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特許7424287光成形用LED硬化型組成物及びその利用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】光成形用LED硬化型組成物及びその利用
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/50 20060101AFI20240123BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20240123BHJP
   B29C 33/00 20060101ALI20240123BHJP
   B29C 67/00 20170101ALI20240123BHJP
【FI】
C08F2/50
C08F290/06
B29C33/00
B29C67/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020522646
(86)(22)【出願日】2019-05-31
(86)【国際出願番号】 JP2019021876
(87)【国際公開番号】W WO2019230977
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2018106423
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】末岡 晶作
(72)【発明者】
【氏名】神村 浩之
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/151119(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/011434(WO,A1)
【文献】特開2016-112869(JP,A)
【文献】特開2018-009102(JP,A)
【文献】特開2012-207124(JP,A)
【文献】特開2017-008170(JP,A)
【文献】国際公開第2016/047586(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00- 2/60
C08F290/00-290/14
B29C 33/00
B29C 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分及び(B)成分を含み、
(B)成分の合計100質量%中に、下記(B1)成分を30質量%以上70質量%以下で含み、下記(B2)成分を30質量%以上70質量%以下で含む、光成形用LED硬化型組成物。
(A)成分:385nmにおけるモル吸光係数が20L・mol-1・cm-1以上の光重合開始剤
(B)成分:下記(B1)成分及び(B2)成分を含むエチレン性不飽和基含有化合物
(B1)成分;2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーであって、多価アルコール、有機多価イソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の反応物であるウレタン(メタ)アクリレート
(B2)成分;下記(B2-1)成分及び下記(B2-2)成分を含む1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(B2-1)成分:芳香族環及び1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、並びに1分子中に芳香族環、水酸基及び1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物から選択される1種以上
(B2-2)成分:水酸基及び1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、並びに1分子中に芳香族環、水酸基及び1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物から選択される1種以上
但し、(B2-1)成分及び(B2-2)成分の一方は、1分子中に芳香族環、水酸基及び1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物ではない。
【請求項2】
前記(A)成分が、α-アミノアルキルフェノン系化合物、アシルホスフィンオキサイド系化合物、及びゲルマニム系化合物からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の光成形用LED硬化型組成物。
【請求項3】
前記(A)成分の含有割合が、(B)成分100質量部に対して、0.05質量部以上10質量部未満である、請求項1又は請求項2に記載の光成形用LED硬化型組成物。
【請求項4】
得られる組成物硬化物が、170℃で熱間の強度が0.3MPa以上を有する、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の光成形用LED硬化型組成物。
【請求項5】
ディスプレイ関連部材に適用される、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の光成形用LED硬化型組成物。
【請求項6】
建材関連部材に適用される、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の光成形用LED硬化型組成物。
【請求項7】
自動車関連部材に適用される、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の光成形用LED硬化型組成物。
【請求項8】
凹部が形成された成形用型の凹部に、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の光成形用LED硬化型組成物を充填する工程と、
前記の充填された組成物と基材が密着するように成形用型を配置する工程と、
前記基材又は前記成形用型のうち、365nm以上の波長の光を透過する側から、365nm以上の波長のLED光を照射し、当該基材又は成形用型を透過した光により前記組成物を硬化させる工程とを含む、
成形部材の製造方法。
【請求項9】
さらに、前記組成物を硬化させる工程で得られる硬化物を成形用型から離型する工程を含む、請求項に記載の成形部材の製造方法。
【請求項10】
前記成形用型の材質が、金属、フッ素系樹脂及びポリオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる材質である、請求項又は請求項に記載の成形部材の製造方法。
【請求項11】
得られる成形部材の耐熱性が170℃で熱間の強度が0.3MPa以上である、請求項~請求項10のいずれか1項に記載の成形部材の製造方法。
【請求項12】
得られる成形部材の厚みが0.5mm以上有する、請求項~請求項11いずれか1項に記載の成形部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光成形用LED硬化型組成物及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化型組成物は、コーティング剤、インキ、レジスト、接着剤及びシール剤等の種々の用途で使用され、光源として高圧水銀灯、メタルハライドランプ等の紫外線ランプが硬化システムとして広く用いられてきた。
【0003】
近年、これら紫外線ランプに変わる硬化システムとして、発光ダイオード(以下、「LED」という。)を光源とした紫外線照射装置が開発されている。
LED光源は、光源寿命が長く、省エネルギー性に優れるという長所を有するためであるが、従来の紫外線ランプ光源と比較して、組成物からなる塗膜の表面硬化性が大きく劣るという短所を有する。これは、広域波長の紫外線を発する紫外線ランプ光源と比較して、単色の光源であり、300nm以下の短波長領域の光を発しないことから、光重合開始剤から生成するラジカルの発生量が少ない為に、重合反応が酸素阻害の影響を受けやすいためである。
【0004】
このような背景の下、特に、空気雰囲気下で紫外線照射を行う、クリアコーティング剤等の塗料分野及びオフセットインキ等の印刷分野においては、表面硬化性が問題となることが多く、LED光源に対応する硬化膜の製造方法、それに用いる組成物が検討されている(特許文献1)。
【0005】
一方、組成物が空気と遮断された状態で紫外線照射を行う、レンズシート等のディスプレイ関連部材、熱線反射フィルム等の建材関連部材等の分野(特許文献2及び同3)においても、LED光源の前記長所を活かした検討がされている。レンズシートや熱線反射フィルム等の作製では、金型(スタンパ)等の成形用型を用いるため、組成物への空気中の酸素の拡散が低減し、LED硬化時の酸素重合阻害を低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-213965号公報
【文献】国際公開第2012/011434号
【文献】国際公開第2013/151119号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、レンズシートや熱線反射フィルム等の製造に用いられる組成物において、そのLED硬化性が不充分な場合には、成形用型による酸素重合阻害の低減効果のみでは、未反応成分が成形用型に付着することが問題となる。
本発明者らの検討によれば、前記付着によって、成形用型の繰返し使用に伴い、未反応成分が堆積するとともに、紫外線又は可視光線を照射する毎に当該未反応成分が硬化する結果、硬化物の離型性が徐々に悪化することが判明した。この場合、一定頻度で、成形用型を新品に交換する必要があるため生産性が劣るという問題ばかりでなく、コスト的にも大きな問題であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、LED硬化性及び成形用型の繰返し利用性を向上できる、光成形用LED硬化型組成物を提供することである。又、前記の光成形用LED硬化型組成物を用いた成形部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のモル吸光係数を有する光重合開始剤及びエチレン性不飽和基含有化合物を含む、LED硬化型組成物が、LED硬化性及び成形用型の繰返し利用性を向上できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明は以下の通りである。
〔1〕下記(A)成分及び(B)成分を含み、
(B)成分の合計100質量%中に、下記(B1)成分を30質量%以上70質量%以下で含み、下記(B2)成分を30質量%以上70質量%以下で含む、
む、光成形用LED硬化型組成物。
(A)成分:385nmにおけるモル吸光係数が20L・mol-1・cm-1以上の光重合開始剤
(B)成分:下記(B1)成分及び(B2)成分を含むエチレン性不飽和基含有化合物
(B1)成分;2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーであって、多価アルコール、有機多価イソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の反応物であるウレタン(メタ)アクリレート
(B2)成分;下記(B2-1)成分及び下記(B2-2)成分を含む1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(B2-1)成分:芳香族環及び1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、並びに1分子中に芳香族環、水酸基及び1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物から選択される1種以上
(B2-2)成分:水酸基及び1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、並びに1分子中に芳香族環、水酸基及び1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物から選択される1種以上
但し、(B2-1)成分及び(B2-2)成分の一方は、水酸基を有する化合物ではない。
〔2〕前記(A)成分が、α-アミノアルキルフェノン系化合物、アシルホスフィンオキサイド系化合物、及びゲルマニム系化合物からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の光成形用LED硬化型組成物。
〔3〕前記(A)成分の含有割合が、(B)成分100質量部に対して、0.05質量部以上10質量部未満である、〔1〕又は〔2〕に記載の光成形用LED硬化型組成物。
〕得られる組成物硬化物が、170℃で熱間の強度が0.3MPa以上を有する、〔1〕~〔〕のいずれか一に記載の光成形用LED硬化型組成物。
〕ディスプレイ関連部材に適用される、〔1〕~〔〕のいずれか一に記載の光成形
用LED硬化型組成物。
〕建材関連部材に適用される、〔1〕~〔〕のいずれか一に記載の光成形用LE
D硬化型組成物。
〕自動車関連部材に適用される、〔1〕~〔4〕のいずれか一に記載の光成形用LE
D硬化型組成物。
〕凹部が形成された成形用型の凹部に、〔1〕~〔〕のいずれか一に記載の光
成形用LED硬化型組成物を充填する工程と、
前記の充填された組成物と基材が密着するように成形用型を配置する工程と、
前記基材又は前記成形用型のうち、365nm以上の波長の光を透過する側から、365nm以上の波長のLED光を照射し、当該基材又は成形用型を透過した光により前記組成物を硬化させる工程とを含む、
成形部材の製造方法。
〕さらに、前記組成物を硬化させる工程で得られる硬化物を成形用型から離型する工程を含む、〔〕に記載の成形部材の製造方法。
10〕前記成形用型の材質が、金属、フッ素系樹脂及びポリオレフィン系樹脂からなる
群より選ばれる材質である、〔〕又は〔〕に記載の成形部材の製造方法
11〕得られる成形部材の耐熱性が170℃で熱間の強度が0.3MPa以上である、
〕~〔10〕のいずれか一に記載の成形部材の製造方法。
〔1〕得られる成形部材の厚みが0.5mm以上有する、〔〕~〔11〕いずれか
1項に記載の成形部材の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光成形用LED硬化型組成物によれば、LED硬化性及び成形用型の繰返し利用性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本明細書に開示される技術の各種実施形態を詳しく説明する。尚、本明細書においては、アクリレート及び/又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を(メタ)アクリロイル基と、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表す。
【0012】
本発明は、(A)成分(385nmにおけるモル吸光係数が20L・mol-1・cm-1以上の光重合開始剤)及び(B)成分(エチレン性不飽和基含有化合物)を含む、光成形用LED硬化型組成物(以下、単に「組成物」ともいう)に関する。
本発明において、光成形とは、クリアニス、インキ及びハードコート等の薄膜コーティングとは異なる用途であって、紫外線又は可視光線を発光するLEDを用いて、基材上で硬化型組成物を硬化させることを意味する。
LED硬化時の酸素重合阻害を低減させる目的で、金型(スタンパ)等の成形用型を用いて、組成物への空気中の酸素拡散を低減させて、紫外線又は可視光線を照射する方法が好ましく、その具体的な用途としては、ディスプレイ関連部材用として用いられるレンズシート用光硬化型組成物等、建材関連部材用として用いられる熱線反射フィルム用光硬化型組成物等、及び、自動車関連部材用として用いられる濾過エレメント用シール剤等が挙げられる。
【0013】
尚、本発明の組成物は、LED硬化性に優れるため、成形用型を用いる態様に限定されるものではなく、空気雰囲気下で当該組成物へ紫外線又は可視光線を照射する、電子基板用絶縁コート材、ポッティング材等の電子材料関連部材等の用途にも適用することができる。
【0014】
以下、(A)成分、(B)成分、その他成分、組成物、並びに、成形部材及びその製造方法について、詳細に説明する。
【0015】
1.(A)成分
(A)成分は、385nmにおけるモル吸光係数(以下、「ε385」という。)が20L・mol-1・cm-1以上の光重合開始剤である。
【0016】
(A)成分の具体例としては、ε385が20L・mol-1・cm-1以上の開裂型光重合開始剤及び水素引抜型光重合開始剤が挙げられる。
前記の開裂型光重合開始剤としては、ε385が20L・mol-1・cm-1以上のα-フェニルグリオキシル酸エステル系化合物(以下、「(a1)成分」という。)、α-アミノアルキルフェノン系化合物(以下、「(a2)成分」という。)、アシルホスフィンオキサイド系化合物(以下、「(a3)成分」という。)、オキシム系化合物(以下、「(a4)成分」という。)、及び、ε385が20L・mol-1・cm-1以上のゲルマニム系化合物(以下、「(a5)成分」という。)等が挙げられる。
【0017】
(a1)成分の具体例としては、オキシフェニル酢酸2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステル、及び、オキシフェニル酢酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物(ε385:39L・mol-1・cm-1)、ベンゾイル蟻酸メチル(ε385:21L・mol-1・cm-1)等が挙げられる。
【0018】
(a2)成分の具体例としては、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン(ε385:245L・mol-1・cm-1)等が挙げられる。
【0019】
(a3)成分の具体例としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(ε385:501L・mol-1・cm-1)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(ε385:745L・mol-1・cm-1)、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチル(ε385:185L・mol-1・cm-1)、LAMBSON製SPEEDCURE XKM等のその他アシルホスフィンオキサイド系化合物(ε385:20L・mol-1・cm-1以上)等が挙げられる。
【0020】
(a4)成分の具体例としては、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1,2-ジオン 2-(Oーベンゾイルオキシム)、(ε385:519L・mol-1・cm-1)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)―9H-カルバゾール-3-イル]―,1-(O-アセチルオキシム)(ε385:69L・mol-1・cm-1)等が挙げられる。
【0021】
(a5)成分の具体例としては、ビス(4-メトキシベンゾイル)ジエチルゲルマニウム(ε385:538L・mol-1・cm-1)等が挙げられる。尚、主な開裂物は、ベンゾイルラジカル及びゲルミルラジカルであると推測される。
【0022】
前記の水素引抜型光重合開始剤としては、ε385が20L・mol-1・cm-1以上のチオキサントン系化合物(以下、「(a6)成分」という。)、及び、(a6)以外の光重合開始剤(以下、「(a7)成分」という。)が挙げられる。
【0023】
(a6)成分の具体例としては、2,4-ジエチルチオキサントン(ε385:4016L・mol-1・cm-1)、2-イソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、及びイソプロポキシクロロチオキサントン等のその他チオキサントン系化合物(ε385:20L・mol-1・cm-1以上)等が挙げられる。
【0024】
(a7)成分の具体例としては、4-フェニルベンゾフェノン(ε385:23L・mol-1・cm-1)、1-〔4-(4-ベンゾイルフェニルサルファニル)フェニル〕-2-メチル-2-(4-メチルフェニルスルホニル)プロパン-1-オン(ε385:63L・mol-1・cm-1)、4-ベンゾイル 4'-メチルジフェニルスルフィド(ε385:66L・mol-1・cm-1)等が挙げられる。
【0025】
(A)成分としては、組成物のLED硬化性及び成形用型の繰返し利用性に優れる点で、開裂型光重合開始剤が好ましい。
【0026】
(A)成分のε385としては、組成物のLED硬化性及び成形用型の繰返し利用性に優れる点で、20L・mol-1・cm-1以上であり、50L・mol-1・cm-1以上が好ましく、100L・mol-1・cm-1以上がより好ましく、200L・mol-1・cm-1以上がさらに好ましく、300L・mol-1・cm-1以上が一層好ましく、500L・mol-1・cm-1以上がより一層好ましく、600L・mol-1・cm-1以上が特に好ましい。
(A)成分としては、組成物のLED硬化性及び成形用型の繰返し利用性に優れる点で、(a2)成分、(a3)成分、(a4)成分、及び(a5)成分が好ましく、(a2)成分、(a3)成分、及び(a5)成分がより好ましい。
【0027】
又、硬化物の膜厚を厚くする必要がある場合、例えば50μm以上とする必要がある時は、硬化物内部の硬化性を向上させる目的で、又、紫外線吸収剤や顔料を併用する場合は、組成物の硬化性を向上させる目的で、(a2)成分、(a3)成分及び(a6)成分から選ばれる複数種の化合物を併用することが好ましい。
【0028】
(A)成分の含有割合は、(A)成分のε385の値及び組成物の塗布厚さによって、適宜設定することができ、(B)成分合計量100質量部に対して0.05質量部以上10質量部未満が好ましく、0.05質量部以上9質量部以下がより好ましく、0.05質量部以上8質量部以下がさらに好ましく、0.05質量部以上7質量部以下一層好ましく、0.05質量部以上6質量部以下がより一層好ましく、0.05質量部以上5質量部以下が特に好ましい。(A)成分の割合を0.05質量部以上にすることで、組成物の光硬化性を良好にし、密着性に優れるものとすることができ、10質量部未満とすることで、硬化物の内部硬化性が良好にすることができ、基材との密着性を良好にすることができる。
【0029】
2.(B)成分
(B)成分は、エチレン性不飽和基含有化合物である。
(B)成分におけるエチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基及び(メタ)アリル基等が挙げられ、LED硬化性に優れる点で、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0030】
(B)成分における(メタ)アクリロイル基を有する化合物の例としては、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー(以下、「(B1)成分」という。)、分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、「(B2)成分」という。)、及び、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(但し、(B1)成分を除く。以下、「多官能(メタ)アクリレート」という。)等が挙げられる。
これらの中でも、硬化物の靱性等を向上できる点で、(B1)成分を含むことが好ましい。
以下、(B1)成分、(B2)成分及び多官能(メタ)アクリレートについて説明する。
尚、以下において、分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を、「単官能(メタ)アクリレート」ということもある。
【0031】
2-1.(B1)成分
(B1)成分は、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーである。
(B1)成分の分子量としては、重量平均分子量(以下、「Mw」という。)で600~30,000が好ましく、より好ましくは600~20,000である。
尚、本発明において、Mwとは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した分子量をポリスチレン換算した価を意味する。
(B1)成分としては、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも一つ含むことがより好ましい。
以下、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、及びポリエステル(メタ)アクリレートについて説明する。
【0032】
2-1-1.エポキシ(メタ)アクリレート
本発明におけるエポキシ(メタ)アクリレートとは、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加反応させた化合物であり、文献「UV・EB硬化材料」[(株)シーエムシー、1992年発行]の74~75頁に記載されているような化合物等が挙げられる。
の74~75頁に記載されているような化合物等が挙げられる。
【0033】
エポキシ樹脂としては、芳香族エポキシ樹脂及び脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。
前記芳香族エポキシ樹脂の具体例としては、レゾルシノールジグリシジルエーテル;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン又はそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル;フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;グリシジルフタルイミド;o-フタル酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。
これら以外にも、文献「エポキシ樹脂-最近の進歩-」(昭晃堂、1990年発行)2章や、文献「高分子加工」別冊9・第22巻増刊号 エポキシ樹脂[高分子刊行会、昭和48年発行]の4~6頁、9~16頁に記載されている様な化合物を挙げることができる。
【0034】
前記脂肪族エポキシ樹脂の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール及び1,6-ヘキサンジオール等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル;ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル;ネオペンチルグリコール、ジブロモネオペンチルグリコール及びそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン及びそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル、並びにペンタエリスリトール及びそのアルキレンオキサイド付加体のジ、トリ又はテトラグリジジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;水素添加ビスフェノールA及びそのアルキレンオキシド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル;テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエーテル;ハイドロキノンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
これら以外にも、前記文献「高分子加工」別冊エポキシ樹脂の3~6頁に記載されている化合物を挙げることができる。
【0035】
これら芳香族エポキシ樹脂及び脂肪族エポキシ樹以外にも、トリアジン核を骨格に持つエポキシ化合物、例えばTEPIC[日産化学(株)]、デナコールEX-310[ナガセ化成(株)]等が挙げられ、又前記文献「高分子加工」別冊エポキシ樹脂の289~296頁に記載されているような化合物等が挙げられる。
【0036】
エポキシ(メタ)アクリレートの市販品としては、リポキシSP-1507、SP-1509、SP-4010、VR-60、VR-90(以上、昭和電工(株)製)、デナコールアクリレートDA111、DA212、DA721(以上、ナガセケムテックス(株)製)、エポキシエステル40EM、70PA、80MFA、200PA、3000A(以上、共栄社化学(株)製)等が挙げられる。
【0037】
エポキシ(メタ)アクリレートの含有割合は、(B)成分の合計100質量%中に、硬化物の靱性等を向上できる点で、10質量%以上、100質量%以下含むことが好ましく、30質量%以上、95質量%以下含むことがより好ましく、50質量%以上、90質量%以下含むことが特に好ましい。
【0038】
2-1-2.ウレタン(メタ)アクリレート
ウレタン(メタ)アクリレートは、多価アルコール、有機多価イソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の反応物、並びに、有機多価イソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物(以下、「ウレタンアダクト」という。)を挙げることができる。
【0039】
前記多価アルコールの具体例としては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール、前記多価アルコールと前記多塩基酸との反応によって得られるポリエステルポリオール、前記多価アルコールと前記多塩基酸とε-カプロラクトンとの反応によって得られるカプロラクトンポリオール、及びポリカーボネートポリオール(例えば、1,6-ヘキサンジオールとジフェニルカーボネートとの反応によって得られるポリカーボネートポリオール等)等が挙げられる。
【0040】
前記有機多価イソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート及びジシクロペンタニルジイソシアネート等のジイソシアネート;
並びにヘキサメチレンジイソシアネート3量体及びイソホロンジイソシアネート3量体等の3個以上のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネートが挙げられる。
【0041】
前記水酸基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート及びヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノ(メタ)アクリレート;
並びにトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ又はトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのジ又はトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールのジ、トリ、テトラ又はペンタ(メタ)アクリレート等の水酸基含有多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
ウレタン(メタ)アクリレートは、前記化合物を使用して常法により得られたものが使用できる。
【0043】
多価アルコール、有機多価イソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の反応物の製造方法としては、具体的には、ジブチルスズジラウレート等の付加触媒存在下、使用する有機イソシアネートとポリオール成分を加熱撹拌し付加反応せしめ、さらにヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを添加し、加熱撹拌し付加反応せしめることにより得られる。
【0044】
ウレタンアダクトの製造方法としては、ジブチルスズジラウレート等の付加触媒存在下、使用する有機イソシアネートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを加熱撹拌し付加反応せしめることにより得られる。
【0045】
これら以外のウレタンポリ(メタ)アクリレートの例としては、前記文献「UV・EB硬化材料」の70~74頁に記載されているような化合物等が挙げられる。
【0046】
ウレタン(メタ)アクリレートの市販品としては、RX8-3-6、RX43-21(以上、亜細亜工業(株)製)紫光UV-3000B、UV-3200B(以上、日本合成化学工業(株)製)、UN-7600、9200(以上、根上工業(株)製)、アロニックス(登録商標)M-1100、M-1200(以上、東亞合成(株)製)等が挙げられる。
【0047】
ウレタン(メタ)アクリレートの含有割合は、(B)成分の合計100質量%中に、硬化物の靱性等を向上できる点で、10質量%以上、100質量%以下含むことが好ましく、20質量%以上、95質量%以下含むことがより好ましく、30質量%以上、90質量%以下含むことが特に好ましい。
【0048】
2-1-3.ポリエステル(メタ)アクリレート
ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合物等が挙げられる。
【0049】
ここで、ポリエステルポリオールとしては、ポリオールとカルボン酸又はその無水物との反応物等が挙げられる。
ポリオールの具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリブチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトール等の低分子量ポリオール、並びにこれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
カルボン酸又はその無水物の具体例としては、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸及びトリメリット酸等の二塩基酸又はその無水物等が挙げられる。
これら以外のポリエステルポリ(メタ)アクリレートとしては、前記文献「UV・EB硬化材料」の74~76頁に記載されているような化合物等が挙げられる。
上記において、アルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が好ましい。
ポリエステル(メタ)アクリレートは、デンドリマー型の(メタ)アクリレートであっても良い。
【0050】
ポリエステル(メタ)アクリレートの市販品としては、アロニックス(登録商標)M-6100、M-6200、M-6250、M-6500、M-7100、M-7300K,M-8030、M-8060、M-8100、M-8530、M-8560、9050(以上、東亞合成(株)製)等が挙げられる。
【0051】
ポリエステル(メタ)アクリレートの含有割合は、(B)成分の合計100質量%中に、硬化物の靱性等を向上できる点で、10質量%以上、100質量%以下含むことが好ましく、20質量%以上、95質量%以下含むことがより好ましく、30質量%以上、90質量%以下含むことが特に好ましい。
【0052】
2-2.(B2)成分
(B2)成分は、分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。本発明の組成物は、塗布性を向上させる目的で、(B2)成分を含んでも良い。
(B2)成分の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びイソボルニル(メタ)アクリレート等の脂肪族アルキル(メタ)アクリレート;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート及びジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル(メタ)アクリレート;
ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、p-クミルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート及びノニルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート等の芳香族単官能(メタ)アクリレート;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ-ト、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ-ト、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメチロールモノ(メタ)アクリレート、ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、及び2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有単官能(メタ)アクリレート;
2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、及び2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸等の水酸基及び芳香族環を有する単官能(メタ)アクリレート;
2-メトキシエチル(メタ)アクリレート及びエトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;
N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド及びN-(メタ)アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタルイミド等のイミド基含有(メタ)アクリレート;並びに
3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン及び3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記以外の例としては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(2-エチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-イソブチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(1,4-ジオキサスピロ[4,5]デカン-2-イル)メチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、アリル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、及び2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート等が挙げられる。
前記アルキレンオキサイド付加物において、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0053】
(B2)成分としては、前記した(メタ)アクリレートの中でも、成形用型の繰り返し利用性により優れるものとなる理由で、芳香族環を有する単官能(メタ)アクリレートが好ましい。
芳香族環を有する単官能(メタ)アクリレートの具体例としては、前記で例示した芳香族単官能(メタ)アクリレート、及び水酸基及び芳香族環を有する単官能(メタ)アクリレートで挙げた化合物と同様の化合物を挙げることができる。
又、硬化物に耐油性が要求される用途においては、(B2)成分として、水酸基を有する単官能(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
水酸基を有する単官能(メタ)アクリレートの例としては、水酸基含有単官能(メタ)アクリレート、並びに水酸基及び芳香族環を有する単官能(メタ)アクリレートで挙げた化合物と同様の化合物を挙げることができる。
【0054】
(B2)成分の含有割合は、本発明の組成物の塗布性の観点から、当該組成物の粘度を考慮して適宜設定することができ、(B)成分の合計100質量%中に、10質量%以上、90質量%以下が好ましく、20質量%以上、80質量%以下がより好ましく、30質量%以上、70質量%以下がさらに好ましい。
【0055】
2-3.多官能(メタ)アクリレート
多官能(メタ)アクリレートは、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、前記の(B1)成分を除く化合物である。本発明の組成物は、LED硬化性や塗布性を向上させる目的で、多官能(メタ)アクリレートを含んでも良い。
【0056】
多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート及び1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族ジオールのジ(メタ)アクリレート;
シクロヘキサンジメチロールジ(メタ)アクリレート及びトリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等の脂環族ジオールのジ(メタ)アクリレート;
ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;
ネオペンチルグリコールとヒドロキシピバリン酸と(メタ)アクリル酸のエステル化反応生成物;
ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート等のビスフェノール系化合物のアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート;
水素添加ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート等の水素添加ビスフェノール系化合物のジ(メタ)アクリレート;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ、トリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ又はヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリ(メタ)アクリレート;
トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールアルキレンオキサイド付加物のトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールアルキレンオキサイド付加物のペンタ又はヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールアルキレンオキサイド付加物のポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記アルキレンオキサイド付加物において、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0057】
又、多官能(メタ)アクリレートとしては、多官能(メタ)アクリレートと1級及び/又は2級アミン化合物のマイケル付加物である3級アミノ基を有する(メタ)アクリレート(いわゆる、アミン変性(メタ)アクリレート)を含んでも良い。
【0058】
多官能(メタ)アクリレートの含有割合は、本発明の組成物の塗布性の観点から、当該組成物の粘度を考慮して適宜設定することができ、(B)成分を100質量部としたとき、10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、30質量部以上がさらに好ましく、又、90質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、70質量部以下がさらに好ましい。
【0059】
2-4.好ましい組み合わせ
(B)成分の好ましい組み合わせとしては、(B1)成分及び(B2)成分の組み合わせである。
(B1)成分及び(B2)成分の含有割合としては、本発明の組成物の塗布性の観点から、当該組成物の粘度を考慮して適宜設定することができ、(B)成分の合計100質量%中に、
(B1)成分10質量%以上、90質量%以下、及び(B2)成分10質量%以上、90質量%以下含むことが好ましく、
(B1)成分20質量%以上、80質量%以下、及び(B2)成分20質量%以上、80質量%以下含むことがより好ましく、
(B1)成分30質量%以上、70質量%以下、及び(B2)成分30質量%以上、70質量%以下含むことがさらに好ましい。
【0060】
(B)成分のより好ましい組み合わせとしては、(B1)成分及び(B2)成分を含み、(B2)成分として、芳香族環を有する単官能(メタ)アクリレートを含むものである。
当該(B)成分によれば、成形用型の繰り返し利用性により優れるものとなるうえ、得られる硬化物が耐熱性に優れるものとなる。
従来の成形部材が使用される用途、特に前記した好ましい用途であるディスプレイ関連部材、建材関連部材及び自動車関連部材で使用される成形部材においては、当該耐熱性が要求される場合があった。例えば、ディスプレイ関連部材では、積層体端部の封止剤、及びフレキシブルプリント配線板との接着部分、自動車関連部材では、濾過エレメント用のシール剤、及びその他の用途では、各種産業用のガスケット等の用途においては、成形部材に耐熱性が要求される場合があった。
しかしながら、従来の硬化型組成物では、耐熱性が満足できないものであった。
本発明において、(B)成分として上記組み合わせの(メタ)アクリレートを使用したものは、成形用型の繰り返し利用性が優れるのみならず、得られる硬化物が耐熱性に優れるものにもなるのである。
(B2)成分中の芳香族環を有する単官能(メタ)アクリレートの割合としては、(B2)成分合計量100質量%を基準として、芳香族環を有する単官能(メタ)アクリレート10~100質量%が好ましく、より好ましくは20~90質量%である。
【0061】
さらに、別の(B)成分の好ましい組み合わせとしては、(B1)成分及び(B2)成分として、水酸基を有する単官能(メタ)アクリレートを含むものが挙げられる。
当該(B)成分によれば、成形用型の繰り返し利用性により優れるものとなるうえ、得られる硬化物が耐油性に優れるものとなる。
従来の成形部材が使用される用途、特に前記した好ましい用途であるディスプレイ関連部材、建材関連部材及び自動車関連部材で使用される成形部材においては、油性成分と接触する場合があり、この場合は耐油性が要求される場合があった。例えば、自動車関連部材では、濾過エレメント用のシール剤、及びその他の用途では、各種産業用のガスケット等の用途においては、成形部材に耐油性が要求される場合があった。
しかしながら、従来の硬化型組成物では、耐油性が満足できないものであった。
本発明において、(B)成分として上記組み合わせの(メタ)アクリレートを使用したものは、成形用型の繰り返し利用性が優れるのみならず、得られる硬化物が耐油性に優れるものにもなるのである。
(B2)成分中の水酸基を有する単官能(メタ)アクリレートの割合としては、(B2)成分合計量100質量%を基準として、水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート10~100質量%が好ましく、より好ましくは20~90質量%である。
【0062】
さらに、上記の(B)成分のより好ましい組み合わせとしては、(B1)成分及び(B2)成分を含み、(B2)成分として、芳香族環を有する単官能(メタ)アクリレート、及び水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート含むものが挙げられる。
当該(B)成分によれば、成形用型の繰り返し利用性により優れるものとなるうえ、得られる硬化物が耐熱性及び耐油性に優れるものとなる。
(B2)成分中の芳香族環を有する単官能(メタ)アクリレート、及び水酸基を有する単官能(メタ)アクリレートの割合としては、(B2)成分合計量100質量%を基準として、芳香族環を有する単官能(メタ)アクリレート10~90質量%、及び水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート10~90質量%が好ましく、より好ましくは、芳香族環を有する単官能(メタ)アクリレート20~80質量%、及び水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート20~80質量%である。
尚、(B2)成分として、芳香族環を有する単官能(メタ)アクリレート及び水酸基を有する単官能(メタ)アクリレートを併用する場合において、1分子中に芳香族環及び水酸基を有する単官能(メタ)アクリレートを単独で使用することもできる。
この場合において、(B2)成分中の1分子中に芳香族環及び水酸基を有する単官能(メタ)アクリレートの割合としては、(B2)成分合計量100質量%を基準として、芳香族環を有する単官能(メタ)アクリレート10~100質量%が好ましく、より好ましくは20~90質量%である。
【0063】
3.その他成分
本発明の組成物は、前記(A)成分及び(B)成分を必須成分とするものであるが、目的に応じて、種々のその他成分を配合することができる。
【0064】
その他成分としては、本発明の効果を損なわない限り、熱重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、非反応性ポリマー、フィラー、金属微粒子、金属酸化物微粒子、イオントラップ剤、消泡剤、レベリング剤、色素及び顔料等が挙げられる。
【0065】
以下、その他成分のうち、熱重合開始剤について説明する。
本発明の組成物には、光硬化させた後に、さらに反応率を向上させる目的で、熱重合開始剤を配合しても良い。
熱重合開始剤としては、種々の化合物を使用することができ、有機過酸化物及びアゾ系開始剤が好ましい。
有機過酸化物の具体例としては、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)2-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(4,4-ジ-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(m-トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、α、α‘-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t-ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ヘキシルハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
アゾ系化合物の具体例としては、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾジ-t-オクタン、アゾジ-t-ブタン等が挙げられる。
これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。又、有機過酸化物は還元剤と組み合わせることによりレドックス反応とすることも可能である。
【0066】
熱重合開始剤の配合割合としては、(B)成分合計量100質量部に対して、10質量部以下が好ましい。
【0067】
4.光成形用LED硬化型組成物
本発明の光成形用LED硬化型組成物は、前記(A)成分及び(B)成分を含む。
【0068】
本発明の組成物の製造方法としては、常法に従えば良く、前記(A)成分及び(B)成分、並びに、必要に応じてさらにその他成分を、常法に従い攪拌・混合することにより製造することができる。この場合、必要に応じて加熱又は加温することができる。
【0069】
本発明の組成物の粘度としては、成形部材の製造工程で使用可能な塗布性、即ち平滑性に優れた塗布面を得るために適宜設定すれば良く、技術常識に基づいて当業者であれば容易に設定することができる。
【0070】
本発明の組成物の使用方法としては、常法に従えば良く、目的に応じて種々の使用方法を採用することができる。
【0071】
本発明の組成物の硬化物の耐熱性としては、170℃で熱間強度が0.3MPa以上であるものが好ましく、より好ましくは0.5~50MPaである。
本発明において熱間強度としては、170℃環境下での引張破断強度を意味する。
尚、破断強度測定における引張試験の条件は、得られた硬化物を厚さt1mmの3号型ダンベル状に切り出し、170℃下で5分静置してから、チャック間距離60mm、100mm/minで実施した値である。
当該好ましい耐熱性とするためには、前記した(B)成分として、(B1)成分及び(B2)成分を含み、(B2)成分として芳香族環を有する単官能(メタ)アクリレートを含むものが好ましい。
【0072】
5.成形部材及びその製造方法
本発明の光成形用LED硬化型組成物は、成形部材の製造に好ましく使用できる。
以下、成形部材及びその製造方法について説明する。
【0073】
5-1.成形部材
本発明の光成形用LED硬化型組成物から製造される成形部材は、基材及び本発明の組成物の硬化物から構成される。
尚、本発明の成形部材は、成形用型として離型性を有しない型(以下、「非離型性型」という。)を用いて、基材、本発明の組成物の硬化物及び非離型性型から構成される成形部材であっても良い。
【0074】
本発明の成形部材の耐熱性としては、前記硬化物の耐熱性であったとおり、170℃で熱間強度が0.3MPaであるものが好ましく、より好ましくは0.5~50MPaである。
【0075】
本発明の組成物の硬化物が形成される基材としては、後記する離型処理された材料及び剥離性を有する表面未処理材料(以下、まとめて「離型材」という。)以外のプラスチック、ガラス、及び紙等が挙げられる。
離型材以外のプラスチックの具体例としては、ポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース及びジアセチルセルロース等のセルロースアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルサルホン、ノルボルネン等の環状オレフィンをモノマーとする環状ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
ガラスの具体例としては、ソーダガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が挙げられる。
紙の具体例としては、上質紙、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙、合成紙及び濾紙等が挙げられる。
基材の形態としては、フィルム状、シート状及び板状等が挙げられ、濾過エレメント用途の場合、菊花状の円筒形であっても良い。
【0076】
成形部材の厚みとしては、目的に応じて適宜設定すれば良く、10μm~2mmが好ましく、20μm~2mmがより好ましく、30μm~2mmがさらに好ましく、40μm~2mmが一層好ましく、50μm~2mmがより一層好ましく、100μm~2mmがさらに一層好ましく、200μm~2mmが特に好ましい。
特に、後記する好ましい用途であるディスプレイ関連部材、建材関連部材及び自動車関連部材で使用される成形部材においては、厚みが0.5mm以上有するものが好ましく、0.5mm以上、2mm以下がより好ましい。
【0077】
成形部材の用途としては、レンズシート等のディスプレイ関連部材、熱線反射フィルム等の建材関連部材、及び、濾過エレメント等の自動車関連部材等が挙げられる。得られた成形部材を前記用途に適用する場合には、成形用型を離型することが好ましい。
【0078】
5-2.成形部材の製造方法
本発明の成形部材の製造方法としては、常法に従えば良く、目的に応じて種々の使用方法を採用することができる。
具体的には、以下の態様1~同4が好ましい。
【0079】
<態様1>
凹部が形成された成形用型の凹部に、本発明の組成物を充填する工程と、
前記の充填された組成物と基材が密着するように成形用型を配置する工程と、
基材又は前記成形用型のうち、365nm以上の波長の光を透過する側から、365nm以上の波長のLED光を照射し、当該基材又は成形用型を透過した光により前記組成物を硬化させる工程とを含む、
成形部材の製造方法。
<態様2>
前記態様1に記載の工程に加え、さらに、前記組成物を硬化させる工程で得られる硬化物を成形用型から離型する工程を含む、成形部材の製造方法。
【0080】
<態様3>
基材に、本発明の組成物を塗布する工程と、
前記の塗布された組成物と凹部が形成された成形用型の凹部が密着するように成形用型を配置する工程と、
基材又は前記成形用型のうち、365nm以上の波長の光を透過する側から、365nm以上の波長のLED光を照射し、当該基材又は成形用型を透過した光により前記組成物を硬化させる工程とを含む、
成形部材の製造方法。
<態様4>
前記態様3に記載の工程に加え、さらに、前記組成物を硬化させる工程で得られる硬化物を成形用型から離型する工程を含む、成形部材の製造方法。
【0081】
5-2-1.成形型
成形用型〔金型(スタンパ)ともいう。〕としては、剥離可能な型及び非離型性型のいずれも使用することができる。
前記態様1~同4では、成形用型として、凹部を有する成形型を使用し、型枠の凹部の所望のサイズに調整するだけで、容易に種々のサイズ、形状に合った硬化物を作製することができる。
凹部を有する成形用型〔金型(スタンパ)ともいう。〕としては、剥離可能な型及び非離型性型のいずれも使用することができ、凹部を有する型枠の凹部の所望のサイズに調整するだけで、容易に種々のサイズ、形状に合った硬化物を作製することができる。
【0082】
剥離可能な型を構成する材料としては、離型材(離型処理された材料及び剥離性を有する表面未処理材料)等が挙げられる。
離型材の材質としては、金属、フッ素系樹脂及びポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。
金属の具体例としては、真鍮及びニッケル等が挙げられる。
フッ素系樹脂の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化エチレンプロピレン共重合樹脂、パーフルオロアルコキシ樹脂、フッ化処理エポキシ樹脂等が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂等の具体例としては、表面未処理シクロオレフィンポリマー、表面未処理ポリプロピレン及び表面未処理ポリエチレン等が挙げられる。
これら以外にも、シリコーン処理ポリエチレンテレフタレート、表面未処理ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
これらの中でも、本発明の奏する効果が特に大きい点で、ポリオレフィン系樹脂及びフッ素系樹脂が、特に好ましい。
離型材の形態としては、目的とする成形部材の形状を形成できる形状であり、凸部を有するものが好ましく、フィルム状、シート状及び板状等であっても良い。
【0083】
非離型性型としては、離型材以外のプラスチック、ガラス、及び紙等が挙げられ、これらの具体例は、前記基材で例示したものと同様のものが使用できる。
非離型性型の形態としては、フィルム状、シート状及び板状等が挙げられ、濾過エレメント用途の場合、菊花状の円筒形であっても良い。
尚、非離型性基材が難接着性の材質である場合、本発明の組成物を塗布する前に、離型性基材の表面に活性化処理を行うことができる。表面活性化処理としてはプラズマ処理、コロナ放電処理、薬液処理、粗面化処理及びエッチング処理、火炎処理等が挙げられ、これらを併用しても良い。
【0084】
5-2-2.塗布方法
本発明の組成物の成形用型又は基材に対する塗布方法は、従来知られている方法に従えばよく、ナチュラルコーター、ナイフベルトコーター、フローティングナイフ、ナイフオーバーロール、ナイフオンブランケット、スプレー、ディスペンサー、ディップ、キスロール、スクイーズロール、リバースロール、エアブレード、カーテンフローコーター、コンマコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ダイコーター等の種々の方法が挙げられる。
【0085】
又、本発明の組成物の成形用型又は基材に対する塗布厚さは、使用する成形用型、基材及び用途等に応じて選択すれば良いが、10μm~2mmが好ましく、20μm~2mmがより好ましく、30μm~2mmがさらに好ましく、40μm~2mmが一層好ましく、50μm~2mmがより一層好ましく、100μm~2mmがさらに一層好ましく、200μm~2mmが特に好ましい。
前記した好ましい用途であるディスプレイ関連部材、建材関連部材及び自動車関連部材で使用される成形部材においては、塗布厚さが0.5mm以上有するものが好ましく、0.5mm以上、2mm以下がより好ましい。
【0086】
5-2-3.LED
本発明の組成物を硬化させる場合のLED光源としては、可視光線又は紫外線を発光するLEDであり、発光波長としては、405、395、385、365nm等、種々の波長が挙げられる。
LED光源として一種のみ使用しても、二種以上併用しても良い。
照射量としては、塗膜の厚みや照度等により異なるが、LED光源の発光波長や配合組成に応じて適宜設定すれば良い。
【0087】
又、LED光源に加えて、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電ランプ、カーボンアーク灯、電子線照射装置等のその他の活性エネルギー線照射装置を併用しても良い。
【0088】
5-2-4.離型
前記した方法により組成物を硬化させ、得られた硬化物を成形用型から離型することより、成形部材を得ることができる。
得られた成形部材は、前記した好ましい用途に使用することができる。
【実施例
【0089】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は、これらの例によって限定されるものではない。
【0090】
1.実施例1~21、比較例1~5
1)硬化型組成物の製造
下記表1~表3に示す化合物を表1~表3に示す割合で撹拌・混合し、硬化型組成物を製造した。
得られた表1~表3の硬化型組成物を使用し、後記する評価を行った。それらの結果を表1~表3に示す。尚、表1~表3において、(A)成分及び(A)’成分の括弧内の数値は、ε385(単位:L・mol-1・cm-1)を意味する。
【0091】
尚、表1~表3の光重合開始剤及び(B)成分における数字は質量部を意味する。
又、表1~表3における略号は下記を意味する。
【0092】
<光重合開始剤>
◆(A)成分
・MBF:ベンゾイル蟻酸メチル(ε385:21L・mol-1・cm-1)、ランブソンジャパン(株)製SPEEDCURE MBF
・OXE02:エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)―9H-カルバゾール-3-イル]―,1-(O-アセチルオキシム)(ε385:69L・mol-1・cm-1)、BASFジャパン(株)製IRGACURE OXE02
・TPOL:フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチル(ε385:185L・mol-1・cm-1)、BASFジャパン(株)製TPO-L
・I369:2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン(ε385:245L・mol-1・cm-1)、BASFジャパン(株)製IRGACURE369
・TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(ε385:501L・mol-1・cm-1)、BASFジャパン(株)製ルシリンTPO
・OXE01:1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1,2-ジオン 2-(Oーベンゾイルオキシム)、(3ε385:519L・mol-1・cm-1)、BASFジャパン(株)製IRGACURE OXE01
・IVO:ビス(4-メトキシベンゾイル)ジエチルゲルマニウム(ε385:538L・mol-1・cm-1)、IVOCLAR VIVADENT製IVOCERIN
・I819:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(ε385:745L・mol-1・cm-1)、BASFジャパン(株)製IRGACURE819
・DETX:2,4-ジエチルチオキサントン(ε385:4016L・mol-1・cm-1)、BASFジャパン(株)製DETX
【0093】
◆(A)’成分〔(A)成分以外の光重合開始剤〕
・I184:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(ε385:0.8L・mol-1・cm-1)、BASFジャパン(株)製IRGACURE184
・I907::2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(ε385:14L・mol-1・cm-1)、BASFジャパン(株)製IRGACURE907
【0094】
<(B)成分>
◆(B1)成分
・SP1509:2官能エポキシ(メタ)アクリレート(主鎖:ビスフェノールA)、昭和電工(株)製リポキシSP-1509、Mw:500
・DA212:2官能エポキシ(メタ)アクリレート(主鎖:1,6-ヘキサンジオール)、ナガセケムテックス(株)製デナコールアクリレートDA-212
・RX43:2官能ウレタン(メタ)アクリレート(主鎖:ポリエステル系)、亜細亜工業(株)製RX43-21、Mw:8,700
・M8100:多官能ポリエステル(メタ)アクリレート、東亞合成(株)製アロニックス(登録商標)M-8100(但し、残存トルエン6質量%を減圧留去して使用)、Mw:1,500
【0095】
◆多官能(メタ)アクリレート
・V230:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、大阪有機化学工業(株)製ビスコート#230
【0096】
2)評価
(1)硬化性の評価(実施例1~21、比較例1~4)
本評価では、成形用型として、成形用型M1(材質:ポリテトラフルオロエチレン製、型サイズ:縦50mm×横50mm×厚さ10mm、溝:幅4mm×深さ1mmの角状、溝間の距離:2mm、溝の数:8本)、又は、成形用型M2(材質:ポリプロピレン製、型サイズ:縦50mm×横50mm×厚さ10mm、溝:幅4mm×深さ1mmの角状、溝間の距離:2mm、溝の数:8本)を用いた。
1.で得られた硬化型組成物を、粘度に応じて適宜加温した上で、前記の成形用型M1又はM2の凹部(溝)に充填し、100μm厚の易接着PETフィルム〔東洋紡(株)製コスモシャインA4300、サイズ:縦100mm×横100mm、〕に硬化型組成物が接触するように押し当て、25℃の状態とした。
次いで、センテック(株)製UV-LED照射装置(発光波長:385nm、成形用型越しの値としてピーク強度:240mW/cm2(ヘレウス(株)製UV POWER PUCKのUV-A領域の測定値))を用いて、ランプ高さ8mm、3mm/secのコンベアを1回通過することにより、前記成形用型側から、成形用型越しの値として照射エネルギー:1,000mJ/cm2(ヘレウス(株)製UV POWER PUCKのUV-A領域の測定値)の紫外線照射を行い、硬化物を得た。
前記で得られた硬化物を成形用型M1又はM2から離型し、当該硬化物の表面状態を指標として、組成物の硬化性を以下の3水準で判定した。それらの結果を表1~表3に示す。
〇:タックフリー
△:ややタックがある状態
×:未硬化状態
【0097】
(2)硬化性の評価(比較例5)
光源としてアイグラフィックス社製メタルハライドランプを用い、ランプ高さ21cm、4.9m/minのコンベア((成形用型越しの値としてピーク強度:240mW/cm2、1パスあたりの照射エネルギー:500mJ/cm2、いずれもヘレウス(株)製UV POWER PUCKのUV-A領域の測定値)を2回通過させて、積算照射エネルギーを1,000mJ/cm2の紫外線照射を行った以外は、実施例1~21及び比較例1~4と同様にして、硬化性を評価した。その結果を表1~表3に示す。
【0098】
(3)成形用型の繰返し利用性の評価
(1)で硬化物を離型した後の成形用型を用いて、(1)と同様の条件で硬化を行った後、硬化物を離型することができた(すなわち、成形用型を再利用できた)場合には、「成形用型の繰返し利用性」を1回とカウントした。さらに、続けて同様の実験を繰返し、硬化物を離型できなくなるまで、「成形用型の繰返し利用性」をカウントした。それらの結果を表1~表3に示す。
尚、「成形用型の繰返し利用性」が20回となった場合は、さらなる硬化実験を行うことなく、≧20回と記載した。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
【表3】
【0102】
3)評価結果
実施例1~21の結果から明らかなように、本発明の光成形用LED硬化型組成物を用いた場合、LED硬化性及び成形用型の繰返し利用性が実用レベルであった。
これらの中でも、(A)成分であるε385が200L・mol-1・cm-1以上の光重合開始剤を含む実施例4~21の組成物は、成形用型の繰返し利用性が特に優れた。
又、組成物の成分を同一として、ポリプロピレン製成形用型を用いた条件において、光源をメタルハイドランプからLEDに変更した場合(実施例21と比較例5の対比)、当該成形用型の繰返し利用性を飛躍的に向上できることが分かった。
これに対して、ε385が20L・mol-1・cm-1未満の光重合開始剤を含む比較例1~4の組成物は、LED硬化性に劣るため、成形用型への未反応成分の堆積及びその硬化により、成形用型の繰返し利用性が悪く、実用レベルにはほど遠かった。
【0103】
2.実施例22~27
1)硬化型組成物の製造
下記表4に示す化合物を表4に示す割合で撹拌・混合し、硬化型組成物を製造した。
得られた表4の硬化型組成物を使用し、後記する評価を行った。それらの結果を表4に示す。尚、表4において、(A)成分の括弧内の数値は、ε385(単位:L・mol-1・cm-1)、を意味する。
【0104】
尚、表4の(A)成分及び(B)成分における数字は質量部を意味する。
又、表4における略号は、前記で定義したもの以外は下記を意味する。
【0105】
<(B)成分>
◆(B2)成分
・M110:パラクミルフェノールエチレンオキサイド付加物(1.2モル付加物)アクリレート、東亞合成(株)製アロニックス(登録商標)M-110
・BzA:ベンジルアクリレート、大阪有機工業(株)製ビスコート#160
・MPE(N):2-アクリロイルオキシエチル-2-ヒロドキシエチル-フタル酸、共栄社化学(株)製ライトアクリレートHOA-MPE(N)
・HBA:4-ヒロドキシブチルアクリレート、大阪有機化学工業(株)製4-HBA
・HEA:2-ヒロドキシエチルアクリレート、東亞合成(株)製アクリックスHEA
・LA:ラウリルアクリレート、共栄社化学(株)製ライトアクリレートL-A
【0106】
2)評価
(1)硬化性の評価
前記実施例1~21、比較例1~4の(1)と同様の方法に従い評価した。
(2)成形用型の繰返し利用性の評価
前記実施例1~21、比較例1~5の(3)と同様の方法に従い評価した。
【0107】
(3)熱間強度の評価
得られた組成物を使用し、厚さ10mmポリテトラフルオロエチレン製の板に、型サイズ:縦100mm×横100mm×厚さ1mmとなる凹上の窪みを有する成形用型を用いた以外は、実施例1~21、比較例1~4と同様に紫外線照射行い、硬化物を得た。
得られた硬化物を厚さt1mmの3号型ダンベル状に切り出し、170℃下で5分静置してから、チャック間距離60mm、100mm/minで引張試験を実施した。破断時の応力を熱間強度とした。
【0108】
(4)耐油性の評価
得られた組成物を使用し、実施例1~21、比較例1~4と同じ方法で硬化物を作製し、試験片とした。
得られた試験片をJIS K 6258:2003で規定される潤滑油3(IRM903)に浸漬し、温度150℃で100時間放置した。その後、試験片を上記潤滑油より取り出し、外観を目視で観察し、以下の2水準で評価した。
○:変化なし。 ×:クラックが発生した。
【0109】
【表4】
【0110】
3)評価結果
実施例22~27の結果から明らかなように、本発明の光成形用LED硬化型組成物を用いた場合、LED硬化性及び成形用型の繰返し利用性が実用レベルであった。
これらの実施例では、(A)成分として、ε385が200L・mol-1・cm-1以上の光重合開始剤を含んでおり、成形用型の繰返し利用性が特に優れた。
又、実施例23、25~27の組成物は、(B)成分が、(B1)成分及び(B2)成分を含み、(B2)成分として芳香族環を有する単官能アクリレートを含む組成物であり、(B)成分が、(B1)成分及び(B2)成分を含み、(B2)成分として長鎖アルキル基を有する単官能アクリレートを含む実施例22の組成物に対して、さらに耐熱性にも優れるものであった。
又、実施例24~27の組成物は、(B)成分が、(B1)成分及び(B2)成分を含み、(B2)成分として水酸基を有する単官能アクリレートを含む組成物であり、(B)成分が、(B1)成分と長鎖アルキル基を有する単官能アクリレートを併用した実施例22の組成物に対して、さらに耐油性にも優れるものであった。
特に、実施例25及び26の組成物は、(B)成分が、(B1)成分及び(B2)成分を含み、(B2)成分として、芳香族環を有する単官能アクリレート、及び水酸基を有する単官能アクリレートを含む組成物で、実施例27の組成物は、(B)成分が、(B1)成分及び(B2)成分を含み、(B2)成分として、に芳香族環及び水酸基を有する単官能(メタ)アクリレートトを含む組成物であり、これら実施例の組成物は、耐熱性及び耐油性にも優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の光成形用LED硬化型組成物は、LED硬化性及び成形用型の繰返し利用性に優れる。このため、ディスプレイ関連部材であるレンズシート等、建材関連部材である熱線反射フィルム等、及び、自動車関連部材である濾過エレメント等の種々の用途に適用することが可能である。