(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】フィルター用濾材およびフィルター
(51)【国際特許分類】
B01D 39/16 20060101AFI20240123BHJP
A61L 9/014 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
B01D39/16 E
B01D39/16 A
A61L9/014
(21)【出願番号】P 2020549725
(86)(22)【出願日】2020-05-11
(86)【国際出願番号】 JP2020018839
(87)【国際公開番号】W WO2020230760
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2019090526
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019090527
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高見 健人
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/188923(WO,A1)
【文献】特開2012-239621(JP,A)
【文献】国際公開第2015/115418(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/041257(WO,A1)
【文献】特開平09-059859(JP,A)
【文献】特開2009-242973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00-41/04
A61L 9/00-9/22
B32B 1/00-43/00
D04H 1/00-18/04
D21H 13/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長繊維不織布と湿式不織布とが積層された積層体構造を有するフィルター用濾材であって、
前記湿式不織布
を構成する繊維は、
ビニロン
繊維、ポリエステル
繊維、及びポリビニルアルコール
繊維であり、
前記湿式不織布を構成する繊維の平均繊維径が1~100μmであり、前記湿式不織布を構成する繊維の繊維長が30mm以下であり、前記湿式不織布の目付が10~100g/m
2
であり、
前記湿式不織布は、通気の最上流に配置され、
通気の最上流に配置される面の表面粗さ(SMD)が2.7μm以下であり、かつ、
(a)長繊維不織布に積層される面の表面粗さ(SMD)が3.0μm以上、または、(b)長繊維不織布に積層される面のざらつき感(MMD)が0.02以上、であることを特徴と
し、
前記表面粗さ(SMD)は、テーブルに固定した前記湿式不織布を1mm/sの速度で、10gfの荷重をかけながら、接触子を掃引させ、検出された表面凹凸データの平均偏差であり、
前記ざらつき感(MMD)は、テーブルに固定した前記湿式不織布を1mm/sの速度で、10gfの荷重をかけながら、接触子を掃引させ、検出された表面摩擦係数の変動度合いであるフィルター用濾材。
【請求項2】
前記湿式不織布は、前記ポリビニルアルコール
繊維を10~20重量%含有していることを特徴とする請求項1に記載のフィルター用濾材。
【請求項3】
前記湿式不織布はポリアクリル酸エステルを0.001~0.1重量%含有していることを特徴とする請求項1
又は2に記載のフィルター用濾材。
【請求項4】
前記長繊維不織布がスパンボンド不織布であることを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載のフィルター用濾材。
【請求項5】
前記長繊維不織布と前記湿式不織布との間に吸着剤が挟み込まれていることを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載のフィルター用濾材。
【請求項6】
前記長繊維不織布と
前記湿式不織布との層間の剥離強度が0.5mN以上であることを特徴とする請求項1~
5のいずれか1項に記載のフィルター用濾材。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載のフィルター用濾材を用いたフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルター用濾材およびフィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、空調用、エアコン用、自動車用等のフィルターにおいて、濾材の高性能化、低コストの要求が高まってきており、除塵性能と脱臭性能を両立するフィルター用濾材の検討が多くなされている(例えば、特許文献1~3参照)。更なる高機能化として、一度付着した異物を簡易に除去できるフィルターの要求も高まってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国公開特許公報「特開平11-5058号」
【文献】日本国公開特許公報「特開平3-98642号」
【文献】日本国公開特許公報「特開2001-218824号」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、空気清浄用、掃除機用等に使用されているフィルター用濾材では、付着した異物を清掃の際に除去するのは困難である。また、付着した異物の除去と、積層してシート化した後の接着強度の向上との両立は困難である。
【0005】
そこで本発明は、上記課題に鑑みなされ、付着した異物を簡易に除去でき、且つ積層してシート化した後の接着強度が優れたフィルター用濾材等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。すなわち本発明は以下の通りである。
(1)長繊維不織布と湿式不織布とが積層された積層体構造を有するフィルター用濾材であって、
前記湿式不織布は、
ビニロン、ポリエステル、及びポリビニルアルコールから構成され、
通気の最上流に配置され、
通気の最上流に配置される面の表面粗さ(SMD)が2.7μm以下であり、かつ、
(a)長繊維不織布に積層される面の表面粗さ(SMD)が3.0μm以上、または、(b)長繊維不織布に積層される面のざらつき感(MMD)が0.02以上、であることを特徴とするフィルター用濾材。
(2)前記湿式不織布は、前記ポリビニルアルコールを10~20重量%含有していることを特徴とする(1)に記載のフィルター用濾材。
(3)前記湿式不織布は、繊維長30mm以下の繊維から成ることを特徴とする(1)または(2)に記載のフィルター用濾材。
(4)前記湿式不織布はポリアクリル酸エステルを0.001~0.1重量%含有していることを特徴とする(1)~(3)のいずれか1つに記載のフィルター用濾材。
(5)前記長繊維不織布がスパンボンド不織布であることを特徴とする(1)~(4)のいずれか1つに記載のフィルター用濾材。
(6)前記長繊維不織布と前記湿式不織布との間に吸着剤が挟み込まれていることを特徴とする(1)~(5)のいずれか1つに記載のフィルター用濾材。
(7)長繊維不織布と湿式不織布との層間の剥離強度が0.5mN以上であることを特徴とする(1)~(6)のいずれか1つに記載のフィルター用濾材。
(8)(1)~(7)のいずれか1つに記載のフィルター用濾材を用いたフィルター。
【発明の効果】
【0007】
本発明のフィルター用濾材は、通気の最上流に配置される面の表面粗さ(SMD)が2.7μm以下となっており平坦であるため、簡易に異物を除去できる。そのため、本発明のフィルター用濾材を用いたフィルターの清掃を容易にすることができる。また、湿式不織布の長繊維不織布に積層される面において、(a)表面粗さ(SMD)が3.0μm以上、または、(b)ざらつき感(MMD)が0.02以上であるため、湿式不織布と長繊維不織布とを積層してシート化した後の両者の接着強度に優れ、耐久性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の濾材は、長繊維不織布と湿式不織布とが積層された積層体構造を有するフィルター用濾材である。湿式不織布は、(1)ビニロン、ポリエステル、及びポリビニルアルコールから構成され、(2)通気の最上流に配置され、(3)通気の最上流に配置される面の表面粗さ(SMD)が2.7μm以下であり、かつ、(4)(a)長繊維不織布に積層される面の表面粗さ(SMD)が3.0μm以上、または(b)長繊維不織布に積層される面のざらつき感(MMD)が0.02以上、である。また、長繊維不織布は、湿式不織布よりも通気の下流に配置される。
【0009】
本明細書において、表面粗さとは、カトーテック製摩擦感テスター(KES-SE)による評価において、表面の凹凸データの平均偏差を示すSMDの値である。SMDの値が大きくなるに従い、表面が粗く、凹凸性を有していることを示す。また、本明細書において、ざらつき感とは、カトーテック製摩擦感テスター(KES-SE)による評価において、検出された表面摩擦係数の変動度合い、つまり、摩擦係数の変動(MMD)を示す値である。
【0010】
本実施形態の濾材では、通気の最上流に配置される面の表面粗さ(SMD)が2.7μm以下である。2.7μmよりも大きいと、付着した異物が表面の凹凸性により除去し難い。
【0011】
本実施形態の湿式不織布は、長繊維不織布に積層される面の表面粗さが3.0以上である。表面粗さが3.0よりも小さいと、長繊維不織布との接着性が悪くなる。または、本実施形態の湿式不織布は、長繊維不織布に積層される面のざらつき感(MMD)が0.02以上である。ざらつき感(MMD)が0.02よりも小さいと、長繊維不織布との接着性が悪くなる。接着性が悪くなると、湿式不織布と長繊維不織布との積層時にてシワが発生することがある。この場合、後述のように間に活性炭等の粒状物を挟んでいると、この粒状物がシワの頂点部等から落ち、製品において活性炭の無い部分が外観上目立ち、品位が悪くなる。
【0012】
本実施形態の湿式不織布を構成する繊維構造体の素材は、ビニロン、ポリエステル、及びポリビニルアルコールから構成されている。ここで、ポリビニルアルコールを10~20重量%含有しているのが好ましい。10%未満であると、湿式不織布の腰強度が弱く、更には表面平滑性が得られにくい。20重量%よりも多いと、通気抵抗が上がってしまう。
【0013】
本実施形態の湿式不織布は、ポリアクリル酸エステルを0.001~0.1重量%含有していることが好ましい。0.001%未満であると、表面平滑性及び表面滑り性が向上せず、0.1重量%よりも多くなると、通気抵抗が上がってしまう。
【0014】
本実施形態の湿式不織布を構成する繊維構造体の素材は、特に限定されず、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の素材を用いることができる。
【0015】
本実施形態の湿式不織布の繊維配向は、特に限定はなく、例えば不織布状であればランダム状、クロス状、パラレル状いずれでも構わない。
【0016】
本実施形態の湿式不織布を構成する繊維の平均繊維径は、1~100μmが好ましく、5~50μmがより好ましい。構成繊維の平均繊維径が1μmよりも小さいと、繊維間の空隙も狭くなり、空気中の塵埃がカバー層上に堆積し、通気抵抗が急上昇する。構成繊維の平均繊維径が100μmよりも大きいと、異物を除去し難くなる。
【0017】
本実施形態の湿式不織布を構成する繊維の繊維長は30mm以下が好ましい。繊維長が30mmよりも大きいと、繊維が厚み方向に配向しやすくなり、表面粗さが大きくなる。
【0018】
本実施形態の湿式不織布は、目付量が10~100g/m2であることが好ましく、20~80g/m2がより好ましい。目付が10g/m2未満であれば地合いが悪くなる。目付が100g/m2を越えると、シート厚み大きくなり、フィルターに用いる際にプリーツ加工した際の構造抵抗が大きくなる。
【0019】
本実施形態の湿式不織布は、公知の湿式抄紙法により公知の抄紙機で製造することが可能である。
【0020】
本実施形態の長繊維不織布は、ポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリウレタン系繊維等の繊維から成るシート状物であり、ポリエステル系繊維が好ましい。ポリエステル系繊維であると、剛性が比較的高いため、濾材の強度が高まり、プリーツ加工が容易となる。長繊維不織布の製造方法はスパンボンド法が好ましい。
【0021】
本実施形態の長繊維不織布の目付は、5~100g/m2が好ましく、10~80g/m2がより好ましい。目付が5g/m2未満では剛性が弱くなり、他方、100g/m2を超えると、繊維本数の増加に伴い圧力損失が高くなるばかりか、繊維間の粉塵保持空間が減少し、粉塵保持量が低下する。
【0022】
本実施形態の長繊維不織布を構成する繊維の繊維径は、3~100μmが好ましく、5~80μmがより好ましく、10~60μmがさらに好ましい。かかる範囲であれば、圧力損失の増加を防ぎ、かつ、十分な剛性を得ることができる。
【0023】
本実施形態の長繊維不織布の繊維配向は、特に限定はなく、例えば不織布状であればランダム状、クロス状、パラレル状いずれでも構わない。
【0024】
本実施形態の濾材は、厚みが0.1~3.0mmであることが好ましい。厚みが0.1mmよりも小さいと地合いが悪くなる。厚みが3.0mmよりも大きいと濾材全体の厚みが大き過ぎ、プリーツ状のフィルターとした場合に構造抵抗が大きくなり、結果としてフィルター全体での通気抵抗が高くなり過ぎ、実用上問題がある。
【0025】
本実施形態の濾材は、長繊維不織布と湿式不織布との間に、粒状吸着材と接着材(バインダー)とを挟持してもよい。
【0026】
把持されるバインダーは、熱可塑性樹脂から成ることが好ましく、この熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン-アクリル共重合体樹脂等が挙げられる。バインダーの成分は特に限定されるものではないが、ポリオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂が好ましい。基材層(長繊維不織布または湿式不織布)とバインダーとの界面が強固に接着され、高い剥離強度が得られるためである。
【0027】
本実施形態の濾材のバインダーに使用する熱可塑性樹脂は、粉末状(粒状)で、その大きさが平均粒子径で100~400μmであるものが好ましい。粒状の熱可塑性樹脂(粒状バインダー)が100μm未満であると、粒状吸着材と熱可塑性樹脂との間にファンデルワールス力や静電気力による付着力が働き、熱可塑性樹脂が基材層と積極的に接触することができず、十分な剥離強度が得られない。他方、400μmを超えると、濾材の厚みが大きくなり、フィルターとした場合の構造抵抗が増加し、実用上好ましくない。
【0028】
本実施形態の濾材に用いられる粒状バインダーは、粒状吸着材に対して10~80重量%使用するのが好ましく、20~60重量%使用するのがより好ましい。かかる範囲内であれば、基材層との接着力、圧力損失、脱臭性能に優れる濾材が得られるからである。
【0029】
本実施形態の濾材の粒状吸着材としては、活性炭、シリカゲル、ゼオライト、セパオライト等の無機物の他、スチレン-ジビニルベンゼン架橋体に代表される有機系の多孔質体が使用可能である。特に、極めて大きな比表面積を持っているため、活性炭やシリカゲルが好ましい。
【0030】
粒状吸着材として活性炭を用いる場合、例えば、ヤシガラ系、木質系、石炭系、ピッチ系等の活性炭が好適である。表面観察によって見られる内部への導入孔いわゆるマクロ孔数は多い方がよい。マクロ孔数が多いと、活性炭と粒状バインダーとから成る混合粉粒体を製造する際に、バインダーが活性炭表面を被覆しても、熱プレス加工時に細孔内部からのガス脱着により、吸着可能な孔を開放することができる。また、活性炭表面はある程度粗い方が溶融したバインダー樹脂の流動性も悪くなり、吸着性能低下を抑えることができる。
【0031】
本実施形態の濾材では、粒状吸着材に、極性物質やアルデヒド類の吸着性能を向上することを目的として、薬品処理を施して用いてもよい。薬品処理に用いられる薬品としては、吸着対象が、アルデヒド系ガスやNOx等の窒素化合物、SOx等の硫黄化合物、酢酸等の酸性の極性物質である場合には、例えばエタノールアミン、ポリエチレンイミン、アニリン、P-アニシジン、スルファニル酸、テトラヒドロ-1.4-オキサジン、ヒドラジド化合物等のアミン系薬剤が挙げられる。アミン系薬剤としてはテトラヒドロ-1.4-オキサジンが好ましい。比較的容易に入手でき、また水に溶けやすいため、添着加工が容易である。またそれ以外には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸グアニジン、リン酸グアニジン、アミノグアニジン硫酸塩、5.5-ジメチルヒダントイン、ベンゾグアナミン、2.2-イミノジエタノール、2.2.2-ニトロトリエタノール、エタノールアミン塩酸塩、2-アミノエタノール、2.2-イミノジエタノール塩酸塩、P-アミノ安息香酸、スルファニル酸ナトリウム、L-アルギニン、メチルアミン塩酸塩、セミカルバジド塩酸塩、ヒドラジン、ヒドロキノン、硫酸ヒドロキシルアミン、過マンガン酸塩、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が好適に用いられる。吸着対象が、アンモニア、メチルアミン、トリメチルアミン、ピリジン等の塩基性の極性物質である場合には、例えば、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、酒石酸等が好適に用いられる。これらの薬品にて処理した吸着材は、単独あるいは薬品処理していない吸着材と混合して用いてもよい。
【0032】
なお、薬品処理は、例えば、吸着材に薬品を担持させたり、添着したりすることにより行う。また、吸着材に直接薬品を処理する以外に、濾材表面付近に通常のコーティング法等で添着加工する方法や濾材全体に含浸添着することも可能である。この際、アルギン酸ソーダやポリエチレンオキサイド等の増粘剤を混入した薬品水溶液を作り、これを担持、添着を実施する方法も可能である。この方法では水への溶解度が低い薬品を担持、添着し、さらに薬品の脱落を抑制するのにも有効である。
【0033】
本実施形態の濾材は、抗菌剤、抗かび剤、抗ウイルス剤、難燃剤等の付随的機能を有する成分等を含めて構成してもよい。これらの成分は基材層を成す繊維類や不織布中に練り込んでも、後加工で添着、及び担持して付与してもよい。例えば、濾材を難燃剤を含めて構成することにより、FMVSS.302で規定されている遅燃性の基準やUL難燃規格に合致した濾材を製造することが可能である。
【0034】
本実施形態の濾材を用いた本実施形態のフィルターも本発明の範疇である。本実施の形態のフィルターには、例えば、プリーツ加工や、枠などへの取付加工が施されていてもよい。また、本実施形態のフィルターは、本実施形態の濾材に他の材料を組み合わせて形成されてもよい。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。後段の実施例および比較例に示す特性は以下の方法で測定した。なお、本発明は実施例に記載されたものに限定されない。
【0036】
(圧力損失)
濾材をダクト内に設置し、空気濾過速度が50cm/秒になるよう大気を通気させ、濾材の上流および下流の静圧差を差圧計にて読み取り、圧力損失(Pa)を測定する。
【0037】
(剥離強度)
長繊維不織布と湿式不織布との間の平均剥離強度を測定する。濾材の試験片のサイズは、巾50mm、長さ200mmとして、引張強度100mm/分で実施する。
【0038】
(剛性)
JIS L-1096 A法(ガーレ法)に準拠し、MD方向の剛軟度を測定する。
【0039】
(表面凹凸性)
カトーテック製、摩擦感テスター(KES-SE)にて評価する。テーブルに固定した不織布を1mm/sの速度で、10gfの荷重をかけながら、接触子を掃引させ、検出された表面凹凸データの平均偏差を表面粗さ(SMD)の値とする。
(ざらつき感)
カトーテック製、摩擦感テスター(KES-SE)にて評価する。テーブルに固定した不織布シートを1mm/sの速度で、10gfの荷重をかけながら、接触子を掃引させ、検出された表面摩擦係数の変動度合い(摩擦係数の変動)をざらつき感(MMD)とする。
【0040】
(異物除去性)
試料として15cm角のサイズに濾材を切り取り、JIS15種粉塵を5m3/minにて負荷させ、通気抵抗がベースよりも50Paアップした時点で負荷を止める。資料に捕集された粉塵量を重量にて評価する。そして15cm角の試料を机上に対して垂直に治具に設置し、高さ10cmのところから10回落とす。最後に試料の重量を測り、試料から落ちた重量を確認する。試料から落ちた重量が付着量の7割であれば、異物除去性能は良好である(○)との判定とする。
【0041】
〔実施例1〕
ビニロン繊維(17dtex、平均繊維長12mm、平均繊維径40μm)、ビニロン繊維(7dtex、平均繊維長10mm、平均繊維径25μm)、ビニロン繊維(2.2dtex、平均繊維長6mm、平均繊維径15μm)、ポリエステル繊維(0.6dtex、平均繊維長5mm、平均繊維径8μm)、ポリエステル繊維(2.2dtex、平均繊維長5mm、平均繊維径15μm)、PVA繊維(1.1dtex、平均繊維長3mm、平均繊維径10μm)を、26:31.25:5.25:11.25:11.25:15の重量比で混繊し、パルパーで水中に分散させ、湿式抄紙用原液を調整した。
この湿式抄紙用原液を短網式抄紙法にて抄紙して湿潤ウェッブをつくり、その後プレスローラーで軽く絞り140℃で回転乾燥ドラムにて乾燥し、目付40g/m2、厚み0.3mmの実施例1の湿式不織布を得た。
【0042】
〔実施例2〕
ビニロン繊維(7dtex、平均繊維長10mm、平均繊維径25μm)、ビニロン繊維(2.2dtex、平均繊維長6mm、平均繊維径15μm)、ポリエステル繊維(0.6dtex、平均繊維長5mm、平均繊維径8μm)、ポリエステル繊維(2.2dtex、平均繊維長5mm、平均繊維径15μm)、PVA繊維(1.1dtex、平均繊維長3mm、平均繊維径10μm)を、51:7.6:16.2:16.2:9の重量比で混繊し、更にポリアクリル酸エステルを投入した繊維重量に対して0.05%となるように測り、パルパーで水中に分散させ、湿式抄紙用原液を調整した。
この湿式抄紙用原液を短網式抄紙法にて抄紙して湿潤ウェッブをつくり、その後プレスローラーで軽く絞り140℃で回転乾燥ドラムにて乾燥し、目付30g/m2、厚み0.2mmの実施例2の湿式不織布を得た。
【0043】
〔実施例3〕
ビニロン繊維(7dtex、平均繊維長10mm、平均繊維径25μm)、ビニロン繊維(2.2dtex、平均繊維長6mm、平均繊維径15μm)、ポリエステル繊維(0.6dtex、平均繊維長5mm、平均繊維径8μm)、ポリエステル繊維(2.2dtex、平均繊維長5mm、平均繊維径15μm)、PVA繊維(1.1dtex、平均繊維長3mm、平均繊維径10μm)を、45:7.6:16.2:16.2:15の重量比で混繊し、更にポリアクリル酸エステルを投入した繊維重量に対して0.05%となるように測り、パルパーで水中に分散させ、湿式抄紙用原液を調整した。
この湿式抄紙用原液を短網式抄紙法にて抄紙して湿潤ウェッブをつくり、その後プレスローラーで軽く絞り140℃で回転乾燥ドラムにて乾燥し、目付30g/m2、厚み0.2mmの実施例3の湿式不織布を得た。
【0044】
〔実施例4〕
ビニロン繊維(7dtex、平均繊維長10mm、平均繊維径25μm)、ビニロン繊維(2.2dtex、平均繊維長6mm、平均繊維径15μm)、ポリエステル繊維(0.6dtex、平均繊維長5mm、平均繊維径8μm)、ポリエステル繊維(2.2dtex、平均繊維長5mm、平均繊維径15μm)、PVA繊維(1.1dtex、平均繊維長3mm、平均繊維径10μm)を、39:7.6:16.2:16.2:21の重量比で混繊し、パルパーで水中に分散させ、湿式抄紙用原液を調整した。
この抄紙用原液を短網式抄紙法にて抄紙して湿潤ウェッブをつくり、その後プレスローラーで軽く絞り140℃で回転乾燥ドラムにて乾燥し、目付30g/m2、厚み0.2mmの実施例4の湿式不織布を得た。
【0045】
〔実施例5〕
ビニロン繊維(7dtex、平均繊維長10mm、平均繊維径25μm)、ビニロン繊維(2.2dtex、平均繊維長6mm、平均繊維径15μm)、ポリエステル繊維(0.6dtex、平均繊維長5mm、平均繊維径8μm)、ポリエステル繊維(2.2dtex、平均繊維長5mm、平均繊維径15μm)、PVA繊維(1.1dtex、平均繊維長3mm、平均繊維径10μm)を、45:7.6:16.2:16.2:15の重量比で混繊し、更にポリアクリル酸エステルを投入した繊維重量に対して0.15%となるように測り、パルパーで水中に分散させ、湿式抄紙用原液を調整した。
この湿式抄紙用原液を短網式抄紙法にて抄紙して湿潤ウェッブをつくり、その後プレスローラーで軽く絞り140℃で回転乾燥ドラムにて乾燥し、目付30g/m2、厚み0.2mmの実施例5の湿式不織布を得た。
【0046】
上記で説明した実施例1~5の湿式不織布に対してそれぞれ以下のように実施例1~5の濾材を作製した。湿式不織布の下流となる側に、平均粒径200μmのヤシ殻活性炭および平均粒径200μmのポリオレフィン系熱可塑性樹脂の重量比が1:0.5である混合粉末を、目付90g/m2になるように散布した。さらに、その上から目付20g/m2のポリエステル系長繊維不織布を重ね合わせ、140℃の加熱処理にてシート化を行ない、濾材を作製した。このように作製した実施例1~5の濾材につき、それぞれ、湿式不織布側を通気の上流にし、長繊維不織布側を通気の下流にして各評価を実施した。その結果を後段の表1に示す。
【0047】
〔比較例1〕
低融点ポリエステル繊維(22dtex、平均繊維長64mm、平均繊維径45μm)、低融点ポリエステル繊維(4.4dtex、平均繊維長51mm、平均繊維径20μm)、レギュラーポリエステル繊維(17dtex、平均繊維長51mm、平均繊維径40μm)を、重量比5:3:2で混繊し、サーマルボンド法により、厚み0.2mm、目付65g/m2、の比較例1のサーマルボンド不織布を得た。
【0048】
〔比較例2〕
ビニロン繊維(7dtex、平均繊維長10mm、平均繊維径25μm)、ビニロン繊維(2.2dtex、平均繊維長6mm、平均繊維径15μm)、ポリエステル繊維(0.6dtex、平均繊維長5mm、平均繊維径8μm)、ポリエステル繊維(2.2dtex、平均繊維長5mm、平均繊維径15μm)、PVA繊維(1.1dtex、平均繊維長3mm、平均繊維径10μm)を、51:7.6:16.2:16.2:9の重量比で混繊し、パルパーで水中に分散させ、湿式抄紙用原液を調整した。
この湿式抄紙用原液を短網式抄紙法にて抄紙して湿潤ウェッブをつくり、その後プレスローラーで軽く絞り140℃で回転乾燥ドラムにて乾燥し、目付30g/m2、厚み0.2mmの比較例2の湿式不織布を得た。
【0049】
〔比較例3〕
ビニロン繊維(7dtex、平均繊維長10mm、平均繊維径25μm)、ビニロン繊維(2.2dtex、平均繊維長6mm、平均繊維径15μm)、ポリエステル繊維(0.6dtex、平均繊維長5mm、平均繊維径8μm)、ポリエステル繊維(2.2dtex、平均繊維長5mm、平均繊維径15μm)、PVA繊維(1.1dtex、平均繊維長3mm、平均繊維径10μm)を、45:7.6:16.2:16.2:15の重量比で混繊し、更にポリアクリル酸エステルを投入した繊維重量に対して0.0009%となるように測り、パルパーで水中に分散させ、湿式抄紙用原液を調整した。
この湿式抄紙用原液を短網式抄紙法にて抄紙して湿潤ウェッブをつくり、その後プレスローラーで軽く絞り140℃で回転乾燥ドラムにて乾燥し、目付30g/m2、厚み0.2mmの比較例3の湿式不織布を得た。
【0050】
比較例1のサーマルボンド不織布および比較例1~2の湿式不織布を用いて以下のように比較例1~3の濾材を作製した。サーマルボンド不織布または湿式不織布の下流となる側に、平均粒径200μmのヤシ殻活性炭および平均粒径200μmのポリオレフィン系熱可塑性樹脂の重量比が1:0.5である混合粉末を、目付90g/m2になるように散布した。さらに、その上から実施例1と同じ目付20g/m2のポリエステル系長繊維不織布を重ね合わせ、140℃の加熱処理にてシート化を行ない、比較例1~3の濾材を作製した。このようにして作製した比較例1~3の濾材について各評価を行った。比較例1の濾材ではサーマルボンド不織布側を通気の上流にし、かつ長繊維不織布側を通気の下流にして、比較例2および3の濾材では湿式不織布側を通気の上流にし、かつ長繊維不織布側を通気の下流にして評価した。その結果を表1に示す。
【0051】
【0052】
表1から、実施例1-5では、通気の最上流に配置される面の表面粗さ(SMD)が2.7μm以下であるため、比較例1-3に対して異物の除去に優れることが分かる。また、実施例1-5では、湿式不織布の長繊維不織布に積層される面の表面粗さ(SMD)が3.0μm以上であるため、比較例1-3よりも剥離強度く、積層してシート化した後の接着強度に優れる。また、実施例1-5では、湿式不織布の長繊維不織布に積層される面のざらつき感(MMD)が0.02以上であるため、比較例1-3よりも剥離強度が高く、積層してシート化する際の取扱い性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のフィルター用濾材は、使用によりフィルターに付着した異物の除去に優れており、産業上の有用性は高い。例えば、自動車、空気清浄機やエアコン、コピー機、プリンター、多機能OA機器やトイレ脱臭機など幅広い分野で用いることができ、産業界に大きく寄与できる。