(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】流体機械
(51)【国際特許分類】
F04C 29/04 20060101AFI20240123BHJP
F04B 39/06 20060101ALI20240123BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
F04C29/04 H
F04B39/06 A
H02K9/19 A
H02K9/19 Z
(21)【出願番号】P 2021013130
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】城丸 勝俊
(72)【発明者】
【氏名】森 達志
(72)【発明者】
【氏名】原田 理恵子
(72)【発明者】
【氏名】柏 真太郎
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-172444(JP,A)
【文献】特開2006-197781(JP,A)
【文献】特開2012-132435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 23/00-29/12
F04C 2/02、18/02
F04B 39/06
H02K 9/00- 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸を回転させる電動モータと、
前記回転軸の回転により流体を圧送するポンプ部と、
前記電動モータを駆動するインバータと、
前記電動モータを収容するモータ室、及び前記インバータを収容するインバータ室を有するハウジングと、を備え、
前記モータ室及び前記インバータ室は、前記回転軸の軸方向で並んで配置されており、
前記ハウジングには、前記電動モータ及び前記インバータを冷却するための冷却流体が流れる冷却流路が形成されており、
前記ハウジングは、前記モータ室と前記インバータ室とを前記回転軸の軸方向で仕切る板状の仕切部と、前記仕切部から前記回転軸の軸方向に筒状に延びるとともに前記電動モータを囲繞する周壁部と、を有する流体機械であって、
前記冷却流路は、
冷却流体が前記仕切部の内部を流れるインバータ冷却流路と、
冷却流体が前記周壁部の内部を流れるモータ冷却流路と、を有し、
前記モータ冷却流路の一端は、前記インバータ冷却流路と入口分岐部にて接続され、前記モータ冷却流路の他端は、前記インバータ冷却流路と出口分岐部にて接続されており、
外部から流入した冷却流体は、前記インバータ冷却流路に導入された後、前記入口分岐部にて前記インバータ冷却流路と前記モータ冷却流路とに分岐され、分岐された冷却流体は、前記出口分岐部にて合流して前記インバータ冷却流路を介して外部に排出されるようになっており、
前記インバータ冷却流路は、渦流れが発生する流路拡張部を備え、
前記出口分岐部は、前記流路拡張部に設けられていることを特徴とする流体機械。
【請求項2】
前記インバータ冷却流路は、前記仕切部の内部を、前記回転軸に対して垂直な方向に延在しており、
前記モータ冷却流路は、前記周壁部の内部を、前記回転軸の軸方向に延在しており、
前記入口分岐部と前記出口分岐部とは、前記ハウジングにおける前記仕切部と前記周壁部との境目に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の流体機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電動圧縮機などの電動モータで駆動する流体機械は、回転軸と、回転軸を回転させる電動モータと、回転軸の回転により流体を圧送するポンプ部と、電動モータを駆動するインバータと、を備えている。また、電動圧縮機は、電動モータを収容するモータ室、及びインバータを収容するインバータ室を有するハウジングを備えている。さらに、例えば特許文献1には、インバータ室をモータ室に対して回転軸の径方向外側に配置し、ハウジングにおいて、モータ室とインバータ室とを仕切る仕切部に冷却流路を形成した構成が開示されている。これによれば、冷却流路を流れる冷却流体によって電動モータ及びインバータが冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、モータ室及びインバータ室が、回転軸の軸方向で並んで配置されている場合においても、ハウジングに形成された冷却流路を流れる冷却流体によって、電動モータ及びインバータを効率良く冷却することが望まれている。このような構成において、電動モータ及びインバータを効率良く冷却するためには、電動モータの周面だけでなく端面に対しても冷却流路を形成する必要がある。しかし、1本の流路で形成しようとすると流路が長くなり大きな圧力損失が生じ易く、モータの周面と端面とにそれぞれ分岐させる形で冷却流路を形成しようとすると、合流箇所において一方の流路から他方の流路へと冷却流体が逆流し易いため、全体として冷却効率が低下する。よって、冷却効率の低下を抑制する構造が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する流体機械は、回転軸と、前記回転軸を回転させる電動モータと、前記回転軸の回転により流体を圧送するポンプ部と、前記電動モータを駆動するインバータと、前記電動モータを収容するモータ室、及び前記インバータを収容するインバータ室を有するハウジングと、を備え、前記モータ室及び前記インバータ室は、前記回転軸の軸方向で並んで配置されており、前記ハウジングには、前記電動モータ及び前記インバータを冷却するための冷却流体が流れる冷却流路が形成されており、前記ハウジングは、前記モータ室と前記インバータ室とを前記回転軸の軸方向で仕切る板状の仕切部と、前記仕切部から前記回転軸の軸方向に筒状に延びるとともに前記電動モータを囲繞する周壁部と、を有する流体機械であって、前記冷却流路は、冷却流体が前記仕切部の内部を流れるインバータ冷却流路と、冷却流体が前記周壁部の内部を流れるモータ冷却流路と、を有し、前記モータ冷却流路の一端は、前記インバータ冷却流路と入口分岐部にて接続され、前記モータ冷却流路の他端は、前記インバータ冷却流路と出口分岐部にて接続されており、外部から流入した冷却流体は、前記インバータ冷却流路に導入された後、前記入口分岐部にて前記インバータ冷却流路と前記モータ冷却流路とに分岐され、分岐された冷却流体は、前記出口分岐部にて合流して前記インバータ冷却流路を介して外部に排出されるようになっており、前記インバータ冷却流路は、渦流れが発生する流路拡張部を備え、前記出口分岐部は、前記流路拡張部に設けられている。
【0006】
これによれば、インバータ冷却流路を流れる冷却流体によってインバータが冷却される。また、インバータ冷却流路を流れる冷却流体の一部は、入口分岐部から分岐し、モータ冷却流路を流れる。そして、モータ冷却流路を流れる冷却流体は、出口分岐部にてインバータ冷却流路に合流する。このとき、インバータ冷却流路は、渦流れが発生する流路拡張部を備え、出口分岐部は、流路拡張部に設けられている。これによれば、インバータ冷却流路内において渦流れが発生し軽微な圧力損失が生じるため、例えば、渦流れが発生しない場合に比べると、モータ冷却流路を流れる冷却流体が、出口分岐部を介して流路拡張部へ合流され易くなる。したがって、冷却流体がモータ冷却流路を流れ易くなる。その結果、冷却効率の低下を抑制することができる。
【0007】
上記流体機械において、前記インバータ冷却流路は、前記仕切部の内部を、前記回転軸に対して垂直な方向に延在しており、前記モータ冷却流路は、前記周壁部の内部を、前記回転軸の軸方向に延在しており、前記入口分岐部と前記出口分岐部とは、前記ハウジングにおける前記仕切部と前記周壁部との境目に設けられているとよい。
【0008】
この構成は、冷却機能に優れた冷却流路を形成し易い構成として好適である。また、この構成では、インバータ冷却流路から垂直にモータ冷却流路が分岐および合流するため、合流箇所において冷却流体が逆流する問題が生じやすい分、流路拡張部を設けることによる効果が大きい。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、冷却効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態における電動圧縮機を示す側断面図。
【
図5】インバータ冷却流路及びモータ冷却流路を展開して模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、流体機械を電動圧縮機に具体化した一実施形態を
図1~
図5にしたがって説明する。本実施形態の電動圧縮機は、例えば、車両空調装置に用いられる。
図1に示すように、流体機械としての電動圧縮機10は、ハウジング11を備えている。ハウジング11は、筒状である。ハウジング11は、吐出ハウジング12、モータハウジング13、流路形成ハウジング14、及びインバータカバー15を有している。吐出ハウジング12、モータハウジング13、流路形成ハウジング14、及びインバータカバー15はそれぞれ金属材料製であり、例えば、アルミニウム製である。
【0012】
モータハウジング13は、板状の端壁13aと、端壁13aの外周部から筒状に延びる周壁13bと、を有している。吐出ハウジング12は、モータハウジング13の周壁13bの開口を閉塞した状態でモータハウジング13に連結されている。吐出ハウジング12は、有底筒状である。流路形成ハウジング14は、モータハウジング13の端壁13aの外面に連結されている。流路形成ハウジング14は、ブロック状である。インバータカバー15は、流路形成ハウジング14におけるモータハウジング13とは反対側の端面に連結されている。インバータカバー15は、有底筒状である。
【0013】
電動圧縮機10は、回転軸16を備えている。回転軸16は、モータハウジング13内に収容されている。回転軸16の軸方向は、モータハウジング13の周壁13bの軸方向に一致している。
【0014】
電動圧縮機10は、電動モータ17を備えている。電動モータ17は、モータハウジング13の内側に形成されたモータ室18に収容されている。したがって、ハウジング11は、電動モータ17を収容するモータ室18を有している。電動モータ17は、回転軸16を回転させる。
【0015】
電動モータ17は、ステータ19と、ロータ20と、を有している。ステータ19は、筒状である。ロータ20は、ステータ19の内側に配置されている。ロータ20は、回転軸16に止着されたロータコア21と、ロータコア21に設けられた複数の永久磁石22と、を有している。ロータ20は、回転軸16と一体的に回転する。ステータ19は、筒状のステータコア23と、ステータコア23に巻回されたコイル24と、を有している。そして、コイル24に電力が供給されることによりロータ20が回転し、回転軸16がロータ20と一体的に回転する。
【0016】
電動圧縮機10は、ポンプ部としての圧縮部25を備えている。圧縮部25は、例えば、モータハウジング13内に固定された図示しない固定スクロールと、固定スクロールに対向配置される図示しない可動スクロールとから構成されるスクロール式である。圧縮部25は、回転軸16の回転により流体としての冷媒を圧縮する。そして、圧縮部25は、回転軸16の回転により冷媒を圧送する。圧縮部25は、モータハウジング13内において、電動モータ17よりも周壁13bの開口寄りの位置に配置されている。したがって、電動モータ17は、圧縮部25よりも端壁13a寄りの位置に配置されている。
【0017】
モータハウジング13の周壁13bには、吸入ポート13hが形成されている。吸入ポート13hは、モータハウジング13内に冷媒を吸入する。吸入ポート13hには、外部冷媒回路26の一端が接続されている。吐出ハウジング12には、吐出ポート12hが形成されている。吐出ポート12hには、外部冷媒回路26の他端が接続されている。
【0018】
外部冷媒回路26から吸入ポート13hを介してモータハウジング13内に吸入された冷媒は、圧縮部25の駆動により圧縮部25で圧縮されて、吐出ポート12hを介して外部冷媒回路26へ流出する。そして、外部冷媒回路26へ流出した冷媒は、外部冷媒回路26の熱交換器や膨張弁を経て、吸入ポート13hを介してモータハウジング13内に還流する。電動圧縮機10及び外部冷媒回路26は、車両空調装置27を構成している。
【0019】
電動圧縮機10は、インバータ28を備えている。インバータ28は、電動モータ17を駆動する。インバータ28は、インバータカバー15の内側に形成されたインバータ室29に収容されている。したがって、ハウジング11は、インバータ28を収容するインバータ室29を有している。
【0020】
圧縮部25、電動モータ17、及びインバータ28は、この順序で回転軸16の軸方向に並んで配置されている。したがって、モータ室18及びインバータ室29は、回転軸16の軸方向で並んで配置されている。モータハウジング13の端壁13a、及び流路形成ハウジング14は、モータ室18とインバータ室29とを回転軸16の軸方向で仕切る板状の仕切部50を構成している。そして、モータハウジング13の周壁13bは、仕切部50から回転軸16の軸方向に筒状に延びるとともに電動モータ17を囲繞する周壁部として機能している。
【0021】
ハウジング11には、冷却流路30が形成されている。冷却流路30は、電動モータ17及びインバータ28を冷却するための冷却流体が流れる。冷却流路30は、インバータ冷却流路31と、モータ冷却流路32と、を有している。インバータ冷却流路31には、インバータ28を冷却するための冷却流体が仕切部50の内部を流れる。インバータ冷却流路31は、仕切部50の内部を、回転軸16に対して垂直な方向に延在している。
【0022】
モータ冷却流路32は、モータハウジング13の周壁13bに形成されている。モータ冷却流路32は、モータハウジング13の端壁13aから周壁13bの内部を、回転軸16の軸方向に延在している。モータ冷却流路32には、電動モータ17を冷却するための冷却流体が流れる。モータ冷却流路32とインバータ冷却流路31とは繋がっている。
【0023】
図2では、モータ冷却流路32及びインバータ冷却流路31をモデル化して示している。
図3では、インバータ冷却流路31を回転軸16の軸方向から見ている。
図2及び
図3に示すように、流路形成ハウジング14は、供給口33と、排出口34と、を有している。供給口33は、インバータ冷却流路31に冷却流体を供給する。排出口34は、インバータ冷却流路31を流れた冷却流体を外部へ排出する。
【0024】
図3に示すように、流路形成ハウジング14の外面には、インバータ冷却流路31を形成する流路形成凹部141が形成されている。流路形成凹部141は、平面視U字形状である。流路形成凹部141の底面は、平坦面状である。供給口33は、流路形成凹部141の一端に連通している。排出口34は、流路形成凹部141の他端に連通している。また、流路形成ハウジング14の外面を平面視したときに、流路形成ハウジング14の外面における流路形成凹部141以外の部分は、モータハウジング13の端壁13aの外面との合わせ面142になっている。
【0025】
図4に示すように、モータハウジング13の外面には、インバータ冷却流路31を形成する流路形成凹部131が形成されている。流路形成凹部131は、平面視U字形状である。流路形成凹部131の底面は、平坦面状である。モータハウジング13の流路形成凹部131は、流路形成ハウジング14の流路形成凹部141に沿った形状である。また、モータハウジング13の外面を平面視したときに、モータハウジング13の外面における流路形成凹部131以外の部分は、合わせ面132になっている。
【0026】
図3及び
図4に示すように、流路形成ハウジング14とモータハウジング13とは、流路形成ハウジング14の合わせ面142とモータハウジング13の合わせ面132とが合わさった状態で互いに連結されている。インバータ冷却流路31は、流路形成ハウジング14の流路形成凹部141とモータハウジング13の流路形成凹部131とによって区画されている。したがって、インバータ冷却流路31は、平面視U字形状である。
【0027】
モータハウジング13は、インバータ冷却流路31から冷却流体をモータ冷却流路32に流入させるための入口分岐部としての流入口35と、モータ冷却流路32から冷却流体をインバータ冷却流路31へ流出させるための出口分岐部としての流出口36と、を有している。モータ冷却流路32の一端は、インバータ冷却流路31と流入口35にて接続され、モータ冷却流路32の他端は、インバータ冷却流路31と流出口36にて接続されている。流入口35及び流出口36は、流路形成凹部131の底面に開口している。流入口35は、流出口36よりも供給口33寄りに位置している。流入口35と流出口36とは、ハウジング11における仕切部50の一部である端壁13aと周壁13bとの境目に設けられている。
【0028】
インバータ冷却流路31は、流入口35と流出口36とを連通する連通流路37を有している。したがって、インバータ冷却流路31において、流入口35と流出口36とは連通流路37によって連通している。連通流路37は、インバータ冷却流路31において、流入口35が臨む位置から流出口36が臨む位置まで延びている。連通流路37は、流入口35と連通する第1流路38と、流出口36と連通する第2流路39と、からなる。連通流路37において、第1流路38は第2流路39よりもインバータ冷却流路31の冷却流体の流れ方向の上流側に位置している。第1流路38は、インバータ冷却流路31において供給口33と第2流路39とを連通している。さらに、インバータ冷却流路31は、第2流路39と排出口34とを連通する第3流路40を有している。なお、モータハウジング13は、第3流路40を流れる冷却流体をモータ冷却流路32に流入させるための流入口41と、モータ冷却流路32を流れた冷却流体を第3流路40へ流出させるための流出口42と、を有している。
【0029】
図3に示すように、インバータ冷却流路31において、第1流路38と第3流路40とは第2流路39によって連通している。回転軸16の軸方向から見て、第2流路39の幅H1は、第1流路38から第3流路40にかけてほぼ一定の幅である。回転軸16の軸方向から見て、第2流路39の幅H1は、第1流路38の幅H2よりも広い。具体的には、第2流路39の幅H1は、第1流路38の出口38aの幅H2よりも広い。流路形成凹部141と流路形成凹部131とが平坦であるため、第2流路39は、第1流路38よりも拡張された流路であって渦流れが発生する流路拡張部として機能する。回転軸16の軸方向から見て、第2流路39は、第3流路40の入口40aから離間する方向へ幅が拡張されている。回転軸16の軸方向から見て、第2流路39の幅H1は、第3流路40の幅H3よりも広い。具体的には、第2流路39の幅H1は、第3流路40の入口40aの幅H3よりも広い。
【0030】
流路形成凹部141と流路形成凹部131とが平坦であるため、回転軸16の軸方向から見て、流出口36は、第2流路39の投影領域内に収まっている。流出口36は、第2流路39に対して、第3流路40から離間した位置に連通している。したがって、流出口36は、第2流路39に設けられている。
【0031】
第1流路38の出口38aの流路断面積は、供給口33の出口33aの流路断面積よりも小さい。また、第2流路39の幅H1は、第1流路38の出口38aの幅H2の2倍以上に設定されている。したがって、第2流路39の流路断面積は、第1流路38の出口38aの流路断面積の2倍以上である。また、第2流路39の幅H1は、第3流路40の入口40aの幅H3の2倍以上に設定されている。したがって、第2流路39の流路断面積は、第3流路40の入口40aの流路断面積の2倍以上である。流入口35の入口35aの流路断面積と流出口36の出口36aの流路断面積とは同じである。第1流路38の出口38aの流路断面積は、流入口35の入口35aの流路断面積及び流出口36の出口36aの流路断面積と同じである。
【0032】
外部から流入した冷却流体は、インバータ冷却流路31に導入された後、流入口35にてインバータ冷却流路31とモータ冷却流路32とに分岐され、分岐された冷却流体は、流出口36にて合流してインバータ冷却流路31を介して外部に排出されるようになっている。
【0033】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図5では、インバータ冷却流路31及びモータ冷却流路32を展開して模式的に示している。
図5に示すように、供給口33からインバータ冷却流路31に供給された冷却流体は、第1流路38に流れる。第1流路38を流れる冷却流体は、連通流路37において第2流路39に向けて流れる冷却流体と、流入口35を介してモータ冷却流路32に流入する冷却流体とに分かれる。したがって、インバータ冷却流路31を流れる冷却流体の一部は、流入口35から分岐し、モータ冷却流路32を流れる。
【0034】
第1流路38から連通流路37において第2流路39に向けて流れた冷却流体は、
図5において矢印A1で示すように、第2流路39を流れて第3流路40に流入し、第3流路40を流れて排出口34から外部へ排出される。なお、第3流路40を流れる冷却流体の一部は、流入口41に流入してモータ冷却流路32を流れ、流出口42から第3流路40へ流出した後、排出口34から外部へ排出される。
【0035】
一方で、
図5において矢印A2で示すように、第1流路38から流入口35を介してモータ冷却流路32に流入した冷却流体は、
図5において矢印A3で示すように、モータ冷却流路32を通過し、流出口36を介してインバータ冷却流路31の第2流路39へ流出する。よって、モータ冷却流路32を流れる冷却流体は、流出口36にてインバータ冷却流路31に合流する。このとき、回転軸16の軸方向から見て、第2流路39の幅H1は、第1流路38の幅H2よりも広く、回転軸16の軸方向から見て、流出口36は、第2流路39の投影領域内に収まっている。このように、流路が拡張されたために第2流路39内には、
図5において矢印A4で示すように、冷却流体の渦流れが生じており、軽微な圧力損失が生じる。よって、例えば、第2流路39の幅H1が、第1流路38の幅H2以下である場合に比べると、モータ冷却流路32を流れる冷却流体が、流出口36を介して第2流路39へ流出され易くなっている。したがって、冷却流体がモータ冷却流路32を流れ易くなり、モータ冷却流路32を流れる冷却流体による冷却効率の低下が抑えられている。
【0036】
そして、モータ冷却流路32から流出口36を介してインバータ冷却流路31の第2流路39へ流出した冷却流体は、
図5において矢印A5で示すように、冷却流体の渦流れと第1流路38から第2流路へ流れ込む冷却流体の流れに沿って流れながら第3流路40に向けて流れ、第3流路40を流れて排出口34から外部へ排出される。
【0037】
インバータ28から生じる熱は、流路形成ハウジング14に伝達されて、インバータ冷却流路31を流れる冷却流体によって放熱される。したがって、インバータ冷却流路31を流れる冷却流体によってインバータ28が冷却される。また、電動モータ17から生じる熱は、モータハウジング13の周壁13bに伝達されて、モータ冷却流路32を流れる冷却流体によって放熱される。したがって、モータ冷却流路32を流れる冷却流体によって電動モータ17が冷却される。
【0038】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)インバータ冷却流路31を流れる冷却流体によってインバータ28が冷却される。また、インバータ冷却流路31を流れる冷却流体の一部は、流入口35から分岐し、モータ冷却流路32を流れる。そして、モータ冷却流路32を流れる冷却流体は、流出口36にてインバータ冷却流路31に合流する。このとき、インバータ冷却流路31は、渦流れが発生する第2流路39を備え、流出口36は、第2流路39に設けられている。これによれば、インバータ冷却流路31内において渦流れが発生し軽微な圧力損失が生じるため、例えば、渦流れが発生しない場合に比べると、モータ冷却流路32を流れる冷却流体が、流出口36を介して第2流路39へ合流され易くなる。したがって、冷却流体がモータ冷却流路32を流れ易くなる。その結果、冷却流路30を流れる冷却流体による冷却効率の低下を抑えることができる。
【0039】
(2)流入口35と流出口36とは、ハウジング11における仕切部50の一部である端壁13aと周壁13bとの境目に設けられている。この構成は、冷却機能に優れた冷却流路30を形成し易い構成として好適である。また、この構成では、インバータ冷却流路31から垂直にモータ冷却流路32が分岐および合流するため、合流箇所において冷却流体が逆流する問題が生じやすい分、第2流路39を設けることによる効果が大きい。
【0040】
(3)第2流路39の流路断面積が、第1流路38の流路断面積の2倍以上である構成は、モータ冷却流路32を流れる冷却流体が、流出口36を介して第2流路39へ流出され易い構成として好適である。
【0041】
(4)回転軸16の軸方向から見て、第2流路39は、第3流路40の入口40aから離間する方向へ幅が拡張され、流出口36は、第2流路39に対して、第3流路40から離間した位置に連通している。これによれば、モータ冷却流路32を流れる冷却流体が、流出口36を介して第2流路39へ流出され易くなる。したがって、冷却流体がモータ冷却流路32を流れ易くなり、モータ冷却流路32を流れる冷却流体の圧力損失を抑えることができる。
【0042】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0043】
○ 実施形態において、第2流路39の流路断面積が第1流路38の流路断面積よりも大きければ、第2流路39の流路断面積が、第1流路38の流路断面積の2倍よりも小さくてもよい。
【0044】
○ 実施形態において、インバータ冷却流路31は、平面視U字形状であったが、インバータ冷却流路31の形状は、特に限定されるものではない。
○ 実施形態において、電動圧縮機10は、例えば、モータハウジング13の端壁13aにインバータ冷却流路31が形成されている構成であってもよい。この場合、電動圧縮機10は、流路形成ハウジング14を省略した構成とすることができる。要は、モータ室18とインバータ室29とを回転軸16の軸方向で仕切る仕切部50にインバータ冷却流路31が形成されていればよい。
【0045】
○ 実施形態において、圧縮部25は、スクロール式に限らず、例えば、ピストン式やベーン式等であってもよい。
○ 実施形態において、流体機械は、電動圧縮機10として車両空調装置27に用いられていたが、これに限らない。例えば、流体機械は、電動圧縮機として、燃料電池車に搭載されており、燃料電池に供給される流体としての空気を圧縮部により圧縮するものであってもよいし、電動ポンプとして燃料電池に供給される流体としての水素をポンプ部により圧送するものであってもよい。
【符号の説明】
【0046】
10…流体機械としての電動圧縮機、11…ハウジング、13b…周壁部としての周壁、16…回転軸、17…電動モータ、18…モータ室、25…ポンプ部としての圧縮部、28…インバータ、29…インバータ室、30…冷却流路、31…インバータ冷却流路、32…モータ冷却流路、35…入口分岐部としての流入口、36…出口分岐部としての流出口、39…流路拡張部として機能する第2流路、50…仕切部。