(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20240123BHJP
F28F 1/40 20060101ALI20240123BHJP
F28F 13/08 20060101ALI20240123BHJP
F28D 7/16 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
F28F1/40 B
F28F13/08
F28D7/16 A
(21)【出願番号】P 2020146344
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2020104893
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 有弥
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祐有紀
(72)【発明者】
【氏名】戸田 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】沖ノ谷 剛
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/176620(WO,A1)
【文献】特開2003-047258(JP,A)
【文献】特開2011-228508(JP,A)
【文献】特開2009-277768(JP,A)
【文献】米国特許第6173758(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/473
F28F 1/40
F28F 13/08
F28D 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体流路(W10)を流れる熱媒体と電子部品(40)との間で熱交換を行う熱交換器(10)であって、
前記熱媒体流路に設けられ、所定のフィン配置方向に間隔を有して並べて配置されることにより前記熱媒体流路を複数の細流路(W11)に分割する複数のフィン(30)を備え、
前記熱媒体流路は、前記フィン配置方向に交差する方向である流路長手方向に延びるように形成され、
前記フィンは、前記流路長手方向に沿って、板厚が厚い部分である厚肉部(301)と、板厚が薄い部分である薄肉部(302)とが
全部又は一部に交互に形成された形状からなり、
隣り合って配置される2つのフィンのうちの一方のフィン(30a)の厚肉部(301a)と他方のフィン(30b)の薄肉部(302b)とが前記フィン配置方向において対向して配置されるとともに、前記一方のフィンの薄肉部(302a)と前記他方のフィンの厚肉部(301b)とが前記フィン配置方向において対向するように配置され
、
前記フィンには、その一方の表面に沿って配置される細流路と、その他方の表面に沿って配置される細流路とを連通させる連通路(305)が形成されており、
前記フィンには、前記流路長手方向に所定の間隔で複数の前記連通路が形成されており、
前記フィンは、複数の前記連通路の間に配置される複数のフィン片(310)を有しており、
前記フィン片は、その前記フィン配置方向の長さよりも、その前記流路長手方向の長さの方が長い形状を有しており、
前記流路長手方向における前記フィン片の幅を「d1」とし、前記流路長手方向において前記連通路を挟んで隣り合って配置されるフィン片の中心間距離を「Lp」とし、前記フィン配置方向における前記フィン片の幅を「d2」とし、前記フィン配置方向における複数の前記フィンの配置間隔であるフィンピッチの2倍の長さを「Wp」とするとき、前記フィン片は、次式、
(Lp-d1)/Lp≦-0.306(d2/Wp)
2
+0.4324(d2/Wp)+0.1298
を満たすように形成されている
熱交換器。
【請求項2】
前記厚肉部において最も板厚が厚い部分を最厚肉部とし、前記薄肉部において最も板厚が薄い部分を最薄肉部とするとき、
前記フィンには、前記流路長手方向において複数の前記最厚肉部が所定のピッチで形成されるとともに、前記流路長手方向において複数の前記最薄肉部が前記所定のピッチで形成され、
前記一方のフィンの最厚肉部と前記他方のフィンの最厚肉部とが、前記流路長手方向において前記所定のピッチの半分だけずれて配置されており、
前記一方のフィンの最薄肉部と前記他方のフィンの最薄肉部とが、前記流路長手方向において前記所定のピッチの半分だけずれて配置されている
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記細流路に面する前記フィンの表面は、曲面
状に形成されている
請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記細流路に面する前記フィンの表面は、非曲面状に形成されている
請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記フィン配置方向において前記細流路を挟んで隣り合って配置されるフィン片は、前記フィン配置方向において重なるように設けられている
請求項
1~4のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記流路長手方向及び前記フィン配置方向の両方に直交する方向をフィン高さ方向とするとき、
前記電子部品が一方の表面に設置されるとともに、前記フィン高さ方向における複数の前記フィンのそれぞれの一端部が他方の表面に固定される基盤(21)を更に備える
請求項1~
5のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記基盤の一方の表面には、前記電子部品が挿入される凹状の挿入溝(212)が形成されている
請求項
6に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記基盤の他方の表面に固定される前記フィンの一端部の側壁部は、テーパ状に形成されている
請求項
6又は
7に記載の熱交換器。
【請求項9】
前記基盤の他方の表面に固定される前記フィンの一端部の側壁部は、R形状に形成されている
請求項
6又は
7に記載の熱交換器。
【請求項10】
前記流路長手方向及び前記フィン配置方向の両方に直交する方向をフィン高さ方向とし、前記薄肉部において最も板厚が薄い部分を最薄肉部とするとき、
前記フィンにおいて隣り合う前記最薄肉部の間に配置される部分は、その中央を通り、且つ前記フィン高さ方向に平行な軸線を中心に線対称な形状を有している
請求項1~
9のいずれか一項に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子等の電子部品の放熱を行う熱交換器としては、下記の特許文献1に記載の熱交換器がある。特許文献1に記載の熱交換器は、熱媒体が流通する熱媒体流路を有する流路管を備えている。流路管の内部には、熱媒体流路を複数の細流路に分割するインナーフィンが複数配置されている。インナーフィンは、その並べて配置される方向から見た際に板部が長手方向において波状に屈折するウェーブフィンからなる。ウェーブフィンを用いることにより、隣り合うウェーブフィンの間に設けられる細流路が蛇行状に形成されるようになる。これにより、細流路を流れる熱媒体の流れが乱流になり易くなるため、熱交換器の熱交換性能を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱交換器では、その熱交換性能を高めるための方法の一つとして、インナーフィンの板厚を増加させるという方法がある。インナーフィンの板厚を増加させれば、フィン効率を高めることができるため、熱交換器の熱交換性能を高めることができる。なお、フィン効率とは、フィン表面が全てのフィンの根元温度と等しいと仮定した場合の熱伝達量、すなわち理想的なフィンの熱伝達量に対する実際のフィンの熱伝達量の割合を示すものである。
【0005】
上記の特許文献1に記載されるような熱交換器において、ウェーブフィンのフィン効率を高めるためにその板厚を増加させると、隣り合うウェーブフィンの間の隙間が狭くなる。すなわち各細流路の流路幅が狭くなる。これにより、各細流路を流れる熱媒体の流速が速くなると、熱媒体流路の圧力損失を招くおそれがある。このように、フィン効率と熱媒体流路の圧力損失とはトレードオフの関係があるため、それらを両立させることが難しいという実情がある。
【0006】
本開示は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱媒体の蛇行状の流れを実現しつつも、熱媒体流路を流れる熱媒体の圧力損失の増加を回避し、且つフィン効率を向上させることが可能な熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する熱交換器(10)は、熱媒体流路(W10)を流れる熱媒体と電子部品(40)との間で熱交換を行う熱交換器であって、熱媒体流路に設けられ、所定の間隔を有して並べて配置されることにより熱媒体流路を複数の細流路(W11)に分割する複数のフィン(30)を備える。熱媒体流路は、フィン配置方向に交差する方向である流路長手方向に延びるように形成されている。フィンは、流路長手方向に沿って、板厚が厚い部分である厚肉部(301)と、板厚が薄い部分である薄肉部(302)とが交互に形成された形状からなる。隣り合って配置される2つのフィンのうちの一方のフィン(30a)の厚肉部(301a)と他方のフィン(30b)の薄肉部(302b)とがフィン配置方向において対向して配置されるとともに、一方のフィンの薄肉部(302a)と他方のフィンの厚肉部(301b)とがフィン配置方向において対向するように配置されている。フィンには、その一方の表面に沿って配置される細流路と、その他方の表面に沿って配置される細流路とを連通させる連通路(305)が形成されている。フィンには、流路長手方向に所定の間隔で複数の連通路が形成されている。フィンは、複数の連通路の間に配置される複数のフィン片(310)を有している。フィン片は、そのフィン配置方向の長さよりも、その流路長手方向の長さの方が長い形状を有している。流路長手方向におけるフィン片の幅を「d1」とし、流路長手方向において連通路を挟んで隣り合って配置されるフィン片の中心間距離を「Lp」とし、フィン配置方向におけるフィン片の幅を「d2」とし、フィン配置方向における複数のフィンの配置間隔であるフィンピッチの2倍の長さを「Wp」とするとき、フィン片は、次式、
(Lp-d1)/Lp≦-0.306(d2/Wp)2+0.4324(d2/Wp)+0.1298
を満たすように形成されている。
【0008】
この構成のように、隣り合う各フィンの厚肉部と薄肉部とが対向して配置されていれば、細流路の流路幅を狭めることなく、それらのフィンの間に設けられる細流路が蛇行状に形成されるようになる。よって、熱媒体の蛇行状の流れを実現しつつ、熱媒体流路を流れる熱媒体の圧力損失の増加を回避することができる。また、フィンに薄肉部だけでなく厚肉部を形成することにより、薄い板状のフィンを用いる場合と比較すると、フィンの板厚を増加させることが可能であるため、フィン効率を向上させることができる。
【0009】
なお、上記手段、特許請求の範囲に記載の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明の効果】
【0010】
本開示の熱交換器によれば、熱媒体の蛇行状の流れを実現しつつも、熱媒体流路を流れる熱媒体の圧力損失の増加を回避し、且つフィン効率を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態の熱交換器の断面構造を示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-II線に沿った断面構造を示す断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の熱交換器における熱媒体の流れを模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の変形例の熱交換器の断面構造を示す断面図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態のフィンの断面構造を示す断面図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態の熱交換器の断面斜視構造を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態の第1変形例の熱交換器の断面構造を示す断面図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態の第2変形例のフィンの断面構造を示す断面図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態の第3変形例のフィンの断面構造を示す断面図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態の第4変形例のフィンの断面構造を示す断面図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態の第4変形例のフィンの断面構造を示す断面図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態の熱交換器の断面構造を示す断面図である。
【
図13】
図13は、第3実施形態の熱交換器の断面構造を示す断面図である。
【
図14】
図14は、第4実施形態の熱交換器の断面構造を示す断面図である。
【
図15】
図15は、第4実施形態の熱交換器の平面構造を示す平面図である。
【
図16】
図16は、第4実施形態の変形例の熱交換器の平面構造を示す平面図である。
【
図17】
図17は、第4実施形態の変形例の熱交換器の平面構造を示す平面図である。
【
図18】
図18は、第5実施形態のフィンの断面構造を示す断面図である。
【
図19】
図19は、第5実施形態の熱交換器における流路長手方向隙間率αと伝熱性能Pfとの関係を示すグラフである。
【
図20】
図20は、第5実施形態の熱交換器におけるフィン配置方向占有率βと流路長手方向隙間率αとの関係を示すグラフである。
【
図21】
図21(A),(B)は、第5実施形態の変形例のフィンの断面構造を示す断面図である。
【
図22】
図22(A),(B)は、第5実施形態の変形例のフィンの断面構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、熱交換器の実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
<第1実施形態>
はじめに、
図1に示される第1実施形態の熱交換器10について説明する。この熱交換器の外面には、例えばインバータ装置の構成要素であるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体素子40が設置されている。本実施形態では半導体素子40が電子部品に相当する。熱交換器10は、その内部を流れる水等の熱媒体と半導体素子40とを熱交換させることにより半導体素子40の放熱を行う機器である。熱交換器10は、基体20と、複数のフィン30とを備えている。
【0013】
基体20は、アルミニウムや銅等の金属からなり、中空箱状に形成されている。基体20は、第1基盤21と、第2基盤22とを備えている。
第1基盤21は平板状に形成されている。第1基盤21の一方の表面である外面210には半導体素子40が設置されている。
【0014】
図中の矢印Yで示される方向に直交する第2基盤22の断面形状は凹状に形成されている。第2基盤22の開口部分を閉塞するように第1基盤21が第2基盤22に組み付けられることにより中空箱状の基体20が構成されている。基体20の内部空間は、熱媒体が流れる熱媒体流路W10を構成している。熱媒体流路W10は矢印Yで示される方向に延びるように形成されている。以下では、矢印Yで示される方向を「流路長手方向」とも称する。
【0015】
複数のフィン30は、アルミニウムや銅等の金属からなり、基体20の内部に配置されている。複数のフィン30と第1基盤21とは一体成形されている。複数のフィン30は、図中に矢印Xで示される方向、すなわち流路長手方向Yに直交する方向に所定の間隔を有して並べて配置されている。複数のフィン30により基体20の内部の熱媒体流路W10が複数の細流路W11に分割されている。各細流路W11には熱媒体が流れている。フィン30の一端部31は、第1基盤21の他方の表面である内面211に固定されている。フィン30の他端部32は第2基盤22の底壁部220の内面に接触している。
【0016】
なお、以下では、矢印Xで示される方向を「フィン配置方向X」と称する。また、フィン配置方向X及び流路長手方向Yの両方に直交する方向を「フィン高さ方向Z」と称する。
図2は、
図1に示されるII-II線に沿った断面構造を示したものである。
図2に示されるように、フィン30は、流路長手方向Yに沿って、板厚が厚い部分である厚肉部301と、板厚が薄い部分である薄肉部302とが交互に形成された形状からなり、全体として板厚が不均一な形状を有している。厚肉部301は、フィン30の板厚の平均値よりも相対的に板厚が厚い部分である。薄肉部302は、フィン30の板厚の平均値よりも相対的に板厚が薄い部分である。流路長手方向Yにおける厚肉部301及び薄肉部302のそれぞれの長さは同一である。また、フィン高さ方向Zにおけるフィン30の長さは、流路長手方向Yにおけるフィンの長さよりも短く、またフィン高さ方向Zにおける第1基盤21の長さよりも長い。以下では、厚肉部301において最も板厚が厚い部分を最厚肉部3010と称し、薄肉部302において最も板厚が薄い部分を最薄肉部3020と称する。
【0017】
フィン30には、流路長手方向Yにおいて複数の最厚肉部3010が所定のピッチPで形成されるとともに、流路長手方向Yにおいて複数の最薄肉部3020が同一のピッチPで形成されている。細流路W11に面するフィン30の表面303,304は、最厚肉部3010と最薄肉部3020とが滑らかに連続するように曲面で形成されており、略サイクロイド状の曲面が流路長手方向Yに連続するような形状を有している。フィン配置方向Xにおける最厚肉部3010及び最薄肉部3020のそれぞれの長さを「幅」とし、フィン配置方向Xにおける細流路W11の長さを「流路幅」とするとき、最厚肉部3010の幅は細流路W11の最大流路幅よりも大きい。また、最薄肉部3020の幅は細流路W11の最小流路幅よりも小さい。
【0018】
なお、以下では、フィン配置方向Xにおいて隣り合って配置される2つのフィン30を「フィン30a,30b」と称する。また、フィン30a,30bの厚肉部を符号301a,301bでそれぞれ表すとともに、フィン30a,30bの薄肉部を符号302a,302bでそれぞれ表す。さらに、フィン30a,30bの最厚肉部を符号3010a,3010bでそれぞれ表すとともに、フィン30a,30bの最薄肉部を符号3020a,3020bでそれぞれ表す。
【0019】
図2に示されるように、隣り合って配置される2つのフィン30a,30bのうちの一方のフィン30aの厚肉部301aと他方のフィン30bの薄肉部302bとはフィン配置方向Xにおいて対向して配置されている。また、一方のフィン30aの薄肉部302aと他方のフィン30bの厚肉部301bとがフィン配置方向Xにおいて対向して配置されている。さらに、一方のフィン30aの最厚肉部3010aと他方のフィン30bの最厚肉部3010bとが、流路長手方向Yにおいて所定のピッチPの半分「P/2」だけずれて配置されている。同様に、一方のフィン30aの最薄肉部3020aと他方のフィン30bの最薄肉部3020bとが、流路長手方向Yにおいて所定のピッチPの半分「P/2」だけずれて配置されている。なお、隣り合って配置される2つのフィン30a,30bのそれぞれのフィン高さ方向Zに直交する断面形状は、流路長手方向Yにおいて「P/2」だけずれて配置されていることを除けば、同一の形状である。
【0020】
以上説明した本実施形態の熱交換器10によれば、以下の(1)~(7)に示される作用及び効果を得ることができる。
(1)
図2に示されるように、隣り合う各フィン30a,30bの厚肉部301a,301bと薄肉部302a,302bとが対向して配置されていれば、細流路W11の流路幅を狭めることなく、それらのフィン30a,30bの間に設けられる細流路W11が蛇行状に形成されるようになる。よって、熱媒体の蛇行状の流れを実現しつつ、熱媒体流路W10を流れる熱媒体の圧力損失の増加を回避することができる。また、フィン30a,30bに薄肉部302a,302bだけでなく厚肉部301a,301bを形成することにより、薄い板状のフィンを用いる場合と比較すると、フィン30a,30bの板厚を確保できるため、フィン効率を向上させることができる。
【0021】
(2)本実施形態の熱交換器10では、
図3に矢印で示されるように細流路W11の内部において熱媒体が蛇行状に流れる。このように熱媒体が流れることで、フィン30aにおいて熱媒体が衝突し易い箇所は、その厚肉部301aの側壁部308aとなる。また、フィン30bにおいて熱媒体が衝突し易い箇所は、その厚肉部301bの側壁部308bとなる。このように各フィン30a,30bの厚肉部301a,301bに熱媒体が衝突することで、熱媒体の熱がフィン30a,30bに伝達され易くなるため、フィン効率を高めることができる。
【0022】
(3)各フィン30a,30bの表面から熱媒体が剥離し易い箇所は、
図3に示される薄肉部302a,302bの付近となる。よって、各フィン30a,30bと熱媒体との間で熱交換が行われ難い箇所に薄肉部302a,302bが配置されているため、薄肉部302a,302bが設けられていることに起因するフィン効率の悪化の影響が生じ難い。
【0023】
(4)一方のフィン30aの最厚肉部3010aと他方のフィン30bの最厚肉部3010bとが、流路長手方向Yにおいて所定のピッチPの半分「P/2」だけずれて配置されている。同様に、一方のフィン30aの最薄肉部3020aと他方のフィン30bの最薄肉部3020bとが、流路長手方向Yにおいて所定のピッチPの半分「P/2」だけずれて配置されている。この構成によれば、隣り合うフィン30a,30bの間に設けられる細流路W11が蛇行状に形成され易くなるため、熱媒体の蛇行状の流れを更に実現し易くなる。結果的に熱交換器10の熱交換性能を向上させることができる。
【0024】
(5)熱媒体が蛇行状に流れる場合、フィンの表面から剥離するように熱媒体が流れる可能性がある。熱媒体がフィンの表面から剥離して流れると、その部分で熱媒体が滞留し易くなる。これは熱交換器10の熱交換性能を低下させる要因となる。この点、細流路W11に面するフィン30の表面303,304は曲面で形成されている。この構成によれば、細流路W11を流れる熱媒体が表面303,304から乖離し難くなるため、熱交換器10の熱交換性能の低下を回避することができる。
【0025】
(6)熱交換器10は、外面210に半導体素子40が配置される第1基盤21を備えている。第1基盤21の内面211には、複数のフィン30のそれぞれの一端部31が固定されている。この構成によれば、第1基盤21を介して半導体素子40と熱媒体とを効果的に熱交換させることができる。
【0026】
(7)フィン30の一端部31は、第1基盤21の他方の表面である内面211に固定されている。フィン30の他端部32は第2基盤22の底壁部220の内面に接触している。この構成によれば、各細流路W11が独立した流路としてそれぞれ構成されるため、各フィン30に沿って流れるような熱媒体の流れが形成され易くなる。よって、熱交換器10の熱交換性能を向上させることができる。
【0027】
(変形例)
次に、第1実施形態の熱交換器10の変形例について説明する。
図4に示されるように、本変形例の熱交換器10では、フィン30の他端部32と第2基盤22の底壁部220の内面との間に隙間が形成されている。本変形例の構成によれば、フィン高さ方向Zにおけるフィン30の長さに寸法誤差が存在する場合であっても、その寸法誤差を、フィン30の他端部32と第2基盤22の底壁部220との間に形成される隙間において吸収することができるため、フィン30の寸法精度を緩和することができる。
【0028】
なお、
図4に示されるように、複数の細流路W11は、フィン30と第2基盤22の底壁部220との間に形成される隙間を通じて互いに連通されていてもよい。換言すれば、複数の細流路W11は、互いに独立した流路である必要性はなく、所定の箇所で互いに連通された流路として形成されていてもよい。あるいは、
図1に示されるように、複数の細流路W11は、互いに独立した流路として形成されていてもよい。
【0029】
<第2実施形態>
次に、熱交換器10の第2実施形態について説明する。以下、第1実施形態の熱交換器10との相違点を中心に説明する。
図5に示されるように、本実施形態のフィン30には、その各薄肉部302を厚さ方向に貫通するように連通路305が形成されている。連通路305は、フィン30の一方の表面303に沿って配置される細流路W11と、フィン30の他方の表面304に沿って配置される細流路W11とを連通させている。
【0030】
なお、フィン30において隣り合う最薄肉部3020,3020の間に配置される部分は、その中央を通り、且つフィン高さ方向Zに平行な軸線m10を中心に線対称な形状を有している。
また、
図6に示されるように、連通路305は、複数のフィン30のうちの一部のフィンのみに形成されていてもよい。さらに、
図6に示されるように、連通路305は、薄肉部302におけるフィン高さ方向Zの一端部から他端部までの領域の一部に設けられていてもよい。あるいは、連通路305は、薄肉部302におけるフィン高さ方向Zの一端部から他端部までの領域の全部に設けられていてもよい。
【0031】
以上説明した本実施形態の熱交換器10によれば、以下の(8)及び(9)に示される作用及び効果を更に得ることができる。
(8)連通路305を介して各細流路W11の間を熱媒体が流通可能となるため、各細流路W11を流れる熱媒体の熱の偏りを低減することができる。よって、熱交換器10の熱交換性能の偏りを改善することができる。また、フィン30に連通路305を形成することで、フィン30を金型により成形し易くなるため、フィン30が製造し易くなる。
【0032】
(9)連通路305は、フィン30の薄肉部302におけるフィン高さ方向Zの一端部から他端部までの領域の一部に設けられている。この構成によれば、フィン30に連通路305を形成することにより得られる効果、すなわち熱交換性能の偏りを改善するという効果を得ることができる。また、フィン30の薄肉部302において連通路305が形成されていない部分では、フィン30の伝熱面積を確保することができる。結果的に、熱交換性能の偏りを改善するという効果と、フィン30の伝熱面積を確保するという効果とを両立させることができる。
【0033】
(第1変形例)
次に、第2実施形態の熱交換器10の第1変形例について説明する。
図7に示されるように、本変形例の複数のフィン30には、フィン高さ方向Zにおいて半導体素子40に対向する位置に配置されるフィン30cと、半導体素子40に対向しない位置に配置されるフィン30dとが含まれている。本変形例の熱交換器10では、フィン30dに連通路305が形成される一方、フィン30cには連通路305が形成されていない。
【0034】
図7に示されるような熱交換器10では、半導体素子40に対向して配置されていないフィン30dのフィン効率よりも、半導体素子40に対向して配置されるフィン30cのフィン効率の方が半導体素子40の放熱性に影響を与え易い。そのため、仮にフィン30cに連通路305が形成されていると、フィン30cのフィン効率が悪化する結果、半導体素子40の放熱性が低下するおそれがある。この点、本変形例の熱交換器10では、フィン30cに連通路305が形成されていないため、フィン30cにおいてフィン効率の悪化の懸念がない。そのため、より確実に半導体素子40の放熱性を確保することができる。
【0035】
(第2変形例)
次に、第2実施形態の熱交換器10の第2変形例について説明する。
図8に示されるように、本変形例のフィン30では、隣り合う連通路305,305の間に配置される部分のうち、流路長手方向Yの下流側の部位におけるフィン配置方向Xの一端部にピン角状の角部306が形成され、その他端部にもピン角状の角部307が形成されている。
【0036】
本変形例の構成によれば、フィン30の角部306,307付近における熱媒体の乖離を低減することができるため、熱媒体に対するフィン30の伝熱面積を増加させることができる。よって、熱交換器10の熱交換性能を向上させることができる。
(第3変形例)
次に、第2実施形態の熱交換器10の第3変形例について説明する。
【0037】
図9に示されるように、本変形例のフィン30において隣り合う連通路305,305の間に配置される部分は、その中央を通り、且つフィン高さ方向Zに平行な軸線m10を中心に線対称でない形状を有している。より詳しくは、隣り合う連通路305,305の間に配置される部分のうち、流路長手方向Yの下流側の部位におけるフィン配置方向Xの一端部にピン角状の角部306が形成され、その他端部にR形状の角部307が形成されている。
【0038】
本変形例の構成によれば、一方の細流路W11をピン角状の角部306に沿って流れる熱媒体の流速の方が、他方の細流路W11をR形状の角部307に沿って流れる熱媒体の流速よりも速くなる。よって、ピン角状角部307の側の細流路W11から連通路305を介してR形状角部307の側の細流路W11に向かうような熱媒体の流れが形成され易くなる。これにより、連通路305付近に熱媒体の淀みが形成され難くなるため、熱媒体の伝熱性能の低下を抑制することができる。
【0039】
(第4変形例)
次に、第2実施形態の熱交換器10の第4変形例について説明する。
図10に示されるように、本変形例では、フィン30において複数の連通路305の間に配置される部分をフィン片310と称する。
図10に示されるようにフィン配置方向Xにおいて隣り合うフィン30a,30bのそれぞれのフィン片310a,310bが重なっていない領域Aが存在する場合、その領域Aでは熱媒体の流路断面積が部分的に急拡大することとなる。結果的に、領域Aでは熱媒体が慣性に従って流れ易くなるため、フィン片310における熱媒体の流れ方向の下流側の部位では、熱媒体の剥離や淀みが発生し易くなる。これは、フィン30の伝熱性能を低下させる要因となる。
【0040】
そこで、
図11に示されるように、隣り合うフィン30a,30bのそれぞれのフィン片310a,310bはフィン配置方向Xにおいて重なるように配置されていることが望ましい。このような構成によれば、熱媒体の流路断面積が部分的に急拡大することを抑制できるため、フィン片310において熱媒体の剥離や淀みが発生し難くなる。そのため、フィン30の伝熱性能を向上させることができる。
【0041】
<第3実施形態>
次に、熱交換器10の第3実施形態について説明する。以下、第1実施形態の熱交換器10との相違点を中心に説明する。
図12に示されるように、本実施形態のフィン30において第1基盤21に固定される一端部31の側壁部はR状に形成されている。あるいは、
図13に示されるように、フィン30の一端部31の側壁部は、抜き勾配を設定するために、テーパ状に形成されていてもよい。
【0042】
以上説明した本実施形態の熱交換器10によれば、以下の(9)に示される作用及び効果を更に得ることができる。
(9)フィン30から第1基盤21に熱が伝わり易くなるため、フィン30のフィン効率を向上させることができる。したがって、熱交換器10の熱交換性能を高めることができる。
【0043】
<第4実施形態>
次に、熱交換器10の第4実施形態について説明する。以下、第1実施形態の熱交換器10との相違点を中心に説明する。
図14に示されるように、本実施形態の熱交換器10では、その第1基盤21の外面210に凹状の挿入溝212が形成されている。具体的には、
図15に示されるように、第1基盤21の外面210には、2つの挿入溝212が流路長手方向Yに並ぶように形成されている。2つの挿入溝212には、別体からなる2つの半導体素子40がそれぞれ挿入されている。
【0044】
以上説明した本実施形態の熱交換器10によれば、以下の(10)に示される作用及び効果を更に得ることができる。
(10)本実施形態のように半導体素子40を挿入可能な挿入溝212が第1基盤21の外面210に形成されていれば、第1基盤21に対する半導体素子40の設置が容易となる。
【0045】
(変形例)
次に、第4実施形態の熱交換器10の第1変形例について説明する。
図16に示されるように、熱交換器10では、フィン高さ方向Zにおいてフィン30と半導体素子40が対向して配置されていなくてもよい。
【0046】
なお、
図16に示されるような構造の場合、半導体素子40に対するフィン30の熱伝達性能が低下するおそれがある。そのため、
図17に示されるように、熱交換器10は、フィン高さ方向Zにおいてフィン30と半導体素子40とが対向して配置されるような構造を有していてもよい。
【0047】
<第5実施形態>
次に、熱交換器10の第5実施形態について説明する。以下、第2実施形態の熱交換器10との相違点を中心に説明する。
発明者らは、第2実施形態の熱交換器10のようにフィン30に連通路305を形成する場合に熱交換器10の伝熱性能を高めることができる寸法を実験的に求めた。以下、発明者らにより行われた実験について具体的に説明する。
【0048】
図18に示される本実施形態の熱交換器10では、複数のフィン30が、フィン配置方向Xに所定の間隔Dfで配置されている。以下では、間隔Dfを「フィンピッチ」と称する。フィン30には、複数の連通路305が流路長手方向Yに所定の間隔で形成されている。フィン30は、複数の連通路305の間に配置される複数のフィン片310を有している。フィン高さ方向Zに直交するフィン片310の断面形状は、流路長手方向Yに長辺を有し、且つフィン配置方向Xに短辺を有する楕円形状である。すなわち、フィン片310は、そのフィン配置方向Xの長さよりも、その流路長手方向Yの長さの方が長い形状を有している。フィン片310は、流路長手方向Yにおいて所定の間隔Lpで形成されている。
【0049】
所定のフィン30gに対してフィン配置方向Xの一方の側に隣り合って配置されるフィンを第1隣設フィン30eとし、所定のフィン30gに対してフィン配置方向Xの他方の側に隣り合って配置されるフィンを第2隣設フィン30fとするとき、第1隣設フィン30e及び第2隣設フィン30fのそれぞれのフィン片310e,310fは所定のフィン30gのフィン片310gに対して流路長手方向Yに「Lp/2」だけずれて配置されている。第1隣設フィン30e及び第2隣設フィン30fのそれぞれのフィン片310e,310fは、所定のフィン30gの連通路305gを挟んでフィン配置方向Xに対向して配置されている。
【0050】
このような熱交換器10では、フィン30に連通路305が形成されていると、隣り合う細流路W11,W11間の流速差により発生する静圧差により連通路305に熱媒体の流れが発生する。この連通路305における熱媒体の流れにより熱媒体の淀みが解消される結果、熱交換器10としての伝熱性能が向上する。このような原理に基づけば、連通路305が拡大するほど、淀み解消効果が高まるため、伝熱性能が向上すると考えられる。しかしながら、実際には、連通路305が拡大するほど、フィン30の伝熱面積が減少するため、それによる伝熱性能の低下が顕著となる。このように、連通路305の寸法に関しては、淀み解消効果に伴う伝熱性能の向上と、フィン30の伝熱面積の減少に伴う伝熱性能の低下とがトレードオフの関係にある。結果的に、連通路305の寸法に関しては、熱交換器10の伝熱性能が極大値を示す寸法が存在すると考えられる。
【0051】
以上のような想定を踏まえ、熱交換器10において、図中の長さd1,Lp,d2,Wpを変化させつつ熱交換器10の熱伝達性能を実験的に求めたところ、
図19に示されるようなグラフが得られた。なお、「d1」は、流路長手方向Yにおけるフィン片310の幅である。「Lp」は、流路長手方向Yにおいて連通路305を挟んで隣り合って配置されるフィン片310,310の中心間距離である。「d2」は、フィン配置方向Xにおけるフィン片310の幅である。「Wp」は、フィン配置方向XにおけるフィンピッチDfの2倍の長さである。
図19に示されるグラフは、横軸に流路長手方向隙間率α(={(Lp-d1)/Lp}×100)を、縦軸に熱交換器10の伝熱性能Pfをそれぞれ取って、それらの関係を示したものである。なお、
図19に示される各実線m1~m5は、フィン配置方向占有率β(=(d2/Wp)×100)が「26[%]」、「30[%]」、「32[%]」、「39[%]」、及び「50[%]」のそれぞれの場合における流路長手方向隙間率αに対する伝熱性能Pfの推移を示したものである。
【0052】
なお、流路長手方向隙間率αは、流路長手方向Yにおけるフィン片310の配置間隔Lpに対する連通路305の幅を百分率で表したものである。したがって、流路長手方向隙間率αが大きくなるほど、流路長手方向Yにおける連通路305の幅が大きくなることを意味する。また、
図19に示されるグラフにおいて、隙間率αが「0[%]」である場合の値は、連通路305が存在しないフィンを用いた場合の値に相当する。
【0053】
図19に示されるように、流路長手方向隙間率αが「0[%]」から増加した場合、熱交換器10の伝熱性能Pfは、徐々に増加して極大値を示した後に減少するように推移する。よって、流路長手方向隙間率αが「0[%]」である場合よりも、すなわち連通路305が形成されていない場合よりも、伝熱性能Pfが高くなる領域が存在する。例えば、フィン配置方向占有率βが「26%」である場合、流路長手方向隙間率αが「0[%]」であるときの伝熱性能Pfを基準伝熱性能Pf1bとすると、流路長手方向隙間率αが「0」から増加するほど基準伝熱性能Pf1bから増加するとともに、流路長手方向隙間率αが所定値α10になった時点で極大値Pf1maxを示す。そして、流路長手方向隙間率αが所定値α10から更に増加すると伝熱性能Pfは減少して、流路長手方向隙間率αが閾値α11になると、伝熱性能Pfが基準伝熱性能Pf1bを示す。さらに流路長手方向隙間率αが増加すると、伝熱性能Pfが基準伝熱性能Pf1bよりも低下する。したがって、流路長手方向隙間率αが「α≦α11」を満たしていれば、基準伝熱性能Pf1bと同等、あるいはそれ以上の伝熱性能を確保することができる。
【0054】
フィン配置方向占有率βが「30[%]」、「32[%]」、「39[%]」、及び「50[%]」のそれぞれの場合であるときに関しても同様である。なお、
図19では、それらの場合に関して、それらの伝熱性能Pfが極大値Pf2max,Pf3max,Pf4max,Pf5maxを示す流路長手方向隙間率αが所定値α20,α30,α40,α50でそれぞれ示されている。また、それらの伝熱性能Pfが基準伝熱性能Pf2b,Pf3b,Pf4b,Pf5bと同等の伝熱性能Pfを確保できる流路長手方向隙間率αが閾値α21,α31,α41,α51でそれぞれ示されている。
【0055】
図20には、
図19に示される流路長手方向隙間率αの値α11,α21,α31,α41,α51と、それらに対応するフィン配置方向占有率βの値「26%」、「30[%]」、「32[%]」、「39[%]」、「50[%]」との関係が点γ11,γ21,γ31,γ41,γ51で示されている。これらの点γ11,γ21,γ31,γ41,γ51を通る近似式を求めたところ、以下の式f1が得られた。なお、
図20には、この式f1に対応する曲線が実線m11で示されている。
【0056】
α=-0.306・β
2+0.4324・β+0.1298 (f1)
図19に示される流路長手方向隙間率αと伝熱性能Pfとの関係を考慮すると、以下の式f2を満たす領域で流路長手方向隙間率α及びフィン配置方向占有率βが設定されていれば、基準伝熱性能以上の伝熱性能、換言すれば連通路305が形成されていない場合に得られる伝熱性能と同等、もしくはそれを超える伝熱性能を得ることができる。
【0057】
α≦-0.306・β
2+0.4324・β+0.1298 (f2)
以上をまとめると、
図18に示される「d1」、「Lp」、「d2」、「Wp」が以下の式f3を満たせば、連通路305が形成されていない場合に得られる伝熱性能と同等、もしくはそれを超える伝熱性能を得ることができる。
【0058】
(Lp-d1)/Lp≦-0.306(d2/Wp)
2+0.4324(d2/Wp)+0.1298 (f3)
また、
図20には、
図19に示される流路長手方向αの値α10,α20,α30,α40,α50と、それらに対応するフィン配置方向占有率βの値「26%」、「30[%]」、「32[%]」、「39[%]」、「50[%]」との関係が点γ10,γ20,γ30,γ40,γ50で示されている。これらの点γ10,γ20,γ30,γ40,γ50を通る近似式を求めたところ、以下の式f4が得られた。なお、
図20には、この式f4に対応する曲線が一点鎖線m12で示されている。
【0059】
α=-0.0897・β
2+0.1268・β+0.0381 (f4)
したがって、
図18に示される「d1」、「Lp」、「d2」、「Wp」が以下の式f5を満たせば、熱交換器10の伝熱性能を最大にすることが可能となる。
【0060】
(Lp-d1)/Lp=-0.0897(d2/Wp)
2+0.1268(d2/Wp)+0.0381 (f5)
なお、
図20の実線m11を用いることで得られる基準伝熱性能を「Pfb」とし、
図20の一点鎖線m12を用いることで得られる最大伝熱性能を「Pfmax」とするとき、
図18に示される「d1」、「Lp」、「d2」、「Wp」が以下の式f6を満たせば、「(Pfmax-Pfb)/2」の伝熱性能を得ることができる。なお、
図20には、この式f6の関係式が二点鎖線m13で示されている。
【0061】
(Lp-d1)/Lp≦-0.2097(d2/Wp)2+0.2963(d2/Wp)+0.089 (f6)
以上説明した本実施形態の熱交換器10によれば、以下の(11)及び(12)に示される作用及び効果を更に得ることができる。
【0062】
(11)
図18に示される「d1」、「Lp」、「d2」、「Wp」を上記の式f3を満たすように設定する。これにより、連通路305が形成されていない場合に得られる伝熱性能と同等、もしくはそれを超える伝熱性能を得ることができる。
(12)
図18に示される「d1」、「Lp」、「d2」、「Wp」を上記の式f5を満たすように設定する。これにより、熱交換器10の伝熱性能を最大にすることが可能となる。
【0063】
(変形例)
次に、第5実施形態の熱交換器10の変形例について説明する。
フィン片310の形状は任意に変更可能であるが、熱媒体の蛇行流を形成し易くするためには、フィン片310が、そのフィン配置方向Xの長さよりも、その流路長手方向Yの長さの方が長い形状を有することが有効である。その一例としては、フィン片310を、
図21に示されるように長円状に形成したり、
図22に示されるように菱形状に形成したりすることが考えられる。フィン片310を長円状又は菱形状に形成した場合、以下のような作用及び効果を得ることができる。
【0064】
仮に
図21(A)に示されるように、フィン高さ方向Zに直交するフィン片310の断面形状が長円状に形成されており、且つフィン30に連通路305が形成されていない場合、
図2に示されるような楕円状のフィン片を用いる場合と比較すると、熱媒体が蛇行状に流れ難くなる。そのため、フィン片310が長円状に形成されている場合には、
図21(B)に示されるようにフィン30に連通路305を形成することが特に有効となる。このような構成によれば、連通路305を通過する熱媒体の流れにより、熱媒体が蛇行状に流れ易くなるため、結果的にフィン効率を大幅に向上させることができる。このように、長円状のフィン片310を用いる場合、連通路305が存在するときと、連通路305が存在しないときとで熱媒体の流れ方が大きく異なるため、連通路305を形成することによるフィン効率の大幅な向上を期待することができる。
【0065】
また、
図22(A)に示されるように、フィン高さ方向Zに直交するフィン片310の断面形状は菱形状であってもよい。
図22(A)に示されるように、フィン片310が菱形状に形成されており、且つフィン30に連通路305が形成されていない場合、
図2に示されるような楕円状のフィン片を用いる場合と比較すると、フィン片310から熱媒体が剥離し易くなる結果、熱媒体の淀みが発生し易くなる。これは、フィン30の有効な伝熱面積を減少させる要因となる。これに対し、
図22(B)に示されるように、フィン30に連通路305が形成されていれば、連通路305を通過する熱媒体の流れにより、熱媒体がフィン片310から剥離し難くなるため、熱媒体の淀みが発生し難くなる。したがって、フィン30の有効な伝熱面積を大きくすることができるため、フィン効率を向上させることができる。
【0066】
なお、フィン片310が長円状に形成されている場合、あるいは菱形状に形成されている場合には、連通路305が形成されている場合に得られる伝熱性能と同等の伝熱性能を得ることが可能な流路長手方向隙間率α及びフィン配置方向占有率βの関係式は、例えば
図20に破線m14で示されるような関係式になると考えられる。
【0067】
<他の実施形態>
なお、上記実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
・
図5に示されるようなフィン30に連通路305を有する熱交換器10において、
図4に示されるようなフィン30の他端部32と第2基盤22の底壁部220の内面との間に隙間が形成される構造を採用してもよい。この構成によれば、フィン30の他端部32と第2基盤22の底壁部220の内面との間に形成される隙間を介して各細流路W11の間を熱媒体が流通可能となる。複数のフィン30に形成される連通路305の幅には、例えばフィン30の形状公差等に起因してばらつきが存在する。これは各細流路W11の圧力損失にばらつきを生じさせる要因となる。この点、フィン30の他端部32と第2基盤22の底壁部220の内面との間に形成される隙間を介して各細流路W11の間を熱媒体が流通可能であれば、各細流路W11に圧力損失のばらつきが生じた場合であっても、各細流路W11の間を熱媒体が流通することにより、それらの圧力損失のばらつきが緩和される。したがって、各細流路W11の圧力損失のロバスト性を向上させることができる。
【0068】
・各実施形態のフィン30の形状は、流路長手方向Yにおいて厚肉部301と薄肉部302とが交互に形成された形状であれば、任意に変更可能である。
・流路長手方向Yは、フィン配置方向Xに直交する方向に限らず、フィン配置方向Xに対して交差する方向であればよい。
【0069】
・各実施形態のフィン30は、流路長手方向Yに沿って厚肉部301と薄肉部302とを有し、それらの曲面状の外面が連続する構造からなるものであった。これに代えて、フィン30は、厚肉部301と薄肉部302との間に、それらの曲面状の外面を直線的に繋げるような形状を有する中間接続部を有するものであってもよい。
【0070】
・フィン30の表面303,304は、曲面だけでなく、平面のみ、あるいは平面及び曲面の組み合わせで構成されていてもよい。
・各実施形態のフィン30では、板厚の平均値よりも相対的に板厚が厚い部分を厚肉部301と定義したが、厚肉部301の定義はこれに限らず、他の部分よりも相対的に板厚が厚い部分を厚肉部301と定義してもよい。薄肉部302に関しても同様である。要は、フィン30は、流路長手方向Yに沿って、板厚が厚い厚肉部301と、板厚が薄い薄肉部302とを交互に有するものであればよい。
【0071】
・
図18に示されるような第5実施形態のフィン片310には、例えば
図12に示されるような一端部の側壁部をR形状に形成する構造や、
図13に示されるように一端部の側壁部をテーパ状に形成する構造等を適用することも可能である。これらの構造を採用する場合、フィン高さ方向Zにおいてフィン片310の幅が異なることとなる。このとき、フィン高さ方向Zにおけるフィン片310の全体が上記の式f3を満たしていてもよいし、フィン高さ方向Zにおけるフィン片310の一部が上記の式f3を満たしていてもよい。前者の場合にはフィン片310の全体で上記の(11)に示される作用及び効果を得ることができ、後者の場合にはフィン片310の一部で上記の(11)に示される作用及び効果を得ることができる。なお、上記の式f5,f6に関しても同様である。
【0072】
・第5実施形態の熱交換器10の複数のフィン30には、上記の式f3を満たすフィンと、上記の式f3を満たさないフィンとが混在していてもよい。この場合、上記の式f3を満たすフィンにおいて上記の(11)に示される作用及び効果を得ることができるため、従来の熱交換器よりもフィン効率を高めることができる。なお、上記の式f5,f6に関しても同様である。
【0073】
・各実施形態の熱交換器10は、半導体素子40と熱交換を行うものに限らず、任意の電子部品と熱交換を行うものであればよい。
・本開示は上記の具体例に限定されるものではない。上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0074】
W10:熱媒体流路
W11:細流路
10:熱交換器
21:基盤
30,30a,30b:フィン
40:半導体素子(電子部品)
212:挿入溝
301,301a,301b:厚肉部
302,302a,302b:薄肉部
305:連通路
310:フィン片