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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】投光器
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20240123BHJP
   F21V 5/00 20180101ALI20240123BHJP
   F21V 7/06 20060101ALI20240123BHJP
   G02B 5/10 20060101ALI20240123BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20240123BHJP
   F21W 131/105 20060101ALN20240123BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240123BHJP
【FI】
F21S2/00 330
F21S2/00 623
F21S2/00 310
F21V5/00 510
F21V7/06 100
G02B5/10 A
G02B3/00 Z
F21W131:105
F21Y115:10 500
F21Y115:10 300
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020149986
(22)【出願日】2020-09-07
(65)【公開番号】P2022044389
(43)【公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】723014807
【氏名又は名称】岩崎電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 大海
(72)【発明者】
【氏名】東藤 毅
(72)【発明者】
【氏名】山田 哲司
【審査官】坂口 達紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-508553(JP,A)
【文献】国際公開第2018/061407(WO,A1)
【文献】米国特許第10330902(US,B1)
【文献】特開2014-235820(JP,A)
【文献】特開2011-198757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K 9/00-9/90
F21S 2/00-45/70
F21V 1/00-15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子と、
複数の発光素子のそれぞれに設けられた放物反射面と、を備え、
前記放物反射面は、放物面形状のレンズの全反射面であり、
前記放物反射面のそれぞれには、
設置状態において水平方向を向く2箇所に、前記放物反射面の回転中心軸に向かって凹み、かつ前記放物反射面の出射端から前記発光素子の側に延びる溝状の凹部が設けられ、
前記凹部のそれぞれは、
前記放物反射面の出射端における深さが、当該出射端における前記放物反射面の半径の30%から65%である
ことを特徴とする投光器。
【請求項2】
前記放物反射面の出射端において前記凹部のそれぞれが占める割合が3%から12%であることを特徴とする請求項1に記載の投光器。
【請求項3】
前記凹部のそれぞれは断面V字状であり、
前記凹部のV字の角度αと、前記出射端での前記放物反射面の半径における前記凹部の深さの割合である深さ割合Drとが、
35度≦α≦53度、かつ、32%≦Dr≦42%の範囲
18度≦α≦35度、かつ、42%≦Dr≦53%の範囲、又は
9度≦α≦27度、かつ、Dr=63%の範囲
のいずれかの値である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の投光器。
【請求項4】
前記凹部のそれぞれは、
前記放物反射面の出射端から前記発光素子の側にかけて、前記発光素子の光軸と平行に延びている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の投光器。
【請求項5】
前記凹部のそれぞれの表面は、
当該表面に入射する光を反射、吸収、又は拡散させる
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の投光器。
【請求項6】
前記設置状態における水平方向に沿って前記放物反射面が並べられており、当該水平方向に並ぶ前記放物反射面のそれぞれの間に遮光部を備える
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の投光器。
【請求項7】
前記放物反射面は、1/10ビームの開き角が30度から60度であることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の投光器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投光器に関する。
【背景技術】
【0002】
競技場のスタジアムの投光照明(いわゆるスタジアム照明)に用いられる照明器具において、競技場の任意の位置から照明器具の発光面を観察したときの輝度に関し、所定の輝度以上の範囲を所定の立体角以下にすることで、競技者に眩しさを感じさせ難くする照明器具が知られている(例えば、特許文献1、及び特許文献2参照)。
スタジアム照明の照明器具としては、透光性の光学部材であるレンズを用いて光源の光を制御する器具が知られている。レンズとしては、光源の光が入射する入射面となる凹面を有し、当該凹面が光源の基板に立設した円錐面と当該光源に対面し当該光源の側に凸状の凸レンズ面とを含み、凹面の周囲に外郭によって全反射面を形成したものが知られている(例えば、特許文献2、及び特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-62901号公報
【文献】特開2017-98028号公報
【文献】特開2019-96564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2、及び特許文献3に記載のレンズは、円錐面と凸レンズ面とが交わる境界で意図しない屈折が発生することでグレア源になる。
また、所定の輝度以上の範囲を所定の立体角以下にすると競技場全体の明るさを確保できないこともあり得る。
【0005】
そこで出願人は、競技場において競技者が感じるグレアを抑制できるとともに、競技場の十分な明るさを確保することが可能な投光器として、特願2020-60036号に記載の投光器を特許出願した。
しかしながら出願人は、当該投光器において、照明光のビーム角を狭角配光から例えば中角配光まで大きくした場合にグレアの点で改良の余地があることを見出した。
【0006】
本発明は、ビーム角を大きくした場合でもグレアを抑制できる投光器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、複数の発光素子と、複数の発光素子のそれぞれに設けられた放物反射面と、を備え、前記放物反射面は、放物面形状のレンズの全反射面であり、前記放物反射面のそれぞれには、設置状態において水平方向を向く2箇所に、前記放物反射面の回転中心軸に向かって凹み、かつ前記放物反射面の出射端から前記発光素子の側に延びる溝状の凹部が設けられ、前記凹部のそれぞれは、前記放物反射面の出射端における深さが、当該出射端における前記放物反射面の半径の30%から65%であることを特徴とする投光器である。
【0008】
本発明の一態様は、上記投光器において、前記放物反射面の出射端において前記凹部のそれぞれが占める割合が3%から12%であることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様は、上記投光器において、前記凹部のそれぞれは断面V字状であり、前記凹部のV字の角度αと、前記出射端での前記放物反射面の半径における前記凹部の深さの割合である深さ割合Drとが、
35度≦α≦53度、かつ、32%≦Dr≦42%の範囲
18度≦α≦35度、かつ、42%≦Dr≦53%の範囲、又は
9度≦α≦27度、かつ、Dr=63%の範囲
のいずれかの値である、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様は、上記投光器において、前記凹部のそれぞれは、前記放物反射面の出射端から前記発光素子の側にかけて、前記発光素子の光軸と平行に延びている、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様は、上記投光器において、前記凹部のそれぞれの表面は、当該表面に入射する光を反射、吸収、又は拡散させる、ことを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様は、上記投光器において、前記設置状態における水平方向に沿って前記放物反射面が並べられており、当該水平方向に並ぶ前記放物反射面のそれぞれの間に遮光部を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様は、上記投光器において、前記放物反射面は、放物面形状のレンズの全反射面であることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様は、上記投光器において、前記放物反射面は、1/10ビームの開き角が30度から60度であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ビーム角を大きくした場合でもグレアを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る投光器の概略構成を示す図である。
図2】光源ユニットの構成を示す斜視図である。
図3】光源ユニットの内部を透視して示す斜視図である。
図4】正面カバーを外した状態の光源ユニットを示す正面図である。
図5】光源ユニットを図1に示すV-V線で切った断面図である。
図6】光源部の断面構成を拡大して示す図である。
図7】構成が異なる投光器について、水平方向における斜視角に対する発光面輝度の傾向を示す図である。
図8図7の投光器について、水平方向における斜視角と平均発光面輝度との関係を示す図である。
図9】光源部の発光効率を凹部の角度及び深さ割合を変えてシミュレーションした結果を示す図である。
図10】光源部の0.1%ビーム開き角を凹部の角度及び深さ割合を変えてシミュレーションした結果を示す図である。
図11】放物反射面の出射端における開口半径と、2つの凹部の角度及び深さと、を示す図である。
図12】凹部の角度及び深さ割合ごとに凹部占有率を求めた図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、野球場や競技場等のスタジアムに設置され、競技面を投光照明する投光器を説明する。
図1は、本実施形態に係る投光器1の概略構成を示す図である。
投光器1は、器具本体2と、当該器具本体2を設置箇所に固定するためのアーム4とを備える。器具本体2は、左右の両側面2R、2Lがアーム4に軸支され、左右に延びる回転軸ARの回りに角度調整自在に構成されている。投光器1は、回転軸ARが水平方向DHと略平行になる姿勢でスタジアムに設置され、回転軸ARを中心に器具本体2を回動させることで、水平方向DHに直交する鉛直方向DVにおける照射方向が調整される。
【0018】
器具本体2は、本体ケース6と、当該本体ケース6内に設置された複数の光源ユニット10と、を備える。
本体ケース6は、照明光の出射口である照射開口6Aが正面に形成された箱型を成し、例えばアルミダイキャストなどの適宜の成型手段によって形成される。光源ユニット10のそれぞれは、照明光となる光を放射するユニットであり、互いに同一構成を有し、照射開口6A内に、互いに僅かな隙間を空けて、又は隙間無く並べられている。
【0019】
なお、投光器1は、上述の構成要素の他にも、一般的な投光器が備える各種の構成要素(例えば電源装置など)を備えている。
【0020】
図2は光源ユニット10の構成を示す斜視図であり、図3は光源ユニット10の内部を透視して示す斜視図である。図4は正面カバー18を外した状態の光源ユニット10を示す正面図である。また図5は光源ユニット10を図1に示すV-V線で切った断面図である。
これらの図に示すように、光源ユニット10は、矩形板状のベース部12と、当該ベース部12に載置された基板14と、当該基板14に設けられた複数の光源部16と、これら光源部16を覆う正面カバー18と、を備えている。さらに光源ユニット10は、ベース部12の4辺のうちの1組の対辺のみに設けられた側壁20と、光源部16の間に設けられた複数の遮光部22と、を備えている。
【0021】
ベース部12は、光源ユニット10の構成要素を組み付けるベースとなる部材であり、適宜の材料から形成されており、器具本体2への光源ユニット10の組込時には、本体ケース6に適宜の締結手段(例えば螺子止めなど)によって固定される。
光源部16のそれぞれは、投光照明に適した所定ビーム角の照明光を出射するものであり、互いに同一構成を有する。本実施形態では、光源部16は、狭角配光よりも大きな1/10ビーム角を有する、いわゆる中角配光の照明光を出射するように構成されている。なお、本実施形態において、当該1/10ビーム角は30度から60度の範囲である。これらの光源部16は、図5に示すように、光軸ALがベース部12の取付面12Aに略垂直になる姿勢で、図4に示すように、正面視で縦横に格子状に並べて配置されている。
【0022】
正面カバー18は、光源部16の照明光に入射する透光性材料から形成され、ベース部12の取付面12Aに配列された全ての光源部16を覆う広さを有した板状部材である。かかる正面カバー18は、ベース部12の取付面12Aに、基板14を貫通するように立設された複数(図示例では4本)の支柱24によって、図5に示すように、ベース部12の取付面12Aから所定高さHPの位置に支持されている。この正面カバー18は、光源部16が備える後述のレンズ42と一体に構成されている。
【0023】
一対の側壁20は、図5に示すように、ベース部12の側面12Sから正面カバー18まで延びる板状の部材であり、光源部16から光源ユニット10の側方に漏れる光を遮光する遮光板としても機能する。
【0024】
遮光部22は、各光源部16の間を遮光する板状の部材であり、図4及び図5に示すように、一対の側壁20の間に、当該側壁20と平行に延びる姿勢で、かつ、互いに間隔をあけて配置される。そして、各遮光部22の間には、図4に示すように、複数(図示例では3つ)の光源部16が遮光部22の延在方向DEに並べて配置される。
【0025】
かかる構成の光源ユニット10は、図1に示すように、投光器1の設置状態において、一対の側壁20、及び各遮光部22が水平方向DHに並ぶ向きで(すなわち、それぞれが鉛直方向DVに延びる向きで)器具本体2に取り付けられる。
【0026】
図6は、光源部16の断面構成を拡大して示す図である。
光源部16は、発光素子の一態様たるLED40と、当該LED40の光を制御するレンズ42と、を備える。
LED40は、白色光を発するSMD(Surface Mount Device)型の素子であり、発光部44が上面40Aに設けられている。LED40の上面40Aの平面視において、発光部44は、円形状を成し、この上面40Aに対して略垂直に延びる方向を光軸AMとするランバーシアン配光パターンの光を放射する。
【0027】
レンズ42は、放物面形状を成す中実の透過型の光学素子であり、当該放物面の頂点側の端部が光の入射端42T1となり、他方の他端部が光の出射端42T2となっている。レンズ42の側面は、焦点Fで発した光を全反射し、かつ、放物面の回転中心軸APと平行な平行光を形成する放物反射面50であり、かかる放物反射面50の光学的機能によって、入射端42T1から入射した光の配光が中角配光に制御され、当該光が回転中心軸APを光源部16の光軸ALとして出射端42T2から出射される。
【0028】
またレンズ42の入射端42T1には、出射端42T2の側に凹む形状の入射面52が形成されており、当該入射面52の直下に、LED40が発光中心Oを焦点Fに合わせ、かつ光軸AMをレンズ42の光軸AL(回転中心軸AP)に合わせて配置される。入射面52の凹みの開口部52Aは、回転中心軸APの方向からみた場合に、LED40の発光部44よりも大きくなる寸法形状で形成されており、発光部44から放射されたほぼ全ての光が入射面52に入射するようになっている。
【0029】
上記入射面52は、回転中心軸AP上の点を中心とした半球形状に形成されており、LED40から入射面52に入射する光の当該入射面52での反射、及び屈折が抑えられている。反射が抑えられることで、LED40からレンズ42に光を取り込む効率が高められる。また屈折が抑えられることで、放物反射面50における光の制御精度の低下が抑えられる。光の取り込み効率の向上、及び、光の制御精度の向上により、従前のレンズに比べて出射光の軸光度が高められる。
【0030】
レンズ42の出射端42T2は、回転中心軸APに直交する単一の平面形状に形成されている。本実施形態では、上記正面カバー18と各レンズ42とが一体成型によって形成されており、正面カバー18と出射端42T2とが物理的な境界を間に有さずに連続し、出射端42T2からの出射光が効率良く正面カバー18に入射するようになっている。またレンズ42が正面カバー18に結合されることで、正面カバー18をベース部12に取り付けるだけで、各レンズ42の組み込みも完了し、光源ユニット10の組立工程の省力化も図られる。
【0031】
発光部44の縁部(本実施形態では円周部)の中で発光中心Oまでの距離が最大の箇所を最大外径部PMと定義すると、本実施形態では、発光部44が平面視円形であるため、発光部44の周縁上の各点が最大外径部PMに該当する。発光部44の平面視形状が多角形、楕円形、又は異形である場合には、発光部44の外形線上で発光中心Oから最遠方の点が最大外径部PMとなる。
本実施形態において、放物反射面50は、焦点Fの焦点距離FLと、LED40の発光部44の最大外径部PMの大きさLM(最大外径部PMから発光中心Oを通って発光部44の周縁に至る距離)とが、LM/7.2<FLを満たす形状に成されている。焦点距離FLは放物反射面50の放物面の頂点42Kと焦点Fとの距離である。かかる焦点距離FLと最大外径部PMの関係は、実験等によって光源部16の効率を発明者が求めることで得られたものであり、かかる関係を満たすことで、レンズ42における光学損失の増加が抑えられている。
【0032】
かかるレンズ42は、屈折率が低く優れた全反射特性の放物反射面50を得やすいアクリル樹脂、耐熱性が高いポリカ樹脂、成形性及び耐熱性が高く、優れた全反射特性の放物反射面50を得やすいシリコーン樹脂などの樹脂材から形成されている。
【0033】
ここで、レンズ42の出射光が設計値よりも拡がる要因の1つに、LED40以外の外乱光がレンズ42に入射することが挙げられる。特に本実施形態の投光器1においては、複数の光源部16が近接配置されているため、各光源部16のレンズ42に入射する他の光源部16の光が存在し、当該光が外乱光の要因となる。
これに対し、本実施形態では、上述の通り、鉛直方向DVに延びる遮光部22及び側壁20が、水平方向DHに並ぶ各光源部16の間に設けられているため、各光源部16では水平方向DHからの外乱光の入射が遮光され、水平方向DHについて出射光の拡がりが抑えられることとなる。一方、鉛直方向DVについては、各光源部16の間に遮光部材が設けられておらず、上述の外乱光も各光源部16から照明光として照射されるため、器具効率の低下を抑えることができる。
【0034】
また本実施形態のレンズ42において、入射端42T1の入射面52、及び出射端42T2の出射面54のそれぞれの面内に、異なる面同士が接合されることで生じる境界が仮に存在したとすると、この境界を通過した光は意図しない方向に屈折することがありグレア源となる。本実施形態では、上述の通り、入射面52を単一の半球面形状とし、また出射面54を単一の平面形状とすることで、入射面52、及び出射面54のいずれも単一の面によって構成されており、これにより、入射面52、及び出射面54がグレア源になることが防止されている。
【0035】
ところで、本実施形態の投光器1は、照明光のビーム角が狭角配光よりも大きな中角配光であるため、競技場の任意の位置から投光器1の発光面を観察したときに輝度が所定輝度以上となる範囲の立体角も大きくなる。このため、水平方向DHに照射される光も多くなり、何ら対策を施さなければグレアの増大を招く。
そこで本実施形態では、各レンズ42が水平方向DHへの光の放射を抑制するように構成されている。
【0036】
具体的には、図4に示すように、各レンズ42の放物反射面50には、投光器1の設置状態において水平方向DHを向く2箇所(回転中心軸APを通り水平方向DHに平行な線が放物反射面50に交わる箇所)に凹部56が設けられている。図6に示すように、レンズ42の回転中心軸APを含む断面視において、凹部56のそれぞれは、放物反射面50の回転中心軸APに向かって横断面V字状に凹み、出射端42T2からLED40の側に延びる溝形状を成している。凹部56は、回転中心軸AP(LED40の光軸AMに対しても同じ)に平行に設けられることで、当該回転中心軸APから凹部56までの距離MAが凹部56の全長に亘って略一定となっている。換言すれば、凹部56の深さDpは、出射端42T2からLED40の側にかけて、放物反射面50の縮径に応じて漸次に小さくなっている。
【0037】
かかる凹部56が各レンズ42の放物反射面50に設けられることで、投光器1の設置状態において、投光器1の前方を競技者が水平方向DHに横断するように移動した際、LED40の直接光が視認される水平方向DHの角度範囲が狭められるため、狭角配光よりも出射光が拡がる中角配光のレンズ42であってもグレアが抑えられることとなる。
【0038】
本実施形態では凹部56の全表面に、その箇所の輝度を抑える表面加工が施されている。かかる表面加工は、凹部56の表面入射する光を光学的に反射、吸収、又は散乱させることによって抑える加工であり、本実施形態では、凹部56の全表面に対し、黒色に塗ることで透過、及び反射を抑える表面加工が施されている。かかる表面加工によって、放物反射面50における凹部56の箇所の輝度が低下するため、グレアをより抑えることができる。
【0039】
図7は、構成が異なる投光器について、水平方向DHにおける斜視角に対する発光面輝の傾向を示す図である。また図8は、図7の投光器について、水平方向DHにおける斜視角と平均発光面輝度との関係を示す図である。
なお、図7及び図8において、構成Aは本実施形態の投光器1の構成である。この構成Aにおいて、レンズ42のサイズは、出射端42T2での半径RTが9.93mm、開口部52aから出射端42T2までの高さが20.7mm、焦点距離FLが1.1mmである。構成Bは構成Aにおいて凹部56の表面加工(本構成では黒色塗布)が施されていない構成である。構成C及び構成Dは、本発明に対する比較構成であり、構成Cは構成Aにおいて凹部56自体が設けられていない構成である。また構成Dは構成Cにおいてレンズ42として従前の中角配光レンズを用いた構成(すなわち、従前の中角配光の投光器)である。
図8において、構成Eは構成Cにおいてレンズ42として狭角配光のレンズを用いた構成(すなわち、従前の狭角配光の投光器)である。
【0040】
図7に示されるように、比較構成である構成C及び構成Dは、斜視角40度から50度の範囲において、眩しさの原因となる比較的高い発光面輝度がレンズ42の内部に観測されるのに対し、凹部56が放物反射面50に設けられた構成A及び構成Bであれば、斜視角40度から50度の範囲の発光面輝度が抑えられている。
また図8に示されるように、構成A及び構成Bは、構成C及び構成Dに比べ、構成E(すなわち従前の狭角配光の投光器)に近い発光面輝度が得られている。特に、凹部56に対して上記表面加工が施された構成Aでは、50度以上の大きな斜視角の範囲でも構成Eと同様に発光面輝度が低下することが分かる。
【0041】
図9は、光源部16の発光効率を凹部56のV字の角度α及び深さ割合Drを変えてシミュレーションした結果を示す図である。また図10は、光源部16の0.1%ビーム開き角を凹部56の角度α及び深さ割合Drを変えてシミュレーションした結果を示す図である。
なお図9のシミュレーションにおいて、レンズ42のサイズは図7の構成Aと同じであり、凹部56の全表面には黒色塗装による上記表面加工が施されているものとした。
凹部56のV字の角度αは、図11に示すように、横断面における凹部56の開き角に相当する。深さ割合Drは、同図11に示すように、放物反射面50の出射端42T2での半径RTに占める凹部56の深さDpの割合(すなわちDp/RT)である。
図9に示されるように、角度αが大きくなるほど、また深さ比率Drが大きくなるほど発光効率が低下することが分かる。すなわち、凹部56のサイズが大きくなるほど、発光効率の低下は大きくなる。なお、図9では、製品の性能として十分な80%以上の発光効率が得られる範囲をハッチングによって示している。
図10に示されるように、角度αが小さくなるほど、また深さ割合Dpが小さくなるほど、0.1%ビーム開き角θが大きくなり、水平方向DHへの漏れ光が増え、結果としてグレア感が大きくなることが分かる。すなわち、凹部56のサイズが小さくなるほどグレアが抑えられなくなる。なお、0.1%ビーム開き角が90度以下であれば、グレアが抑制されていると見做すことができ、図10では、90度以下の0.1%ビーム開き角が得られる範囲をハッチングで示している。
以上のことから、前掲図9及び図10においてハッチングされた範囲の角度α及び深さ割合Drで凹部56を形成することで、80%以上の発光効率を維持しつつグレアが十分に抑えられることが分かる。
【0042】
図12は凹部56の角度α及び深さ割合Drごとに、出射端42T2での放物反射面50の開口面の面積に占める2つの凹部56の面積の割合である凹部占有率を求めた図である。なお、凹部56が無いとした場合の放物反射面50の開口面形状は円形であるため、当該放物反射面50の開口面の面積は上記半径RTを用いて算出される。
同図に示すように、前掲図9及び図10においてハッチングが付された範囲は、上記凹部占有率が3%から12%(より正確には3.1%から11.8%)となる範囲に対応する。したがって、この凹部占有率となるサイズで凹部56が設けられることで、80%以上の発光効率を維持しつつグレアを十分に抑えることができる。
【0043】
上述した実施形態によれば、次のような効果を奏する。
【0044】
本実施形態の投光器1は、複数のLED40と、これらのLED40のそれぞれに設けられた放物反射面50と、を備える。放物反射面50のそれぞれには、設置状態において水平方向DHを向く2箇所に、放物反射面50の回転中心軸APに向かって凹み、かつ放物反射面50の出射端42T2からLED40の側に延びる溝状の凹部56が設けられている。そして、これら凹部56のそれぞれは、放物反射面50の出射端42T2における深さDpが当該出射端42T2における放物反射面50の半径RTの30%から65%となっている。
この構成の投光器1によれば、設置状態において、LED40の直接光が視認される水平方向DHの角度範囲が凹部56によって狭められるため、狭角配光よりも出射光が拡がる中角配光のレンズ42であってもグレアを抑えることができる。
【0045】
また本実施形態の投光器1は、放物反射面50の出射端42T2において凹部56のそれぞれが占める割合である凹部占有率が3%から12%のいずれかの値となっている。
これにより、80%以上の発光効率を維持しながらも、0.1%ビームの開き角を90度以下としてグレアを十分に抑えることができる。
【0046】
また本実施形態の投光器1は、凹部56のそれぞれは断面V字状であり、当該断面V字状の角度αと、出射端42T2での放物反射面50の半径RTに対する凹部56の深さDpの割合である深さ割合Drとが、
35度≦α≦53度、かつ、32%≦Dr≦42%の範囲
18度≦α≦35度、かつ、42%≦Dr≦53%の範囲、又は
9度≦α≦27度、かつ、Dr=63%の範囲
のいずれかの値となっている。
これにより、断面V字状の凹部56によって、80%以上の発光効率を維持しながらも、0.1%ビームの開き角を90度以下としてグレアを十分に抑えることができる。
【0047】
また本実施形態の投光器1は、凹部56のそれぞれは、放物反射面50の出射端42T2からLED40の側にかけて、当該LED40の光軸AM(放物反射面50の回転中心軸AP)と平行に延びている。
これにより、放物反射面50の出射端42T2が狭くなる(半径RTが小さくなる)ような場合にはレンズ42内への戻り光の発生による効率低下を防ぐことができ、出射端T2が広くなる(半径RTが大きくなる)場合には配光の過剰な広がりを防ぐことができる。
【0048】
また本実施形態の投光器1は、凹部56のそれぞれの表面は、当該表面に入射する光を反射、吸収、又は拡散させる。
これにより、設置状態において水平方向DHに向かう光が減り、グレアを更に抑えることができる。
【0049】
また本実施形態の投光器1は、設置状態における水平方向DHに沿って放物反射面50が並べられており、当該水平方向DHに並ぶ放物反射面50のそれぞれの間に遮光部22を備える。
これにより、各放物反射面50において、他の放物反射面50からの外乱光によって、水平方向DHへ出射光が拡がることを抑えることができる。
【0050】
また本実施形態の投光器1は、放物反射面50が回転放物形状のレンズ42の全反射面である。
透過型光学素子であるレンズ42によってLED40の光を制御するため、反射鏡などの反射型光学素子によって光を制御する構成に比べ発光効率を高め易くできる。
【0051】
また本実施形態の投光器1は、放物反射面50の1/10ビームの開き角が30度から60度のいずれかの値である。
これにより、グレアを抑えつつも、狭角配光よりも大きなビーム角の中角配光の投光器1が得られる。
【0052】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を例示したものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
【0053】
上述した実施形態において、レンズ42は、放物面形状の反射鏡であってもよい。この場合、反射鏡の内面が放物反射面50に対応する。
【0054】
上述した実施形態において、横断面がV字状の凹部56を例示したが、横断面の形状は、矩形状や台形状、多角形状、円弧状といった適宜の形状であってもよい。
【0055】
上述した実施形態において、遮光部22は、側方からレンズ42に入射する外乱光を遮光できる形状、及び寸法であればよい。すなわち、遮光部22は、図5の断面図において、LED40からレンズ42の出射端42T2まで延びる高さを必ずしも有する必要はなく、遮光部22は、この高さ範囲のうち、外乱光を遮光すべき範囲に存在すればよい。この場合において、遮光部22は、板状である必要もなく、例えば棒状であってもよい。
【0056】
上述した実施形態において、LED40は、COB(Chips on Board)型の素子でもよい。またLED40に代えて任意の発光素子を用いることができる。
【0057】
上述した実施形態における水平、及び垂直等の方向や各種の数値、形状は、特段の断りがない限り、それら方向や数値、形状と同じ作用効果を奏する範囲(いわゆる均等の範囲)を含む。
【0058】
本発明は、スタジアム照明用の投光器に限らず、任意の投光器に適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 投光器
2 器具本体
10 光源ユニット
16 光源部
22 遮光部
40 LED(発光素子)
42 レンズ
42T2 出射端
44 発光部
50 放物反射面
52 入射面
54 出射面
56 凹部
AL、AM 光軸
AP 回転中心軸
DH 水平方向
DV 鉛直方向
Dp 凹部の深さ
Dr 深さ比率
RT 半径
α 凹部のV字の角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12