(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】アシスト付き台車
(51)【国際特許分類】
B62B 5/00 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
B62B5/00 J
(21)【出願番号】P 2020085520
(22)【出願日】2020-05-14
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】進藤 雄輔
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-105013(JP,A)
【文献】特開2015-101230(JP,A)
【文献】特開2018-43619(JP,A)
【文献】特開2010-120634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 1/00- 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重が載置される基台と、
前記基台の下面に設けられ、水平な軸心周りで床面上を転動可能な車輪と、
前記基台の一方側に設けられたハンドルと、
前記車輪に対して停車状態から人力によって駆動力を与えるアシスト手段とを備えた台車において、
前記アシスト手段は、前記基台又は前記ハンドルに設けられ、前記人力によって第1状態から第2状態を経て第3状態に変位可能な操作部と、
前記車輪とは独立して変位可能であり、前記車輪に対して当接及び離間可能に対面するパッドと、
前記操作部が前記第1状態であれば、前記パッドを前記車輪から離間させ、前記操作部が前記第2状態であれば、前記パッドを前記車輪に当接させ、前記操作部が前記第2状態から前記第3状態になれば、前記パッドを前記車輪に当接させるとともに、前記車輪が駆動されるように前記パッドを前記軸心周りで揺動させるトグル機構とを有し
、
前記アシスト手段は、前記停車状態から前記車輪を前進させる前進用アシスト手段と、前記停車状態から前記車輪を後退させる後退用アシスト手段とからなり、
前記前進用アシスト手段は、前記操作部の一つである前進用操作部と、前記トグル機構の一つである前進用トグル機構とを有し、
前記後退用アシスト手段は、前記操作部の一つである後退用操作部と、前記トグル機構の一つである後退用トグル機構とを有していることを特徴とするアシスト付き台車。
【請求項2】
前記前進用アシスト手段は、前記前進用操作部が前記第2状態から前記第3状態までの間、前記前進用トグル機構による前記車輪を駆動するための前記パッドの揺動を補助する前進用補助機構を有し、
前記後退用アシスト手段は、前記後退用操作部が前記第2状態から前記第3状態までの間、前記後退用トグル機構による前記車輪を駆動するための前記パッドの揺動を補助する後退用補助機構を有している請求項1記載のアシスト付き台車。
【請求項3】
荷重が載置される基台と、
前記基台の下面に設けられ、水平な軸心周りで床面上を転動可能な車輪と、
前記基台の一方側に設けられたハンドルと、
前記車輪に対して停車状態から人力によって駆動力を与えるアシスト手段とを備えた台車において、
前記アシスト手段は、前記基台又は前記ハンドルに設けられ、前記人力によって第1状態から第2状態を経て第3状態に変位可能な操作部と、
前記車輪とは独立して変位可能であり、前記車輪に対して当接及び離間可能に対面するパッドと、
前記操作部が前記第1状態であれば、前記パッドを前記車輪から離間させ、前記操作部が前記第2状態であれば、前記パッドを前記車輪に当接させ、前記操作部が前記第2状態から前記第3状態になれば、前記パッドを前記車輪に当接させるとともに、前記車輪が駆動されるように前記パッドを前記軸心周りで揺動させるトグル機構とを有し、
前記操作部は、前記基台に第1支点部周りで揺動可能に支持され、かつ第1力点部から前記第1支点部を経て第1作用点部まで延びる第1アームを有し、
前記トグル機構は、第2支点部、第2力点部及び第2作用点部を有して延び、前記第2力点部が前記第1作用点部に揺動可能に設けられ、前記第2支点部において前記軸心周りで揺動可能に設けられ、かつ前記第2力点部が前記第2支点部と前記第2作用点部とを直線で接続する仮想線から外れている第2アームと、
第3力点部から第3作用点部まで延び、かつ前記第3力点部が前記第2作用点部と揺動可能に設けられた第3アームと、
第4力点部から第4支点部を経て第4作用点部まで延び、前記第4力点部が前記第3作用点部と揺動可能に設けられ、前記第4支点部において前記軸心周りで揺動可能に設けられ、前記第4作用点部に前記パッドが前記車輪の周面に対向して固定され、かつ前記第4支点部が前記パッドと前記軸心との距離を変更可能である第4アームとを有している
ことを特徴とするアシスト付き台車。
【請求項4】
前記アシスト手段は、前記停車状態から前記車輪を前進させる前進用アシスト手段と、前記停車状態から前記車輪を後退させる後退用アシスト手段とからなり、
前記前進用アシスト手段は、前記操作部の一つである前進用操作部と、前記トグル機構の一つである前進用トグル機構とを有し、
前記後退用アシスト手段は、前記操作部の一つである後退用操作部と、前記トグル機構の一つである後退用トグル機構とを有している請求項
3記載のアシスト付き台車。
【請求項5】
前記操作部は、前記第1力点部から前記第1支点部までの距離が前記第1作用点部から前記第1支点部までの距離よりも長い請求項
3又は4記載のアシスト付き台車。
【請求項6】
前記操作部には、前記人力によって変位する動滑車が設けられている請求項
3乃至5のいずれか1項記載のアシスト付き台車。
【請求項7】
前記アシスト手段は、前記操作部が前記第2状態から前記第3状態までの間、前記トグル機構による前記車輪を駆動するための前記パッドの揺動を補助する補助機構を有している請求項
3乃至6のいずれか1項記載のアシスト付き台車。
【請求項8】
前記補助機構は、前記基台に設けられたカムと、
前記第4アームに設けられ、前記カムに案内されるカムフォロワとを有し、
前記カム及び前記カムフォロワは、前記操作部が前記第2状態から前記第3状態までの間、前記パッドを前記人力よりも増力して前記車輪に当接させつつ、前記パッドを前記軸心周りに揺動させる請求項
7記載のアシスト付き台車。
【請求項9】
前記カム及び前記カムフォロワの少なくとも一方は、前記カムに対する前記カムフォロワの移動方向が逆になることを許容するように揺動可能に支持されている請求項
8記載のアシスト付き台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアシスト付き台車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来のアシスト付き台車が開示されている。このアシスト付き台車は、基台と、4個の車輪と、ハンドルと、アシスト手段とを備えている。基台は、荷重が載置される。各車輪は、基台の下面に設けられ、水平な軸心周りで床面上を転動可能である。ハンドルは、基台の一方側に設けられている。アシスト手段は、少なくとも一つの車輪に対して停車状態から人力によって駆動力を与える。
【0003】
より詳細には、特許文献1のアシスト付き台車では、車輪が左右一対の前輪と、左右一対の後輪とからなる。基台の下面の前方には前輪を支持する前部キャスタが設けられ、基台の下面の後方には後輪を支持する後部キャスタが設けられている。そして、アシスト手段は、足踏み部支持板と、作動板と、伝達板とを有している。足踏み部支持板は、先端側が後部キャスタに対し第1回動軸部を中心に回動可能に支持される一方、後端側にペダルが設けられている。作動板は、先端側に後輪に係合して後輪を回転させる係合部が設けられている一方、後端側が後部キャスタに対し第2回動軸部を中心に回転可能に支持されている。伝達板は、上端側が足踏み部支持板に第3回動軸部を介し回動可能に取り付けられる一方、下端側が作動板に第4回動軸部を介し回動可能に取り付けられている。この伝達板は、足踏み部支持板の上下動を作動板に伝達して作動板を第2回動軸部を中心に回動させ、その先端側に設けられた係合部が後輪に係合して回転させるように足踏み部支持板の足踏み部を作業者が踏んだ際の踏み力を作動板に伝達する。
【0004】
このアシスト付き台車では、停車状態から前進させようとする場合、ユーザは足踏み部支持板を自己の足で踏む。これにより、その際の踏み力が伝達板を介して作動板に伝達され、作動板の係合部が後輪に係合してその踏み力により後輪を回転させ、台車を前方へ走行させることが可能である。このため、このアシスト付き台車では、モータやバッテリ等を搭載することなく、人力によって停車状態からの前進がアシストされ、速やかな前進起動を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のアシスト付き台車では、停車状態から例えば前進させようとする場合、基台上の荷重が大きければ、その分だけユーザが大きな力でペダルを踏みこまなければならず、ユーザの負荷が過大である。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、停車状態から起動させようとする場合におけるユーザの負荷を軽減可能なアシスト付き台車を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のアシスト付き台車は、荷重が載置される基台と、
前記基台の下面に設けられ、水平な軸心周りで床面上を転動可能な車輪と、
前記基台の一方側に設けられたハンドルと、
前記車輪に対して停車状態から人力によって駆動力を与えるアシスト手段とを備えた台車において、
前記アシスト手段は、前記基台又は前記ハンドルに設けられ、前記人力によって第1状態から第2状態を経て第3状態に変位可能な操作部と、
前記車輪とは独立して変位可能であり、前記車輪に対して当接及び離間可能に対面するパッドと、
前記操作部が前記第1状態であれば、前記パッドを前記車輪から離間させ、前記操作部が前記第2状態であれば、前記パッドを前記車輪に当接させ、前記操作部が前記第2状態から前記第3状態になれば、前記パッドを前記車輪に当接させるとともに、前記車輪が駆動されるように前記パッドを前記軸心周りで揺動させるトグル機構とを有し、
前記アシスト手段は、前記停車状態から前記車輪を前進させる前進用アシスト手段と、前記停車状態から前記車輪を後退させる後退用アシスト手段とからなり、
前記前進用アシスト手段は、前記操作部の一つである前進用操作部と、前記トグル機構の一つである前進用トグル機構とを有し、
前記後退用アシスト手段は、前記操作部の一つである後退用操作部と、前記トグル機構の一つである後退用トグル機構とを有していることを特徴とする。
【0009】
本発明のアシスト付き台車では、操作部が第1状態であれば、トグル機構がパッドを車輪から離間させているため、トグル機構がアシスト付き台車の走行を阻害しない。また、トグル機構は、操作部が第2状態であれば、パッドを車輪に当接させ、操作部が第2状態から第3状態になれば、パッドを車輪に当接させるとともに、車輪が駆動されるようにパッドを軸心周りで揺動させる。この際、トグル機構によって人力が軽減される。このため、このアシスト付き台車では、軽減された人力によって停車状態からの走行がアシストされ、速やかな起動を実現することができる。
【0010】
したがって、本発明のアシスト付き台車は、停車状態から起動させようとする場合におけるユーザの負荷を軽減することが可能である。
【0011】
アシスト手段は、停車状態から車輪を前進させる前進用アシスト手段と、停車状態から車輪を後退させる後退用アシスト手段とからなる。前進用アシスト手段は、操作部の一つである前進用操作部と、トグル機構の一つである前進用トグル機構とを有している。後退用アシスト手段は、操作部の一つである後退用操作部と、トグル機構の一つである後退用トグル機構とを有している。このため、停車状態からの前進と、停車状態からの後退とにおいて、軽減された人力によってアシストが行われる。
【0012】
アシスト手段は、操作部が第2状態から第3状態までの間、トグル機構による車輪を駆動するためのパッドの揺動を補助する補助機構を有していることが好ましい。この場合、トグル機構のみによって車輪が駆動されるようにパッドを軸心周りで揺動させようとする場合におけるトグル機構の大型化を回避し、アシスト付き台車の小型化を実現できる。
【0013】
また、本発明のアシスト付き台車は、荷重が載置される基台と、
前記基台の下面に設けられ、水平な軸心周りで床面上を転動可能な車輪と、
前記基台の一方側に設けられたハンドルと、
前記車輪に対して停車状態から人力によって駆動力を与えるアシスト手段とを備えた台車において、
前記アシスト手段は、前記基台又は前記ハンドルに設けられ、前記人力によって第1状態から第2状態を経て第3状態に変位可能な操作部と、
前記車輪とは独立して変位可能であり、前記車輪に対して当接及び離間可能に対面するパッドと、
前記操作部が前記第1状態であれば、前記パッドを前記車輪から離間させ、前記操作部が前記第2状態であれば、前記パッドを前記車輪に当接させ、前記操作部が前記第2状態から前記第3状態になれば、前記パッドを前記車輪に当接させるとともに、前記車輪が駆動されるように前記パッドを前記軸心周りで揺動させるトグル機構とを有し、
前記操作部は、前記基台に第1支点部周りで揺動可能に支持され、かつ第1力点部から前記第1支点部を経て第1作用点部まで延びる第1アームを有し、
前記トグル機構は、第2支点部、第2力点部及び第2作用点部を有して延び、前記第2力点部が前記第1作用点部に揺動可能に設けられ、前記第2支点部において前記軸心周りで揺動可能に設けられ、かつ前記第2力点部が前記第2支点部と前記第2作用点部とを直線で接続する仮想線から外れている第2アームと、
第3力点部から第3作用点部まで延び、かつ前記第3力点部が前記第2作用点部と揺動可能に設けられた第3アームと、
第4力点部から第4支点部を経て第4作用点部まで延び、前記第4力点部が前記第3作用点部と揺動可能に設けられ、前記第4支点部において前記軸心周りで揺動可能に設けられ、前記第4作用点部に前記パッドが前記車輪の周面に対向して固定され、かつ前記第4支点部が前記パッドと前記軸心との距離を変更可能である第4アームとを有していることを特徴とする。このため、トグル機構を簡易に構成できる。
【0014】
操作部は、第1力点部から第1支点部までの距離が第1作用点部から第1支点部までの距離よりも長いことが好ましい。この場合、操作部にてこの原理を作用させることが可能になり、より人力を低減することができる。
【0015】
また、操作部には、人力によって変位する動滑車が設けられていることも好ましい。この場合も、操作部に動滑車の原理を作用させることが可能になり、より人力を低減することができる。
【0016】
補助機構は、基台に設けられたカムと、第4アームに設けられ、カムに案内されるカムフォロワとを有し得る。カム及びカムフォロワは、操作部が第2状態から第3状態までの間、パッドを人力よりも増力して車輪に当接させつつ、パッドを軸心周りに揺動させる。この場合、補助機構を簡易に構成できる。
【0017】
カム及びカムフォロワの少なくとも一方は、カムに対するカムフォロワの移動方向が逆になることを許容するように揺動可能に支持されていることが好ましい。この場合、二度目以降のアシストも可能になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のアシスト付き台車は、停車状態から起動させようとする場合におけるユーザの負荷を軽減可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施例のアシスト付き台車の平面図である。
【
図2】
図2は、実施例のアシスト付き台車の一部断面図である。
【
図3】
図3は、実施例のアシスト付き台車に係り、車輪及び前進用アシスト手段の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、実施例のアシスト付き台車に係り、車輪及び後退用アシスト手段の分解斜視図である。
【
図5】
図5は、実施例のアシスト付き台車に係り、前進用第2アームの平面図である。
【
図6】
図6は、実施例のアシスト付き台車に係り、後退用第2アームの平面図である。
【
図7】
図7は、実施例のアシスト付き台車に係り、車輪及び前進用アシスト手段の要部右側面図である。
【
図8】
図8は、実施例のアシスト付き台車に係り、車輪及び前進用アシスト手段の右側面図である。
【
図9】
図9は、実施例のアシスト付き台車に係り、車輪及び後退用アシスト手段の要部左側面図である。
【
図10】
図10は、実施例のアシスト付き台車に係り、車輪及び後退用アシスト手段の左側面図である。
【
図11】
図11は、実施例のアシスト付き台車に係り、後退用アシスト手段における複数の滑車の右側面図である。
【
図12】
図12は、実施例のアシスト付き台車に係り、前進用アシスト手段において、ペダルが第1状態であるときの車輪及び前進用トグル機構を簡略化して示す右側面図である。
【
図13】
図13は、実施例のアシスト付き台車に係り、前進用アシスト手段において、ペダルが第2状態であるときの車輪及び前進用トグル機構を簡略化して示す右側面図である。
【
図14】
図14は、実施例のアシスト付き台車に係り、前進用アシスト手段において、ペダルが第3状態の初期であるときの車輪及び前進用トグル機構を簡略化して示す右側面図である。
【
図15】
図15は、実施例のアシスト付き台車に係り、前進用アシスト手段において、ペダルが第3状態の終期であるときの車輪及び前進用トグル機構を簡略化して示す右側面図である。
【
図16】
図16は、実施例のアシスト付き台車に係り、前進用アシスト手段において、ペダルが第4状態であるときの車輪及び前進用トグル機構を簡略化して示す右側面図である。
【
図17】
図17は、実施例のアシスト付き台車に係り、前進用アシスト手段において、ペダルが第1状態に戻ったときの車輪及び前進用トグル機構を簡略化して示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。実施例のアシスト付き台車は、
図1及び
図2に示すように、基台1と、4個の車輪3a~3dと、ハンドル5と、前進用アシスト手段7と、後退用アシスト手段9とを備えている。なお、
図2、
図8及び
図10は車輪3bの図示を省略し、
図10は車輪3b、3c、3dの図示を省略している。
【0021】
基台1は水平に延びる平坦な板状であり、基台1上には荷重が載置される。基台1の下面の後方右側にはブラケット11によって車輪3aが設けられ、車輪3aはブラケット11によって水平な軸心O周りで床面FL上を転動可能となっている。基台1の下面の後方左側、基台1の下面の前方右側及び基台1の下面の前方左側には図示しないブラケットによって各車輪3b、3c、3dが設けられている。各車輪3b、3c、3dはブラケットによってそれぞれ水平な軸心周りで床面FL上を転動可能である。また、車輪3b、3cは、ブラケットとともに、基台1に対して上下に延びる旋回軸心周りで旋回可能である。車輪3b、3cは、ユーザが舵を取り易く、かつ前進用アシスト手段7及び後退用アシスト手段9とは干渉しないように、ハンドル5の近くに配置されている。
【0022】
基台1の後端には一対のフレーム13、15が固定されている。各フレーム13、15は、
図11に示すように、基台1の後端から上方に垂直に延びる垂直部14bと、垂直部14bの上端から後方に向かって水平に延びる上方水平部14cとからなる。ハンドル5は、フレーム13、15の両上方水平部14cの後端に固定されている。
【0023】
図1及び
図2に示すように、前進用アシスト手段7及び後退用アシスト手段9は車輪3aに設けられている。車輪3aを支持するブラケット11は、
図3及び
図4に示すように、天板17と、右側壁19と、左側壁21と、前進用取付具23と、後退用取付具25とを有している。
【0024】
図4に示すように、天板17は、左右の長さが前後の長さよりも長い長方形状の平板である。天板17の右側には2個のねじ穴17aが垂直に貫設され、天板17の左側には2個のねじ穴17bが垂直に貫設され、天板17の中央には4個のねじ穴17cが垂直に貫設されている。各ねじ穴17a~17cは前後に整列している。
【0025】
図3に示すように、右側壁19の上面には2個のねじ穴19aが垂直に貫設されている。また、右側壁19の下端には軸孔19bが水平に貫設されている。
図4に示すように、左側壁21の上面にも2個のねじ穴21aが垂直に貫設されている。また、左側壁21の下端にも軸孔21bが水平に貫設されている。右側壁19と左側壁21とは面対称となっている。
【0026】
前進用取付具23は、
図7及び
図9に示すように、上壁23aと、車輪3aの前方に垂直に延びる前壁23bとを有している。上壁23aには、
図4に示すように、2個のねじ穴23cが垂直に貫設されている。後退用取付具25は、
図7及び
図9に示すように、上壁25aと、車輪3aの後方に垂直に延びる後壁25bとを有している。上壁25aには、
図4に示すように、2個のねじ穴25cが垂直に貫設されている。
【0027】
図3及び
図4に示すように、ブラケット11は、天板17の下面の右端に右側壁19の上面が当接され、ねじ穴17aとねじ穴19aとが整合され、ねじ穴17a、19aにねじ27が螺合される。また、ブラケット11は、天板17の下面の左端に左側壁21の上面が当接され、ねじ穴17bとねじ穴21aとが整合され、ねじ穴17b、21aにねじ27が螺合される。前進用取付具23及び後退用取付具25はブラケット11とともに基台1の下面にねじ27によって固定されている。
【0028】
車輪3aは、
図7及び
図9に示すように、ホイール29と、タイヤ31と、図示しない軸受装置と、回転軸33とからなる。ホイール29の外周面にタイヤ31が装着されている。タイヤ31はゴム製である。ホイール29と回転軸33との間には軸受装置が設けられている。ホイール29、軸受装置及び回転軸33は軸心Oと同軸をなしている。
【0029】
図3に示すように、前進用アシスト手段7は、前進用第1~4アーム35、37、39、41と、前進用パッド43とを有している。前進用第1~3アーム35、37、39はブラケット11の右側壁19より外側に設けられている。
【0030】
前進用第1アーム35は、
図8及び
図10に示すように、後端の第1力点部35aから第1支点部35bを経て前端の第1作用点部35cまで直線状に延びている。第1支点部35bには、
図3に示すように、軸孔35dが水平に貫設されている。軸孔35dには第1ピン55が圧入されている。
図8及び
図10に示すように、基台1の下面には下方に延びる一対の第1軸支部材57が固定されており、両第1軸支部材57の下方には第1軸心P1を規定する軸孔57aが水平に貫設されている。第1ピン55は、両軸孔57aに挿通され、
図3に示すように、右端及び左端がサークリップ59a、59bによって抜け止めされている。こうして、前進用第1アーム35は第1軸心P1周りで基台1に揺動可能に支持されている。
【0031】
第1力点部35aにはユーザが足で踏む込み可能なペダル62が固定されている。第1状態では、ペダル62が上端に位置している。ペダル62は基台1の後端から一部が突出している。第1作用点部35cには、前進用第1アーム35の延びる方向に長い長孔35eが水平に貫設されている。
図8に示すように、ペダル62の中心から第1軸心P1までの距離は、長孔35eの後端から第1軸心P1までの距離よりも長く設定されている。前進用第1アーム35、ペダル62等が
前進用操作部H1を構成している。
【0032】
図5に示すように、前進用第2アーム37は、後端の第2力点部37aから第2作用点部37bを経て前端の第2支点部37cまで延びている。第2力点部37aには第2軸心P2を規定する軸孔37dが水平に貫設され、第2作用点部37bには第3軸心P3を規定する軸孔37eが水平に貫設され、第2支点部37cには軸心Oを規定する軸孔37fが水平に貫設されている。
【0033】
図7に示すように、軸孔37dにはピン61が挿通され、ピン61は前進用第1アーム35の長孔35eに挿通されている。ピン61は、
図3に示すように、右端及び左端がサークリップ59c、59dによって抜け止めされている。こうして、前進用第2アーム37は、
図7に示すように、第2力点部37aが第2軸心P2周りで前進用第1アーム35の長孔35eに揺動可能に設けられている。
【0034】
軸孔37eにはピン63が挿通されている。軸孔37fには回転軸33が挿通されている。
図3に示すように、回転軸33の右端にはリング65が圧入されている。
図5に示すように、前進用第2アーム37は、第2軸心P2が軸心Oと第3軸心P3とを直線で接続する仮想線L1から外れることにより、屈曲している。
【0035】
図7に示すように、前進用第3アーム39は、後端の第3力点部39aから前端の第3作用点部39bまで短く直線状に延びている。第3力点部39aには第4軸心P4を規定する軸孔39cが水平に貫設され、第3作用点部39bには第3軸心P3を規定する軸孔39dが水平に貫設されている。軸孔39dには、前進用第2アーム37の軸孔37eとともにピン63が挿通されている。ピン63は、
図3に示すように、右端及び左端がサークリップ59e、59fによって抜け止めされている。こうして、前進用第3アーム39は、
図7に示すように、第3作用点部39bが第3軸心P3周りで前進用第2アーム37の軸孔37eに揺動可能に設けられている。軸孔39cにはピン67が挿通されている。
【0036】
図3に示すように、前進用第4アーム41は、ブラケット11の右側壁19と車輪3aとの間に設けられている。前進用第4アーム41は、
図7に示すように、後端の第4力点部41aから第4支点部41bを経て前端の第4作用点部41cまで延びている。第4力点部41aには第4軸心P4を規定する軸孔41dが水平に貫設され、第4支点部41bには前進用第4アーム41の延びる方向に長い長孔41eが水平に貫設されている。長孔41eには、右側壁19の軸孔19b及び前進用第2アーム37の軸孔37fとともに、回転軸33が挿通されている。軸孔41dには、前進用第3アーム39の軸孔39cとともにピン67が挿通されている。ピン67は、
図3に示すように、右端及び左端がサークリップ59g、59hによって抜け止めされている。
【0037】
第4作用点部41cには前進用パッド43がタイヤ31の周面に対向して固定されている。前進用パッド43はゴム製である。長孔41eには回転軸33が挿通されているため、長孔41eはパッド43と軸心Oとの距離を変更可能である。
【0038】
また、
図9に示すように、第4作用点部41cには第5軸心P5を規定する軸孔41fが水平に貫設されている。軸孔41fには、第5軸心P5周りで転動可能なカムフォロワ69が設けられている。前進用第2~4アーム37、39、41、ピン61、63、67、回転軸33等が前進用トグル機構T1を構成している。
【0039】
図4に示すように、後退用アシスト手段9は、後退用第1~4アーム45、47、49、51と、後退用パッド53とを有している。後退用第1~3アーム45、47、49はブラケット11の左側壁21より外側に設けられている。
【0040】
後退用第1アーム45は、
図8及び
図10に示すように、後端の第1力点部45aから第1支点部45bを経て前端の第1作用点部45cまで直線状に延びている。第1支点部45bには、
図4に示すように、軸孔45dが水平に貫設されている。軸孔45dには第2ピン71が圧入されている。
図8及び
図10に示すように、基台1の下面には下方に延びる一対の第2軸支部材73が固定されており、両第2軸支部材73の下方には第1軸心Q1を規定する軸孔73aが水平に貫設されている。第2ピン71は、
図4に示すように、両軸孔73aに挿通され、右端及び左端がサークリップ59i、59jによって抜け止めされている。こうして、後退用第1アーム45は第1軸心Q1周りで基台1に揺動可能に支持されている。
【0041】
第1力点部45aには第1滑車軸心R1を規定する軸孔45eが水平に貫設されている。軸孔45eには、第1滑車軸心R1周りで回転可能な動滑車75が設けられている。第1作用点部45cには、後退用第1アーム45の延びる方向に長い長孔45fが水平に貫設されている。
図10に示すように、第1滑車軸心R1から第1軸心Q1までの距離は、長孔45fの後端から第1軸心Q1までの距離よりも長く設定されている。
【0042】
図6に示すように、後退用第2アーム47は、後端の第2力点部47aから第2支点部47bを経て前端の第2作用点部47cまで延びている。第2力点部47aには第2軸心Q2を規定する軸孔47dが水平に貫設され、第2支点部47bには軸心Oを規定する軸孔47eが水平に貫設され、第2作用点部47cには第3軸心Q3を規定する軸孔47fが水平に貫設されている。
【0043】
図9に示すように、軸孔47dにはピン77が挿通され、ピン77は後退用第1アーム45の長孔45fに挿通されている。ピン77は、
図4に示すように、右端及び左端がサークリップ59k、59lによって抜け止めされている。こうして、後退用第2アーム47は、第2力点部47aが第2軸心Q2周りで後退用第1アーム45の長孔45fに揺動可能に設けられている。
【0044】
軸孔47eには回転軸33が挿通されている。軸孔47fにはピン79が挿通されている。
図4に示すように、回転軸33の左端にはリング81が圧入されている。
図6に示すように、後退用第2アーム47は、第2軸心Q2が軸心Oと第3軸心Q3とを直線で接続する仮想線L2から外れることにより、屈曲している。
【0045】
図9に示すように、後退用第3アーム49は、後端の第3力点部49aから前端の第3作用点部49bまで短く直線状に延びている。第3力点部49aには第3軸心Q3を規定する軸孔49cが水平に貫設され、第3作用点部49bには第4軸心Q4を規定する軸孔49dが水平に貫設されている。軸孔49cには、後退用第2アーム47の軸孔47fとともにピン79が挿通されている。ピン79は、
図4に示すように、右端及び左端がサークリップ59m、59nによって抜け止めされている。こうして、後退用第3アーム49は、
図9に示すように、第3力点部49aが第3軸心Q3周りで後退用第2アーム47の軸孔47fに揺動可能に設けられている。軸孔49dにはピン82が挿通されている。
【0046】
図4に示すように、後退用第4アーム51は、ブラケット11の左側壁21と車輪3aとの間に設けられている。後退用第4アーム51は、
図9に示すように、後端の第4作用点部51aから第4支点部51bを経て前端の第4力点部51cまで延びている。第4力点部51cには第4軸心Q4を規定する軸孔51dが水平に貫設され、第4支点部51bには後退用第4アーム51の延びる方向に長い長孔51eが水平に貫設されている。長孔51eには、左側壁21の軸孔21b及び後退用第2アーム47の軸孔47eとともに、回転軸33が挿通されている。軸孔51dには、後退用第3アーム49の軸孔49dとともにピン82が挿通されている。ピン82は、
図4に示すように、右端及び左端がサークリップ59o、59pによって抜け止めされている。
【0047】
第4作用点部51aには後退用パッド53がタイヤ31の周面に対向して固定されている。後退用パッド53はゴム製である。長孔51eには回転軸33が挿通されているため、長孔51eはパッド53と軸心Oとの距離を変更可能である。
【0048】
また、
図7に示すように、第4作用点部51aには第5軸心Q5を規定する軸孔51fが水平に貫設されている。軸孔51fには、第5軸心Q5周りで転動可能なカムフォロワ83が設けられている。後退用第2~4アーム47、49、51、ピン77、79、82、回転軸33等が後退用トグル機構T2を構成している。
【0049】
図2及び
図11に示すように、基台1の後方の右側面には第1定滑車85が設けられ、垂直部14bの下端の右側面には第2定滑車87が設けられ、上方水平部14cには第3定滑車89が設けられている。第1定滑車85は第2滑車軸心R2周りで回転可能であり、第2定滑車87は第3滑車軸心R3周りで回転可能であり、第3定滑車89は第4滑車軸心R4周りで回転可能である。ハンドル5の下方にはパイプ91が固定され、パイプ91にはレバー93が脱着可能に設けられている。
【0050】
基台1の下面の右側後方にはフック部95が固定され、フック部95とレバー93とはワイヤ97によって接続されている。ワイヤ97は、フック部95から動滑車75、第1~3定滑車85、87、89に巻き掛けられ、パイプ91を通ってレバー93に繋がってる。第1状態では、動滑車75が下端に位置し、レバー93がパイプ91に固定されている。後退用第1アーム45、動滑車75、第1~3定滑車85、87、89、パイプ91、レバー93、ワイヤ97等が後退用操作部H2を構成している。
【0051】
図7及び
図9に示すように、前進用取付具23の前壁23bにはカム23dが水平に延びる第1揺動軸心S1周りで揺動可能に設けられている。前進用第4アーム41のカムフォロワ69は第2状態でカム23dに当接するようになっている。カム23d、カムフォロワ69等が前進用補助機構A1を構成している。
【0052】
後退用取付具25の後壁25bにもカム25dが水平に延びる第2揺動軸心S2周りで揺動可能に設けられている。後退用第4アーム51のカムフォロワ83は第2状態でカム25dに当接するようになっている。カム25d、カムフォロワ83等が後退用補助機構A2を構成している。
【0053】
以上のように構成されたアシスト付き台車では、ペダル62が上端に位置する第1状態にあれば、
図8に示すように、前進用第1アーム35は前進用第2アーム37の第2力点部37aを下端に位置させているため、前進用トグル機構T1は
図12に示す状態になっている。この状態では、前進用第3アーム39は前進用第4アーム41を軸心Oに向かって付勢しており、前進用パッド43と軸心Oとの距離が大きく、前進用パッド43はタイヤ31の周面から離間している。このため、前進用トグル機構T1はアシスト付き台車の走行を阻害しない。
【0054】
また、
図11に示すように、レバー93がパイプ91に固定された第1状態にあれば、
図10に示すように、後退用第1アーム45は後退用第2アーム47の第2力点部47aを上端に位置させているため、
図9に示すように、後退用トグル機構T2は
図12と同様の状態になっている。この状態では、後退用第3アーム49は後退用第4アーム51を軸心Oに向かって付勢しており、後退用パッド53と軸心Oとの距離が大きく、後退用パッド53はタイヤ31の周面から離間している。このため、後退用トグル機構T2はアシスト付き台車の走行を阻害しない。
【0055】
ユーザがアシスト付き台車を停車させ、再び前進させようとする場合、ユーザは自己の足でペダル62を踏む。これにより、
図8に示すように、その際の踏み力が前進用第1アーム35に伝達され、前進用第1アーム35は第1軸心P1周りで揺動し、前進用第2アーム37の第2力点部37aを上方に持ち上げる。この際、てこの原理により、踏み力以上の力が第2軸心P2に作用する。また、
図5に示すように、第2軸心P2に力Fが作用すると、前進用トグル機構T1によって前進用第3アーム39が前進用第4アーム41を力F’によって軸心Oに向かって引く。このため、前進用トグル機構T1では、
図13に示すように、前進用パッド43と軸心Oとの距離が短縮され、前進用パッド43がタイヤ31の周面に当接する。また、前進用第3アーム39は前進用第4アーム41を揺動させ、前進用第4アーム41のカムフォロワ69がカム23dに当接する。これにより、ペダル62は第2状態となる。
【0056】
ユーザがペダル62をさらに踏み込むと、ペダル62は第3状態の初期となり、前進用トグル機構T1では、
図14に示すように、前進用第4アーム41がさらに揺動する。この間、カムフォロワ69がカム23dの案内面を転動する。このため、前進用第4アーム41は軸心Oに向かって押し付けられ、前進用パッド43と軸心Oとの距離がより短縮され、前進用パッド43がより強くタイヤ31の周面に当接される。こうして、ペダル62は第3状態の終期となり、前進用トグル機構T1では、
図15に示すように、カムフォロワ69がカム23dの案内面を抜ける。このため、前進用補助機構A1が前進用トグル機構T1による車輪3aを駆動するための前進用パッド43の揺動を補助する。こうして、このアシスト付き台車では、軽減された人力によって停車状態からの前進がアシストされ、速やかな前進起動を実現することができる。また、前進用トグル機構T1のみによって車輪3aが駆動されるように前進用パッド43を軸心O周りで揺動させようとする場合における前進用トグル機構T1の大型化を回避し、アシスト付き台車の小型化を実現している。
【0057】
ユーザがペダル62の踏み込みをやめると、ペダルは第4状態となり、前進用トグル機構T1では、
図16に示すように、前進用第3アーム39が前進用第4アーム41を軸心Oに向かって付勢し、前進用パッド43と軸心Oとの距離が大きくされ、前進用パッド43がタイヤ31の周面から離間する。このため、前進用トグル機構T1はアシスト付き台車の走行を阻害しない。
【0058】
ペダル62が第1状態に戻ろうとする場合、前進用トグル機構T1では、
図17に示すように、カム23dが第1揺動軸心S1周りで揺動し、カムフォロア69が
図12に示す位置まで移動することを許容する。こうして、二度目以降の停車後の前進時のアシストも可能になる。
【0059】
ユーザがアシスト付き台車を停車させ、再び後退させようとする場合、
図11に示すように、ユーザは自己の手でレバー93を手前に引く。これにより、その際の引っ張り力がワイヤ97によって第3~1定滑車89、87、85に伝達され、動滑車75が上方に移動する。このため、
図10に示すように、後退用第1アーム45は第1軸心Q1周りで揺動し、後退用第2アーム47の第2力点部47aを下方に引き下げる。この際、動滑車75によって足よりも弱い手の力を低減することができる。また、てこの原理により、引っ張り力以上の力が第2軸心Q2に作用する。また、
図6に示すように、第2軸心Q2に力Fが作用すると、後退用トグル機構T2によって後退用第3アーム49が後退用第4アーム51を力F’によって軸心Oに向かって押す。このため、後退用トグル機構T2では、
図13と同様、後退用パッド53と軸心Oとの距離が短縮され、後退用パッド53がタイヤ31の周面に当接する。また、後退用第3アーム49は後退用第4アーム51を揺動させ、後退用第4アーム51のカムフォロワ83がカム25dに当接する。これにより、レバー93は第2状態となる。
【0060】
ユーザがレバー93をさらに引くと、レバー93は第3状態の初期となり、後退用トグル機構T2では、
図14と同様、後退用第4アーム51がさらに揺動する。この間、カムフォロワ83がカム25dの案内面を転動する。このため、後退用第4アーム51は軸心Oに向かって押し付けられ、後退用パッド53と軸心Oとの距離がより短縮され、後退用パッド53がより強くタイヤ31の周面に当接される。こうして、レバー93は第3状態の終期となり、後退用トグル機構T2では、
図15と同様、カムフォロワ83がカム25dの案内面を抜ける。このため、後退用補助機構A2が後退用トグル機構T2による車輪3aを駆動するための後退用パッド53の揺動を補助する。こうして、このアシスト付き台車では、軽減された人力によって停車状態からの後退もアシストされ、速やかな後退起動を実現することができる。また、後退用トグル機構T2のみによって車輪3aが駆動されるように後退用パッド53を軸心O周りで揺動させようとする場合における後退用トグル機構T2の大型化を回避し、アシスト付き台車の小型化を実現している。
【0061】
ユーザがレバー93の引き込みをやめると、レバー93は第4状態となり、後退用トグル機構T2では、
図16と同様、後退用第3アーム49が後退用第4アーム51を軸心Oから離れるように付勢し、後退用パッド53と軸心Oとの距離が大きくされ、後退用パッド53がタイヤ31の周面から離間する。このため、後退用トグル機構T2はアシスト付き台車の走行を阻害しない。
【0062】
レバー93が第1状態に戻ろうとする場合、後退用トグル機構T2では、
図17と同様、カム25dが第2揺動軸心S2周りで揺動し、カムフォロワ83が
図12と同様の位置まで移動することを許容する。こうして、二度目以降の停車後の後退時のアシストも可能になる。
【0063】
したがって、このアシスト付き台車は、停車状態から前進起動又は後退起動をさせようとする場合におけるユーザの負荷を軽減することが可能である。また、このアシスト付き台車は、このように停車状態から前進又は後退させようとする場合におけるユーザの初動負荷を軽減できることから、例えば無人搬送車によって牽引し、牽引後にユーザがこのアシスト付き台車を牽引されてきた方向に押し返す場合や、前後式無人搬送車がこのこのアシスト付き台車を前進した後、後進する場合に用いられても好適である。
【0064】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0065】
上記実施例では、基台1の下面後方の右側の車輪3aに対して前進用アシスト手段7及び後退用アシスト手段9を設けたが、他の車輪3b~3dのいずれかに前進用アシスト手段7及び後退用アシスト手段9を設けてもよく、車輪3a~3dの2以上に前進用アシスト手段7及び後退用アシスト手段9を設けてもよい。また、車輪3a~3dのいずれか又はいくつかに前進用アシスト手段7及び後退用アシスト手段9の一方のみを設けてもよい。
【0066】
また、トグル機構は上記前進用トグル機構T1及び後退用トグル機構T2以外の構成であってもよく、補助機構は上記前進用補助機構A1及び後退用補助機構A2以外の構成であってもよい。また、動滑車は一つに限定されず、2以上の動滑車を採用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、人によって牽引される場合ばかりでなく、無人搬送車や前後式無人搬送車で牽引される台車等に利用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…基台
O…軸心
3a~3d…車輪
5…ハンドル
7、9…アシスト手段(7…前進用アシスト手段、9…後退用アシスト手段)
H、62、93…操作部(H1…前進用操作部、H2…後退用操作部、62…ペダル、93…レバー)
43、53…パッド(43…前進用パッド、53…後退用パッド)
T1、T2…トグル機構(T1…前進用トグル機構、T2…後退用トグル機構)
A1、A2…補助機構(A1…前進用補助機構、A2…後退用補助機構)
35b、45b…第1支点部
35a、45a…第1力点部
35c、45c…第1作用点部
35、45…第1アーム(35…前進用第1アーム、45…後退用第1アーム)
37c、47b…第2支点部
37a、47a…第2力点部
37b、47c…第2作用点部
L1、L2…仮想線
37、47…第2アーム(37…前進用第2アーム、47…後退用第2アーム)
39a、49a…第3力点部
39b、49b…第3作用点部
39、49…第3アーム(39…前進用第3アーム、49…後退用第3アーム)
41a、51c…第4力点部
41b、51b…第4支点部
41c、51a…第4作用点部
41、51…第4アーム(41…前進用第4アーム、51…後退用第4アーム)
75…動滑車
23d、25d…カム
69、83…カムフォロワ