げて説明したが、これに限定されず、例えばハイビームパターン等、他のパターンであってもよい。また、複数の車両用導光体220が設けられる車両用灯具ユニット200においては、異なる種類のパターンを形成する車両用導光体220が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0052】
AX1…光軸、AX2…軸、L1,L2,L3…光、P…焦点、P1…集光パターン、P2,P3…拡散パターン、Pc…カットオフライン、PF…前照灯パターン、PR…回転放物面、r1,r2…径、10,210…光源、11…発光面、20,20A,220…車両用導光体、20d…上面、20e,20f…面、20g…角部、20h…プリズム部、21…入射面、21M…中央側入射面、21N…外側入射面、21a…第1面、21b…第2面、22,22A…第1反射面、22J…中央部分、23,23A…第2反射面、23M…集光パターン形成面、23N…拡散パターン形成面、24,24A…第3反射面、24a…光拡散部、25…遮光部、26…出射面、100,100A…車両用灯具ユニット、200…車両用灯具、201…ハウジング、202…アウターレンズ