(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】エアジェット織機
(51)【国際特許分類】
D03D 51/34 20060101AFI20240123BHJP
D03D 47/30 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
D03D51/34 101
D03D47/30
D03D51/34
(21)【出願番号】P 2020117623
(22)【出願日】2020-07-08
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【氏名又は名称】中尾 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100212657
【氏名又は名称】塚原 一久
(72)【発明者】
【氏名】牧野 洋一
(72)【発明者】
【氏名】八木 大輔
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-047079(JP,A)
【文献】特開2009-287144(JP,A)
【文献】特開2006-099396(JP,A)
【文献】特開2002-317358(JP,A)
【文献】特開平10-317261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D29/00-51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルからのエア噴射により緯糸が緯入れされるエアジェット織機であって、
織幅内において前記緯糸の飛走を検知して緯糸検知信号を生成する織幅内センサと、
前記緯糸検知信号に基づいて前記緯入れを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
無線により送信と受信とをする通信部を有し、
前記緯糸の飛走状態の変化に応じて前記織幅内センサに対する検知実行指示を前記通信部により送信すると共に、前記緯糸検知信号を前記通信部により受信し、
前記織幅内センサは、
前記緯糸検知信号を生成する光電センサ部と、
前記光電センサ部へ電力を供給する電池部と、
前記検知実行指示を無線により受信すると共に、前記緯糸検知信号を無線により送信するセンサ通信部と、
前記検知実行指示に基づいて前記電池部から前記光電センサ部に前記電力を供給するセンサ駆動部とを有する、
エアジェット織機。
【請求項2】
前記ノズルから噴射するエアを貯蔵するタンクと、前記タンクに貯蔵される前記エアの圧力を検知する圧力センサとを更に備え、
前記制御部は、前記圧力センサの検知結果を参照し、前記圧力に変化が生じた場合、前記飛走状態に変化が生じたと判断する、
請求項1に記載のエアジェット織機。
【請求項3】
前記織幅の下流側の織端に設けられ、前記織端での緯糸検知信号を生成するエンドセンサを更に備え、
前記制御部は、前記エンドセンサが生成した前記織端での前記緯糸検知信号のばらつき
が、圧縮エアの圧力を調整する初期圧力調整モード時と同等でない場合、前記飛走状態に変化が生じたと判断する、
請求項1に記載のエアジェット織機。
【請求項4】
前記制御部は、前記飛走状態に変化が生じてないと判断してから一定時間経過した後、または前記飛走状態の変化を解消する調整が完了した後、検知休止指示を前記通信部により送信し、
前記織幅内センサは、前記センサ通信部により前記検知休止指示を受信すると、前記センサ駆動部による前記電池部から前記光電センサ部への前記電力の供給を停止する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエアジェット織機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エアジェット織機に関する。
【背景技術】
【0002】
エアジェット織機は、給糸部の緯糸を緯糸測長貯留部において貯留し、貯留された緯糸をメインノズルにより解除して緯入れを開始し、緯入れされた緯糸をサブノズルにより織幅内に搬送し、緯入れを終了するように構成されている。ここで、所定の緯入れ末端位置に緯糸を所定タイミングで到達させることが品質の良い織布を織る上で重要である。
【0003】
そして、緯入れ末端位置において緯糸に急激な張力が掛かるのを防止するため、緯入れ終了間近になったときに緯糸に制動を掛ける緯糸ブレーキが用いられている。この緯糸ブレーキを適切に制御するため、緯糸飛走経路に飛走センサが設けられている。
【0004】
上記の飛走センサは、揺動運動する飛走経路に取り付けられており、揺動運動する部位における配線の取り回しが煩雑になることがある。このようなセンサ配線の取り回しの煩雑さを解消するため、装置の振動を利用して発電する発電部を備え、緯糸検知信号を無線により送信するワイヤレス方式の飛走センサが、特許文献1に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
飛走センサは、光の遮断または反射により緯糸の通過を検知するもので、エアジェット織機の稼働中において、発光部が発光し続ける必要がある。しかし、振動のエネルギーを利用した発電は、発光部を発光させ続ける十分な電力を生成することが難しい。また、発電部の耐久性についても実用レベルに到達していない。
【0007】
一方、ワイヤレス方式の飛走センサの電源として、電池を使用することが考えられる。しかし、エアジェット織機の稼働中に飛走センサの発光部を発光させ続けることにより電池の寿命が短くなるため、電池交換が頻繁に発生し、エアジェット織機として実用的な動作を行うことができない問題がある。
【0008】
本開示は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、ワイヤレス方式の飛走センサの電池の寿命を従来よりも伸ばすことが可能なエアジェット織機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この開示におけるエアジェット織機は、ノズルからのエア噴射により緯糸が緯入れされるエアジェット織機であって、織幅内において緯糸の飛走を検知して緯糸検知信号を生成する織幅内センサと、緯糸検知信号に基づいて緯入れを制御する制御部と、を備え、制御部は、無線により送信と受信をする通信部を有し、緯糸の飛走状態の変化に応じて織幅内センサに対する検知実行指示を通信部により送信すると共に、緯糸検知信号を通信部により受信し、織幅内センサは、緯糸検知信号を生成する光電センサ部と、光電センサ部へ電力を供給する電池部と、検知実行指示を無線により受信すると共に、緯糸検知信号を無線により送信するセンサ通信部と、検知実行指示に基づいて電池部から光電センサ部に電力を供給するセンサ駆動部と、を有する。
【0010】
ノズルから噴射するエアを貯蔵するタンクと、タンクに貯蔵されるエアの圧力を検知する圧力センサとを更に備え、制御部は、圧力センサの検知結果を参照し、圧力に変化が生じた場合、飛走状態に変化が生じたと判断する。
【0011】
織幅の下流側の織端に設けられ、織端での緯糸検知信号を生成するエンドセンサを更に備え、制御部は、エンドセンサが生成した織端での緯糸検知信号のばらつきが、圧縮エアの圧力を調整する初期圧力調整モード時と同等でない場合、飛走状態に変化が生じたと判断する。
【0012】
制御部は、飛走状態に変化が生じてないと判断してから一定時間経過した後、または飛走状態の変化を解消する調整が完了した後、検知休止指示を通信部により送信し、織幅内センサは、センサ通信部により検知休止指示を受信すると、センサ駆動部による電池部から光電センサ部への電力の供給を停止する。
【発明の効果】
【0013】
この開示によれば、エアジェット織機に使用されるワイヤレス方式の飛走センサの電池の寿命を従来よりも伸ばすことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態1におけるエアジェット織機の緯入装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1におけるエアジェット織機の緯入装置に用いられる織幅内センサの構成を示すブロック図である。
【
図3】実施の形態1におけるエアジェット織機の緯入装置の稼働中における織幅内センサの制御手順を示すフローチャートである。
【
図4】実施の形態1における情報画面を説明する説明図である。
【
図5】実施の形態1における情報画面を説明する説明図である。
【
図6】実施の形態1における情報画面を説明する説明図である。
【
図7】実施の形態1における情報画面を説明する説明図である。
【
図8】実施の形態1における警告画面を説明する説明図である。
【
図9】実施の形態1における情報画面を説明する説明図である。
【
図10】実施の形態1における情報画面を説明する説明図である。
【
図11】実施の形態1における情報画面を説明する説明図である。
【
図12】実施の形態1における情報画面を説明する説明図である。
【
図13】実施の形態1における警告画面を説明する説明図である。
【
図14】実施の形態2におけるエアジェット織機の緯入装置の稼働中における織幅内センサの制御手順を示すフローチャートである。
【
図15】実施の形態2における情報画面を説明する説明図である。
【
図16】実施の形態2における情報画面を説明する説明図である。
【
図17】実施の形態2における情報画面を説明する説明図である。
【
図18】実施の形態2における情報画面を説明する説明図である。
【
図19】実施の形態2における警告画面を説明する説明図である。
【
図20】実施の形態2における情報画面を説明する説明図である。
【
図21】実施の形態2における情報画面を説明する説明図である。
【
図22】実施の形態3におけるエアジェット織機の緯入装置の稼働中における織幅内センサの制御手順を示すフローチャートである。
【
図23】実施の形態3における情報画面を説明する説明図である。
【
図24】実施の形態3における情報画面を説明する説明図である。
【
図25】実施の形態3における情報画面を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、エアジェット織機の実施の形態につき、図面を用いて説明する。なお、各図において、同一部分には同一符号を付している。
【0016】
実施の形態1.
はじめに、実施の形態1におけるエアジェット織機の緯入装置100の構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、実施の形態1におけるエアジェット織機の緯入装置100の構成を示すブロック図である。
【0017】
なお、本明細書では、緯糸を経糸開口内に緯入れし、緯糸を搬送する緯入れ方向に対し、緯入れ方向と反対側を上流、緯入れ方向側を下流とする。また、圧縮エアの流れる方向に対し、源流側を上流、源流と反対側を下流とする。
【0018】
[緯入装置100の構成]
図1に示される緯入装置100は、主に、制御部110、メイン系統M、サブ系統S、筬150、及び飛走センサ170、を備える。なお、
図1に示す緯入装置100は、1つのメイン系統Mを有する状態を具体例として示すが、2つ以上のメイン系統Mを有するものであってもよい。
【0019】
制御部110には、CPU111と、ファンクションパネル112と、通信部113とが設けられている。CPU111は、緯入装置100における各種の制御を実行する。ファンクションパネル112は、各種の情報を報知する報知部であり、表示機能及び入力機能を有し、CPU111から指示された内容に基づいて各種情報を表示し、入力された情報をCPU111に伝達する。通信部113は、後述するワイヤレス方式の飛走センサに対応し、無線により送信と受信とを行うワイヤレス通信手段である。
【0020】
メイン系統Mには、給糸部120と、緯糸測長貯留部130と、緯入れノズル140とが設けられている。給糸部120は、緯糸測長貯留部130の上流側に設けられ、緯糸Yを保持している。給糸部120の緯糸Yは、緯糸測長貯留部130により引き出される。
【0021】
緯糸測長貯留部130には、貯留ドラム131と、緯糸係止ピン132と、バルーンセンサ133とが設けられている。貯留ドラム131は、給糸部120の緯糸Yを引き出し、巻き付けられた状態で貯留する。緯糸係止ピン132及びバルーンセンサ133は、貯留ドラム131の周囲に配設されている。バルーンセンサ133は、緯糸係止ピン132に対して緯糸Yの解除方向側に並べて配置されている。
【0022】
緯糸係止ピン132は、制御部110に予め設定された織機回転角度において、貯留ドラム131に貯留された緯糸Yを解除する。緯糸係止ピン132による緯糸Yの解除が行われるタイミングは、緯入れ開始タイミングである。
【0023】
バルーンセンサ133は、緯入れ中に貯留ドラム131から解除される緯糸Yを検知し、制御部110に緯糸解除信号を発信する。制御部110は、予め設定された回数(本実施形態では3回)の緯糸解除信号を受信すると、緯糸係止ピン132を作動する。緯糸係止ピン132は、貯留ドラム131から解除される緯糸Yを係止し、緯入れを終了させる。
【0024】
緯糸係止ピン132が緯糸Yを係止するための作動タイミングは、織幅TLに相当する長さの緯糸Yを貯留ドラム131に貯留するために要する巻き付け回数に応じて設定されている。
【0025】
本実施形態では、貯留ドラム131に3巻された緯糸Yの長さが織幅TLに相当する。このため、制御部110は、緯糸係止ピン132の緯糸解除信号を3回受信すると、緯糸Yを係止する動作信号を緯糸係止ピン132に発信するように設定されている。緯糸係止ピン132の緯糸検知信号は、貯留ドラム131からの緯糸Yの解除信号であり、制御部110において、エンコーダから得られる織機回転角度信号に基づき、緯糸解除タイミングとして認識される。
【0026】
緯入れノズル140は、タンデムノズル141と、メインノズル142とを有する。タンデムノズル141は、圧縮エアの噴射により、貯留ドラム131の緯糸Yを引き出す。メインノズル142は、圧縮エアの噴射により、緯糸Yを筬150の緯糸飛走経路150aに緯入れする。
【0027】
タンデムノズル141の上流側には、緯入れ終了前に、飛走する緯糸Yを制動するブレーキ147が設けられている。
【0028】
メインノズル142は、配管P146を介してメインバルブ146に接続されている。メインバルブ146は、配管P144を介してメインタンク144に接続されている。タンデムノズル141は、配管P145を介してタンデムバルブ145に接続されている。
【0029】
タンデムバルブ145は、配管P144を介してメインバルブ146と共通のメインタンク144に接続されている。織布工場に設置されたエアコンプレッサ10から供給された圧縮エアは、メインレギュレータ143により設定圧力に調整され、配管P143を介してメインタンク144に供給されて貯蔵される。圧力センサ144sは、メインタンク144に貯蔵されている圧縮エアの圧力を検知し、検知結果をCPU111に伝達する。
【0030】
筬150は、メイン系統Mの緯入れノズル140の下流側に配設され、複数の筬羽から構成され、緯糸飛走経路150aを備える。緯糸飛走経路150aに沿って、サブノズル160を構成する複数のノズルと、飛走センサ170とが配置されている。
【0031】
サブ系統Sにおいて、サブノズル160は、筬150の緯糸飛走経路150aに沿って配設され、複数のノズルにより構成されている。サブノズル160は、一例として6群に分けられ、各群は、4本のノズルにより構成されている。サブノズル160の各群に対応して、6個のサブバルブ165が配設されている。サブノズル160は、それぞれ配管166を介して各群のサブバルブ165に接続されている。各群のサブバルブ165は、共通のサブタンク164に接続されている。
【0032】
サブタンク164は、配管163によりサブレギュレータ162に接続されている。また、サブレギュレータ162は、配管161により、メインレギュレータ143とメインタンク144間の配管P143に接続されている。このため、サブタンク164には、メインレギュレータ143経由で、サブレギュレータ162により設定圧力に調整された圧縮エアが貯蔵される。圧力センサ164sは、サブタンク164に貯蔵されている圧縮エアの圧力を検知し、検知結果をCPU111に伝達する。
【0033】
飛走センサ170は、織幅内センサ171と、エンドセンサ172とを備える。織幅内センサ171は、エンドセンサ172よりも上流側であって、緯糸飛走経路150aにおける織幅TLの中央よりもメインノズル142とは反対側に配置されている。エンドセンサ172は、緯糸飛走経路150aの下流側であって、織幅TLよりも下流側に配置されている。
【0034】
織幅内センサ171は、電源に電池を使用するワイヤレス方式の飛走センサであり、到達した緯糸Yを検知して生成した緯糸検知信号を無線により制御部110に送信すると共に、制御部110からの指示を無線により受信する。この実施の形態において無線とは、電波、赤外線、または可視光などを用いることで、有線の通信線を用いないことを意味する。
【0035】
緯糸飛走経路150aにおける配線の取り回しの困難さは、織幅の下流側の織端に設けられたエンドセンサ172と比較して、エンドセンサ172よりも上流側の緯糸飛走経路150aに設けられた織幅内センサ171において顕著である。このため、織幅内センサ171がワイヤレス方式の飛走センサとして構成されている。織幅内センサ171により生成される緯糸検知信号は、制御部110において、エンコーダから得られる織機回転角度信号に基づき、緯入れされた緯糸Yの先端が織幅内センサ171の設置位置に到達した緯糸中間到達タイミングISとして認識される。
【0036】
ここで、織幅内センサ171の詳細な構成を
図2を参照して説明する。
図2は、実施の形態1におけるエアジェット織機の緯入装置100に用いられる織幅内センサ171の構成を示すブロック図である。
【0037】
図2おいて、織幅内センサ171は、光電センサ部171sと、ワイヤレスユニット171aとを備える。ワイヤレスユニット171aは、センサ通信部1711と、センサ駆動部1712と、電池部1713とを備える。光電センサ部171sは、発光部と受光部とを備え、電池部1713から電力の供給を受けて発光部が発光し、受光部において光の遮断または反射により緯糸の通過を検知して緯糸検知信号を生成する。
【0038】
センサ通信部1711は、無線による送受信機能を備えており、制御部110からの検知実行指示または検知休止指示を無線により受信してセンサ駆動部1712に伝達すると共に、光電センサ部171sで生成された緯糸検知信号を無線により制御部110に送信する。
【0039】
センサ駆動部1712は、制御部110からの検知実行指示に応じて、電池部1713から光電センサ部171sに電力を供給する。これにより、織幅内センサ171は、検知状態が検知中になる。また、センサ駆動部1712は、制御部110からの検知休止指示に応じて、電池部1713から光電センサ部171sへの電力の供給を停止する。これにより、織幅内センサ171は、検知状態が休止中になる。
【0040】
電池部1713は、交換可能な電池を備えて構成され、センサ駆動部1712からの制御に基づいて、光電センサ部171sに対して電力を供給または供給停止する。従って、光電センサ部171sは、制御部110から検知実行指示を受けている期間にのみ電力の供給を受けて発光する。電池部1713において交換可能な電池は、1次電池、2次電池のいずれであってもよい。
【0041】
ここで、
図1に戻り、緯入装置100の説明を続ける。エンドセンサ172は、緯糸飛走経路150aの下流側であって織幅TLよりも下流側において、到達した緯糸Yを光学的に検知する。エンドセンサ172は、緯糸Yを検知して生成した緯糸検知信号を有線の通信線により制御部110に送信する。エンドセンサ172による緯糸検知信号は、緯糸Yの到達信号であり、制御部110において、エンコーダから得られる織機回転角度信号に基づき緯入れ終了タイミングIEとして認識される。
【0042】
メインノズル142、筬150、及びサブノズル160は、図示されないスレイ上に配設され、エアジェット織機の前後方向に往復揺動される。また、給糸部120、緯糸測長貯留部130、タンデムノズル141、及びブレーキ147は、図示されないエアジェット織機のフレーム又は床面に取り付けられたブラケットに固定されている。
【0043】
上記の構成において、メイン系統Mのメインバルブ146、タンデムバルブ145、ブレーキ147、並びにサブ系統Sのサブバルブ165は、制御部110により、作動タイミングと作動期間とが制御される。
【0044】
タンデムバルブ145及びメインバルブ146は、緯糸係止ピン132が作動する緯入れ開始タイミングよりも早いタイミングで制御部110から作動指令信号が与えられ、メインノズル142及びタンデムノズル141から圧縮エアが噴射される。
【0045】
ブレーキ147は、緯糸係止ピン132が作動して貯留ドラム131の緯糸Yを係止する緯入れ終了タイミングIEよりも早い時期に、制御部110から作動指令信号が出力される。ブレーキ147は、高速で飛走する緯糸Yを制動して緯糸Yの飛走速度を低下させ、緯入れ終了タイミングIEにおける緯糸Yの衝撃を緩和する。
【0046】
[織幅内センサの制御手順]
次に、実施の形態1における緯入装置100の稼働中におけるワイヤレス方式の織幅内センサ171の制御手順について、
図3を参照して説明する。
図3は、実施の形態1におけるエアジェット織機の緯入装置100の稼働中における織幅内センサ171の制御手順を示すフローチャートである。
【0047】
ステップS101において、制御部110は、緯入装置100の各部の初期圧力調整モードの制御を実施する。すなわち、制御部110は、メインタンク144に貯蔵されている圧縮エアに関する圧力センサ144sで検知された圧力検知結果が、あらかじめ定められた初期値の範囲に収まるように、メインレギュレータ143を制御する。また、制御部110は、サブタンク164に貯蔵されている圧縮エアに関する圧力センサ164sで検知された圧力検知結果が、あらかじめ定められた初期値の範囲に収まるように、サブレギュレータ162を制御する。
【0048】
また、制御部110は、ファンクションパネル112でのオペレータの操作を受けて、織幅内センサ171に対し、検知実行指示を意味する「センサ設定=オン」の指示を通信部113から送信する。
【0049】
織幅内センサ171は、制御部110からの検知実行指示を意味する「センサ設定=オン」の指示に基づいて、検知実行状態になる。すなわち、織幅内センサ171において、制御部110から検知実行指示を意味する「センサ設定=オン」の指示をセンサ通信部1711が受信すると、センサ駆動部1712が電池部1713からの電力を光電センサ部171sに供給する。電力の供給を受けた光電センサ部171sでは、発光部が発光し、受光部において光の遮断または反射により緯糸の通過を検知し、緯糸検知信号が生成される。センサ通信部1711は、光電センサ部171sで生成された緯糸検知信号を無線により制御部110に送信する。
【0050】
ここで、初期圧力調整モードにおけるファンクションパネル112の情報画面112Pの表示例を、
図4により説明する。
図4は、実施の形態1における情報画面112Pを説明する説明図である。
図4に示す情報画面112Pにおいて、オペレータの操作を受けて(a1)に示すように織幅内センサ171の設定が「ON」になり、(a2)に示すように検知状態が「検知中」になる。この情報画面112Pでは、そのほかに、初期圧力調整モードにより調整された各種の項目として、サブタンク164の圧力がサブ圧として表示され、メインタンク144の圧力がメイン圧として表示され、ブレーキ前バイアス角度とバイアス角度とが表示されている。ここで、各種の設定項目において、最適調整時と現状時の値とが示されている。また、2色の緯糸を使用する場合に、メイン圧とブレーキ前バイアス角度とバイアス角度とにおいて、カラー1とカラー2の2つの値が示されている。
【0051】
この初期圧力調整モード時において、制御部110は、織幅内センサ171における緯糸Yの検知結果からブレーキ前バイアス角度を意味するTiバイアスを取得し、エンドセンサ172における緯糸Yの検知結果から織端でのバイアス角度を意味するTWバイアスを取得する。また、初期圧力調整モード時において、制御部110は、サブ圧を変更し、そのときのTiバイアスとTWバイアスの変化により、最適サブ圧を決定する。この後、処理がステップS102へと進む。
【0052】
ステップS102において、制御部110は、ファンクションパネル112でのオペレータの操作を受けて、織幅内センサ171に対し、検知自動実行の指示を意味する「センサ設定=自動、検知状態=検知」の指示を通信部113から送信する。この際、図示しないが、
図4に示す情報画面112Pの(a1)に示す設定の欄が「ON」から「自動」に変わる。そして、織幅内センサ171は検知自動実行のモードとして、検知を実行する。この後、処理がステップS103へと進む。
【0053】
ステップS103において、制御部110は、メインタンク144に貯蔵されている圧縮エアに関する圧力センサ144sで検知された圧力検知結果について、緯入れ100ピック分程度の一定数を平均する。この後、処理がステップS104へと進む。
【0054】
ステップS104において、制御部110は、ステップS103で得たメインタンク144の圧力検知結果が、初期圧力調整モード時に得たメインタンク144の圧力検知結果と同等であるかを判断する。ここで同等とは、あらかじめ定めた誤差の範囲に収まっていることをいう。ステップS104において、2つの圧力検知結果が同等であると判断された場合は処理がステップS105へと進む。
【0055】
ステップS105において、制御部110は、メインタンク144の圧力検知結果が初期圧力調整モード時と同等であり、緯糸の飛走状態の変化が生じていないと判断できるため、緯糸検知を実行してからあらかじめ定められた一定時間が経過した時点で、織幅内センサ171に対し検知の休止を意味する「センサ設定=自動、検知状態=休止」の指示を通信部113から送信する。織幅内センサ171では、センサ通信部1711を通して受信した検知休止指示に基づいて、電池部1713から光電センサ部171sへの電力の供給を、センサ駆動部1712が停止する。従って、光電センサ部171sの発光と受光とが休止することにより、織幅内センサ171の検知状態が「休止中」になる。
【0056】
織幅内センサ171の休止時におけるファンクションパネル112の情報画面112Pの表示例を、
図5により説明する。
図5は、実施の形態1における情報画面112Pを説明する説明図である。
図5に示す情報画面112Pにおいて、制御部110からの指示を受けて、(b)に示すように、織幅内センサ171の検知状態がそれまでの「検知中」から「休止中」に変わる。この
図5に示す情報画面112Pでは、織幅内センサ171の検知の休止に伴って、ブレーキ前バイアス角度(現状)の数値が「***」になっている。この後、処理がステップS103へと戻る。
【0057】
一方、ステップS104において、メインタンク144の圧力が初期調整時と同等でないと制御部110により判断された場合におけるファンクションパネル112の情報画面112Pの表示例を、
図6により説明する。
図6は、実施の形態1における情報画面112Pを説明する説明図である。
図6に示す情報画面112Pにおいて、(c1)に示すように圧力センサ144sにより検知されるメインタンク144の現状での圧力がカラー1,2共に0.38であり、(c2)に示すように圧力センサ144sにより検知されるメインタンク144の初期調整時の圧力がカラー1,2共に0.33であり、圧力検知結果が初期圧力調整モード時と同等でない。この状態が、緯糸の飛走状態に変化が生じた状態に該当する。この場合、処理がステップS106へと進む。
【0058】
ステップS106において、制御部110は、メインタンク144の圧力検知結果が初期圧力調整モード時と同等ではなく変化している原因を探るため、検知自動実行の指示を意味する「センサ設定=自動、検知状態=検知」の指示を通信部113から送信する。これにより、織幅内センサ171では、センサ通信部1711を通して受信した検知自動実行の指示に基づいて、電池部1713から光電センサ部171sへの電力の供給を、センサ駆動部1712が再開する。従って、織幅内センサ171において、光電センサ部171sは、発光状態になる。この後、処理がステップS107へと進む。
【0059】
ステップS107において、制御部110は、メインタンク144の圧力が変化している原因として、バルブに異常が生じていないかを判断する。
【0060】
メインタンク144の圧力が初期調整時と同等でない原因を探る際のファンクションパネル112の情報画面112Pの表示例を、
図7により説明する。
図7は、実施の形態1における情報画面112Pを説明する説明図である。
図7に示す情報画面112Pにおいて、制御部110からの指示を受けて、(d1)に示すように、織幅内センサ171の検知状態が「休止中」から「検知中」になる。ここで、検知状態が「検知中」になった織幅内センサ171は、緯糸の通過を検知して緯糸検知信号を生成し、センサ通信部1711から制御部110に送信する。制御部110は、織幅内センサ171からの緯糸検知信号を参照して、上述したブレーキ前バイアス角度を算出する。
【0061】
図7に示す情報画面112Pに示す例では、ブレーキ前バイアス角度(現状)が(d2)に示すようにカラー1,2で7.0と6.9であり、ブレーキ前バイアス角度(最適サブ圧時)が(d3)に示すようにカラー1,2で2.3と2.3である。すなわち、カラー1とカラー2共に、ブレーキ前バイアス角度が最適サブ圧時よりも大きく変化している。
【0062】
制御部110は、カラー1とカラー2共にブレーキ前バイアス角度が最適サブ圧時よりも大きく変化している場合、ステップS107において、織幅内センサ171より上流側の、サブノズル160、サブバルブ165、及びその配管166を含めたサブバルブ系統に何らかの異常が生じていると判断する。この後、処理がステップS108へと進む。
【0063】
ステップS108において、制御部110は、織幅内センサ171の直前の上流付近のサブバルブ系統に何らかの異常があることを、
図8の警告画面112P2によりオペレータに報知する。例えば、制御部110は、
図8に示すように、「カラー1、カラー2のTiバイアスが許容範囲を超えました。織幅内センサの上流側のサブバルブ系統に異常が発生した可能性があります。サブバルブ、サブノズル、配管系統を確認して下さい。」などメッセージを含む警告画面112P2をファンクションパネル112に表示する。この後、処理がステップS109へと進む。
【0064】
ステップS109において、オペレータは、ステップS108でのメッセージに従って、装置を停止させてサブバルブ系統の点検と改善とを行う。なお、制御部110の制御により自動で調整してもよい。これにより、緯糸の飛走状態の変化が解消される。そして、サブバルブ系統の点検と改善とによる調整が完了して装置が再起動されると、制御部110は、処理をステップS103から再開する。
【0065】
ステップS109の後にステップS103に戻り、制御部110は、メインタンク144に貯蔵されている圧縮エアに関する圧力センサ144sで検知された圧力検知結果について、緯入れ100ピック分程度の一定数を平均する。ステップS109における点検と改善とにより異常が解消した際の、ステップS103におけるファンクションパネル112の情報画面112Pの表示例を、
図9により説明する。
図9は、実施の形態1における情報画面112Pを説明する説明図である。
【0066】
図9に示す情報画面112Pにおいて、(e1)と(e2)に示すように、圧力センサ144sにより検知されるメインタンク144の現状での圧力がカラー1,2共に0.33になり、初期調整時の0.33と一致している。また、(e3)と(e4)に示すように、ブレーキ前バイアス角度(現状)が、ブレーキ前バイアス角度(最適サブ圧時)の2.3に一致している。すなわち、飛走状態の変化を解消する調整が完了している。なお、値が完全一致でなく、上述した同等であっても、調整が完了している。従って、処理がステップS104を経て、ステップS105へと進む。
【0067】
ステップS105において、制御部110は、織幅内センサ171に対し検知の休止を意味する「センサ設定=自動、検知状態=休止」の指示を通信部113から送信する。織幅内センサ171では、センサ通信部1711を通して受信した検知休止指示に基づいて、電池部1713から光電センサ部171sへの電力の供給を、センサ駆動部1712が停止する。従って、光電センサ部171sの発光と受光とが休止することにより、織幅内センサ171の検知状態が「休止中」になる。織幅内センサ171の休止時におけるファンクションパネル112の情報画面112Pの表示例を、
図10により説明する。
図10は、実施の形態1における情報画面112Pを説明する説明図である。
図10に示す情報画面112Pにおいて、制御部110からの指示を受けて、(f)に示すように織幅内センサ171の状態が「検知中」から「休止中」に変わる。
【0068】
ステップS104において、メインタンク144の圧力が初期調整時と同等でない場合におけるファンクションパネル112の情報画面112Pの他の表示例を、
図11により説明する。
図11は、実施の形態1における情報画面112Pを説明する説明図である。
図11に示す情報画面112Pにおいて、(c1)に示すように圧力センサ144sにより検知されるメインタンク144の現状での圧力がカラー2において0.35であり、(c2)に示すように圧力センサ144sにより検知されるメインタンク144の初期調整時の圧力がカラー2において0.33であり、カラー2のみで値が同等でないことを示している。この状態が、緯糸の飛走状態に変化が生じた状態に該当する。この場合、処理がステップS106へと進む。
【0069】
ステップS106において、制御部110は、メインタンク144の圧力検知結果が初期圧力調整モード時と同等ではないと判断したため、圧力検知結果が変化している原因を探るため、検知自動実行の指示を意味する「センサ設定=自動、検知状態=検知」の指示を通信部113から送信する。これにより、織幅内センサ171では、センサ通信部1711を通して受信した検知自動実行の指示に基づいて、電池部1713から光電センサ部171sへの電力の供給を、センサ駆動部1712が再開する。従って、織幅内センサ171において、光電センサ部171sは発光状態になる。この後、異常の原因を判断すべく、処理がステップS107へと進む。
【0070】
ステップS107において、制御部110は、メインタンク144の圧力が変化している原因として、バルブに異常が生じていないかを判断する。
【0071】
メインタンク144の圧力が初期調整時と同等でない原因を探る際のファンクションパネル112の情報画面112Pの他の表示例を、
図12により説明する。
図12は、実施の形態1における情報画面112Pを説明する説明図である。
図12に示す情報画面112Pにおいて、制御部110からの指示を受けて、(d1)に示すように、織幅内センサ171の状態が「休止中」から「検知中」になる。ここで、検知状態が「検知中」になった織幅内センサ171は、緯糸の通過を検知して緯糸検知信号を生成し、センサ通信部1711から制御部110に送信する。制御部110は、織幅内センサ171からの緯糸検知信号を参照して、上述したブレーキ前バイアス角度を算出する。
【0072】
そして、
図12に示す情報画面112Pに示す例では、ブレーキ前バイアス角度(現状)が(d2)に示すようにカラー2で4.5であり、ブレーキ前バイアス角度(最適サブ圧時)が(d3)に示すようにカラー2で2.3である。すなわち、カラー2においてブレーキ前バイアス角度が最適サブ圧時よりも大きく変化している。この場合、制御部110は、ステップS107においてバルブ以外が異常と判断する。すなわち、制御部110は、バルブには異常がないと判断して、処理がステップS110へと進む。ステップS110において、制御部110は、カラー2の緯糸状態に何らかの変化が生じていると判断する。この後、処理がステップS111へと進む。
【0073】
ステップS111において、制御部110は、カラー2の緯糸状態に何らかの変化が生じたことを、
図13の警告画面112P2によりオペレータに報知する。例えば、制御部110は、
図13に示すように「カラー2のTiバイアスが許容範囲を超えました。カラー2のよこ糸状態が変化した可能性があります。サブ圧等を確認して下さい。」のメッセージを含む警告画面112P2をファンクションパネル112に表示する。この後、処理がステップS112へと進む。
【0074】
ステップS112において、オペレータは、ステップS111でのメッセージに従って、装置を停止させてサブ圧を上げる等の点検と改善とを行う。なお、制御部110の制御により自動でサブ圧を上げてもよい。これにより、緯糸の飛走状態の変化が解消される。そして、サブ圧等の点検と改善とによる調整が完了して装置が再起動されると、制御部110は、処理をステップS103から再開する。
【0075】
また、制御部110は、ステップS107においてバルブ以外が異常と判断し、更に、ステップS110において緯糸状態以外に何らかの変化が生じていると判断した場合、処理がステップS113へと進む。ステップS113において、制御部110は、バルブ及び緯糸状態以外のその他の何らかの異常が生じたことをファンクションパネル112に表示して、オペレータに報知する。この後、処理がステップS114へと進む。
【0076】
ステップS114において、オペレータは、ファンクションパネル112に表示されたメッセージに従って、装置を停止させて該当箇所の点検と改善とを行う。なお、制御部110の制御により自動で調整してもよい。これにより、緯糸の飛走状態の変化が解消される。そして、該当箇所の点検と改善とによる調整が完了して装置が再起動されると、制御部110は、処理をステップS103から再開する。
【0077】
上記の
図3のフローチャートに示す制御手順によると、緯糸の飛走状態に変化があったときに織幅内センサ171を動作させ、それ以外の期間は織幅内センサ171を動作させないため、織幅内センサ171の電池部1713の消耗を抑制し、電池の寿命を従来より伸ばすことができる。この結果、電池交換の周期を従来の方式よりも長くすることができる。
【0078】
実施の形態2.
次に、実施の形態2における緯入装置100の稼働中におけるワイヤレス方式の織幅内センサ171の制御手順について、
図14を参照して説明する。
図14は、実施の形態2におけるエアジェット織機の緯入装置100の稼働中における織幅内センサ171の制御手順を示すフローチャートである。
図14のフローチャートにおいて、既に説明した
図3のフローチャートと同一処理部分には同一符号を付し、重複した処理についての説明を省略し、異なる処理の内容について以下に説明する。
【0079】
ここで、実施の形態2の制御手順での初期圧力調整モードにおけるファンクションパネル112の情報画面112Pの表示例を、
図15により説明する。
図15は、実施の形態2における情報画面112Pを説明する説明図である。
図15に示す情報画面112Pにおいて、初期圧力調整モードにより調整された各種の項目として、
図4に示された項目の他に、T
Wのばらつきを意味するTWσについて、(g1)として現状でのTWσと、(g2)として最適サブ圧時のTWσとが表示されている。
【0080】
図14のフローチャートのステップS103において、制御部110は、エンドセンサ172により生成される緯糸検知信号からT
Wのばらつきを意味するTWσを取得する。この後、処理がステップS104へと進む。
【0081】
ステップS104において、制御部110は、ステップS104で得たTWσが、初期圧力調整モード時に得たTWσと同等であるかを判断する。ここで同等とは、あらかじめ定めた誤差の範囲に収まっていることをいう。ステップS104において、2つのTWσが同等であると判断された場合は処理がステップS105へと進む。
【0082】
ステップS105において、制御部110は、TWσが初期圧力調整モード時と同等であり、緯糸の飛走状態の変化が生じていないと判断できるため、緯糸検知を実行してからあらかじめ定められた一定時間が経過した時点で、織幅内センサ171に対し検知の休止を意味する「センサ設定=自動、検知状態=休止」の指示を通信部113から送信する。織幅内センサ171では、センサ通信部1711を通して受信した検知休止指示に基づいて、電池部1713から光電センサ部171sへの電力の供給を、センサ駆動部1712が停止する。従って、光電センサ部171sの発光と受光とが休止することにより、織幅内センサ171の検知状態が「休止中」になる。
【0083】
織幅内センサ171の休止時におけるファンクションパネル112の情報画面112Pの表示例を、
図16により説明する。
図16は、実施の形態2における情報画面112Pを説明する説明図である。
図16に示す情報画面112Pにおいて、制御部110からの指示を受けて、(h)に示すように織幅内センサ171の状態が「検知中」から「休止中」に変わる。この
図16に示す情報画面112Pでは、織幅内センサ171の検知の休止に伴って、ブレーキ前バイアス角度(現状)の数値が「***」になっている。この後、処理がステップS103へと戻る。
【0084】
ステップS104において、TWσが初期調整時と同等でない場合におけるファンクションパネル112の情報画面112Pの表示例を、
図17により説明する。
図17は、実施の形態2における情報画面112Pを説明する説明図である。
図17に示す情報画面112Pにおいて、(i1)に示すようにカラー2のTWσが5.5であり、(i2)に示すようにTWσカラー2のTWσが2.3であり、同等でないことを示している。この場合、処理がステップS106へと進む。
【0085】
ステップS106において、制御部110は、TWσが初期圧力調整モード時と同等ではないと判断したため、TWσが変化している原因を探るため、検知自動実行の指示を意味する「センサ設定=自動、検知状態=検知」の指示を通信部113から送信する。これにより、織幅内センサ171では、センサ通信部1711を通して受信した検知自動実行の指示に基づいて、電池部1713から光電センサ部171sへの電力の供給を、センサ駆動部1712が再開する。従って、織幅内センサ171において、光電センサ部171sは発光状態になる。この後、異常の原因を判断すべく、処理がステップS107へと進む。
【0086】
ステップS107において、制御部110は、TWσが変化している原因として、バルブに異常が生じていないかを判断する。
【0087】
図18に示す情報画面112Pにおいて、制御部110からの指示を受けて、(j1)に示すように、織幅内センサ171の状態が「休止中」から「検知中」になる。ここで、検知状態が「検知中」になった織幅内センサ171は、緯糸の通過を検知して緯糸検知信号を生成し、センサ通信部1711から制御部110に送信する。制御部110は、織幅内センサ171からの緯糸検知信号を参照して、上述したブレーキ前バイアス角度を算出する。
【0088】
そして、
図18に示す情報画面112Pに示す例では、ブレーキ前バイアス角度(現状)が(j2)に示すようにカラー2で5.0であり、ブレーキ前バイアス角度(最適サブ圧時)が(j3)に示すようにカラー2で2.3である。すなわち、カラー2においてブレーキ前バイアス角度が最適サブ圧時よりも大きく変化している。
【0089】
この場合、制御部110は、ステップS107においてバルブ以外が異常と判断する。すなわち、制御部110は、バルブには異常がないと判断して、処理がステップS110へと進む。ステップS110において、制御部110は、カラー2の緯糸状態に何らかの変化が生じていると判断する。この後、処理がステップS111へと進む。
【0090】
ステップS111において、制御部110は、カラー2の緯糸状態に何らかの変化が生じたことを、
図19の警告画面112P2によりオペレータに報知する。例えば、制御部110は、
図19に示すように「カラー2のTiバイアスが許容範囲を超えました。カラー2のよこ糸状態が変化した可能性があります。よこ糸の状態を確認して下さい。」のメッセージを含む警告画面112P2をファンクションパネル112に表示する。この後、処理がステップS112へと進む。
【0091】
ステップS112において、オペレータは、ステップS111でのメッセージに従って、装置を停止させてサブ圧等の点検と改善とを行う。なお、制御部110の制御による自動の調整を行ってもよい。これにより、緯糸の飛走状態の変化が解消される。そして、サブ圧等の点検と改善とによる調整が完了して装置が再起動されると、制御部110は、処理をステップS103から再開する。
【0092】
ステップS112の後にステップS103に戻り、制御部110は、エンドセンサ172により生成される緯糸検知信号からTWのばらつきを意味するTWσを取得する。ステップS112における点検と改善とにより異常が解消した際のステップS103におけるファンクションパネル112の情報画面112Pの表示例を、
図20により説明する。
図20は、実施の形態2における情報画面112Pを説明する説明図である。
【0093】
図20に示す情報画面112Pにおいて、(k1)と(k2)に示すように、カラー2のTWσの現状の値が2.3になり、最適サブ圧時の2.3と一致している。また、ブレーキ前バイアス角度(現状)が、ブレーキ前バイアス角度(最適サブ圧時)の2.3に一致している。すなわち、飛走状態の変化を解消する調整が完了している。なお、値が完全一致でなく、上述した同等であっても、調整が完了している。従って、処理がステップS104を経て、ステップS105へと進む。
【0094】
ステップS105において、制御部110は、織幅内センサ171に対し検知の休止を意味する「センサ設定=自動、検知状態=休止」の指示を通信部113から送信する。織幅内センサ171では、センサ通信部1711を通して受信した検知休止指示に基づいて、電池部1713から光電センサ部171sへの電力の供給を、センサ駆動部1712が停止する。従って、光電センサ部171sの発光と受光とが休止することにより、織幅内センサ171の検知状態が「休止中」になる。織幅内センサ171の休止時におけるファンクションパネル112の情報画面112Pの表示例を、
図21により説明する。
図21は、実施の形態2における情報画面112Pを説明する説明図である。
図21に示す情報画面112Pにおいて、制御部110からの指示を受けて、(m)に示すように織幅内センサ171の状態が「検知中」から「休止中」に変わる。この
図21に示す情報画面112Pでは、織幅内センサ171の検知の休止に伴って、ブレーキ前バイアス角度(現状)の数値が「***」になっている。この後、処理がステップS103へと戻る。
【0095】
上記の
図14のフローチャートに示す制御手順によると、Tiσに基づく緯糸の飛走状態の変化があったときに織幅内センサ171を動作させ、それ以外の期間は織幅内センサ171を動作させないため、織幅内センサ171の電池部1713の消耗を抑制し、電池の寿命を従来より伸ばすことができる。この結果、電池交換の周期を従来の方式よりも長くすることができる。
【0096】
実施の形態3.
次に、実施の形態3における緯入装置100の稼働中におけるワイヤレス方式の織幅内センサ171の制御手順について、
図22を参照して説明する。
図22は、実施の形態3におけるエアジェット織機の緯入装置100の稼働中における織幅内センサ171の制御手順を示すフローチャートである。
【0097】
ステップS201において、制御部110は、緯入装置100の各部の初期圧力調整モードの制御を実施し、各部があらかじめ定められた初期状態になるように制御する。制御部110は、初期モードの制御を実行してからあらかじめ定められた一定時間が経過した時点で、織幅内センサ171に対し検知の休止を意味する「センサ設定=自動、検知状態=休止」の指示を通信部113から送信する。織幅内センサ171では、センサ通信部1711を通して受信した検知休止指示に基づいて、電池部1713から光電センサ部171sへの電力の供給を、センサ駆動部1712が停止する。従って、光電センサ部171sの発光と受光とが休止することにより、織幅内センサ171の検知状態が「休止中」になる。この後、処理がステップS202へと進む。
【0098】
ステップS202において、緯入装置100が、Aシフトとしてあらかじめ定められた時間の稼働を行う。この後、処理がステップS203へと進む。ここで、緯入装置100が、8時間毎のAシフト、Bシフト、及びCシフトの3シフト制で稼働している場合の制御について説明する。
【0099】
ステップS203において、制御部110は、Aシフトの稼働が完了すると、エンドセンサ172での緯糸の到達の有無により、Aシフトのよこミスについてのミス率を算出する。制御部110は、算出したよこミスについてのミス率を、
図23に示す情報画面112Pに表示する。
なお、この時点では織幅内センサ171が休止中のため、
図23中において、入口ループミスについてのWF(1)LとWF(2)L、及びエンドミスについてのWF(1)EとWF(2)Eの部分は、分類したデータが得られていないため、「*」で示されている。
【0100】
ここで、
図23に示されるAシフトの稼働において、(a)~(d)に示すようによこミスについてのミス率は、1.0以下であって許容範囲内である場合、制御部110は、次のBシフトの稼働においても、織幅内センサ171を、「センサ設定=自動、検知状態=休止」のままにしておく。このステップS203から、処理がステップS202へと戻る。
【0101】
一方、ステップS203において、Aシフトのよこミスについてのミス率が、
図24の情報画面112P中の(e)と(f)とに示すように、1.0を超えている場合、ミス率が許容範囲を超えており、緯糸の飛走状態に変化が生じた状態であると、制御部110が判断する。この後、処理がステップS204へと進む。ステップS204において、制御部110は、次のBシフトの稼働において織幅内センサ171に対し、「センサ設定=自動、検知状態=検知」の指示を、通信部113から送信する。この後、処理がステップS205へと進む。
【0102】
Bシフトの稼働が完了すると、ステップS205において、制御部110は、織幅内センサ171により生成される緯糸検知信号とエンドセンサ172により生成される緯糸検知信号とを参照し、緯糸の到達/未到達の状況から、よこミスが入口ループミスであるかエンドミスであるかといった分類した状態でミス率を算出する。この後、処理がステップS206へと進む。
【0103】
ステップS206において、制御部110は、分類されたよこミスのミス率が許容範囲を超えているかを判断する。S206において、
図23と同様によこミスについてのミス率が低く許容範囲である場合、処理がステップS207へと進む。ステップS207において、制御部110は、次のCシフトの稼働において、織幅内センサ171に対し、「センサ設定=自動、検知状態=休止」の指示を通信部113から送信する。この後、処理がステップS202へと戻る。
【0104】
一方、ステップS206において、
図25に示す情報画面112Pのようなミス率の状態である場合、制御部110は、分類されたよこミスのミス率が許容範囲を超えており、緯糸の飛走状態に変化が生じた状態であると判断する。この
図25に示す情報画面112Pの例では、織幅内センサ171により生成される緯糸検知信号とエンドセンサ172により生成される緯糸検知信号とを用いて、よこミスが入口ループミスであるかエンドミスであるかといった分類された状態で表示されており、(g)と(i)に示す緯糸の入口ループミスについてのWF(1)LとWF(2)Lのミス率は1.0以下であるが、(h)と(j)に示すエンドミスについてのWF(1)EとWF(2)Eのミス率は1.0を超えている。
【0105】
ステップS206において、制御部110は、以上のよこミスの分類により、入口ループミスのミス率が低く、エンドミスについてのミス率が高いため、サブバルブ系統に異常があると判断することができる。従って、制御部110は、ステップS206からステップS208へと進み、よこミスの対策を実施する。その後、処理がステップS209へと進む。
【0106】
ステップS209において、オペレータがよこミスの対策を実施した後に、制御部110は、織幅内センサ171に対し、「センサ設定=自動、検知状態=休止」の指示を通信部113から送信する。この後、処理がステップS202へと戻る。なお、ステップS203とS206におけるミス率の許容範囲については、任意に定めることができる。
【0107】
上記の
図22のフローチャートに示す制御手順によると、よこミスに起因する緯糸の飛走状態に変化があったときに織幅内センサ171を動作させ、よこミスの分類により異常箇所を特定し、それ以外の期間は織幅内センサ171を動作させないため、織幅内センサ171の電池部1713の消耗を抑制し、寿命を従来より伸ばすことができる。この結果、電池交換の周期を従来の方式よりも長くすることができる。
【0108】
[実施の形態1~3により得られる効果]
以上説明したように、本開示の実施の形態1~3によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)本開示におけるエアジェット織機は、ノズルからのエア噴射により緯糸が緯入れされるエアジェット織機であって、織幅内において緯糸の飛走を検知して緯糸検知信号を生成する織幅内センサ171と、緯糸検知信号に基づいて緯入れを制御する制御部110と、を備え、緯糸の飛走状態の変化に応じて織幅内センサ171に対する検知実行指示を制御部110から無線により送信する。織幅内センサ171では、センサ通信部1711が受信した検知実行指示に基づいてセンサ駆動部1712が電池部1713から光電センサ部171sに電力を供給する。ここで、緯糸の飛走状態に変化が生じたときに光電センサ部171sに電池部1713から電力を供給して発光させるため、電池部1713の消耗を抑制し、電池交換の周期を従来の方式よりも長くすることができる。すなわち、エアジェット織機に使用されるワイヤレス方式の飛走センサの電池の寿命を従来よりも伸ばすことが可能になる。
【0109】
(2)本開示におけるエアジェット織機は、ノズルから噴射するエアを貯蔵するタンクの圧力に変化が生じた場合、制御部110は飛走状態に変化が生じたと判断する。ここで、タンクの圧力の変化をトリガとして、センサ駆動部1712が光電センサ部171sに電池部1713から電力を供給するため、電池部1713の消耗を効果的に抑制し、電池交換の周期を従来の方式よりも長くすることができる。
【0110】
(3)本開示におけるエアジェット織機は、エンドセンサ172が生成した織端での緯糸検知信号のばらつきが、圧縮エアの圧力を調整する初期圧力調整モード時と同等でない場合、制御部110は、飛走状態に変化が生じたと判断する。ここで、エンドセンサ172の緯糸検知信号のばらつきをトリガとして、織幅内センサ171では、センサ駆動部1712が電池部1713から光電センサ部171sに電力を供給するため、電池部1713の消耗を効果的に抑制し、電池交換の周期を従来の方式よりも長くすることができる。
【0111】
(4)本開示におけるエアジェット織機は、上記(1)~(3)において、制御部110は、飛走状態に変化が生じてないと判断してから一定時間経過した後、または飛走状態の変化を解消する調整が完了した後、検知休止指示を織幅内センサ171に送信する。織幅内センサ171では、制御部110からの検知休止指示に応じて、電池部1713から光電センサ部171sへの電力の供給を、センサ駆動部1712が停止する。このため、織幅内センサ171の電池部1713の消耗を抑制し、電池交換の周期を従来の方式よりも長くすることができる。
【0112】
[その他の実施の形態]
実施の形態1~3における変形例を以下に説明する。上記の説明における緯糸の飛走状態に変化が生じた場合は、一例を示したもので、その他各種の状況を、飛走状態の変化が生じた場合として扱うことが可能である。
以上の説明において、織幅内センサ171は1個の場合を示しているが、織幅内センサ171を織幅内に複数個配置して、異常を生じた箇所の特定を細かく行うことも可能である。
【符号の説明】
【0113】
100 緯入装置、110 制御部、111 CPU、112 ファンクションパネル、113 通信部、120 給糸部、130 緯糸測長貯留部、131 貯留ドラム、132 緯糸係止ピン、133 バルーンセンサ、140 緯入れノズル、141 タンデムノズル、142 メインノズル、143 メインレギュレータ、144 メインタンク、144s 圧力センサ、145 タンデムバルブ、146 メインバルブ、147 ブレーキ、150 筬、150a 緯糸飛走経路、160 サブノズル、161 配管、162 サブレギュレータ、163 配管、164 サブタンク、164s 圧力センサ、165 サブバルブ、166 配管、170 飛走センサ、171 織幅内センサ、172 エンドセンサ、171a ワイヤレスユニット、171s 光電センサ部、1711 センサ通信部、1712 センサ駆動部、1713 電池部、M メイン系統、S サブ系統、TL 織幅、Y 緯糸。