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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 3/74 20170101AFI20240123BHJP
   B60Q 3/51 20170101ALI20240123BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20240123BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20240123BHJP
   B29C 45/44 20060101ALI20240123BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240123BHJP
【FI】
B60Q3/74
B60Q3/51
B29C45/00
B29C45/26
B29C45/44
F21Y115:10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020190741
(22)【出願日】2020-11-17
(65)【公開番号】P2022079882
(43)【公開日】2022-05-27
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 将人
(72)【発明者】
【氏名】吉川 正人
(72)【発明者】
【氏名】金子 真之
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-025362(JP,A)
【文献】実公昭47-041729(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 3/74
B60Q 3/51
B29C 45/00
B29C 45/26
B29C 45/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁、及び前記底壁に連続した、嵌合孔を有する側壁を有する、基板カバーと、
前記嵌合孔に嵌合する爪を有するハウジングと、
前記爪を前記嵌合孔に嵌合させることにより、前記基板カバーの前記底壁と前記ハウジングとに挟まれて固定される、発光素子が配線板に実装された基板と、
前記ハウジングに取り付けられた、発光面となるレンズと、
を備え、
前記側壁が、その先端側の第1の部分と前記底壁側の第2の部分に段差を設ける段差部を有し、
前記嵌合孔のうちの少なくとも一部が、前記第1の部分の前記段差部側の縁に開口する、前記底壁側に金型を抜くことができる切り欠きにより構成され、かつ前記底壁を基準として前記配線板の側面よりも高い位置にあ前記側壁の前記第2の部分よりも高い位置で前記嵌合孔と前記爪が嵌合している、
照明装置。
【請求項2】
前記嵌合孔の全てが、前記底壁側に金型を抜くことができる切り欠きにより構成される、
請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記基板の露出した全ての導電部の前記嵌合孔からの距離が5mm以上である、
請求項1又は2に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天井に取り付けされるハウジングと、ハウジングの下方に設けられるレンズカバーと、ハウジングの上方側に設けられた、光源を有する基板と、基板を覆う基板カバーを備えた室内照明灯が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の室内照明灯においては、ハウジングの爪を基板カバーの孔に嵌合させることにより、基板カバーをハウジングに取り付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-192881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の室内照明灯においては、基板カバーが孔を有するため、基板カバーを射出成型するための金型に、孔を形成するためのスライド金型が必要であり、それによって製造コストが増加している。
【0006】
本発明の目的は、スライド金型を用いずに射出成型することができる、ハウジングの爪を嵌合させるための嵌合孔を有する基板カバーを備えた照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、下記[1]~[3]の照明装置を提供する。
【0008】
[1]底壁、及び前記底壁に連続した、嵌合孔を有する側壁を有する、基板カバーと、前記嵌合孔に嵌合する爪を有するハウジングと、前記爪を前記嵌合孔に嵌合させることにより、前記基板カバーの前記底壁と前記ハウジングとに挟まれて固定される、発光素子が配線板に実装された基板と、前記ハウジングに取り付けられた、発光面となるレンズと、を備え、前記側壁が、その先端側の第1の部分と前記底壁側の第2の部分に段差を設ける段差部を有し、前記嵌合孔のうちの少なくとも一部が、前記第1の部分の前記段差部側の縁に開口する、前記底壁側に金型を抜くことができる切り欠きにより構成され、かつ前記底壁を基準として前記配線板の側面よりも高い位置にある、照明装置。
[2]前記嵌合孔の全てが、前記底壁側に金型を抜くことができる切り欠きにより構成される、上記[1]に記載の照明装置。
[3]前記基板の露出した全ての導電部の前記嵌合孔からの距離が5mm以上である、上記[1]又は[2]に記載の照明装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スライド金型を用いずに射出成型することができる、ハウジングの爪を嵌合させるための嵌合孔を有する基板カバーを備えた照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(a)、(b)は、本発明の実施の形態に係る照明装置の斜視図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る照明装置の分解斜視図である。
図3図3(a)は、基板カバーの嵌合孔近傍を拡大した、照明装置の側面図である。図3(b)は、図3(a)の切断線A-Aに沿って切断された照明装置の垂直断面図である。
図4図4(a)は、本発明の実施の形態に係る基板カバーの特徴を模式的に表した断面模式図である。図4(b)、(c)は、比較例としての従来の基板カバーの特徴を模式的に表した断面模式図である。
図5図5(a)、(b)は、本発明の実施の形態に係る基板カバーを射出成型する工程を示す模式断面図である。
図6図6(a)、(b)は、比較例に係る基板カバーを射出成型する工程を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施の形態〕
(照明装置の構成)
図1(a)、(b)は、本発明の実施の形態に係る照明装置1の斜視図である。図1(a)は、後述するレンズ50側から見た斜視図であり、図1(b)は、後述する基板カバー10側から見た斜視図である。図2は、照明装置1の分解斜視図である。
【0012】
照明装置1は、車両の天井に取り付けられる照明装置であり、典型的には、自動車のリア席側の天井に取り付けられる照明装置である。
【0013】
照明装置1は、底壁11、及び底壁11に連続した、嵌合孔13(13a~13c)を有する側壁12を有する、基板カバー10と、嵌合孔13に嵌合する外側に突出した爪22(22a~22c)を有する側壁21を有するハウジング20と、側壁12の内側から爪22を嵌合孔13に嵌合させることにより、基板カバー10の底壁11とハウジング20とに挟まれて固定される、光源である発光素子32及び発光素子32の動作を切り替えるスイッチ33が実装された基板30と、ハウジング20に取り付けられた、発光面となるレンズ50と、を備える。
【0014】
基板30は、配線板31と、配線板31に実装された発光素子32、スイッチ33、及び発光素子32に電力を供給するためのケーブルなどを接続するための電源コネクタ34を有する。発光素子32は、例えば、発光ダイオード素子である。発光素子32の個数や配置は特に限定されない。スイッチ33は、ボタンを押し込むことにより電流のオン、オフを切り替え、発光素子32の点灯と消灯を切り替える押しボタンスイッチである。
【0015】
基板カバー10は、基板30を覆って保護する部材であり、基板30を覆った状態で基板カバー10をハウジング20に取り付けることにより、基板30を固定することができる。基板カバー10は、例えば、ポリプロピレンなどの樹脂からなる。
【0016】
ハウジング20の爪22を有する側壁21と、基板カバー10の嵌合孔13を有する側壁12は、基板カバー10をハウジング20に取り付ける際に弾性変形し、爪22が嵌合孔13に達したときにその復元力によって爪22を嵌合孔13に嵌合させる。ハウジング20の爪22a、22b、22cは、それぞれ基板カバー10の嵌合孔13a、13b、13cに嵌合する。
【0017】
ハウジング20は、基板30が取り付けられる側の部分に、発光素子32から発せられる光を取り込むための開口部25を有する。また、ハウジング20は、基板30が取り付けられる側と反対側の部分に、発光素子32から発せられる光を放出するための開口部26を有する。ハウジング20は、例えば、ポリプロピレンなどの樹脂からなり、発光素子32から発せられる光を透過しない性質を有する。
【0018】
また、ハウジング20は、クリップ60を固定するためのクリップ取り付け部24を有する。クリップ60は、照明装置1を車内の天井に取り付けるための部品であり、取り付け時に弾性変形し、その復元力によって天井の取り付け部に固定される。
【0019】
レンズ50は、開口部26を覆うようにハウジング20に取り付けられる。レンズ50は、例えば、ポリカーボネートなどの樹脂からなり、発光素子32から発せられる光を透過する性質を有する。
【0020】
また、照明装置1は、ハウジング20のスイッチノブ取り付け部23に取り付けられた、スイッチ33を操作するためのスイッチノブ40を備える。スイッチノブ40を指などで押し込むことにより、スイッチ33のボタンを押して電流のオン、オフを切り替えることができる。
【0021】
図2に示されるように、照明装置1を構成する各部品の組み付け方向は一方向に統一されており、ロボットによる自動組立を行う場合であっても、容易に照明装置1を組み立てることができる。
【0022】
(スライド金型を必要としない嵌合孔の構造)
図3(a)は、基板カバー10の嵌合孔13b近傍を拡大した、照明装置1の側面図である。図3(b)は、図3(a)の切断線A-Aに沿って切断された照明装置1の垂直断面図である。
【0023】
図2図3(a)、(b)に示されるように、側壁12は、その先端12a側の第1の部分12bと底壁11側の第2の部分12cに段差を設ける段差部12dを有する。そして、嵌合孔13bが、第1の部分12bの段差部12d側の縁12eに開口する、底壁11側に金型を抜くことができる切り欠きにより構成される。また、側壁21の第2の部分12cが基板30の配線板31の側面に対向する位置にあり、第1の部分12bに設けられた嵌合孔13bは、底壁11を基準として配線板31の側面よりも高い位置にある。
【0024】
第1の部分12bは、第2の部分12cよりも外側に位置する。すなわち、底壁11の面内方向の底壁11からの距離が第2の部分12cよりも大きい。そして、基板カバー10をハウジング20に取り付ける際に、側壁21が側壁12の内側に入り込み、側壁12の内側から爪22が嵌合孔13に嵌合する。
【0025】
図4(a)は、本発明の実施の形態に係る基板カバー10の特徴を模式的に表した断面模式図である。図4(b)、(c)は、比較例としての基板カバー100a、100bの特徴を模式的に表した断面模式図である。
【0026】
図4(b)に示される基板カバー100aの側壁120に設けられた嵌合孔130aは、底壁110側に金型を抜くことができる形状を有していない。このため、基板カバー100aを射出成型するための金型に、嵌合孔130aを形成するためのスライド金型が必要となる。
【0027】
図5(a)、(b)は、本発明の実施の形態に係る基板カバー10を射出成型する工程を示す模式断面図である。図5(a)は、金型内に樹脂を射出して基板カバー10を成型した状態を示し、図5(b)は、成型された基板カバー10から金型を抜く工程を示している。図5(a)、(b)に示されるように、図の上下方向に抜く金型70a、70bのみを用いて、スライド金具を用いずに嵌合孔13bを形成することができる。このため、製造コストを抑えることができる。
【0028】
図6(a)、(b)は、比較例に係る基板カバー100aを射出成型する工程を示す模式断面図である。図6(a)は、金型内に樹脂を射出して基板カバー100aを成型した状態を示し、図6(b)は、成型された基板カバー100aから金型を抜く工程を示している。図6(a)、(b)に示されるように、嵌合孔130aを形成するためには、図の上下方向に抜く金型71a、71bのみならず、水平方向に抜くスライド金型71cが必要とされる。
【0029】
図4(c)に示される基板カバー100bの嵌合孔130bは、側壁120の底壁110側の縁120aに開口する切り欠きから構成され、底壁110側に金型を抜くことができる形状を有する。しかしながら、側壁120が段差部を有しないため、嵌合孔130bの一部が基板30の配線板31の側面と同じ高さにあり、配線板31の側面が嵌合孔130bを介して基板カバー100bの外側に露出する。
【0030】
このため、例えば、照明装置に取り付けられた基板カバー100bを作業員が手で持つ際に、指が配線板31に接触する又は充分に接近して、静電気放電により電子回路の誤動作や半導体素子の損傷などが引き起こされるおそれがある。また、照明装置は基板カバー100bが上側を向く状態で車内の天井に取り付けられるが、配線板31の側面が嵌合孔130bを介して基板カバー100bの外側に露出しているため、結露による天井からの水垂れが生じたときに、基板30に水が付着して短絡などが生じるおそれがある。
【0031】
基板カバー10の嵌合孔13bは、基板30の配線板31と異なる高さに位置するため、照明装置1に取り付けられた基板カバー10に作業員が触れるようなときにも、静電気放電の発生が抑えられる。また、基板カバー10が上側を向く状態で車内の天井に取り付けられたときに基板30の下方に嵌合孔13bが位置するため、結露による天井からの水垂れが生じたときでも、水が嵌合孔13bを通って基板30に付着することを抑制できる。
【0032】
なお、基板カバー10の嵌合孔13の全て(嵌合孔13a~13c)が、底壁11側に金型を抜くことができる切り欠きにより構成されることが好ましい。この場合、全ての嵌合孔13を、スライド金型を用いずに形成することができるため、2つの金型70a、70bのみを用いて、すなわち二方向抜き金型を用いて基板カバー10を射出成型することができ、基板カバー10の製造コストをより低減することができる。
【0033】
また、静電気放電の発生をさらに効果的に抑えるためには、基板30の露出した全ての導電部の嵌合孔13(13a~13c)からの距離が5mm以上であることが好ましい。この条件を満たすために、配線板31上の導電部の配置を調整するなどの方法をとることができる。
【0034】
なお、嵌合孔13aは、基板30の電源コネクタ34の実装位置に対向して設けられており、基板30の導電部(例えば、実装部品の電極や検査用電極)には近接していない。このため、嵌合孔13aは配線板31の側面よりも高い位置になくてもよく、例えば、図4(c)に示される嵌合孔130bのような構造を有してもよい。
【0035】
(実施の形態の効果)
上記実施の形態によれば、ハウジング20の爪22を嵌合させるための嵌合孔13を有する基板カバー10を射出成型する際に、少なくとも一部の嵌合孔13を、スライド金型を用いずに成型することができる。これにより、基板カバー10を備えた照明装置1の製造コストを抑えることができる。
【0036】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。また、上記の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0037】
1 照明装置
10 基板カバー
11 底壁
12 側壁
12a 先端
12b 第1の部分
12c 第2の部分
12d 段差部
12e 縁
13(13a~13c) 嵌合孔
20 ハウジング
21 側壁
22(22a~22c) 爪
30 基板
31 配線板
32 発光素子
50 レンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6