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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】光接続部品
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/36 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
G02B6/36
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020534670
(86)(22)【出願日】2019-07-30
(86)【国際出願番号】 JP2019029823
(87)【国際公開番号】W WO2020027125
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2018144677
(32)【優先日】2018-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 哲也
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/170689(WO,A1)
【文献】特開2016-090614(JP,A)
【文献】特開2011-048020(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0156990(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0013870(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/36-6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、前記第1面と反対の第2面と、前記第1面から前記第2面に貫通する複数の第1の貫通孔と、を有し、紫外線を透過可能なガラス材料で形成されたガラス板と、
前記ガラス板の前記第1面に固定され、前記複数の第1の貫通孔の中心軸それぞれと同軸上に中心軸を有する複数の第2の貫通孔を有する樹脂フェルールと、
ガラスファイバと該ガラスファイバの外周を覆う被覆樹脂とを含む複数の光ファイバとを備え、
前記複数の光ファイバそれぞれの先端において前記被覆樹脂から露出した前記ガラスファイバが、前記複数の第1の貫通孔および前記複数の第2の貫通孔に収容されており、
前記複数の第1の貫通孔それぞれと前記複数の第2の貫通孔それぞれとは間隔をあけて対向し、
前記ガラス板と前記樹脂フェルールとの間の前記複数本のガラスファイバそれぞれに接する領域に、空気層が存在する、光接続部品。
【請求項2】
前記複数の第1の貫通孔の開口と、前記複数の第2の貫通孔の開口とが、離れている、請求項1に記載の光接続部品。
【請求項3】
前記ガラスファイバのうち前記ガラス板と前記樹脂フェルールの間に配置された部分に掛かる引張応力が2000MPa以下である、請求項1または請求項2に記載の光接続部品。
【請求項4】
前記複数の第1の貫通孔の前記開口および前記複数の第2の貫通孔の前記開口が、前記ガラスファイバの外径よりも大きい、請求項2に記載の光接続部品。
【請求項5】
前記光接続部品は、前記ガラス板の一断面において2次元配列された前記複数の第1の貫通孔を有する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光接続部品。
【請求項6】
前記複数の第1の貫通孔を有する前記ガラス板および前記複数の第2の貫通孔を有する前記樹脂フェルールの間であって、前記ガラスファイバそれぞれに接する領域を除いた領域に、ヤング率が100MPa以下の樹脂が充填されている、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光接続部品。
【請求項7】
前記ガラス板および前記樹脂フェルール各々が、互いに同軸上に位置するガイド孔を有する、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の光接続部品。
【請求項8】
前記ガラスファイバの外径が100μm以下である、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の光接続部品。
【請求項9】
前記複数の光ファイバそれぞれが、1つのクラッドに複数のコアを有するガラスファイバを含む複数のマルチコア光ファイバである、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の光接続部品。
【請求項10】
第1面と、前記第1面と反対の第2面と、前記第1面から前記第2面に貫通する複数の第1の貫通孔と、を有し、紫外線を透過可能なガラス材料で形成されたガラス板と、
前記ガラス板の前記第1面に固定され、前記複数の第1の貫通孔の中心軸それぞれと同軸上に中心軸を有する複数の第2の貫通孔を有する樹脂フェルールと、
ガラスファイバと該ガラスファイバの外周を覆う被覆樹脂とを含む複数の光ファイバとを備え、
前記複数の光ファイバそれぞれの先端において前記被覆樹脂から露出した前記ガラスファイバが、前記複数の第1の貫通孔および前記複数の第2の貫通孔に収容されており、
前記複数の第1の貫通孔それぞれと前記複数の第2の貫通孔それぞれとは間隔をあけて対向する、光接続部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光接続部品に関する。
本出願は、2018年8月1日出願の日本出願第2018-144677号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、樹脂製の光路変換素子を用いて光路方向を変更させる技術が開示され、特許文献2には、ガラス製の光接続部品を用いて低背化を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-147859号公報
【文献】国際公開第2017/022085号
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様に係る光接続部品は、第1面と、前記第1面と反対の第2面と、前記第1面から前記第2面に貫通する複数の第1の貫通孔と、を有し、紫外線を透過可能なガラス材料で形成されたガラス板と、前記ガラス板の前記第1面に固定され、前記複数の第1の貫通孔の中心軸それぞれと同軸上に中心軸を有する複数の第2の貫通孔を有する樹脂フェルールと、ガラスファイバと該ガラスファイバの外周を覆う被覆樹脂とを含む複数の光ファイバとを備え、前記複数の光ファイバそれぞれの先端において前記被覆樹脂から露出した前記ガラスファイバが、前記複数の第1の貫通孔および前記複数の第2の貫通孔に収容されており、前記複数の第1の貫通孔それぞれと前記複数の第2の貫通孔それぞれとは間隔をあけて対向し、前記ガラス板と前記樹脂フェルールとの間の前記複数本のガラスファイバそれぞれに接する領域に、空気層が存在する。
また、本開示の一態様に係る光接続部品は、第1面と、前記第1面と反対の第2面と、前記第1面から前記第2面に貫通する複数の第1の貫通孔と、を有し、紫外線を透過可能なガラス材料で形成されたガラス板と、前記ガラス板の前記第1面に固定され、前記複数の第1の貫通孔の中心軸それぞれと同軸上に中心軸を有する複数の第2の貫通孔を有する樹脂フェルールと、ガラスファイバと該ガラスファイバの外周を覆う被覆樹脂とを含む複数の光ファイバとを備え、前記複数の光ファイバそれぞれの先端において前記被覆樹脂から露出した前記ガラスファイバが、前記複数の第1の貫通孔および前記複数の第2の貫通孔に収容されており、前記複数の第1の貫通孔それぞれと前記複数の第2の貫通孔それぞれとは間隔をあけて対向する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、本開示の第1実施形態による光接続部品の外観斜視図である。
図2図2は、図1の光接続部品の分解斜視図である。
図3図3は、図1の光接続部品が含むガラス板の正面図である。
図4図4は、図1の光接続部品のIV-IV線矢視断面図である。
図5図5は、図1の光接続部品において、ガラス板と樹脂フェルールとの間に配置されたガラスファイバを説明するための概念図である。
図6図6は、第1実施形態の変形例におけるガラス板と樹脂フェルールとの間の断面図である。
図7図7は、第2実施形態による光接続部品の断面図である。
図8図8は、第3実施形態による光接続部品が含むガラス板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
光接続部品は、光ファイバを内蔵し、例えば電子基板と機器内光配線(または外部光伝送路)とを光学的に接続するために使用される。
【0007】
電子基板に実装される光モジュールの小型化等に伴い、光路方向の変更や、光接続部品の低背化が求められることがある。例えば特許文献1には、樹脂製の光路変換素子を用いて光路方向を変更させる技術が開示され、特許文献2には、ガラス製の光接続部品を用いて低背化を図る技術が開示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1の光路変換素子は樹脂製であるので、紫外線(以下、UVと称する)を透過できない。このため、光路変換素子を、UV接着剤を用いて、例えばシリコンフォトニクス等のSi基板上に形成された光集積回路(Silicon photonic integrated circuits:以下、Si-PICと称する)に固定するのは困難である。
【0009】
一方、特許文献2の光接続部品はガラス製であるので、光ファイバを通すための長い貫通孔を高精度に形成するのは難しい。
【0010】
本開示は、上述のような実情に鑑みてなされたもので、高精度で長い貫通孔を有し、UV接着剤を用いて光集積回路に固定可能な光接続部品を提供することを目的とする。
【0011】
[本開示の効果]
本開示によれば、UV接着剤を用いて光ファイバをSi-PIC等の光集積回路に高精度に固定することができる。
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
本開示の一態様に係る光接続部品は、(1)第1面と、前記第1面と反対の第2面と、前記第1面から前記第2面に貫通する複数の第1の貫通孔と、を有し、紫外線を透過可能なガラス材料で形成されたガラス板と、前記ガラス板の前記第1面に固定され、前記複数の第1の貫通孔の中心軸それぞれと同軸上に中心軸を有する複数の第2の貫通孔を有する樹脂フェルールと、ガラスファイバと該ガラスファイバの外周を覆う被覆樹脂とを含む複数の光ファイバとを備え、前記複数の光ファイバそれぞれの先端において前記被覆樹脂から露出した前記ガラスファイバが、前記複数の第1の貫通孔および前記複数の第2の貫通孔に収容されており、前記複数の第1の貫通孔それぞれと前記複数の第2の貫通孔それぞれとは間隔をあけて対向し、前記ガラス板と前記樹脂フェルールとの間の前記複数本のガラスファイバそれぞれに接する領域に、空気層が存在する
ガラス板が紫外線を透過可能であるので、光接続部品を、UV接着剤を用いてSi-PIC等の光集積回路に固定することができる。また、光集積回路への位置決め構造をガラス板とガラス板に固定された樹脂フェルールとで構成すれば、長い貫通孔を高精度に形成できる。また、樹脂フェルールは種々な形状で成形できるので、光路方向を変える、光接続部品の低背化を図る等の光接続部品に対する要求に容易に応えることができる。
さらに、ガラス板の熱膨張係数と樹脂フェルールの熱膨張係数との差が大きい場合であっても、ガラスファイバにはせん断力が掛からないため、ガラスファイバの断線を防止することができる。
【0013】
(2)本開示の光接続部品の一態様では、前記複数の第1の貫通孔の開口と、前記複数の第2の貫通孔の開口とが、離れている。
ガラス板側と樹脂フェルール側を離しているので、温度変化に伴うせん断力が掛かり難くなり、ガラス板と樹脂フェルールとの間におけるガラスファイバの断線を防止することができる。
【0014】
(3)本開示の光接続部品の一態様では、前記ガラスファイバのうち前記ガラス板と前記樹脂フェルールの間に配置された部分に掛かる引張応力が2000MPa以下である。ガラスファイバの当該部分に掛かる引張応力を2000MPa以下にすれば、-40℃~85℃の温度変化があってもガラスファイバの断線を防止することができる。
【0015】
(4)本開示の光接続部品の一態様では、前記複数の第1の貫通孔の前記開口および前記複数の第2の貫通孔の前記開口が、前記ガラスファイバの外径よりも大きい。
第1,2の貫通孔の外径をガラスファイバの外径よりも大きくすれば、-40℃~85℃の温度変化があっても、第1,2の貫通孔とガラスファイバとの接触を容易に回避できるので、この点もガラスファイバの断線防止に貢献する。
【0016】
(5)本開示の光接続部品の一態様では、前記光接続部品は、前記ガラス板の一断面において2次元配列された前記複数の第1の貫通孔を有する。第1の貫通孔が2次元配置された複数の貫通孔であるので、従来のV溝基板を用いた場合に比べて多くの光ファイバを実装でき、ファイバ実装密度が向上する。
【0018】
)本開示の光接続部品の一態様では、前記複数の第1の貫通孔を有する前記ガラス板および前記複数の第2の貫通孔を有する前記樹脂フェルールの間であって、前記ガラスファイバそれぞれに接する領域を除いた領域に、ヤング率が100MPa以下の樹脂が充填されている。
ガラス板の熱膨張係数と樹脂フェルールの熱膨張係数との差が大きい場合であっても、ガラスファイバにはせん断力が掛からないため、ガラスファイバの断線を防止することができる。
【0019】
)本開示の光接続部品の一態様では、前記ガラス板および前記樹脂フェルール各々が、互いに同軸上に位置するガイド孔を有する。ガイド孔を利用すれば、第1の貫通孔と第2の貫通孔との位置合わせが容易になる。
【0020】
)本開示の光接続部品の一態様では、前記ガラスファイバの外径が100μm以下である。
ガラスファイバの外径が100μm以下の光ファイバを用いれば、ガラスファイバが曲げられても、引張歪みと圧縮歪みのいずれも小さな値で済む。よって、この点もガラスファイバの断線防止に貢献する。また、種々な形状で成形可能な樹脂フェルールを用いて光接続部品の低背化も容易に達成できる。
【0021】
(9)本開示の光接続部品の一態様では、前記複数の光ファイバそれぞれが、1つのクラッドに複数のコアを有するガラスファイバを含む複数のマルチコア光ファイバである。
マルチコア光ファイバを本構造に適用することで、高いコア密度を有する光接続部品を実現することができる。これにより、1つのSi-PICから100chを超えるような高密度な光の入出力を必要とする形態にも対応することができる。
(10)本開示の一態様に係る光接続部品は、第1面と、前記第1面と反対の第2面と、前記第1面から前記第2面に貫通する複数の第1の貫通孔と、を有し、紫外線を透過可能なガラス材料で形成されたガラス板と、前記ガラス板の前記第1面に固定され、前記複数の第1の貫通孔の中心軸それぞれと同軸上に中心軸を有する複数の第2の貫通孔を有する樹脂フェルールと、ガラスファイバと該ガラスファイバの外周を覆う被覆樹脂とを含む複数の光ファイバとを備え、前記複数の光ファイバそれぞれの先端において前記被覆樹脂から露出した前記ガラスファイバが、前記複数の第1の貫通孔および前記複数の第2の貫通孔に収容されており、前記複数の第1の貫通孔それぞれと前記複数の第2の貫通孔それぞれとは間隔をあけて対向する。
【0022】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、添付図面を参照しながら、本開示による光接続部品の好適な実施の形態について説明する。
【0023】
図1は、本開示の第1実施形態による光接続部品1の外観斜視図、図2は、図1の光接続部品の分解斜視図、図3は、図1の光接続部品が含むガラス板の正面図であり、図4は、図1の光接続部品のIV-IV線矢視断面図である。光接続部品1は、例えば光集積回路チップ等を含む電子基板と、構内配線(または外部伝送路)とを光学的に接続するために使用される。
【0024】
図1に示すように、光接続部品1は、ファイバリボン10と、このファイバリボン10に並べて配置されるファイバリボン10aを有する。ファイバリボン10,10aは、いずれも途中に屈曲部分を有しており、ファイバリボン10,10aの一端がファイバ固定部品20を介して電子基板に固定され、ファイバリボン10,10aの他端がコネクタ(図示省略)を介して構内配線に接続される。
【0025】
ファイバ固定部品20は、多孔ガラス板21と、多孔樹脂フェルール31とからなる。なお、多孔ガラス板21が本開示のガラス板に、多孔樹脂フェルール31が本開示の樹脂フェルールにそれぞれ相当する。
【0026】
図2に示すように、多孔ガラス板21は、例えば直方体形状のガラス板本体22を有する。ガラス板本体22は、紫外線を透過可能であり、矩形状の表面23が多孔樹脂フェルール31の裏面34に対向配置され、同じく矩形状の裏面24が電子基板に対向配置される。この裏面24がUV接着剤を用いて電子基板に固定される。表面23が本開示の第1面に、裏面24が本開示の第2面にそれぞれ相当する。
【0027】
ガラス板本体22の表面23と裏面24との間の厚さ(図示のZ方向の長さ)は、例えば1mm程度と薄く、ガラス板本体22には、表面23と裏面24とを貫通する第1の貫通孔25を有している。図3に示すように、第1の貫通孔25は、複数の貫通孔であり、例えば、ガラス板本体22の幅方向(図示のY方向)および長さ方向(図示のX方向)に沿って2次元的に配置されている。
【0028】
第1の貫通孔25は、フォトリソグラフィと反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)等のドライエッチングを組み合わせたプロセスや、レーザーを用いた孔開け技術を用いて作成することができる。しかし、孔の位置が所定の設計位置に対し1μm以下の誤差を持ち、孔の内径が所定の径に対し±1μm以下を実現できるガラス孔開け技術であれば、上記の技術に限定されない。なお、複数個の第1の貫通孔25の例を挙げて説明したが、第1の貫通孔25は1個であってもよい。この場合、ファイバリボン10、ファイバリボン10aは、各々一本の光ファイバである。
【0029】
このように、多孔ガラス板21が紫外線を透過させるので、多孔ガラス板21を、UV接着剤を用いてSi-PIC等の光集積回路に固定することができる。また、光集積回路への位置決め構造をガラス板とガラス板に固定された樹脂フェルールとで構成すれば、長い貫通孔の位置や径を高精度に形成できる。
【0030】
そして、多孔ガラス板21に対して第1の貫通孔25を2次元に配置することができるため、高ch密度の光接続部品1を得ることができる。具体的には、多孔ガラス板21の面積をS、実装されたファイバ数がnとしたときに、n/Sが10/mmを超える高ch密度の光接続部品を得ることができる。
【0031】
また、図示のY方向でみたガラス板本体22の両端近傍には、ガイド孔26を有している。なお、多孔樹脂フェルール31にもガイド孔(図示省略)を有しており、図2に示すガイドピン50をガイド孔26と多孔樹脂フェルール31のガイド孔にそれぞれ通すことができる。これにより、第1の貫通孔25と多孔樹脂フェルール31の図4で説明する第2の貫通孔38とを容易に位置合わせできる。
【0032】
なお、ガイドピン50は、多孔ガラス板21と多孔樹脂フェルール31を固定した後に、多孔ガラス板21や多孔樹脂フェルール31から引き抜いてもよい。ガイドピン50を引き抜かずに残したままでは、多孔ガラス板21の熱膨張係数と多孔樹脂フェルール31の熱膨張係数との差が大きい場合には、ファイバリボン10の曲げによるせん断力の影響があるからである。
【0033】
多孔樹脂フェルール31は、図2に示すように、側面視で略L字状のフェルール本体32を有し、多孔ガラス板21に載置される。フェルール本体32は、ファイバリボン10aを載置可能な表面33と、表面33の一端側でガラス板本体22の表面23に対向配置される裏面34とを有している。多孔樹脂フェルール31は、フェルール本体32の表面33の一端に、ファイバリボン10,10aの屈曲部13に対向する正面35を有する。また、フェルール本体32の表面33の側方には、ファイバリボン10,10aの側端にそれぞれ対向する側面36を有している。
【0034】
図4に示すように、フェルール本体32の表面33から裏面34までの厚さ(図示のZ方向の長さ)は、ガラス板本体22の表面23から裏面24までの厚さ(1mm)よりも大きい。フェルール本体32は、表面33と裏面34とを貫通する第2の貫通孔38を複数有している。第2の貫通孔38は、第1の貫通孔25と同様に、フェルール本体32の幅方向(図示のY方向)および長さ方向(図示のX方向)に沿って2次元で配置されている。
【0035】
第2の貫通孔38の外径や多孔ガラス板21の第1の貫通孔25の外径は、ファイバリボンの先端から露出したガラスファイバ11の外径よりも大きい。第2の貫通孔38や第1の貫通孔25には、ガラスファイバ11が挿通される。また、第2の貫通孔38は、フェルール本体32の表面33近傍に、光ファイバの個別被覆樹脂層12を遊嵌可能なファイバ保持孔37を有している。
【0036】
多孔樹脂フェルール31の材料はポリフェニレン-スルフィド(polyphenylene sulfide:PPS)やポリエーテルイミド(polyetherimide:PEI)を用いることができる。これらの樹脂は光学部品が通常使用される-40℃~+85℃の領域において変性せず、湿度に対しても高い耐久性を有する。また樹脂の流動性も良く、比較的成形しやすいという特徴を有する。このように、多孔樹脂フェルール31は種々な形状で成形できるので、光路方向を変える、光接続部品の低背化を図る等の光接続部品に対する要求に容易に応えることができる。
【0037】
なお、略L字状のフェルール本体32を有した多孔樹脂フェルールの例を挙げて説明したが、ガラス板本体22の表面23に対向配置される裏面34以外の部分については、様々な形状を取ることができる。例えば図1に示した屈曲光ファイバに適用可能な形状に限定されず、屈曲してない直線状の光ファイバに適用可能な形状であってもよい。
【0038】
図2に示すように、ファイバリボン10,10aは、図示のY方向に沿って複数本並べられたガラスファイバ11を有する。ガラスファイバ11は、石英系ガラスからなるコアおよびクラッドを有しており、ガラスファイバ11の外径は例えば100μm以下である。なお、ガラスファイバ11は、単一コアを有するシングルコア光ファイバであっても、複数コアを有するガラスファイバを含むマルチコア光ファイバであってもよい。
【0039】
ガラスファイバ11の外側には個別被覆樹脂層12が施され、さらに、屈曲部13よりも後方(図示のXの正方向)では、個別被覆樹脂層12の周囲が一括被覆樹脂層14で覆われている。
【0040】
なお、ガラスファイバ11が柔軟な曲げ形状に対応可能とするため、低曲げ損失ファイバであることが望ましい。低曲げ損失ファイバとするには、コアの屈折率を高くした構造や、トレンチ構造と呼ばれる屈折率構造を適用してコアへの光の閉じ込めを強くした光ファイバが好適に用いられる。また、ガラスファイバ11の組成は、SiOガラスを用いて適宜屈折率を制御するためのドーパントを添加することで作成できる。しかし、中心コアは、GeOが添加されたSiOガラス、光学クラッド部は純SiOガラス、ないしはフッ素が添加されたSiOガラスで構成し、ジャケット部は純SiOガラスで構成してもよい。これにより、経済性と形状制御性の良い光ファイバを得ることができる。ジャケット部はClを含んでいても含まなくてもよい。また中心コアは、GeOとFが共添加されていてもよい。
【0041】
また、光ファイバの強度を高くするため、ガラスファイバ11の外周にカーボンコートを行う方法、また線引き時の熱履歴を調整し、ガラスファイバ11の外周に圧縮歪みを与える方法等を好適に組み合わせることができる。
【0042】
また、図1に示した屈曲光ファイバは、予め加熱して曲げられていてもよい。この加熱手段としては、バーナー、COレーザー、アーク放電、ヒーター等を用いることができる。
【0043】
COレーザーは、照射強度、照射範囲、照射時間を容易に調整することができるため、曲率分布の精緻な制御に有利な特性を有する。COレーザーの一般的な波長である10μm付近では、ガラスは不透明であるため、COレーザーの照射エネルギーはガラスファイバ11の表層で吸収され、再輻射と熱伝導により伝わると考えられる。COレーザーのパワーが高すぎる場合、ガラスファイバ11の表層温度は、ガラスが蒸発する温度まで急峻に上昇し形状を維持できなくなる。このため、COレーザーの照射パワーは、ガラスファイバ11の表層のガラスが蒸発せず、且つ加熱されるガラスファイバ11の断面が、所定の時間、作業点(10Pa・S)以上の温度に上昇して歪みを除去できるように、適切に調整される。COレーザーで曲げた場合におけるガラスファイバ11の温度の冷却速度は、10℃/s以下とし、歪みを取り除くためにゆっくり冷やすことが望ましい。
【0044】
図4に示すように、多孔ガラス板21の表面23に位置する第1の貫通孔25の開口と、この第1の貫通孔25と同軸上に設けられた多孔樹脂フェルール31の裏面34に位置する第2の貫通孔38の開口とは、間隔Hだけ離れている。多孔ガラス板21の表面23と多孔樹脂フェルール31の裏面34との間に位置するガラスファイバ11それぞれの周囲や、隣接するガラスファイバ11の間には、例えば空気層40が存在する。
【0045】
図6は、第1実施形態の変形例における多孔ガラス板21と樹脂フェルール31との間の断面図である。変形例のように、隣接するガラスファイバ11の間であって、ガラスファイバ11の周囲15それぞれを除いた領域16については、ヤング率が100MPa以下の樹脂を充填してもよい。
【0046】
多孔ガラス板21と多孔樹脂フェルール31を隙間なく接触させた場合には、多孔ガラス板21の熱膨張係数と多孔樹脂フェルール31の熱膨張係数との差により、第1,2貫通孔25,38間のガラスファイバ11には、温度変化に伴ってせん断力が掛かり、光ファイバが断線することがある。しかし、上記のように、多孔ガラス板21の表面23と多孔樹脂フェルール31の裏面34を間隔Hで離して、ガラスファイバ11が曲がる余裕を設けている。よって、温度変化に伴うせん断力がガラスファイバ11に掛かり難くなり、第1,2貫通孔25,38間における光ファイバの断線を防止することができる。
【0047】
また、第1,2の貫通孔25,38の外径をガラスファイバ11の外径よりも大きくすれば、-40℃~85℃の温度変化があっても、第1,2の貫通孔25,38とガラスファイバ11との接触を容易に回避できるので、この点も光ファイバの断線防止に貢献する。
【0048】
次に、光ファイバの断線を防止可能な間隔Hを求める。図5は、図1の光接続部品において、ガラス板と樹脂フェルールとの間に配置されたガラスファイバを説明するための概念図である。
【0049】
上記のように、多孔ガラス板21の熱膨張係数と多孔樹脂フェルール31の熱膨張係数との差があると、第1の貫通孔25と第2の貫通孔38との間に位置するガラスファイバ11が曲げられる。
【0050】
多孔ガラス板21の熱膨張係数と多孔樹脂フェルール31の熱膨張係数との差をΔC(1/℃)、第1の貫通孔25のピッチ(第2の貫通孔38も同じ)をL(m)とする。また、図5に示すように、熱膨張係数の差ΔCと温度変化により発生する第1の貫通孔25と第2の貫通孔38との相対孔位置の誤差をW(m)とする。温度変化は-40℃~+85℃を想定しており、その変化量は125℃であるから、W=-ΔC×L×125/2 (式1)で示すことができる。
【0051】
ガラスファイバ11の半径をd(m)、ガラスファイバ11の曲率半径をR(m)、ガラスファイバ11のヤング率をE(Pa)、ガラスファイバ11に掛かる引張応力の目標値をσ(Pa)とすると、R=σ×d/E (式2)で示すことができる。
【0052】
そして、間隔がH(m)の位置では、曲率半径Rのガラスファイバ11が直列に接続していると考えられ、Rsinθ=H/2、Rcosθ=R-W/2である。よって、θを消去すれば、H=2Rsin(cos-1(1-W/2R))となる。W、Rは式1,2から求められる。
【0053】
このように、間隔Hが以下の不等式(式3)を満たせば、ガラスファイバ11に掛かる引張応力を目標値に抑えることができるので、多孔ガラス板21と多孔樹脂フェルール31との間における光ファイバの断線を防止することができる。
H≧2Rsin(cos-1(1-W/2R)) (式3)
【0054】
なお、上記引張応力の目標値σは2000(MPa)以下(より好ましくは1000(MPa)以下)とすることが好ましい。
【0055】
また、上記引張応力の目標値σは、OFDR法(Optics Letters vol.41 No.12 2819-2822頁参照)によって測定することができる。またX線CTを用いてガラスファイバ11の曲率半径Rを計測すれば、式2を変形したσ=E×R/dから、上記引張応力の目標値σを求めることもできる。
【0056】
図7は、第2実施形態による光接続部品の断面図である。
第1実施形態では、第1,2の貫通孔25,38がいずれもストレート形状の孔で構成された例を挙げて説明したが、本発明は必ずしもこの例に限定されない。例えば、図7に示すように、ガラス板本体22に設けられた第1の貫通孔25は、ガラスファイバ11を挿通するストレート部25aと、ガラス板本体22の表面23に向けて拡径するテーパ部25bとを有している。また、フェルール本体32に設けられた第2の貫通孔38は、ガラスファイバ11を挿通するストレート部38aと、フェルール本体32の裏面34に向けて拡径するテーパ部38bとを有している。
【0057】
このように、テーパ部25b,38bを設ければ、第1の貫通孔25の開口と第2の貫通孔38の開口との間隔は、ガラス板本体22の表面23からフェルール本体32の裏面34までの間隔Hよりも、テーパ部25b,38bだけ大きくなるので、ガラスファイバ11に掛かるせん断力を小さくすることができる。
【0058】
図8は、第3実施形態による光接続部品が含むガラス板の断面図である。
第1実施形態、第2実施形態では、ガラス板本体22の表面23に対して垂直方向(図示のZ方向)に延びた第1の貫通孔25の例で説明した。しかし、第1の貫通孔25は、表面23に垂直な線に対して例えば8°程度傾いたストレート部25aを有してもよい。これにより、電子基板との接続界面における反射を抑制することができる。
【0059】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した意味ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
1…光接続部品、10…ファイバリボン、10a…別のファイバリボン、11…ガラスファイバ、12…個別被覆樹脂層、13…屈曲部、14…一括被覆樹脂層、15…ガラスファイバの周囲、16…ガラスファイバの周囲それぞれを除いた領域、20…ファイバ固定部品、21…多孔ガラス板、22…ガラス板本体、23…表面、24…裏面、25…第1の貫通孔、25a…ストレート部、25b…テーパ部、26…ガイド孔、31…多孔樹脂フェルール、32…フェルール本体、33…表面、34…裏面、35…正面、36…側面、37…ファイバ保持孔、38…第2の貫通孔、38a…ストレート部、38b…テーパ部、40…空気層、50…ガイドピン、S…多孔ガラス板の面積、n…実装されたファイバ数、H…第1の貫通孔の開口と第2の貫通孔の開口との間隔、ΔC…多孔ガラス板の熱膨張係数と多孔樹脂フェルールの熱膨張係数との差、L…第1の貫通孔のピッチ、W…第1の貫通孔と第2の貫通孔との相対孔位置の誤差、d…ガラスファイバの半径、R…ガラスファイバの曲率半径、E…ガラスファイバのヤング率、σ…ガラスファイバに掛かる引張応力の目標値。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8