(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】内燃機関用のスパークプラグ及び内燃機関
(51)【国際特許分類】
H01T 13/54 20060101AFI20240123BHJP
H01T 13/20 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
H01T13/54
H01T13/20 B
(21)【出願番号】P 2020100933
(22)【出願日】2020-06-10
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 明光
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/008115(WO,A2)
【文献】特表2018-532225(JP,A)
【文献】特開2019-102368(JP,A)
【文献】特表2017-529656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/00 - 13/60
F02P 1/00 - 3/12
F02P 7/00 - 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出する先端突出部(41)を有する中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記先端突出部が配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、を有し、
上記プラグカバーは、先端壁部(54)から上記副燃焼室へ向かって突出すると共に内側に軸方向噴孔(511)を備えた突出筒状部(53)を有し、
上記プラグカバーにおける上記突出筒状部よりも外周側に、上記副燃焼室と外部とを連通させる側方噴孔(516)が形成されており、
上記突出筒状部の外周面(532)から外側へ突出して上記突出筒状部の外周面に沿った空間をプラグ周方向に仕切る仕切板(7)を有する、内燃機関用のスパークプラグ(1)。
【請求項2】
上記仕切板は、上記突出筒状部の外周面と、上記突出筒状部よりも外周側における上記プラグカバーの内面とを繋ぐように形成されている、請求項1に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項3】
上記中心電極の上記先端突出部に対してプラグ径方向から、放電ギャップ(G)を介して対向するように配置された接地電極(6)を有し、プラグ軸方向から見たとき、上記突出筒状部に対する少なくとも一つの上記側方噴孔の位置は、上記中心電極に対する上記放電ギャップの位置と同じ側である、請求項1又は2に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項4】
請求項3に記載の内燃機関用のスパークプラグを備えた内燃機関(10)であって、
上記放電ギャップが、上記中心電極よりも、上記内燃機関の主燃焼室(11)における気流(A0)の上流側に位置している、内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用のスパークプラグ及び内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、放電ギャップが配された副燃焼室を備えたスパークプラグが開示されている。かかるスパークプラグにおいては、副燃焼室において着火して生じた火炎を、貫通孔から火炎ジェットとして噴出させることにより、主燃焼室における燃焼を促進させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、副燃焼室内において初期火炎が形成される位置によっては、火炎ジェットを強化し難いという課題がある。つまり、初期火炎の位置によっては、火炎の成長に伴う副燃焼室内の圧力が充分に上昇する前に、火炎が貫通孔から漏れてしまうことが考えられる。その結果、火炎ジェットの強化が困難となり、主燃焼室における燃焼効率の向上が困難となるおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、燃焼効率の向上を図ることができる内燃機関用のスパークプラグ及び内燃機関を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出する先端突出部(41)を有する中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記先端突出部が配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、を有し、
上記プラグカバーは、先端壁部(54)から上記副燃焼室へ向かって突出すると共に内側に軸方向噴孔(511)を備えた突出筒状部(53)を有し、
上記プラグカバーにおける上記突出筒状部よりも外周側に、上記副燃焼室と外部とを連通させる側方噴孔(516)が形成されており、
上記突出筒状部の外周面(532)から外側へ突出して上記突出筒状部の外周面に沿った空間をプラグ周方向に仕切る仕切板(7)を有する、内燃機関用のスパークプラグ(1)にある。
【発明の効果】
【0007】
上記内燃機関用のスパークプラグは、上記仕切板を有する。これにより、側方噴孔から導入されて突出筒状部の外周面に当たった気流は、上記仕切板にガイドされながら基端側へ向かいやすくなる。それゆえ、副燃焼室内において形成された放電が基端側へ引き伸ばされやすくなる。その引き伸ばされ拡大した放電により、より大きな初期火炎が形成されやすく、かつ、副燃焼室における、より基端側に初期火炎を形成しやすくなる。あるいは、副燃焼室における、より基端側に初期火炎を移動させやすくなる。その結果、噴孔からの火炎ジェットを強化することができ、燃焼効率を向上させることができる。
【0008】
以上のごとく、上記態様によれば、燃焼効率の向上を図ることができる内燃機関用のスパークプラグ及び内燃機関を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1における、スパークプラグの先端部付近の、軸方向に沿った断面図であり、
図3のI-I線矢視断面図。
【
図2】実施形態1における、スパークプラグの先端部付近の、軸方向に沿った断面図であり、
図3のII-II線矢視断面図。
【
図4】実施形態1における、内燃機関に取り付けられたスパークプラグの正面図。
【
図5】実施形態1における、作用効果を説明する断面説明図。
【
図7】仕切板がないとした場合の気流を説明する断面説明図。
【
図8】実施形態2における、スパークプラグの先端部付近の、軸方向に沿った断面図。
【
図10】実施形態2における、スパークプラグを取り付けた内燃機関の断面説明図。
【
図11】実施形態3における、放電ギャップ付近の断面図。
【
図12】実施形態4における、スパークプラグの先端部付近の、軸方向に沿った断面図。
【
図13】実施形態5における、プラグカバー5の軸方向に沿った断面図であって、
図14のXIII矢視図。
【
図15】実施形態6における、スパークプラグの先端部付近の、軸方向に直交する断面図。
【
図16】実施形態6における、突出筒状部の断面を含む、スパークプラグの軸方向に直交する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
内燃機関用のスパークプラグに係る実施形態について、
図1~
図6を参照して説明する。
本形態の内燃機関用のスパークプラグ1は、
図1に示すごとく、筒状の絶縁碍子3と、中心電極4と、筒状のハウジング2と、プラグカバー5と、を有する。
【0011】
中心電極4は、絶縁碍子3の内周側に保持されている。また、中心電極4は、絶縁碍子3から先端側に突出する先端突出部41を有する。ハウジング2は、絶縁碍子3を内周側に保持する。プラグカバー5は、先端突出部41が配される副燃焼室50を覆うようハウジング2の先端部に設けられている。
【0012】
プラグカバー5は、突出筒状部53を有する。突出筒状部53は、先端壁部54から副燃焼室50へ向かって突出すると共に内側に軸方向噴孔511を備えている。プラグカバー5における突出筒状部53よりも外周側に、副燃焼室50と外部とを連通させる側方噴孔516が形成されている。
【0013】
図1~
図3に示すごとく、スパークプラグ1は、仕切板7を有する。仕切板7は、突出筒状部53の外周面532から外側へ突出して突出筒状部53の外周面532に沿った空間をプラグ周方向に仕切る。
プラグ周方向は、プラグ中心軸Cを中心とした円の周方向である。
【0014】
図2、
図3に示すごとく、仕切板7は、突出筒状部53の外周面532と、突出筒状部53よりも外周側におけるプラグカバー5の内面とを繋ぐように形成されている。本形態において、仕切板7は、突出筒状部53の外周面532における軸方向Zの全体に接続されている。また、仕切板7は、プラグカバー5の先端壁部54の内面に接続されている。仕切板7は、側方噴孔516よりも軸方向Zの基端側の部位においても、プラグカバー5の内面に接続されている。また、仕切板7は、プラグカバー5の外周壁部55の内面にも接続されている。
【0015】
本形態のスパークプラグ1は、例えば、自動車、コージェネレーション等の内燃機関における着火手段として用いることができる。そして、
図4に示すごとく、スパークプラグ1のプラグ軸方向Z(以下において、単に「軸方向Z」ともいう。)の一端を、内燃機関の燃焼室に配置する。この内燃機関の燃焼室を、上述の「副燃焼室50」に対して、「主燃焼室11」という。スパークプラグ1の軸方向Zにおいて、主燃焼室11に露出する側を先端側、その反対側を基端側というものとする。
【0016】
本形態において、
図1~
図3に示すごとく、突出筒状部53は、略円錐台形状を有する。また、突出筒状部53は、筒状でもあり、内側における軸方向噴孔511が、軸方向Zに沿って貫通している。
【0017】
プラグカバー5は、ハウジング2の先端部に溶接等によって接合されている。
図4に示すごとく、スパークプラグ1が内燃機関に取り付けられた状態において、プラグカバー5は、副燃焼室50を主燃焼室11と区画している。本形態において、
図1~
図3に示すごとく、プラグカバー5には、複数の側方噴孔516が形成されている。各側方噴孔516は、先端側へ向かうほど外周側へ向かうように傾斜している。副燃焼室50にて生じた火炎は、軸方向噴孔511及び側方噴孔516から主燃焼室11へ噴出する。また、内燃機関の圧縮行程等においては、主燃焼室11から軸方向噴孔511及び側方噴孔516を介して、副燃焼室50に気流A2、A1が導入される(
図5参照)。
【0018】
図1に示すごとく、側方噴孔516は、プラグカバー5における、先端壁部54と外周壁部55との間の先端角部に形成されている。側方噴孔516の中心軸の延長線D(以下において、噴孔軸Dともいう。)は、突出筒状部53と交わる。また、プラグ中心軸Cを含むと共に側方噴孔516の中心を通る平面による断面(すなわち
図1の断面)において、噴孔軸Dとプラグ中心軸Cとの交点Eは、突出筒状部53の基端よりも先端側に配されている。
【0019】
図3に示すように軸方向Zから見たとき、側方噴孔516の噴孔軸Dは、プラグ中心軸C付近を通る。ただし、噴孔軸Dとプラグ中心軸Cとは必ずしも交わる必要はない。
また、
図3に示すごとく、側方噴孔516は複数個形成されている。本形態において、側方噴孔516は4個形成されている。そして、仕切板7も、4つ形成されている。
【0020】
仕切板7は、軸方向Zから見て、プラグカバー5の外周壁部55と突出筒状部53のとの間の環状空間を複数の空間に仕切るように、配設されている。つまり、本形態においては、仕切板7は、上記環状空間を複数の略扇形状の分割空間70に仕切っている。また、これら複数の仕切板7は、プラグ周方向において等間隔に設けてある。
【0021】
各分割空間70に、側方噴孔516が一つずつ開口するように配設されている。各分割空間70におけるプラグ周方向の中央部付近に、側方噴孔516が設けてある。
本形態において、各仕切板7は、プラグ径方向に沿って形成されている。また、各仕切板7は、軸方向Zに沿って形成されている。つまり、仕切板7は、プラグ周方向に対して直交する。なお、プラグ径方向は、プラグ中心軸Cに直交する直線に沿った方向である。
【0022】
図1に示すごとく、中心電極4は、プラグ中心軸Cに沿って形成されている。本形態において、中心電極4の中心軸は、プラグ中心軸Cと概ね一致している。
突出筒状部53の基端部は、中心電極4の先端突出部41に、先端側から対向している。そして、突出筒状部53の基端部と中心電極4の先端突出部41との間に、放電ギャップGが形成される。すなわち、本形態においては、突出筒状部53の基端部が、接地電極として機能する。
【0023】
突出筒状部53及び仕切板7を含めたプラグカバー5は、例えばニッケル基合金等にて構成することができる。なお、突出筒状部53及び仕切板7は、プラグカバー5の一部として他の部位と一体に構成することができる。また、突出筒状部53及び仕切板7は、プラグカバー5の他の部位とは別部材を、プラグカバー5の本体に接合して構成することもできる。また、突出筒状部53と仕切板7とは、一体部材にて形成することもできるし、互いに別部材にて形成することもできる。
【0024】
ハウジング2は、例えば、低炭素鋼等にて構成することができる。また、中心電極4は、耐熱性に優れた金属又は合金からなる母材42と、その内側に配された熱伝導性に優れた金属又は合金からなる芯材43とを有する。母材42は、例えば、ニッケル基合金からなる。芯材43は、例えば、銅又は銅合金からなる。
【0025】
次に、本形態の作用効果につき、説明する。
上記内燃機関用のスパークプラグ1は、仕切板7を有する。これにより、
図5、
図6に示すごとく、側方噴孔516から導入されて突出筒状部53の外周面532に当たった気流A1は、仕切板7にガイドされながら基端側へ向かいやすくなる。それゆえ、副燃焼室50内において形成された放電Sが基端側へ引き伸ばされやすくなる。その引き伸ばされ拡大した放電により、より大きな初期火炎Fが形成されやすく、かつ、副燃焼室50における、より基端側に初期火炎Fを形成しやすくなる。あるいは、副燃焼室50における、より基端側に初期火炎Fを移動させやすくなる。
【0026】
初期火炎Fが副燃焼室50における、より基端側に形成されると、火炎が成長し噴孔に到達するまでに、副燃焼室50内の圧力が充分に高まりやすい。その結果、噴孔(すなわち、軸方向噴孔511及び側方噴孔516)からの火炎ジェットを強化することができ、燃焼効率を向上させることができる。
【0027】
仮に仕切板7を設けていない場合、
図7に示すように、側方噴孔516から導入された気流A1は、突出筒状部53に当たったときに、周方向に逃げるように流れやすい。そうすると、気流A1は、軸方向Zの基端側へ向かうベクトル成分が小さくなりやすい。それゆえ、放電Sを基端側へ伸ばしたり、初期火炎Fを基端側へ移動させたりする効果が小さくなりやすい。その結果、上述のような火炎ジェットの強化を図りにくい。
【0028】
これに対して、本形態のスパークプラグ1は、突出筒状部53の外周面532から仕切板7が突出している。それゆえ、
図6に示すごとく、側方噴孔516から導入された気流A1は、突出筒状部53の外周面532に当たった後、仕切板7にガイドされ、
図5に示すごとく、外周面532に沿って基端側へ向かいやすい。そうすると、気流A1は、放電ギャップG付近においても、基端側に向かうベクトル成分が大きくなる。それゆえ、気流A1が、放電Sを基端側へ引き伸ばしたり、初期火炎Fを基端側へ移動させたりすることが期待できる。
【0029】
また、仕切板7は、突出筒状部53の外周面532と、突出筒状部53よりも外周側におけるプラグカバー5の内面とを繋ぐように形成されている。これにより、突出筒状部53の放熱性を向上させることができる。それゆえ、プレイグイッションの抑制を図りやすくなる。
【0030】
以上のごとく、本形態によれば、燃焼効率の向上を図ることができる内燃機関用のスパークプラグ及び内燃機関を提供することができる。
【0031】
(実施形態2)
本形態は、
図8~
図10に示すごとく、中心電極4の先端突出部41に対してプラグ径方向から、放電ギャップGを介して対向するように配置された接地電極6を有する、スパークプラグ1の形態である。
図9に示すごとく、軸方向Zから見たとき、突出筒状部53に対する少なくとも一つの側方噴孔516の位置は、中心電極4に対する放電ギャップGの位置と同じ側である。
【0032】
本形態においては、
図8、
図9に示すごとく、接地電極6を、ハウジング2に接合してある。接地電極6は、ハウジング2との接合部から中心電極4に向かってプラグ径方向に向かって突出するように、配設されている。接地電極6は、例えば、ニッケル基合金等にて構成することができる。また、接地電極6は、放電ギャップGに面する端部に、貴金属チップ64を接合してある。また、中心電極4における放電ギャップGに面する部位にも、貴金属チップ44を接合してある。貴金属チップ44、64は、例えば、白金、イリジウム等の金属または合金とすることができる。ただし、貴金属チップ44、64を設けない構成とすることもできる。
【0033】
本形態においては、
図8に示すごとく、放電ギャップGに面する中心電極4及び接地電極6の面は、軸方向Zに沿って形成されている。
放電ギャップGは、中心電極4と突出筒状部53との間の距離よりも小さい。
【0034】
本形態において、側方噴孔516は、複数個形成されている。そのうちの1個について、
図10に示すごとく、軸方向Zから見たとき、突出筒状部53に対する位置が、中心電極4に対する放電ギャップGの位置と同じ側に配されている。つまり、
図8、
図9において、中心電極4の左側に放電ギャップGが形成され、突出筒状部53の左側に側方噴孔516が形成されている。
【0035】
また、本形態におけるスパークプラグ1を備えた内燃機関10を、
図10に示す。同図に示すように、この内燃機関10においては、放電ギャップGが、中心電極4よりも、主燃焼室11における気流A0の上流側に位置している。ここで、主燃焼室11における気流A0の上流側とは、スパークプラグ1の先端部付近における気流A0の向きを基準にした上流側を意味する。
【0036】
内燃機関10の主燃焼室11においては、図示を省略する吸気ポート及び排気ポートの位置、その他の諸条件に依存して、気流が発生する。本形態においては、
図10に示すようなタンブル流が気流A0として主燃焼室11に形成される。この場合、スパークプラグ1の先端部付近における主燃焼室11内の気流A0の向きは、
図10における左側から右側へ向かう向きとなる。それゆえ、この場合、気流A0の上流側は、
図10における左側ということとなる。したがって、同図において、中心電極4よりも左側に、放電ギャップGが形成されている。
【0037】
主燃焼室11から副燃焼室50への気流の流入は、複数の側方噴孔516及び軸方向噴孔511を介して生じ得る。しかし、スパークプラグ1の先端部付近における主燃焼室11の気流A0の向きに応じて、複数の側方噴孔516の間で、気流の強さは変わり得る。すなわち、主燃焼室11の気流A0の上流側に位置する側方噴孔516から導入される気流A11は、主燃焼室11の気流A0の下流側に位置する側方噴孔516から導入される気流A12よりも強くなる。
【0038】
つまり、突出筒状部53に対して
図10における左側の側方噴孔516から導入される気流A11が強くなりやすい。この気流A11を利用して、放電ギャップGに基端側へ向かう気流を生じさせるために、中心電極4に対して
図10における左側の位置に、放電ギャップGを配置する。なお、内燃機関10におけるスパークプラグ1の取り付け姿勢は、例えば、プラグホールに形成された雌ネジの切られ方と、スパークプラグ1のハウジング2の雄ネジの切られ方とによって、制御することができる。
【0039】
その他は、実施形態1と同様である。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0040】
本形態においては、突出筒状部53とは異なる接地電極6と中心電極4とによって放電ギャップGを形成することとなる。そのため、放電ギャップGの調整が比較的行いやすい。また、接地電極6に対して貴金属チップ64を取り付けやすいため、スパークプラグ1の長寿命化を図りやすい。
【0041】
また、軸方向Zから見たとき、突出筒状部53に対する少なくとも一つの側方噴孔516の位置が、中心電極4に対する放電ギャップGの位置と同じ側に配されている。これにより、放電Sを効果的に基端側へ引き伸ばし、初期火炎を効果的に副燃焼室50におけるより基端側へ移動させることができる。
【0042】
また、放電ギャップGが、中心電極4よりも、主燃焼室11における気流A0の上流側に位置している。それゆえ、主燃焼室11の気流A0の上流側に位置する側方噴孔516から副燃焼室50に導入される気流A11を強くしやすい。それゆえ、中心電極4に対して気流A0の上流側に放電ギャップGを配しておくことにより、気流A11によって初期火炎をより基端側に形成する効果が得られやすい。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0043】
(実施形態3)
本形態は、
図11に示すごとく、放電ギャップGに面する接地電極6の放電面及び中心電極4の放電面を、軸方向Zに対して傾斜させた形態である。
その他は、実施形態2と同様である。
本形態においても、実施形態2と同様の作用効果を奏する。
【0044】
(実施形態4)
本形態は、
図12に示すごとく、接地電極6をプラグカバー5に接合した形態である。
本形態においては、特に、接地電極6を、突出筒状部53の一部に接合している。また、接地電極6は、突出筒状部53から、軸方向Zの基端側に立設している。そして、接地電極6の基端部付近と、中心電極4の先端突出部41とが、プラグ径方向に対向している。つまり、接地電極6の側面と中心電極4の側面との間に、放電ギャップGが形成されている。
その他は、実施形態2と同様である。本形態においても、実施形態2と同様の作用効果を奏する。
【0045】
(実施形態5)
本形態は、
図13、
図14に示すごとく、仕切板7の形状を実施形態1に開示したものと異ならせた形態である。
【0046】
すなわち、本形態においては、仕切板7は、突出筒状部53よりも外側におけるプラグカバー5の内面には接続されていない。仕切板7は、突出筒状部53の外周面532から外側へ突出しているが、その外側端縁と、プラグカバー5の外周壁部55との間は、離隔されている。
【0047】
したがって、副燃焼室50における突出筒状部53の周囲の環状空間は、仕切板7によって、内周側の一部のみが仕切られており、その外周側の部分は繋がっていることとなる。また、突出筒状部53の外周面532からの仕切板7の突出量は、基端側へ向かうほど大きい形状となっている。
その他、実施形態1と同様である。
【0048】
本形態においても、側方噴孔516から導入されて突出筒状部53の外周面532に当たった気流A1を、仕切板7によってガイドして、基端側へ向かわせることができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0049】
(実施形態6)
本形態は、
図15、
図16に示すごとく、突出筒状部53の外形を、略角錐台形状とした形態である。
そして、突出筒状部53において、角錐台形の稜線となる箇所から、仕切板7が外側へ突出している。
【0050】
本形態においては、突出筒状部53は、略四角錐台形状を有する。突出筒状部53は、
図16に示すごとく、軸方向Zに直交する断面(以下において、適宜、軸直交断面という。)の外形が、略正方形状となっている。そして、突出筒状部53は、周方向に隣り合う稜線の間に、傾斜平面534を有する。突出筒状部53の外周面532には、複数の稜線と、複数の傾斜平面534とが形成されている。つまり、稜線に沿って形成された複数の仕切板7の間に、傾斜平面534が形成されることとなる。
【0051】
図15に示すように軸方向Zから見て、側方噴孔516は、突出筒状部53の傾斜平面534に面する位置に形成されている。本形態において、側方噴孔516は4個形成されている。そして、傾斜平面534も、4つ形成されている。これら4つの傾斜平面534は、軸方向Zから見たとき、それぞれ側方噴孔516に面している。つまり、軸方向Zから見たとき、一つの傾斜平面534に対して、一つの側方噴孔516が対向配置されている。
その他は、実施形態1と同様である。
【0052】
本形態において、突出筒状部53は、仕切板7に加えて傾斜平面534をも有する。そうすると、側方噴孔516から導入されて傾斜平面534に当たった気流は、傾斜平面534と仕切板7とにガイドされて、軸方向Zの基端側へ一層効率的に導かれやすくなる。その結果、噴孔(すなわち、軸方向噴孔511及び側方噴孔516)からの火炎ジェットを、一層強化することができ、燃焼効率を一層向上させることができる。
【0053】
このような作用効果は、
図16に示す、突出筒状部53の軸直交断面の外形が、複数の凸角部531を備えた形状であることにより、得ることができる。つまり、突出筒状部53の外周面における、複数の凸角部531の間に対応する部位は、必ずしも本形態のように平面となるとは限らないが、比較的平坦な面もしくは凹状の面が形成されることとなる。この面が、上述の傾斜平面534と同様の機能を果たすこととなる。したがって、突出筒状部53が凹状面を備えた形状であったり、略円錐台形状の一部に略平坦面、凹状面等が形成された形状であったりしても、上述と同様の効果を得ることは可能である。つまり、仕切板7によるガイド機能と、これらの略平坦面もしくは凹状面等によるガイド機能との相乗効果を期待できる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0054】
なお、本形態は、実施形態2等と同様に、接地電極6を設けたスパークプラグ1に適用することもできる。
【0055】
また、上記各実施形態においては、4つの仕切板7を備える形態を示したが、本開示は、これに限られるものではない。すなわち、仕切板7は、3つ以下であってもよいし、5つ以上であってもよい。
【0056】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 スパークプラグ
2 ハウジング
3 絶縁碍子
4 中心電極
5 プラグカバー
50 副燃焼室
511 軸方向噴孔
516 側方噴孔
53 突出筒状部
7 仕切板