(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】開発支援装置、端末装置、開発支援方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/20 20200101AFI20240123BHJP
G06F 30/12 20200101ALI20240123BHJP
G06F 111/02 20200101ALN20240123BHJP
【FI】
G06F30/20
G06F30/12
G06F111:02
(21)【出願番号】P 2020539495
(86)(22)【出願日】2019-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2019033510
(87)【国際公開番号】W WO2020045425
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2018163516
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018163517
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】岡部 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】山手 茂樹
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-182734(JP,A)
【文献】特開2016-152208(JP,A)
【文献】特開2002-328961(JP,A)
【文献】特表2014-522548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/398
B60L 3/00
B60L 58/00 -58/27
G01R 31/36 -31/396
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置のユーザ認証後に、前記端末装置から、蓄電デバイスのシミュレーション条件を受信する受信部と、
受信したシミュレーション条件に基づき、前記蓄電デバイスの挙動をシミュレートするシミュレーション実行部と、
該シミュレーション実行部によるシミュレーション結果を前記端末装置へ送信する送信部と
を備え、前記送信部から送信するシミュレーション結果は、前記挙動のシミュレーション結果として得られる数理モデルを含む開発支援装置。
【請求項2】
複数のシミュレーション選択肢を提示し、選択されたシミュレーション選択肢についての蓄電デバイスのシミュレーション条件を端末装置から受信する受信部と、
受信したシミュレーション条件に基づき、前記蓄電デバイスの挙動をシミュレートするシミュレーション実行部と、
該シミュレーション実行部によるシミュレーション結果を前記端末装置へ送信する送信部と
を備え、前記送信部から送信するシミュレーション結果は、前記挙動のシミュレーション結果として得られる数理モデルを含む開発支援装置。
【請求項3】
前記送信部は、前記端末装置により指定されたフォーマットにて前記数理モデルを前記端末装置へ送信する
請求項1又は請求項2に記載の開発支援装置。
【請求項4】
前記数理モデルは、プログラミング言語若しくは数値解析ソフトウェアにより実行される実行コード、または、前記プログラミング言語若しくは数値解析ソフトウェアにより参照される、定義情報若しくはライブラリファイルを含む
請求項1
から請求項3の何れか1つに記載の開発支援装置。
【請求項5】
複数のシミュレーション選択肢を提示し、選択されたシミュレーション選択肢についての蓄電デバイスのシミュレーション条件を端末装置から受信する受信部と、
受信したシミュレーション条件に基づき、前記蓄電デバイスの挙動をシミュレートするシミュレーション実行部と、
該シミュレーション実行部によるシミュレーション結果を前記端末装置へ送信する送信部と
を備え、
前記受信部は、前記シミュレーション条件として、
(1)複数の電池セルの結線及びグループ化を含む前記蓄電デバイスの回路構成、
(2)充放電曲線、SOC-OCP曲線若しくはSOC-OCV曲線から読み取った前記蓄電デバイスの特性を表す数値、又は
(3)充放電電流若しくは電圧の経時的変化を表す負荷変動曲線から読み取った前記蓄電デバイスの動作状態を表す数値
を前記端末装置から受信する
開発支援装置。
【請求項6】
前記受信部は、シミュレーション条件と共にユーザ識別情報を受信し、
前記受信部より受信したシミュレーション条件とユーザ識別情報とを関連付けて記憶する記憶部を備える
請求項1
から請求項5の何れか1つに記載の開発支援装置。
【請求項7】
蓄電デバイスの挙動をシミュレートする際のシミュレーション条件を受付ける受付画面を表示する表示部、
前記受付画面を通じて、シミュレーション条件を受付ける受付部、
受付けたシミュレーション条件を、前記挙動をシミュレートする開発支援装置へ送信する送信部、及び
前記シミュレーション条件に基づく前記挙動のシミュレーション結果を前記開発支援装置から受信する受信部
を備え、
前記受付部は、前記シミュレーション条件として、
(1)複数の電池セルの結線及びグループ化を含む前記蓄電デバイスの回路構成、
(2)前記受付画面における、充放電曲線の描画、SOC-OCP曲線の描画若しくはSOC-OCV曲線の描画により入力される前記蓄電デバイスの特性曲線、又は
(3)前記受付画面における、充放電電流若しくは電圧の経時的変化を表す負荷変動曲線の描画により入力される前記蓄電デバイスの動作状態
を受付ける
端末装置。
【請求項8】
端末装置と通信可能に接続される開発支援装置
が、
端末装置のユーザ認証後に、前記端末装置から、蓄電デバイスのシミュレーション条件を受信し、
受信したシミュレーション条件に基づき、前記蓄電デバイスの挙動をシミュレートし、
前記挙動のシミュレーションの結果として得られる数理モデルを含むシミュレーション結果を前記端末装置へ送信する
開発支援方法。
【請求項9】
端末装置と通信可能に接続される開発支援装置
が、
複数のシミュレーション選択肢を提示し、選択されたシミュレーション選択肢についての蓄電デバイスのシミュレーション条件を端末装置から受信し、
受信したシミュレーション条件に基づき、前記蓄電デバイスの挙動をシミュレートし、
前記挙動のシミュレーションの結果として得られる数理モデルを含むシミュレーション結果を前記端末装置へ送信する
開発支援方法。
【請求項10】
蓄電デバイスの挙動をシミュレートする開発支援装置と通信可能に接続される端末装置
が、
シミュレーション条件を受付ける受付画面を表示し、
表示した受付画面にてシミュレーション条件として、
(1)複数の電池セルの結線及びグループ化を含む前記蓄電デバイスの回路構成、
(2)充放電曲線、SOC-OCP曲線若しくはSOC-OCV曲線から読み取った前記蓄電デバイスの特性を表す数値、又は
(3)充放電電流若しくは電圧の経時的変化を表す負荷変動曲線から読み取った前記蓄電デバイスの動作状態を表す数値
を受付け、
前記受付画面にて受付けたシミュレーション条件を前記開発支援装置へ送信し、
前記シミュレーション条件に基づく前記挙動のシミュレーション結果を前記開発支援装置から受信する
開発支援方法。
【請求項11】
コンピュータに、
端末装置のユーザ認証後に、前記端末装置から、蓄電デバイスのシミュレーション条件を受信し、
受信したシミュレーション条件に基づき、前記蓄電デバイスの挙動をシミュレートし、
前記挙動のシミュレーションの結果として得られる数値モデルを含むシミュレーション結果を前記端末装置へ送信する
処理を実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項12】
コンピュータに、
複数のシミュレーション選択肢を提示し、選択されたシミュレーション選択肢についての蓄電デバイスのシミュレーション条件を端末装置から受信し、
受信したシミュレーション条件に基づき、前記蓄電デバイスの挙動をシミュレートし、
前記挙動のシミュレーションの結果として得られる数理モデルを含むシミュレーション結果を前記端末装置へ送信する
処理を実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項13】
コンピュータに、
受付画面にて、蓄電デバイスの物理的性質を表す特性曲線、又は前記蓄電デバイスの動作状態の経時的変化を表す負荷変動曲線の描画を受付け、
前記受付画面に描画された特性曲線又は負荷変動曲線から数値を読み取ることにより、前記物理的性質又は前記動作状態に係る情報を取得する
処理を実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項14】
コンピュータ
が、
受付画面にて、蓄電デバイスの物理的性質を表す特性曲線、又は前記蓄電デバイスの動作状態の経時的変化を表す負荷変動曲線の描画を受付け、
前記受付画面に描画された特性曲線又は負荷変動曲線から数値を読み取ることにより、前記物理的性質又は前記動作状態に係る情報を取得する
処理を実行する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開発支援装置、端末装置、開発支援方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車業界を始めとした各業界で、MBD(モデルベース開発)が盛んに導入されており、シミュレーションに基づいた製品開発が浸透している(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モデルベース開発において、例えば、開発の中でひとつの要素である、特定の蓄電デバイスの挙動をシミュレートする場合、当該蓄電デバイスに応じた数理モデルを設定する必要がある。蓄電デバイスの挙動を記述するための一般式(計算モデル)については公知であるため、各ユーザが任意に取得して使用することは可能である。しかしながら、このような計算モデルには、蓄電デバイスの特性及び動作条件に応じたパラメータが設定されておらず、計算モデルが得られたとしても、蓄電デバイスの特性及び動作条件に応じたシミュレーション結果を取得することはできない。
【0005】
本発明は、ユーザが所望する条件にて実行した蓄電デバイスの挙動のシミュレーション結果をネットワーク経由でユーザに提供できる開発支援装置、端末装置、開発支援方法、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開発支援装置は、端末装置のユーザ認証後に、前記端末装置から、蓄電デバイスのシミュレーション条件を受信する受信部と、受信したシミュレーション条件に基づき、前記蓄電デバイスの挙動をシミュレートするシミュレーション実行部と、該シミュレーション実行部によるシミュレーション結果を前記端末装置へ送信する送信部とを備える。
【0007】
開発支援装置は、複数のシミュレーション選択肢を提示し、選択されたシミュレーション選択肢についての蓄電デバイスのシミュレーション条件を端末装置から受信する受信部と、受信したシミュレーション条件に基づき、前記蓄電デバイスの挙動をシミュレートするシミュレーション実行部と、該シミュレーション実行部によるシミュレーション結果を前記端末装置へ送信する送信部とを備える。
【0008】
端末装置は、蓄電デバイスの挙動をシミュレートする際のシミュレーション条件を受付ける受付画面を表示する表示部、前記受付画面を通じて、シミュレーション条件を受付ける受付部、受付けたシミュレーション条件を、前記挙動をシミュレートする開発支援装置へ送信する送信部、及び前記シミュレーション条件に基づく前記挙動のシミュレーション結果を前記開発支援装置から受信する受信部を備え、受信したシミュレーション結果を前記表示部に表示する。
【0009】
開発支援方法は、端末装置と通信可能に接続される開発支援装置を用いて、端末装置のユーザ認証後に、前記端末装置から、蓄電デバイスのシミュレーション条件を受信し、受信したシミュレーション条件に基づき、前記蓄電デバイスの挙動をシミュレートし、シミュレーション結果を前記端末装置へ送信する。
【0010】
開発支援方法は、端末装置と通信可能に接続される開発支援装置を用いて、複数のシミュレーション選択肢を提示し、選択されたシミュレーション選択肢についての蓄電デバイスのシミュレーション条件を端末装置から受信し、受信したシミュレーション条件に基づき、前記蓄電デバイスの挙動をシミュレートし、シミュレーション結果を前記端末装置へ送信する。
【0011】
開発支援方法は、蓄電デバイスの挙動をシミュレートする開発支援装置と通信可能に接続される端末装置を用いて、シミュレーション条件を受付ける受付画面を表示し、表示した受付画面にてシミュレーション条件を受付け、前記受付画面にて受付けたシミュレーション条件を前記開発支援装置へ送信し、前記シミュレーション条件に基づく前記挙動のシミュレーション結果を前記開発支援装置から受信し、受信したシミュレーション結果を表示画面に表示する。
【0012】
コンピュータプログラムは、コンピュータに、端末装置のユーザ認証後に、前記端末装置から、蓄電デバイスのシミュレーション条件を受信し、受信したシミュレーション条件に基づき、前記蓄電デバイスの挙動をシミュレートし、シミュレーション結果を前記端末装置へ送信する処理を実行させる。
【0013】
コンピュータプログラムは、コンピュータに、複数のシミュレーション選択肢を提示し、選択されたシミュレーション選択肢についての蓄電デバイスのシミュレーション条件を端末装置から受信し、受信したシミュレーション条件に基づき、前記蓄電デバイスの挙動をシミュレートし、シミュレーション結果を前記端末装置へ送信する処理を実行させる。
【0014】
コンピュータプログラムは、蓄電デバイスの挙動をシミュレートする開発支援装置と通信可能に接続されるコンピュータに、シミュレーション条件を受付ける受付画面を表示し、表示した受付画面にてシミュレーション条件を受付け、前記受付画面にて受付けたシミュレーション条件を前記開発支援装置へ送信し、前記シミュレーション条件に基づく前記挙動のシミュレーション結果を前記開発支援装置から受信し、受信したシミュレーション結果を表示画面に表示する処理を実行させる。
【0015】
コンピュータプログラムは、コンピュータに、受付画面にて、蓄電デバイスの物理的性質を表す特性曲線、又は前記蓄電デバイスの動作状態の経時的変化を表す負荷変動曲線の描画を受付け、前記受付画面に描画された特性曲線又は負荷変動曲線から数値を読み取ることにより、前記物理的性質又は前記動作状態に係る情報を取得する処理を実行させる。
【発明の効果】
【0016】
上記構成によれば、ユーザが所望する条件にて実行した蓄電デバイスの挙動のシミュレーション結果をネットワーク経由でユーザに提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】シミュレーションシステムの全体構成を説明するブロック図である。
【
図2】サーバ装置の内部構成を説明するブロック図である。
【
図4】クライアント装置の内部構成を説明するブロック図である。
【
図5】シミュレーション対象の挙動を選択する選択画面の一例を示す模式図である。
【
図6】シミュレーション条件を受付ける受付画面の一例を示す模式図である。
【
図7】シミュレーション条件を受付ける受付画面の他の例を示す模式図である。
【
図8】シミュレーション条件を受付ける受付画面の他の例を示す模式図である。
【
図9】シミュレーション条件を受付ける受付画面の他の例を示す模式図である。
【
図10】サーバ装置及びクライアント装置が実行する処理の手順を説明するフローチャートである。
【
図11】サーバ装置及びクライアント装置が実行する処理の手順を説明するフローチャートである。
【
図12】シミュレーション結果の表示例を示す模式図である。
【
図13】数理モデルのフォーマットを選択する選択画面の一例を示す模式図である。
【
図14】サーバ装置から受信する数理モデルの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
従来、蓄電デバイスの挙動を記述するための一般式(計算モデル)は公知であり、各ユーザは計算モデルを任意に取得して使用することが可能である。しかしながら、計算モデルには、特定の蓄電デバイスの特性に応じたパラメータは含まれておらず、このような計算モデルを使用したとしても、蓄電デバイスの挙動をシミュレートすることはできない。蓄電デバイスの挙動を予測するためには、蓄電デバイスの特性及び動作条件に応じたパラメータを含んだ数理モデルが必要となるが、このような数理モデルを各ユーザが取得することは困難である。よって、従来において、ユーザが所望する条件にて蓄電デバイスの挙動についてのシミュレーション結果を任意に取得することは困難である。
これに対し、開発支援装置は、端末装置のユーザ認証後に、前記端末装置から、蓄電デバイスのシミュレーション条件を受信する受信部と、受信したシミュレーション条件に基づき、前記蓄電デバイスの挙動をシミュレートするシミュレーション実行部と、該シミュレーション実行部によるシミュレーション結果を前記端末装置へ送信する送信部とを備える。
したがって、ユーザが蓄電デバイスの挙動を表す理論に精通していない場合であっても、開発支援装置は、シミュレーション条件を受付けるだけで、数理モデルを含むシミュレーション結果をユーザに提供できる。また、開発支援装置は、ユーザ認証によって、相応の専門知識を有するユーザと、専門知識を持たないユーザとを区別し、専門知識を有するユーザのみに対してシミュレーション結果を提供できる。
【0019】
開発支援装置は、複数のシミュレーション選択肢を提示し、選択されたシミュレーション選択肢についての蓄電デバイスのシミュレーション条件を端末装置から受信する受信部と、受信したシミュレーション条件に基づき、前記蓄電デバイスの挙動をシミュレートするシミュレーション実行部と、該シミュレーション実行部によるシミュレーション結果を前記端末装置へ送信する送信部とを備える。
したがって、ユーザが蓄電デバイスの挙動を表す理論に精通していない場合であっても、提示したシミュレーション選択肢の中からユーザが所望するシミュレーション選択肢を受付けるだけで、数理モデルを含むシミュレーション結果をユーザに提供できる。
【0020】
前記蓄電デバイスの挙動をシミュレートするシミュレーションプログラムを記憶する記憶部を備え、前記シミュレーション実行部は、前記シミュレーションプログラムに基づき前記蓄電デバイスの挙動をシミュレートしてもよい。この構成によれば、蓄電デバイスの挙動を表すシミュレーションプログラムが開発支援装置にて用意されているので、シミュレーション条件を受付けるだけで、数理モデルを含む所望のシミュレーション結果をユーザに提供できる。
【0021】
前記蓄電デバイスの複数種の挙動に対応した複数のシミュレーションプログラムを前記記憶部に記憶してあり、前記シミュレーション実行部は、前記端末装置により選択されたシミュレーション対象の挙動に対応したシミュレーションプログラムを用いて前記挙動をシミュレートしてもよい。この構成によれば、ユーザが選択したシミュレーション対象の挙動の情報とシミュレーション条件とを受付けることによって、所望のシミュレーション結果をユーザに提供できる。
【0022】
前記送信部から送信するシミュレーション結果は、前記挙動のシミュレーションの結果として得られる数理モデルを含んでもよい。この構成によれば、ユーザに対して数理モデルを提供できる。また、ユーザは、開発支援装置からダウンロードした数理モデルを使用することにより、入力条件を様々に変えたシミュレーション結果をユーザ端末において取得できる。
【0023】
前記送信部は、前記端末装置により指定されたフォーマットにて前記数理モデルを前記端末装置へ送信してもよい。この構成によれば、端末装置にインストールされているプログラミング言語又は数値解析ソフトウェアに適合するフォーマットにて数理モデルを提供できる。
【0024】
前記数理モデルは、プログラミング言語若しくは数値解析ソフトウェアにより実行される実行コード、または、前記プログラミング言語若しくは数値解析ソフトウェアにより参照される、定義情報若しくはライブラリファイルを含んでもよい。実行コードは、実行形式バイナリファイル、インタプリタ形式のファイル、又はソースコードの形式であってもよい。この構成によれば、端末装置にインストールされているプログラム言語又は数値解析ソフトウェアにて利用できる実行コード、定義情報、又はライブラリファイルをユーザに提供できる。
【0025】
前記シミュレーション条件は、前記蓄電デバイスの回路構成、物理的性質、及び動作状態の少なくとも1つを含んでもよい。この構成によれば、蓄電デバイスの回路構成、物理的性質、又は動作状態を指定して、蓄電デバイスの挙動に係るシミュレーションを実行できる。
【0026】
前記シミュレーション実行部がシミュレートする挙動は、前記蓄電デバイスの充放電に伴う端子電圧の変化、前記蓄電デバイスの充放電に伴う容量の変化、前記蓄電デバイスの容量の経時的変化、又は前記蓄電デバイスにおける温度分布を含んでもよい。この構成によれば、ユーザが個別に数理モデルを構築することが困難な蓄電デバイスの充放電に伴う端子電圧の変化、蓄電デバイスの充放電に伴う容量の変化、蓄電デバイスの容量の経時的変化、又は蓄電デバイスにおける温度分布についての数理モデルを含むシミュレーション結果をユーザに提供できる。
【0027】
前記受信部は、前記蓄電デバイスの回路構成、前記蓄電デバイスの物理的性質を表す特性曲線、又は前記蓄電デバイスの動作状態の経時的変化を表す負荷変動曲線の描画により入力されるシミュレーション条件を前記端末装置から受信してもよい。この構成によれば、回路構成の描画又は曲線の描画といった簡単な操作を通じて入力されるシミュレーション条件を受信し、そのシミュレーション条件に基づく数理モデルを含むシミュレーション結果をユーザに提供できる。
【0028】
前記受信部は、シミュレーション条件と共にユーザ識別情報を受信し、前記記憶部は、受信したシミュレーション条件とユーザ識別情報とを関連付けて記憶してもよい。この構成によれば、ユーザ識別情報に関連付けてシミュレーション条件を記憶部に記憶しておくことができるので、必要に応じて記憶部からシミュレーション条件を読み出し、読み出したシミュレーション条件に基づき、シミュレーションを実行できる。
【0029】
端末装置は、蓄電デバイスの挙動をシミュレートする際のシミュレーション条件を受付ける受付画面を表示する表示部、前記受付画面を通じて、シミュレーション条件を受付ける受付部、受付けたシミュレーション条件を、前記挙動をシミュレートする開発支援装置へ送信する送信部、及び前記シミュレーション条件に基づく前記挙動のシミュレーション結果を前記開発支援装置から受信する受信部を備え、受信したシミュレーション結果を前記表示部に表示する。この構成によれば、ユーザは、蓄電デバイスの挙動を表す理論に精通していない場合であっても、シミュレーション条件の入力といった比較的簡単な操作により、数理モデルを含む所望のシミュレーション結果を取得できる。
【0030】
開発支援方法は、端末装置と通信可能に接続される開発支援装置を用いて、端末装置のユーザ認証後に、前記端末装置から、蓄電デバイスのシミュレーション条件を受信し、受信したシミュレーション条件に基づき、前記蓄電デバイスの挙動をシミュレートし、シミュレーション結果を前記端末装置へ送信する。この構成によれば、シミュレーション条件を受付けるだけで、数理モデルを含む所望のシミュレーション結果をユーザに提供できる。
【0031】
開発支援方法は、端末装置と通信可能に接続される開発支援装置を用いて、複数のシミュレーション選択肢を提示し、選択されたシミュレーション選択肢についての蓄電デバイスのシミュレーション条件を端末装置から受信し、受信したシミュレーション条件に基づき、前記蓄電デバイスの挙動をシミュレートし、シミュレーション結果を前記端末装置へ送信する。この構成によれば、シミュレーション選択肢を受付けるだけで、数理モデルを含む所望のシミュレーション結果をユーザに提供できる。
【0032】
開発支援方法は、蓄電デバイスの挙動をシミュレートする開発支援装置と通信可能に接続される端末装置を用いて、シミュレーション条件を受付ける受付画面を表示し、表示した受付画面にてシミュレーション条件を受付け、前記受付画面にて受付けたシミュレーション条件を前記開発支援装置へ送信し、前記シミュレーション条件に基づく前記挙動のシミュレーション結果を前記開発支援装置から受信し、受信したシミュレーション結果を表示画面に表示する。この構成によれば、ユーザは、蓄電デバイスの挙動を表す理論に精通していない場合であっても、シミュレーション条件の入力といった比較的簡単な操作により、数理モデルを含む所望のシミュレーション結果を取得できる。
【0033】
コンピュータプログラムは、コンピュータに、端末装置のユーザ認証後に、前記端末装置から、蓄電デバイスのシミュレーション条件を受信し、受信したシミュレーション条件に基づき、前記蓄電デバイスの挙動をシミュレートし、シミュレーション結果を前記端末装置へ送信する処理を実行させる。この構成によれば、シミュレーション条件を受付けるだけで、数理モデルを含む所望のシミュレーション結果をユーザに提供できる。
【0034】
コンピュータプログラムは、コンピュータに、複数のシミュレーション選択肢を提示し、選択されたシミュレーション選択肢についての蓄電デバイスのシミュレーション条件を端末装置から受信し、受信したシミュレーション条件に基づき、前記蓄電デバイスの挙動をシミュレートし、シミュレーション結果を前記端末装置へ送信する処理を実行させる。この構成によれば、シミュレーション選択肢を受付けるだけで、数理モデルを含む所望のシミュレーション結果をユーザに提供できる。
【0035】
コンピュータプログラムは、蓄電デバイスの挙動をシミュレートする開発支援装置と通信可能に接続されるコンピュータに、シミュレーション条件を受付ける受付画面を表示し、表示した受付画面にてシミュレーション条件を受付け、前記受付画面にて受付けたシミュレーション条件を前記開発支援装置へ送信し、前記シミュレーション条件に基づく前記挙動のシミュレーション結果を前記開発支援装置から受信し、受信したシミュレーション結果を表示画面に表示する処理を実行させる。
したがって、ユーザは、蓄電デバイスの挙動を表す理論に精通していない場合であっても、シミュレーション条件の入力といった比較的簡単な操作により、数理モデルを含む所望のシミュレーション結果を取得できる。
【0036】
前記シミュレーション条件は、前記蓄電デバイスの回路構成、物理的性質、及び動作状態の少なくとも1つを含んでもよい。この構成によれば、蓄電デバイスの回路構成、物理的性質、又は動作状態を指定して、蓄電デバイスの挙動に係るシミュレーションを実行させることができる。
【0037】
前記コンピュータに、前記受付画面にて、前記回路構成の描画を受付け、前記受付画面に描画された回路構成から、前記蓄電デバイスの回路構成に係る情報を取得する処理を実行させてもよい。この構成によれば、画面上に回路構成を描画することにより、回路構成に係る情報が入力されるので、ユーザによる情報の入力負担を軽減できる。
【0038】
前記コンピュータに、前記受付画面にて、前記蓄電デバイスを構成する蓄電素子の配置、及び蓄電素子間の接続関係についての描画を受付ける処理を実行させてもよい。この構成によれば、蓄電デバイスを構成する蓄電素子の配置、及び蓄電素子間の接続関係を画面上で描画することにより、回路構成に係る情報がグラフィカルに入力されるので、ユーザによる情報の入力負担を軽減できる。
【0039】
前記コンピュータに、前記受付画面にて、前記蓄電デバイスにおける短絡箇所の指定を受付ける処理を実行させてもよい。この構成によれば、蓄電デバイスにおける短絡箇所を指定でき、短絡に伴う蓄電デバイスの発熱量等についてシミュレーションを実行できる。
【0040】
前記コンピュータに、前記受付画面にて、前記蓄電デバイスの物理的性質を表す特性曲線、又は前記蓄電デバイスの動作状態の経時的変化を表す負荷変動曲線の描画を受付け、前記受付画面に描画された特性曲線又は負荷変動曲線から数値を読み取ることにより、前記物理的性質又は前記動作状態に係る情報を取得する処理を実行させてもよい。この構成によれば、蓄電デバイスに関する特性曲線又は負荷変動曲線の描画を受付けるので、数値を直接的に入力する場合と比較して、ユーザによる情報の入力負担を軽減できる。
【0041】
前記コンピュータに、受付けたシミュレーション条件を記憶装置に記憶させ、前記開発支援装置へ送信すべきシミュレーション条件を前記記憶装置から読み出す処理を実行させてもよい。この構成によれば、過去に入力したシミュレーション条件を用いることができるので、同じ条件下で複数の蓄電デバイスの挙動を調べる場合等において、ユーザによる情報の入力負担を軽減できる。
【0042】
前記開発支援装置がシミュレートする前記蓄電デバイスの挙動は、前記蓄電デバイスの充放電に伴う端子電圧の変化、前記蓄電デバイスの充放電に伴う容量の変化、前記蓄電デバイスの容量の経時的変化、又は前記蓄電デバイスにおける温度分布を含んでもよい。この構成によれば、ユーザが個別に数理モデルを構築することが困難な蓄電デバイスの充放電に伴う端子電圧の変化、蓄電デバイスの充放電に伴う容量の変化、蓄電デバイスの容量の経時的変化、又は蓄電デバイスにおける温度分布などについてシミュレーションを実行できる。
【0043】
前記シミュレーション結果は、シミュレーション対象の挙動に対応したシミュレーションプログラムに基づく数値解析によって得られる数値データを含んでもよい。この構成によれば、蓄電デバイスの挙動を示す何らかの数値を直接的に取得できる。
【0044】
前記シミュレーション結果は、前記挙動のシミュレーションの結果として得られる数理モデルを含んでもよい。この構成によれば、蓄電デバイスのシミュレーションの結果として得られた数理モデルをダウンロードできる。また、ダウンロードした数理モデルを使用することにより、入力条件を様々に変えたシミュレーションをユーザ端末において実行できる。
【0045】
前記コンピュータに、受信すべき数理モデルに対するフォーマットの指定を受付け、指定されたフォーマットの数理モデルを送信するように前記開発支援装置に要求する処理を実行させてもよい。この構成によれば、ユーザ端末にインストールされているプログラミング言語又は数値解析ソフトウェアに適合するフォーマットにて数理モデルをダウンロードすることができ、ダウンロードしたユーザ端末において即時的に使用を開始できる。
【0046】
コンピュータプログラムは、コンピュータに、受付画面にて、蓄電デバイスの物理的性質を表す特性曲線、又は前記蓄電デバイスの動作状態の経時的変化を表す負荷変動曲線の描画を受付け、前記受付画面に描画された特性曲線又は負荷変動曲線から数値を読み取ることにより、前記物理的性質又は前記動作状態に係る情報を取得する処理を実行させる。この構成によれば、蓄電デバイスに関する特性曲線又は負荷変動曲線の描画を受付けるので、数値を直接的に入力する場合と比較して、ユーザによる情報の入力負担を軽減できる。
【0047】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
図1はシミュレーションシステムの全体構成を説明するブロック図である。本実施の形態に係るシミュレーションシステムは、通信網Nを介して互いに通信可能に接続されるサーバ装置10とクライアント装置20,20,…,20とを備える。サーバ装置10は、クライアント装置20からの要求に応じて、蓄電デバイスの複数種の挙動をシミュレートし、シミュレーション結果をクライアント装置20へ提供する。ここで、シミュレーション対象の蓄電デバイスは、二次電池である鉛蓄電池やリチウムイオン電池等の再充電可能な蓄電素子(セル)を含み、電子部品に該当するコンデンサは除外される。換言すれば、シミュレーション対象の蓄電デバイスは、充放電時の動的変化や時系列変化を伴う蓄電素子であり、電気二重層のみで充放電が終了するコンデンサのような電子部品は除外される。また、シミュレーション対象の蓄電デバイスは、複数のセルを直列に接続したモジュール、複数のモジュールを直列に接続したバンク、複数のバンクを並列に接続したドメイン等を含んでもよい。
【0048】
クライアント装置20は、ユーザによって利用されるパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末などの端末装置である。ユーザとしては、社内外、事業所、所属、居所等を問わず、社内イントラネットワークを介して全ユーザを対象としてもよい。クライアント装置20には、サーバ装置10にアクセスするためのソフトウェア(アプリケーションプログラム)がインストールされているものとする。サーバ装置10は、クライアント装置20からのアクセスを受付けた際に例えばユーザID及びパスワードに基づくユーザ認証を行い、ユーザ認証に成功した場合、クライアント装置20に対して適宜のサービスを提供する。サーバ装置10を利用するためのユーザID及びパスワードは、任意のユーザに対して付与される必要はなく、蓄電デバイスに対して相応の専門知識を有するユーザに対して付与されるとよい。
【0049】
本実施の形態に係るサーバ装置10は、ユーザ認証の後、クライアント装置20のユーザによる各種入力を受付けるためのインタフェース画面をクライアント装置20へ送信する。このインタフェース画面には、シミュレーション対象の挙動についての選択を受付ける選択画面、および、選択された挙動をシミュレートするために必要な条件を受付けるための受付画面が含まれる。また、サーバ装置10は、受付けた条件に基づいて実行したシミュレーション結果をクライアント装置20へ送信する。サーバ装置10がクライアント装置20に対して送信するシミュレーション結果は、シミュレーションの実行結果として得られる数値データ、グラフ等のデータを含む。また、サーバ装置10がクライアント装置20に対して送信するシミュレーション結果は、シミュレーションの実行結果として得られる数理モデルを含んでもよい。
【0050】
図2はサーバ装置10の内部構成を説明するブロック図である。サーバ装置10は、制御部11、記憶部12、通信部13、操作部14及び表示部15を備える。
【0051】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などにより構成されている。制御部11が備えるCPUは、ROM又は記憶部12に記憶されている各種コンピュータプログラムをRAM上に展開して実行することにより、装置全体を開発支援装置として機能させる。サーバ装置10は、開発支援装置の一実施形態に過ぎず、クライアント装置20と通信可能に接続された任意の情報処理装置であればよい。
【0052】
制御部11は、上記の構成に限定されるものではなく、複数のCPU、マルチコアCPU、GPU(Graphics Processing Unit)、マイコン、揮発性又は不揮発性のメモリ等を備える任意の処理回路又は演算回路であってもよい。また、制御部11は、計測開始指示を与えてから計測終了指示を与えるまでの経過時間を計測するタイマ、数をカウントするカウンタ、日時情報を出力するクロック等の機能を備えていてもよい。
【0053】
記憶部12は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等を用いた記憶装置を備える。記憶部12には、制御部11によって実行される各種コンピュータプログラム、及びコンピュータプログラムの実行に必要なデータ等が記憶される。記憶部12に記憶されるコンピュータプログラムは、蓄電デバイスの挙動をシミュレートするシミュレーションプログラムを含む。シミュレーションプログラムは、例えば実行バイナリである。シミュレーションプログラムの元となる理論式は、蓄電デバイスの挙動を表す代数方程式又は微分方程式によって記述される。これらの代数方程式や微分方程式には、蓄電デバイスの環境温度がパラメータとして含まれてもよい。シミュレーションプログラムは、シミュレーション対象の挙動毎に用意してもよく、1つのコンピュータプログラムとして用意してもよい。
【0054】
記憶部12に記憶されるプログラムは、当該プログラムを読み取り可能に記録した非一時的な記録媒体M1により提供されてもよい。記録媒体M1は、例えば、CD-ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、マイクロSDカード、コンパクトフラッシュ(登録商標)などの可搬型メモリである。この場合、制御部11は、不図示の読取装置を用いて記録媒体M1からプログラムを読み取り、読み取ったプログラムを記憶部12にインストールする。また、記憶部12に記憶されるプログラムは、通信部13を介した通信により提供されてもよい。この場合、制御部11は、通信部13を通じてプログラムを取得し、取得したプログラムを記憶部12にインストールする。
【0055】
また、記憶部12には、シミュレーションの結果として得られる数理モデルが記憶されてもよい。数理モデルは、例えば、プログラミング言語又は数値解析ソフトウェアにより実行される実行コードである。また、数理モデルは、プログラミング言語又は数値解析ソフトウェアにより参照される、定義情報若しくはライブラリファイルであってもよい。
【0056】
更に、記憶部12は、蓄電デバイス(電池)の情報をユーザIDに関連付けて記憶する電池テーブルを有していてもよい。
図3は電池テーブルの一例を示す概念図である。電池テーブルは、例えば、電池を識別する電池ID、ユーザを識別するユーザID、及び電池情報を関連付けて記憶する。電池テーブルに登録される電池情報は、例えば、正極及び負極の情報、電解液の情報、タブの情報などを含む。正極及び負極の情報とは、正極及び負極の活物質名、厚み、幅、奥行き、開回路電位などの情報である。電解液及びタブの情報とは、イオン種、輸率、拡散係数、導電率などの情報である。また、電池テーブルには、蓄電デバイスの物理的性質、動作状態、回路構成等の情報を参照するリンクが含まれてもよい。電池テーブルに記憶される情報は、サーバ装置10の管理者によって登録されてもよく、クライアント装置20を介してユーザによって登録されてもよい。電池テーブルに記憶されている情報は、蓄電デバイスの挙動をシミュレートする際に、シミュレーション条件の一部として利用され得る。
【0057】
通信部13は、通信網Nを通じてクライアント装置20と通信を行うためのインタフェースを備える。通信部13は、クライアント装置20へ送信すべき情報が制御部11から入力された場合、入力された情報をクライアント装置20へ送信する共に、通信網Nを通じて受信したクライアント装置20からの情報を制御部11へ出力する。
【0058】
操作部14は、キーボード、マウスなどの入力インタフェースを備えており、ユーザによる操作を受付ける。表示部15は、液晶ディスプレイ装置などを備えており、ユーザに対して報知すべき情報を表示する。本実施の形態では、サーバ装置10が操作部14及び表示部15を備える構成としたが、操作部14及び表示部15は必須ではない。サーバ装置10の外部に接続されたコンピュータを通じて操作を受付け、通知すべき情報を外部のコンピュータへ出力する構成であってもよい。
【0059】
図4はクライアント装置20の内部構成を説明するブロック図である。クライアント装置20は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等であり、制御部21、記憶部22、通信部23、操作部24及び表示部25を備える。
【0060】
制御部21は、CPU、ROM、RAMなどにより構成されている。制御部21が備えるCPUは、ROM又は記憶部22に記憶されている各種コンピュータプログラムをRAM上に展開して実行することにより、装置全体を端末装置として機能させる。
【0061】
制御部21は、上記の構成に限定されるものではなく、複数のCPU、マルチコアCPU、マイコン等を含む任意の処理回路又は演算回路であってもよい。また、制御部21は、計測開始指示を与えてから計測終了指示を与えるまでの経過時間を計測するタイマ、数をカウントするカウンタ、日時情報を出力するクロック等の機能を備えていてもよい。
【0062】
記憶部22は、EEPROM(Electronically Erasable Programmable Read Only Memory)などの不揮発性メモリにより構成されており、各種コンピュータプログラム及びデータを記憶する。記憶部22に記憶されるコンピュータプログラムは、サーバ装置10と情報の授受を行うために用いられる汎用又は専用のアプリケーションを含む。汎用のアプリケーションプログラムの一例は、ウェブブラウザである。ウェブブラウザを用いてサーバ装置10にアクセスする場合、ユーザID及び認証コードを用いたユーザ認証を行うことが好ましく、ユーザ認証に成功した場合にのみ、サーバ装置10とクライアント装置20との間の通信を許可すればよい。
【0063】
記憶部22に記憶されるプログラムは、当該プログラムを読み取り可能に記録した非一時的な記録媒体M2により提供されてもよい。記録媒体M2は、例えば、CD-ROM、USBメモリ、SDカード、マイクロSDカード、コンパクトフラッシュ(登録商標)などの可搬型メモリである。この場合、制御部21は、不図示の読取装置を用いて記録媒体M2からプログラムを読み取り、読み取ったプログラムを記憶部22にインストールする。また、記憶部22に記憶されるプログラムは、通信部23を介した通信により提供されてもよい。この場合、制御部21は、通信部23を通じて各種プログラムを取得し、取得した各種プログラムを記憶部22にインストールする。
【0064】
通信部23は、通信網Nを通じてサーバ装置10と通信を行うためのインタフェースを備える。通信部23は、サーバ装置10へ送信すべき情報が制御部21から入力された場合、入力された情報をサーバ装置10へ送信する共に、通信網Nを通じて受信したサーバ装置10からの情報を制御部21へ出力する。
【0065】
操作部24は、キーボード、マウス、タッチパネルなどの入力インタフェースを備えており、ユーザによる操作を受付ける。表示部25は、液晶ディスプレイ装置などを備えており、ユーザに対して報知すべき情報を表示する。本実施の形態では、クライアント装置20が操作部24を備える構成としたが、クライアント装置20にキーボード、マウス等の入力インタフェースが接続される構成であってもよい。
【0066】
以下、クライアント装置20の表示部25に表示される画面を参照しながら、本実施の形態に係るシミュレーションシステムの動作について説明する。
【0067】
図5はシミュレーション対象の挙動を選択する選択画面110の一例を示す模式図である。
図5に示す選択画面110は、クライアント装置20からサーバ装置10にアクセスし、正当なユーザであることが認証された後に、クライアント装置20の表示部25に表示される画面の一例を示している。クライアント装置20は、サーバ装置10と通信を行い、サーバ装置10から表示画面用のデータを取得することにより、
図5に示すような選択画面110を表示部25に表示させることができる。
【0068】
選択画面110は、UI(User Interface)のコンポーネントとして配置される各種表示欄及び操作ボタンを備えた画面であり、操作部24を通じてユーザによる操作を受付ける。
【0069】
表示欄111は、ユーザID、前回のアクセス日時等のユーザ情報を表示するための表示欄である。クライアント装置20は、サーバ装置10と通信を行い、ユーザID、前回のアクセス日時等のユーザ情報をサーバ装置10から取得することにより、ユーザ情報を表示欄111に表示させることができる。
【0070】
登録ボタン112Aは、新たな蓄電デバイスの情報(電池情報)をサーバ装置10に登録するための操作ボタンである。操作部24を用いて登録ボタン112Aが操作された場合、クライアント装置20は、電池情報を受付けるための受付画面を表示部25に表示させる。電池情報の受付けが完了した場合、クライアント装置20は、受付けた電池情報をサーバ装置10へ送信する。サーバ装置10は、クライアント装置20から受信した電池情報を記憶部12の電池テーブルに登録する。
【0071】
選択ボタン112B,112B,…,112Bは、蓄電デバイスを選択するための操作ボタンである。操作部24を用いて何れかの選択ボタン112Bが操作された場合、クライアント装置20は、選択された蓄電デバイスの詳細情報をサーバ装置10から取得し、取得した詳細情報を表示部25に表示させる。
【0072】
選択ボタン113A~113Dは、シミュレーション対象の挙動を選択するための操作ボタンである。選択ボタン113Aには「セルの充放電」というラベルが付されている。すなわち、この選択ボタン113Aは、操作部24を用いて選択された場合のシミュレーション対象の挙動が「セルの充放電」であることを示している。他の選択ボタン113B~113Dについても同様である。操作部24を用いて選択ボタン113B~113Dが選択された場合のシミュレーション対象の挙動は、それぞれ「サイクル劣化」、「モジュールの温度分布」、「安全性予測」であることを示している。
【0073】
ダウンロードボタン114は、サーバ装置10からシミュレーション結果をダウンロードする際に操作される操作ボタンである。ダウンロードボタン114が操作された場合にダウンロードできるシミュレーション結果は、選択ボタン113A~113Dによって選択された挙動についてサーバ装置10がシミュレーションを実行し、実行結果として得られる数値データ、グラフ等のデータである。操作部24を用いてダウンロードボタン114が操作された場合、クライアント装置20は、通信部23を通じて、サーバ装置10に対してシミュレーション結果の送信を要求し、その応答としてサーバ装置10から送信されてくるシミュレーション結果を受信する。
【0074】
ダウンロードボタン115は、サーバ装置10から数理モデルをダウンロードする際に操作される操作ボタンである。ここで、数理モデルとは、蓄電デバイスの特性を代数方程式、微分方程式及び特性パラメータを用いて数学的に記述したモデルを表し、シミュレーションを実行することによって得られるモデルである。本実施の形態において、数理モデルは、例えば、MATLAB(登録商標)、ANSYS(登録商標)、Amesim(登録商標)、Modelica(登録商標)などの数値解析ソフトウェア又はプログラミング言語で用いられるライブラリ、モジュール等のフォーマットにより提供される。操作部24を用いてダウンロードボタン115が操作された場合、クライアント装置20は、選択ボタン113A~113Dによって選択された挙動についての数理モデルの送信要求をサーバ装置10へ送信し、その応答としてサーバ装置10から送信されてくる数理モデルを受信する。
【0075】
ダウンロードボタン115が操作された場合、サーバ装置10は、シミュレーション結果としての数値データ等を計算することなく、数理モデルのみを導出し、ユーザに提供する構成であってもよい。
【0076】
上述した選択画面110において、シミュレーション対象の挙動に対する選択を受付けた後、クライアント装置20は、シミュレーション条件を受付けるための受付画面を表示部25に表示する。
【0077】
図6はシミュレーション条件を受付ける受付画面の一例を示す模式図である。
図6に示す受付画面120は、上述した選択画面110において選択ボタン113Aが操作され、シミュレーション対象として「セルの充放電」に係る挙動が選択された場合に表示部25に表示される画面の一例を示している。受付画面120では、蓄電デバイスの物理的性質を示す特性曲線の描画を受付ける。特性曲線の描画には、操作部24が備えるマウス又はタッチパネルが用いられる。受付画面120にて描画を受付ける特性曲線は任意であり、例えば、充放電容量と電池電圧との関係を示す充放電曲線、SOC(State Of Charge)とOCP(Open Circuit Potential)との関係を示すSOC-OCP曲線、SOCとOCV(Open Circuit Voltage)との関係を示すSOC-OCV曲線等の特性曲線を受付けることができる。
図6に示した例では、横軸をSOC、縦軸をOCPとしたグラフ内で特性曲線(SOC-OCP曲線)の描画を受付けている様子を示している。
【0078】
クライアント装置20の制御部21は、受付画面120に描画された特性曲線から曲線上の数値(
図6の例ではSOC及びOCPの値)を適宜読み取り、読み取った値を記憶部22に記憶させる。制御部21は、シミュレーション条件として、特性曲線から読み取った値をサーバ装置10へ送信する。また、制御部21は、特性曲線から読み取った数値を表形式で受付画面120に表示し、特性曲線から読み取った数値の変更を受け付けてもよい。数値の変更には、操作部24が備えるキーボードが用いられる。
【0079】
従来では、シミュレーション条件を受付ける際に、ユーザが特性曲線に相当する数値群をキーボードから直接的に入力する必要があり、煩雑な作業となっていた。これに対し、本実施の形態では、受付画面120にて特性曲線の描画を受付けることより、数値入力が完了するので、簡易に、多くの入力値を与えることができる。もちろん、従来通りの操作部24を介した数値入力や、外部ファイルの読み込みに対応してもよい。
【0080】
図7はシミュレーション条件を受付ける受付画面の他の例を示す模式図である。
図7に示す受付画面130は、上述した選択画面110において選択ボタン113Bが操作され、シミュレーション対象として「サイクル劣化」に係る挙動が選択された場合に表示部25に表示される画面の一例を示している。受付画面130では、蓄電デバイスの動作状態の経時的変化、より具体的には蓄電デバイスの充放電電流又は電圧の経時的変化を表す負荷変動曲線の描画を受付ける。負荷変動曲線の描画には、操作部24が備えるマウス又はタッチパネルが用いられる。
図7に示した例では、横軸を時間、縦軸を充放電電流としたグラフ内で負荷変動曲線の描画を受付けている様子を示している。このグラフ内で、時間軸に略平行な直線が描画された場合、その挙動は定電流の充放電として設定され、時間軸に対して斜め方向の直線が描画された場合、その挙動は定電圧の充放電として設定される。時間軸よりも上側に描画された曲線は放電動作として認識され、時間軸よりも下側に描画された曲線は充電動作として認識される。
【0081】
クライアント装置20の制御部21は、受付画面130に描画された負荷変動曲線から曲線上の数値(
図7の例では時間及び充放電電流の値)を適宜読み取り、読み取った値を記憶部22に記憶させる。制御部21は、シミュレーション条件として、負荷変動曲線から読み取った値をサーバ装置10へ送信する。また、制御部21は、負荷変動曲線から読み取った数値を表形式で受付画面130に表示し、負荷変動曲線から読み取った数値の変更を受け付けてもよい。数値の変更には、操作部24が備えるキーボードが用いられる。
【0082】
図8はシミュレーション条件を受付ける受付画面の他の例を示す模式図である。
図8に示す受付画面140は、上述した選択画面110において選択ボタン113Cが操作され、シミュレーション対象として「モジュールの温度分布」に係る挙動が選択された場合に表示部25に表示される画面の一例を示している。受付画面140では、蓄電デバイスの温度分布をシミュレートするために必要な回路構成の描画を受付ける。受付け画面140は、蓄電デバイスに組み込むことが可能な複数種の電池(セル)を表示する表示欄141と、蓄電デバイスの回路構成の描画を受付けるための描画エリア142とを有する。
【0083】
表示欄141には、3種類の電池に対応するアイコン141A~141Cが示されている。表示欄141に表示する電池の数は3種類に限定されるものではなく、更に多種の電池を表示してもよい。また、アイコン141A(141B,141C)に対してダブルクリック等の所定の操作を受付けた場合、対応する電池の詳細情報を表示してもよい。更に、表示した詳細情報に対する編集を受け付けてもよい。
【0084】
アイコン141Aに対応する電池を蓄電デバイスに組み込む場合、受付画面140は、表示欄141からアイコン141Aを描画エリア142内に移動させ、描画エリア142内で配置させる操作を受付ける。アイコン141Aを移動及び配置させる操作の一例はドラッグ操作である。アイコン141B,141Cに対応する電池を蓄電デバイスに組み込む場合についても同様である。
図8の例では、アイコン141Aに対応する電池を5つ配置した状態を示しているが、配置する電池の数は任意であり、複数種の電池を混在させて配置してもよい。
【0085】
受付画面140は、描画エリア142に配置した電池をコピーする操作を受け付けてもよい。コピーする操作の一例は、特定のキーを押下操作した状態で、対象のアイコン(アイコン141A~141C)をドラッグする操作である。
【0086】
受付画面140は、描画エリア142内に配置した複数の電池を結線する操作を受付けることが可能である。複数の電池を結線する操作の一例は、結線対象の電池を囲む操作である。
図8の例では、描画エリア142内に配置した5つの電池を囲む操作によって、それらを直列に結線された状態を示している。結線に係る操作を2種類用意し、一方の操作では電池を直列に結線し、他方の操作では電池を並列に結線する構成としてもよい。例えば、左上から右下へマウスで囲む操作をすれば直列に接続、右上から左下へマウスで囲む交差をすれば並列に接続されてもよい。
【0087】
受付画面140は、結線された電池をグループ化する操作を受付けることが可能である。グループ化する操作の一例は、結線済みの電池を囲む操作である。
図8の例では、結線済みの5つの電池を囲む操作によって、それらをグループ化した回路構成(すなわちモジュール)に変更された状態を示している。
【0088】
受付画面140は、描画エリア142に描画したモジュールをコピーする操作を受け付けてもよい。コピーする操作の一例は、特定のキーを押下操作した状態で、描画済みのモジュールをドラッグする操作である。
図8では、1つのモジュールを2回コピーし、合計3つのモジュールを配置した状態を示している。
【0089】
図8の例では、電池(セル)から複数のモジュールを構成するまでの手順について示したが、モジュールからバンクを構成するまでの手順、バンクからドメインを構成するまでの手順についても同様である。
図8の例では、便宜上、複数の電池を配置した状態、結線前の状態、結線後の状態、グループ化によりモジュールを構成した状態、複数のモジュールを配置した状態を並べて記載したが、実際の受付画面140では、これらを並べて表示する必要はなく、各操作に応じて画面を切り替えながら操作後の状態のみを表示すればよい。
【0090】
図9はシミュレーション条件を受付ける受付画面の他の例を示す模式図である。
図9に示す受付画面150は、上述した選択画面110において選択ボタン113Dが操作され、シミュレーション対象として「安全性予測」に係る挙動が選択された場合に表示部25に表示される画面の一例を示している。受付画面150では、蓄電デバイスの安全性をシミュレートするために必要な回路構成の描画を受付ける。
図9に示す受付画面150では、単一の蓄電素子(セル)における短絡箇所の指定を受け付けている。具体的には、短絡箇所を指定するための円柱状のアイコン151を蓄電素子内に移動させ、配置する操作を受付けることにより、短絡箇所の指定を受付ける。アイコン151を移動及び配置させる操作の一例はドラッグ操作である。受付画面150は、蓄電素子の一つの面内で短絡箇所の指定を受け付けてもよく、更にその面と交差する方向における短絡箇所の指定を受け付けてもよい。
【0091】
以下、サーバ装置10及びクライアント装置20の動作について説明する。
図10及び
図11はサーバ装置10及びクライアント装置20が実行する処理の手順を説明するフローチャートである。クライアント装置20の制御部21は、ユーザ認証の後にサーバ装置10から送信される表示画面用のデータを受信し、シミュレーション対象の挙動を選択するための選択画面110を表示部25に表示する(ステップS101)。制御部21は、表示部25に表示した選択画面110を通じて、シミュレーション対象の挙動についての選択を受付ける(ステップS102)。
【0092】
また、制御部21は、選択された挙動をシミュレートするために必要なシミュレーション条件を受付けるための受付画面120(130~150)を表示部25に表示する(ステップS103)。制御部21は、表示部25に表示した受付画面120(130~150)を通じて、シミュレーション条件を受付ける(ステップS104)。シミュレーション条件は、上述したように、蓄電デバイスの物理的性質、動作状態、回路構成等を含む。また、制御部21は、受付けたシミュレーション条件を記憶部22に記憶させておき、同じようなシミュレーション条件でシミュレーションを再実行する際に読み出せるようにしてもよい。ステップS106においてシミュレーション条件を受付ける際、制御部21は、蓄電デバイスの環境温度の入力をユーザに促すようにしてもよい。
【0093】
制御部21は、ステップS102で選択されたシミュレーション対象の挙動の情報と、ステップS104で受付けたシミュレーション条件の情報とを、通信部23を通じてサーバ装置10へ送信する(ステップS105)。
【0094】
サーバ装置10は、クライアント装置20から送信されるシミュレーション対象の挙動の情報と、シミュレーション条件の情報とを通信部13にて受信する(ステップS106)。サーバ装置10の制御部11は、通信部13を通じて受信したシミュレーション対象の挙動の情報及びシミュレーション条件の情報に基づき、シミュレーションを実行する(ステップS107)。このとき、制御部11は、シミュレーション対象の挙動に対応するシミュレーションプログラムを選択し、選択したシミュレーションプログラムにシミュレーション条件を適用することによって、蓄電デバイスの挙動をシミュレートする。シミュレーション条件に蓄電デバイスの環境温度が含まれる場合、制御部11は、環境温度を加味して蓄電デバイスの挙動をシミュレートすればよい。また、制御部11は、ステップS106で受信したシミュレーション条件を、ユーザ認証の際に入力されたユーザIDに関連付けて、記憶部12に記憶させてもよい。シミュレーションが完了した場合、制御部11は、通信部13を通じて、シミュレーションが完了した旨の通知をクライアント装置20へ送信する(ステップS108)。
【0095】
クライアント装置20は、シミュレーションが完了した旨の通知を受信した場合(ステップS109)、シミュレーション結果(数値データ、グラフ等のデータ、又はシミュレーションの結果として得られる数理モデル)の送信をサーバ装置10に要求することができる。クライアント装置20の制御部21は、結果ダウンロードの要求を受付けたか否かを判断する(ステップS110)。例えば、
図5に示す選択画面110において、ダウンロードボタン114が操作された場合、制御部21は、結果ダウンロードの要求を受付けたと判断する。結果ダウンロードの要求を受付けた場合(S110:YES)、制御部21は、シミュレーション結果として得られる数値データ、グラフ等のデータの送信要求を通信部23からサーバ装置10へ送信する(ステップS111)。
【0096】
サーバ装置10は、クライアント装置20から送信要求を受信した場合(ステップS112)、ステップS107でシミュレーションを実行することにより得られるシミュレーション結果をクライアント装置20へ送信する(ステップS113)。ステップS113で送信するシミュレーション結果は、数値データであってもよく、数値データから生成したグラフ、コンター図及び動画などであってもよい。
【0097】
クライアント装置20は、サーバ装置10から送信されるシミュレーション結果を通信部23にて受信する(ステップS114)。クライアント装置20の制御部21は、受信したシミュレーション結果を表示部25に表示させる(ステップS115)。
図12はシミュレーション結果の表示例を示す模式図である。
図12は、蓄電デバイスの充放電特性に係るシミュレーションの実行結果の一例であり、例えば、横軸に容量(Ah)、縦軸に端子電圧(V)をとったグラフにより表される。
図12の例では、蓄電デバイスの充放電特性に係るシミュレーションの実行結果について説明したが、サイクル劣化、モジュールの温度分布、及び安全性予測についてのシミュレーション結果を表示する場合についても同様である。すなわち、サイクル劣化では、例えば、横軸に充電サイクル回数、縦軸に容量をとったグラフによりシミュレーション結果を表示することができる。また、モジュールの温度分布では、例えば、横軸に時間、縦軸に温度をとったセル毎の温度変化を示すグラフによりシミュレーション結果を表示することができる。更に、安全性予測では、横軸を時間、縦軸を発熱密度にとったグラフによりシミュレーション結果を表示することができる。シミュレーション結果は、
図12に示すようにグラフによる提供に限定されるものではなく、数値データ、コンター図及び動画などで提供されるものであってもよい。
【0098】
ステップS110において、結果ダウンロードの要求を受け付けていないと判断した場合(S110:NO)、制御部21は、数理モデルの送信要求を受付けたか否かを判断する(ステップS116)。例えば、
図5に示す選択画面110において、ダウンロードボタン115が操作された場合、制御部21は、数理モデルの送信要求を受付けたと判断する。
【0099】
制御部21は、数理モデルの送信要求を受付ける際に、ダウンロードする数理モデルのフォーマットについての指定を受け付けてもよい。
図13は数理モデルのフォーマットを選択する選択画面の一例を示す模式図である。
図13は、例えば、
図5の選択画面110においてダウンロードボタン115が押下操作された場合に、表示する画面の一例を示している。
図13の例では、数理モデルのファイルフォーマットとして、MATLAB(登録商標)、ANSYS(登録商標)、Amesim(登録商標)、Modelica(登録商標)のフォーマットを選択することができることを示している。
【0100】
数理モデルの送信要求を受付けた場合(S116:YES)、制御部21は、数理モデルの送信要求を通信部23からサーバ装置10へ送信する(ステップS117)。数理モデルの送信要求を受け付けていない場合(S116:NO)、制御部21は、本フローチャートによる処理を終了する。
【0101】
サーバ装置10は、クライアント装置20から数理モデルの送信要求を受信した場合(ステップS118)、ステップS107でシミュレーションの結果として得られる数理モデルをクライアント装置20へ送信する(ステップS119)。クライアント装置20において数理モデルのフォーマットが指定された場合、制御部11は、指定されたフォーマットの数理モデルをクライアント装置20へ送信する。
【0102】
クライアント装置20は、サーバ装置10から送信される数理モデルを通信部23にて受信する(ステップS120)。
図14はサーバ装置10から受信する数理モデルの一例を示す模式図である。制御部21は、受信した数理モデルを記憶部22に記憶させる。記憶部22に記憶させた数理モデルは、対応する数値解析ソフトウェア又はプログラミング言語にて利用可能であり、シミュレーション条件を与えることによって、クライアント装置20にてシミュレーションを実行することができる。
【0103】
以上のように、本実施の形態では、ユーザが望む条件にて蓄電デバイスの挙動をシミュレートし、シミュレーション結果をユーザに提供することができる。また、必要に応じて、蓄電デバイスの挙動をシミュレートした結果として得られる数理モデルをユーザに提供できるので、クライアント装置20では、サーバ装置10からダウンロードした数理モデルを用いて、所望の条件にて蓄電デバイス若しくは蓄電デバイスを含むシステムのシミュレーション結果を取得することができる。
本実施の形態に係るサーバ装置10は、蓄電デバイスの挙動として、「セルの充放電」、「サイクル劣化」、「モジュールの温度分布」、「安全性予測」をシミュレートする構成としたが、これらの挙動に限らず、充放電時の蓄電デバイスの動的変化または時系列変化をシミュレートすればよい。
【0104】
以上の実施の形態のほか、本発明には、以下の態様も含まれる。
【0105】
一態様に係る記録媒体は、コンピュータに、端末装置のユーザ認証後に、前記端末装置から、蓄電デバイスのシミュレーション条件を受信し、受信したシミュレーション条件に基づき、前記蓄電デバイスの挙動をシミュレートし、シミュレーション結果を前記端末装置へ送信する処理を実行させるためのコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0106】
一態様に係る記録媒体は、コンピュータに、複数のシミュレーション選択肢を提示し、選択されたシミュレーション選択肢についての蓄電デバイスのシミュレーション条件を端末装置から受信し、受信したシミュレーション条件に基づき、前記蓄電デバイスの挙動をシミュレートし、シミュレーション結果を前記端末装置へ送信する処理を実行させるためのコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0107】
一態様に係る記録媒体は、蓄電デバイスの挙動をシミュレートする開発支援装置と通信可能に接続されるコンピュータに、シミュレーション条件を受付ける受付画面を表示し、表示した受付画面にてシミュレーション条件を受付け、前記受付画面にて受付けたシミュレーション条件を前記開発支援装置へ送信し、前記シミュレーション条件に基づく前記挙動のシミュレーション結果を前記開発支援装置から受信し、受信したシミュレーション結果を表示画面に表示する処理を実行させるためのコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0108】
一態様に係る記録媒体は、コンピュータに、受付画面にて、蓄電デバイスの物理的性質を表す特性曲線、又は前記蓄電デバイスの動作状態の経時的変化を表す負荷変動曲線の描画を受付け、前記受付画面に描画された特性曲線又は負荷変動曲線から数値を読み取ることにより、前記物理的性質又は前記動作状態に係る情報を取得する処理を実行させるためのコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取りが可能な記録媒体である。
【0109】
一態様に係るコンピュータプログラムは、蓄電デバイスの挙動をシミュレートする開発支援装置と通信可能に接続されるコンピュータに、シミュレーション条件を受付ける受付画面を表示し、表示した受付画面にてシミュレーション条件を受付け、前記受付画面にて受付けたシミュレーション条件を前記開発支援装置へ送信し、前記シミュレーション条件に基づく前記挙動のシミュレーション結果を前記開発支援装置から受信し、受信したシミュレーション結果を表示画面に表示する処理を実行させるためのコンピュータプログラムである。
【0110】
前記シミュレーション条件は、前記蓄電デバイスの回路構成、物理的性質、及び動作状態の少なくとも1つを含んでもよい。
【0111】
コンピュータプログラムは、前記コンピュータに、前記受付画面にて、前記回路構成の描画を受付け、前記受付画面に描画された回路構成から、前記蓄電デバイスの回路構成に係る情報を取得する処理を実行させてもよい。
【0112】
コンピュータプログラムは、前記コンピュータに、前記受付画面にて、前記蓄電デバイスを構成する蓄電素子の配置、及び蓄電素子間の接続関係についての描画を受付ける処理を実行させてもよい。
【0113】
コンピュータプログラムは、前記コンピュータに、前記受付画面にて、前記蓄電デバイスにおける短絡箇所の指定を受付ける処理を実行させてもよい。
【0114】
コンピュータプログラムは、前記コンピュータに、前記受付画面にて、前記蓄電デバイスの物理的性質を表す特性曲線、又は前記蓄電デバイスの動作状態の経時的変化を表す負荷変動曲線の描画を受付け、前記受付画面に描画された特性曲線又は負荷変動曲線から数値を読み取ることにより、前記物理的性質又は前記動作状態に係る情報を取得する処理を実行させてもよい。
【0115】
コンピュータプログラムは、前記コンピュータに、受付けたシミュレーション条件を記憶装置に記憶させ、前記開発支援装置へ送信すべきシミュレーション条件を前記記憶装置から読み出す処理を実行させてもよい。
【0116】
前記開発支援装置がシミュレートする前記蓄電デバイスの挙動は、前記蓄電デバイスの充放電に伴う端子電圧の変化、前記蓄電デバイスの充放電に伴う容量の変化、前記蓄電デバイスの容量の経時的変化、又は前記蓄電デバイスにおける温度分布を含んでもよい。
【0117】
前記シミュレーション結果は、シミュレーション対象の挙動に対応したシミュレーションプログラムに基づく数値解析によって得られる数値データを含んでもよい。
【0118】
前記シミュレーション結果は、前記挙動のシミュレーションの結果として得られる数理モデルを含んでもよい。
【0119】
コンピュータプログラムは、前記コンピュータに、受信すべき数理モデルに対するフォーマットの指定を受付け、指定されたフォーマットの数理モデルを送信するように前記開発支援装置に要求する処理を実行させてもよい。
【0120】
一態様に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、受付画面にて、蓄電デバイスの物理的性質を表す特性曲線、又は前記蓄電デバイスの動作状態の経時的変化を表す負荷変動曲線の描画を受付け、前記受付画面に描画された特性曲線又は負荷変動曲線から数値を読み取ることにより、前記物理的性質又は前記動作状態に係る情報を取得する処理を実行させる。
【0121】
開示された実施形態は、全ての点において例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0122】
10 サーバ装置
11 制御部
12 記憶部
13 通信部
14 操作部
15 表示部
20 クライアント装置
21 制御部
22 記憶部
23 通信部
24 操作部
25 表示部
N 通信網