(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】シール材貼付けシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 15/06 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
B25J15/06 A
(21)【出願番号】P 2020071657
(22)【出願日】2020-04-13
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】伊庭 歩美
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-104538(JP,A)
【文献】特開2018-203436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状のシール材を貼付け対象部材に貼付ける動作を行なうもので、
複数の吸着パッドが、それらの吸着面を含む平面が複数となるように取り付けられる形状のベースを備えたハンドを有するロボットと、
このロボットの動作及び前記吸着パッドによる前記シール材の吸着を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記複数の吸着パッドにより前記シール材を吸着させると、
前記複数のうち1つ以上の吸着パッドの吸着面が、前記貼付け対象部材の対応する貼付け位置と対向するように制御して、前記シール材を部分的に貼付けてから前記吸着パッドによる吸着を停止させる動作を、前記ベースの第1端側にある吸着パッドから同第2端側にある吸着パッドまで順次切り替えて実行
し、
前記複数の吸着パッドは、前記シール材を前記貼付け対象部材に貼付ける角度が、同じ平面内で変化する位置に合わせて前記ベースに配置されているシール材貼付けシステム。
【請求項2】
線状のシール材を貼付け対象部材に貼付ける動作を行なうもので、
複数の吸着パッドが、それらの吸着面を含む平面が複数となるように取り付けられる形状のベースを備えたハンドを有するロボットと、
このロボットの動作及び前記吸着パッドによる前記シール材の吸着を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記複数の吸着パッドにより前記シール材を吸着させると、
前記複数のうち1つ以上の吸着パッドの吸着面が、前記貼付け対象部材の対応する貼付け位置と対向するように制御して、前記シール材を部分的に貼付けてから前記吸着パッドによる吸着を停止させる動作を、前記ベースの第1端側にある吸着パッドから同第2端側にある吸着パッドまで順次切り替えて実行し、
前記複数の吸着パッドにより前記シール材を吸着する際に、
最初に前記ベースの一端側にある吸着パッドにより前記シール材の一端側を吸着させると、前記ハンドを前記シール材が配置されている方向に前記シール材の一端側が剥がれる距離だけ移動させてから、残りの吸着パッドにより前記シール材を順次吸着させるシール材貼付けシステム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記ハンドを前記シール材の一端側が剥がれる距離だけ移動させると、前記吸着パッドによる吸着を停止させ、
再度、前記ベースの一端側にある吸着パッドにより前記シール材の一端側を吸着させてから、残りの吸着パッドにより前記シール材を順次吸着させる請求項
2記載のシール材貼付けシステム。
【請求項4】
前記シール材の一端側を、前記ベースの第2端側にする請求項
2又は
3記載のシール材貼付けシステム。
【請求項5】
線状のシール材を貼付け対象部材に貼付ける動作を行なうもので、
複数の吸着パッドが、それらの吸着面を含む平面が複数となるように取り付けられる形状のベースを備えたハンドを有するロボットと、
このロボットの動作及び前記吸着パッドによる前記シール材の吸着を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記複数の吸着パッドにより前記シール材を吸着させると、
前記複数のうち1つ以上の吸着パッドの吸着面が、前記貼付け対象部材の対応する貼付け位置と対向するように制御して、前記シール材を部分的に貼付けてから前記吸着パッドによる吸着を停止させる動作を、前記ベースの第1端側にある吸着パッドから同第2端側にある吸着パッドまで順次切り替えて実行し、
1つの貼付け位置に前記シール材を部分的に貼付けると、次の貼付け位置がある方向に前記シール材を、張力が生じる程度に引っ張ってから前記次の貼付け位置に前記ハンドを移動させるシール材貼付けシステム。
【請求項6】
前記ベースは、下方に凸となるように湾曲した形状である請求項
1から5の何れか一項に記載のシール材貼付けシステム。
【請求項7】
前記貼付け対象部材が、立体的な形状である請求項
1から6の何れか一項に記載のシール材貼付けシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットにより線状のシール材を貼付け対象部材に貼付ける動作を行なうシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、従来は人手によって行われていた、ビデオカメラに使用されるCCDの受光面に保護用のシールラベルを貼付ける作業を、装置により自動的に行う技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で扱うシールラベルは、矩形状で平面的なものを対象としている。例えば、自動車のドアが閉められた際に車両の気密性を確保するために車両の本体側との間に介在させるシール材があるが、このようなシール材は線状であり、特許文献1におけるシールラベルとは形態が大きく相違している。したがって、上記のようなシール材を貼付けるために、特許文献1の装置を転用することはできない。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、線状のシール材を貼付けるために適した構成のシール材貼付けシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載のシール材貼付けシステムによれば、ロボットのハンドは、複数の吸着パッドが、それらの吸着面を含む平面が複数となるように取り付けられる形状のベースを備えている。制御装置は、複数の吸着パッドによりシール材を吸着させると、1つ以上の吸着パッドの吸着面が、貼付け対象部材の対応する貼付け位置と対向するように制御する。そして、シール材を部分的に貼付けてから吸着パッドによる吸着を停止させる動作を、ベースの第1端側にある吸着パッドから第2端側にある吸着パッドまで順次切り替えて実行する。
【0007】
このように構成すれば、ベースの角度を変化させることで、複数の吸着パッドの1つ以上を吸着対象とする部分に対向させて、線状のシール材を、複数の吸着パッドにより部分的に吸着させることができる。したがって、ロボットのハンドだけでシール材の全体を容易に吸着できる。そして、シール材を貼付け対象部材に貼付ける際にも、複数の吸着パッドを順次吸着対象とする部分に対向させてから吸着を停止させれば、シール材を複数の吸着パッドの間にある部分毎に貼付けることができる。これにより、線状のシール材を貼付け対象部材に貼付ける作業を、ロボットを用いて自動化できる。
【0008】
請求項6記載のシール材貼付けシステムによれば、ベースの形状を、下方に凸となるように湾曲した形状とする。これにより、吸着パッドの吸着面を含む平面が複数となる。
【0009】
請求項7記載のシール材貼付けシステムによれば、立体的な形状の貼付け対象部材にシール材を貼付ける。すなわち、上述した様に、ベースの角度を変化させて、シール材を貼付け対象部材に部分毎に貼付けることができるので、貼付け対象部材における貼付け対象面の角度が3次元的に変化しても、その角度の変化に合わせて部分毎に貼付けを行うことができる。
【0010】
また、請求項1記載のシール材貼付けシステムによれば、複数の吸着パッドを、シール材を貼付け対象部材に貼付ける角度が同一の平面内で変化する位置に合わせてベースに配置する。このように構成すれば、シール材の貼付け角度を変化させる制御を、対応する吸着パッドによる吸着を停止させる位置に合わせて行うことができ、ティーチングが容易になる。
【0011】
請求項2記載のシール材貼付けシステムによれば、制御装置は、シール材を吸着する際に、最初にベースの一端側にある吸着パッドによりシール材の一端側を吸着する。それから、ハンドをシール材が配置されている方向にシール材の一端側が剥がれる距離だけ移動させると、その後残りの吸着パッドによりシール材を順次吸着させる。
【0012】
このように制御すれば、接着面が台紙等に接着された状態で配置されているシール材を、その一端側を少し剥がした状態にしてから他の部分を吸着することで、全体を台紙等から容易に剥がして離脱させることが可能になる。
【0013】
請求項3記載のシール材貼付けシステムによれば、制御装置は、ハンドをその一端側が剥がれる距離だけ移動させると、一旦吸着を停止させる。その後、ベースの一端側にある吸着パッドにより再度シール材の一端側を吸着させてから、その後残りの吸着パッドによりシール材を順次吸着させる。
【0014】
このように制御すれば、シール材の一端側を少し剥がした状態にした際に、例えばシール材に皺が寄ったり、一端側にある吸着パッドの吸着位置に若干ずれが生じたとしても、吸着を再度やり直すことでそのような状態を解消できる。
【0015】
請求項4記載のシール材貼付けシステムによれば、シール材の一端側を、ベースの第2端側にする。これにより、シール材の全体を吸着した状態のハンドを最初の貼付け位置に移動させれば、ベースの第1端側の吸着パッドが前記貼付け位置に対向する状態になり、シール材の貼付け動作を直ちに開始できる。したがって、シール材の吸着及び貼付け動作を効率的に行うことができる。
【0016】
請求項5記載のシール材貼付けシステムによれば、制御装置は、1つの貼付け位置にシール材を部分的に貼付けると、次の貼付け位置がある方向にシール材を、張力が生じる程度に引っ張ってから次の貼付け位置にハンドを移動させる。これにより、シール材の一部に皺が寄った状態で貼付けてしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態であり、ロボットのハンドを中心に示す斜視図
【
図6】コントローラの処理内容を要旨に係る部分について示すフローチャート
【
図7】吸着パッド19(1)の軸線が垂直になるようにハンドを制御した状態を示す図
【
図8】吸着パッド19(6)の軸線が垂直になるようにハンドを制御した状態を示す図
【
図9】作業台上にシール材が配置されている状態を示す斜視図
【
図10】シール材の取り出し処理の詳細を示すフローチャート
【
図11】
図10に示すフローチャートの各処理に対応したハンドの動作イメージを示す図
【
図12】シール材を貼付け位置P(1)に貼付けた状態をモデル的に示す図
【
図13】シール材を貼付け対象部材に全て貼付けた状態を、平面図及び側面図と共に示す斜視図
【
図14】シール材の貼付け方向を、位置P(1)→P(2)と位置P(2)→P(3)とで変化させる制御を説明する図
【
図15】シール材を、位置P(3)から位置P(4)に貼付ける際に、皺が寄った状態を示す図
【
図16】シール材に皺が寄らないように、位置P(3)から位置P(4)に貼付ける制御を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、一実施形態について説明する。
図4に示すように、ロボットシステム1は、多関節型のロボット2、ロボット2を制御するコントローラ3、コントローラ3に接続されたティーチングペンダント4を備えている。ロボット2は、6軸の垂直多関節型ロボットとして周知の構成を備えており、ベース5上に、Z方向の軸心を持つ第1軸(J1)を介してショルダ6が水平方向に回転可能に連結されている。ショルダ6には、Y方向の軸心を持つ第2軸(J2)を介して上方に延びる下アーム7の下端部が垂直方向に回転可能に連結されている。下アーム7の先端部には、Y方向の軸心を持つ第3軸(J3)を介して第一上アーム8が垂直方向に回転可能に連結されている。第一上アーム8の先端部には、X方向の軸心を持つ第4軸(J4)を介して第二上アーム9が捻り回転可能に連結されている。第二上アーム9の先端部には、Y方向の軸心を持つ第5軸(J5)を介して手首10が垂直方向に回転可能に連結されている。手首10には、X方向の軸心を持つ第6軸(J6)を介してフランジ11が捻り回転可能に連結されている。
【0019】
ベース5、ショルダ6、下アーム7、第一上アーム8、第二上アーム9、手首10及びフランジ11は、ロボット2のアームとして機能し、アームの先端となるフランジ11には、ハンド21が取り付けられる。本実施形態のハンド21は、特殊な用途に対応した形状であり、詳細は後述するが、自動車のドアと本体側との間に介在させるシール材を吸着及び貼付けるために構成されている。ロボット2に設けられている各軸J1~J6には、それぞれに対応して駆動源となる、
図5に示すモータ12が設けられている。
【0020】
コントローラ3は、ロボットの制御装置に相当し、図示しないCPU、ROMおよびRAM等で構成されたコンピュータからなる制御部においてコンピュータプログラムを実行することで、ロボット2を制御している。具体的には、コントローラ3は、インバータ回路等から構成された駆動部を備えており、各モータ12に対応して設けられているエンコーダ17で検知したモータの回転位置に基づいて例えばフィードバック制御によりモータ12を駆動する。
【0021】
ティーチングペンダント4は、例えば概ね略矩形箱状に形成されており、ユーザが所持したまま操作可能な程度の大きさに形成されている。このティーチングペンダント4には、各種キースイッチやタッチパネル等が設けられており、ユーザは、それらキースイッチやタッチパネル等を用いてティーチングを行う。
【0022】
コントローラ3は、
図5に示すように、CPUを主体とする制御部13と、記憶部14と、位置検出部15とを備えている。制御部13は、産業用ロボット装置1の全体を統括制御する。制御部13には、記憶部14及び位置検出部15の他、前記ティーチングペンダント4及びモータ12の駆動回路16が接続されている。記憶部14には、各アーム6~11を駆動するモータ12についての最大加速度(+α)、最大減速度(-α)、最高速度Vmax等のパラメータ、ロボット制御用の各種ソフトウエアが予め記憶されている。また、記憶部14には、実際のロボットの作業に際しては、ティーチングペンダント4により設定される動作プログラムや、実際の動作に先立って生成されるロボット先端の移動軌跡情報などが記憶されている。
【0023】
位置検出部15には、ショルダ6やアーム7~9等に対応する各モータ12の回転軸に連結されたロータリエンコーダ17が接続されている。位置検出部15は、ロータリエンコーダ17から入力される回転検出信号に基づいてモータ12の回転角度,すなわち軸値を検出し、その回転位置情報を制御部13に与える。制御部13は、モータ12の回転角度情報から対応するアーム等の回転角を演算すると、その回転角を目標角度と比較して差分に応じた電流指令値を駆動回路16に与える。すると、駆動回路16は、与えられた電流指令値に応じた電流をモータ12に供給する。これによりモータ12の回転が制御され、各アーム6~11等が目標角度に回転される。
【0024】
また、制御部3は、コンプレッサ18を介して、ハンド21に配置されている複数例えば6個の吸着パッド19(1)~19(6)に対する圧縮空気の流れを制御して、吸着パッド19による吸着及びその停止を制御する。尚、
図4ではコンプレッサ18等の図示を省略している。
【0025】
図1~
図3に示すように、本実施形態のハンド21は、ベース部材22に6個の吸着パッド19(1)~19(6)が取り付けられた構成である。
図1中の左端が第1端に対応し、右端が第2端に対応する。ベース部材22は、
図1中で下方に凸となるように湾曲した概ね長板状のパッド取付け部23と、パッド取付け部23の中央部側面に配置された概ね矩形状のフランジ取付け部24とを備えている。吸着パッド19(1)~19(6)は、パッド取付け部23に形成された六角形の取付け穴25を介して取り付けられている。ベース部材22は、フランジ取付け部24を介して前述のフランジ1に取り付けられている。
【0026】
吸着パッド19(1)と吸着パッド19(6)とがパッド取付け部23に取り付けられている間隔は、ハンド21が吸着及び貼付けの対象とする
図10等に示す線状のシール材31の長さにほぼ等しくなるように設定されている。また、吸着パッド19(1)~19(6)のそれぞれがパッド取付け部23に取り付けられている間隔は、シール材31を貼付け対象部材32に貼付ける際に、貼付けの角度が同一の平面内で変化するポイントに対応させて設定されている。尚、
図13等に示す貼付け対象部材32は、実際には車両のドア等であり複雑な立体形状であるが、説明を簡単にするためモデル的に直方体にとしている。
【0027】
また、ベース部材22が湾曲している度合いは、
図1の左端側にある吸着パッド19(1)の軸線と、同右端側にある吸着パッド19(6)の軸線とが交差してなす角度が、90度未満となるようにしている。これは、ハンド21全体の大きさと、可動領域とのバランスを考慮したもので、ハンドをより小型に構成できる場合には、前記角度を90度以上にすることも可能である。各吸着パッド19(1)~19(6)の上端側には、コンプレッサ18により生成された圧縮空気が流通するホース26が接続されている。
【0028】
次に、本実施形態の作用について
図6から
図16を参照して説明する。以下ではシール材31を吸着する6点をV1~V6とし、シール材31を貼付ける6点をP1~P6とする。また、
図7に示すように、各吸着パッド19(1)~19(6)において、隣り合う2つのパッド(1)-(2),(2)-(3),…(5)-(6)で区切られる区間をA~Eとする。区間A~Eは、シール材31を部分的に貼付ける各区間となる。
【0029】
<シール材31の取り出し;吸着>
図6は、コントローラ3の制御部13による処理内容を示すフローチャートである。制御部13は、先ずハンド21をシール材31の取り出し位置の上方に移動させる(S1)。シール材31は、
図9に示すように作業台33に配置されており、スポンジ部34を上方に、接着面35を下方にして台紙36に接している。この状態で、各シール材31は予め個別に、線状となるようにカットされている。
【0030】
次に、制御部13は、吸着パッド19(N)の軸線が垂直になるように制御する(S2)。ここでポインタNは「1~6」の変数で初期値は「1」であり、
図7に示すように、吸着パッド19(1)の軸線が垂直になるようにロボット2がハンド21を傾ける。このとき、その他の吸着パッド(2)~(6)の軸線は垂直にならず、吸着パッド19(1)の吸着面には対向しない状態となる。そして、吸着パッド19(1)をシール材31の取り出し位置V(1)に移動させる。すると、吸着パッド19(1)の吸着面が、取り出し位置V(1)に対向した状態となるので、前記吸着面を取り出し位置V(1)に近接させて吸着パッド19(1)により吸着を行わせる(S3)。この時点でポインタNがインクリメントされる。ポインタNが「6」を超えていなければ(S4;NO)、ステップS2に戻り、次の吸着パッド19(2)について同様の処理が行われる。
【0031】
ステップS2~S4のループを繰り返すことで、ステップS4で「YES」と判断すると、ハンド21は
図8に示すように、吸着パッド19(6)の軸線が垂直になっており、この時点でシール材31の取り出し;全体の吸着が完了する。ここで、シール材31の取り出し処理の詳細について、
図10及び
図11を参照して説明する。
図6では、シール材31の取り出し処理の概要を説明したが、実際には、取り出しを確実に行うため詳細な制御を適用している。すなわち、
図9に示したように、全てのシール材31が十分にカットされているとは限らず、それらの一部のカットが不完全である場合も想定され、そのような状態のシール材31を台紙36より剥離させるのは、困難なこともある。
【0032】
そこで、吸着パッド19(1)をシール材31の取り出し位置V(1)に移動させて吸着させると(S11)、その状態でハンド21をシール材31が配置されている方向に沿って若干スライドさせる(S12)。これにより、シール材31の一端側を台紙36より確実に剥離させる。そして、吸着パッド19(1)により吸着を停止させるとハンド21を上方に移動させ(S13)、吸着パッド19(1)を再度取り出し位置V(1)に移動させて吸着させる(S14)。それから、残りの吸着パッド19(2)~19(6)による吸着を、
図6に従って行う(S15)。
【0033】
<シール材31の貼付け>
再び
図6を参照する。以上のようにして、ハンド21によりシール材31の全体を吸着すると、シール材31を貼付け対象部材32に貼付ける。ポインタNは再度、初期値「1」に設定される。制御部13は、ハンド21を貼付け対象部材32の上方に移動させると(S5)、吸着パッド19(1)の軸線が垂直になるようにハンド21が傾けられる(S6)。そして、吸着パッド19(1)を貼付け対象部材32の貼付け位置P(1)に移動させて貼付けを行うと、吸着パッド19(1)による吸着を停止させる(S7)。この状態を、
図12に示す。また、この時点でポインタNがインクリメントされ、「6」を超えていなければ(S8;NO)ステップS6に戻り、次の吸着パッド19(2)について同様の処理が行われる。
【0034】
ステップS6~S8を繰り返し実行することで、例えば
図13に示すように、シール材31は、貼付け位置P(1)~P(6)において順次貼付け動作が行われる。すなわち、シール材31は、区間A~E毎に貼付け対象部材32に部分的に貼付けられ、貼付け位置P(6)での貼付けが行われると動作は完了する。例えば区間Aの貼付けに続く区間Bの貼付けでは、同一平面内でのシール材31の貼付け角度が変化しているが、
図14に示すように、パッド取付け部23の中心線が、区間A,Bのそれぞれでシール材31の中心線に一致する状態で貼付けが行われるように、予めティーチングされている。
【0035】
ここで、シール材31の貼付け処理の詳細について、
図15及び
図16を参照して説明する。
図13に示す貼付けパターンでは、位置P3→P4間の区間Cにおいて、貼付け角度が対象部材32の正面から見て90度変化している。特にこのような区間Cでは、ハンド21を位置P3から位置P4に移動させるだけでは、
図15に示すように、シール材31に皺が寄った状態で貼付けられてしまうおそれがある。
【0036】
そこで、
図16に示すように、吸着パッド19(3)により位置P3での貼付けを行い、ハンド21を次の貼付け位置P4に移動させる際に、シール材31を図中に矢印で示す方向に例えば数mm程度引っ張るようにして、シール材31に僅かに張力が生じるようにする。(1)では図中の右方向に引っ張り、(2)では同下方向に引っ張る。そして、(3)で貼付け位置P4に貼付ける直前も僅かに引っ張った状態を維持し、位置P4に貼付けると同時にその状態を解除する。これにより、(4)に示すように、シール材31に皺が寄らないようにして、貼付けることができる。
【0037】
尚、これは
図14に示したように、同一平面内で区間Aから区間Bに至る際に貼付け角度が変化する場合でも、同様に皺が寄る可能性があるので、
図16と同様の制御を行う必要がある。
【0038】
以上のように本実施形態によれば、ロボット2のハンド21に、下方に凸となるように湾曲した形状のベース部材22を備え、ベース部材22の下面側に吸着パッド19(1)~19(6)を配置する。コントローラ3は、吸着パッド19(1)~19(6)によりシール材31を吸着させると、吸着パッド19(1)の吸着面が、貼付け対象部材32の対応する貼付け位置P(1)と対向するように制御する。そして、シール材31を部分的に貼付けてから吸着パッド19(1)による吸着を停止させる動作を、吸着パッド19(6)まで順次切り替えて実行する。
【0039】
このように構成すれば、湾曲した形状のベース部材22の角度を変化させることで、複数の吸着パッド19の1つを吸着対象とする部分に対向させて、線状のシール材31を、吸着パッド19のそれぞれにより個別の点で吸着させることができる。したがって、ロボット2のハンド21だけでシール材31の全体を容易に吸着できる。
【0040】
そして、シール材31を貼付け対象部材32に貼付ける際にも、吸着パッド19のそれぞれを順次吸着対象とする部分に対向させてから吸着を停止させれば、シール材31を2つの吸着パッド19の間にある部分毎に貼付けることができる。これにより、線状のシール材31を貼付け対象部材32に貼付ける作業を、ロボット2を用いて自動化できる。また、貼付け対象部材32が立体的な形状であっても、シール材31を容易に3次元的に貼付けることができる。
【0041】
また、吸着パッド19(1)~19(6)を、シール材31を貼付け対象部材32に貼付ける角度が同一の平面内で変化する位置に合わせてベース部材22のパッド取付け部23に配置したので、シール材31の貼付け角度を変化させる制御を、対応する吸着パッド19による吸着を停止させる位置に合わせて行うことができ、ティーチングが容易になる。
【0042】
また、コントローラ3は、シール材31を吸着する際に、最初に吸着パッド19(1)によりシール材31の一端側を吸着し、ハンド21をシール材31が配置されている方向にその一端側が台紙36より剥がれる距離だけ移動させると、一旦吸着を停止させる。その後、吸着パッド19(1)により再度シール材31の一端側を吸着させ、その後残りの吸着パッド19(2)~19(6)によりシール材31を順次吸着させる。このように制御すれば、シール材31の全体を台紙36から容易に剥がして離脱させることが可能になる。
【0043】
そして、ハンド21をシール材31の一端側が台紙36より剥がれる距離だけ移動させた際に、例えばシール材31に皺が寄ったり、一端側にある吸着パッド19(1)の吸着位置に若干ずれが生じたとしても、吸着パッド19(1)による吸着を再度やり直すことでそのような状態を解消できる。
【0044】
更に、コントローラ3は、1つの貼付け位置P(n)にシール材31を部分的に貼付けると、次の貼付け位置P(n+1)がある方向にシール材31を張力が生じる程度に引っ張ってから貼付け位置P(n+1)にハンドを21移動させる。これにより、シール材31の一部に皺が寄った状態で貼付けてしまうことを防止できる。
【0045】
本発明は上記した、又は図面に記載した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のような変形又は拡張が可能である。
ステップS13及びS14の処理は、必要に応じて行えば良い。
シール材31を取り出す際の一端側を、吸着パッド19(6)としても良い。この場合、シール材31の取り出しが完了した時点で、吸着パッド19(1)の軸心が垂直となっている。したがって、ハンド21の角度をそのまま維持した状態で、貼付け位置P(1)から直ちに貼付けを開始することができ、シール材31の吸着及び貼付け動作を効率的に行うことが可能になる。
【0046】
シール材を貼付け対象部材に、2次元又は1次元的に貼付けても良い。
吸着パッド19の数は、個別の設計に応じて適宜変更すれば良い。
また、ベース部材のパッド取付け部を、複数の吸着パッドの配置間隔を変更可能とするように構成しても良い。
また、ベース部材のパッド取付け部を部分的に、複数の吸着パッドがシール材の吸着位置に同時に対向する形状としても良い。すなわち、ベース部材の形状は下方に凸となるように湾曲したものに限らず、1つ以上の吸着パッドの吸着面を含む平面が複数となる形状であれば良く、例えば複数の直線部分を連結して略円弧状としても良い。
シール材は、車両のドア部分に用いるものに限らず、装飾的に使用されるものであっても良い。
【符号の説明】
【0047】
図面中、1はロボットシステム、2はロボット、11はフランジ、19は吸着パッド、21はハンド、22はベース部材、23はパッド取付け部、31はシール部材、32は貼付け対象部材を示す。