IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグの製造方法 図1
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグの製造方法 図2
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグの製造方法 図3
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグの製造方法 図4
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグの製造方法 図5
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグの製造方法 図6
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグの製造方法 図7
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグの製造方法 図8
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグの製造方法 図9
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグの製造方法 図10
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグの製造方法 図11
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグの製造方法 図12
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグの製造方法 図13
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグの製造方法 図14
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグの製造方法 図15
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグの製造方法 図16
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグの製造方法 図17
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグの製造方法 図18
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグの製造方法 図19
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグの製造方法 図20
  • 特許-内燃機関用のスパークプラグの製造方法 図21
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】内燃機関用のスパークプラグの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/20 20060101AFI20240123BHJP
   H01T 13/54 20060101ALI20240123BHJP
   H01T 21/02 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
H01T13/20 E
H01T13/20 B
H01T13/54
H01T21/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020109739
(22)【出願日】2020-06-25
(65)【公開番号】P2022007058
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪原 孝之
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 明光
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-53225(JP,A)
【文献】特開2006-244867(JP,A)
【文献】特開2019-46660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/20
H01T 13/54
H01T 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の絶縁碍子(3)と、該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、該ハウジングの先端部に接合されたカップ部材(5)と、上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、を有する、内燃機関用のスパークプラグ(1)、を製造する方法であって、
上記放電ギャップは、互いに対向する上記中心電極の中心放電面(41)と上記接地電極の接地放電面(61)との間に形成されており、
上記ハウジングに上記カップ部材を組みつける際に、
上記絶縁碍子を介して上記ハウジングに固定された上記中心電極の上記中心放電面と、上記カップ部材に固定された上記接地電極の上記接地放電面と、を当接させる当接工程と、
該当接工程の後に、上記ハウジングに対して上記カップ部材を上記中心放電面と上記接地放電面との対向方向(X)にスライドさせることにより上記中心放電面から上記接地放電面を離隔させ、上記放電ギャップを形成する離隔工程と、
該離隔工程の後に、上記ハウジングと上記カップ部材とを接合するカップ接合工程と、を行う、内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
【請求項2】
上記ハウジングは、先端部に平坦な先端側面(21)を有し、
上記カップ部材は、基端部に平坦な基端側面(52)を有し、
上記カップ接合工程において、上記先端側面と上記基端側面とは互いに当接している、請求項1に記載の内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
【請求項3】
筒状の絶縁碍子(3)と、該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、該ハウジングの先端部に接合されたカップ部材(5)と、上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、を有する、内燃機関用のスパークプラグ(1)、を製造する方法であって、
上記放電ギャップは、互いに対向する上記中心電極の中心放電面(41)と上記接地電極の接地放電面(61)との間に形成されており、
上記カップ部材には、上記中心放電面と上記接地放電面との対向方向(X)に、上記接地電極を挿通させる挿通穴(53)が形成されており、
上記ハウジングに上記カップ部材を接合するカップ接合工程と、
該カップ接合工程の後に、上記挿通穴に挿通させた上記接地電極を上記挿通穴に対して挿通方向にスライドさせることにより、上記中心放電面に上記接地放電面を当接させる当接工程と、
該当接工程の後に、上記挿通穴に対して上記接地電極を挿通方向にスライドさせることにより上記中心放電面から上記接地放電面を離隔させ、上記放電ギャップを形成する離隔工程と、
該離隔工程の後に、上記接地電極と上記カップ部材とを接合する電極接合工程と、を行う、内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
【請求項4】
上記電極接合工程において、上記挿通穴の内周面(531)と上記接地電極とは少なくとも一部同士が当接している、請求項3に記載の内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
【請求項5】
上記電極接合工程後の上記スパークプラグは、上記接地電極の一部が上記カップ部材の外側面(55)から外側へ突出した外側突出部(63)を有し、
上記電極接合工程の後に、上記外側突出部を切除する切断工程を行う、請求項3又は4に記載の内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
【請求項6】
筒状の絶縁碍子(3)と、該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、を有する、内燃機関用のスパークプラグ(1)、を製造する方法であって、
上記放電ギャップは、互いに対向する上記中心電極の中心放電面(41)と上記接地電極の接地放電面(61)との間に形成されており、
上記ハウジングには、上記中心放電面と上記接地放電面との対向方向(X)に、上記接地電極を挿通させる挿通穴(22)が形成されており、
上記挿通穴に挿通させた上記接地電極を上記挿通穴に対して挿通方向にスライドさせることにより、上記中心放電面に上記接地放電面を当接させる当接工程と、
該当接工程の後に、上記挿通穴に対して上記接地電極を挿通方向にスライドさせることにより上記中心放電面から上記接地放電面を離隔させ、上記放電ギャップを形成する離隔工程と、
該離隔工程の後に、上記接地電極と上記ハウジングとを接合する電極接合工程と、を行う、内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
【請求項7】
上記電極接合工程において、上記挿通穴の内周面(221)と上記接地電極とは少なくとも一部同士が当接している、請求項6に記載の内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
【請求項8】
上記電極接合工程後の上記スパークプラグは、上記接地電極の一部が上記ハウジングの外側面(25)から外側へ突出した外側突出部(63)を有し、
上記電極接合工程の後に、上記外側突出部を切除する切断工程を行う、請求項6又は7に記載の内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用のスパークプラグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハウジングの先端部に設けられたカップ部材の内側に放電ギャップが形成されたスパークプラグが、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されたスパークプラグは、接地電極がハウジングの先端部に固定されており、放電ギャップを調整した後に、カップ部材をハウジングに接合することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-103179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ハウジングの先端部よりも基端側、又はカップ部材等に接地電極を固定する場合、放電ギャップを直接確認しにくく、放電ギャップを所望の長さに調整しにくい場合がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、放電ギャップを形成する際、放電ギャップを直接確認しにくい場合であっても、放電ギャップを所望の長さに調整することができる、内燃機関用のスパークプラグの製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、筒状の絶縁碍子(3)と、該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、該ハウジングの先端部に接合されたカップ部材(5)と、上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、を有する、内燃機関用のスパークプラグ(1)、を製造する方法であって、
上記放電ギャップは、互いに対向する上記中心電極の中心放電面(41)と上記接地電極の接地放電面(61)との間に形成されており、
上記ハウジングに上記カップ部材を組みつける際に、
上記絶縁碍子を介して上記ハウジングに固定された上記中心電極の上記中心放電面と、上記カップ部材に固定された上記接地電極の上記接地放電面と、を当接させる当接工程と、
該当接工程の後に、上記ハウジングに対して上記カップ部材を上記中心放電面と上記接地放電面との対向方向(X)にスライドさせることにより上記中心放電面から上記接地放電面を離隔させ、上記放電ギャップを形成する離隔工程と、
該離隔工程の後に、上記ハウジングと上記カップ部材とを接合するカップ接合工程と、を行う、内燃機関用のスパークプラグの製造方法にある。
【0007】
本発明の第2の態様は、筒状の絶縁碍子(3)と、該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、該ハウジングの先端部に接合されたカップ部材(5)と、上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、を有する、内燃機関用のスパークプラグ(1)、を製造する方法であって、
上記放電ギャップは、互いに対向する上記中心電極の中心放電面(41)と上記接地電極の接地放電面(61)との間に形成されており、
上記カップ部材には、上記中心放電面と上記接地放電面との対向方向(X)に、上記接地電極を挿通させる挿通穴(53)が形成されており、
上記ハウジングに上記カップ部材を接合するカップ接合工程と、
該カップ接合工程の後に、上記挿通穴に挿通させた上記接地電極を上記挿通穴に対して挿通方向にスライドさせることにより、上記中心放電面に上記接地放電面を当接させる当接工程と、
該当接工程の後に、上記挿通穴に対して上記接地電極を挿通方向にスライドさせることにより上記中心放電面から上記接地放電面を離隔させ、上記放電ギャップを形成する離隔工程と、
該離隔工程の後に、上記接地電極と上記カップ部材とを接合する電極接合工程と、を行う、内燃機関用のスパークプラグの製造方法にある。
【0008】
本発明の第3の態様は、筒状の絶縁碍子(3)と、該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、を有する、内燃機関用のスパークプラグ(1)、を製造する方法であって、
上記放電ギャップは、互いに対向する上記中心電極の中心放電面(41)と上記接地電極の接地放電面(61)との間に形成されており、
上記ハウジングには、上記中心放電面と上記接地放電面との対向方向(X)に、上記接地電極を挿通させる挿通穴(22)が形成されており、
上記挿通穴に挿通させた上記接地電極を上記挿通穴に対して挿通方向にスライドさせることにより、上記中心放電面に上記接地放電面を当接させる当接工程と、
該当接工程の後に、上記挿通穴に対して上記接地電極を挿通方向にスライドさせることにより上記中心放電面から上記接地放電面を離隔させ、上記放電ギャップを形成する離隔工程と、
該離隔工程の後に、上記接地電極と上記ハウジングとを接合する電極接合工程と、を行う、内燃機関用のスパークプラグの製造方法にある。
【発明の効果】
【0009】
第1の態様の内燃機関用のスパークプラグの製造方法は、ハウジングに対し、接地電極が固定されたカップ部材を組み付ける際に、中心放電面に接地放電面を当接させる。その後、放電ギャップの長さだけ、カップ部材をハウジングに対して中心放電面と接地放電面との対向方向にスライドさせることにより放電ギャップを形成する。それゆえ、放電ギャップを直接確認することなく、放電ギャップの長さを調整することができる。その結果、放電ギャップを形成する際、放電ギャップを直接確認しにくい場合であっても、放電ギャップを所望の長さに調整することができる。
【0010】
第2の態様の内燃機関用のスパークプラグの製造方法は、ハウジングにカップ部材を接合した後に、接地電極をカップ部材の挿通穴に挿通させてスライドさせることにより、中心放電面に接地放電面を当接させる。その後、放電ギャップの長さだけ、接地電極を挿通穴に対して挿通方向にスライドさせることにより放電ギャップを形成する。それゆえ、放電ギャップを直接確認することなく、放電ギャップの長さを調整することができる。その結果、放電ギャップを形成する際、放電ギャップを直接確認しにくい場合であっても、放電ギャップを所望の長さに調整することができる。
【0011】
第3の態様の内燃機関用のスパークプラグの製造方法は、接地電極をハウジングの挿通穴に挿通させてスライドさせることにより、中心放電面に接地放電面を当接させる。その後、放電ギャップの長さだけ、接地電極を挿通穴に対して挿通方向にスライドさせることにより放電ギャップを形成する。それゆえ、放電ギャップを直接確認することなく、放電ギャップの長さを調整することができる。その結果、放電ギャップを形成する際、放電ギャップを直接確認しにくい場合であっても、放電ギャップを所望の長さに調整することができる。
【0012】
以上のごとく、上記態様によれば、放電ギャップを形成する際、放電ギャップを直接確認しにくい場合であっても、放電ギャップを所望の長さに調整することができる、内燃機関用のスパークプラグの製造方法を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態1における、スパークプラグの断面図。
図2】実施形態1における、スパークプラグの先端部の断面図。
図3】実施形態1における、中心放電面と接地放電面とを当接させた状態を示す、スパークプラグの先端部の断面図。
図4】実験例1における、放電ギャップの長さと初期燃焼期間との関係を示すグラフ。
図5】実施形態2における、スパークプラグの先端部の断面図。
図6】実施形態2における、中心放電面と接地放電面とを当接させた状態を示す、スパークプラグの先端部の断面図。
図7】実施形態3における、スパークプラグの先端部の断面図。
図8】実施形態3における、接地電極を挿通穴に挿通する前のスパークプラグの先端部の断面図。
図9】実施形態3における、中心放電面と接地放電面とを当接させた状態を示す、スパークプラグの先端部の断面図。
図10】実施形態3における、外側突出部を切除する前のスパークプラグの先端部の断面図。
図11】実施形態3における、外側突出部を切除した後のスパークプラグの先端部の断面図。
図12】実施形態4における、スパークプラグの先端部の断面図。
図13】実施形態4における、接地電極を挿通穴に挿通する前のスパークプラグの先端部の断面図。
図14】実施形態4における、中心放電面と接地放電面とを当接させた状態を示す、スパークプラグの先端部の断面図。
図15】実施形態4における、外側突出部を切除する前のスパークプラグの先端部の断面図。
図16】実施形態4における、外側突出部を切除した後のスパークプラグの先端部の断面図。
図17】実施形態5における、スパークプラグの先端部の断面図。
図18】実施形態5における、接地電極を挿通穴に挿通する前のスパークプラグの先端部の断面図。
図19】実施形態5における、中心放電面と接地放電面とを当接させた状態を示す、スパークプラグの先端部の断面図。
図20】実施形態5における、外側突出部を切除する前のスパークプラグの先端部の断面図。
図21】実施形態5における、外側突出部を切除した後のスパークプラグの先端部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
内燃機関用のスパークプラグの製造方法に係る実施形態について、図1図3を参照して説明する。
本形態において、内燃機関用のスパークプラグは、図1に示すごとく、筒状の絶縁碍子3と、中心電極4と、筒状のハウジング2と、カップ部材5と、接地電極6と、を有する。中心電極4は、絶縁碍子3の内周側に保持されると共に絶縁碍子3から先端側に突出している。ハウジング2は、絶縁碍子3を内周側に保持する。カップ部材5は、ハウジング2の先端部に接合されている。接地電極6は、中心電極4との間に放電ギャップGを形成する。放電ギャップGは、図2に示すごとく、互いに対向する中心電極4の中心放電面41と接地電極6の接地放電面61との間に形成されている。
【0015】
本形態の内燃機関用のスパークプラグの製造方法は、ハウジング2にカップ部材5を組みつける際に、当接工程と、離隔工程と、カップ接合工程と、を行う。当接工程では、図3に示すごとく、絶縁碍子3を介してハウジング2に固定された中心電極4の中心放電面41と、カップ部材5に固定された接地電極6の接地放電面61と、を当接させる。離隔工程では、当接工程の後に、図3の矢印Sに示すごとく、ハウジング2に対してカップ部材5を中心放電面41と接地放電面61との対向方向Xにスライドさせることにより中心放電面41から接地放電面61を離隔させ、放電ギャップGを形成する。カップ接合工程では、離隔工程の後に、ハウジング2とカップ部材5とを接合する。
【0016】
本明細書において、スパークプラグ1の中心軸Cに平行な方向を、適宜、Y方向という。また、中心放電面41と接地放電面61との対向方向Xを、単に、X方向ともいう。また、Y方向における点火コイル(図示略)と接続される側を基端側といい、その反対側を先端側という。
【0017】
本形態において、中心電極4は、全体として略円柱状をなしている。本形態において、中心電極4は、図1に示すごとく、スパークプラグ1の中心軸Cに沿うように配置されている。図2に示すごとく、中心電極4の先端部には、チップ42が接合されている。本形態において、中心放電面41は、チップ42に形成されている。チップ42は、例えば、イリジウムや白金等の貴金属、又はこれらを主成分とする合金からなる。
【0018】
中心電極4を保持する絶縁碍子3は、図1に示すごとく、筒状のハウジング2によって保持されている。本形態において、カップ部材5は、溶接によって、ハウジング2の先端部に接合されている。
【0019】
ハウジング2は、図2に示すごとく、先端部に平坦な先端側面21を有する。カップ部材5は、基端部に平坦な基端側面52を有する。カップ接合工程において、先端側面21と基端側面52とは互いに当接している。
【0020】
先端側面21と基端側面52とは、Y方向から見たとき、それぞれ環状をなしている(図示略)。本形態において、先端側面21と基端側面52とは、それぞれ、Y方向に直交した面となっている。
【0021】
図1図2に示すごとく、カップ部材5には、複数の噴孔51が形成されている。本形態において、カップ部材5は、図2に示すごとく、噴孔51として、Y方向に沿って開口した軸方向噴孔511と、Y方向に対して傾斜した方向に開口した傾斜噴孔512とを有する。
【0022】
軸方向噴孔511は、カップ部材5の先端部に、1つ設けられている。軸方向噴孔511は、Y方向における略中央から基端側に向かって拡径している。
【0023】
傾斜噴孔512は、プラグ周方向に等間隔で複数設けられている(図示略)。複数の傾斜噴孔512は、開口方向が放射状となっている。そして、傾斜噴孔512は、先端側へ行くほど外へ向かうように、Y方向に対して傾斜して開口している。なお、本明細書において、プラグ周方向とは、プラグ中心軸Cに直交する平面上において、プラグ中心軸Cを中心とする円周方向を意味する。
【0024】
また、図1に示すごとく、絶縁碍子3の先端側には、カップ部材5とハウジング2とによって囲われた副燃焼室50が形成されている。放電ギャップGは、副燃焼室50に配置されている。
【0025】
また、図1図2に示すごとく、カップ部材5には、接地電極6が固定されている。ここで、「固定されている」とは、カップ部材5に対し、カップ部材5とは別部材の接地電極6が固定されていることに加え、カップ部材5と接地電極6とが一体に形成されていることも意味する。本形態において、接地電極6は、当接工程前のカップ部材5に対し、溶接によって接合されている。また、接地電極6の先端部が、カップ部材5に接合されている。
【0026】
接地電極6は、全体として略直方体形状をなしている。接地電極6は、長手方向がY方向に沿うように、カップ部材5に接合されている。接地電極6は、プラグ径方向において、スパークプラグ1の中心軸Cから離れた位置に配置されている。なお、プラグ径方向とは、プラグ中心軸Cに直交する平面上において、プラグ中心軸Cを中心とする円の半径方向を意味する。
【0027】
図2に示すごとく、接地電極6の基端側の端部には、チップ62が接合されている。言い換えると、接地電極6における長手方向の一方の端部には、チップ62が接合されている。チップ62が接合された接地電極6の端部は、副燃焼室50に面している。チップ62は、X方向において、中心電極4のチップ42と対向している。本形態において、接地放電面61は、チップ62に形成されている。そして、接地電極6におけるチップ62の接地放電面61と、中心電極4におけるチップ42の中心放電面41と、の間に放電ギャップGが形成されている。接地電極6のチップ62は、例えば、中心電極4のチップ42と同様に、イリジウムや白金等の貴金属、又はこれらを主成分とする合金からなる。
【0028】
中心放電面41と接地放電面61とは、それぞれ平坦な面となっている。また、中心放電面41と接地放電面61とは、それぞれX方向に対し直交した面となっている。本形態において、X方向は、Y方向に直交する方向である。
【0029】
また、上記のごとく、ハウジング2に、接地電極6が固定されたカップ部材5を接合するにあたって、当接工程と、離隔工程と、カップ接合工程とを行う。次に、各工程につき、具体的に説明する。
【0030】
本形態において、当接工程では、ハウジング2の先端側面21とカップ部材5の基端側面52とをY方向に当接させた状態にて、ハウジング2に対してカップ部材5を摺動させることにより、図3に示すごとく、中心放電面41と接地放電面61とを当接させる。つまり、当接工程では、中心放電面41と接地放電面61との間に放電ギャップGが形成されていない状態とする。
【0031】
次に、離隔工程では、図3の矢印Sに示すごとく、接地放電面61が中心放電面41から離れるように、ハウジング2に対してカップ部材5をX方向の一方にスライドさせる。このとき、カップ部材5は、ハウジング2に対し、放電ギャップGの長さだけ、X方向にスライドさせる。これにより、放電ギャップGの長さを、所望の長さとすることができる。なお、離隔工程では、例えば、マニピュレータを用いてカップ部材5をスライドさせることにより、放電ギャップGを形成することができる。
【0032】
また、本形態における離隔工程では、ハウジング2の先端側面21とカップ部材5の基端側面52とを当接させた状態にて、ハウジング2に対しカップ部材5を摺動させる。
【0033】
次に、カップ接合工程では、ハウジング2とカップ部材5とを接合する。本形態においては、互いに当接しているハウジング2の先端側面21とカップ部材5の基端側面52とを、接合させる。これにより、図1図2に示すごとく、本形態のスパークプラグ1を作製することができる。
【0034】
次に、本形態の作用効果につき説明する。
本形態における内燃機関用のスパークプラグ1の製造方法は、ハウジング2に対し、接地電極6が固定されたカップ部材5を組み付ける際に、中心放電面41に接地放電面61を当接させる。その後、放電ギャップGの長さだけ、カップ部材5をハウジング2に対して中心放電面41と接地放電面61との対向方向Xにスライドさせることにより放電ギャップGを形成する。それゆえ、放電ギャップGを直接確認することなく、放電ギャップGの長さを調整することができる。その結果、放電ギャップGを形成する際、放電ギャップGを直接確認しにくい場合であっても、放電ギャップGを所望の長さに調整することができる。
【0035】
つまり、離隔工程において、ハウジング2に対するカップ部材5のX方向における移動距離が、放電ギャップGの長さとなる。それゆえ、ハウジング2に対するカップ部材5のX方向における移動距離を調整することにより、放電ギャップGを直接確認することなく、放電ギャップGの長さを調整することができる。
【0036】
また、カップ接合工程において、先端側面21と基端側面52とは互いに当接している。それゆえ、抵抗溶接等によってハウジング2に対しカップ部材5を接合する際、確実に接合することができる。
【0037】
また、先端側面21と基端側面52とは、それぞれ、Y方向に直交した面となっている。また、本形態における離隔工程では、ハウジング2の先端側面21とカップ部材5の基端側面52とを当接させた状態にて、ハウジング2に対しカップ部材5を摺動させる。それゆえ、離隔工程において、中心放電面41に対し、接地放電面61がY方向にずれることなく、放電ギャップGを形成することができる。その結果、放電ギャップGを、確実に所望の位置に形成することができる。
【0038】
以上のごとく、本形態によれば、放電ギャップGを形成する際、放電ギャップGを直接確認しにくい場合であっても、放電ギャップGを所望の長さに調整することができる、内燃機関用のスパークプラグ1の製造方法を提供することができる。
【0039】
(実験例1)
本例は、図4のグラフに示すごとく、基本構造を実施形態1と同様とするスパークプラグを設置した内燃機関において、放電ギャップの長さと初期燃焼期間との関係を評価した例である。グラフにおいて、横軸が放電ギャップの長さ、縦軸が初期燃焼期間を示す。図4には、実際の計測値をグラフにプロットし、その近似曲線を示した。なお、初期燃焼期間とは、スパークプラグによる混合気の点火から、内燃機関の主燃焼室(図示略)に導入された燃料の10重量%が燃焼するまでの期間をいう。
【0040】
図4のグラフに示すように、放電ギャップの長さによって、初期燃焼期間が異なる。そして、放電ギャップの長さが所定の範囲よりも短くなるにしたがって、初期燃焼期間が長くなっている。また、放電ギャップの長さが所定の範囲よりも長くなるにしたがって、初期燃焼期間が長くなっている。
【0041】
放電ギャップの長さの適正な範囲は、例えば、図4のグラフ中に示すように、長さDを中央値として、長さDよりも長さdだけ短い値と、長さDよりも長さdだけ長い値との間の範囲とすることができる。つまり、放電ギャップの長さが、この範囲内にあるとき、初期燃焼期間を所定の時間よりも短くすることができる。これにより、内燃機関の燃費を向上させることができる。長さDは、例えば、0.7~1.0mmである。また、長さdは、例えば、0.2~0.3mmである。
【0042】
このように、放電ギャップの長さは、内燃機関の燃費を良好に保つうえで、極めて重要である。そして、適切な放電ギャップの長さの許容範囲は極めて小さい。したがって、スパークプラグの製造過程における放電ギャップの長さ調整は、高精度に行う必要がある。その一方で、上述のように、放電ギャップを直接確認しにくい場合もある。かかる状況において、高精度の放電ギャップの調整を可能にする点で、実施形態1に示した製造方法は有意である。
【0043】
(実施形態2)
本形態は、図5図6に示すごとく、接地電極6が固定されたカップ部材5を、Y方向にスライドさせることにより放電ギャップGを形成する形態である。
【0044】
本形態において、ハウジング2とカップ部材5とは、図5に示すごとく、それぞれ薄肉部23、54を有する。つまり、ハウジング2の先端部には、筒状の薄肉部23が形成されている。また、カップ部材5の基端部には、筒状の薄肉部54が形成されている。それぞれの薄肉部23、54は、Y方向に直交する断面形状が略円環状となっている(図示略)。
【0045】
薄肉部23のプラグ径方向における厚みは、ハウジング2における他の部位よりも薄い。また、薄肉部54のプラグ径方向における厚みは、カップ部材5における他の部位よりも薄い。ここで、「他の部位よりも薄い」とは、薄肉部23、54のプラグ径方向における厚みの平均が、ハウジング2又はカップ部材5における薄肉部23、54以外の部位の厚みの平均よりも薄いことを意味する。
【0046】
また、ハウジング2の薄肉部23の外径よりも、カップ部材5の薄肉部54の外径の方が大きい。また、薄肉部23の外径と、薄肉部54の内径とは、略同じ大きさとなっている。つまり、薄肉部23の外周面と薄肉部54の内周面とは接している。なお、薄肉部54の外径よりも、薄肉部23の外径の方が大きい構成とすることもできる。この場合には、薄肉部54の外周面と薄肉部23の内周面とが接することとなる。
【0047】
本形態において、接地電極6は、スパークプラグ1の中心軸Cに沿った状態にて、カップ部材5に固定されている。接地電極6の基端部に、接地放電面61が形成されている。接地放電面61は、Y方向に直交するように形成されている。接地放電面61は、基端側を向いている。
【0048】
また、中心放電面41も、Y方向に直交するように形成されている。中心放電面41は、先端側を向いている。接地放電面61と、中心放電面41とは、Y方向に対向している。つまり、中心放電面41と接地放電面61との対向方向Xは、Y方向と同じ方向となっている。
【0049】
次に、各工程につき、以下に具体的に説明する。
当接工程では、ハウジング2の薄肉部23の外周面と、カップ部材5の薄肉部54の内周面とをプラグ径方向に当接させた状態にて、ハウジング2に対しカップ部材5を摺動させる。具体的には、ハウジング2に対し、カップ部材5をY方向の基端側にスライドさせることにより、図6に示すごとく、中心放電面41と接地放電面61とを当接させる。
【0050】
次に、離隔工程では、図6の矢印Sに示すごとく、接地放電面61が中心放電面41から離れるように、ハウジング2に対してカップ部材5をY方向の先端側にスライドさせる。このとき、カップ部材5は、ハウジング2に対し、放電ギャップGの長さだけ、Y方向の先端側にスライドさせる。
【0051】
また、本形態における離隔工程では、ハウジング2の薄肉部23の外周面と、カップ部材5の薄肉部54の内周面とをプラグ径方向に当接させた状態にて、ハウジング2に対しカップ部材5を摺動させる。
【0052】
次に、本形態のカップ接合工程では、互いに当接しているハウジング2の薄肉部23の外周面と、カップ部材5の薄肉部54の内周面とを、接合させる。これにより、図5に示すごとく、本形態のスパークプラグ1を作製することができる。
その他は、実施形態1と同様である。
なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0053】
本形態における離隔工程では、ハウジング2の薄肉部23の外周面と、カップ部材5の薄肉部54の内周面とをプラグ径方向に当接させた状態にて、ハウジング2に対しカップ部材5を摺動させる。それゆえ、離隔工程において、中心放電面41に対し接地放電面61がプラグ径方向にずれることなく、放電ギャップGを形成することができる。その結果、放電ギャップGを、確実に所望の位置に形成することができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0054】
(実施形態3)
本形態は、図7図11に示すごとく、カップ部材5に対し、接地電極6をスライドさせることにより放電ギャップGを形成する形態である。
【0055】
本形態において、カップ部材5には、図7図11に示すごとく、中心放電面41と接地放電面61との対向方向Xに、接地電極6を挿通させる挿通穴53が形成されている。
【0056】
本形態の内燃機関用のスパークプラグ1の製造方法は、カップ接合工程と、当接工程と、離隔工程と、電極接合工程と、を行う。カップ接合工程では、ハウジング2にカップ部材5を接合する。当接工程では、図9に示すごとく、カップ接合工程の後に、挿通穴53に挿通させた接地電極6を挿通穴53に対して挿通方向にスライドさせることにより、中心放電面41に接地放電面61を当接させる。離隔工程では、当接工程の後に、挿通穴53に対して接地電極6を挿通方向にスライドさせることにより中心放電面41から接地放電面61を離隔させ、放電ギャップGを形成する。電極接合工程では、離隔工程の後に、接地電極6とカップ部材5とを接合する。
【0057】
電極接合工程において、挿通穴53の内周面531と接地電極6とは少なくとも一部同士が当接している。
【0058】
本形態において、挿通穴53は、接地電極6に対応した大きさとなっている。そのため、電極接合工程において接地電極6を接合する際、挿通穴53の内周面531全体が、接地電極6の外周面と当接している。
【0059】
また、挿通穴53は、図7図8に示すごとく、副燃焼室50と外部とを連通するように形成されている。本形態において、挿通穴53は、カップ部材5の基端部に形成された基端面520よりも先端側において、カップ部材5を貫通することにより形成されている。ただし、挿通穴53は、基端面520の一部を先端側に後退させることにより形成されるカップ部材5の凹部と、ハウジング2の先端部に形成された先端面210とによって形成することもできる。また、挿通穴53は、基端面520の一部を先端側に後退させることにより形成されるカップ部材5の凹部と、先端面210の一部を基端側に後退させることにより形成されるハウジング2の凹部とによって形成することもできる。これらの構成も、「カップ部材5に挿通穴53が形成されている」構成に含まれる。
【0060】
また、挿通穴53は、中心放電面41とX方向に対向している。つまり、挿通穴53と、中心放電面41と、接地放電面61との並び方向が、X方向となっている。
【0061】
接地電極6は、図7に示すごとく、接地電極6の長手方向が、Y方向と直交するように、カップ部材5に接合されている。本形態において、接地電極6の長手方向は、X方向となっている。
【0062】
また、中心電極4は、カップ接合工程の前に、絶縁碍子3を介してハウジング2に固定される。本形態においては、中心電極4の中心放電面41が、ハウジング2の先端部よりも先端側に位置するように、ハウジング2に対して中心電極4を固定する。
【0063】
次に、各工程につき、具体的に説明する。
本形態において、カップ接合工程では、接地電極6を挿通させていないカップ部材5を、ハウジング2に接合する(図示略)。このとき、挿通穴53が中心放電面41とX方向に対向するように、カップ部材5を接合する。
【0064】
次に、当接工程では、図8の矢印Sに示すごとく、まず、カップ部材5の挿通穴53に、接地電極6を挿通させる。そして、接地電極6をX方向にスライドさせることにより、図9に示すごとく、中心放電面41と接地放電面61とを当接させる。
【0065】
次に、離隔工程では、図9の矢印Sに示すごとく、接地放電面61が中心放電面41から離れるように、挿通穴53に対して接地電極6をX方向にスライドさせる。このとき、接地電極6は、挿通穴53に対し、放電ギャップGの長さだけ、X方向にスライドさせる。これにより、図10に示すごとく、放電ギャップGの長さを、所望の長さとすることができる。
【0066】
次に、電極接合工程では、接地電極6とカップ部材5とを接合する。本形態においては、互いに当接している挿通穴53の内周面531と接地電極6の外周面とを、接合させる。
【0067】
本形態において、電極接合工程後のスパークプラグ1は、図10に示すごとく、接地電極6の一部がカップ部材5の外側面55から外側へ突出した外側突出部63を有する。電極接合工程の後に、図11に示すごとく、外側突出部63を切除する切断工程を行う。
【0068】
切断工程において、外側突出部63は、例えば、切削等によって切除することができる。
【0069】
上述のように、当接工程から切断工程までを行うことにより、図7に示すごとく、本形態のスパークプラグ1を作製することができる。
その他は、実施形態1と同様である。
【0070】
本形態における内燃機関用のスパークプラグ1の製造方法は、ハウジング2にカップ部材5を接合した後に、接地電極6をカップ部材5の挿通穴53に挿通させてスライドさせることにより、中心放電面41に接地放電面61を当接させる。その後、放電ギャップGの長さだけ、接地電極6を挿通穴53に対して挿通方向にスライドさせることにより放電ギャップGを形成する。それゆえ、放電ギャップGを直接確認することなく、放電ギャップGの長さを調整することができる。その結果、放電ギャップGを形成する際、放電ギャップGを直接確認しにくい場合であっても、放電ギャップGを所望の長さに調整することができる。
【0071】
電極接合工程において、挿通穴53の内周面531と接地電極6とは少なくとも一部同士が当接している。それゆえ、抵抗溶接等によってカップ部材5に対し接地電極6を接合する際、確実に接合することができる。
【0072】
本形態においては、電極接合工程の後に、外側突出部63を切除する切断工程を行う。それゆえ、スパークプラグ1を内燃機関に設置する際、接地電極6が内燃機関の被設置部と干渉しにくい。その結果、スパークプラグ1を、内燃機関に対し、スムーズに設置することができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0073】
(実施形態4)
本形態は、図12図16に示すごとく、接地電極6をY方向にスライドさせることにより放電ギャップGを形成する形態である。
【0074】
挿通穴53は、図12図16に示すごとく、中心放電面41とY方向に対向している。つまり、挿通穴53と、中心放電面41と、接地放電面61との並び方向が、Y方向となっている。
【0075】
本形態において、接地電極6は、図12に示すごとく、スパークプラグ1の中心軸Cに沿った状態にて、カップ部材5に接合されている。接地放電面61は、Y方向に直交するように形成されている。接地放電面61は、基端側を向いている。
【0076】
また、中心放電面41も、Y方向に直交するように形成されている。中心放電面41は、先端側を向いている。接地放電面61と、中心放電面41とは、Y方向に対向している。つまり、中心放電面41と接地放電面61との対向方向Xは、Y方向となっている。
【0077】
次に、各工程につき、以下に具体的に説明する。
本形態において、当接工程では、まず、図13の矢印Sに示すごとく、カップ部材5の挿通穴53に、接地電極6をY方向に挿通させる。そして、接地電極6をY方向にスライドさせることにより、図14に示すごとく、中心放電面41と接地放電面61とを当接させる。
【0078】
次に、離隔工程では、図14の矢印Sに示すごとく、接地放電面61が中心放電面41から離れるように、挿通穴53に対して接地電極6をY方向にスライドさせる。このとき、接地電極6は、挿通穴53に対し、放電ギャップGの長さだけ、Y方向にスライドさせる。これにより、図15に示すごとく、放電ギャップGの長さを、所望の長さとすることができる。
【0079】
次に、電極接合工程では、接地電極6とカップ部材5とを接合する。本形態においては、互いに当接している挿通穴53の内周面531と接地電極6の外周面とを、接合させる。
【0080】
次いで、電極接合工程の後に、図16に示すごとく、外側突出部63を切除する切断工程を行う。これにより、図12に示すごとく、本形態のスパークプラグ1を作製することができる。
その他の構成及び作用効果は、実施形態3と同様である。
【0081】
(実施形態5)
本形態は、図17図21に示すごとく、ハウジング2に挿通穴22を設けた形態である。本形態において、ハウジング2の先端部には、カップ部材5が設けられている。ただし、スパークプラグ1は、カップ部材5を有しないものとすることもできる。
【0082】
本形態において、ハウジング2には、図17図21に示すごとく、中心放電面41と接地放電面61との対向方向Xに、接地電極6を挿通させる挿通穴22が形成されている。
【0083】
本形態の内燃機関用のスパークプラグ1の製造方法は、当接工程と、離隔工程と、電極接合工程と、を行う。当接工程では、図19に示すごとく、挿通穴22に挿通させた接地電極6を挿通穴22に対して挿通方向にスライドさせることにより、中心放電面41に接地放電面61を当接させる。離隔工程では、当接工程の後に、挿通穴22に対して接地電極6を挿通方向にスライドさせることにより中心放電面41から接地放電面61を離隔させ、放電ギャップGを形成する。電極接合工程では、離隔工程の後に、接地電極6とハウジング2とを接合する。
【0084】
電極接合工程において、挿通穴22の内周面221と接地電極6とは少なくとも一部同士が当接している。
【0085】
また、本形態において、挿通穴22は、図17図18に示すごとく、ハウジング2の先端面210よりも基端側において、ハウジング2を貫通することにより形成されている。ただし、挿通穴22は、先端面210の一部を基端側に後退させることにより形成されるハウジング2の凹部と、カップ部材5の基端面520とによって形成することもできる。また、挿通穴22は、先端面210の一部を基端側に後退させることにより形成されるハウジング2の凹部と、基端面520の一部を先端側に後退させることにより形成されるカップ部材5の凹部とによって形成することもできる。これらの構成も、「ハウジング2に挿通穴22が形成されている」構成に含まれる。
【0086】
ハウジング2は、図17に示すごとく、スパークプラグ1を内燃機関のシリンダヘッド(図示略)に取り付けるための取付ネジ部26を有する。挿通穴22は、取付ネジ部26を、プラグ径方向に貫通するように、形成されている。
【0087】
また、取付ネジ部26において、挿通穴22の周囲には、ザグリ部24が形成されている。ザグリ部24は、取付ネジ部26において、外側から内側に向かって凹むように形成されている。ザグリ部24は、X方向から見たとき、挿通穴22の周囲全体に形成されている(図示略)。
【0088】
また、中心電極4の先端部は、ハウジング2の先端部よりも基端側に位置している。つまり、中心放電面41は、ハウジング2の先端部よりも基端側に位置している。
【0089】
次に、各工程につき、具体的に説明する。
本形態において、当接工程では、図18の矢印Sに示すごとく、まず、ハウジング2の挿通穴22に、接地電極6を挿通させる。そして、接地電極6をX方向にスライドさせることにより、図19に示すごとく、中心放電面41と接地放電面61とを当接させる。
【0090】
次に、離隔工程では、図19の矢印Sに示すごとく、接地放電面61が中心放電面41から離れるように、挿通穴22に対して接地電極6をX方向にスライドさせる。このとき、接地電極6は、挿通穴22に対し、放電ギャップGの長さだけ、X方向にスライドさせる。これにより、図20に示すごとく、放電ギャップGの長さを、所望の長さとすることができる。
【0091】
次に、電極接合工程では、接地電極6とハウジング2とを接合する。本形態においては、互いに当接している挿通穴22の内周面221と接地電極6の外周面とを、接合させる。
【0092】
電極接合工程後のスパークプラグ1は、図20に示すごとく、接地電極6の一部がハウジング2の外側面25から外側へ突出した外側突出部63を有する。電極接合工程の後に、図21に示すごとく、外側突出部63を切除する切断工程を行う。
【0093】
切断工程では、ハウジング2における取付ネジ部26の外周よりも内側にて、接地電極6を切除する。これにより、図17に示すごとく、本形態のスパークプラグ1を作製することができる。
その他は、実施形態3と同様である。
【0094】
本形態における内燃機関用のスパークプラグ1の製造方法は、接地電極6をハウジング2の挿通穴22に挿通させてスライドさせることにより、中心放電面41に接地放電面61を当接させる。その後、放電ギャップGの長さだけ、接地電極6を挿通穴22に対して挿通方向にスライドさせることにより放電ギャップGを形成する。それゆえ、放電ギャップGを直接確認することなく、放電ギャップGの長さを調整することができる。その結果、放電ギャップGを形成する際、放電ギャップGを直接確認しにくい場合であっても、放電ギャップGを所望の長さに調整することができる。
【0095】
電極接合工程において、挿通穴22の内周面221と接地電極6とは少なくとも一部同士が当接している。それゆえ、抵抗溶接等によってハウジング2に対し接地電極6を接合する際、確実に接合することができる。
【0096】
本形態において、ハウジング2にはザグリ部24が形成されている。それゆえ、切断工程において、取付ネジ部26の外周よりも内側にて、接地電極6を切除することができる。その結果、接地電極6とシリンダヘッドの被取付部とが干渉しにくい。その結果、スパークプラグ1を、シリンダヘッドに対し、スムーズに取り付けることができる。
その他、実施形態3と同様の作用効果を有する。
【0097】
上記実施形態3及び実施形態5において、挿通穴53、22の内周面531、221全体と接地電極6の外周面とは当接している。ただし、例えば、接地電極の外周面における先端側及び基端側の面と、挿通穴の内周面とは、当接していないものとすることができる。この場合、接地電極をカップ部材又はハウジングに接合する前において、カップ部材又はハウジングに対する接地電極の位置をY方向に調整することができる。
【0098】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 スパークプラグ
2 ハウジング
3 絶縁碍子
4 中心電極
41 中心放電面
5 カップ部材
6 接地電極
61 接地放電面
G 放電ギャップ
X 中心放電面と接地放電面との対向方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21