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特許7424360光ファイバ特性測定装置及び光ファイバ特性測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】光ファイバ特性測定装置及び光ファイバ特性測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/353 20060101AFI20240123BHJP
   G01M 11/00 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
G01D5/353 B
G01M11/00 U
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021192900
(22)【出願日】2021-11-29
(65)【公開番号】P2023079423
(43)【公開日】2023-06-08
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】手塚 信一郎
(72)【発明者】
【氏名】本間 雅美
(72)【発明者】
【氏名】松浦 聡
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特許第3930023(JP,B2)
【文献】特開2019-117167(JP,A)
【文献】特開2018-54551(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0165327(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/353
G01M 11/00 - 11/08
G01K 11/322
G01B 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数変調された変調光をポンプ光と参照光とに分岐する第1光分岐部と、
前記ポンプ光を被測定光ファイバの一端から入射させ、前記被測定光ファイバ内で生じたブリルアン散乱光を出力する第2光分岐部と、
前記第2光分岐部から出力される前記ブリルアン散乱光と前記参照光との干渉光を検出する第1検出部と、
前記第1検出部から出力される検出信号から前記ブリルアン散乱光のスペクトルであるブリルアンゲインスペクトルを求める解析部と、
前記解析部で求められたブリルアンゲインスペクトルの各周波数の強度成分に含まれる前記変調光の変調周波数の二倍の周波数を有する二倍波成分を検出する第2検出部と、
前記第2検出部で検出された前記二倍波成分に基づいて、前記被測定光ファイバの特性を測定する測定部と、
を備える光ファイバ特性測定装置。
【請求項2】
前記第2検出部は、前記解析部で求められたブリルアンゲインスペクトルと、前記変調光の変調周波数の二倍の周波数を有する検波信号とを混合して前記二倍波成分を得るヘテロダイン検出器と、
前記ヘテロダイン検出器で得られた前記二倍波成分を通過させるフィルタと、
を備える請求項1記載の光ファイバ特性測定装置。
【請求項3】
前記変調光を射出する光源部と、
前記光源部に供給される前記変調光の変調周波数を有する変調信号と、前記ヘテロダイン検出器に供給される前記検波信号とを発生する信号発生部と、
を備える請求項2記載の光ファイバ特性測定装置。
【請求項4】
前記解析部で求められたブリルアンゲインスペクトルをディジタル信号に変換する第1変換部を備えており、
前記第2検出部は、前記第1変換部でディジタル信号に変換されたブリルアンゲインスペクトルに対するディジタル信号処理を行って前記二倍波成分を検出し、
前記測定部は、前記第2検出部で検出された前記二倍波成分を用いたディジタル信号処理を行って、前記被測定光ファイバの特性を測定する、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の光ファイバ特性測定装置。
【請求項5】
前記第2検出部で検出された前記二倍波成分をディジタル信号に変換する第2変換部を備えており、
前記測定部は、前記第2変換部でディジタル信号に変換された前記二倍波成分を用いたディジタル信号処理を行って、前記被測定光ファイバの特性を測定する、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の光ファイバ特性測定装置。
【請求項6】
周波数変調された変調光をポンプ光と参照光とに分岐する第1光分岐ステップと、
前記ポンプ光を被測定光ファイバの一端から入射させ、前記被測定光ファイバ内で生じたブリルアン散乱光を出力する第2光分岐ステップと、
前記第2光分岐ステップで出力された前記ブリルアン散乱光と前記参照光との干渉光を検出する第1検出ステップと、
前記第1検出ステップで得られる検出信号から前記ブリルアン散乱光のスペクトルであるブリルアンゲインスペクトルを求める解析ステップと、
前記解析ステップで求められたブリルアンゲインスペクトルの各周波数の強度成分に含まれる前記変調光の変調周波数の二倍の周波数を有する二倍波成分を検出する第2検出ステップと、
前記第2検出ステップで検出された前記二倍波成分に基づいて、前記被測定光ファイバの特性を測定する測定ステップと、
を有する光ファイバ特性測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ特性測定装置及び光ファイバ特性測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ特性測定装置は、連続光又はパルス光を被測定光ファイバに入射させ、被測定光ファイバ内において生ずる散乱光又は反射光を検出して、被測定光ファイバの長さ方向における温度分布又は歪み分布、被測定光ファイバの振動、その他の特性を測定する装置である。この光ファイバ特性測定装置では、検出される散乱光又は反射光が被測定光ファイバに影響を及ぼす物理量(例えば、温度や歪み)に応じて変化するため、被測定光ファイバそのものがセンサとして用いられる。
【0003】
このような光ファイバ特性測定装置の1つに、ブリルアン光相関領域反射計測法(BOCDR法:Brillouin Optical Correlation Domain Reflectometry)によるものがある。BOCDR法による光ファイバ特性測定装置は、被測定光ファイバの一端から周波数変調された変調光であるポンプ光を入射させ、被測定光ファイバの一端から射出されるブリルアン散乱光と参照光(ポンプ光と同様の周波数変調がされた光)とを干渉させたものを検出する。そして、得られた検出信号からブリルアン散乱光のスペクトル(以下、「ブリルアンゲインスペクトル」という)を得て、ブリルアン散乱光の入射光に対する周波数シフト量(以下、「ブリルアン周波数シフト量」という)を求めることにより被測定光ファイバの特性を測定するものである。
【0004】
BOCDR法による光ファイバ特性測定装置では、ブリルアン散乱光と参照光とを干渉させることにより、被測定光ファイバ中において「相関ピーク」が現れる特定の位置におけるブリルアン散乱光を選択的に抽出している。ここで、ポンプ光及び参照光の変調周波数を掃引することで、被測定光ファイバの長さ方向に沿って相関ピークを移動させることができる。このため、相関ピークを移動させつつ各相関ピークが現れる位置におけるブリルアン周波数シフト量を求めることにより、被測定光ファイバの長さ方向における温度分布や歪み分布を測定することができる。尚、BOCDR法による光ファイバ特性測定装置の詳細については、例えば、以下の特許文献1,2を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6791113号公報
【文献】特開2021-089196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、被測定光ファイバから射出されるブリルアン散乱光は微弱であるため、BOCDR法による光ファイバ特性測定装置で得られるブリルアンゲインスペクトルは、ノイズが重畳されたものであったり、ベースライン(基準線)が不安定なものであったりする。このため、従来のBOCDR法による光ファイバ特性測定装置では、ブリルアンゲインスペクトルに重畳されているノイズを除去するための処理を長時間に亘って行う必要があり、測定時間が長くなるという問題がある。また、ブリルアンゲインスペクトルのレベル変動によってベースラインが不安定であることから、安定的な測定を行うことが難しいという問題がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、従来よりも短い時間で安定的な測定を行うことができる光ファイバ特性測定装置及び光ファイバ特性測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様による光ファイバ特性測定装置(1、2)は、周波数変調された変調光(L1)をポンプ光(LP)と参照光(LR)とに分岐する第1光分岐部(12)と、前記ポンプ光を被測定光ファイバ(FUT)の一端から入射させ、前記被測定光ファイバ内で生じたブリルアン散乱光(LS)を出力する第2光分岐部(16)と、前記第2光分岐部から出力される前記ブリルアン散乱光と前記参照光との干渉光を検出する第1検出部(19)と、前記第1検出部から出力される検出信号(S1)から前記ブリルアン散乱光のスペクトルであるブリルアンゲインスペクトルを求める解析部(20)と、前記解析部で求められたブリルアンゲインスペクトルの各周波数の強度成分に含まれる前記変調光の変調周波数の二倍の周波数を有する二倍波成分を検出する第2検出部(22、31)と、前記第2検出部で検出された前記二倍波成分に基づいて、前記被測定光ファイバの特性を測定する測定部(23)と、を備える。
【0009】
また、本発明の一態様による光ファイバ特性測定装置は、前記第2検出部が、前記解析部で求められたブリルアンゲインスペクトルと、前記変調光の変調周波数の二倍の周波数を有する検波信号(Sd)とを混合して前記二倍波成分を得るヘテロダイン検出器(22a)と、前記ヘテロダイン検出器で得られた前記二倍波成分を通過させるフィルタ(22b)と、を備える。
【0010】
また、本発明の一態様による光ファイバ特性測定装置は、前記変調光を射出する光源部(11)と、前記光源部に供給される前記変調光の変調周波数を有する変調信号(Sm)と、前記ヘテロダイン検出器に供給される前記検波信号とを発生する信号発生部(10)と、を備える。
【0011】
また、本発明の一態様による光ファイバ特性測定装置は、前記解析部で求められたブリルアンゲインスペクトルをディジタル信号に変換する第1変換部(21)を備えており、前記第2検出部が、前記第1変換部でディジタル信号に変換されたブリルアンゲインスペクトルに対するディジタル信号処理を行って前記二倍波成分を検出し、前記測定部が、前記第2検出部で検出された前記二倍波成分を用いたディジタル信号処理を行って、前記被測定光ファイバの特性を測定する。
【0012】
或いは、本発明の一態様による光ファイバ特性測定装置は、前記第2検出部で検出された前記二倍波成分をディジタル信号に変換する第2変換部(32)を備えており、前記測定部が、前記第2変換部でディジタル信号に変換された前記二倍波成分を用いたディジタル信号処理を行って、前記被測定光ファイバの特性を測定する。
【0013】
本発明の一態様による光ファイバ特性測定方法は、周波数変調された変調光(L1)をポンプ光(LP)と参照光(LR)とに分岐する第1光分岐ステップ(S12)と、前記ポンプ光を被測定光ファイバ(FUT)の一端から入射させ、前記被測定光ファイバ内で生じたブリルアン散乱光(LS)を出力する第2光分岐ステップ(S13)と、前記第2光分岐ステップで出力された前記ブリルアン散乱光と前記参照光との干渉光を検出する第1検出ステップ(S14)と、前記第1検出ステップで得られる検出信号から前記ブリルアン散乱光のスペクトルであるブリルアンゲインスペクトルを求める解析ステップ(S15)と、前記解析ステップで求められたブリルアンゲインスペクトルの各周波数の強度成分に含まれる前記変調光の変調周波数の二倍の周波数を有する二倍波成分を検出する第2検出ステップ(S16)と、前記第2検出ステップで検出された前記二倍波成分に基づいて、前記被測定光ファイバの特性を測定する測定ステップ(S17)と、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来よりも短い時間で安定的な測定を行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態による光ファイバ特性測定装置の要部構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態における二倍波成分検出部の内部構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第1実施形態による光ファイバ特性測定装置の動作例を示すフローチャートである。
図4】本発明の第1実施形態におけるブリルアン散乱光の検出原理を説明するための図である。
図5】本発明の第1実施形態におけるブリルアン散乱光の検出原理を説明するための図である。
図6】本発明の第2実施形態による光ファイバ特性測定装置の要部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による光ファイバ特性測定装置及び光ファイバ特性測定方法について詳細に説明する。以下では、まず本発明の実施形態の概要について説明し、続いて本発明の各実施形態の詳細について説明する。
【0017】
〔概要〕
本発明の実施形態は、従来よりも短い時間で安定的な測定を行うことができるようにするものである。具体的には、被測定光ファイバから射出されるブリルアン散乱光のスペクトルであるブリルアンゲインスペクトルに重畳されているノイズを除去するための処理を短くする(或いは、無くす)ことで、測定に要する時間を従来よりも短くするものである。また、ブリルアンゲインスペクトルのレベル変動を抑制してベースラインを安定化することで、安定的な測定を行うようにするものである。
【0018】
被測定光ファイバから射出されるブリルアン散乱光は微弱であるため、BOCDR法による光ファイバ特性測定装置で得られるブリルアンゲインスペクトルは、ノイズが重畳されたものであったり、ベースライン)が不安定なものであったりする。このため、従来のBOCDR法による光ファイバ特性測定装置では、ブリルアンゲインスペクトルに重畳されているノイズを除去するための処理を長時間に亘って行う必要があり、測定時間が長くなっていた。また、ブリルアンゲインスペクトルのレベル変動によってベースラインが不安定であることから、安定的な測定を行うことが難しかった。
【0019】
本発明の実施形態は、まず、周波数変調された変調光をポンプ光と参照光とに分岐し、ポンプ光を被測定光ファイバの一端から入射させて被測定光ファイバ内で生じたブリルアン散乱光を得る。次に、ブリルアン散乱光と参照光との干渉光を検出して、ブリルアン散乱光のスペクトルであるブリルアンゲインスペクトルを求める。そして、求められたブリルアンゲインスペクトルの各周波数の強度成分に含まれる変調光の変調周波数の二倍の周波数を有する二倍波成分を検出し、検出された二倍波成分に基づいて、被測定光ファイバの特性を測定する。これにより、従来よりも短い時間で安定的な測定を行うことができる。
【0020】
〔第1実施形態〕
〈光ファイバ特性測定装置の構成〉
図1は、本発明の第1実施形態による光ファイバ特性測定装置の要部構成を示すブロック図である。図1に示す通り、本実施形態の光ファイバ特性測定装置1は、信号発生部10、光源部11、光分岐部12(第1光分岐部)、パルス化部13、光遅延部14、光増幅部15、光分岐部16(第2光分岐部)、光増幅部17、合波部18、光検出部19(第1検出部)、周波数解析部20(解析部)、A/D変換部21(第1変換部)、二倍波成分検出部22(第2検出部)、及び測定部23を備える。
【0021】
本実施形態の光ファイバ特性測定装置1は、被測定光ファイバFUTにポンプパルス光Pを入射させて得られるブリルアン散乱光LSに基づいて被測定光ファイバFUTの特性を測定する、所謂BOCDR法による光ファイバ特性測定装置である。尚、上記のポンプパルス光Pは、周波数変調が与えられた連続光としてのポンプ光LPをパルス化したものである。また、上記のブリルアン散乱光LSは、被測定光ファイバFUT内におけるブリルアン散乱により生じた後方散乱光である。
【0022】
被測定光ファイバFUTは、ポンプパルス光Pの波長等に応じて任意のものを用いることができる。また、本実施形態では、被測定光ファイバFUTの長さは、相関ピークの間隔dmよりも長いものとし、被測定光ファイバFUTには複数の相関ピークが存在するものとする。
【0023】
信号発生部10は、光源部11に供給される変調信号Sm、パルス化部13に供給されるパルス化信号Sp、及び二倍波成分検出部22に供給される検波信号Sdを発生する。変調信号Smは、光源部11から周波数変調された連続光L1(変調光)を出力させるための信号である。変調信号Smの周波数(変調周波数fm)は、予め規定された周波数範囲で掃引される。パルス化信号Spは、連続光としてのポンプ光LPをパルス化するための信号である。検波信号Sdは、変調信号Smの2倍の周波数を有する信号である。
【0024】
光源部11は、光源11aと駆動信号生成部11bとを備えており、信号発生部10から出力される変調信号Smを用いて、周波数変調された連続光L1を出力する。光源11aは、例えば、分布帰還型レーザダイオード(DFB-LD:Distributed Feed-Back Laser Diode)等の半導体レーザ素子を備えており、駆動信号生成部11bから出力される駆動信号D1に応じて周波数変調された連続光L1を出力する。
【0025】
駆動信号生成部11bは、信号発生部10から出力される変調信号Smを用いて、周波数変調された連続光L1を光源11aから出力させるための駆動信号D1を生成する。具体的に、駆動信号生成部11bは、直流バイアス電流と正弦波交流電流とを加算して駆動信号D1を生成する。この駆動信号D1は、正弦波状の信号であり、その周波数(変調周波数fm)は、信号発生部10から供給される変調信号Smによって規定される。
【0026】
光分岐部12は、光源部11から出力された連続光L1を、予め規定された強度比(例えば、1対1)のポンプ光LPと参照光LRとに分岐する。パルス化部13は、信号発生部10から出力されるパルス化信号Spを用いて、第1光分岐部12で分岐されたポンプ光LPをパルス化する。このようなパルス化部13を設けるのは、時間ゲート法で用いるポンプパルス光Pを得るためである。ここで、ポンプパルス光Pのパルス幅tpwは、ポンプパルス光Pが被測定光ファイバFUT内を伝播する際に、ポンプパルス光P内に相関ピークが1つのみ含まれるように設定される。具体的には、以下の(1)式が満たされるように、ポンプパルス光Pのパルス幅tpwが設定される。
tpw≦1/fm …(1)
【0027】
光遅延部14は、パルス化部13でパルス化されたポンプ光LP(ポンプパルス光P)を所定の時間だけ遅延させる。光遅延部14は、例えば、所定の長さの光ファイバを含む。光ファイバの長さを変更することで、遅延時間を調節することができる。このような光遅延部14を設けるのは、変調周波数fmの掃引を行っても現れる位置が移動しない0次相関ピークを被測定光ファイバFUTの外部に配置するためである。
【0028】
光増幅部15は、光遅延部14を介したポンプパルス光Pを増幅する。この光増幅部15は、例えば、EDFA(Erbium Doped Fiber Amplifier:エルビウム添加光ファイバ増幅器)等の光増幅器を備えており、ポンプパルス光Pを所定の増幅率で増幅する。
【0029】
光分岐部16は、第1ポート、第2ポート、及び第3ポートを備える。第1ポートは、光増幅部15と接続される。第2ポートは、被測定光ファイバFUTと接続される。第3ポートは、光増幅部17と接続される。光分岐部16は、第1ポートから入力されるポンプパルス光Pを第2ポートに出力する。また、第2ポートから入力される被測定光ファイバFUTからのブリルアン散乱光LSを第3ポートに出力する。このような光分岐部16としては、例えば、光サーキュレータを用いることができる。
【0030】
光増幅部17は、光分岐部16の第3ポートから出力されるブリルアン散乱光LSを増幅する。この光増幅部17は、光増幅部15と同様に、例えば、EDFA等の光増幅器を備えており、光分岐部16の第3ポートから出力されるブリルアン散乱光LSを所定の増幅率で増幅する。
【0031】
合波部18は、光増幅部17で増幅されたブリルアン散乱光LSと、光分岐部12で分岐された参照光LRとを結合させる。また、合波部18は、結合させた光を予め規定された強度比(例えば、1対1)の2つの光に分岐して光検出部19に出力する。合波部18によって分岐された2つの光の各々は、例えば、被測定光ファイバFUTからの後方散乱光の50%と参照光の50%とを含む。このような合波部18としては、例えば、光カプラを用いることができる。
【0032】
光検出部19は、合波部18から出力される2つの光に含まれるブリルアン散乱光LSと参照光LRとを干渉させることによって光ヘテロダイン検波を行う。光検出部19は、例えば、2つのフォトダイオード(PD: Photo Diode)19a,19bからなるバランスド・フォトダイオードと、合波器19cとを備える。フォトダイオード19a,19bは、合波部18から出力される2つの光をそれぞれ受光する。フォトダイオード19a,19bの受光信号は合波器19cに入力される。合波器19cからは、ブリルアン散乱光LSと参照光LRとの周波数差分を示す干渉信号(ビート信号)である検出信号S1が出力される。
【0033】
周波数解析部20は、光検出部19から出力される検出信号S1の周波数解析を行う。つまり、周波数解析部20は、光検出部19から出力される検出信号S1から、ブリルアンゲインスペクトルを得る。周波数解析部20は、例えば、スペクトラムアナライザ(ESA:Electrical Spectrum Analyzer)を備える。周波数解析部20は、光検出部19から出力される検出信号S1を、時間ゲート法で規定される期間の間に取り込む。これにより、被測定光ファイバFUTに複数の相関ピークが存在しても、被測定光ファイバFUTの特性を問題なく測定することができる。
【0034】
尚、周波数解析部20は、スペクトラムアナライザに代えて、オシロスコープ等の時間軸測定器と、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を行う変換器とを備える構成であっても良い。このような構成の周波数解析部20は、時間軸測定器で取得した時間的に連続なデータを、変換器でスペクトルデータに変換する。
【0035】
A/D変換部21は、周波数解析部20で得られたブリルアンゲインスペクトルをディジタル信号に変換する。尚、周波数解析部20が、高速フーリエ変換を行う変換器を備えるものである場合には、周波数解析部20からはスペクトルデータ(ディジタル信号に変換されたブリルアンゲインスペクトル)が出力されるため、A/D変換部21を省略することができる。
【0036】
二倍波成分検出部22は、A/D変換部21でディジタル信号に変換されたブリルアンゲインスペクトルに対するディジタル信号処理を行って、周波数解析部20で求められたブリルアンゲインスペクトルの各周波数の強度成分に含まれる二倍波成分を検出する。ここで、二倍波成分とは、連続光L1の変調周波数fmの二倍の周波数(2fm)を有する成分である。このような二倍波成分を検出するのは、周波数解析部20で得られたブリルアンゲインスペクトルに重畳されるノイズを除去するとともに、ベースラインの変動を抑制することで、従来よりも短い時間で安定的な測定を行うようにするためである。
【0037】
この二倍波成分は、周波数解析部20で得られたブリルアンゲインスペクトルの周波数(2fm)における強度を示すものであり、そのブリルアンゲインスペクトルが被測定光ファイバFUTのどの位置で得られたものであるかに応じて大きさが変動する。例えば、周波数解析部20で得られたブリルアンゲインスペクトルが、相関ピークが現れる位置で得られたものである場合には、二倍波成分の大きさは最も大きくなる。
【0038】
図2は、本発明の第1実施形態における二倍波成分検出部の内部構成を示すブロック図である。図2に示す通り、二倍波成分検出部22は、ヘテロダイン検出器22a及びフィルタ22bを備える。ヘテロダイン検出器22aは、A/D変換部21で変換されたディジタル信号と信号発生部10から出力された検波信号Sdとを混合して二倍波成分を得る。フィルタ22bは、ヘテロダイン検出器22aで得られた二倍波成分を通過させる。このフィルタ22bとしては、例えば、バンドパスフィルタ又はローパスフィルタを用いることができる。
【0039】
測定部23は、二倍波成分検出部22で検出された二倍波成分に基づいて、被測定光ファイバFUTの特性を測定する。具体的に、測定部23は、二倍波成分検出部22で検出された二倍波成分を用いたディジタル処理を行って、ブリルアンゲインスペクトルのピーク周波数を求める。そして、求めたピーク周波数からブリルアン周波数シフト量を求め、このブリルアン周波数シフト量を被測定光ファイバFUTに加わる歪みの大きさや温度変化に換算する。尚、測定部23は、二倍波成分検出部22で検出された二倍波成分又は測定された被測定光ファイバFUTの特性(例えば、歪み分布)等を表示する表示部を備えていても良い。表示部は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)表示装置等である。
【0040】
〈光ファイバ特性測定装置の動作〉
図3は、本発明の第1実施形態による光ファイバ特性測定装置の動作例を示すフローチャートである。図3に示すフローチャートは、被測定光ファイバFUTの長さ方向に沿う特性を測定する際の動作を示すものである。尚、図3に示すフローチャートは、例えば、光ファイバ特性測定装置1に対して測定開始の指示がなされることによって開始される。
【0041】
図3に示すフローチャートの処理が開始されると、まず、信号発生部10から駆動信号生成部11bに変調信号Smが出力される。すると、駆動信号生成部11bから光源11aに対し駆動信号D1が出力され、光源11aからは変調周波数fmで周波数変調された連続光L1が出力される(ステップS11)。尚、信号発生部10からパルス化部13にパルス化信号Spが出力され、信号発生部10から二倍波成分検出部22に検波信号Sdが出力される。
【0042】
光源11aから出力された連続光L1は、光分岐部12に入射してポンプ光LPと参照光LRとに分岐される(ステップS12:第1光分岐ステップ)。分岐されたポンプ光LPは、パルス化部13に入射し、信号発生部10から出力されるパルス化信号Spによってパルス化される。これにより、パルス化部13からは、ポンプパルス光Pが出力される。このポンプパルス光Pは、光遅延部14、光増幅部15、及び光分岐部16を順に介した後に、被測定光ファイバFUTに入射し、被測定光ファイバFUT内を伝播していく(ステップS13:第2光分岐ステップ)。
【0043】
これに伴い、被測定光ファイバFUT内ではブリルアン散乱光LS(後方散乱光)が順次発生する。被測定光ファイバFUT内で発生したブリルアン散乱光LSは、ポンプ光LPが伝播する方向とは反対の方向に伝播して被測定光ファイバFUTの一端から射出される。被測定光ファイバFUTの一端から射出されたブリルアン散乱光LSは、光分岐部16及び光増幅部17を順に介して合波部18に入射する(ステップS13:第2光分岐ステップ)。
【0044】
合波部18に入射したブリルアン散乱光LSは、光分岐部12で分岐された参照光LRと結合し、その干渉光が光検出部19で検出される(ステップS14:第1検出ステップ)。上記の干渉光が検出されると、光検出部19から周波数解析部20に対して検出信号S1が出力される。周波数解析部20に検出信号S1が入力されると、周波数解析部20において、検出信号S1の周波数解析が行われ、ブリルアンゲインスペクトルが求められる(ステップS15:解析ステップ)。
【0045】
周波数解析部20で求められたブリルアンゲインスペクトルは、A/D変換部21でディジタル信号に変換された後に、二倍波成分検出部22に入力される。そして、二倍波成分検出部22において、A/D変換部21でディジタル信号に変換されたブリルアンゲインスペクトルに対するディジタル信号処理が行われて、周波数解析部20で求められたブリルアンゲインスペクトルの各周波数の強度成分に含まれる二倍波成分が検出される(ステップS16:第2検出ステップ)。
【0046】
続いて、二倍波成分検出部22で検出された二倍波成分を用いたディジタル処理を行って、ブリルアンゲインスペクトルのピーク周波数を求める処理が測定部23で行われる。そして、求めたピーク周波数からブリルアン周波数シフト量を求め、このブリルアン周波数シフト量を被測定光ファイバFUTに加わる歪みの大きさや温度変化等に換算して被測定光ファイバFUTの特性を測定する処理が測定部23で行われる(ステップS17:測定ステップ)。
【0047】
以上の処理が終了すると、測定終了であるか否かが不図示の制御部で判断される(ステップS18)。例えば、被測定光ファイバFUTの長さ方向における測定点の全てについて測定が終了したか(掃引が完了したか)否かが判断される。測定終了ではないと制御部が判断した場合(ステップS18の判断結果が「NO」の場合)には、ステップS11に戻り、測定点の位置を変更して光源11aの変調周波数fmを再設定した上で、ステップS11~S17の処理が行われる。
【0048】
これに対し、測定終了であると不図示の制御部が判断した場合(ステップS18の判断結果が「YES」の場合)には、測定結果を表示する処理が、例えば、測定部23で行われる(ステップS19)。例えば、横軸が被測定光ファイバFUTの長さ方向における位置であり、縦軸が被測定光ファイバFUTに加わる歪みの大きさであるグラフ(歪み分布を示すグラフ)を表示する処理が行われる。以上の処理にて、図3に示す一連の処理が終了する。
【0049】
図4図5は、本発明の第1実施形態におけるブリルアン散乱光の検出原理を説明するための図である。ここで、被測定光ファイバFUTに入射するポンプパルス光Pは、変調周波数fmで周波数変調されているため、被測定光ファイバFUTから射出されるブリルアン散乱光LSも変調周波数fmで周波数変調されたものとなる。このため、以下では、ブリルアン周波数シフト量が含まれるGHzオーダー以上の第1周波数領域と、ポンプパルス光Pの変調周波数fmが含まれるMHzオーダーの第2周波数領域とに分けて説明する。尚、図4は、第1周波数領域についての説明図であり、図5は、第2周波数領域についての説明図である。
【0050】
図4(a)は、被測定光ファイバFUTから射出される後方散乱光の第1周波数領域におけるスペクトルを示すグラフであり、図4(b)は、参照光LRの第1周波数領域におけるスペクトルを示すグラフである。また、図4(c)は、検出信号S1の第1周波数領域における周波数成分を示すグラフである。図4(a)に示す通り、被測定光ファイバFUTから射出される後方散乱光には、ポンプパルス光Pのレイリー散乱光Rとブリルアン散乱光LSとが含まれる。レイリー散乱光Rの周波数ν0は、例えば、200[THz]程度である。ブリルアン散乱光LSの周波数は、ブリルアン周波数シフト量をΔνとすると、ν0±Δνである。尚、ブリルアン周波数シフト量Δνは、例えば、11[GHz]程度である。
【0051】
図4(a)に示す後方散乱光と図4(b)に示す参照光LRとが合波部18で合波され、その干渉光が光検出部19で検出されると、光検出部19からは、図4(c)に示す周波数成分を有する検出信号S1が得られる。図4(c)に示す通り、検出信号S1の周波数成分は、図4(a)に示す後方散乱光と図4(b)に示す参照光LRとの差周波(Δν)を示すものとなっている。尚、図4(a)に示す後方散乱光と図4(b)に示す参照光LRとの和周波(2ν0+Δν)も発生するが、周波数が高すぎることから検出信号S1には含まれない。
【0052】
検出信号S1に含まれる周波数成分FCは、ブリルアン散乱光LSに対応するものである。このため、周波数解析部20において、検出信号S1に含まれる周波数成分FCのスペクトルを解析し、周波数成分FCのピーク周波数を求めることにより、ブリルアン周波数シフト量Δνを求めることができる。そして、測定部23において、ブリルアン周波数シフト量Δνを被測定光ファイバFUTに加わる歪みの大きさや温度変化に換算すれば、被測定光ファイバFUTの特性が求められる。
【0053】
図5(a)は、被測定光ファイバFUTから射出される後方散乱光の第2周波数領域におけるスペクトルを示すグラフであり、図5(b)は、参照光LRの第2周波数領域におけるスペクトルを示すグラフである。また、図5(c)は、検出信号S1の第2周波数領域における周波数成分を示すグラフである。図5(a),(b)に示す通り、被測定光ファイバFUTから射出される後方散乱光及び参照光LRは、変調周波数fmで周波数変調されている。尚、変調周波数fmは、例えば、5[MHz]又は10[MHz]程度である。
【0054】
図5(a)に示す後方散乱光と図5(b)に示す参照光LRとが合波部18で合波され、その干渉光が光検出部19で検出されると、光検出部19から出力される検出信号S1は、図5(c)に示す周波数成分が含まれるものとなる。つまり、図5(c)に示す通り、図5(a)に示す後方散乱光と図5(b)に示す参照光LRとの差周波を示す周波数成分FC1と、和周波を示す周波数成分FC2とが含まれたものとなる。
【0055】
周波数成分FC1は、周波数解析部20で得られたブリルアンゲインスペクトルの直流(DC)成分の強度を示すものであり、周波数成分FC2は、周波数解析部20で得られたブリルアンゲインスペクトルの周波数(2fm)における強度を示すものである。これら周波数成分FC1,FC2はそれぞれ、図5(a)に示す後方散乱光と図5(b)に示す参照光LRとの差周波及び和周波を示すものであるから、周波数成分FC1,FC2の強度は等しい。
【0056】
従来は、周波数解析部20で得られたブリルアンゲインスペクトルの各周波数の強度を示すものとして、図5(c)に示す周波数成分FC1(合波部18及び光検出部19によって得られるDC成分)が用いられていた。しかしながら、この周波数成分FC1は、ノイズが多くベースラインの変動が引き起こされる。このため、本実施形態では、周波数解析部20の後段に二倍波成分検出部22を設け、周波数解析部20で求められたブリルアンゲインスペクトルの各周波数の強度成分に含まれる二倍波成分(図5(c)に示す周波数成分FC2)を検出するようにしている。そして、検出された二倍波成分を、周波数解析部20で得られたブリルアンゲインスペクトルの各周波数の強度として用いるようにしている。これにより、周波数解析部20で得られたブリルアンゲインスペクトルに重畳されるノイズが除去されるとともに、ベースラインの変動が抑制され、従来よりも安定的な測定を行うことができる。
【0057】
以上の通り、本実施形態では、まず、周波数変調された連続光L1をポンプ光LPと参照光LRとに分岐し、ポンプ光LPをポンプパルス光Pに変換してから被測定光ファイバFUTの一端から入射させて被測定光ファイバ内で生じたブリルアン散乱光LSを得る。次に、ブリルアン散乱光LSと参照光LRとの干渉光を検出して、ブリルアン散乱光のスペクトルであるブリルアンゲインスペクトルを求める。そして、求められたブリルアンゲインスペクトルの各周波数の強度成分に含まれる変調光の変調周波数の二倍の周波数を有する二倍波成分を検出し、検出された二倍波成分に基づいて、被測定光ファイバの特性を測定するようにしている。これにより、従来よりも短い時間で安定的な測定を行うことができる。
【0058】
〔第2実施形態〕
〈光ファイバ特性測定装置の構成〉
図6は、本発明の第2実施形態による光ファイバ特性測定装置の要部構成を示すブロック図である。尚、図6においては、図1に示す構成と同じ構成については同一の符号を付してある。図6に示す通り、本実施形態の光ファイバ特性測定装置2は、図1に示す光ファイバ特性測定装置1のA/D変換部21及び二倍波成分検出部22を、二倍波成分検出部31及びA/D変換部32(第2変換部)に替えた構成である。
【0059】
つまり、上述した第1実施形態の光ファイバ特性測定装置1は、ディジタル信号処理を行って二倍波成分の検出を行うものであった。これに対し、本実施形態の光ファイバ特性測定装置2は、アナログ信号処理を行って二倍波成分の検出を行うものである。
【0060】
二倍波成分検出部31は、周波数解析部20で得られたブリルアンゲインスペクトルに対するヘテロダイン検波を行って、周波数解析部20で求められたブリルアンゲインスペクトルの各周波数の強度成分に含まれる二倍波成分を検出する。尚、本実施形態の光ファイバ特性測定装置2が備える二倍波成分検出部31と、図1に示す光ファイバ特性測定装置1が備える二倍波成分検出部22とは、二倍波成分をアナログ信号処理によって検出するのか、ディジタル信号処理によって検出するのかが異なるだけである。
【0061】
このため、二倍波成分検出部31は、図2に示す二倍波成分検出部22が備えるヘテロダイン検出器22a及びフィルタ22bに相当する構成を備える。つまり、二倍波成分検出部31は、周波数解析部20で得られたブリルアンゲインスペクトル(アナログ信号)と信号発生部10から出力された検波信号Sd(アナログ信号)とを混合して二倍波成分を得るヘテロダイン検出器を備える。また、二倍波成分検出部31は、ヘテロダイン検出器22aで得られた二倍波成分(アナログ信号)を通過させるフィルタを備える。
【0062】
A/D変換部32は、二倍波成分検出部31で検出された二倍波成分をディジタル信号に変換する。測定部23は、A/D変換部32でディジタル信号に変換された二倍波成分を用いたディジタル処理を行って、被測定光ファイバFUTの特性を測定する。
【0063】
〈光ファイバ特性測定装置の動作〉
本実施形態の光ファイバ特性測定装置2は、第1実施形態の光ファイバ特性測定装置1とは、二倍波成分の検出をアナログ信号処理によって行う点が異なるのみであり、基本的には、図3に示すフローチャートに従って動作が行われる。このため、本実施形態の光ファイバ特性測定装置2の動作の詳細な説明は省略する。
【0064】
以上の通り、本実施形態においても、まず、周波数変調された連続光L1をポンプ光LPと参照光LRとに分岐し、ポンプ光LPをポンプパルス光Pに変換してから被測定光ファイバFUTの一端から入射させて被測定光ファイバ内で生じたブリルアン散乱光LSを得る。次に、ブリルアン散乱光LSと参照光LRとの干渉光を検出して、ブリルアン散乱光のスペクトルであるブリルアンゲインスペクトルを求める。そして、求められたブリルアンゲインスペクトルの各周波数の強度成分に含まれる変調光の変調周波数の二倍の周波数を有する二倍波成分を検出し、検出された二倍波成分に基づいて、被測定光ファイバの特性を測定するようにしている。これにより、従来よりも短い時間で安定的な測定を行うことができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態による光ファイバ特性測定装置及び光ファイバ特性測定方法について説明したが、本発明は上記実施形態に制限される訳ではなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、パルス化部13は、ポンプ光LPに対して強度変調を行うことによって、ポンプ光LPをパルス状に整形するものであっても良く、ポンプ光LPに対して周波数変調を行い、ポンプ光LPの光周波数をパルス状に変化させる(光周波数を大きく振る)ものであっても良い。
【0066】
また、光遅延部14は、光分岐部12と光分岐部16との間以外に、光分岐部12と合波部18との間、又は光分岐部16と合波部18との間に設けられていても良い。また、参照光LRを増幅する光増幅部を、光分岐部12と合波部18の間に備えてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1,2 光ファイバ特性測定装置
10 信号発生部
11 光源部
12 光分岐部
16 光分岐部
19 光検出部
20 周波数解析部
21 A/D変換部
22 二倍波成分検出部
22a ヘテロダイン検出器
22b フィルタ
23 測定部
31 二倍波成分検出部
32 A/D変換部
FUT 被測定光ファイバ
L1 連続光
LP ポンプ光
LR 参照光
LS ブリルアン散乱光
S1 検出信号
Sm 変調信号
Sd 検波信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6