(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】ガラス板の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20240123BHJP
C03B 33/02 20060101ALI20240123BHJP
C03B 35/04 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
H01L21/68 A
C03B33/02
C03B35/04
(21)【出願番号】P 2020553836
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(86)【国際出願番号】 JP2019041754
(87)【国際公開番号】W WO2020090627
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2018206495
(32)【優先日】2018-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】端 世志彦
(72)【発明者】
【氏名】奥 隼人
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-052936(JP,U)
【文献】特開2008-266098(JP,A)
【文献】特開昭63-298036(JP,A)
【文献】特開2017-154911(JP,A)
【文献】特開2018-090448(JP,A)
【文献】特開2018-104221(JP,A)
【文献】特開平06-247515(JP,A)
【文献】特開平10-120160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
C03B 33/02
C03B 35/04
C03B 25/12
C03B 29/10
C03B 35/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部を保持して吊り下げ支持した縦姿勢のガラス板を搬送する搬送工程と、
前記搬送工程の搬送経路上で、吊り下げ支持した縦姿勢の前記ガラス板を検査する検査工程と
、
前記搬送経路上から
前記検査工程を経た前記ガラス板を取り出して積載容器に積載する積載工程と、を備えたガラス板の製造方法であって、
前記ガラス板の中に廃棄ガラス板が生じた場合に、前記検査工程を実施する検査ゾーン又はその下流側の前記搬送経路上で
、吊り下げ支持した縦姿勢の前記廃棄ガラス板の上端部の保持を解除することにより、前記廃棄ガラス板を落下させて廃棄する第一廃棄工程を備えていることを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項2】
前記搬送工程では、前記ガラス板を縦姿勢で表面に沿って横方向に搬送することを特徴とする請求項1に記載のガラス板の製造方法。
【請求項3】
前記第一廃棄工程では、前記廃棄ガラス板を前記搬送経路の階下に設けられた回収室内に落下させて廃棄することを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス板の製造方法。
【請求項4】
前記検査工程の前工程として、ガラスリボンを成形する成形工程と、前記ガラスリボンを幅方向に切断して前記ガラス板を得る切断工程と、を更に備えると共に、
前記検査工程の前工程で前記廃棄ガラス板が生じた場合に、前記検査ゾーンの上流側で前記廃棄ガラス板を落下させて廃棄する第二廃棄工程を更に備え、
前記第二廃棄工程では、前記第一廃棄工程と同じ前記回収室内に前記廃棄ガラス板を落下させて廃棄することを特徴とする請求項3に記載のガラス板の製造方法。
【請求項5】
前記第一廃棄工程では、前記検査ゾーンの下流側の前記搬送経路の最上流部で前記ガラス板を落下させて廃棄することを特徴とする請求項4に記載のガラス板の製造方法。
【請求項6】
上端部を保持して吊り下げ支持した縦姿勢のガラス板を搬送する搬送装置と、前記搬送装置の搬送経路上で、吊り下げ支持した縦姿勢の前記ガラス板を検査する検査装置と
、前記搬送経路上から
前記検査装置の検査を経た前記ガラス板を取り出して積載容器に積載する積載装置と、を備えたガラス板の製造装置であって、
前記検査装置が配置された検査ゾーン又はその下流側の前記搬送経路上で、
吊り下げ支持した縦姿勢の前記ガラス板の中に含まれる廃棄ガラス板
の上端部の保持を解除することにより、前記廃棄ガラス板を落下させて廃棄する廃棄部を備えていることを特徴とするガラス板の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイには、ガラス板が使用される。
【0003】
ガラス板の製造工程では、まず、長尺なガラスリボンを連続的に成形する。成形方法としては、オーバーフローダウンドロー法、スロットダウンドロー法、リドロー法などのダウンドロー法や、フロート法が広く採用されている。
【0004】
次に、ガラスリボンを所定の長さ毎に幅方向に切断し、ガラスリボンからガラス板を切り出す。
【0005】
その後、例えば、切り出されたガラス板の幅方向両端部を更に切断したり、検査を実施したりするなどの各種工程を経て、ガラス板が作製される。
【0006】
このように作製された複数のガラス板は、搬送装置により所定位置まで搬送されると共に、積載装置により積載容器(例えば、パレットやケースなど)に収容された後、積載容器単位で次工程(納入先の工程も含む)に搬出されるのが一般的である(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、検査工程でガラス板が品質基準を満たさないと判定された場合、そのガラス板を不良品として廃棄するのが一般的である。また、ガラス板の品質に関わらず、積載装置や積載容器などの下流側の工程がトラブルなどで受け入れ不能な場合には、一時的にガラス板を廃棄する必要が生じることもある。すなわち、検査工程でガラス板が品質基準を満たすと判定された場合でも、その良品ガラス板を廃棄せざるを得ないことがある。
【0009】
このように品質やその他の理由で廃棄されるガラス板(以下、単に廃棄ガラス板という)は、廃棄の必要がない良品のガラス板と同様に、搬送装置により所定位置まで搬送されると共に、積載装置により廃棄用の積載容器(例えば、パレットやケースなど)に積載して収容し、廃棄用の積載容器単位で回収(廃棄)される場合がある。
【0010】
しかしながら、このように廃棄用の積載容器に廃棄ガラス板を収納して回収する場合、廃棄ガラス板を積載装置で廃棄用の積載容器へ積載する積載工程が別途必要になる。すなわち、廃棄ガラス板に対して、廃棄されない良品のガラス板と同等の高度な積載工程が必要になることから、廃棄作業が非常に煩雑になり無駄が多くなる。また、廃棄ガラス板を廃棄用の積載容器に積載する積載装置などの専用設備が必要になるため、設備コストの高騰も避けられない。
【0011】
本発明は、設備コストの高騰を招くことなく、廃棄ガラス板を簡単かつ確実に廃棄することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために創案された本発明に係るガラス板の製造方法は、複数のガラス板を検査する検査工程と、検査工程を経たガラス板を搬送する搬送工程と、搬送工程の搬送経路上からガラス板を取り出して積載容器に積載する積載工程と、を備えたガラス板の製造方法であって、ガラス板の中に廃棄ガラス板が生じた場合に、検査工程を実施する検査ゾーン又はその下流側の搬送経路上で廃棄ガラス板を落下させて廃棄する第一廃棄工程を備えていることを特徴とする。ここで、「廃棄ガラス板」とは、廃棄が必要になったガラス板を意味し、品質基準を満たさない不良品ガラス板のみならず、工程トラブルなどの品質基準以外の理由で廃棄が必要になったガラス板(例えば、品質基準を満たす良品ガラス板)を含む場合もある。上記の構成によれば、検査工程を実施する検査ゾーン又はその下流側の搬送経路上で廃棄ガラス板を落下させるだけで、廃棄ガラス板を簡単かつ確実に廃棄できる。そのため、廃棄ガラス板を廃棄用の積載容器にわざわざ積載する必要がなく、更には廃棄用の積載容器に廃棄ガラス板を積載するための設備も不要となる。
【0013】
上記の構成において、搬送工程では、ガラス板を縦姿勢で表面に沿って横方向に搬送することが好ましい。このようにすれば、搬送時にガラス板が空気抵抗を受けにくくなるため、ガラス板の搬送姿勢が安定する。更に、ガラス板が廃棄ガラス板である場合には、縦姿勢のガラス板を落下させることになるため、落下時にもガラス板が空気抵抗を受けにくく、ガラス板の落下姿勢が安定する。
【0014】
上記の構成において、第一廃棄工程では、廃棄ガラス板を搬送経路の階下に設けられた回収室内に落下させて廃棄することが好ましい。このようにすれば、回収室内で発生した廃棄ガラス板に由来するガラス粉が、ガラス板の搬送等が実施されるエリアに侵入しにくくなる。
【0015】
上記の構成において、検査工程の前工程として、ガラスリボンを成形する成形工程と、ガラスリボンを幅方向に切断してガラス板を得る切断工程と、を更に備えると共に、検査工程の前工程で廃棄ガラス板が生じた場合に、検査ゾーンの上流側で廃棄ガラス板を落下させて廃棄する第二廃棄工程を更に備え、第二廃棄工程では、第一廃棄工程と同じ回収室内に廃棄ガラス板を落下させて廃棄することが好ましい。このようにすれば、第一廃棄工程および第二廃棄工程で共通の回収室を使用できるため、回収室を別々に設ける場合に比べて設備コストを削減できる。
【0016】
このように第一廃棄工程と第二廃棄工程で同じ回収室を使用する場合、第一廃棄工程では、検査ゾーンの下流側の搬送経路の最上流部でガラス板を落下させて廃棄することが好ましい。このようにすれば、第一廃棄工程で廃棄ガラス板を落下させる位置と、第二廃棄工程で廃棄ガラス板を落下させる位置とを近づけることができるため、共通化した回収室のスペースを小さくできる。したがって、設備コストを更に削減できる。
【0017】
上記の課題を解決するために創案された本発明に係るガラス板の製造装置は、複数のガラス板を検査する検査装置と、検査装置の検査を経たガラス板を搬送する搬送装置と、搬送装置の搬送経路上からガラス板を取り出して積載容器に積載する積載装置と、を備えたガラス板の製造装置であって、検査装置が配置された検査ゾーン又はその下流側の前記搬送経路上で、ガラス板の中に含まれる廃棄ガラス板を落下させて廃棄する廃棄部を備えていることを特徴とする。このようにすれば、検査装置が配置された検査ゾーン又はその下流側の搬送経路上で廃棄ガラス板を廃棄部に落下させるだけで、廃棄ガラス板を簡単かつ確実に廃棄できる。そのため、廃棄ガラス板を廃棄用の積載容器にわざわざ積載する必要がなく、更には廃棄用の積載容器に廃棄ガラス板を積載するための設備も不要となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、設備コストの高騰を招くことなく、廃棄ガラス板を簡単かつ確実に廃棄できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第一実施形態に係るガラス板の製造装置を示す平面図である。
【
図3】第二実施形態に係るガラス板の製造装置を示す平面図である。
【
図5】第三実施形態に係るガラス板の製造装置を示す平面図である。
【
図6】第四実施形態に係るガラス板の製造装置を示す平面図である。
【
図7】第五実施形態に係るガラス板の製造装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0021】
(第一実施形態)
図1および
図2に示すように、第一実施形態に係るガラス板の製造方法は、成形工程と、第一切断工程と、受渡工程と、第二切断工程と、検査工程と、搬送工程と、積載工程と、を備えている。すなわち、第一実施形態に係るガラス板の製造装置は、成形ゾーン(図示省略)と、第一切断ゾーン1と、受渡ゾーン2と、第二切断ゾーン3と、検査ゾーン4と、搬送ゾーン5と、積載ゾーン6と、を備えている。なお、各ゾーン1~6は、外部からの汚染物質をある程度遮断できる空間を区画形成する処理室7(例えば、クリーンルーム)内に設けられている。
【0022】
成形ゾーンでは、オーバーフローダウンドロー法によって縦姿勢のガラスリボン(図示省略)を連続成形する成形工程が実施される。成形ゾーンは、第一切断ゾーン1の上方に設けられた上下方向に延びる空間であって、溶融ガラスからガラスリボンを成形する第一ゾーンと、ガラスリボンを徐冷(アニール)する第二ゾーンと、ガラスリボンを冷却する第三ゾーンと、を上方から順に備えている。なお、成形方法は、オーバーフローダウンドロー法に限定されるものではなく、例えば、スロットダウンドロー法やリドロー法などの他のダウンドロー法や、フロート法などであってもよい。なお、フロート法の場合、成形ゾーンは、第一切断ゾーン1の上方でなく、第一切断ゾーン1の横に設けられる。
【0023】
第一切断ゾーン1では、ガラスリボンを縦姿勢のまま所定長さで幅方向に切断することでガラス板Gを得る第一切断工程が実施される。第一切断ゾーン1では、切断装置(図示省略)によって、ガラスリボンの所定位置で幅方向にスクライブ線を形成した後、そのスクライブ線に沿って曲げ応力を作用させて割断する。なお、ガラスリボンの切断方法は、曲げ応力による割断に限定されるものではなく、例えば、レーザー割断やレーザー溶断などであってもよい。
【0024】
ガラス板Gは、例えば、フラットパネルディスプレイの基板として利用される。ガラス板Gの板厚は、例えば、0.2mm~10mmであり、ガラス板Gのサイズは、例えば、700mm×700mm~3000mm×3000mmである。
【0025】
受渡ゾーン2では、異なる搬送装置の間でガラス板Gを受け渡す受渡工程が実施される。本実施形態では、第一切断ゾーン1から受渡ゾーン2にガラス板Gを搬送する搬送装置8と、受渡ゾーン2の下流側のゾーンにガラス板Gを搬送する搬送装置9との間で、ガラス板Gが受け渡される。なお、第一切断ゾーン1から積載ゾーン6に至るまでの間に、異なる搬送装置の間でガラス板Gを受け渡すための受渡ゾーンを複数設けてもよい。
【0026】
搬送装置8は、縦姿勢のガラス板Gの幅方向両端部を保持した状態で、ガラス板Gの板厚方向に沿ってガラス板Gを搬送する。一方、搬送装置9は、縦姿勢のガラス板Gの上端部を保持して吊り下げた状態で、ガラス板Gの表面に沿って横方向(好ましくは水平方向)にガラス板Gを搬送する。すなわち、本実施形態では、受渡ゾーン2において、搬送装置8,9が切り替えられると共に、ガラス板Gの搬送方向も変化する。なお、搬送装置8,9は、搬送経路上の所定範囲を往復移動可能になっている。搬送装置8,9によるガラス板Gの保持方法としては、例えば、ガラス板Gを吸着したり、挟持(チャック)したりすることが挙げられる。搬送装置8,9によるガラス板Gの保持態様や搬送方向は特に限定されるものではなく、適宜変更できる。
【0027】
第二切断ゾーン3では、ガラス板Gの幅方向両端部を上下方向に切断して除去する第二切断工程が実施される。第二切断ゾーン3では、切断装置(図示省略)によって、ガラス板Gの所定位置で上下方向にスクライブ線Sを形成した後、スクライブ線Sに沿って曲げ応力を作用させてガラス板Gを割断する。なお、除去されるガラス板Gの幅方向両端部には、幅方向中央部よりも相対的に厚さが大きくなる耳部が含まれる場合がある。また、ガラスリボンの切断方法は、曲げ応力による割断に限定されるものではなく、例えば、レーザー割断やレーザー溶断などであってもよい。
【0028】
検査ゾーン4では、複数のガラス板Gを連続して検査する検査工程が実施される。本実施形態では、検査ゾーン4では、一又は複数の検査装置10によって、ガラス板Gの偏肉(板厚)を測定したり、ガラス板Gの筋(脈理)を測定したり、ガラス板Gに含まれる欠陥の種類(例えば、泡、異物など)・位置(座標)・大きさを測定したりする。検査装置10の検査結果は、ガラス板Gの識別情報と共にデータベースに保存される。なお、検査ゾーン4における検査内容は、特に限定されるものではなく、適宜変更できる。また、検査ゾーン4の下流側かつ搬送ゾーン5の上流側に、マーキング工程を実施するためのマーキングゾーンを設けてもよい。マーキングゾーンでは、例えば、ガラス板Gに対して二次元コードや一次元コードが印字される。印字されたコードは、ガラス板Gの識別情報を示し、検査結果等を含んでもよい。
【0029】
搬送ゾーン5では、搬送装置9によって、検査を経たガラス板Gを搬送する搬送工程が実施される。なお、搬送ゾーン5では、搬送装置9によって、縦姿勢のガラス板G上端部が保持された状態で、ガラス板Gがその表面に沿って横方向に搬送される。
【0030】
積載ゾーン6では、搬送ゾーン5の各受渡ゾーン5a~5cから取り出されたガラス板Gを複数のパレット11に積み分けて積載する積載工程が実施される。本実施形態では、積載ゾーン6は、搬送ゾーン5における搬送経路に沿って複数のゾーン6a~6cに分割されている。図示例では、搬送ゾーン5には、3つの受渡ゾーン5a~5cが設けられおり、積載ゾーン6には、各受渡ゾーン5a~5cに対応する3つの積載ゾーン6a~6cが設けられている。なお、受渡ゾーンおよび積載ゾーンの数は、特に限定されない。
【0031】
各積載ゾーン6a~6cには、パレット11と、パレット11にガラス板Gを積載するための専用の積載装置12とが配置されている。各積載装置12は、搬送ゾーン5の各受渡ゾーン5a~5cと、各積載ゾーン6a~6cとの間を往復移動可能となっている。各積載装置12は、縦姿勢のガラス板Gの上端部を保持(例えば、吸着又は挟持)した状態で、ガラス板Gをその板厚方向に沿って搬送すると共に、パレット11にガラス板Gを縦姿勢で重ねて積載する。この際、パレット11上のガラス板Gの相互間には合紙などの保護シート(図示省略)が介装される。なお、積載装置12によるガラス板Gの保持態様や搬送方向は特に限定されるものではなく、適宜変更できる。
【0032】
第一実施形態に係るガラス板の製造方法は、検査装置10による検査結果に基づいて、それぞれのガラス板Gの格付けを行う格付け工程を更に備えている。ガラス板Gの格付けは、検査結果に基づいて良品と判定されたガラス板Gを品質に応じて複数種に分類するものである。上位の格に属するガラス板Gは下位の格に属するガラス板Gよりも品質がよく、同一の格に属するガラス板Gに対しては実質的に同じ後加工を実施できる。
【0033】
本実施形態では、検査装置10の検査結果は制御部13に入力され、制御部13が入力された検査結果に基づいて各ガラス板Gの格付けを自動で判定する。なお、作業者が入力された検査結果に基づいて各ガラス板Gの格付けを判定してもよい。
【0034】
制御部13は、格付けの結果に基づいてガラス板Gを積載するパレット11を自動で選択する。なお、作業者が格付けの結果に基づいてガラス板Gを積載するパレット11を選択してもよい。
【0035】
詳細には、各パレット11には、積載すべきガラス板Gの格が事前に設定されており、制御部13は、格付けの結果と、パレット11に事前に設定された格とが一致するように、ガラス板Gを積載するパレット11を選択する。本実施形態では、制御が容易であることから、複数のパレット11の配列態様は、上流側から順に格が下がる態様又は上流側から順に格が上がる態様とされている。この配列態様には、同格のパレット11が複数隣接する場合も含む。そして、搬送装置9および積載装置12は、制御部13によって選択されたパレット11にガラス板Gを積載するように動作する。例えば、制御部13が、格付けの結果に基づいて積載ゾーン6aに配置されたパレット11を選択した場合、搬送装置9が受渡ゾーン5aまでガラス板Gを搬送した後、積載装置12が受渡ゾーン5aでガラス板Gを受け取って積載ゾーン6aに配置されたパレット11まで搬送する。このようにすれば、それぞれのパレット11には、検査工程の結果を反映した格付けの結果に基づいて、同等の品質のガラス板Gが積載される。したがって、同一のパレット11に収納されているガラス板Gに対しては、実質的に同じ条件で後加工を効率よく実施することが可能となる。
【0036】
ただし、搬送装置9のタクトタイムと、積載装置12のタクトタイムとが異なるときには、制御部13が格付けの結果に基づいて選択したパレット11において、先行のガラス板Gの積載が終了しておらず、後続のガラス板Gを積載できない場合がある。また同様に、積載装置12などにトラブルが発生すると、制御部13が格付けの結果に基づいて選択したパレット11にガラス板Gを積載できない場合がある。
【0037】
このように選択されたパレット11が受け入れ不能な場合には、制御部13は、下位の格を積載すべき別のパレット11を再選択する。この場合、制御部13は、上位の格が下位の格と互換性があることを事前に確認する。ここで、上位の格において良品ガラス板を採取する領域に、下位の格において良品ガラス板を採取する領域が含まれている場合に、上位の格が下位の格と互換性があると判定する。具体的には、例えば、上位の格がガラス板Gから一枚の大きな良品ガラス板を採取する対象であり、下位の格がガラス板Gの右半分を良品ガラス板として採取する対象である場合などである。そして、互換性が確認された後、搬送装置9および積載装置12は、制御部13によって再選択された下位の格のパレット11にガラス板Gを積載するように動作する。このようにすれば、特定のパレット11が受け入れ不能な場合でも、その特定のパレット11よりも下位の格のパレット11にガラス板Gが積載されるため、ガラス板Gを廃棄することなく有効活用できる。
【0038】
第一実施形態に係るガラス板の製造方法は、ガラス板Gの中に廃棄する廃棄ガラス板Gx(良品ガラス板と不良品ガラス板の両方を含む)が生じた場合に、その廃棄ガラス板Gxを廃棄する廃棄工程を更に備えている。本実施形態では、廃棄工程は、検査ゾーン4又はその下流側かつ積載ゾーン6の上流側(第一廃棄工程)と、検査ゾーン4の上流側(第二廃棄工程)との2箇所で実施される。なお、検査ゾーン4の上流側における廃棄工程は、省略してもよい。
【0039】
検査ゾーン4の上流側の廃棄工程では、上流廃棄口14を通じて処理室7の階下に設けられた回収室(廃棄部)15に廃棄ガラス板Gxを落下させることにより廃棄する。一方、検査ゾーン4又はその下流側かつ積載ゾーン6の上流側の廃棄工程では、下流廃棄口16を通じて処理室7の階下に設けられた回収室15に廃棄ガラス板Gxを落下させことにより廃棄する。なお、処理室7と回収室15とは、フロア面(処理室7の床面)17によって分離された空間である。例えば、処理室7は建物の二階部分に設けられ、回収室15は建物の一階部分に設けられる。
【0040】
廃棄ガラス板Gxは、対応する廃棄口14,16の上方で搬送装置8,9による保持を解除することで、処理室7から回収室15内に落下する。
【0041】
上流廃棄口14は、本実施形態では、受渡ゾーン2のフロア面17に設けられている。
【0042】
上流廃棄口14を通じて廃棄ガラス板Gxの廃棄を行うタイミングは、例えば、成形ゾーンの立ち上げ時、成形ゾーンで成形不良が生じたとき、第一切断ゾーン1で切断不良が生じたとき、トラブルなどにより下流側工程でガラス板Gが受け入れ不能なときなどが挙げられる。
【0043】
下流廃棄口16は、本実施形態では、搬送ゾーン5における搬送経路の最下流部、すなわち、最下流に配置されたパレット11にガラス板Gを供給するための受渡ゾーン5cのフロア面17に設けられている。搬送ゾーン5における搬送経路の上流側で廃棄ガラス板Gxの廃棄を行うと、廃棄位置を通過後にトラブルが発生した場合に廃棄ガラス板Gxの取り扱いが困難になる。このような問題は、上記のように搬送ゾーン5における搬送経路の最下流部で廃棄ガラス板Gxの廃棄を行うことにより回避できる。
【0044】
下流廃棄口16を通じて廃棄ガラス板Gxの廃棄を行うタイミングは、積載すべきパレット11を選択できないときである。積載すべきパレット11を選択できないときとしては、例えば、検査装置10の検査でガラス板Gが不良品と判定されたとき、トラブルなどにより全てのパレット11においてガラス板Gが受け入れ不能なときなどが挙げられる。
【0045】
回収室15は、上流廃棄口14に対応する部分と、下流廃棄口16に対応する部分で分離された異なる空間であってもよいが、本実施形態では同じ空間である。このようにすれば、2つの廃棄口14,16に対応する回収室15を共通化できるため、設備コストを削減できる。
【0046】
回収室15内には、上流廃棄口14および下流廃棄口16のそれぞれの真下に、落下してくる廃棄ガラス板Gxを受ける有底筒状の回収容器18が配置されている。回収容器18の内部には、落下の衝撃で割れた廃棄ガラス板Gxから生じるガラス片(ガラス粉を含む)の飛散を防止するために、水などの不燃性液体を貯留しておいてもよい。
【0047】
上流廃棄口14および下流廃棄口16には、その開口部を開閉可能な開閉機構(図示省略)が設けられている。このようにすれば、廃棄ガラス板Gxから生じるガラス粉が、回収室15から処理室7に侵入するのを物理的に遮断できる。なお、回収室15の天井(すなわち、フロア面17)が十分高い場合など、ガラス粉の処理室7への侵入の問題がない場合には、開閉機構は省略してもよい。
【0048】
回収室15の気圧は、処理室7の気圧よりも低くすることが好ましい。このようにすれば、回収室15内の気体が、処理室7内に侵入しにくくなる。そのため、回収室15内のガラス粉が気体と共に処理室7に侵入しにくくなる。この場合、例えば、処理室7内に送風装置を配置すること、および/又は、回収室15内に集塵装置を配置したりすることにより、上下空間の気圧を調整することができる。なお、集塵装置は、回収室15内における廃棄口14,16の近傍に配置することが好ましい。
【0049】
(第二実施形態)
図3および
図4に示すように、第二実施形態に係るガラス板の製造装置および製造方法が、第一実施形態と相違するところは、下流廃棄口16を搬送ゾーン5の最上流部、すなわち、最上流のパレット11にガラス板Gを供給するための受渡ゾーン5aのフロア面17に設けた点である。
【0050】
このように下流廃棄口16を搬送ゾーン5の最上流部に設けると、下流廃棄口16を搬送ゾーン5の最下流部に設けた第一実施形態に比べ、下流廃棄口16を上流廃棄口14に近づけることができる。そのため、上流廃棄口14および下流廃棄口16に対応する回収室15を共通化する場合に、共通化した回収室15のスペースを小さくできる。その結果、設備コストを削減できる。また、例えば、回収室15の省スペース化によって回収室15と同一フロアに生じたスペースに、回収室15から分離された清浄室19などを設けることもできる。なお、清浄室19には、例えば、ガラス板Gを収納したパレット11などを保管できる。
【0051】
(第三実施形態)
図5に示すように、第三実施形態に係るガラス板の製造装置および製造方法が、第一実施形態および第二実施形態と相違するところは、搬送ゾーン5が、受渡ゾーンとして、2つの受渡ゾーン5a~5bのみを備えている点である。
【0052】
この場合、下流廃棄口16は、例えば、上流部の受渡ゾーン5a(あるいは下流部の受渡ゾーン5b)のフロア面に設けられる。
【0053】
(第四実施形態)
図6に示すように、第四実施形態に係るガラス板の製造装置および製造方法が、第一実施形態~第三実施形態と相違するところは、搬送ゾーン5が、受渡ゾーンとして、4つの受渡ゾーン5a~5dを備えている点である。
【0054】
この場合、下流廃棄口16は、例えば、最上流部の受渡ゾーン5aと、最下流部の受渡ゾーン5dとの間の中間部の受渡ゾーン5b(あるいは受渡ゾーン5c)のフロア面に設けられる。
【0055】
なお、搬送ゾーン5が4つの受渡ゾーン5a~5dを備えている場合でも、下流廃棄口16は、最上流部の受渡ゾーン5a、あるいは、最下流部の受渡ゾーン5dのフロア面に設けられていてもよい。また、第一実施形態および第二実施形態で例示したように、搬送ゾーン5が3つの受渡ゾーン5a~5cを備えている場合でも、下流廃棄口16は、最上流部の受渡ゾーン5aと、最下流部の受渡ゾーン5cとの間の中間部の受渡ゾーン5bのフロア面に設けられていてもよい。
【0056】
(第五実施形態)
図7に示すように、第五実施形態に係るガラス板の製造装置および製造方法が、第一実施形態~第四実施形態と相違するところは、上流廃棄口14を第一切断ゾーン1のフロア面17に設けた点である。このようにすれば、成形ゾーンの真下に位置する第一切断ゾーン1のフロア面17に上流廃棄口14が設けられるため、成形ゾーンが原因で廃棄するガラスリボン(廃棄ガラス板)が生じた場合に、そのガラスリボンを成形ゾーンから回収室15にそのまま落下させて廃棄しやすくなる。
【0057】
なお、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、更に種々なる形態で実施し得る。
【0058】
上記の実施形態では、ガラス板を縦姿勢で搬送する場合を説明したが、ガラス板の搬送態様は特に限定されるものではなく、例えば、コンベアなどでガラス板Gを横姿勢(好ましくは水平姿勢)や傾斜姿勢で搬送してもよい。
【0059】
上記の実施形態では、検査結果に基づいてガラス板を格付けし、その格付け結果に基づいてガラス板を複数のパレットに積み分ける場合を説明したが、検査結果とは無関係に、ガラス板の積載枚数などに応じてガラス板を複数のパレットに積み分けるようにしてもよい。もちろん、複数のパレットに積み分ける構成に限定されるものではなく、予め配置された一つのパレットに複数のガラス板を順次積載するようにしてもよい。
【0060】
上記の実施形態では、ガラス板を縦姿勢で重ねて積載するパレットを説明したが、ガラス板を積載する積載容器は特に限定されるものではなく、例えば、ガラス板Gを横姿勢(平置き姿勢)で積載するパレットや、ガラス板Gを間隔を置いて収納可能な溝付きケースなどであってもよい。
【0061】
上記の実施形態では、検査ゾーンの上流側と下流側とにそれぞれ廃棄口を設ける場合を説明したが、廃棄口の位置や個数は特に限定されない。例えば、検査ゾーンの上流側の廃棄口は省略してもよい。また、例えば、検査ゾーンの下流側の廃棄口を省略し、廃棄口を検査ゾーンのフロア面に設けてもよい。
【0062】
上記の実施形態において、ガラス板の搬送ゾーンなどが設けられる処理室内に廃棄部としての有底筒状の回収容器を配置し、その回収容器内にガラス板を落下させて廃棄してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 第一切断ゾーン
2 受渡ゾーン
3 第二切断ゾーン
4 検査ゾーン
5 搬送ゾーン
6 積載ゾーン
7 処理室
8 搬送装置
9 搬送装置
10 検査装置
11 パレット
12 積載装置
13 制御部
14 上流廃棄口
15 回収室
16 下流廃棄口
17 フロア面
18 回収容器
19 清浄室
G ガラス板
Gx 廃棄ガラス板