IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-光ファイバの冷却装置 図1
  • 特許-光ファイバの冷却装置 図2
  • 特許-光ファイバの冷却装置 図3
  • 特許-光ファイバの冷却装置 図4
  • 特許-光ファイバの冷却装置 図5
  • 特許-光ファイバの冷却装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】光ファイバの冷却装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/027 20060101AFI20240123BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
C03B37/027 Z
G02B6/02 356A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020089632
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021183552
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】田賀 悠記
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智哉
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-071505(JP,A)
【文献】特開2004-352583(JP,A)
【文献】特開平08-259254(JP,A)
【文献】特開平10-259036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/00-37/16,
G02B 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを通過させるファイバ通路と、前記光ファイバを冷却するための冷媒が流れる冷媒流路とを有する冷却筒を備えており、
前記光ファイバが通過する方向における前記冷却筒の長さは2m以上であり、
前記冷媒流路は、前記光ファイバが通過する方向に前記冷却筒を貫通しており、
前記冷却筒において少なくとも冷媒流路を形成する壁面およびその周辺部分は、物性が均一な単一部材から形成されている、光ファイバの冷却装置。
【請求項2】
前記冷媒流路は、前記光ファイバが通過する方向に直交する断面において真円以外の形状を有している、請求項に記載の光ファイバの冷却装置。
【請求項3】
前記冷媒流路を形成する壁面には、前記光ファイバが通過する方向に延びるフィンが形成されている、請求項1または請求項2に記載の光ファイバの冷却装置。
【請求項4】
前記冷媒流路は、前記光ファイバが通過する方向に直交する断面において多角形の形状を有しており、前記ファイバ通路に対向する前記多角形の少なくとも一つの辺は前記ファイバ通路の形状に沿うように形成されている、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の光ファイバの冷却装置。
【請求項5】
前記ファイバ通路は、前記冷却筒の中央に形成されて前記光ファイバを通過させる第一通路と、前記第一通路から外側に延びるように形成された前記第一通路に連通する第二通路を有し、
前記ファイバ通路の前記第一通路および第二通路に対向する前記冷媒流路の前記多角形の少なくとも二つの辺は前記第一通路および第二通路の形状に沿うように形成されている、請求項に記載の光ファイバの冷却装置。
【請求項6】
前記光ファイバが通過する方向に直交する断面において前記ファイバ通路の中心を通る第一方向と、前記第一方向に直交し且つ前記ファイバ通路の中心を通る第二方向とにより区切られた前記冷却筒の4つの領域の各領域において、前記冷却筒は、複数の前記冷媒流路を有している、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の光ファイバの冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバを冷却するための冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、相互に突き合わされることにより挿通孔を形成する一対の冷却装置本体を備えた光ファイバの冷却装置を開示している。光ファイバ母材から線引きされたガラスファイバは挿通孔に挿通されて、挿通孔の中心に向かって噴出される冷却ガスにより冷却される。
【0003】
特許文献2は、ファイバ通路とファイバ通路の周囲に設けられた冷媒流路とを有する冷却筒を備えた光ファイバの冷却装置を開示している。光ファイバ母材から線引きされたガラスファイバは、ファイバ通路に挿通される。ファイバ通路には、冷却ガスが供給される。冷媒流路には、ガラスファイバを冷却する冷媒が供給される。冷媒流路を流れる冷媒によってファイバ通路内の冷却ガスが冷やされる。冷やされた冷却ガスによって、ファイバ通路内を通過するガラスファイバが冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-3175号公報
【文献】特開2015-71505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、冷却装置本体は、冷却ガスにより冷却装置の稼働時には常温から極低温になるように冷却される。冷却装置本体は、常温の状態(装置停止時)と極低温の状態(装置稼働時)の間を反復し、熱膨張および熱収縮を繰り返す。これにより、一対の冷却装置本体の突き合わせ面が歪み、突き合わせ面の間に形成された隙間から冷却ガスが装置外部に漏れてしまうおそれがある。特許文献1の光ファイバの冷却装置では、冷却装置本体がガラスファイバの走行方向から反らないように支持部材によって冷却装置本体を支持および固定している。
【0006】
特許文献2でも、冷却筒は、冷媒流路を流れる冷媒により冷却装置の稼働時には極低温になるように冷却される。しかしながら、特許文献2には冷媒流路の具体的な形成方法および形状については記載されていない。
【0007】
本開示は、冷却筒の変形を抑制して、冷却効率を向上することが可能な光ファイバの冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の光ファイバの冷却装置は、
光ファイバを通過させるファイバ通路と、前記光ファイバを冷却するための冷媒が流れる冷媒流路と、を有する冷却筒を備えており、
前記光ファイバが通過する方向における前記冷却筒の長さは2m以上であり、
前記冷媒流路は、前記光ファイバが通過する方向に前記冷却筒を貫通しており、
前記冷却筒において少なくとも冷媒流路を形成する壁面およびその周辺部分は、単一部材から形成されている。
【発明の効果】
【0009】
上記によれば、冷却筒の変形を抑制して、冷却効率を向上することが可能な光ファイバの冷却装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係る光ファイバの冷却装置の概略構成を示す部分断面図である。
図2図2は、光ファイバの冷却装置の冷却筒の一構成例を示す平面模式図である。
図3図3は、冷却筒の第一変形例を示す平面模式図である。
図4図4は、冷却筒の第二変形例を示す平面模式図である。
図5図5は、冷却筒の第三変形例を示す平面模式図である。
図6図6は、冷却筒の第四変形例を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
本開示の光ファイバの冷却装置は、
(1)光ファイバを通過させるファイバ通路と、前記光ファイバを冷却するための冷媒が流れる冷媒流路と、を有する冷却筒を備えており、
前記光ファイバが通過する方向における前記冷却筒の長さは2m以上であり、
前記冷媒流路は、前記光ファイバが通過する方向に前記冷却筒を貫通しており、
前記冷却筒において少なくとも冷媒流路を形成する壁面およびその周辺部分は、単一部材から形成されている。
【0012】
冷却筒は、冷媒流路を流れる冷媒により冷却装置の稼働時には常温から極低温へ冷却される。冷却装置の停止および稼働が繰り返されると、冷却筒は常温の状態と極低温の状態を繰り返す。上記構成によれば、冷媒流路を形成する壁面およびその周辺部分は、単一(モノリシック)の部材から形成されている。これにより、温度変化の反復による冷却筒の変形を抑制することができる。冷却筒の変形を抑制することができるので、長尺の冷却筒を製造することが可能となる。長尺の冷却筒を製造することができるので、光ファイバの走行方向に接続する冷却筒の数を最小限とすることが可能となる。また、冷媒流路の壁面およびその周辺部分は複数の部材から形成されていないので、冷却筒の変形により冷媒流路を形成する壁面に隙間が生じることを防ぐことができる。結果として、冷却効率を向上させることが可能となる。
【0013】
(2)前記冷却筒は金属製であり、前記冷媒流路は押出加工により形成されてもよい。
【0014】
上記構成によれば、押出加工により長尺の冷媒流路を有する冷却筒を製造することができる。
【0015】
(3)前記冷媒流路は、前記光ファイバが通過する方向に直交する断面において真円以外の形状を有してもよい。
【0016】
上記構成によれば、冷媒流路は様々な形状を有することができる。
【0017】
(4)前記冷媒流路を形成する壁面には、前記光ファイバが通過する方向に延びるフィンが形成されてもよい。
【0018】
上記構成によれば、フィンにより冷媒流路を形成する壁面の表面積を大きくすることができる。これにより、ファイバ通路内の気体と冷媒流路を流れる冷媒との熱交換が容易になり、冷却効率をさらに向上させることができる。
【0019】
(5)前記冷媒流路は、前記ファイバ通路に対向する壁面の部分が前記ファイバ通路の形状に沿うように形成されてもよい。
【0020】
上記構成によれば、冷媒流路をファイバ通路の近くに配置することが可能となる。これにより、冷媒流路へ熱が伝わる時間を短くすることができるので、冷却効率をさらに向上させることができる。また、冷媒流路をファイバ通路の近くに配置することにより、冷媒流路の断面積を小さくしても所望の冷却効率を得ることができる。
【0021】
(6)前記ファイバ通路は、前記冷却筒の中央に形成されて前記光ファイバを通過させる第一通路と、前記第一通路から外側に延びるように形成された前記第一通路に連通する第二通路を有し、
前記冷媒流路は、前記ファイバ通路の前記第一通路および第二通路に対向する壁面が前記第一通路および第二通路の形状に沿うように形成されてもよい。
【0022】
上記構成によれば、冷媒流路により冷却されるファイバ通路を形成する壁面の表面積を大きくすることができる。これにより、ファイバ通路内の気体と冷媒流路を流れる冷媒との熱交換が容易になり、冷却効率をさらに向上させることができる。
【0023】
(7)前記冷却筒は、前記光ファイバが通過する方向に直交する断面において前記ファイバ通路の中心を通る第一仮想線と、前記第一仮想線に直交し且つ前記ファイバ通路の中心を通る第二仮想線とにより4つの領域に区画されており、
前記冷却筒は、各々の前記領域において複数の前記冷媒流路を有してもよい。
【0024】
上記構成によれば、冷却筒の各領域において複数の冷媒流路が形成されているため、冷却筒の各領域において一つの冷媒流路が形成される場合に比べて、冷却筒の軽量化を図ることができる。また、冷却筒の各領域において、複数の冷媒流路を形成する壁面の表面積の合計は、複数の冷媒流路の断面積の合計と同じ断面積を有する単一の冷媒流路を形成する壁面の表面積に比べて大きくなる。したがって、冷却効率をさらに向上させることができる。
【0025】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る光ファイバの冷却装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0026】
図1は、一実施形態に係る光ファイバの冷却装置10の概略構成を示す部分断面図である。図2は、冷却装置10の冷却筒11の一構成例を示す平面模式図である。図2においては、冷却筒11に挿通されるガラスファイバG1も例示されている。光ファイバの冷却装置10は、光ファイバの線引装置に用いられる。図1に例示されるように、冷却装置10は、光ファイバ母材Gを加熱する加熱炉100の下流側に配置されている。
【0027】
加熱炉100内にセットされた光ファイバ母材Gは、その下端側が発熱体101によって加熱される。加熱により軟化した光ファイバ母材Gは、下方に引き伸ばされて細径化され、ガラスファイバG1が形成される。ガラスファイバG1は、加熱炉100の下流側に配置された冷却装置10内へと送り込まれる。冷却装置10は、ガラスファイバG1を強制的に冷却するように構成されている。ガラスファイバG1は、光ファイバの一例である。
【0028】
冷却装置10は、冷却筒11を備えている。冷却筒11は、その内部を通過するガラスファイバG1を冷却する。冷却筒11は、ガラスファイバG1が通過する方向に沿って延びており、その長さLが2m以上になるように形成されている。冷却筒11は、例えば、平面視四角形の直方体の形状を有する。冷却筒11は、例えば、アルミニウム等の金属からなる。
【0029】
冷却筒11は、ガラスファイバG1が挿通されるファイバ通路111を備えている。ファイバ通路111は、冷却筒11の長手方向に沿って貫通するように設けられている。ファイバ通路111は、例えば、その長手方向に直交する断面において円形状を有しており、冷却筒11の中心部分を貫通している。
【0030】
冷却筒11は、ガラスファイバG1を冷却するための冷媒が流れる冷媒流路112を備えている。冷媒は、例えば、冷却水や液体窒素などである。冷媒流路112は、ガラスファイバG1が通過する方向に冷却筒11を貫通するように設けられている。すなわち、冷媒流路112は、冷却筒11の長手方向に沿って貫通しており、ファイバ通路111と平行に延びている。本例では、複数の冷媒流路112がファイバ通路111の周りを囲うように設けられている。
【0031】
冷却筒11は、図2に例示されるように、冷却筒本体11aと冷却筒本体11bを備えている。冷却筒本体11aと冷却筒本体11bの各々は、例えば、平面視四角形の直方体の形状を有する。冷却筒本体11aと冷却筒本体11bは、互いに接近する方向および離れる方向へスライド可能である。冷却筒本体11aと冷却筒本体11bは、ガラスファイバG1の線引き開始後に、ガラスファイバG1を間に挟んだ状態で互いに接近する方向へ移動されて隙間なく突き合わされる。
【0032】
冷却筒本体11aは、冷却筒本体11bに対向する面11a1に凹部11a2が形成されている。冷却筒本体11bは、冷却筒本体11aに対向する面11b1に凹部11b2が形成されている。凹部11a2と凹部11b2の各々は、平面視半円弧状を有している。冷却筒本体11aと冷却筒本体11bを相互に突き合わせることにより、凹部11a2と凹部11b2によって平面視円形のファイバ通路111が形成される。凹部11a2と凹部11b2は、ファイバ通路111の形状に合わせて異なる形状を有しうる。例えば、凹部11a2と凹部11b2は、平面視三角形状を有し、断面形状が四角形のファイバ通路111を形成しうる。
【0033】
冷却筒本体11aと冷却筒本体11bの各々には少なくとも1つの冷媒流路112が形成されている。冷却筒本体11aと冷却筒本体11bを相互に突き合わせることにより、複数の冷媒流路112がファイバ通路111の周りに配置される。本例では、冷却筒本体11aと冷却筒本体11bの各々には2つの冷媒流路112が形成されており、4つの冷媒流路112がファイバ通路111の周りに配置されている。
【0034】
冷却筒本体11aと冷却筒本体11bの各々は、例えば、金属の押出加工により形成される。所定の温度に加熱した金属を金型から押し出すことにより冷却筒本体11aまたは冷却筒本体11bが成形される。すなわち、冷媒流路112を形成する壁面およびその周辺部分が、単一部材から形成される。なお、押し出す方向は、冷却筒11をガラスファイバG1が通過する方向であり、すなわち、ファイバ通路111および冷媒流路112の長手方向である。
【0035】
ファイバ通路111には、図1に例示されるように、ガス供給路12aとガス排出路12bが接続される。ガス供給路12aは、ヘリウムガスなどの冷却ガスをファイバ通路111内へ供給する。ガス排出路12bは、ファイバ通路111内の冷却ガスを外部へ排出する。ガス供給路12aおよびガス排出路12bは、例えば、ガス循環装置(図示省略)に接続されている。冷却ガスは、ガス循環装置による制御によりファイバ通路111内を循環する。
【0036】
冷媒流路112には、冷媒供給路13aと冷媒排出路13bに接続されている。冷媒供給路13aは、冷媒を冷媒流路112へ供給する。冷媒排出路13bは、冷媒流路112内の冷媒を外部へ排出する。冷媒供給路13aおよび冷媒排出路13bは、例えば、冷媒循環装置(図示省略)に接続されている。冷媒は、冷媒循環装置による制御により冷媒流路112内を循環する。ファイバ通路111内の冷却ガスは、冷媒流路112を循環する冷媒により冷やされ、ファイバ通路111内を通過するガラスファイバG1は冷やされた冷却ガスにより冷却される。
【0037】
冷却筒11は、冷媒流路112を流れる冷媒により冷却装置10の稼働時には常温から極低温へ冷却される。冷却装置10の停止および稼働が繰り返されると、冷却筒11は常温の状態と極低温の状態を繰り返す。この温度変化の反復により冷却筒11に歪が生じ、冷却筒11が変形する場合がある。例えば、冷却筒11の冷媒流路112を切削および溶接により形成する場合、溶接部と溶接部以外の部分では物性が異なるので、温度変化の反復により溶接部において歪が生じる。生じた歪により形成された溶接部の隙間から冷媒が冷却筒11の外部に漏れてしまうおそれがある。上記のような構成によれば、冷却筒11において少なくとも冷媒流路112を形成する壁面およびその周辺部分は、物性が均一な単一部材から形成されている。このため、冷却筒11の冷媒流路112を切削および溶接により形成する場合と比べて、温度変化の反復による冷却筒11の変形を抑制することができる。冷却筒11の変形を抑制することができるので、2m以上の冷却筒11を製造することが可能となる。所望の長さの冷却筒を形成するために複数の冷却筒11を接続する場合、短尺の冷却筒を用いる場合と比べて、接続する冷却筒11の数を少なくすることができる。また、冷媒流路112の壁面およびその周辺部分は複数の部材から形成されていないので、冷却筒11の変形により冷媒流路112の壁面に隙間が生じることを防ぐことができる。結果として、冷却効率を向上させることが可能となる。
【0038】
また、冷却筒11は、金属の押出加工により形成されている。押出加工により、長尺の冷媒流路112を有する冷却筒11を製造することができる。
【0039】
本実施形態においては、冷却装置10は、図1に例示されるように、冷却筒11の周囲を覆うように設けられる断熱材14を備えうる。断熱材14により、冷却筒11の冷媒流路112内を循環する冷媒の温度が上昇するのを抑制することができる。
【0040】
本実施形態においては、冷媒流路112は、その長手方向に直交する断面において四角形状を有している。冷媒流路112は、四角形以外の多角形、真円や楕円など、異なる形状の断面を有しうる。例えば、押出加工により冷媒流路112を形成する場合には、ドリルを用いた切削加工により冷媒流路112を形成した場合に比べて、真円以外の様々な形状の冷媒流路112を形成することができる。
【0041】
次に、冷却筒の変形例について図3図6を用いて説明する。なお、図2の冷却筒11の構成要素と実質的に同一の構成要素については同一の参照符号を付与し、繰り返しとなる説明は省略する。
【0042】
[第一変形例]
図3は、冷却筒11の第一変形例を示す平面模式図である。冷媒流路112を形成する壁面には、冷媒流路112の長手方向に延びる少なくとも一つのフィン112aが形成されている。本例では、各冷媒流路112には4つのフィンが形成されている。フィン112aにより冷媒流路112を形成する壁面の表面積を大きくすることができる。すなわち、冷媒流路112を流れる冷媒が冷媒流路112を形成する壁面と接触する面積を大きくすることができる。これにより、ファイバ通路111内の冷却ガスと冷媒流路112を流れる冷媒との熱交換が容易になり、冷却効率をさらに向上させることができる。
【0043】
[第二変形例]
図4は、冷却筒11の第二変形例を示す平面模式図である。冷媒流路112Aは、ファイバ通路111に対向する壁面の部分がファイバ通路111の形状に沿うように形成されている。本例では、冷媒流路112Aを形成する壁面においてファイバ通路111に対向する第一部分112Aaは、平面視円弧状に形成されている。第一部分112Aaは、例えば、平面視円形のファイバ通路111と同じ曲率半径を有する。第一部分112Aaは、ファイバ通路111の形状に応じて異なる形状に形成されうる。例えば、ファイバ通路111が平面視四角形を有する場合は、第一部分112Aaはファイバ通路の形状に沿って平面視L字やU字状に形成される。
【0044】
このような構成によれば、図2および図3に示されるような冷媒流路112に比べて、冷媒流路112Aをファイバ通路111に近づけて配置することができる。これにより、冷媒流路112Aへ熱が伝わる時間を短くすることができるので、冷却効率を向上させることができる。また、冷媒流路112Aの光ファイバが通過する方向に直交する断面積を小さくすることができる。冷媒流路112Aをファイバ通路111の近くに配置することにより、冷媒流路112Aの光ファイバが通過する方向に直交する断面積を小さくした場合でも所望の冷却効率を得ることができる。
【0045】
本変形例においては、図4に示されるように、冷媒流路112Aを形成する壁面において第一部分112Aaと対向する第二部分112Abも平面視円弧状に形成されている。第二部分112Abは、例えば、第一部分112Aaと同じ曲率半径を有する。このような構成によれば、冷媒流路112Aは、所定の幅を有してファイバ通路111の形状に沿うように形成されている。したがって、ファイバ通路111の形状に沿って均一に冷却を行うことが可能となり、冷却効率を向上させることができる。
【0046】
なお、「壁面の部分がファイバ通路111の形状に沿うように形成される」とは、壁面の部分がファイバ通路111の形状と同一の形状に形成される場合に限られない。例えば、第一部分112Aaは、ファイバ通路111とは異なる曲率半径を有してもよい。第一部分112Aaは、一つの曲線から形成されるのではなく、互いに連結された複数の線から形成されてもよい。
【0047】
[第三変形例]
図5は、冷却筒11の第三変形例を示す平面模式図である。ファイバ通路111は、第一通路111aと第二通路111bを有している。第一通路111aは、冷却筒11の長手方向に直交する断面において、冷却筒11の中央に形成されている。第一通路111aには、ガラスファイバG1が挿通される。第二通路111bは、第一通路111aに連通し、第一通路111aから外側に延びるように形成されている。本例では、第二通路111bは、第一通路111aの両側から外側に延びている。
【0048】
冷媒流路112は、ファイバ通路111の第一通路111aおよび第二通路111bに対向する壁面の部分が第一通路111aおよび第二通路111bの形状に沿うように形成されている。本例では、冷媒流路112を形成する壁面において、ファイバ通路111の第一通路111aに対向する第一部分112Baが、平面視円弧状に形成されている。第一部分112Baは、例えば、平面視円形の第一通路111aと同じ曲率半径を有する。また、冷媒流路112を形成する壁面において、ファイバ通路111の第二通路111bに対向する第二部分112Bbは、平面視長方形の第二通路111bの長手方向に沿って延びている。
【0049】
このような構成によれば、冷媒流路112Bに冷却されるファイバ通路111の表面積を大きくすることができるので、冷却効率をさらに向上させることができる。
【0050】
なお、第一部分112Baは、第一通路111aの形状に応じて異なる形状に形成されうる。第二部分112Bbは、第二通路111bの形状に応じて異なる形状に形成されうる。また、媒流路112を形成する壁面において、第一部分112Baおよび第二部分112Bb以外の部分は様々な形状を有しうる。
【0051】
[第四変形例]
図6は、冷却筒11の第四変形例を示す平面模式図である。冷却筒11は、ファイバ通路111の周囲において4つの領域11A,11B,11C,11Dに区画されている。4つの領域11A,11B,11C,11Dは、冷却筒11の長手方向に直交する断面において、ファイバ通路111の中心を通る第一仮想線IL1と、第一仮想線IL1に直交し且つファイバ通路111の中心を通る第二仮想線IL2とにより区画されている。領域11Aには、少なくとも2つの冷媒流路112が形成される。領域11Bには、少なくとも2つの冷媒流路112が形成される。領域11Cには、少なくとも2つの冷媒流路112が形成される。領域11Dには、少なくとも2つの冷媒流路112が形成される。本例では、領域11A、領域11B、領域11Cおよび領域11Dの各々には、6つの冷媒流路112が形成されている。
【0052】
上記の構成によれば、領域11A、領域11B、領域11Cおよび領域11Dの各々には複数の冷媒流路112が形成されている。したがって、領域11A、領域11B、領域11Cおよび領域11Dの各々に単一の冷媒流路112が形成される場合に比べて、冷却筒11の軽量化を図ることができる。また、領域11A、領域11B、領域11Cおよび領域11Dに設けられた全ての冷媒流路112の断面積の合計と同じ断面積を有する単一の冷媒流路を形成する場合に比べて、複数の冷媒流路112を形成する壁面の表面積の合計が大きくなる。したがって、冷却効率を向上させることができる。
【0053】
なお、冷媒流路112は、平面視四角形状を有しているが、多角形、真円や楕円など異なる形状の断面を有しうる。また、複数の冷媒流路112は、互いに異なる形状を有してもよい。例えば、ファイバ通路111に最も近い位置に配置された冷媒流路112は、図3または図4に例示される形状を有してもよい。
【0054】
以上、本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【0055】
上記実施形態においては、冷却筒11は、冷却筒本体11aと冷却筒本体11bを備えている。しかしながら、冷却筒11は、3つ以上の冷却筒本体を備えてもよい。また、冷却筒11は、複数の冷却筒本体から構成されなくてもよい。すなわち、冷却筒11は、単一部材により形成されてもよい。
【0056】
上記実施形態においては、各却筒11は押出加工により形成される。しかしながら、少なくとも冷媒流路112を形成する壁面およびその周辺部分が単一部材から形成されていれば、冷却筒11は他の加工方法により形成されうる。例えば、冷却筒11は、金属粉末を金型に入れて圧縮して固め、高温で焼結するなどの方法により形成されうる。
【0057】
図2図5に例示される冷却筒11には、複数の冷媒流路112,112A,112Bが形成されている。しかしながら、冷却筒11には、単一の冷媒流路112,112A,112Bのみが形成されてもよい。
【0058】
図4図6に例示される冷媒流路112,112A,112Bを形成する壁面は、図3に例示されるフィンが形成されてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10:冷却装置
11:冷却筒
11a,11b:冷却筒本体
11A,11B,11C,11D:領域
11a1,11b1:対向面
11a2,11b2:凹部
12a:ガス供給路
12b:ガス排出路
13a:冷媒供給路
13b:冷媒排出路
14:断熱材
100:加熱炉
101:発熱体
111:ファイバ通路
111a:第一通路
111b:第二通路
112,112A,112B:冷媒流路
112a:フィン
112Aa:第一部分
112Ab:第二部分
112Ba 第一部分
112Bb:第二部分
G:光ファイバ母材
G1:ガラスファイバ
IL1:第一仮想線
IL2:第二仮想線
L:冷却筒の長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6