(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】全固体電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20240123BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240123BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20240123BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2020557824
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 JP2019046594
(87)【国際公開番号】W WO2020111185
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2018225307
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100169694
【氏名又は名称】荻野 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】矢野 知宏
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-150974(JP,A)
【文献】特開2015-60720(JP,A)
【文献】特開2015-60721(JP,A)
【文献】特開2018-18600(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181379(WO,A1)
【文献】特開2015-26563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0585
H01M 10/0562
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体層と活物質層とが積層された電極層が、固体電解質を含む固体電解質層を介して積層された積層体を含み、
前記集電体層は、前記積層体の内部に形成された本体部と、前記本体部の端面から前記積層体の端面まで延出した延出部と、を含み、
前記積層体の端面における前記延出部の厚みが、前記本体部の厚みよりも小さい、全固体電池。
【請求項2】
前記本体部の厚みに対する前記延出部の厚みの比率が、20%以上50%以下である、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項3】
前記延出部の厚みが、0.3μm以上3μm以下である、請求項2に記載の全固体電池。
【請求項4】
前記本体部の長さに対する前記延出部の延出方向長さの比率が、0.2%以上20%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の全固体電池。
【請求項5】
前記延出部の延出方向長さが、10μm以上1000μm以下である、請求項4に記載の全固体電池。
【請求項6】
前記積層体は、前記電極層を複数有し、
前記積層体の積層方向一端に位置する第1電極層が、第1集電体層および第1活物質層を有し、
前記第1集電体層が、前記積層体の内部に形成された第1本体部と、前記第1本体部の端面から前記積層体の端面まで延出した第1延出部と、を含み、
前記第1延出部は、前記積層体の積層方向に関して、前記第1本体部の厚み方向中央位置から前記積層体の中央部側にずれて設けられる、請求項1~5のいずれか1項に記載の全固体電池。
【請求項7】
前記積層体の積層方向他端に位置する第2電極層が、第2集電体層および第2活物質層を有し、
前記第2集電体層が、前記積層体の内部に形成された第2本体部と、前記第2本体部の端面から前記積層体の端面まで延出した第2延出部と、を含み、
前記第2延出部は、前記積層体の積層方向に関して、前記第2本体部の厚み方向中央位置から前記積層体の中央部側にずれて設けられる、請求項6に記載の全固体電池。
【請求項8】
前記第1電極層および前記第2電極層のうちの一方が、正極を構成し、前記第1電極層および前記第2電極層のうちの他方が、負極を構成する、請求項7に記載の全固体電池。
【請求項9】
前記第1電極層および前記第2電極層の双方が、正極および負極のうちのいずれかを構成する、請求項7に記載の全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池に関し、例えば、全固体リチウムイオン二次電池に関する。
本願は、2018年11月30日に日本に出願された特願2018-225307号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、例えば、携帯電話、ノートPC、PDAなどの携帯小型機器の電源として広く使用されている。このような携帯小型機器で使用されるリチウムイオン二次電池は、小型化、薄型化および信頼性の向上が求められている。
【0003】
リチウムイオン二次電池としては、電解質に有機電解液を用いたものと、固体電解質を用いたものとが知られている。電解質に固体電解質を用いた全固体リチウムイオン二次電池は、有機電解液を用いたリチウムイオン二次電池と比較して、電池形状の設計の自由度が高く、電池サイズの小型化や薄型化が容易であり、また電解液の液漏れなどが起きないため、信頼性が高いという利点がある。
【0004】
さらに、全固体リチウムイオン二次電池は、他の電子部品同様、不燃性であることから、リフローはんだ付けにより基盤に実装できるという利点がある。
【0005】
ここで、リフローはんだ付けを目的として、積層セラミックコンデンサのように、外部電極を、銅ペースト塗布、焼き付け、電解めっきプロセスを駆使して多層構造で形成した場合、電解めっきプロセスにおいて、めっき液が電池の積層体内部に侵入し、故障する問題が発生する。このようなめっき液浸入という問題に対処するべく、引き出し電極側の端面の幅を狭くする、いわゆる絞りパターンの設計が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般に、全固体電池の製造工程では、コンデンサに比べて、リチウムの揮発を防ぐために銅ペーストの焼き付け温度が低く、銅層内に空隙が生じやすいため、電極にいわゆる絞りパターンを使っても、めっき液の侵入による故障発生が依然として多いという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、めっき液の侵入による故障発生を更に低減して、良品率を向上することができる全固体電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
[1]集電体層と活物質層とが積層された電極層が、固体電解質を含む固体電解質層を介して積層された積層体を含み、
前記集電体層は、前記積層体の内部に形成された本体部と、前記本体部の端面から前記積層体の端面まで延出した延出部と、を含み、
前記積層体の端面における前記延出部の厚みが、前記本体部の厚みよりも小さい、全固体電池。
[2]前記本体部の厚みに対する前記延出部の厚みの比率が、20%以上50%以下である、上記[1]に記載の全固体電池。
[3]前記延出部の厚みが、0.3μm以上3μm以下である、上記[2]に記載の全固体電池。
[4]前記本体部の長さに対する前記延出部の延出方向長さの比率が、0.2以上20%以下である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の全固体電池。
[5]前記延出部の延出方向長さが、10μm以上1000μm以下である、上記[4]に記載の全固体電池。
[6]前記積層体は、前記電極層を複数有し、
前記積層体の積層方向一端に位置する第1電極層が、第1集電体層および第1活物質層を有し、
前記第1集電体層が、前記積層体の内部に形成された第1本体部と、前記第1本体部の端面から前記積層体の端面まで延出した第1延出部と、を含み、
前記第1延出部は、前記積層体の積層方向に関して、前記第1本体部の厚み方向中央位置から前記積層体の中央部側にずれて設けられる、上記[1]~[5]のいずれかに記載の全固体電池。
[7]前記積層体の積層方向他端に位置する第2電極層が、第2集電体層および第2活物質層を有し、
前記第2集電体層が、前記積層体の内部に形成された第2本体部と、前記第2本体部の端面から前記積層体の端面まで延出した第2延出部と、を含み、
前記第2延出部は、前記積層体の積層方向に関して、前記第2本体部の厚み方向中央位置から前記積層体の中央部側にずれて設けられる、上記[6]に記載の全固体電池。
[8]前記第1電極層および前記第2電極層のうちの一方が、正極を構成し、前記第1電極層および前記第2電極層のうちの他方が、負極を構成する、上記[7]に記載の全固体電池。
[9]前記第1電極層および前記第2電極層の双方が、正極および負極のうちのいずれかを構成する、上記[7]に記載の全固体電池。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、めっき液の侵入による故障発生を更に低減して、良品率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1(a)は、本実施形態に係る全固体電池の側面図であり、
図1(b)は、
図1(a)における位置Aの部分拡大断面図である。
【
図2】
図1(a)における位置Bの部分拡大断面図である。
【
図3】
図1における正極側の集電体層の変形例を示す部分拡大断面図である。
【
図4】
図1における負極側の集電体層の変形例を示す部分拡大断面図である。
【
図5】図(a)は、
図1の全固体電池の平面図であり、
図4(b)は、
図4(a)の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
[全固体電池の構成]
図1(a)は、本実施形態に係る全固体電池の側面図であり、
図1(b)は、
図1(a)の部分拡大断面図である。
図1(a)および
図1(b)に示すように、全固体電池1は、集電体層11(集電体層11a,11b)と活物質層12(活物質層12a,12b)とが積層された電極層10(電極層10a,10b)が、固体電解質を含む固体電解質層20を介して積層された積層体2を含んでいる。全固体電池1は、特に制限されないが、全固体二次電池であるのが好ましく、全固体リチウムイオン二次電池であるのがより好ましい。
【0014】
全固体電池1は、電極層群10Aと、電極層群10Bとで構成される電極層10を備えており、電極層群10Aが、電極層10a,10a,…を有し、電極層群10Bが、複数の電極層10b,10b,…を有している。電極層10aおよび電極層10bのうちの一方が正極を構成し、他方が負極を構成する。各電極層の正負は、後述の外部端子にいずれの極性を接続するかによって変化させることができる。例えば、電極層10aは正極として機能し、電極層10bは負極として機能する。
【0015】
電極層10aは、外部電極3に接続されており、電極層10bは外部電極4に接続されている。外部電極3及び外部電極4は、外部との電気的な接点を構成する。
【0016】
積層体2において電極層10aと電極層10bは、固体電解質層20を介して交互に積層されている。電極層10aと電極層10bの間で固体電解質を介したリチウムイオンの授受により、全固体電池1の充放電が行われる。
【0017】
(電極層)
電極層10aは、集電体層11aと、活物質層を含む活物質層12a,12aとを有する。また、電極層10bは、集電体層11bと、活物質層を含む活物質層12b,12bとを有する。
【0018】
集電体層11aは、
図1(b)に示すように、例えば、積層体2の内部に形成された本体部11a-1と、本体部11a-1の端面13aから積層体2の端面2aまで延出した延出部11a-2と、を含む。そして、積層体2の端面2aにおける延出部11a-2の厚みT
eが、本体部11a-1の厚みT
bよりも小さい(t
e<t
b)。この場合、延出部11a-2の端面13aにおける延出部11a-2の面積が小さいため、外部電極3を形成する際に、外部電極3を構成する金属層(例えば、銅層)の空隙にめっき液がある程度浸入するものの、めっき液が延出部11a-2に到達し難くなり、延出部11a-2と固体電解質層20との界面を通ってめっき液が積層体2の内部に浸入するのを抑制することができる。
【0019】
本体部11a-1の厚みtbに対する延出部11a-2の厚みteの比率は、20%以上50%以下であるのが好ましい。上記比率(te/tb)が20%未満であると、延出部11a-2と外部電極3との間で電気抵抗が増大し、電池容量が低下する。また、上記比率が50%を超えると、めっき液の侵入を十分に抑制することができない。したがって、本体部11a-1の厚みtbに対する延出部11a-2の厚みteの比率を、上記範囲内の値とする。
【0020】
本体部11a-1の厚みtbは、特に制限されないが、例えば0.6μm以上15μm以下である。また、延出部11a-2の厚みteは、特に制限されないが、例えば0.3μm以上3μm以下である。
【0021】
また、本体部11a-1の長さに対する延出部11a-2の延出方向長さの比率は、例えば、0.2%以上20%以下とすることができる。また、延出部11a-2の延出方向長さは、特に制限されないが、例えば10μm以上1000μm以下である。延出部11a-2の延出方向長さが10μm未満であると、めっき液の侵入を十分に抑制することができず、1000μmを超えると、延出部11a-2における電気抵抗が増大し、電池容量が低下するとともに、めっき液侵入抑制効果も1000μmの場合に比して向上しない。
【0022】
また、
図2に示すように、集電体層11bも、集電体層11aと同様に、積層体2の内部に形成された本体部11b-1と、該本体部11b-1の端面13bから積層体2の端面2aまで延出した延出部11b-2と、を含むのが好ましい。その場合、積層体2の端面2aにおける延出部11b-2の厚みが、本体部11b-1の厚みよりも小さいのが好ましい。また、本体部11b-1の厚みに対する延出部11b-2の厚みの比率が、20%以上50%以下であるのが好ましい。
【0023】
また、集電体層11bにおいて、本体部11b-1の長さに対する延出部11b-2の延出方向長さの比率も、集電体層11aと同様に、0.2%以上20%以下とすることができる。また、延出部11b-2の延出方向長さも、集電体層11aと同様、例えば10μm以上1000μm以下とすることができる。
【0024】
集電体層11a及び集電体層11bは、導電率が高いことが好ましい。そのため、集電体層11a及び集電体層11bには、銀、パラジウム、金、プラチナ、アルミニウム、銅、ニッケル等を用いることが好ましい。これらの物質の中でも、銅は、正極活物質、負極活物質及び固体電解質と反応しにくい。そのため、集電体層11a及び集電体層11bに銅を用いると、全固体電池1の内部抵抗を低減できる。なお、集電体層11aと集電体層11bを構成する物質は、同一でもよいし、異なってもよい。
【0025】
活物質層12aは、集電体層11aの両面に形成されている。但し、例えば、電極層10aと電極層10bのうち、積層体2の積層方向の最下層に電極層10aが形成されている場合、最下層に位置する電極層10aの下には対向する電極層10bが無い。そのため、最下層に位置する電極層10aにおいて、活物質層12aは、積層方向上側の片面のみに形成されてもよい。
【0026】
活物質層12bも、活物質層12aと同様に、集電体層11bの両面に形成されている。但し、電極層10aと電極層10bのうち、積層体2の積層方向の最上層に電極層10bが形成されている場合、最上層に位置する電極層10bにおいて、活物質層12bは、積層方向下側の片面のみに形成されてもよい。
【0027】
活物質層12aは、電子を授受する正極活物質及び負極活物質のうちの一方を含み、活物質層12bは、上記正極活物質及び負極活物質のうちの他方を含む。上記正極活物質及び負極活物質は、リチウムイオンを効率的に挿入、脱離できることが好ましい。また、活物質層12aおよび活物質層12bは、上記正極活物質及び負極活物質の他に、導電助剤や導イオン助剤、結着剤等を含んでもよい。
【0028】
正極活物質及び負極活物質には、例えば、遷移金属酸化物、遷移金属複合酸化物を用いることが好ましい。具体的には、リチウムマンガン複合酸化物Li2MnaMa1-aO3(0.8≦a≦1、Ma=Co、Ni)、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、リチウムマンガンスピネル(LiMn2O4)、一般式:LiNixCoyMnzO2(x+y+z=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物(LiV2O5)、オリビン型LiMbPO4(ただし、Mbは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素)、リン酸バナジウムリチウム(Li3V2(PO4)3又はLiVOPO4)、Li2MnO3-LiMcO2(Mc=Mn、Co、Ni)で表されるLi過剰系固溶体、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)、LisNitCouAlvO2(0.9<s<1.3、0.9<t+u+v<1.1)で表される複合金属酸化物等を用いることができる。
【0029】
負極活物質及び正極活物質は、後述する固体電解質に合わせて、選択してもよい。
例えば、固体電解質にLi1+nAlnTi2-n(PO4)3(0≦n≦0.6)を用いる場合は、正極活物質及び負極活物質にLiVOPO4及びLi3V2(PO4)3のうち一方又は両方を用いることが好ましい。この場合、活物質層12a及び活物質層12bと固体電解質層20との界面における接合が、強固なものになる。また、活物質層12a及び活物質層12bと固体電解質層20との界面における接触面積を広くすることができる。
【0030】
活物質層12a又は活物質層12bを構成する活物質には明確な区別がない。2種類の化合物の電位を比較して、より貴な電位を示す化合物を正極活物質として用い、より卑な電位を示す化合物を負極活物質として用いることができる。
【0031】
また、負極活物質及び正極活物質には、例えば、Li3V2(PO4)3におけるVの一部を別の元素Mで置換した活物質を用いることもできる。具体的には、負極活物質及び正極活物質として、化学式Li3V2-xMx(PO4)3(0<x≦1.4)で表される活物質であって、Mは結晶構造中で2価又は4価の陽イオンになる元素である活物質が用いられる。
【0032】
このような活物質は、元素置換されていない活物質Li3V2(PO4)3に比べて高い電子伝導性が得られる。2価の陽イオンとなり得る元素を置換する場合、結晶格子中に酸素欠損が出来易くなり、酸素欠損が生じることで自由になる電子が生じる。また、4価の陽イオンになり得る元素を置換する場合、結晶格子中に正孔が出来易くなり、正孔が生じる。このように、Vの一部を、結晶格子中で2価又は4価をとる元素で置換することによって、活物質の電子伝導性が向上し、全固体二次電池の内部抵抗を低減することが出来る。
【0033】
活物質は、便宜上、全固体二次電池に用いられるものとして説明されるが、これに限られず、一次電池、燃料電池などの他の電池に用いられてもよい。
【0034】
上記化学式Li3V2-xMx(PO4)3においてMで表記される元素は、結晶構造中で2価又は4価の陽イオンになる元素であればよい。好ましくは、上記化学式Li3V2-xMx(PO4)3においてMで表記される元素は、Mg、Ca、Ti、Zr、Sr、Ba、Nb、Ta、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Ru、Rh及びWからなる群から選択された1種以上の元素であればよい。さらに好ましくは、上記化学式Li3V2-xMx(PO4)3においてMで表記される元素は、Mg、Ca、Ti及びZrからなる群から選択された1種以上の元素であればよい。最も好ましくは、上記化学式Li3V2-xMx(PO4)3においてMで表記される元素は、Tiであればよい。
【0035】
例えば、TiはVの3価の陽イオン(6配位)のイオン半径に近いイオン半径を有する。Vの3価の陽イオン(6配位)のイオン半径に近いイオン半径を有する元素は、Vと置換しやすいと考えられる。Vの3価の陽イオン(6配位)のイオン半径よりも大きいイオン半径を有する元素は、Vを当該元素によって置換した場合、Li3V2(PO4)3結晶中で当該元素とOとの結合を弱くする傾向にある。これによって、還元雰囲気などの加熱処理で容易に酸素が脱離しやすい状態となる。
【0036】
導電助剤としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン、活性炭等の炭素材料、金、銀、パラジウム、白金、銅、スズ等の金属材料が挙げられる。
【0037】
導イオン助剤としては、例えば、固体電解質である。固体電解質は、具体的に例えば、固体電解質層50に用いられる材料と同様の材料を用いることができる。
【0038】
導イオン助剤として固体電解質を用いる場合、導イオン助剤と、固体電解質層50に用いる固体電解質とが同じ材料を用いることが好ましい。
【0039】
(固体電解質)
固体電解質層20を構成する固体電解質は、リン酸塩系固体電解質であることが好ましい。固体電解質としては、電子の伝導性が小さく、リチウムイオンの伝導性が高い材料を用いることが好ましい。
具体的には例えば、La0.5Li0.5TiO3などのペロブスカイト型化合物や、Li14Zn(GeO4)4などのリシコン型化合物、Li7La3Zr2O12などのガーネット型化合物、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3やLi1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3などのナシコン型化合物、Li3.25Ge0.25P0.75S4やLi3PS4などのチオリシコン型化合物、Li2S-P2S5やLi2O-V2O5-SiO2などのガラス化合物、Li3PO4やLi3.5Si0.5P0.5O4やLi2.9PO3.3N0.46などのリン酸化合物、よりなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
【0040】
固体電解質は、上記化学式Li3V2-xMx(PO4)3においてMで表記される元素を含む酸化物系固体電解質であることが好ましい。このような固体電解質は、全固体二電池において用いられる。
【0041】
本実施形態の固体電解質として、ナシコン型の結晶構造を有するリチウムイオン伝導体を用いることが好ましく、例えば、LiZr2(PO4)3、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3、で表される固体電解質材料を含むことが好ましい。
固体電解質としてLiZr2(PO4)3を用いる場合、CaまたはYで置換したものも好ましい。例えば、Ca置換の場合、Li1.4Ca0.2Zr1.8(PO4)3、 Y置換の場合、Li1.15Y0.15Zr1.85(PO4)3などが挙げられる。
【0042】
固体電解質が元素Mを含むと、元素Mを含む活物質層12a及び/又は活物質層12bとの接合界面における元素Mの濃度の変化が緩やかになる。そのため、活物質層12aと固体電解質層20との接合界面、及び、活物質層12bと固体電解質層20との接合界面におけるLiイオンの活性化エネルギーが小さくなる。ここで、活性化エネルギーとは、Liイオンが活物質層12aと固体電解質層20との接合界面、及び、活物質層12bと固体電解質層20との接合界面を通過するのに必要なエネルギーを意味する。そのため、活物質層12bと固体電解質層20との接合界面、及び、活物質層12bと固体電解質層との接合界面でのLiイオンの移動がし易くなり、接合界面におけるLiイオン伝導性が向上する。このため、全固体二次電池の内部抵抗が低減する。
【0043】
(外部電極)
外部電極3,4は、積層体2の側面(電極層10a及び電極層10bの端面の露出面)に接して形成されている。外部電極3,4は不図示の外部端子に接続されて、積層体2への電子の授受を担う。
【0044】
外部電極3,4には、導電率が大きい材料を用いることが好ましい。例えば、銀、金、プラチナ、アルミニウム、銅、スズ、ニッケル、ガリウム、インジウム、及びこれらの合金などを用いることができる。また、外部電極3,4は、多層構造で形成されるのが好ましく、例えば、金属層とめっき層とが積層された積層構造を有することができる。この場合、めっき層は、金属層の一部又は全体に亘って形成される。
【0045】
[全固体電池の製造方法]
次に、全固体電池の製造方法を説明する。説明の便宜上、電極層10aが正極、電極層10bが負極として機能する積層体2を備える全固体電池の製造方法を説明する。
(積層体の形成)
積層体2を形成する方法としては、同時焼成法を用いてもよいし、逐次焼成法を用いてもよい。
【0046】
同時焼成法は、各層を形成する材料を積層した後、一括焼成により積層体を作製する方法である。逐次焼成法は、各層を順に作製する方法であり、各層を作製する毎に焼成工程を行う方法である。同時焼成法を用いた方が、逐次焼成法を用いる場合と比較して、少ない作業工程で積層体2を形成できる。また、同時焼成法を用いた方が、逐次焼成法を用いる場合と比較して、得られる積層体2が緻密になる。以下、同時焼成法を用いて積層体2を製造する場合を例に挙げて説明する。
【0047】
同時焼成法は、積層体2を構成する各材料のペーストを作成する工程と、ペーストを塗布乾燥してグリーンシートを作製する工程と、グリーンシートを積層して積層シートとし、これを同時焼成する工程とを有する。
まず、積層体2を構成する集電体層11a、活物質層12a、固体電解質層20、活物質層12b及び集電体層11bの各材料をペースト化する。
【0048】
各材料をペースト化する方法は、特に限定されない。例えば、ビヒクルに各材料の粉末を混合してペーストが得られる。ここで、ビヒクルとは、液相における媒質の総称である。ビヒクルには、溶媒、バインダーが含まれる。
かかる方法により、集電体層11a用のペースト、活物質層12a用のペースト、固体電解質層20用のペースト、活物質層12b用のペースト及び集電体層11b用のペーストを作製する。
【0049】
次いで、積層シートを作成する。積層シートは、例えば、以下に説明する正極活物質層ユニット及び負極活物質層ユニットを作製し、これを積層する方法を用いて作製することができる。
まず、PETフィルムなどの基材上に、固体電解質層20用ペーストをドクターブレード法により塗布し、乾燥してシート状の固体電解質層20を形成する。次に、固体電解質層20上に、スクリーン印刷により活物質層12a用ペーストを印刷して乾燥し、活物質層12aを形成する。
次いで、活物質層12a上に、スクリーン印刷により集電体層11a用ペーストを印刷して乾燥し、集電体層11aを形成する。このとき、スクリーン印刷を複数回に分けて行い(
図1(b)の構成では3回)、集電体層11a用ペーストを端面まで印刷しない第1工程、銅ペーストを端面まで印刷する第2工程、および銅ペーストを端面まで印刷しない第3工程をこの順に行う。これにより、集電体層11aに延出部11a-2が形成される。
延出部11a-2を、集電体層11aの厚み方向に関して本体部11a-1の一端(一主面と同一面)に形成する場合には、上記第1工程を行わず、集電体層11a用ペーストを端面まで印刷する第2工程および銅ペーストを端面まで印刷しない第3工程を行うことができる。
さらに、集電体層11a上に、スクリーン印刷により活物質層12a用ペーストを印刷して乾燥し、活物質層12aを形成する。
【0050】
その後、PETフィルムを剥離することで正極としての活物質層ユニットが得られる。正極活物質層ユニットは、固体電解質層20/活物質層12a/集電体層11a/活物質層12aがこの順で積層された積層シートである。
同様の手順にて、負極としての活物質層ユニットを作製する。この活物質層ユニットは、固体電解質層20/活物質層12b/集電体層11b/活物質層12bがこの順に積層された積層シートである。
【0051】
次に、正極として一枚の活物質層ユニットと、負極としての一枚の負極活物質層ユニットとを積層する。
この際、正極としての活物質層ユニットの活物質層12aと、負極としての活物質層ユニットの固体電解質層20とが接するように積層するか、若しくは正極としての活物質層ユニットを構成する固体電解質層20と、負極としての活物質層ユニットを構成する活物質層12bとが接するように積層する。これにより、活物質層12a/集電体層11a/活物質層12a/固体電解質層20/活物質層12b/集電体層11b/活物質層12b/固体電解質層20がこの順で積層された積層シートが得られる。
【0052】
また、正極としての活物質層ユニットと負極としての活物質層ユニットとを積層する際には、正極としての活物質層ユニットのうち、集電体層11aにおける延出部11a-2が一の端面にのみ延出し、負極としての活物質層ユニットのうち、集電体層11bにおける延出部が他の面にのみ延出するように、各ユニットをずらして積み重ねる。その後、活物質層ユニットを積み重ねた積層体の最上層および最下層に、所定厚みの固体電解質20用シートをさらに積み重ね、積層シートとする。
【0053】
次に、作製した積層シートを一括して圧着する。圧着は、加熱しながら行うことが好ましい。圧着時の加熱温度は、例えば、40~95℃とする。
次に、圧着した積層シート(グリーンシート積層体)を、例えば、窒素、水素および水蒸気雰囲気下で500℃~750℃に加熱し脱バインダーを行う。その後、窒素、水素および水蒸気雰囲気下で600℃~1000℃に加熱し焼成を行うことによって焼結体を得る。焼成時間は、例えば、0.1~3時間とする。
【0054】
得られた焼結体(積層体2)は、アルミナなどの研磨材とともに円筒型の容器に入れて、バレル研磨してもよい。これにより積層体2の角の面取りをすることができる。そのほかの方法として、積層体2をサンドブラストにて研磨しても良い。この方法では特定の部分のみを削ることができるため好ましい。以上の工程により、積層体2が得られる。
【0055】
そして、上記の手順で作製された積層体2の端部に、外部電極3,4を形成することで、全固体リチウムイオン二次電池を作製できる。外部電極3,4は、例えば、銅ペースト塗布工程、焼き付け工程および電解めっき工程をこの順に経て得られる多層構造で形成する。これにより、積層体2を備える全固体電池1が製造される。
【0056】
上述したように、本実施形態によれば、積層体2の端面における延出部11a-2の厚みTeが、本体部11a-1の厚みTbよりも小さいので、外部電極4の形成時にめっき液が侵入し難く、めっき液の侵入による故障発生を更に低減して、良品率を向上することができる。
【0057】
図3は、
図1における集電体層11aの変形例を示す図である。
【0058】
図3において、積層体2は、電極層を複数有し、積層体2の積層方向一端に位置する第1電極層30aが、第1集電体層31aおよび第1活物質層32aを有する。具体的には、積層体2の積層方向下端に位置する第1電極層30aが、第1集電体層31aおよび第1活物質層32a,32aを有している。そして、第1集電体層31aが、積層体2の内部に形成された第1本体部31a-1と、第1本体部31a-1の端面33aから積層体2の端面2aまで延出した第1延出部31a-2と、を含む。
【0059】
本構成において、第1延出部31a-2は、積層体2の積層方向に関して、第1本体部31a-1の厚み方向中央位置から積層体2の中央部側にずれて設けられるのが好ましい。本実施形態では、第1延出部31a-2は、第1本体部31a-1の厚み方向中央位置から上側(図中の矢印側)にずれて設けられる。また、第1延出部31a-2は、第1本体部31a-1の端面33aにおいて、当該第1本体部31a-1の厚み方向上端部に設けられるのがより好ましい。積層体2の下方角部2bの近傍では、外部電極3を構成する金属層(例えば、銅層)が薄くなり易く、めっき液がより侵入し易い。このため、第1延出部31a-2を、第1本体部31a-1の厚み方向中央位置から積層体2の中央部側にずれて設けることにより、上記金属層が比較的厚く形成されている部分に、第1延出部31a-2の端面を位置させることができ、めっき液の侵入を更に抑制することが可能となる。
【0060】
第1活物質層32aは、第1集電体層31aの両面に形成されているが、これに限られず、積層体2の積層方向上側の片面のみに形成されてもよい。
【0061】
図4は、
図1における集電体層11bの変形例を示す図である。
【0062】
図4において、積層体2は、電極層を複数有し、積層体2の積層方向他端に位置する第2電極層30bが、第2集電体層31bおよび第2活物質層32b,32bを有している。具体的には、積層体2の積層方向上端に位置する第2電極層30bが、第2集電体層31bおよび第2活物質層32b,32bを有する。そして、第2集電体層31bが、積層体2の内部に形成された第2本体部31b-1と、第2本体部31b-1の端面33bから積層体2の端面2aまで延出した第2延出部31b-2と、を含む。
【0063】
本構成において、第2延出部31b-2は、積層体2の積層方向に関して、第2本体部31b-1の厚み方向中央位置から積層体2の中央部側にずれて設けられるのが好ましい。本実施形態では、第2延出部31b-2は、第2本体部31b-1の厚み方向中央位置から下側(図中の矢印側)にずれて設けられる。また、第2延出部31b-2は、第2本体部31b-1の端面33bにおいて、当該第2本体部31b-1の厚み方向下端部に設けられるのがより好ましい。積層体2の上方角部2cの近傍でも、下方角部2bの近傍と同様、外部電極4を構成する金属層が薄くなり易く、めっき液がより侵入し易い。このため、第2延出部31b-2を、第2本体部31b-1の厚み方向中央位置から積層体2の中央部側にずれて設けることにより、上記金属層が比較的厚く形成されている部分に、第2延出部31b-2の端面を位置させることができ、めっき液の侵入を更に抑制することが可能となる。
【0064】
第2活物質層32bは、第2集電体層31bの両面に形成されているが、これに限られず、積層体2の積層方向下側の片面のみに形成されてもよい。
【0065】
図5(a)は、
図1の全固体電池の平面図であり、
図5(b)は、
図4(a)
の変形例である。
図1の全固体電池1では、
図5(a)に示すように、延出部11a-2の幅(延出方向に直行する方向の寸法)は、本体部11a-1の幅と同じであり、また、延出部11b-2の幅(延出方向に直行する方向の寸法)は、本体部11b-1の幅と同じであるが、るが、これに限られない。
図5(b)に示すように、集電体層41aにおいて、延出部11a-2と外部電極4との間で電気抵抗が大きく増大しないことを条件として、延出部41a-2の幅が、本体部41a-1の幅よりも小さくてもよい。また、集電体層41bにおいて、延出部41b-2の幅が、本体部41b-1の幅よりも小さくてもよい。
【0066】
また、
図3の第1集電体層31aにおいて、第1延出部31a-2の幅が、第1本体部31a-1の幅よりも小さくてもよい。また、
図4の第2集電体層31bにおいて、第2延出部31b-2の幅が、第2本体部31b-1の幅よりも小さくてもよい。
【0067】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0068】
例えば、第1電極層30aが積層体2の積層方向下端に位置しているが(
図3)、これに限られず、第1電極層が積層体2の積層方向上端に位置していてもよい。また、第2電極層30bが積層体2の積層方向上端に位置しているが(
図4)、これに限られず、第2電極層が積層体2の積層方向下端に位置していてもよい。
【0069】
また、第1電極層および第2電極層のうちの一方が、正極を構成し、第1電極層および第2電極層のうちの他方が、負極を構成してもよい。
【0070】
また、積層体2が、正極として機能する複数の電極層10aを有しており、積層体2の積層方向下端に位置する第1電極層と、積層体2の積層方向上端に位置する第2電極層とを有していてもよい。同様にして、積層体2が、負極として機能する複数の電極層10bを有しており、積層体2の積層方向下端に位置する第1電極層と、積層体2の積層方向上端に位置する第2電極層とを有していてもよい。このように、第1電極層および第2電極層の双方が、正極および負極のうちのいずれかを構成してもよい。
【実施例】
【0071】
以下、本発明の実施例を説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0072】
(実施例1)
正極集電体層として銅、正極活物質層としてLi3V2(PO4)3、負極集電体層として銅、負極活物質層としてLi3V2(PO4)3、固体電解質層としてLi1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3を用い、上述した製造方法にて、3.2mm×2.5mm×1.0mmの大きさの全固体電池素体を作製した。正極集電体層および負極集電体層は、スクリーン印刷法にて形成した。集電体層本体部の電極長さは2.8mm、延出部の電極長さは0.2mmとした。外部電極は、銅ペースト塗布工程、焼き付け工程、およびニッケル、すず電解めっき工程を、この順に経て形成した。実施例1として、集電体層の本体部の厚みが6μmであり、集電体層の本体部の厚みに対する延出部の厚みの比率(te/tb)が、60%である全固体電池を作製した。
【0073】
(実施例2)
上記比率(te/tb)が、50%であること以外は、実施例1と同様にして、全固体電池を作製した。
【0074】
(実施例3)
上記比率(te/tb)が、40%であること以外は、実施例1と同様にして、全固体電池を作製した。
【0075】
(実施例4)
上記比率(te/tb)が、30%であること以外は、実施例1と同様にして、全固体電池を作製した。
【0076】
(実施例5)
上記比率(te/tb)が、20%であること以外は、実施例1~4と同様にして、全固体電池を作製した。
【0077】
(比較例1)
上記比率(te/tb)が、100%であること以外は、実施例1~4と同様にして、全固体電池を作製した。
【0078】
次に、上記実施例および比較例で得られた全固体電池を、以下の方法で測定、評価した。
【0079】
[集電体層の本体部の厚みに対する延出部の厚みの比率(te/tb)の測定]
作製した全固体電池の断面を走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、製品名「S-4800」)を用い、集電体各部を観察し、厚みを測長して、集電体の厚み比率(te/tb)を測定した。その結果、実施例および比較例のそれぞれについて、比率(te/tb)が、表1に示す値であることが確認できた。
【0080】
[めっき液浸入に因る故障率の測定]
充放電試験機(アスカ電子社製、製品名「ACD-01」)を用い、充電して、その時の充電異常による初期故障率を算出した。そして、N=500とし、めっき液浸入に因る故障率が、1.0%以下である場合を良好「〇」、1.0以上2.0未満である場合をほぼ良好「△」、2%以上である場合を不良「×」と判断した。結果を表1に示す。
【0081】
【0082】
表1の結果から、実施例1では、集電体層の本体部の厚みに対する延出部の厚みの比率(te/tb)が60%であると、めっき液浸入による故障率が1.6%とほぼ良好であり、めっき液の侵入による故障発生を低減できることが分かった。
【0083】
実施例2では、上記比率(te/tb)が40%であると、めっき液浸入による故障率が1.0%と良好であり、めっき液の侵入による故障発生を更に低減できることが分かった。
【0084】
実施例3では、上記比率(te/tb)が30%であると、めっき液浸入による故障率が1.0%と良好であり、めっき液の侵入による故障発生を更に低減できることが分かった。
【0085】
実施例4では、上記比率(te/tb)が20%であると、めっき液浸入による故障率が0.8%と良好であり、めっき液の侵入による故障発生を更に低減できることが分かった。
【0086】
実施例5では、上記比率(te/tb)が20%であると、めっき液浸入による故障率が0.8%と良好であり、めっき液の侵入による故障発生を更に低減できることが分かった。
【0087】
一方、比較例1では、上記比率(te/tb)が100%であると、めっき液浸入による故障率が6.0%と高く、めっき液の侵入による故障発生を十分に低減することができなかった。
【符号の説明】
【0088】
1 全固体電池
2 積層体
2a 端面
2b 下方角部
2c 上方角部
3 外部電極
4 外部電極
10 電極層
10A 電極層群
10a 電極層
10B 電極層群
10b 電極層
11 集電体層
11a 集電体層
11b 集電体層
11a-1 本体部
11a-2 延出部
11b-1 本体部
11b-2 延出部
12 活物質層
12a 活物質層
12b 活物質層
13a 端面
13b 端面
20 固体電解質層
30a 第1電極層
30b 第2電極層
31a 第1集電体層
31a-1 第1本体部
31a-2 第1延出部
31b 第2集電体層
31b-1 第2本体部
31b-2 第2延出部
32a 第1活物質層
32b 第2活物質層
33a 端面
33b 端面
41a 集電体層
41a-1 本体部
41a-2 延出部
41b 集電体層
41b-1 本体部
41b-2 延出部
tb 厚み
te 厚み