(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】レーザレーダ装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20240123BHJP
G01S 17/931 20200101ALI20240123BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20240123BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20240123BHJP
G02B 26/12 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G01S17/931
G01C3/06 120Q
G02B26/10 104Z
G02B26/12
(21)【出願番号】P 2020185920
(22)【出願日】2020-11-06
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】浅見 博
(72)【発明者】
【氏名】恩田 一寿
(72)【発明者】
【氏名】清野 光宏
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/149241(WO,A1)
【文献】特開2009-63339(JP,A)
【文献】特開2019-152588(JP,A)
【文献】特表2020-508457(JP,A)
【文献】国際公開第2020/090592(WO,A1)
【文献】特開2017-97203(JP,A)
【文献】国際公開第2020/205109(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
G01C 3/00- 3/32
G02B 26/08-26/12
G02B 26/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発光する光源(30)と、
回転軸周りに回転可能であり、前記光源が発光した前記レーザ光を反射するミラー(40、240、340、440、540)と、
前記ミラーにより反射した前記レーザ光が通過する窓(20)と、
前記窓を通って装置内部に入り、前記ミラーにより反射された前記レーザ光を検出する検出器(60)とを備えたレーザレーダ装置であって、
前記光源と前記検出器との間を仕切る仕切板を備えていない構成であり、
前記ミラーに、前記ミラーの鏡面(41)が前記光源側に向いている状態において、前記回転軸の径方向の位置は前記光源が発光した前記レーザ光が最初に当たる領域よりも前記窓に近い位置、前記回転軸の軸方向の位置は前記検出器よりも前記光源に近い位置に、前記ミラーの他の領域よりも反射率が低い低反射領域(43、243、543)が形成されており、
前記窓は、前記回転軸との距離が、前記光源側よりも前記検出器側の方が短くなる傾斜姿勢となって
おり、かつ前記光源が照射し、前記窓で反射した前記レーザ光のうちで、最も前記検出器の方向に向かう前記レーザ光が、前記検出器に入射しない傾斜となっている、レーザレーダ装置。
【請求項2】
レーザ光を発光する光源(30)と、
回転軸周りに回転可能であり、前記光源が発光した前記レーザ光を反射するミラー(40、240、340、440、540)と、
前記ミラーにより反射した前記レーザ光が通過する窓(20)と、
前記窓を通って装置内部に入り、前記ミラーにより反射された前記レーザ光を検出する検出器(60)とを備えたレーザレーダ装置であって、
前記光源と前記検出器との間を仕切る仕切板を備えていない構成であり、
前記ミラーには、前記光源が発光した前記レーザ光が前記窓で反射して、再度、前記ミラーに当たる回転角度範囲において、前記光源が発光した前記レーザ光が、前記ミラー、前記窓、前記ミラーの順に反射して、前記窓を通って装置外部に出た後、装置外部の物体で反射され、前記窓を通り、前記ミラー、前記窓、前記ミラーの順に反射して、前記検出器に検出される迷光が、前記ミラーに当たる領域の少なくとも一部に、前記ミラーの他の領域よりも反射率が低い低反射領域(43、243、543)が形成されており、
前記窓は、前記回転軸との距離が、前記光源側よりも前記検出器側の方が短くなる傾斜姿勢となって
おり、かつ前記光源が照射し、前記窓で反射した前記レーザ光のうちで、最も前記検出器の方向に向かう前記レーザ光が、前記検出器に入射しない傾斜となっている、レーザレーダ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレーザレーダ装置であって、
前記ミラー(240)は、前記回転軸の径方向の長さが、前記光源側の端よりも前記検出器側の端が短い、レーザレーダ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のレーザレーダ装置であって、
前記窓は平板形状であり、
前記ミラーにおいて、前記回転軸の径方向の外側の辺は、前記検出器側の端側の辺部であって、前記検出器側の端に向かうほど前記回転軸に近づく傾斜を有する傾斜辺部(244)と、前記光源側の端部の辺部であって、前記回転軸と平行な平行辺部(245)とを備え、
前記傾斜辺部は、前記窓に沿って傾斜している、レーザレーダ装置。
【請求項5】
前記ミラーの鏡面が矩形である、請求項1または2に記載のレーザレーダ装置。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1項に記載のレーザレーダ装置であって、
前記ミラーの鏡面(241)は、前記回転軸を対称軸とする線対称形状である、レーザレーダ装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のレーザレーダ装置であって、
前記窓
の装置内側面、または、前記窓の前記装置内側面と装置外側面に、反射防止膜(21)を備える、レーザレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
レーザレーダ装置に関し、特に、迷光が検出されることを抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、迷光が検出器に検出されることを抑制する装置が開示されている。特許文献1に開示された装置は、投光空間から受光空間へ迷光が入り込むことを抑制するために、投光空間と受光空間とを仕切る遮光部を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された遮光部を備えることで、投光空間から受光空間に、直接、投光された光が入り込むことは防止できる。しかし、特許文献1に開示された遮光部では、窓で反射し、ミラーで再反射し、一度、装置外部に出て検出器に入る経路で検出器に検出されてしまう迷光は防止できない。
【0005】
窓で反射し、ミラーで再反射して、一度、装置外部に出て検出器に入る迷光の一例を、
図20を用いて説明する。光源101から投光された光が、装置内のミラー102で反射して装置の窓103に当たる。そして、窓103で反射した光が再びミラー102により反射して、今度は窓103を通過して装置外部に出る。装置外部に出た光が再帰性反射体104に当たると、逆の経路で装置内のミラー102に当たった後、窓103で反射し、再度、ミラー102で反射して光源101の方向に向かう。光源101と検出器105が近接している場合、上記経路で光源101に向かう光が検出器105に検出されてしまう恐れがある。そして、このような経路で検出器105に光が検出されると、再帰性反射体104が存在する方向はゴースト106がある方向であると誤判断してしまう。
【0006】
本開示は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、装置外部に出て装置内部に入る迷光を検出してしまうことを抑制できるレーザレーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は独立請求項に記載の特徴の組み合わせにより達成され、また、下位請求項は更なる有利な具体例を規定する。特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的態様との対応関係を示すものであって、開示した技術的範囲を限定するものではない。
【0008】
上記目的を達成するための1つの開示は、
レーザ光を発光する光源(30)と、
回転軸周りに回転可能であり、光源が発光したレーザ光を反射するミラー(40、240、340、440、540)と、
ミラーにより反射したレーザ光が通過する窓(20)と、
窓を通って装置内部に入り、ミラーにより反射されたレーザ光を検出する検出器(60)とを備えたレーザレーダ装置であって、
光源と検出器との間を仕切る仕切板を備えていない構成であり、
ミラーに、ミラーの鏡面(41)が光源側に向いている状態において、回転軸の径方向の位置は光源が発光したレーザ光が最初に当たる領域よりも窓に近い位置、回転軸の軸方向の位置は検出器よりも光源に近い位置に、ミラーの他の領域よりも反射率が低い低反射領域(43、243、543)が形成されており、
窓は、回転軸との距離が、光源側よりも検出器側の方が短くなる傾斜姿勢となっており、かつ光源が照射し、窓で反射したレーザ光のうちで、最も検出器の方向に向かうレーザ光が、検出器に入射しない傾斜となっている。
【0009】
上記目的を達成するための他の開示は、
レーザ光を発光する光源(30)と、
回転軸周りに回転可能であり、光源が発光したレーザ光を反射するミラー(40、240、340、440、540)と、
ミラーにより反射したレーザ光が通過する窓(20)と、
窓を通って装置内部に入り、ミラーにより反射されたレーザ光を検出する検出器(60)とを備えたレーザレーダ装置であって、
光源と検出器との間を仕切る仕切板を備えていない構成であり、
ミラーには、光源が発光したレーザ光が窓で反射して、再度、ミラーに当たる回転角度範囲において、光源が発光したレーザ光が、ミラー、窓、ミラーの順に反射して、窓を通って装置外部に出た後、装置外部の物体で反射され、窓を通り、ミラー、窓、ミラーの順に反射して、検出器に検出される迷光が、ミラーに当たる領域の少なくとも一部に、ミラーの他の領域よりも反射率が低い低反射領域(43、243、543)が形成されており、
窓は、回転軸との距離が、光源側よりも検出器側の方が短くなる傾斜姿勢となっており、かつ光源が照射し、窓で反射したレーザ光のうちで、最も検出器の方向に向かうレーザ光が、検出器に入射しない傾斜となっている。
【0010】
これらのレーザレーダ装置は、ミラーに上記迷光が当たる領域の少なくとも一部に低反射領域が形成されている。したがって、検出器に入る上記迷光の強度が低下する。よって、この迷光が検出されてしまうことを抑制できる。
【0011】
加えて、窓は、回転軸との距離が、光源側よりも検出器側の方が短くなる傾斜姿勢となっている。これにより、窓から回転軸までの距離が光源側と検出器側で等しい場合に比較して、窓で反射したレーザ光が向かう方向が、ミラーから外れる方向にずれる。したがって、窓から回転軸までの距離が光源側と検出器側で等しい場合に比較して、低反射領域を小さくすることができる。低反射領域を小さくすることで、迷光ではない正規のレーザ光が低反射領域で弱められにくくなるので、SN比を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態のレーザレーダ装置1の外観の概略図。
【
図2】光学系と窓20との相対位置を
図1のII方向から見て示す図。
【
図3】光学系と窓20との相対位置を
図1のIII方向から見て示す図。
【
図4】光学系を構成する部品の相対位置を
図1のIV方向から見て示す図。
【
図6】迷光が生じるときのレーザ光Lの経路を示す図。
【
図7】ミラー40における投光領域45、受光領域46、迷光領域47の位置を示す図。
【
図8】投光ビームが窓20で反射した場合の進行方向を示す図。
【
図12】窓20が傾斜していない場合に投光ビームが向かう方向を示す図。
【
図13】窓20の傾きを変化に対する迷光領域47a、47bの位置の変化を示す図。
【
図14】第2実施形態のレーザレーダ装置200の構成を示す図。
【
図15】クラッタを検出してしまうことを抑制する窓20の傾斜角度を説明する図。
【
図17】実施形態とは別のミラー340の構成を示す図。
【
図18】実施形態とは別のミラー440の構成を示す図。
【
図19】実施形態とは別のミラー540の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態のレーザレーダ装置1の外観の概略図である。レーザレーダ装置1は、筐体10と窓20を備えた構成である。筐体10には窓20が嵌る開口が設けられている。窓20は、筐体10において窓20に対向する平板状の裏板部11に対して傾斜した姿勢で、筐体10の開口に嵌め付けられている。
【0014】
窓20は光透過性であり、平板かつ矩形形状である。レーザレーダ装置1は、窓20からレーザ光Lを装置外部に照射する。窓20の基材にはガラスを用いることができる。また、窓20の基材を透明樹脂としてもよい。
【0015】
レーザレーダ装置1は、レーザ光Lを、走査しつつ装置外部に照射する。裏板部11から垂直に窓20に向かう方向がレーザレーダ装置1の正面方向である。この方向をZ方向とする。Z軸と直交する平面がXY平面である。装置外部でレーザ光Lが反射した場合、反射したレーザ光Lの一部は、窓20からレーザレーダ装置1の内部に入る。
【0016】
レーザレーダ装置1は、車両に取り付けられ、車両の周辺に存在する物体を検出する。レーザレーダ装置1は、車両周辺に存在する物体を検出するために、車両に1つ以上、取り付けられる。レーザレーダ装置1は、車両に対して任意の姿勢で取り付けることができる。実施形態の説明では、便宜上、Y軸の正方向を車両上方向とする。以下、車両上方向を単に上方向とする。
【0017】
図2、
図3は、筐体10の内部に備えられた光学系と、窓20との位置を説明する図である。以下の図では、説明に必要な構成以外は適宜省略して示す。
図2は
図1のII方向から見た図であり、
図3は
図1のIII方向から見た図である。また、
図4は、光学系を構成する部品の相対位置を示す図であって、
図1のIV方向から見た図である。窓20の装置内側面には、反射防止膜21がコーティングされている。なお、窓20の装置外側面にも、反射防止膜がコーティングされていてもよい。光学系は、光源30、投光レンズ32、ミラー40、モータ50、検出器60、および、受光レンズ62を備えた構成である。
【0018】
光源30はレーザ光Lを発光するものであり、レーザダイオードを用いることができる。光源30が発光したレーザ光Lはミラー40に向かう。投光レンズ32は、光源30とミラー40との間に設けられ、レーザ光Lの拡散を抑制する。
【0019】
ミラー40は、1つの面が鏡面41となっている板部42を備える。鏡面41は矩形形状であり、1対の短辺がZ軸と平行、1対の長辺が回転軸44と平行である。なお、Z軸と平行な1対の辺を長辺、回転軸44と平行な1対の辺を短辺としてもよい。また、鏡面41の形状を正方形としてもよい。
【0020】
鏡面41の一部に低反射領域43が形成されている。ミラー40は、上側部分、換言すれば光源30側の部分が、光源30が発光したレーザ光Lを反射する第1ミラー部40aである。また、ミラー40の下側部分、換言すれば、検出器60側の部分が、窓20を通って装置内部に入ったレーザ光Lを検出器60の方向に反射する第2ミラー部40bである。ミラー40は、第1ミラー部40aと第2ミラー部40bとを有する投受光一体型である。
【0021】
回転軸44は板部42に取り付けられている。回転軸44は、Y軸に平行であり、板部42の互いに対向する1対の短辺の中央を通る位置に配置されている。回転軸44は、モータ50の回転軸と一体化している。したがって、ミラー40はモータ50により駆動されて、回転軸44を回転中心として回転する。回転は360度の回転に限られず、120度、150度など360度よりも狭い角度範囲の回転も含まれる。ミラー40が360度よりも狭い角度範囲で回転することは、ミラー40が往復運動することを意味する。光源30が連続的にレーザ光Lを発光している状態でミラー40が回転することで、レーザ光Lは、XZ平面内で走査されつつ、窓20を通り、装置外部へ射出される。
【0022】
装置外部の物体にて反射したレーザ光Lの一部は、窓20から装置内部に入射し、ミラー40で反射して検出器60の方向に向かう。検出器60は、Y軸方向において、光源30よりも下側に配置されている。また、光源30と検出器60は、XY平面に平行な同一平面に配置されている。検出器60にはフォトダイオードを用いることができる。
【0023】
装置外部から装置内部に入射してミラー40で反射したレーザ光Lが向かう方向であって、ミラー40と検出器60との間に受光レンズ62が配置されている。受光レンズ62は、ミラー40から検出器60に向かうレーザ光を集光するレンズである。
【0024】
窓20は、
図2に示すように、回転軸44との距離が、光源30側よりも検出器60側の方が短くなる傾斜姿勢となっている。ここでの距離は、Z軸に沿った距離である。
【0025】
図5に、本実施形態のミラー40の詳細構成を示す。ミラー40の板部42は、板ガラス42a、密着膜42b、銀薄膜42c、保護膜42dが順に積層された構造である。保護膜42dの図上側面が鏡面41である。鏡面41の上の一部には、前述した低反射領域43が形成されている。
【0026】
低反射領域43は、鏡面41よりも反射率が低い領域である。低反射領域43は、たとえば、その領域に艶消し塗料をスクリーン印刷等で塗布することで形成できる。塗料の色は、たとえば黒色である。低反射領域43は、照射された光を吸収あるいは減衰させることで、鏡面41よりも光の反射が抑制された領域と言うこともできる。
【0027】
〔低反射領域43の位置〕
低反射領域43は、
図2に示したように、ミラー40の鏡面41が光源30側に向いている状態では、矩形状の鏡面41において、Y軸方向が光源30に対向する側、Z軸方向が鏡面41の1対の長辺のうちの一方に偏った領域に形成されている。換言すれば、低反射領域43は、ミラー40の鏡面41が光源30側に向いている状態では、Y軸方向の位置が検出器60よりも光源30に近い位置、Z軸方向の位置が光源30が発光したレーザ光Lが最初に当たる領域よりも窓20に近い位置にある。この位置に低反射領域43が形成されている理由、および、低反射領域43の大きさを次に説明する。なお、ミラー40の鏡面41が光源30側に向いている状態は、光源30が発光したレーザ光Lが、直接、ミラー40に当たる状態である。
【0028】
図6は、低反射領域43により抑制しようとしている迷光が生じるときのレーザ光Lの経路を示している。光源30が発光したレーザ光Lは、投光レンズ32を通過した後、ミラー40に当たる。光源30が発光したレーザ光Lであって、装置外部に照射されるレーザ光Lを投光ビームという。
【0029】
ミラー40で反射した投光ビームが、窓20で反射し、ミラー40で再反射して窓20から装置外部に出た後、装置外部の物体で反射して検出器60に受光される光を迷光とする。単に迷光と記載する場合には、この経路で検出器60に検出されるレーザ光Lを意味する。
【0030】
図6から分かるように、ミラー40で反射した投光ビームが、窓20で反射し、ミラー40で再反射して窓20から装置外部に出る場合、投光ビームが最初にミラー40に当たる領域よりも、再反射時に投光ビームがミラー40に当たる領域の方が、窓20に近い。
【0031】
図7には、ミラー40に投光ビームが当たる投光領域45、および、ミラー40に受光ビームが当たる受光領域46を概念的に示している。受光ビームは、投光ビームが装置外部の物体で反射して再び装置内部に入るレーザ光Lを意味する。
【0032】
図7において、投光領域45が台形になっている理由は次の通りである。投光ビームは進行に従いY軸方向には広がるように調整されており、かつ、
図7はミラー40が投光ビームの光軸に対して傾斜している状態だからである。
図7に示すミラー40は、図左側が図右側よりも光源30に近い。したがって、投光領域45が台形になっているのである。受光領域46も、
図7に示すミラー40が、図左側が図右側よりも検出器60に近いので、台形になっている。
【0033】
図8には、種々の方向に進行する投光ビームが窓20で反射した場合の進行方向を示している。なお、
図8は、低反射領域43は省略している。また、
図8に示す投光ビームは、レーザレーダ装置1が投光する投光ビームの一部である。
図8から分かるように、ミラー40の付近において、窓20で反射した投光ビームのY軸方向の範囲は、窓20に向かう投光ビームの範囲と部分的に重なる範囲になる。以上より、低反射領域43は、
図7に示すように、ミラー40において、Y軸方向は光源30側に位置する。また、回転軸44の径方向における低反射領域43の位置は、ミラー40に最初に投光ビームが当たる領域よりも、鏡面41が光源30側に向いている状態において、窓20に近い位置にある。
【0034】
〔低反射領域43の大きさ〕
次に低反射領域43の大きさを説明する。
図9は迷光が生じる場合において、ミラー40に入射する光源30からのレーザ光Lの入射角が最小となる図である。
図10は迷光が生じる場合において、上記入射角が最大となる図である。なお、
図9および
図10は、迷光が生じるミラー40の回転角度範囲を説明するための図であり、説明および図示を分かりやすくするため、実施形態のレーザレーダ装置1とは異なり、窓20は傾斜していない。
【0035】
図9に示す図では、窓20で反射してミラー40で再反射した投光ビームは、窓20の端を通過して装置外部に出ている。これ以上、レーザ光Lの入射角を小さくすると、ミラー40で再反射した投光ビームは窓20の枠に当たり、装置外部に出ない。
【0036】
図10に示す図では、窓20で反射した投光ビームは、ミラー40において最も窓20に近い領域に当たっている。これ以上、レーザ光Lの入射角を大きくすると、窓20で反射した投光ビームはミラー40に当たらなくなる。
【0037】
図11には、
図9の状態において生じる迷光領域47aおよび
図10の状態において生じる迷光領域47bとミラー40との位置関係を示している。迷光領域47a、47bは、投光ビームが窓20で反射してミラー40に当たる、またはミラー40の付近を通過する領域を意味する。
図11に示す2つの迷光領域47a、47b、およびその間を含む領域が、
図7に示す迷光領域47である。迷光領域47は、迷光が生じるミラー40の回転角度範囲において、迷光がミラー40に当たる、または迷光がミラー40の付近を通過する領域である。低反射領域43の大きさは、この迷光領域47と、ミラー40の鏡面41とが重なる範囲を含むように決定する。
【0038】
図7に示す迷光領域47には、鏡面41から外れた領域が存在する。迷光領域47において鏡面41から外れた領域は、窓20が傾斜していない場合に比較して、窓20が本実施形態のように傾斜している方が大きくなる。
【0039】
図12には、比較として、窓20が傾斜していない場合に、窓20で反射した投光ビームが向かう方向を示している。
図12と
図8とを比較して分かるように、窓20が傾斜していない場合に比較して、窓20が傾斜している場合の方が、窓20で反射した投光ビームが向かう方向がY軸の上方向になる。
【0040】
図13に、窓20の傾きを変化させたときのミラー40に対する迷光領域47a、47bの位置の変化を示す。
図13において、かっこ内の角度は、XY平面に対する窓20の傾斜角度である。
【0041】
図13から分かるように、窓20が傾斜していると、窓20が傾斜していない場合よりも、迷光領域47は、ミラー40に対して相対的に上方向に移動する。また、迷光領域47は、窓20が傾斜していると、窓20が傾斜していない場合よりも、ミラー40に対して相対的に窓20の方向にも移動する。
【0042】
再び
図7を参照する。
図7では、迷光領域47は、投光領域45および受光領域46と一部重なっている。したがって、迷光領域47を含むように形成する低反射領域43も、投光領域45および受光領域46と一部重なっている。迷光領域47が、
図7において上方向かつ右方向に移動するほど、低反射領域43が小さくなる。低反射領域43が小さくなると、低反射領域43と投光領域45および受光領域46との重複領域が小さくなる。低反射領域43と投光領域45および受光領域46との重複領域が小さくなると、正規のレーザ光Lが低反射領域43で弱められてしまう程度が少なくなる。その結果、SN比が向上する。
【0043】
〔実施形態のまとめ〕
以上、説明した実施形態のレーザレーダ装置1は、ミラー40の第1ミラー部40aに低反射領域43が形成されている。低反射領域43が形成されている領域は、迷光がミラー40に当たる領域である。したがって、レーザレーダ装置1は迷光を検出してしまうことを抑制できる。
【0044】
加えて、窓20は、回転軸44との距離が、光源30側よりも検出器60側のほうが短くなる傾斜姿勢となっている。これにより、窓20が傾斜していない場合、すなわち、窓20から回転軸44までの距離が光源30側と検出器60側で等しい場合に比較して、低反射領域43を小さくすることができる。低反射領域43を小さくすることで、迷光ではない正規のレーザ光Lが低反射領域43で弱められにくくなるので、SN比を向上できる。
【0045】
また、窓20の装置内側面に反射防止膜21が備えられているので、窓20の装置内側面でレーザ光Lが反射されて迷光が生じる程度が抑制される。
【0046】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態を説明する。この第2実施形態以下の説明において、それまでに使用した符号と同一番号の符号を有する要素は、特に言及する場合を除き、それ以前の実施形態における同一符号の要素と同一である。また、構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分については先に説明した実施形態を適用できる。
【0047】
図14に、第2実施形態のレーザレーダ装置200を示す。第2実施形態のレーザレーダ装置200は、ミラー240の形状が、第1実施形態のミラー40と相違する。ミラー240は、第1ミラー部240aと第2ミラー部240bを備える。第1ミラー部240aは、第1実施形態の第1ミラー部40aと同じ形状である。一方、第2ミラー部240bの形状は第1実施形態の第2ミラー部40bと相違する。
【0048】
第2ミラー部240bは、
図14において下側に向かうほど、すなわち第1ミラー部240aとは反対側に向かうほど、回転軸44の径方向の長さが短くなる。したがって、第2ミラー部240bにおいて、回転軸44の径方向外側の両辺は、検出器60側の端に向かうほど回転軸44に近づく傾斜辺部244になっている。
【0049】
傾斜辺部244は窓20と平行になっている。窓20と平行になっていることは、窓20に沿っている状態の一例である。傾斜辺部244が窓20に沿っている状態には、傾斜辺部244が窓20と完全には平行である状態以外に、平行に近い状態も含まれる。
【0050】
第1ミラー部240aにおいて、回転軸44の径方向外側の辺は、回転軸44と平行な平行辺部245になっている。このような形状のミラー240の鏡面241は、全体として回転軸44を対称軸とする線対称形状になっている。
【0051】
ミラー240が傾斜辺部244を備えており、第1実施形態における窓20とミラー40などの光学系部品の距離よりも、第2実施形態における窓20とミラー240などの光学系部品の距離は近くなっている。窓20とミラー240との距離は、平行辺部245がミラー240の検出器60側の端まで延びているとすれば、ミラー240が窓20に当たってしまうほど近い距離になっている。
【0052】
窓20とミラー240などの光学系部品との距離が近いほど、迷光がミラー240に当たる領域は小さくなる。したがって、第2実施形態のミラー240が備える低反射領域243は、第1実施形態のミラー40が備える低反射領域43よりも小さくできる。低反射領域243が小さくできることで、SN比を向上できる。
【0053】
また、ミラー240の鏡面241は、回転軸44を対称軸とする線対称形状になっている。これにより、ミラー240の重心が回転軸44上になるので、ミラー240が回転したときの振動を抑制できる。
【0054】
<第3実施形態>
第3実施形態では、クラッタを防止するレーザレーダ装置を説明する。この第3実施形態におけるクラッタは、これまで説明した迷光とは異なり、一旦、装置外部に出たレーザ光Lではなく、投光ビームが窓20で反射した後、ミラー40で検出器60の方向に反射されて検出器60に検出されてしまうレーザ光Lである。
【0055】
したがって、クラッタは、ミラー40が投光ビームをZ座標の0°方向に反射するときに生じ得る。窓20を傾斜させることでクラッタを検出してしまうことを抑制できる。第3実施形態では、クラッタを検出してしまうことを抑制する窓20の傾斜となっている。
【0056】
図15を用いて、クラッタを検出してしまうことを抑制する窓20の傾斜角度を説明する。
図15は説明を分かりやすくするため、光源30および検出器60と、窓20との間の光路を直線としている。
【0057】
つまり、
図15は、光源30が
図16に示す二点鎖線の位置にあるとして記載している。二点鎖線で示す光源30の位置は、ミラー40で反射したレーザ光Lが向かう方向を含む直線上である。前述したように、クラッタは、ミラー40が投光ビームをZ座標の0°方向に反射するときに生じ得る。したがって、クラッタに関する説明においては、実際には実線の位置にある光源30を、二点鎖線の位置にあるとして考えても構わないのである。
【0058】
図15において、二点鎖線で示す窓20は、傾斜していない窓20である。二点鎖線で示すレーザ光Lは、光源30からの投光ビームのうち、最もY軸方向下向きに向かうレーザ光Lが、傾斜していない窓20で反射した場合の進行方向を示す。
【0059】
実線で示すレーザ光Lも、光源30からの投光ビームのうち、最もY軸方向下向きに向かうレーザ光Lである。ただし、実線で示す傾斜した窓20で反射したレーザ光Lの進行方向を示している。角度αは、二点鎖線で示すレーザ光Lが進む方向と実線で示すレーザ光Lが進む方向との間の角度である。このとき、窓20の傾斜はα/2になる。
【0060】
そこで、窓20の傾斜をα/2よりも大きくする。このようにすれば、窓20の傾斜は、光源30が照射したレーザ光Lのうちで最も検出器60の方向に向かうレーザ光Lが、検出器60よりも光源30寄りを通過し、検出器60に入射しない。したがって、クラッタは検出器60に検出されない。
【0061】
以上、実施形態を説明したが、開示した技術は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の変形例も開示した範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【0062】
<変形例1>
図17~
図19にミラー340、440、540の構成の他の例を示す。
図17に示すミラー340は、ミラー40が備えていた密着膜42b、銀薄膜42cに代えて、アルミニウム薄膜42eを備える。
【0063】
図18に示すミラー440も、ミラー340と同様、板ガラス42a、アルミニウム薄膜42e、保護膜42d、低反射領域43を備える。ただし、低反射領域43が板ガラス42aに直接、積層されている点がミラー340と相違する。
【0064】
ミラー540は、黒色樹脂板541を基材とする。その上に、密着膜42b、アルミニウム薄膜42e、保護膜42dが順に積層されている。ただし、一部、それら密着膜42bなどが積層されていない領域を形成する。その領域が低反射領域543になる。
【0065】
<変形例2>
ミラー40は、長さおよび傾きが同じ2つの傾斜辺部244を備える線対称形状であった。しかし、2つの傾斜辺部244の長さと傾きが相互に異なっていてもよい。実施形態よりも、平行辺部245を短くし傾斜辺部244を長くしてもよい。また、平行辺部245を備えず、光源30側の端から検出器60の端までが傾斜辺部244になっていてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1:レーザレーダ装置 10:筐体 11:裏板部 20:窓 21:反射防止膜 30:光源 32:投光レンズ 40:ミラー 40a:第1ミラー部 40b:第2ミラー部 41:鏡面 42:板部 42a:板ガラス 42b:密着膜 42c:銀薄膜 42d:保護膜 42e:アルミニウム薄膜 43:低反射領域 44:回転軸 45:投光領域 46:受光領域 47:迷光領域 47a:迷光領域 47b:迷光領域 50:モータ 60:検出器 62:受光レンズ 200:レーザレーダ装置 240:ミラー 240a:第1ミラー部 240b:第2ミラー部 241:鏡面 243:低反射領域 244:傾斜辺部 245:平行辺部 340:ミラー 440:ミラー 540:ミラー 541:黒色樹脂板 543:低反射領域 L:レーザ光