(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】埋設物探査装置および埋設物探査装置の表示制御方法、表示制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G01V 3/12 20060101AFI20240123BHJP
G01S 13/88 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
G01V3/12 B
G01S13/88 200
(21)【出願番号】P 2020180401
(22)【出願日】2020-10-28
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129012
【氏名又は名称】元山 雅史
(72)【発明者】
【氏名】鶴巣 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】川本 真吾
(72)【発明者】
【氏名】清水 良治
(72)【発明者】
【氏名】藤尾 康平
(72)【発明者】
【氏名】牧田 有司
(72)【発明者】
【氏名】石井 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 充典
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-045472(JP,A)
【文献】特開2000-310734(JP,A)
【文献】特開2005-258821(JP,A)
【文献】特開2013-140042(JP,A)
【文献】特表2005-517231(JP,A)
【文献】特開2004-184286(JP,A)
【文献】特開2010-011210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00-99/00
G01S 7/00- 7/42
13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物内に含まれる埋設物を検出する埋設物探査装置であって、
前記埋設物の有無を検出する検出部と、
前記検出部における検出結果を探査画像に変換する探査画像変換処理部と、
前記探査画像と、所定の縮尺に対応するグリッド線を含むグリッド層と、
基準点の位置を表示する基準点表示層と、を記憶する記憶部と、
前記探査画像と前記グリッド層とを表示する表示部と、
各種操作が入力される操作入力部と、
前記探査画像と前記グリッド層とを重ねて表示するとともに、前記操作入力部への入力に応じて、
前記基準点となる位置を前記グリッド線に合わせるように、前記グリッド層に対して前記探査画像を相対移動可能な状態で表示するように、前記表示部を制御する表示制御部と、
を備えている埋設物探査装置。
【請求項2】
前記対象物の表面における移動距離を検出する走査部を、さらに備え、
前記検出部は、前記走査部において検出された前記移動距離が所定距離に達するごとに前記埋設物の有無を検出する、
請求項1に記載の埋設物探査装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記探査画像および前記グリッド層に、前記基準点表示層を重ねて表示するように、前記表示部を制御する、
請求項1または2に記載の埋設物探査装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記操作入力部への入力に応じて前記探査画像および前記グリッド層の少なくとも一方に対して、前記基準点表示層に含まれる前記基準点を相対移動させて表示するように、前記表示部を制御する、
請求項3に記載の埋設物探査装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記操作入力部への入力に応じて、前記探査画像を拡大して表示するとともに、拡大された前記探査画像の縮尺に合わせて変更された前記グリッド層に含まれる前記グリッド線を表示するように、前記表示部を制御する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の埋設物探査装置。
【請求項6】
前記記憶部は、前記検出部における検出結果から変換された複数の前記探査画像に基づいて生成された1回の探査操作分に相当する統合探査画像を複数保存する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の埋設物探査装置。
【請求項7】
前記検出部における検出結果に基づいて前記埋設物の走査方向における寸法を算出する寸法算出処理部を、さらに備えている、
請求項1から6のいずれか1項に記載の埋設物探査装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記寸法算出処理部において算出された前記埋設物の走査方向における寸法を表示するように、前記表示部を制御する、
請求項7に記載の埋設物探査装置。
【請求項9】
前記探査画像を含む各種情報を、外部装置へ転送するデータ転送部を、さらに備えている、
請求項1から8のいずれか1項に記載の埋設物探査装置。
【請求項10】
前記検出部は、前記埋設物の有無に応じて変化する静電容量を検出する静電容量センサである、
請求項1から9のいずれか1項に記載の埋設物探査装置。
【請求項11】
前記走査部は、前記対象物に対して光を照射し、その反射光を受光して前記移動距離を検出する光学センサである、
請求項2に記載の埋設物探査装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の埋設物探査装置の表示制御を行う表示制御方法であって、
前記探査画像と前記グリッド層とを重ねて前記表示部に表示させるステップと、
前記操作入力部への入力に応じて、前記グリッド層に対して前記探査画像を相対移動可能な状態で前記表示部に表示させるステップと、
を備えている埋設物探査装置の表示制御方法。
【請求項13】
請求項12に記載の埋設物探査装置の表示制御方法を、コンピュータに実行させる表示制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、壁やコンクリート等に含まれる金属や木材等の埋設物を検出する埋設物探査装置および埋設物探査装置の表示制御方法、表示制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、コンクリート内に含まれる鉄筋等の埋設物を検出する装置として、コンクリートの表面を移動させながら、コンクリートの表面に向かって放射した電磁波の反射波の変化に基づいて、埋設物を検出する装置が用いられている。
特許文献1には、電磁波が埋設物で反射した反射波の信号値を側線に沿って取得したデータを入力する入力部と、電磁波の伝播深さに応じた反射波形の広がりを有する仮想波形テンプレートを生成する生成部と、データの信号値と伝搬深さに応じた形状の仮想波形テンプレートとを共に表示する表示部と、を備えた埋設物探査装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の埋設物探査装置では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された埋設物探査装置では、埋設物の探査を行う際に、第1の走査範囲、第2の走査範囲および側線に対応するテープをコンクリート表面へ貼り付けるマーキング作業が発生するため、作業者に負担が掛かっていた。
【0005】
本発明の課題は、埋設物探査時におけるマーキング作業を不要とし、作業者の負担を軽減することが可能な埋設物探査装置および埋設物探査装置の表示制御方法、表示制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る埋設物探査装置は、対象物内に含まれる埋設物を検出する埋設物探査装置であって、検出部と、探査画像変換処理部と、記憶部と、表示部と、操作入力部と、表示制御部と、を備えている。検出部は、埋設物の有無を検出する。探査画像変換処理部は、検出部における検出結果を探査画像に変換する。記憶部は、探査画像と、所定の縮尺に対応するグリッド線を含むグリッド層と、を記憶する。表示部は、探査画像とグリッド層とを表示する。操作入力部は、各種操作が入力される。表示制御部は、探査画像とグリッド層とを重ねて表示するとともに、操作入力部への入力に応じて、グリッド層に対して探査画像を相対移動可能な状態で表示するように、表示部を制御する。
【0007】
ここでは、例えば、壁やコンクリート等の対象物内に含まれる木材や鉄筋等の埋設物を検出する埋設物探査装置において、検出部における検出結果から変換された探査画像とグリッド線を含むグリッド層とを重ねて表示するとともに、グリッド層に対して探査画像を相対移動可能な状態で表示する。
ここで、本発明の埋設物探査装置は、検出部として、例えば、静電容量の変化を検出して埋設物の検出を行う静電容量センサを用いた静電容量方式、対象物に対して照射された電磁波を受信して埋設物の検出を行う電磁波方式等、様々な方式を採用してもよい。
【0008】
また、グリッド線を含むグリッド層は、例えば、格子状に配置された複数のグリッド線を含む層であって、グリッド線が所定の間隔で配置されている。
これにより、記憶部に記憶された埋設物の探査画像とグリッド線を含むグリッド層とを表示部に重ねて相対移動可能な状態で表示する際に、例えば、基準点となる位置をグリッド線に合わせるように探査画像とグリッド層とを相対移動させることができる。
【0009】
よって、グリッド線の間隔を確認することで、壁面にマーキング作業をすることなく、表示部の表示画面上において基準点となる位置から埋設物の位置までの距離を容易に確認することができる。
この結果、埋設物探査時におけるマーキング作業を不要とし、作業者の負担を軽減することができる。
【0010】
第2の発明に係る埋設物探査装置は、第1の発明に係る埋設物探査装置であって、対象物の表面における移動距離を検出する走査部を、さらに備えている。検出部は、走査部において検出された移動距離が所定距離に達するごとに埋設物の有無を検出する。
ここで、対象物の表面における埋設物探査装置の移動量を検出する走査部として、例えば、光学センサ等が用いられる。
これにより、走査部において検出された対象物の表面における埋設物探査装置の移動量が所定距離に達するごとに、検出部における埋設物の検出結果を取得することができる。
この結果、その走査範囲における探査画像を得て、対象物の各エリアにおける埋設物の有無を表示部に表示させることができる。
【0011】
第3の発明に係る埋設物探査装置は、第1または第2の発明に係る埋設物探査装置であって、記憶部は、基準点の位置を表示する基準点表示層をさらに記憶している。表示制御部は、探査画像およびグリッド層に、基準点表示層を重ねて表示するように、表示部を制御する。
【0012】
これにより、記憶部に記憶された基準点を含む基準点表示層を、探査画像およびグリッド線を含むグリッド層へ重ねて表示し、例えば、埋設物探査を開始する際に対象物の表面に付された基準点と照らし合わせることができる。
この結果、表示部の表示画面を見ながら、実際の対象物内に存在する埋設物の位置、大きさ等を容易に認識することができる。
【0013】
第4の発明に係る埋設物探査装置は、第3の発明に係る埋設物探査装置であって、表示制御部は、操作入力部への入力に応じて探査画像およびグリッド層の少なくとも一方に対して、基準点表示層に含まれる基準点を相対移動させて表示するように、表示部を制御する。
これにより、例えば、基準点を含む基準点表示層を、探査画像およびグリッド層に対して移動させて、グリッドの所定の位置に基準点を合わせ込むように移動させることができる。よって、表示画面上において、グリッド線の間隔から、基準点から埋設物までの距離、大きさ等を容易に認識することができる。
【0014】
第5の発明に係る埋設物探査装置は、第1から第4の発明のいずれか1つに係る埋設物探査装置であって、表示制御部は、操作入力部への入力に応じて、探査画像を拡大して表示するとともに、拡大された探査画像の縮尺に合わせて変更されたグリッド層に含まれるグリッド線を表示するように、表示部を制御する。
これにより、表示部に表示される探査画像を拡大表示し、拡大された探査画像の縮尺に合わせてグリッド線を表示することで、表示部の表示画面上において、埋設物の位置、大きさ等をより正確に認識することができる。
【0015】
第6の発明に係る埋設物探査装置は、第1から第5の発明のいずれか1つに係る埋設物探査装置であって、記憶部は、検出部における検出結果から変換された複数の探査画像に基づいて生成された1回の探査走査分に相当する統合探査画像を複数保存する。
ここで、探査画像は、例えば、光学センサ等の走査部において検出された移動距離が所定距離に達するごとに取得された画像である。よって、1回の探査走査分に相当する統合探査画像が、1回の探査開始から終了までに取得された複数の探査画像を用いて生成される。
これにより、記憶部に保存されている過去数回分の統合探査画像を用いることで、過去に探査走査を行った場所における埋設物の有無、位置、大きさ等を、探査走査が終了した後であっても容易に確認することができる。
【0016】
第7の発明に係る埋設物探査装置は、第1から第6の発明のいずれか1つに係る埋設物探査装置であって、検出部における検出結果に基づいて埋設物の走査方向における寸法を算出する寸法算出処理部を、さらに備えている。
これにより、検出部における検出結果を用いて、走査範囲における埋設物の走査方向における寸法を表示部の表示画面上に表示することができる。
【0017】
第8の発明に係る埋設物探査装置は、第7の発明に係る埋設物探査装置であって、表示制御部は、寸法算出処理部において算出された埋設物の走査方向における寸法を表示するように、表示部を制御する。
これにより、探査画像に含まれる埋設物の走査方向における寸法を表示部に表示することで、表示画面上において、埋設物の位置だけでなくその大きさまで認識することができる。
【0018】
第9の発明に係る埋設物探査装置は、第1から第8の発明のいずれか1つに係る埋設物探査装置であって、探査画像を含む各種情報を、外部装置へ転送するデータ転送部を、さらに備えている。
【0019】
これにより、例えば、施工を行う作業者が所有するスマートフォンやタブレット端末等の携帯端末やサーバ等の外部装置に対して、探査画像や埋設物の検出結果等を送信することができる。
この結果、作業者や施工を管理する管理者等は、埋設物探査装置から転送された探査画像、埋設物の検出結果等の各種情報を見ながら、作業を実施することができる。
【0020】
第10の発明に係る埋設物探査装置は、第1から第9の発明のいずれか1つに係る埋設物探査装置であって、検出部は、埋設物の有無に応じて変化する静電容量を検出する静電容量センサである。
これにより、安価な方式の静電容量センサを用いて、対象物に含まれる埋設物の位置を検出することができる。
【0021】
第11の発明に係る埋設物探査装置は、第2の発明に係る埋設物探査装置であって、走査部は、対象物に対して光を照射し、その反射光を受光して移動距離を検出する光学センサである。
これにより、安価な光学センサを用いて、埋設物探査装置の対象物の表面における移動距離を検出することができる。
【0022】
第12の発明に係る埋設物探査装置の表示制御方法は、第1から第11の発明のいずれか1つに記載の埋設物探査装置の表示制御を行う表示制御方法であって、探査画像とグリッド層とを重ねて表示部に表示させるステップと、操作入力部への入力に応じて、グリッド層に対して探査画像を相対移動可能な状態で表示部に表示させるステップと、を備えている。
【0023】
ここでは、例えば、壁やコンクリート等の対象物内に含まれる木材や鉄筋等の埋設物を検出する埋設物探査装置において、検出部における検出結果から変換された探査画像とグリッド線を含むグリッド層とを重ねて表示するとともに、グリッド層に対して探査画像を相対移動可能な状態で表示する。
ここで、本発明の埋設物探査装置は、検出部として、例えば、静電容量の変化を検出して埋設物の検出を行う静電容量センサを用いた静電容量方式、対象物に対して照射された電磁波を受信して埋設物の検出を行う電磁波方式等、様々な方式を採用してもよい。
【0024】
また、グリッド線を含むグリッド層は、例えば、格子状に配置された複数のグリッド線を含む層であって、グリッド線が所定の間隔で配置されている。
これにより、記憶部に記憶された埋設物の探査画像とグリッド線を含むグリッド層とを表示部に重ねて相対移動可能な状態で表示する際に、例えば、基準点となる位置をグリッド線に合わせるように探査画像とグリッド層とを相対移動させることができる。
【0025】
よって、グリッド線の間隔を確認することで、壁面にマーキング作業をすることなく、表示部の表示画面上において基準点となる位置から埋設物の位置までの距離を容易に確認することができる。
この結果、埋設物探査時におけるマーキング作業を不要とし、作業者の負担を軽減することができる。
【0026】
第13の発明に係る埋設物探査装置は、第12の発明に係る埋設物探査装置の表示制御方法を、コンピュータに実行させる。
これにより、記憶部に記憶された埋設物探査画像とグリッド線を含むグリッド層とを表示部に重ねて表示することで、壁面にマーキング作業をすることなく、埋設物の位置を確認することができる。
【0027】
よって、埋設物探査時におけるマーキング作業を不要とし、作業者の負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る埋設物探査装置によれば、埋設物探査時におけるマーキング作業を不要とし、作業者の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施形態に係る埋設物探査装置を用いて壁面内の埋設物を検出するために、壁面に沿って埋設物探査装置を走査する際の状態を示す説明図。
【
図3】
図2の埋設物探査装置の内部構成を示す制御ブロック図。
【
図4】
図3の埋設物探査装置が壁面上を走査された際の表示部の表示画面を示す説明図。
【
図5】
図3の埋設物探査装置における探査画像の生成・記憶処理の流れを示すフローチャート。
【
図6】
図3の埋設物探査装置における走査時の座標取得処理の流れを示すフローチャート。
【
図7】
図3の埋設物探査装置における埋設物の有無の判定処理の流れを示すフローチャート。
【
図8】
図3の埋設物探査装置における探査画像に含まれる埋設物の推定処理の流れを示すフローチャート。
【
図9】
図3の埋設物探査装置における探査画像変換処理の流れを示すフローチャート。
【
図10】
図3の埋設物探査装置における探査画像の記憶処理の流れを示すフローチャート。
【
図11】
図3の埋設物探査装置の記憶部に保存される埋設物テーブルを示す図。
【
図12】
図3の埋設物探査装置の記憶部に保存される取得データ記憶テーブルを示す図。
【
図13】
図3の埋設物探査装置の記憶部に保存される表示用バッファエリアを示す図。
【
図14】
図3の埋設物探査装置の記憶部に保存される探査画像記憶テーブルを示す図。
【
図15】
図3の埋設物探査装置の表示制御方法における処理の流れを示すフローチャート。
【
図16】
図3の埋設物探査装置の表示画面に表示される探査初期画面の一例を示す図。
【
図17】
図16のフローチャートに続く、走査開始から埋設物の寸法を表示するまでの処理の流れを示すフローチャート。
【
図18】(a)
図17のフローチャートにおける処理によって表示される埋設物探査装置の探査画面を示す図。(b)は、(a)の探査画面に検出された埋設物の寸法を表示した画面を示す図。
【
図19】
図17のフローチャートに続く、グリッド表示から基準点の位置調整までの処理の流れを示すフローチャート。
【
図20】(a)は、埋設物探査装置の表示画面に重ねて表示された探査画像およびグリッド表示を示す図。(b)は、(a)に含まれる基準点の位置を調整した後の状態を示す図。
【
図21】
図19のフローチャートに続く、計測グリッド表示から基準点の拡大画面の表示までの処理の流れを示すフローチャート。
【
図22】(a)は、埋設物探査装置の表示画面に重ねて表示された探査画像および計測グリッドを示す図。(b)は、(a)の拡大画像と拡大画像に対応する計測グリッドを示す図。
【
図23】
図21のフローチャートに続く、埋設物の位置の把握と施工作業の流れを示すフローチャート。
【
図24】
図22(b)の拡大表示に対応する実際の壁面における埋設物の位置を確認する施工作業を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の一実施形態に係る埋設物探査装置10およびその表示制御方法について、
図1~
図24を用いて説明すれば以下の通りである。
(1)埋設物探査装置10の構成
本実施形態に係る埋設物探査装置10は、
図1に示すように、壁面(対象物)50に沿って移動させながら、後述する静電容量センサ13(
図3参照)によって静電容量の変化を検出することで、壁面50内に含まれる木材(管柱51a、間柱51b)や金属等の埋設物51を検出する。埋設物探査装置10は、
図2に示すように、本体部11と、表示部12と、静電容量センサ13(
図3参照)、光学センサ14(
図3参照)および操作入力部15と、を備えている。
【0031】
なお、壁面50には、例えば、石膏ボードや木製合板の表面に壁紙等の内装材が貼り付けられたものが含まれる。また、埋設物51には、例えば、柱、梁、筋交い等の木材や金属製のフレーム等が含まれる。
本体部11は、
図2に示すように、略直方体形状を有する樹脂製の部材であって、使用時における使用者側の面(表面)に、表示部12および操作入力部15が設けられており、使用者とは反対側の壁面50側の面(裏面)に、静電容量センサ13および光学センサ14が設けられている。
【0032】
本体部11の上端面および左右の側端面には、それぞれ凹部11aが設けられている。これらの凹部11aは、埋設物探査装置10を壁面50に沿って走査する際に、例えば、ペン等を用いてその走査開始点を壁面50にマーキングするために用いられる。
表示部12は、
図2に示すように、例えば、液晶表示装置であって、本体部11の表面に配置されている。表示部12は、例えば、埋設物探査装置10の設定、埋設物51の検出結果を示す探査画像等を表示するとともに、操作入力部15に入力された操作内容に応じて表示内容が切り替えられる。
【0033】
静電容量センサ13は、本体部11の裏面側に配置されており、壁面50に沿って埋設物探査装置10を移動させた際に静電容量の変化を検出するセンサであって、壁面50内に存在する埋設物51を検出するために使用される。
光学センサ14は、本体部11の裏面側に配置されており、例えば、壁面50に対して照射された赤外線の反射光を受光して、埋設物探査装置10の位置情報を取得する。
【0034】
操作入力部15は、
図2に示すように、本体部11の表面に配置されている。操作入力部15は、電源ボタン15a、グリッド表示ボタン15b、スケール切替ボタン15c、十字キー15dおよび決定ボタン15eを含む。
電源ボタン15aは、操作入力部15の上段右側に配置されており、例えば、長押し操作されることで、埋設物探査装置10の電源がオンまたはオフされる。
【0035】
グリッド表示ボタン15bは、操作入力部15の上段左側に配置されており、表示部12の表示画面12aに、後述する複数のグリッド線が格子状に配置されたグリッド層を、探査画像と重ねて表示させる際に押下される。また、グリッド表示ボタン15bは、グリッド層が探査画像に重ねられて表示画面12aに表示された状態で再度押下されると、表示画面12aに計測グリッド(グリッド線)が表示される。
【0036】
スケール切替ボタン15cは、操作入力部15の上段中央に配置されており、例えば、重ねて表示された探査画像とグリッド層とを拡大表示する際に押下される。
十字キー15dは、操作入力部15の下段に配置されており、上・下・左・右の4方向への操作が入力される。十字キー15dは、例えば、グリッド線を含むグリッド層が探査画像に重ねて表示された状態で、上下あるいは左右に操作されることで、グリッド層に対して探査画像を相対移動させる。
【0037】
決定ボタン15eは、十字キー15dの中心位置に配置されており、十字キー15d等を用いて選択されたコマンド等を実行する際に押下される。
また、埋設物探査装置10は、
図3に示すように、本体部11の内部に、静電容量取得部20、位置情報取得部21、記憶部22、埋設物有無判定部23、寸法算出処理部24、探査画像変換処理部25、埋設物推定部26、入力受付部27、探査画像呼出部28、データ転送部29および表示制御部30を備えている。
【0038】
これらの埋設物探査装置10内に生成される静電容量取得部20、位置情報取得部21、記憶部22、埋設物有無判定部23、寸法算出処理部24、探査画像変換処理部25、埋設物推定部26、入力受付部27、探査画像呼出部28、データ転送部29および表示制御部30は、CPUが、メモリに保存された各種制御プログラムを読み込んで生成される。
【0039】
静電容量取得部20は、本体部11の裏面側に配置された静電容量センサ13からの出力を取得して、記憶部22へ送信する。
より詳細には、静電容量取得部20は、位置情報取得部21において取得された位置情報を用いて埋設物探査装置10が壁面50に沿って所定の移動量に達するごとに、その移動した範囲における埋設物51の有無を判定するために、静電容量の変化を検出する。これにより、後述する探査画像変換処理部25では、静電容量センサ13からの出力結果を用いて、所定の移動量ごとにその移動エリアにおける探査画像を生成することができる。
【0040】
位置情報取得部21は、本体部11の裏面側に配置された光学センサ14からの出力を取得して、記憶部22へ送信する。これにより、位置情報取得部21において取得された位置情報により、埋設物探査装置10が壁面50における位置およびその移動量を検出することができる。
記憶部22は、静電容量取得部20から受信した静電容量データ、位置情報取得部21から受信した位置情報のデータ、埋設物探査装置10の走査方向における埋設物51の寸法情報を含む埋設物テーブル(
図11参照)、探査画像変換処理部25において静電容量データから変換された探査画像、探査画像と重ねて表示されるグリッド層、基準点表示層等を保存している。そして、記憶部22は、探査画像呼出部28によって呼び出された探査画像等を、データ転送部29、表示制御部30へと送信する。
【0041】
なお、記憶部22に保存される探査画像は、1回の走査単位でグループ化された状態で、壁面50を走査した時間情報とともに保存される。そして、本実施形態では、複数回分の走査に対応する探査画像が、記憶部22に保存されている。
また、所定の移動量ごとに変換された探査画像は、例えば、埋設物探査装置10の電源がオンされてから累積して記憶され、1回分の走査単位で複数の探査画像がグループ化された状態で保存される。
【0042】
埋設物有無判定部23は、静電容量センサ13の出力信号(静電容量データ)が、所定の閾値を超えたか否かに応じて、壁面50内の埋設物51の有無を判定する(エッジ判定処理)。これにより、静電容量センサ13における出力結果に基づいて、埋設物51の有無の判定を実施することができる。
寸法算出処理部24は、静電容量センサ13の出力信号(静電容量データ)に基づいて、壁面50内の埋設物51の寸法(幅等)の推定値を算出する。具体的には、寸法算出処理部24は、静電容量センサ13の出力信号が変化した両端のエッジ部分を検出し、その間を埋設物51として寸法の推定値を算出する。
【0043】
探査画像変換処理部25は、静電容量センサ13の出力信号を、埋設物51の有無を示す探査画像に変換する。より詳細には、探査画像変換処理部25は、上述した位置情報取得部21において検出される埋設物探査装置10の位置情報に基づいて、埋設物探査装置10の壁面50に沿った移動量が所定の距離に達するごとに取得された静電容量のデータを用いて、探査画像を生成する。
【0044】
埋設物推定部26は、寸法算出処理部24において算出された埋設物51の走査方向における寸法(幅)の推定値と、記憶部22に保存された埋設物テーブル(
図11参照)に含まれる埋設物51の種類ごとの幅寸法とを比較して、対応する埋設物51の種類を推定する。
入力受付部27は、上述した電源ボタン15a、グリッド表示ボタン15b、スケール切替ボタン15c、十字キー15d等を含む操作入力部15に入力されたユーザからの操作内容を受け付ける。
【0045】
探査画像呼出部28は、例えば、操作入力部15に入力されたユーザからの操作内容に基づいて、記憶部22に保存された探査画像を呼び出し、データ転送部29や表示制御部30へ送信する。
なお、探査画像は、記憶部22に保存された後、操作入力部15に入力されるユーザからの操作内容とは関係なく、走査中にリアルタイムで表示されるように、表示制御部30が表示部12を制御してもよい。
【0046】
データ転送部29は、外部機器やサーバ等に対して、探査画像や埋設物51の検出結果等を送信する。
表示制御部30は、上述した探査画像変換処理部25において生成された埋設物51の有無を示す探査画像(
図4等参照)を、表示部12の表示画面12aに表示させる。さらに、表示制御部30は、探査画像と、記憶部22に保存されたグリッド層および基準点表示層と、を重ねて表示部12の表示画面12aに表示させる。
【0047】
探査画像では、
図4に示すように、壁面50に沿って走査された埋設物探査装置10の軌跡に沿って取得された静電容量データから生成された複数の探査画像を組み合わせて、埋設物51の有無が表示される。
また、表示制御部30は、
図3に示すように、グリッド表示処理部31、探査画像表示処理部32、原点表示処理部33を有している。
【0048】
グリッド表示処理部31は、複数のグリッド線を含むグリッド層、あるいは、埋設物51の寸法、埋設物51までの距離等を分かりやすく表示するために用意された計測グリッド(グリッド線)を含むグリッド層を、探査画像上に重ねて表示するように表示処理を行う。
探査画像表示処理部32は、表示部12の表示画面12aにおいて、固定表示されたグリッド層に対して探査画像を移動させるスクロール処理を行うとともに、探査画像に含まれる埋設物51の寸法を表示画面12a上に表示させる。さらに、探査画像表示処理部32は、表示画面12aに表示される探査画像の表示スケールを切り替える処理を行う。
【0049】
原点表示処理部33は、表示画面12aにおいて、探査画像に重ねて表示されたグリッド層の上に、基準点P1を表示させる処理を行う。
グリッド層は、格子状に配置された複数のグリッド線を含む表示レイヤ(
図20(a)等参照)であって、埋設物51の有無を示す探査画像の上に重ねて表示される。表示制御部30は、グリッド層に対して探査画像を移動可能な状態で表示部12に表示させる。
【0050】
基準点表示層は、例えば、走査開始点を示す基準点P1(
図18等参照)を、表示部12の表示画面12a上において、探査画像およびグリッド層の上に重ねて表示させる。そして、基準点表示層は、探査画像と同様に、固定表示されたグリッド層に対して相対移動可能な状態で、探査画像およびグリッド層の上に重ねて表示される(
図20(b)参照)。
なお、表示制御部30による表示部12の表示制御については、後段にて詳述する。
【0051】
<探査画像の生成から保存>
本実施形態の埋設物探査装置10では、以上のような構成により、壁面50に沿って走査された結果、得られる静電容量の変化に基づいて、壁面50内における埋設物51の有無を示す探査画像を生成する。
【0052】
ここで、探査画像の生成処理について、
図5のフローチャートを用いて説明すれば以下の通りである。
すなわち、ステップS11では、静電容量取得部20が、静電容量センサ13において検出された静電容量を取得する。
次に、ステップS12では、位置情報取得部21が、光学センサ14において検出される埋設物探査装置10の位置情報を取得する。
次に、ステップS13では、位置情報取得部21において取得された埋設物探査装置10の位置情報から、埋設物探査装置10が壁面50に沿って移動したか否かを判定する。ここで、移動したと判定されると、ステップS14に進み、移動していないと判定されると、移動したと判定されるまでステップS13を繰り返す。
【0053】
次に、ステップS14では、ステップS13において埋設物探査装置10が移動したと判定されているため、埋設物探査装置10の現在位置を示す座標(相対座標)を算出して取得する。
次に、ステップS15では、ステップS14において算出・取得された埋設物探査装置10の現在位置の座標が、相対座標として算出・取得され、ステップS16へ進む。
【0054】
これにより、例えば、光学センサ14において検出される埋設物探査装置10の位置が所定の移動量に達したことを位置情報取得部21が検出するごとに、静電容量取得部20が取得した静電容量データを保存することができる。
次に、ステップS16では、埋設物有無判定部23が、取得した静電容量データに基づいて、走査範囲における埋設物51の有無を判定する処理を行う。
【0055】
次に、ステップS17では、埋設物有無判定部23において、埋設物51があるか否かを判定し、ある場合には、ステップS18へ進み、ない場合には、ステップS19へ進む。
次に、ステップS18では、ステップS17において埋設物51があると判定されたため、寸法算出処理部24が、埋設物探査装置10の走査方向における埋設物51の寸法(幅)の推定値を算出する。
【0056】
次に、ステップS19では、埋設物51の有無にかかわらず、探査画像変換処理部25が、静電容量取得部20において取得された静電容量データを探査画像に変換する処理を行う。
次に、ステップS20では、ステップS19において生成された探査画像を、記憶部22に保存させる。
本実施形態では、以上のような工程により、静電容量センサ13において検出された静電容量データを用いて探査画像を生成し、記憶部22に保存していく。
【0057】
<走査開始~画像記憶まで>
次に、本実施形態の埋設物探査装置10における壁面50に沿った走査開始から探査画像の記憶処理までの工程について、
図6~
図10のフローチャートを用いて説明すれば以下の通りである。
【0058】
(a)座標取得処理
本実施形態の埋設物探査装置10において実施される
図5のS14における座標取得処理について、
図6のフローチャートを用いて以下で詳しく説明する。
本実施形態では、埋設物探査装置10を用いて壁面50に沿った走査を開始すると、
図6に示すように、ステップS21において、光学センサ14において検出される位置情報を、座標変化量(X,Y)として取得する。
次に、ステップS22では、ステップS21において取得された座標変化量を、累積座標に加算する。
次に、ステップS23では、ステップS22において得られた累積座標を、埋設物探査装置10の現在位置として設定する。
【0059】
(b)埋設物有無判定処理
本実施形態の埋設物探査装置10において実施される
図5のS17における埋設物51の有無の判定処理について、
図7のフローチャートを用いて以下で詳しく説明する。
【0060】
まず、ステップS31では、静電容量センサ13において検出される静電容量の検出結果の変化量を、判定値として算出する。
次に、ステップS32では、その判定値が所定の閾値以上であるか否かを判定する。ここで、判定値が、所定の閾値以上である場合には、ステップS33へ進み、所定の閾値未満である場合には、ステップS34へ進む。
次に、ステップS33では、ステップS32において判定値が所定の閾値以上であると判定されたため、その走査エリアに埋設物51有りと判定して処理を終了する。
一方、ステップS34では、ステップS32において判定値が所定の閾値未満であると判定されたため、その走査エリアには埋設物51はないと判定して処理を終了する。
【0061】
(c)埋設物推定処理
本実施形態の埋設物探査装置10において実施される
図5のS18における埋設物51の推定処理について、
図8のフローチャートを用いて以下で詳しく説明する。
【0062】
まず、ステップS41では、
図12に示す取得データ記憶テーブルから埋設物探査装置10の現在位置の前後における埋設物51の走査方向における連続する幅(長さ)を取得する。
ここで、取得データ記憶テーブルには、
図12に示すように、取得時間、座標(X,Y)、静電容量センサの検出結果、埋設物判定の結果、埋設物の種類、寸法の情報が含まれている。
【0063】
なお、
図12に示す取得データ記憶テーブルに含まれる埋設物の種類は、
図11に示す埋設物51の種類ごとの名前、幅、厚さの情報のうち、幅の寸法を参照し、検出された埋設物の寸法の推定値を比較して、埋設物51の種類を推定した結果として取得される。
次に、ステップS42~S46の処理では、
図11に示す埋設物テーブルを参照(S43)し、ステップS41において取得された埋設物51の走査方向における連続する幅(長さ)に合致する材料(土台、通し柱、管柱、間柱、梁、筋交い、野縁、胴縁等)を、その数の分だけ繰り返し確認する(S44)。
【0064】
そして、ステップS44において、埋設物テーブルに含まれる埋設物51のいずれかと幅寸法がほぼ一致した場合には、ステップS46へ進み、埋設物51の種類を推定する。そして、推定結果を反映させるように、埋設物テーブルを返却し、処理を終了する。
一方、ステップS44において、埋設物テーブルに含まれる埋設物51のいずれかと幅寸法が一致しない場合には、埋設物テーブルの種類を全て確認するまでステップS42~S46の処理を繰り返し、処理を終了する。
【0065】
(d)探査画像変換処理
本実施形態の埋設物探査装置10において実施される
図5のS19における探査画像変換処理について、
図9のフローチャートを用いて以下で詳しく説明する。
まず、ステップS51では、
図7に示す埋設物有無判定処理のS31において算出された静電容量センサの検出結果の変化量(判定値)を、明度255階調へ変換する。
【0066】
次に、ステップS52では、
図12に示す取得データ記憶テーブルに含まれる位置座標に変換した明度で表示用バッファエリアに描画して、探査画像を生成する。
なお、表示用バッファエリアには、
図13に示すように、座標(X,Y)と、それに対応するR・G・Bの値がそれぞれ保存されている。
次に、ステップS53では、埋設物51の寸法の判定ができたか否かの判定を行う。ここで、判定ができた場合には、ステップS54へ進み、判定できなかった場合には、処理を終了する。
次に、ステップS54では、寸法の判定ができた埋設物51とその寸法(走査方向)を、
図12に示す取得データ記憶テーブルへ記憶させ、処理を終了する。
【0067】
(e)探査画像記憶処理
本実施形態の埋設物探査装置10において実施される
図5のS20における探査画像の記憶処理について、
図10のフローチャートを用いて以下で詳しく説明する。
【0068】
まず、ステップS61では、ユーザによる探査開始ボタンが押下される等の画像クリア操作を受け付けたか否かを判定する。
ここで、画像クリア操作を受け付けていた場合には、ステップS62へ進み、受け付けていない場合にはそのまま処理を終了する。
次に、ステップS62では、
図13に示す表示用バッファエリアの探査画像を、画面クリアされる前に、
図14に示す探査画像記憶テーブルへ登録する。
【0069】
ここで、探査画像記憶テーブルは、
図14に示すように、探査画像が生成された日付、時間と、探査画像ごとに付された画像データIDとが関連付けされた状態で保存される。なお、探査画像記憶テーブルに保存される探査画像は、1回の操作分に相当する画像データとして保存されている。
次に、ステップS63では、表示用バッファエリアをクリアして、処理を終了する。
【0070】
<埋設物探査装置10の表示制御方法>
本実施形態の埋設物探査装置10の表示制御方法について、
図15~
図24を用いて説明すれば以下の通りである。
(a)起動と準備
まず、
図15に示すように、ステップS71において、ユーザが電源ボタン15aを操作(長押し)すると、ステップS72において、表示制御部30は、埋設物探査装置10の表示画面12aに、起動画面を表示させる。
【0071】
次に、ステップS73では、表示制御部30が、埋設物探査装置10の表示画面12aに、起動画面に続いて、探査初期画面を表示させる。
探査初期画面は、例えば、
図16に示すように、表示画面12aの中央に、四角が表示された画面である。
次に、ステップS74では、ユーザが、起動した埋設物探査装置10の本体部11の裏面側を探知したい施工面(壁面50)に押し当てた状態で、ペン等を凹部11aに係合させて走査開始点となる基準点P1を壁面50へマーキングすることで、走査開始時の初期位置を設定する。
【0072】
(b)探査走査
次に、
図17に示すように、ステップS75では、ユーザが、埋設物探査装置10を壁面50に沿って動かすことで、施工面に沿って走査させる。
次に、ステップS76では、表示制御部30(探査画像表示処理部32、原点表示処理部33)が、埋設物探査装置10の表示画面12aに、走査した範囲の探査結果を示す探査画像と基準点P1を含む基準点表示層とを表示させる。
【0073】
この探査画面は、
図18(a)に示すように、埋設物探査装置10を走査したエリアA1と、走査エリアA1にある埋設物51を示す検出エリアS1,S2と、走査が開始された基準点P1とが表示される。
次に、ステップS77では、ユーザが、埋設物探査装置10をさらに壁面50に沿って走査する。
次に、ステップS78では、ステップS77のさらなる走査によって探査データが蓄積されると、表示制御部30(探査画像表示処理部32)は、
図18(b)に示すように、検出された埋設物51の走査方向における寸法(幅)の算出結果(6cm、3cm)を、探査画像上に表示させる。
【0074】
(c)グリッド表示と位置合わせ操作
次に、
図19に示すように、ステップS79では、ユーザが、1回分の走査が完了後、埋設物探査装置10を壁面50から離して、グリッド表示ボタン15bを押下する。なお、グリッド表示ボタン15bが先に押下された場合には、グリッド層を表示した状態で走査が行われてもよい。
【0075】
次に、ステップS80では、表示制御部30(グリッド表示処理部31)が、
図20(a)に示すように、表示部12の表示画面12aに、格子状に配置された複数のグリッド線G1を含むグリッド層を探査画像に重ねて表示する。
次に、ステップS81では、
図20(a)に示す表示画面12aにおいて、ユーザが十字キー15dの上下左右の方向に操作すると、固定表示されたグリッド線G1を含むグリッド層に対して、探査画像と基準点P1を含む基準点表示層とが相対移動する。
【0076】
次に、ステップS82では、ユーザが、基準点P1の位置がガイド線の所定の位置と一致するように、十字キーを操作すると、
図20(b)に示すように、グリッド層に含まれるグリッド線の所定の位置に基準点P1の位置を合わせ込むことができる。
これにより、埋設物51の基準点P1からの位置(距離)や埋設物51の形状等を表示画面12a上において認識することができる。
【0077】
(d)計測グリッドによる埋設物の距離と大きさ
次に、
図21に示すように、ステップS83では、ユーザが、グリッド表示ボタン15bを再度押下すると、表示制御部30(グリッド表示処理部31)は、表示画面12aに、
図22(a)に示す計測グリッド(グリッド線)G2を表示させる。
なお、表示された計測グリッドG2は、
図22(a)に示すように、
図20(a)等に示すグリッド線よりも間隔が狭いため、ユーザは、表示画面12aを見ながら、埋設物51の基準点P1からの距離や寸法を目視で計測することができる。
【0078】
次に、ステップS84では、ユーザが十字キー15dを操作することにより、表示制御部30(探査画像表示処理部32)は、探査画像の上に計測グリッドG2を含むグリッド層を重ねて表示させた状態で、基準点P1と埋設物51までの距離を正確に計測するために、計測グリッドG2に対して探査画像および基準点表示層を相対移動させる。
これにより、例えば、
図22(a)に示す計測グリッドG2の間隔を5cmとすると、ユーザは、表示画面12aを見ながら、基準点P1から検出エリアS1までの距離は約15cmであると認識することができる。
【0079】
次に、ステップS85では、ユーザが、スケール切替ボタン15cを押下すると、ステップS86において、表示制御部30(探査画像表示処理部32)が、
図22(a)の点線で示すエリアを、
図22(b)に示すように、拡大表示する。
例えば、
図22(b)に示す計測グリッド(グリッド線)G3の間隔を1cmとすると、ユーザは、表示画面12aを見ながら、検出エリアS1の埋設物51の幅は約6cm、検出エリアS2の埋設物51の幅は約3cm、検出エリアS1,S2の埋設物51同士の間隔は約12cmであると、より詳細に寸法を計測することができる。
【0080】
(e)施工作業から電源オフ
次に、
図23に示すように、ステップS86までの処理によって表示画面12a上において計測された基準点P1からの埋設物51までの距離に基づいて、まず、ステップS87では、ユーザは、実際の埋設物51の位置を把握するために、基準点P1としてマーキングされた壁面50上の位置から水平方向に15cmの位置を、埋設物51の端部の位置としてマーキング等をする。
【0081】
このとき、施工位置、埋設物が存在する位置のみに、マーキングを行うこともできる。
次に、ステップS88では、ユーザは、壁面50にマーキングされた埋設物51のある位置を認識した状態で、各種施工作業を実施する。
すなわち、ユーザは、埋設物探査装置10の表示画面12aに表示された基準点P1,埋設物51の検出エリアS1,S2の位置を確認しながら、
図24に示すように、表示画面12aに表示された基準点P1から埋設物51までの間の距離、埋設物51の寸法等を利用して、壁面50への加工(必要であればマーキング)を行う。
【0082】
その後、ユーザは、電源ボタン15aを押下して電源をオフにし、作業完了する。
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、埋設物探査装置10および埋設物探査装置10の表示制御方法として、本発明を実現した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0083】
例えば、上述した埋設物探査装置の表示制御方法をコンピュータに実行させる表示制御プログラムとして本発明を実現してもよい。
この表示制御プログラムは、埋設物探査装置に搭載されたメモリ(記憶部22)に保存されており、CPUがメモリに保存された表示制御プログラムを読み込んで、ハードウェアに各ステップを実行させる。より具体的には、CPUが表示制御プログラムを読み込んで、上述した探査画像とグリッド層とを重ねて表示部に表示させるステップと、操作入力部への入力に応じてグリッド層に対して探査画像を相対移動可能な状態で表示部に表示させるステップと、を実行することで、上記と同様の効果を得ることができる。
また、本発明は、埋設物探査装置の表示制御プログラムを保存した記録媒体として実現されてもよい。
【0084】
(B)
上記実施形態では、検出部として静電容量センサ13を用いた静電容量式の埋設物探査装置10に対して、本発明を適用した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、コンクリートや壁材に対して照射した電磁波の反射波を受信して埋設物の位置を検出する電磁波方式の埋設物探査装置に対して、本発明を適用してもよい。
【0085】
(C)
上記実施形態では、埋設物探査装置10の壁面における移動量を検出する走査部として光学センサ14を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、光学式以外の方式を採用した走査部を用いて、埋設物探査装置の壁面上における移動量を検出してもよい。
【0086】
(D)
上記実施形態では、グリッド線を含むグリッド層を固定表示し、探査画像を移動させることで、グリッド層に対して探査画像を相対移動可能な状態で表示する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、探査画像を固定表示し、グリッド層を移動可能な状態で表示する構成であってもよい。
あるいは、探査画像およびグリッド層の双方を必要に応じて移動可能な状態で表示する構成であってもよい。
【0087】
(E)
上記実施形態では、埋設物探査装置10を用いて、石膏ボードや木製合板等の壁面内に含まれる木製材料(柱、土台、梁、筋交い等)を検出する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0088】
例えば、埋設物探査装置を用いて検出される埋設物は、木製材料以外に、金属製材料、樹脂性材料等の他の材料であってもよい。
また、対象物についても同様に、石膏ボードや木製合板等の壁面以外に、コンクリート等の他の材料であってもよい。
すなわち、本発明の埋設物探査装置は、例えば、他の材料あるいは地中内に存在する異物を検出する用途に使用されてもよい。
【0089】
(F)
上記実施形態では、埋設物探査装置10の表示部12の表示画面12a上において、固定表示されたグリッド層に対して、探査画像や基準点表示層を相対移動させる際に、十字キー15dを用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0090】
例えば、埋設物探査装置を実際に壁面上において移動させることで、エンコーダやトラッキングセンサ等を用いて検出された移動量の情報に基づいて、探査画像を移動させてもよい。
あるいは、テーブル上でカーソルを操作して、例えば、ボタンでの時間変化に応じて、1回で1mm、2回で2mm等のように、探査画像を移動させてもよい。
【0091】
(G)
上記実施形態では、グリッド層として、標準的なグリッド線G1、計測グリッドG3、拡大表示時の計測グリッドG3の3種類を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、検出される埋設物の大きさ(走査方向における寸法)に応じて、適切な間隔のグリッド線が配置されたグリッド層を用いることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の埋設物探査装置は、埋設物探査時におけるマーキング作業を不要とし、作業者の負担を軽減することができるという効果を奏することから、各種埋設物の検出を行う装置に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0093】
10 埋設物探査装置
11 本体部
11a 凹部
12 表示部
12a 表示画面
13 静電容量センサ(検出部)
14 光学センサ(走査部)
15 操作入力部
15a 電源ボタン
15b グリッド表示ボタン
15c スケール切替ボタン
15d 十字キー
15e 決定ボタン
20 静電容量取得部
21 位置情報取得部
22 記憶部
23 埋設物有無判定部
24 寸法算出処理部
25 探査画像変換処理部
26 埋設物推定部
27 入力受付部
28 探査画像呼出し部
29 データ転送部
30 表示制御部
31 グリッド表示処理部
32 探査画像表示処理部
33 原点表示処理部
50 壁面
51 埋設物
51a 管柱
51b 間柱
A1 走査エリア
G1 グリッド線
G2,G3 計測グリッド(グリッド線)
S1,S2 検出エリア
P1 基準点