(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】コモンモードフィルタ
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20240123BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20240123BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20240123BHJP
H01F 37/00 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
H01F27/29 G
H01F17/04 A
H01F27/28 K
H01F37/00 N
(21)【出願番号】P 2020103913
(22)【出願日】2020-06-16
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】國塚 光祐
(72)【発明者】
【氏名】東田 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 恵美
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-004878(JP,A)
【文献】特開2011-049622(JP,A)
【文献】特開2016-174058(JP,A)
【文献】特開2018-133580(JP,A)
【文献】特開2017-183444(JP,A)
【文献】特開2008-034777(JP,A)
【文献】特開2014-199904(JP,A)
【文献】特開2019-121791(JP,A)
【文献】特開2017-112156(JP,A)
【文献】特開2019-121692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 5/00- 5/06
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23-27/30
H01F 27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
H01F 38/42
H03H 1/00- 3/00
H03H 5/00- 7/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻芯部と、前記巻芯部の軸方向における一端に設けられた第1の鍔部と、前記巻芯部の前記軸方向における他端に設けられた第2の鍔部とを有するコアと、
前記巻芯部に同方向に巻回された第1及び第2のワイヤと、
前記第1の鍔部に設けられ、前記第1及び第2のワイヤの一端がそれぞれ接続された第1及び第2の端子電極と、
前記第2の鍔部に設けられ、前記第1及び第2のワイヤの他端がそれぞれ接続された第3及び第4の端子電極と、を備え、
前記第1及び第2のワイヤは、同一ターンが互いに隣接するよう、前記巻芯部に対を成して巻回され、
前記第1及び第2のワイヤは、前記一端から数えて
対を成す1ターン目において
位置関係が逆転するよう交差する第1の交差部と、前記他端から数えて
対を成す1ターン目において
位置関係が逆転するよう交差する第2の交差部を有し、且つ、前記一端から数えて2ターン目と前記他端から数えて2ターン目の間の少なくとも一部は、前記第1及び第2のワイヤの一方が下層に巻回され他方が上層に巻回されるよう整列してレイヤ巻きされていることを特徴とするコモンモードフィルタ。
【請求項2】
前記第1の鍔部は、前記第1及び第2のワイヤの前記一端がそれぞれ継線された前記第1及び第2の端子電極の継線部で覆われる第1の表面を有し、
前記第2の鍔部は、前記第1及び第2のワイヤの前記他端がそれぞれ継線された前記第3及び第4の端子電極の継線部で覆われる第2の表面を有し、
前記巻芯部は、前記第1及び第2の表面と平行な巻回面を有し、
前記第1及び第2の交差部は、いずれも前記巻回面上に位置していることを特徴とする請求項1に記載のコモンモードフィルタ。
【請求項3】
前記第1及び第2のワイヤは、前記第1及び第2のワイヤの前記一方が下層に巻回され前記他方が上層に巻回されるよう整列してレイヤ巻きされた第1のレイヤ巻き部と、前記第1及び第2のワイヤの前記他方が下層に巻回され前記一方が上層に巻回されるよう整列してレイヤ巻きされた第2のレイヤ巻き部と、前記第1のレイヤ巻き部と前記第2のレイヤ巻き部の間に位置し、前記第1及び第2のワイヤが交差する第3の交差部とをさらに有することを特徴とする請求項1又は2に記載のコモンモードフィルタ。
【請求項4】
前記第1のレイヤ巻き部のターン数と前記第2のレイヤ巻き部のターン数の差は1ターン以下であることを特徴とする請求項3に記載のコモンモードフィルタ。
【請求項5】
前記第1及び第2のワイヤは、前記第1及び第2のワイヤの前記一方が下層に巻回され前記他方が上層に巻回されるよう整列してレイヤ巻きされた第3のレイヤ巻き部と、前記第2のレイヤ巻き部と前記第3のレイヤ巻き部の間に位置し、前記第1及び第2のワイヤが交差する第4の交差部とをさらに有することを特徴とする請求項3又は4に記載のコモンモードフィルタ。
【請求項6】
前記第1のレイヤ巻き部のターン数と前記第3のレイヤ巻き部のターン数が同じであることを特徴とする請求項5に記載のコモンモードフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコモンモードフィルタに関し、特に、一対のワイヤが途中で交差するタイプのコモンモードフィルタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コモンモードフィルタは、差動信号線路に重畳するコモンモードノイズを除去するための素子として、携帯電子機器や車載用LANなど、多くの電子機器に幅広く使用されている。近年においては、トロイダル型のコアを用いたコモンモードフィルタに代わって、表面実装が可能なドラム型のコアを用いたコモンモードフィルタが主流である(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載されたコモンモードフィルタは、一対のワイヤを途中で偶数回交差させることによって、高周波領域における差動信号の対称性を高めている。近年においては、差動信号成分がコモンモードノイズ成分に変換されるモード変換特性を高周波帯域において十分に抑えることが求められている。モード変換特性を悪化させる大きな原因の一つは一対のワイヤの対称性の乱れであるため、特許文献1の記載のコモンモードフィルタのように、一対のワイヤの対称性を高めることにより、高周波帯域におけるモード変換特性を良好な値とすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの研究によれば、一対のワイヤの対称性の乱れに起因するモード変換特性の悪化は、差動信号の入力側に近いターンほど顕著であることが判明した。このため、特許文献1に記載されたコモンモードフィルタのように、ワイヤの端部から数えて数ターン巻回した後に一対のワイヤを交差させる方法では、高周波帯域におけるモード変換特性を十分に改善することが困難であった。
【0006】
したがって、本発明は、一対のワイヤを途中で交差させたコモンモードフィルタにおいて、高周波帯域におけるモード変換特性を十分に改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるコモンモードフィルタは、巻芯部、巻芯部の軸方向における一端に設けられた第1の鍔部及び巻芯部の軸方向における他端に設けられた第2の鍔部を有するコアと、巻芯部に同方向に巻回された第1及び第2のワイヤと、第1の鍔部に設けられ第1及び第2のワイヤの一端がそれぞれ接続された第1及び第2の端子電極と、第2の鍔部に設けられ第1及び第2のワイヤの他端がそれぞれ接続された第3及び第4の端子電極とを備え、第1及び第2のワイヤは、一端から数えて1ターン目において交差する第1の交差部と、他端から数えて1ターン目において交差する第2の交差部を有し、且つ、一端から数えて2ターン目と他端から数えて2ターン目の間の少なくとも一部は、第1及び第2のワイヤの一方が下層に巻回され他方が上層に巻回されるよう整列してレイヤ巻きされていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、一対のワイヤが1ターン目で交差していることから、高周波帯域におけるモード変換特性を改善することが可能となる。しかも、一対のワイヤが両端部において交差していることから、差動信号が双方向に伝送される場合において、双方向のモード変換特性を改善することが可能となる。
【0009】
本発明において、第1の鍔部は、第1及び第2のワイヤの一端がそれぞれ継線された第1及び第2の端子電極の継線部で覆われる第1の表面を有し、第2の鍔部は、第1及び第2のワイヤの他端がそれぞれ継線された第3及び第4の端子電極の継線部で覆われる第2の表面を有し、巻芯部は第1及び第2の表面と平行な巻回面を有し、第1及び第2の交差部はいずれも巻回面上に位置していても構わない。これによれば、第1及び第2の端子電極から第1の交差部までのワイヤ長と、第3及び第4の端子電極から第2の交差部までのワイヤ長がほぼ等しくなることから、差動信号の入力方向によるモード変換特性の差を低減することが可能となる。
【0010】
本発明において、第1及び第2のワイヤは、第1及び第2のワイヤの一方が下層に巻回され他方が上層に巻回されるよう整列してレイヤ巻きされた第1のレイヤ巻き部と、第1及び第2のワイヤの他方が下層に巻回され一方が上層に巻回されるよう整列してレイヤ巻きされた第2のレイヤ巻き部と、第1のレイヤ巻き部と第2のレイヤ巻き部の間に位置し、第1及び第2のワイヤが交差する第3の交差部とをさらに有するものであっても構わない。これによれば、第1のワイヤと第2のワイヤの対称性がより高められる。この場合、第1のワイヤと第2のワイヤの対称性をさらに高めるためには、第1のレイヤ巻き部のターン数と第2のレイヤ巻き部のターン数の差が1ターン以下であることが好ましい。
【0011】
本発明において、第1及び第2のワイヤは、第1及び第2のワイヤの一方が下層に巻回され他方が上層に巻回されるよう整列してレイヤ巻きされた第3のレイヤ巻き部と、第2のレイヤ巻き部と第3のレイヤ巻き部の間に位置し、第1及び第2のワイヤが交差する第4の交差部とをさらに有するものであっても構わない。これによれば、第1のワイヤと第2のワイヤの対称性がよりいっそう高められるとともに、寄生キャパシタンス成分を低減することが可能となる。この場合、第1のワイヤと第2のワイヤの対称性をさらに高めるためには、第1のレイヤ巻き部のターン数と第3のレイヤ巻き部のターン数が同じであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明によれば、一対のワイヤを途中で交差させたコモンモードフィルタにおいて、高周波帯域におけるモード変換特性を改善することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態によるコモンモードフィルタ1の外観を示す略斜視図である。
【
図2】
図2は、コモンモードフィルタ1における第1及び第2のワイヤW1,W2の巻回レイアウトを説明するための模式的な平面図である。
【
図3】
図3は、コモンモードフィルタ1における第1及び第2のワイヤW1,W2の巻回レイアウトを説明するための模式的な展開図である。
【
図4】
図4は、第1の変形例によるコモンモードフィルタ1Aにおける第1及び第2のワイヤW1,W2の巻回レイアウトを説明するための模式的な平面図である。
【
図5】
図5は、第1の変形例によるコモンモードフィルタ1Aにおける第1及び第2のワイヤW1,W2の巻回レイアウトを説明するための模式的な展開図である。
【
図6】
図6は、第2の変形例によるコモンモードフィルタ1Bにおける第1及び第2のワイヤW1,W2の巻回レイアウトをより詳細に説明するための模式的な平面図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態によるコモンモードフィルタ2における第1及び第2のワイヤW1,W2の巻回レイアウトを説明するための模式的な平面図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態によるコモンモードフィルタ2における第1及び第2のワイヤW1,W2の巻回レイアウトを説明するための模式的な展開図である。
【
図9】
図9は、第3の実施形態によるコモンモードフィルタ3における第1及び第2のワイヤW1,W2の巻回レイアウトを説明するための模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態によるコモンモードフィルタ1の外観を示す略斜視図である。
【0016】
図1に示すように、第1の実施形態によるコモンモードフィルタ1は、ドラム型コア10と、板状コア20と、第1~第4の端子電極31~34と、第1及び第2のワイヤW1,W2とを備えている。ドラム型コア10及び板状コア20は、Ni-Zn系フェライトなどの磁性材料によって構成される。また、第1~第4の端子電極31~34は、銅などの良導体からなる金具である。第1~第4の端子電極31~34は、ドラム型コア10に銀ペーストなどを直接焼き付けたものであっても構わない。
【0017】
ドラム型コア10は、第1の鍔部11と、第2の鍔部12と、これらの間に設けられた巻芯部13と有している。巻芯部13はx方向を軸方向とし、その両端にそれぞれ第1及び第2の鍔部11,12が設けられ、これらが一体化された構造を有している。板状コア20は、鍔部11,12の上面11t,12tに接着されている。鍔部11,12の上面11t,12tはxy平面を構成し、その反対側の面は実装面11b,12bとして用いられる。そして、第1及び第2の端子電極31,32は、第1の鍔部11の実装面11b及び外側面11sに設けられ、第3及び第4の端子電極33,34は、第2の鍔部12の実装面12b及び外側面12sに設けられている。外側面11s,12sは、yz面を構成する。第1~第4の端子電極31~34の固定は、接着剤などによって行われる。
【0018】
第1及び第2のワイヤW1,W2は、巻芯部13に同方向に巻回されている。そして、第1のワイヤW1の一端及び他端はそれぞれ第1及び第3の端子電極31,33の継線部31a,33aに継線され、第2のワイヤW2の一端及び他端はそれぞれ第2及び第4の端子電極32,34の継線部32a,34aに継線される。第1及び第2のワイヤW1,W2のターン数は、互いに同じである。第1及び第2の端子電極31,32の継線部31a,32aは実装面11b上に位置し、第3及び第4の端子電極33,34の継線部33a,34aは実装面12b上に位置する。
【0019】
図2は、第1及び第2のワイヤW1,W2の巻回レイアウトを説明するための模式的な平面図である。また、
図3は、第1及び第2のワイヤW1,W2の巻回レイアウトを説明するための模式的な展開図である。
【0020】
本実施形態においては巻芯部13のyz断面が略矩形であり、巻芯部13は、
図3に示すように4つの巻回面41~44を有している。このうち、巻回面41,43はxy面を構成し、巻回面42,44はxz面を構成する。巻回面41,42の境界はエッジE1によって定義され、巻回面42,43の境界はエッジE2によって定義され、巻回面43,44の境界はエッジE3によって定義され、巻回面44,41の境界はエッジE4によって定義される。
【0021】
そして、
図2及び
図3に示すように、第1及び第2のワイヤW1,W2は、それぞれ継線部31a,32aから数えて1ターン目で交差する第1の交差部C1と、それぞれ継線部33a,34aから数えて1ターン目で交差する第2の交差部C2を有している。第1及び第2のワイヤW1,W2が交差すると、その前後において第1及び第2のワイヤW1,W2の位置関係が逆転する。
【0022】
ここで、第1及び第2のワイヤW1,W2の一端から数えて1ターン目とは、矢印51で示すようにエッジE1を始点とし、矢印52で示すようにエッジE1を終点とする区間によって定義される。2ターン目以降も同様である。これは、巻芯部13の中心軸から見て、端子電極31が-y方向にオフセットして設けられ、端子電極32が+y方向にオフセットして設けられているため、巻回面41上に位置する第2のワイヤW2の区間S2には対を成す第1のワイヤW1が存在しないためである。同様に、第1及び第2のワイヤW1,W2の他端から数えて1ターン目とは、矢印53で示すようにエッジE4を始点とし、矢印54で示すようにエッジE4を終点とする区間によって定義される。2ターン目以降も同様である。これは、巻芯部13の中心軸から見て、端子電極33が-y方向にオフセットして設けられ、端子電極34が+y方向にオフセットして設けられているため、巻回面41上に位置する第1のワイヤW1の区間S1には対を成す第2のワイヤW2が存在しないためである。
【0023】
さらに、第1及び第2のワイヤW1,W2の一端から数えて2ターン目と他端から数えて2ターン目の間は、第1のワイヤW1が下層に巻回され第2のワイヤW2が上層に巻回されるよう整列してレイヤ巻きされたレイヤ巻き部Lを構成している。これにより、第1及び第2のワイヤW1,W2のターン数が多い場合であっても、巻芯部13のx方向における長さを短くすることが可能となる。
図2に示す例ではレイヤ巻き部Lのターン数が14ターンであるが、レイヤ巻き部Lのターン数については特に限定されない。尚、第1及び第2のワイヤW1,W2を整列してレイヤ巻きするためには、下層に位置するワイヤの谷線に沿って上層のワイヤを巻回する必要があり、下層に位置するワイヤのターン数よりも上層に位置するワイヤのターン数が1ターン少なくなる。このため、継線部32aから数えて第2のワイヤW2の第2ターンは、例外的に下層に位置している。
【0024】
このように、本実施形態によるコモンモードフィルタ1は、それぞれ端子電極31,32に接続された一端から数えて1ターン目において第1及び第2のワイヤW1,W2が交差するとともに、それぞれ端子電極33,34に接続された他端から数えて1ターン目において第1及び第2のワイヤW1,W2が交差する。第1及び第2のワイヤW1,W2を交差させると、その前後における対称性が高められることから、モード変換特性が改善される。そして、対称性の乱れによるモード変換特性の悪化は、差動信号の入力側に近いターンほど顕著であるところ、本実施形態によるコモンモードフィルタ1においては、第1及び第2のワイヤW1,W2が1ターン目において交差していることから、高周波帯域におけるモード変換特性が大幅に改善される。しかも、交差部C1,C2が第1及び第2のワイヤW1,W2の両端部に設けられていることから、方向性のないコモンモードフィルタを提供することができるとともに、双方向の差動信号に対して高い信号品質を得ることが可能となる。
【0025】
また、交差部C1,C2はいずれも巻回面41上に位置している。このため、第1の端子電極31から第1の交差部C1の間に位置する第1のワイヤW1の長さと、第4の端子電極34から第2の交差部C2の間に位置する第2のワイヤW2の長さはほぼ一致し、第2の端子電極32から第1の交差部C1の間に位置する第2のワイヤW2の長さと、第3の端子電極33から第2の交差部C2の間に位置する第1のワイヤW1の長さはほぼ一致する。その結果、第1及び第2の端子電極31,32を入力側とするモード変換特性と、第3及び第4の端子電極33,34を入力側とするモード変換特性の差がほとんどなくなる。
【0026】
図4は、第1の変形例によるコモンモードフィルタ1Aにおける第1及び第2のワイヤW1,W2の巻回レイアウトを説明するための模式的な平面図である。また、
図5は、第1の変形例によるコモンモードフィルタ1Aにおける第1及び第2のワイヤW1,W2の巻回レイアウトを説明するための模式的な展開図である。
【0027】
図4及び
図5に示すように、第1の変形例によるコモンモードフィルタ1Aは、第1及び第2の交差部C1,C2がいずれも巻回面43上に位置している点において、第1の実施形態によるコモンモードフィルタ1と相違している。その他の基本的な構成は、第1の実施形態によるコモンモードフィルタ1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。第1の変形例によるコモンモードフィルタ1Aによれば、端子電極31~34から見て第1及び第2のワイヤW1,W2がより早期に交差することから、モード変換特性をより改善することが可能となる。
【0028】
図6は、第2の変形例によるコモンモードフィルタ1Bにおける第1及び第2のワイヤW1,W2の巻回レイアウトをより詳細に説明するための模式的な平面図である。
【0029】
図6に示すように、第2の変形例によるコモンモードフィルタ1Bにおいては、第1及び第2のワイヤW1,W2の一端側から数えた1ターン目の一部と、他端側から数えた1ターン目の一部が、レイヤ巻き部Lに属している。その他の基本的な構成は、第1の変形例によるコモンモードフィルタ1Aと同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。第2の変形例によるコモンモードフィルタ1Bが例示するように、レイヤ巻き部Lに第1及び第2のワイヤW1,W2の1ターン目の一部が含まれていても構わない。
【0030】
図7は、第2の実施形態によるコモンモードフィルタ2における第1及び第2のワイヤW1,W2の巻回レイアウトを説明するための模式的な平面図である。
【0031】
図7に示すように、第2の実施形態によるコモンモードフィルタ2は、レイヤ巻き部Lが第1のレイヤ巻き部L1と第2のレイヤ巻き部L2に分かれており、第1のレイヤ巻き部L1と第2のレイヤ巻き部L2の間に第3の交差部C3が設けられている点において、第1の実施形態によるコモンモードフィルタ1と相違している。その他の基本的な構成は、第1の実施形態によるコモンモードフィルタ1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0032】
第1のレイヤ巻き部L1は、第1のワイヤW1が下層に巻回され第2のワイヤW2が上層に巻回されるよう整列してレイヤ巻きされているのに対し、第2のレイヤ巻き部L2は、第2のワイヤW2が下層に巻回され第1のワイヤW1が上層に巻回されるよう整列してレイヤ巻きされている。
図7に示す例ではレイヤ巻き部L1,L2のターン数がいずれも7ターンであるが、レイヤ巻き部L1,L2のターン数については特に限定されない。尚、第1のレイヤ巻き部L1においては、継線部32aから数えて第2のワイヤW2の第2ターンが例外的に下層に位置しており、第2のレイヤ巻き部L2においては、継線部31aから数えて第1のワイヤW1の第9ターンが例外的に下層に位置している。
【0033】
このように、第2の実施形態によるコモンモードフィルタ2においては、2つのレイヤ巻き部L1,L2を有し、レイヤ巻き部L1における第1及び第2のワイヤW1,W2の上下位置と、レイヤ巻き部L2における第1及び第2のワイヤW1,W2の上下位置が逆転していることから、第1のワイヤW1の長さと第2のワイヤW2の長さをほぼ一致させることができる。しかも、第1及び第2のワイヤW1,W2が第1のレイヤ巻き部L1と第2のレイヤ巻き部L2の間で交差していることから、第1のワイヤW1と第2のワイヤW2の対称性をより高めることが可能となる。
【0034】
図8は、第2の実施形態によるコモンモードフィルタ2における第1及び第2のワイヤW1,W2の巻回レイアウトを説明するための模式的な展開図である。
【0035】
図8に示すように、第2の実施形態によるコモンモードフィルタ2においては、第1~第3の交差部C1~C3がいずれも巻回面41上に位置している。ここで、第1及び第2のワイヤW1,W2を奇数回交差させると、第1及び第2のワイヤW1,W2の一端側における位置関係と他端側における位置関係が逆転してしまう。しかしながら、本実施形態によるコモンモードフィルタ2においては、他端側から数えた1ターン目において第1及び第2のワイヤW1,W2を巻回面44上の交差部CEにおいて交差させていることから、第1及び第2のワイヤW1,W2の一端側における位置関係と他端側における位置関係は互いに一致する。
【0036】
このように、第2の実施形態によるコモンモードフィルタ2によれば、第1のワイヤW1と第2のワイヤW2の対称性がより高められることから、モード変換特性をより改善することが可能となる。尚、第1のレイヤ巻き部L1のターン数と第2のレイヤ巻き部L2のターン数については、合計ターン数が偶数である場合には1/2ずつ割り当てることによって第1のレイヤ巻き部L1のターン数と第2のレイヤ巻き部L2のターン数を一致させることが好ましい。一方、合計ターン数が奇数である場合には第1のレイヤ巻き部L1のターン数と第2のレイヤ巻き部L2のターン数の差を1ターンとすることによって、ターン数の差を最小限に抑えることが好ましい。
【0037】
図9は、第3の実施形態によるコモンモードフィルタ3における第1及び第2のワイヤW1,W2の巻回レイアウトを説明するための模式的な平面図である。
【0038】
図9に示すように、第3の実施形態によるコモンモードフィルタ3は、レイヤ巻き部Lが第1~第3のレイヤ巻き部L1~L3に分割され、且つ、第2のレイヤ巻き部L2と第3のレイヤ巻き部L3の間に第4の交差部C4が設けられている点において、第2の実施形態によるコモンモードフィルタ2と相違している。その他の基本的な構成は、第2の実施形態によるコモンモードフィルタ2と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0039】
第3のレイヤ巻き部L3は、第1のワイヤW1が下層に巻回され第2のワイヤW2が上層に巻回されるよう整列してレイヤ巻きされている。
図9に示す例ではレイヤ巻き部L1,L3のターン数がいずれも5ターンであり、レイヤ巻き部L2のターン数が4ターンであるが、レイヤ巻き部L1~L3のターン数については特に限定されない。但し、第1のレイヤ巻き部L1のターン数と第3のレイヤ巻き部L3のターン数については、互いに一致させることが好ましい。尚、第1のレイヤ巻き部L1においては、継線部32aから数えて第2のワイヤW2の第2ターンが例外的に下層に位置しており、第2のレイヤ巻き部L2においては、継線部31aから数えて第1のワイヤW1の第6ターンが例外的に下層に位置しており、第3のレイヤ巻き部L3においては、継線部32aから数えて第2のワイヤW2の第11ターンが例外的に下層に位置している。
【0040】
このように、第3の実施形態によるコモンモードフィルタ3は、3つのレイヤ巻き部L1~L3を有し、レイヤ巻き部L1における第1及び第2のワイヤW1,W2の上下位置と、レイヤ巻き部L2における第1及び第2のワイヤW1,W2の上下位置が逆転しており、且つ、レイヤ巻き部L2における第1及び第2のワイヤW1,W2の上下位置と、レイヤ巻き部L3における第1及び第2のワイヤW1,W2の上下位置が逆転していることから、第1のワイヤW1の長さと第2のワイヤW2の長さの差を短縮することができる。しかも、第1及び第2のワイヤW1,W2が第1のレイヤ巻き部L1と第2のレイヤ巻き部L2の間、並びに、第2のレイヤ巻き部L2と第3のレイヤ巻き部L3の間で交差していることから、第1のワイヤW1と第2のワイヤW2の対称性をより高めることが可能となる。
【0041】
さらに、第3の実施形態によるコモンモードフィルタ3においては、レイヤ巻き部Lが3つに分割されていることから寄生キャパシタンス成分が低減する。これにより、高周波帯域における信号特性をよりいっそう高めることが可能となる。
【0042】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0043】
1~3,1A,1B コモンモードフィルタ
10 ドラム型コア
11,12 鍔部
11b,12b 実装面
11s,12s 外側面
11t,12t 上面
13 巻芯部
20 板状コア
31~34 端子電極
31a~34a 継線部
41~44 巻回面
51,53 始点
52,54 終点
C1~C4,CE 交差部
E1~E4 エッジ
L,L1~L3 レイヤ巻き部
S1,S2 区間
W1,W2 ワイヤ