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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/053 20060101AFI20240123BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20240123BHJP
【FI】
B01D53/053
C01B32/50
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020192924
(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公開番号】P2022081758
(43)【公開日】2022-06-01
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴政
(72)【発明者】
【氏名】梅田 紘章
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-269805(JP,A)
【文献】特開2008-174407(JP,A)
【文献】特開2020-163247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/02-53/18
C01B32/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
COとCO以外の非COガスを含有する供給ガスからCOを分離して回収する二酸化炭素回収システムであって、
COを吸着および脱離する吸着部(12、19)と、
前記供給ガスが通過する供給流路(100)と、
前記吸着部で脱離したCOを貯蔵する貯蔵部(16)と、
前記貯蔵部に貯蔵されているCOを前記吸着部に供給するガス供給部(15)と、
前記供給流路に設けられた絞り弁(29、30)と、
を備え、
前記吸着部が前記供給流路を介して供給される前記供給ガスに含まれるCOを吸着する吸着モードと、
前記吸着部が吸着しているCOを脱離し、前記吸着部から脱離したCOを前記貯蔵部が貯蔵する脱離モードと、
前記吸着モードが終了してから前記脱離モードが開始するまでの間に、前記ガス供給部が前記貯蔵部に貯蔵されているCOを前記吸着部に供給する脱離準備モードと、
を有しており、
前記絞り弁は、前記脱離準備モードで前記貯蔵部に貯蔵されているCO を前記吸着部に供給する際のガス流れ方向において、前記吸着部の下流側に位置しており、
前記絞り弁は、前記脱離準備モードにおいて、前記吸着モードよりも弁開度を小さくする二酸化炭素回収システム。
【請求項2】
前記吸着部は、内部のCO分圧の変動に応じてCOの吸着および脱離が行われるようになっており、
前記吸着部内のCO分圧を調整する圧力調整部(11、13、15、20、29、30)を備え、
前記圧力調整部は、前記吸着モードでは、前記吸着部でCOを吸着させるために、前記吸着部内のCO分圧を所定圧力とし、前記脱離モードでは、前記吸着部でCOを脱離させるために、前記吸着部内のCO分圧を前記吸着モードよりも低くする請求項1に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項3】
前記脱離準備モードで前記ガス供給部によるCOの供給に伴って前記吸着部から排出される排出ガスを貯蔵する補助貯蔵部(17)を備え、
前記補助貯蔵部に貯蔵された前記排出ガスは、前記吸着モードで前記供給ガスに合流して前記吸着部に供給される請求項1または2に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項4】
前記吸着部は複数設けられており、
特定の前記吸着部が前記吸着モードで作動している場合に、他の前記吸着部は前記脱離準備モードおよび前記脱離モードで作動し、
前記脱離準備モードで作動している前記吸着部から前記ガス供給部によるCOの供給に伴って排出される排出ガスが、前記供給ガスに合流して前記吸着モードで作動している前記吸着部に供給される請求項1または2に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項5】
前記供給流路において、前記供給ガスに前記排出ガスが合流する合流点よりも前記供給ガスの流れ方向上流側に設けられた逆止弁(28)を備え、
前記逆止弁は、前記供給ガスの流れ方向に流れるガスを通過させ、前記供給ガスの流れ方向の反対方向に流れるガスを通過させない請求項3または4に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項6】
前記脱離準備モードで、前記ガス供給部によるCOの供給に伴って前記吸着部から排出される排出ガスのCO濃度を検出するガス濃度センサ(26、27)を備え、
前記脱離準備モードにおいて、前記ガス濃度センサで検出されたCO濃度が所定濃度以上になった場合に、前記脱離モードに移行する請求項1ないし5のいずれか1つに記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項7】
前記脱離準備モードで、前記ガス供給部によるCOの供給に伴って前記吸着部から排出される排出ガスの非COガス濃度を検出するガス濃度センサ(26、27)を備え、
前記脱離準備モードにおいて、前記ガス濃度センサで検出された非COガス濃度が所定濃度以下になった場合に、前記脱離モードに移行する請求項1ないし5のいずれか1つに記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項8】
前記脱離準備モードが開始してからの経過時間が所定時間に到達した場合に、前記脱離モードに移行する請求項1ないし5のいずれか1つに記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項9】
前記脱離モードの実行時間は、前記脱離準備モードの実行時間よりも長くなっている請求項1ないしのいずれか1つに記載の二酸化炭素回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO2含有ガスからCO2を回収する二酸化炭素回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、吸着部に設けられた吸着材が圧力変動によってCO2を吸着及び脱離することを利用してCO2含有ガスからCO2を分離する装置が開示されている。特許文献1の装置では、吸着材から脱離したCO2の濃度が所定濃度以上の場合にCO2を回収し、吸着材から脱離したCO2の濃度が所定濃度未満の場合にCO2を還流路を介して吸着部に還流させ、高濃度のCO2を回収している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6575050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のようにCO2の吸着と脱離を切り替えてCO2を回収する装置では、CO2吸着時に吸着部内や配管内にCO2以外のガスが残存したり、吸着部でCO2と同時にCO2以外のガスを吸着することがある。このため、CO2回収時にCO2以外のガスをCO2と共に回収してしまうため、回収するCO2の濃度が低下してしまう。
【0005】
また、特許文献1の装置では、脱離したCO2が所定濃度以下の場合に吸着部に還流させ、回収するCO2の濃度を高くするようにしている。このような構成でより高濃度のCO2を得るためには、吸着部内からCO2以外のガスを除去するために吸着部内の圧力を過度に低くする必要があり、吸着したCO2が脱離してしまうため回収量が落ちてしまう。
【0006】
また、特許文献1の装置では、脱離したCO2が所定濃度以下の場合に吸着部に還流させるために、還流路や圧縮機を追加する必要があり、装置が複雑化してしまう。
【0007】
本発明は上記点に鑑み、CO2含有ガスからCO2を回収する二酸化炭素回収システムにおいて、簡易な構成で回収するCO2の濃度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の二酸化炭素回収システムは、吸着部(12、19)と、供給流路(100)と、貯蔵部(16)と、ガス供給部(15)と、絞り弁(29、30)とを備え、吸着モードと、脱離モードと、脱離準備モードとを有している。吸着部は、COを吸着および脱離する。供給流路は、供給ガスが通過する。貯蔵部は、吸着部で脱離したCOを貯蔵する。ガス供給部は、貯蔵部に貯蔵されているCOを吸着部に供給する。
絞り弁は、供給流路に設けられており、脱離準備モードで貯蔵部に貯蔵されているCO を吸着部に供給する際のガス流れ方向において、前記吸着部の下流側に位置している。絞り弁は、脱離準備モードにおいて、吸着モードよりも弁開度を小さくする。
【0009】
吸着モードでは、吸着部が供給流路を介して供給される供給ガスに含まれるCO2を吸着する。脱離モードでは、吸着部が吸着しているCO2を脱離し、吸着部から脱離したCO2を貯蔵部が貯蔵する。脱離準備モードでは、吸着モードが終了してから脱離モードが開始するまでの間に、ガス供給部が貯蔵部に貯蔵されているCO2を吸着部に供給する。
【0010】
これにより、脱離準備モードでは、吸着モードの終了後に吸着部に残留している非CO2ガスをCO2で置換することができ、脱離モードでは、高濃度のCO2を回収することができる。これにより、簡素な構成で回収するCO2の濃度を向上させることができる。
【0011】
なお、上記各構成要素の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す図である。
図2】第1実施形態の二酸化炭素回収システムにおける各作動モードのガス流れを示す図である。
図3】第2実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す図である。
図4】第2実施形態の二酸化炭素回収システムにおける各作動モードのガス流れを示す図である。
図5】第3実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す図である。
図6】第3実施形態の二酸化炭素回収システムの電気制御部を示すブロック図である。
図7】第3実施形態の第2吸着部が脱離準備モードから脱離モードに切り替わる場合のガス流れを示す図である。
図8】第3実施形態の吸着部が脱離準備モードから脱離モードに切り替わる場合の制御処理を示すフローチャートである。
図9】第3実施形態の第1吸着部が脱離準備モードから脱離モードに切り替わる場合のガス流れを示す図である。
図10】第3実施形態の第1吸着部および第2吸着部のガス流量の経時的変化を示す図である。
図11】第4実施形態の吸着部が脱離準備モードから脱離モードに切り替わる場合の制御処理を示すフローチャートである。
図12】第5実施形態の吸着部が脱離準備モードから脱離モードに切り替わる場合の制御処理を示すフローチャートである。
図13】第6実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す図である。
図14】第7実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図面を用いて説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の二酸化炭素回収システム10は、第1ガス供給部11、吸着部12、絞り弁13、流路切替弁14、第2ガス供給部15、貯蔵部16が設けられている。これらの機器は、ガス流路100~103で接続されている。なお、ガス供給部11、15、絞り弁13は、吸着部12の内部におけるCO2分圧を調整する圧力調整部に相当する。
【0015】
ガス流路100~103は、内部をガスが通過可能なガス配管である。ガス流路100~103には、供給流路100、排出流路101、出口流路102および回収流路103が含まれている。
【0016】
本実施形態では、供給流路100から排出流路101を介して出口流路102または回収流路103に向かって流れるガス流れ方向を順流方向とし、回収流路103から排出流路101を介して供給流路100に向かって流れるガス流れ方向を逆流方向としている。順流方向と逆流方向はガス流れ方向が反対になっており、順流方向の上流側が逆流方向の下流側に対応し、順流方向の下流側が逆流方向の上流側に対応している。本明細書において、単に「上流側」および「下流側」と表記した場合は、「順流方向上流側」および「順流方向下流側」を意味するものとする。
【0017】
供給流路100は、吸着部12に供給される供給ガスが通過する。供給ガスはCO2とCO2以外の非CO2ガスを含有しており、例えば内燃機関の排気ガスや大気を用いることができる。
【0018】
供給流路100には、第1ガス供給部11が設けられている。第1ガス供給部11は、供給ガスを加圧して吸着部12に供給する圧縮機である。第1ガス供給部11によって供給された供給ガスは、吸着部12に向かって順流方向に供給流路100を流れる。
【0019】
供給流路100における第1ガス供給部11の下流側には、吸着部12が設けられている。吸着部12は、供給ガスからCO2を吸着して分離する装置である。吸着部12は、供給ガスを内部に導入し、供給ガスからCO2が分離された残りの非CO2ガス、あるいは供給ガスから分離されたCO2を排出する。
【0020】
吸着部12の内部には、CO2を吸着可能な吸着材12aが設けられている。吸着材12aは、所定の吸着条件で供給ガスに含まれるCO2を吸着し、吸着条件と異なる脱離条件で吸着したCO2を脱離する。吸着部12で脱離したCO2を脱離ガスとも称する。
【0021】
本実施形態の吸着材12aは、圧力変動によってCO2の吸着および脱離を行う材料を用いており、吸着条件と脱離条件を異なる圧力としている。吸着材12aは、CO2分圧に応じてCO2吸着量が変動し、CO2分圧が大きくなるほどCO2吸着量が増大する。吸着部12内のCO2分圧を相対的に高圧にすることで、吸着材12aにCO2を吸着させることができる。吸着部12内のCO2分圧を相対的に低圧にすることで、吸着材12aからCO2を脱離させることができる。
【0022】
本実施形態の二酸化炭素回収システムは、吸着部12でCO2の吸着が行われる吸着モードと、吸着部12でCO2の脱離が行われる脱離モードと、吸着部12でCO2の脱離準備が行われる脱離準備モードを含む複数の作動モードを有している。これらの作動モードについては、後で説明する。
【0023】
本実施形態では、吸着材12aとして金属有機複合体(MOF)を用いている。金属有機複合体は、金属イオンに有機配位子が配位結合した多孔質構造体である。吸着材12aとして用いる金属有機複合体は、CO2に対して吸着性を有していればよく、例えば[Cu(4,4´-ジヒドロキシビフェニル-3-カルボキシル)2(4,4´-ビピリジル)]n、[Cu(PF6 -2(1,2-ビス(4-ピリジル)エタン)]n、[Cu(CF3SO3 -2(1,3-ビス(4-ピリジル)プロパン)2n、{[Cu(PF6 -)(2,2-ビス(4-ピリジル))]PF6 -n等を挙げることができる。
【0024】
吸着部12の下流側には、排出流路101が接続されている。排出流路101は、吸着部12から排出される非CO2ガス、あるいはCO2が通過する。
【0025】
排出流路101には、絞り弁13が設けられている。絞り弁13は弁開度を調整可能な可変絞り機構を備えており、流路面積を調整して吸着部12の内部におけるガス圧力を変化させることができる。第1ガス供給部11が供給ガスを加圧して供給している場合に、絞り弁13の弁開度を小さくすることで、吸着部12の内部おけるガス圧力を上昇させることができる。一方、絞り弁13の弁開度を大きくすることで、吸着部12の内部におけるガス圧力を低下させることができる。
【0026】
排出流路101は、下流側で出口流路102および回収流路103に分岐する。排出流路101、出口流路102および回収流路103の接続点には、流路切替弁14が設けられている。流路切替弁14は三方弁であり、排出流路101と出口流路102が連通している状態と、排出流路101と回収流路103が連通している状態を切り替える。流路切替弁14は、吸着モードでは排出流路101と出口流路102を連通させ、脱離準備モードおよび脱離モードでは排出流路101と回収流路103を連通させる。
【0027】
出口流路102は大気に連通している。吸着部12から排出された非CO2ガスは、出口流路102を介して大気に放出される。
【0028】
回収流路103は貯蔵部16に接続している。回収流路103には、第2ガス供給部15が設けられている。第2ガス供給部15は、供給部12から排出されるCO2を掃引して貯蔵部16に供給する。吸着部12から排出されたCO2は、回収流路103を介して貯蔵部16に供給される。
【0029】
第2ガス供給部15としては、ブロワもしくは圧縮機を用いることができる。貯蔵部16は、吸着部12で供給ガスから分離されたCO2を貯蔵する装置である。本実施形態では、貯蔵部16として高圧のCO2を貯蔵する高圧タンクを用いており、第2ガス供給部15としてCO2を加圧して貯蔵部16に供給する圧縮機を用いている。
【0030】
本実施形態の第2ガス供給部15は、供給部12から貯蔵部16に向かう順流方向に加え、貯蔵部16から供給部12に向かう逆流方向にもガスを供給することが可能となっている。逆流方向に供給されるガスを逆流ガスとも称する。
【0031】
第2ガス供給部15は、脱離モードでは、吸着部12で脱離したCO2を貯蔵部16に向かって順流方向に供給し、脱離準備モードでは、貯蔵部16に貯蔵されているCO2を吸着部12に向かって逆流方向に供給する。第2ガス供給部15は、1台の装置で順流用と逆流用を兼用する構成としてもよく、2台の装置で順流用と逆流用を個別に構成してもよい。第2ガス供給部15を順流用と逆流用の2台の装置で構成する場合には、2台の装置を並列接続させ、一方の装置の作動時に他方の装置をバイパスさせればよい。
【0032】
二酸化炭素回収システム10には、制御部50が設けられている。制御部50は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。制御部50は、ROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、各種制御対象機器の作動を制御する。制御部50は、ガス供給部11、15、絞り弁13、流路切替弁14に制御信号を出力し、ガス供給部11、15の作動制御、絞り弁13の開度制御、流路切替弁14の流路切替制御の作動制御を行う。
【0033】
次に、上記構成の二酸化炭素回収システム10の作動について説明する。上述したように、本実施形態の二酸化炭素回収システム10は、複数の作動モードを有している。これら複数の作動モードの実行および切り替えは、制御部50の制御によって行われる。
【0034】
図2に示すように、複数の作動モードは、吸着モードと、脱離モードと、脱離準備モードとを含んでいる。吸着モードは、吸着部12が供給流路100を介して供給される供給ガスに含まれるCO2を吸着するモードである。脱離モードは、吸着部12が吸着しているCO2を脱離し、吸着部12から脱離したCO2を貯蔵部16が貯蔵するモードである。脱離準備モードは、吸着モードが終了してから脱離モードが開始するまでの間に、吸着部12でCO2の脱離準備を行うモードである。これらの作動モードは、吸着モード、脱離準備モード、脱離モードの順で繰り返し実行される。なお、図2では、ガスが流れる流路を太線で示している。
【0035】
まず、吸着モードについて説明する。吸着モードでは、第1ガス供給部11を作動させ、供給ガスを加圧して吸着部12に供給する。このとき、絞り弁13の弁開度を小さくし、流路切替弁14を出口流路102側に切り替え、第2ガス供給部15を停止させる。吸着モードでは、吸着部12におけるCO2分圧を吸着材12aによるCO2吸着が可能となる所定圧力となるようにしている。
【0036】
吸着部12では、供給ガスに含まれるCO2が吸着材12aに吸着され、供給ガスからCO2が分離される。供給ガスのうち吸着材12aに吸着されなかった非CO2ガスは、吸着部12から排出され、さらに出口流路102を介して大気に放出される。吸着モードでは、吸着部12でCO2の吸着を継続すると、吸着材12aのCO2吸着速度が徐々に低下する。このため、所定の吸着終了タイミングで吸着モードから脱離準備モードに移行する。
【0037】
脱離準備モードでは、第2ガス供給部15を逆流方向で作動させる。このとき、第1ガス供給部11を停止させ、絞り弁13の弁開度を大きくし、流路切替弁14を回収流路103側に切り替える。第2ガス供給部15は、貯蔵部16に貯蔵されているCO2を回収流路103および排出流路101を逆流させて吸着部12に供給する。貯蔵部16に貯蔵されているCO2は、それ以前の脱離モードで予め回収されたCO2である。
【0038】
吸着モードから脱離準備モードに切り替わった直後は、吸着部12における吸着材12a以外の部位や排出流路101に非CO2ガスが残留している。脱離準備モードでは、第2ガス供給部15によってCO2が逆流ガスとして供給されることで、吸着部12内に残留していた非CO2ガスがCO2で置換される。同様に、排出流路101に残留していた非CO2ガスも第2ガス供給部15によって供給されたCO2で置換される。
【0039】
CO2によって置換された非CO2ガスは、吸着部12から逆流方向下流側に排出される。つまり、脱離準備モードでは、第2ガス供給部15によるCO2供給に伴って吸着部12から非CO2ガスを含む排出ガスが排出される。
【0040】
第2ガス供給部15によって供給されるCO2が非CO2ガスの置換に充分な量である場合には、非CO2ガスの置換に用いられたCO2の一部が吸着部12から逆流方向下流側に排出される。つまり、脱離準備モードにおいて、第2ガス供給部15によるCO2供給に伴って吸着部12から排出される排出ガスには、非CO2ガスの置換に用いられたCO2の一部も含まれている。
【0041】
また、吸着材12aはCO2以外の非CO2ガスも吸着していることがある。第2ガス供給部15によってCO2を吸着部12に供給させることで、吸着材12aに吸着されている非CO2ガスを脱離させ、代わりにCO2を吸着させることができる。
【0042】
脱離準備モードでは、吸着モードで吸着材12aに吸着したCO2を吸着材12aから脱離させないことが望ましい。このため、脱離準備モードでは、吸着材12aからのCO2脱離を抑制するために、吸着部12のCO2分圧を吸着モードよりも高くすることが望ましい。
【0043】
貯蔵部16でCO2による残留ガスの置換が終了する所定のタイミングで脱離準備モードから脱離モードに移行する。
【0044】
脱離モードでは、第2ガス供給部15を順流方向で作動させる。このとき、第1ガス供給部11を停止させ、絞り弁13の弁開度を大きくし、流路切替弁14を出口流路102側に切り替える。脱離モードでは、吸着部12におけるCO2分圧を吸着モードよりも低くなるようにしている。
【0045】
脱離モードでは、吸着部12で吸着材12aに吸着されているCO2が吸着材12aから脱離する。吸着材12aで脱離したCO2は脱離ガスとして、回収流路103を介して貯蔵部16に供給され、貯蔵部16で貯蔵される。脱離モードに先立って、脱離準備モードで吸着部12および排出流路101の内部がCO2で置換されている。このため、脱離モードでは、吸着材12aから脱離したCO2と、吸着部12および排出流路101の内部で非CO2ガスから置換されたCO2が貯蔵部16に供給されるため、貯蔵部16に高濃度のCO2が供給される。
【0046】
脱離モードを継続すると、吸着部12のCO2吸着量が減少し、吸着部12から脱離するCO2が徐々に減少する。このため、吸着部12からのCO2脱離量が所定量以下になる所定のタイミングで脱離モードから吸着モードに移行する。
【0047】
以上説明した本実施形態では、吸着部12でCO2を吸着する吸着モードと、吸着部12でCO2を脱離する脱離モードの間に、貯蔵部16で予め回収されたCO2を吸着部12に向かって逆流方向に供給する脱離準備モードを設けている。脱離準備モードでは、吸着モードの終了後に吸着部12と排出流路101に残留している非CO2ガスをCO2で置換することができ、脱離モードでは、高濃度のCO2を回収することができる。これにより、簡素な構成で回収するCO2の濃度を向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態では、脱離準備モードで吸着部12から非CO2ガスを除去する際に吸着部12を減圧する必要ない。このため、脱離準備モードで吸着材12aに吸着しているCO2が脱離することを抑制することができ、CO2の回収率が低下することを抑制できる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下、上記第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0050】
図3に示すように、本第2実施形態の二酸化炭素回収システム10では、供給流路100における第1ガス供給部11と吸着部12との間に補助流路104が分岐して設けられている。補助流路104には補助貯蔵部17が接続されている。
【0051】
補助貯蔵部17は、脱離準備モードにおいて、第2ガス供給部15によるCO2の供給に伴って吸着部12から排出される排出ガスが一時的に貯蔵される。排出ガスには、CO2で置換された非CO2ガスと、非CO2ガスの置換に用いられたCO2の一部が含まれている。
【0052】
供給流路100と補助流路104との接続点には、補助流路切替弁18が設けられている。補助流路切替弁18は、吸着モード、脱離準備モード、脱離モードのそれぞれで、第1ガス供給部11、吸着部12および補助貯蔵部17の連通状態を切り替える。補助流路切替弁18による流路切替は、制御部50の制御によって行われる。
【0053】
次に、本第2実施形態の二酸化炭素回収システムの作動について図4を用いて説明する。本第2実施形態の吸着モード、脱離準備モード、脱離モードにおいて、第1ガス供給部11、絞り弁13、流路切替弁14、第2ガス供給部15の作動は、上記第1実施形態と同一となっている。
【0054】
まず、吸着モードについて説明する。吸着モードでは、補助流路切替弁18は、第1ガス供給部11、吸着部12および補助貯蔵部17を連通させている。
【0055】
吸着モードでは、第1ガス供給部11によって供給ガスが吸着部12に供給される。吸着モード開始時には、それ以前の脱離準備モードにおいて、予め補助貯蔵部17に非CO2ガスとCO2を含んだ排出ガスが貯蔵されている。このため、吸着モードでは、補助流路104を介して補助貯蔵部17に貯蔵されている排出ガスが供給流路100の供給ガスに合流して、吸着部12に供給される。吸着モードでは、第1ガス供給部11から供給された供給ガスに含まれるCO2に加え、補助貯蔵部17から供給された排出ガスに含まれるCO2も吸着部12で吸着される。
【0056】
次に、脱離吸着モードについて説明する。脱離準備モードでは、補助流路切替弁18は、吸着部12および補助貯蔵部17を連通させている。脱離準備モードでは、第2ガス供給部15によって貯蔵部16に貯蔵されているCO2が逆流方向に供給される。CO2によって置換された非CO2ガスと、置換に用いられたCO2の一部は、吸着部12から排出ガスとして排出される。吸着部12から排出された排出ガスは、補助流路104を介して補助貯蔵部17に供給され、補助貯蔵部17で貯蔵される。
【0057】
本第2実施形態の脱離モードは、上記第1実施形態と同一であるので説明を省略する。
【0058】
以上説明した本第2実施形態では、脱離準備モードで第2ガス供給部15によるCO2供給に伴って吸着部12から排出される排出ガスを貯蔵し、貯蔵した排出ガスを吸着モードで吸着部12に供給する補助貯蔵部17を設けている。これにより、脱離準備モードで非CO2ガスの置換に用いられたCO2の一部を、吸着モードで吸着部12によって再度吸着させることができ、CO2の回収率を向上させることができる。
【0059】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本第3実施形態では、上記第1、第2実施形態の吸着部12、絞り弁13、流路切替弁14を、それぞれ第1吸着部12、第1絞り弁13、第1流路切替弁14としている。
【0060】
図5に示すように、本第3実施形態の供給流路100は、第1供給流路100a、第2供給流路100bおよび第3供給流路100cを含んでいる。第1供給流路100aは、下流側で第2供給流路100bおよび第3供給流路100cに分岐している。第2供給流路100bおよび第3供給流路100cは、並列的に設けられている。第1供給流路100aは、第2供給流路100bおよび第3供給流路100cのいずれかと連通する。
【0061】
第1供給流路100aには、第1ガス供給部11が設けられている。本第3実施形態では、複数の吸着部12、19が設けられている。第1吸着部12は第2供給流路100bに設けられており、第2吸着部19は第3供給流路100cに設けられている。これらの吸着部12、19は同一の構成を備えており、それぞれ吸着材12a、19aが設けられている。
【0062】
第1吸着部12と第2吸着部19は、並列して配置されている。第1吸着部12が吸着モードで作動している場合には、第2吸着部19が脱離準備モードと脱離モードで作動する。第2吸着部19が吸着モードで作動している場合には、第1吸着部12が脱離準備モードと脱離モードで作動する。
【0063】
本第3実施形態の排出流路101は、第1排出流路101aおよび第2排出流路101bを含んでいる。第1排出流路101aは第1吸着部12に接続されており、第2排出流路101は第2吸着部19に接続されている。
【0064】
第1排出流路101aには、第1絞り弁13が設けられている。第2排出流路101bには、第2絞り弁20が設けられている。これらの絞り弁13、20は同一の構成を備えており、それぞれ弁開度を調整可能な可変絞り機構を備えており、吸着部12、19の内部におけるガス圧力を変化させることができる。なお、絞り弁13、20は、吸着部12、19の内部におけるCO2分圧を調整する圧力調整部の一部である。
【0065】
第1排出流路101aおよび第2排出流路101bは、それぞれ下流側において、出口流路102および回収流路103と接続している。第1排出流路101aおよび第2排出流路101bは、それぞれ出口流路102および回収流路103のいずれかと連通する。第1排出流路101aが出口流路102と連通している場合は、第2排出流路101bは回収流路103と連通し、第1排出流路101aが回収流路103と連通している場合は、第2排出流路101bは出口流路102と連通している。
【0066】
第1排出流路101a、出口流路102および回収流路103の接続点には、第1流路切替弁14が設けられている。第1流路切替弁14は、第1排出流路101aと出口流路102が連通した状態と、第1排出流路101aと回収流路103が連通した状態を切り替える。
【0067】
第2排出流路101b、出口流路102および回収流路103の接続点には、第2流路切替弁21が設けられている。第2流路切替弁21は、第2排出流路101bと出口流路102が連通した状態と、第2排出流路101bと回収流路103が連通した状態を切り替える。
【0068】
第1供給流路100a、第2供給流路100bおよび第3供給流路100cの接続点には、第3流路切替弁22が設けられている。第3流路切替弁22は、第1供給流路100aと第2供給流路100bが連通した状態と、第1供給流路100aと第3供給流路100cが連通した状態を切り替える。
【0069】
第1供給流路100aと第2供給流路100bには、第1ガス供給部11をバイパスする第1バイパス流路105が設けられている。第1バイパス流路105は、第1供給流路100aにおける第1ガス供給部11の上流側と、第2供給流路100bを接続している。
【0070】
第1供給流路100aと第3供給流路100cには、第1ガス供給部11をバイパスする第2バイパス流路106が設けられている。第2バイパス流路106は、第1供給流路100aにおける第1ガス供給部11の上流側と、第3供給流路100cを接続している。
【0071】
第1供給流路100a、第1バイパス流路105および第2バイパス流路106との接続点には、第4流路切替弁23が設けられている。第4流路切替弁23は、第1供給流路100aと第1バイパス流路105の接続状態、第1供給流路100aと第2バイパス流路106の接続状態のそれぞれを切り替える。
【0072】
第2供給流路100bと第1バイパス流路105との接続点には、第5流路切替弁24が設けられている。第5流路切替弁24は、第2供給流路100bにおける第5流路切替弁24の上流側および下流側が連通した状態と、第2供給流路100bにおける第5流路切替弁24の下流側と第1バイパス流路105が連通した状態を切り替える。
【0073】
第3供給流路100cと第2バイパス流路106との接続点には、第6流路切替弁25が設けられている。第6流路切替弁25は、第3供給流路100cにおける第6流路切替弁25の上流側および下流側が連通した状態と、第3供給流路100cにおける第6流路切替弁25の下流側と第2バイパス流路106が連通した状態を切り替える。
【0074】
第1吸着部12が脱離準備モードで作動している場合には、第1吸着部12から排出された排出ガスが第1バイパス流路105に流れる。第2吸着部19が脱離準備モードで作動している場合には、第2吸着部19から排出された排出ガスが第2バイパス流路106に流れる。
【0075】
第1バイパス流路105には、第1吸着部12から排出された排出ガスのCO2濃度を検出する第1ガス濃度センサ26が設けられている。第2バイパス流路106には、第2吸着部19から排出された排出ガスのCO2濃度を検出する第2ガス濃度センサ27が設けられている。
【0076】
図6に示すように、本第3実施形態の制御部50は、ガス濃度センサ26、27からセンサ信号が入力する。さらに、本第3実施形態の制御部50は、ガス供給部11、15、絞り弁13、20、流路切替弁14、21、22、23、24、25に制御信号を出力する。制御部50は、ガス濃度センサ26、27のセンサ値に基づいて、脱離準備モードから脱離モードへの移行処理を行う。
【0077】
次に、本第3実施形態の二酸化炭素回収システム10の作動を説明する。二酸化炭素回収システム10の作動は、制御部50の制御によって実行される。
【0078】
まず、第1吸着部12が吸着モードで作動し、第2吸着部19が脱離準備モードおよび脱離モードで作動する場合について、図7図8を用いて説明する。
【0079】
図7では、第1吸着部12を通過するガス流れを実線の太線で示し、第2吸着部19を通過するガス流れを一点鎖線の太線で示している。図7の上段は、第1吸着部12が吸着モード、第2吸着部19が脱離準備モードの場合を示している。図7の下段は、第1吸着部12が吸着モード、第2吸着部19が脱離モードの場合を示している。
【0080】
図8のフローチャートに示すように、まず、S10の処理で流路切替弁14、21、22、23、24、25による流路切り替えを行う。第1流路切替弁14は、第1排出流路101aと出口流路102を連通させる。第2流路切替弁21は、第2排出流路101bと回収流路103を連通させる。第3流路切替弁22は、第1供給流路100aと第2供給流路100bを連通させる。第4流路切替弁23は、第2バイパス流路106と第1供給流路100aを連通させる。第5流路切替弁24は、第2供給流路100bにおける第5流路切替弁24の上流側および下流側を連通させる。第6流路切替弁25は、第3供給流路100cにおける第6流路切替弁25の下流側と第2バイパス流路106を連通させる。
【0081】
次に、S11の処理で絞り弁13、20の開度調整を行う。第1絞り弁13の弁開度を小さくし、第2絞り弁20の弁開度を大きくする。
【0082】
次に、S12の処理で第1ガス供給部11を作動開始させ、S13の処理で第2ガス供給部15を逆流方向に作動開始させる。
【0083】
第1ガス供給部11を作動させることによって、供給ガスが第1供給流路100aおよび第2供給流路100bを介して第1吸着部12に供給される。第1吸着部12では、供給ガスに含まれるCO2の吸着が行われ、供給ガスのうち第1吸着部12で吸着されなかった非CO2ガスは第1排出流路101aおよび出口流路102を介して大気に放出される。
【0084】
第2ガス供給部15を逆流方向に作動させることによって、貯蔵部16に貯蔵されているCO2が、回収流路103および第2排出流路101bを介して第2吸着部19に供給される。第2吸着部19および第2排出流路101bに存在している非CO2ガスは、CO2で置換される。第2吸着部19から、CO2で置換された非CO2ガスと、非CO2ガスの置換に用いられたCO2の一部を含む排出ガスが排出される。
【0085】
第2吸着部19から排出された排出ガスは、第2バイパス流路106を介して第1供給流路100aに流れ込み、供給ガスに合流する。排出ガスは供給ガスとともに第1吸着部12に供給され、排出ガスに含まれるCO2は第1吸着部12で吸着される。
【0086】
次に、S14の処理で第2ガス濃度センサ27によって第2吸着部19から排出された排出ガスのCO2濃度を検出し、S15の処理でCO2濃度が所定濃度以上になったか否かを判定する。
【0087】
第2吸着部19で脱離準備モードを開始した直後は、第2吸着部19から排出された排出ガスの非CO2ガス濃度が高くなっている。脱離準備モードを継続するとCO2による非CO2ガスの置換が進行するため、第2吸着部19から排出された排出ガスはCO2ガス濃度が徐々に上昇する。本第3実施形態では、第2ガス濃度センサ27で検出したCO2濃度が所定濃度を上回った場合に、第2吸着部19の非CO2ガスがCO2で充分に置換され、脱離準備モードから脱離モードに切り替えるタイミングが到来したと判断している。
【0088】
S15の処理でCO2濃度が所定濃度以上になっていないと判定された場合には、S14の処理に戻る。一方、S15の処理でCO2濃度が所定濃度以上になったと判定された場合には、S16の処理で第2ガス供給部15を順流方向で作動させる。これにより、第2吸着部19が脱離準備モードから脱離モードに移行し、二酸化炭素回収システム10は図7の上段に示す状態から下段に示す状態に移行する。
【0089】
第2吸着部19は脱離モードに移行することで、吸着していたCO2を脱離する。第2吸着部19で脱離されたCO2は、脱離ガスとして回収流路103を介して貯蔵部16に供給され、貯蔵部16で貯蔵される。
【0090】
次に、第1吸着部12が脱離準備モードおよび脱離モードで作動し、第2吸着部19が吸着モードで作動する場合について図9を用いて説明する。図9では、第1吸着部12を通過するガス流れを一点鎖線の太線で示し、第2吸着部19を通過するガス流れを実線の太線で示している。図9の上段は、第1吸着部12が脱離準備モード、第2吸着部19が吸着モードの場合を示している。図9の下段は、第1吸着部12が脱離モード、第2吸着部19が吸着モードの場合を示している。第1吸着部12が脱離準備モードおよび脱離モードで作動し、第2吸着部19が吸着モードで作動する場合も、図8のフローチャートにしたがって制御処理が行われる。
【0091】
まず、S10の処理で流路切替弁14、21、22、23、24、25による流路切り替えを行う。第1流路切替弁14は、第1排出流路101aと回収流路103を連通させる。第2流路切替弁21は、第2排出流路101bと出口流路102を連通させる。第3流路切替弁22は、第1供給流路100aと第3供給流路100cを連通させる。第4流路切替弁23は、第1バイパス流路105と第1供給流路100aを連通させる。第5流路切替弁24は、第2供給流路100bにおける第5流路切替弁24の下流側と第1バイパス流路105を連通させる。第6流路切替弁25は、第3供給流路100cにおける第6流路切替弁25の上流側と下流側を連通させる。
【0092】
次に、S11の処理で絞り弁13、20の開度調整を行う。第1絞り弁13の弁開度を大きくし、第2絞り弁20の弁開度を小さくする。
【0093】
次に、S12の処理で第1ガス供給部11を作動開始させ、S13の処理で第2ガス供給部15を逆流方向に作動開始させる。
【0094】
第1ガス供給部11を作動させることによって、供給ガスが加圧され、第1供給流路100aおよび第3供給流路100cを介して第2吸着部19に供給される。第2吸着部19では、供給ガスに含まれるCO2の吸着が行われ、供給ガスのうち第2吸着部19で吸着されなかった非CO2ガスは第2排出流路101bおよび出口流路102を介して大気に放出される。
【0095】
第2ガス供給部15を逆流方向に作動させることによって、貯蔵部16に貯蔵されているCO2が逆流ガスとして、回収流路103および第1排出流路101aを介して第1吸着部12に供給される。第1吸着部12および第1排出流路101aに存在している非CO2ガスはCO2で置換される。第1吸着部12からCO2で置換された非CO2ガスと、非CO2ガスの置換に用いられたCO2の一部を含む排出ガスが排出される。
【0096】
第1吸着部12から排出された排出ガスは、第1バイパス流路105を介して第1供給流路100aに流れ込み、供給ガスに合流する。排出ガスは供給ガスとともに第2吸着部19に供給され、排出ガスに含まれるCO2は第2吸着部19で吸着される。
【0097】
次に、S14の処理で第1ガス濃度センサ26によって第1吸着部12から排出された排出ガスのCO2濃度を検出し、S15の処理でCO2濃度が所定濃度以上になったか否かを判定する。
【0098】
S15の判定処理でCO2濃度が所定濃度以上になったと判定された場合には、S16の処理で第2ガス供給部15を順流方向に作動させる。これにより、第1吸着部12が脱離準備モードから脱離モードに移行し、二酸化炭素回収システム10は図9の上段に示す状態から下段に示す状態に移行する。第1吸着部12は脱離モードに移行することで、吸着していたCO2を脱離する。第1吸着部12で脱離されたCO2は、脱離ガスとして第1排出流路101aおよび回収流路103を介して貯蔵部16に供給され、貯蔵部16で貯蔵される。
【0099】
ここで、第1吸着部12と第2吸着部19におけるガス流量の経時的変化について図10を用いて説明する。図10では、第1吸着部12のガス流量を実線で示し、第2吸着部19のガス流量を一点鎖線で示している。図10では、順流方向のガス流れはガス流量がプラスになっており、逆流方向のガス流れはガス流量がマイナスとなっている。
【0100】
まず、第1吸着部12が吸着モードで作動し、第2吸着部19が脱離準備モードで作動する状態では、第2吸着部19では逆流ガスが流れ、第1吸着部12では供給ガスと第2吸着部19から供給された逆流ガスが流れる。
【0101】
第2吸着部19が脱離準備モードから脱離モードに移行すると、第1ガス供給部11では供給ガスのみが流れ、第2吸着部19では脱離ガスが順流方向に流れる。
【0102】
次に、第1吸着部12が脱離準備モードで作動し、第2吸着部19が吸着モードで作動する状態では、第1吸着部12では逆流ガスが流れ、第2吸着部19では供給ガスと第1吸着部12から供給された逆流ガスが流れる。
【0103】
第1吸着部12が脱離準備モードから脱離モードに移行すると、第2吸着部19では供給ガスのみが流れ、第1吸着部12では脱離ガスが順流方向に流れる。
【0104】
図10に示すように、第1吸着部12および第2吸着部19では、それぞれ脱離準備モードの実行時間よりも脱離モードの実行時間の方が長くなっている。このため、第1吸着部12および第2吸着部19からCO2が脱離する時間を充分に確保することができる。
【0105】
以上説明した本第3実施形態では、複数の吸着部12、19を設け、特定の吸着部12、19が吸着モードで作動している場合に、他の吸着部12、19が脱離準備モードおよび脱離モードで作動するようにしている。これにより、複数の吸着部12、19によって交互にCO2の吸着とCO2の脱離を行うことができ、システム全体としてCO2の吸着とCO2の脱離を連続的に行うことができる。この結果、本第3実施形態の二酸化炭素回収システムでは、CO2の回収を連続的に行うことができる。
【0106】
また、本第3実施形態では、第2ガス供給部15によるCO2供給に伴って脱離準備モードの吸着部12、19から排出される排出ガスを吸着モードの吸着部12、19に供給している。これにより、脱離準備モードで作動している吸着部12、19から排出された排出ガスに含まれるCO2を吸着モードで作動している吸着部12、19で吸着させることができる。この結果、非CO2ガスの置換に用いられたCO2を有効利用することができ、CO2の回収率を向上させることができる。
【0107】
また、本第3実施形態では、脱離準備モードで作動中の吸着部12、19から排出される排出ガスのCO2濃度が所定濃度以上になった場合に、脱離準備モードから脱離モードに移行するようにしている。これにより、所定濃度以下のCO2を回収することを回避でき、回収するCO2の濃度を高めることができる。
【0108】
また、本第3実施形態の吸着部12、19では、脱離準備モードの実行時間よりも脱離モードの実行時間を長くしている。これにより、吸着部12、19からCO2が脱離する時間を充分に確保することができる。
【0109】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。以下、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0110】
本第4実施形態では、図5で示したガス濃度センサ26、27が、脱離準備モードで吸着部12、19から排出された排出ガスの非CO2ガス濃度を検出する点が上記第3実施形態と異なっている。
【0111】
本第4実施形態の二酸化炭素回収システム10において、第1吸着部12が吸着モードで作動し、第2吸着部19が脱離準備モードおよび脱離モードで作動する場合について、図11のフローチャートを用いて説明する。図11に示す制御処理において、S20~S23、S26の各処理は、上記第3実施形態のS10~S13、S16の各処理と同一であるので説明を省略する。
【0112】
図11に示すように、本第4実施形態では、第2ガス供給部15を逆流方向で作動開始した後、S24の処理で第1ガス濃度センサ26によって第1吸着部12から排出された排出ガスの非CO2ガス濃度を検出する。そして、S25の処理で非CO2ガス濃度が所定濃度以下になったか否かを判定する。
【0113】
S25の判定処理で非CO2ガス濃度が所定濃度以下になったと判定された場合には、S26の処理で第2ガス供給部15を順流方向に作動させる。これにより、第1吸着部12が脱離準備モードから脱離モードに移行する。第1吸着部12は脱離モードに移行することで、吸着していたCO2を脱離する。第1吸着部12で脱離されたCO2は、脱離ガスとして第1排出流路101aおよび回収流路103を介して貯蔵部16に供給され、貯蔵部16で貯蔵される。
【0114】
以上説明した本第4実施形態によれば、脱離準備モードで作動中の吸着部12、19から排出される排出ガスの非CO2ガス濃度が所定濃度以上になった場合に、脱離準備モードから脱離モードに移行するようにしている。これにより、所定濃度以下のCO2を回収することを回避でき、回収するCO2の濃度を高めることができる。
【0115】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。以下、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0116】
本第5実施形態の二酸化炭素回収システムでは、図5で示したガス濃度センサ26、27が設けられていない点が上記第3実施形態と異なっている。
【0117】
本第5実施形態の二酸化炭素回収システム10において、第1吸着部12が吸着モードで作動し、第2吸着部19が脱離準備モードおよび脱離モードで作動する場合について、図12のフローチャートを用いて説明する。図12に示す制御処理において、S30~S33、S36の各処理は、上記第3実施形態のS10~S13、S16の各処理と同一であるので説明を省略する。
【0118】
図12に示すように、本第5実施形態では、第2ガス供給部15を逆流方向で作動開始した後、S35の処理で脱離準備モードが開始してからの経過時間が所定時間に到達したか否かを判定する。「所定時間」は、吸着部12、19および排出流路101a、101bの非CO2ガスがCO2で置換されるのに必要な時間として、予め設定しておけばよい。
【0119】
S35の判定処理で脱離準備モードが開始してからの経過時間が所定時間に到達したと判定された場合には、S36の処理で第2ガス供給部15を順流方向に作動させる。これにより、第1吸着部12が脱離準備モードから脱離モードに移行する。第1吸着部12は脱離モードに移行することで、吸着していたCO2を脱離する。第1吸着部12で脱離されたCO2は、脱離ガスとして第1排出流路101aおよび回収流路103を介して貯蔵部16に供給され、貯蔵部16で貯蔵される。
【0120】
以上説明した本第5実施形態では、脱離準備モードが開始してからの経過時間が所定時間に到達した場合に、脱離準備モードから脱離モードに移行するようにしている。これにより、所定濃度以下のCO2を回収することを回避でき、回収するCO2の濃度を高めることができる。
【0121】
また、本第5実施形態では、脱離モードを開始してからの経過時間に基づいて脱離準備モードから脱離モードに移行するようにしている。このため、ガス濃度センサ26、27を設ける必要がなく、構成を簡素化することができる。
【0122】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。以下、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0123】
図13に示すように、本第6実施形態の二酸化炭素回収システムでは、第1供給流路100aにおける第4流路切替弁23の上流側に逆止弁28が設けられている。逆止弁28は、吸着部12、19から排出される排出ガスがバイパス流路105、106を介して供給ガスに合流する合流点よりも上流側に設けられている。本第6実施形態の二酸化炭素回収システムは、逆止弁28を除いて上記第3実施形態と同一の構成を備えている。
【0124】
逆止弁28は、供給ガスの流れ方向に流れるガスを通過させ、供給ガスの流れ方向の反対方向に流れるガスを通過させない。このため、第4流路切替弁23が第1バイパス流路105および第1供給流路100aを連通させている場合に、第1バイパス流路105から第1供給流路100aに合流する排出ガスが供給ガスの流れ方向の反対方向に流れることを防止できる。同様に、第4流路切替弁23が第2バイパス流路106および第1供給流路100aを連通させている場合に、第2バイパス流路106から第1供給流路100aに合流する排出ガスが供給ガスの流れ方向の反対方向に流れることを防止できる。
【0125】
以上説明した本第6実施形態では、第1供給流路100aにおける第4流路切替弁23の上流側に逆止弁28が設けられている。これにより、第1バイパス流路105および第2バイパス流路106から第1供給流路100aに合流する排出ガスを確実に吸着部12、19に供給することができ、排出ガスに含まれるCO2を吸着部12、19で吸着させることができる。この結果、CO2の回率を向上させることができる。
【0126】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について説明する。以下、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0127】
図14に示すように、本第7実施形態の二酸化炭素回収システムは、吸着部12、19における排出ガスの流れ方向下流側に絞り弁29、30が設けられている。排出ガスの流れ方向下流側は、逆流方向下流側である。本第7実施形態の二酸化炭素回収システムは、絞り弁29、30を除いて上記第3実施形態と同一の構成を備えている。なお、絞り弁29、30は、吸着部12、19の内部におけるCO2分圧を調整する圧力調整部の一部である。
【0128】
第1吸着部12の排出ガスの流れ方向下流側には、第3絞り弁29が設けられている。第3絞り弁29は、第2供給流路100bにおける第5流路切替弁24と第1吸着部12の間に設けられている。第3絞り弁29は、第1吸着部12の排出ガスの流れ方向下流側のガス流路に設けられていればよく、第1バイパス流路105に設けられていてもよい。
【0129】
第2吸着部19の排出ガスの流れ方向下流側には、第4絞り弁30が設けられている。第4絞り弁30は、第3供給流路100cにおける第6流路切替弁25と第2吸着部19の間に設けられている。第4絞り弁30は、第2吸着部19の排出ガスの流れ方向下流側のガス流路に設けられていればよく、第2バイパス流路106に設けられていてもよい。
【0130】
第3絞り弁29は、第2ガス供給部15によって第1吸着部12にCOが供給される場合に弁開度を小さくし、第1ガス供給部11によって第1吸着部12に供給ガスが供給される場合に弁開度を大きくする。第絞り弁30は、第2ガス供給部15によって第2吸着部19にCOが供給される場合に弁開度を小さくし、第1ガス供給部11によって第2吸着部19に供給ガスが供給される場合に弁開度を大きくする。
【0131】
以上説明した本第7実施形態によれば、脱離準備モードで第2ガス供給部15によってCO2が吸着部12、19に供給される際に絞り弁29、30の弁開度を小さくしている。これにより、脱離準備モードで吸着部12、19の非CO2ガスをCO2で置換する際に、吸着部12、19内部のCO2分圧を上昇させることができる。この結果、脱離準備モードで吸着部12、19からCO2が脱離することを抑制でき、CO2の回収率を向上させることができる。
【0132】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。また、上記各実施形態に開示された手段は、実施可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。
【0133】
例えば、上記各実施形態では、CO2分圧差によってCO2の吸着および脱離を行う吸着部12、19を用いた例について説明したが、異なる種類の吸着部を用いてもよい。例えば、温度差によってCO2の吸着および脱離を行う吸着部を用いてもよく、あるいは電極間に印加する電圧差によってCO2の吸着および脱離を行う電気化学セルからなる吸着部を用いてもよい。
【0134】
また、上記第6実施形態では、複数の吸着部12、19で交互に吸着モードが実行される構成において、第1供給流路100aに逆止弁28を設けたが、1つの吸着部12が設けられた上記第2実施形態の構成においても逆止弁28を設けてもよい。この場合、供給流路100において、補助流路切替弁18を介して排出ガスが合流する合流点よりも供給ガスの流れ方向上流側に逆止弁を設ければよい。これにより、脱離準備モードでは、吸着部12から排出された排出ガスを確実に補助貯蔵部17に供給することができ、吸着モードでは、補助貯蔵部17に貯蔵された排出ガスを確実に吸着部12に供給することができる。この結果、CO2の回収率を向上させることができる。
【0135】
また、上記第7実施形態では、複数の吸着部12、19が設けられている構成において、吸着部12、19における供給ガスの流れ方向上流側に絞り弁29、30を設けたが、1つの吸着部12が設けられている構成において、吸着部12における供給ガスの流れ方向上流側に絞り弁を設けてもよい。
【0136】
また、上記第3実施形態では、複数の吸着部12、1が設けられた構成において、CO2濃度に基づいて脱離モードに移行するようにしたが、1つの吸着部12が設けられた構成においても、CO2濃度に基づいて脱離モードに移行するようにしてもよい。
【0137】
また、上記第4実施形態では、複数の吸着部12、1が設けられた構成において、非CO2ガス濃度に基づいて脱離モードに移行するようにしたが、1つの吸着部12が設けられた構成においても、非CO2ガス濃度に基づいて脱離モードに移行するようにしてもよい。
【0138】
また、上記第5実施形態では、複数の吸着部12、1が設けられた構成において、脱離準備モード開始後の経過時間に基づいて脱離モードに移行するようにしたが、1つの吸着部12が設けられた構成においても、脱離準備モード開始後の経過時間に基づいて脱離モードに移行するようにしてもよい。
【0139】
また、上記第3~第7実施形態では、2つの吸着部12、19を設けた二酸化炭素回収システムについて説明したが、吸着部を3つ以上設けてもよい。例えば、3つの吸着部を設ける場合には、1つの吸着部を吸着モードで作動させ、2つの吸着部を脱離準備モードと脱離モードで作動させるようにすることができる。
【0140】
また、上記第3実施形態では、脱離準備モードの吸着部12、19から排出された排出ガスを吸着モードの吸着部12、19に供給するようにしたが、排出ガスを吸着モードの吸着部12、19に供給することなく大気に排出するようにしてもよい。この場合、排出ガスが通過するガス流路に大気に連通する大気開放弁を設ければよい。
【符号の説明】
【0141】
11、15…ガス供給部(圧力調整部)、12、19…吸着部、13、20、29、30…絞り弁(圧力調整部)、16…貯蔵部、17…補助貯蔵部、26、27…ガス濃度センサ、28…逆止弁、50…制御部、100、100a、100b、100c…供給流路
図1
図2
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