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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】判定システム、判定方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20240123BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20240123BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
G01M17/02
G01M99/00 Z
B60C19/00 H
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021546505
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(86)【国際出願番号】 JP2020021950
(87)【国際公開番号】W WO2021053889
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2019169814
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】池田 和隆
(72)【発明者】
【氏名】中野 博斗
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-132847(JP,A)
【文献】特開昭50-062088(JP,A)
【文献】特開平10-142128(JP,A)
【文献】特開平04-315940(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110186957(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/02
G01M 99/00
B60C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験対象物に耐久性試験のための負荷を発生させる駆動装置に供給される電流に関する波形を示す波形データを取得する取得部と、
前記波形データから得られる、前記駆動装置にかかる力の特定方向の成分に起因する変化に基づき、前記試験対象物の破損の予兆を判定する判定部と、
を備えた判定システム。
【請求項2】
前記電流は、前記負荷を発生している状態で前記駆動装置に供給される、請求項1に記載の判定システム。
【請求項3】
前記試験対象物は、使用時に回転させられる物体である、請求項1又は2に記載の判定システム。
【請求項4】
前記試験対象物は、タイヤ又はホイールである、請求項3に記載の判定システム。
【請求項5】
前記駆動装置は、前記試験対象物に接触して前記試験対象物を回転させる回転体を回転させるように回転軸を中心に回転するロータを有するモータを含み、
前記駆動装置にかかる力は、前記モータの前記ロータにかかる力である、
請求項3又は4に記載の判定システム。
【請求項6】
前記特定方向は、前記ロータの前記回転軸に交差する方向である、請求項5に記載の判定システム。
【請求項7】
前記駆動装置は、前記試験対象物に接触方向で接触して前記試験対象物を回転させる回転体に前記試験対象物を押し付けるために回転するロータを有するモータを含み、
前記駆動装置にかかる力は、前記モータの前記ロータにかかる力である、
請求項3又は4に記載の判定システム。
【請求項8】
前記特定方向は前記接触方向に平行である、請求項7に記載の判定システム。
【請求項9】
前記駆動装置は前記負荷を変動させるように構成されており、
前記取得部は、前記駆動装置が前記負荷を変動させたときに前記波形データを取得する、請求項1~8のいずれか一つに記載の判定システム。
【請求項10】
前記波形を周波数軸波形に変換し、前記周波数軸波形から前記変化を含み得る着目部分を抽出する抽出部を更に備え、
前記判定部は、前記着目部分に基づいて、前記試験対象物の破損の前記予兆を判定する、
請求項1~9のいずれか一つに記載の判定システム。
【請求項11】
前記判定部は、学習済みモデルを利用して、前記部分から前記試験対象物の破損の前記予兆を判定し、
前記学習済みモデルは、前記試験対象物に破損の予兆が有る場合又は前記試験対象物に破損の予兆が無い場合の前記着目部分を学習用データとして用いた教師なし学習により生成される、
請求項10に記載の判定システム。
【請求項12】
前記電流を測定して前記波形データを出力する微分型の電流センサを有する測定部を更に備えた、請求項1~11のいずれか一つに記載の判定システム。
【請求項13】
前記測定部は、前記電流が流れる電線に取り付けられる、請求項12に記載の判定システム。
【請求項14】
試験対象物に耐久性試験のための負荷を発生させる駆動装置に供給される電流に関する波形を示す波形データを取得するステップと、
前記波形データから得られる、前記駆動装置にかかる力の特定方向の成分に起因する変化から、前記試験対象物の破損の予兆を判定するステップと、
を含む、判定方法。
【請求項15】
1以上のプロセッサに、請求項14に記載の判定方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試験対象物の耐久性試験に用いられる、判定システム、判定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、タイヤ耐久試験において実施されるタイヤ故障検知方法を開示する。このタイヤ故障検知方法では、非接触式温度センサにより回転する空気入りタイヤの表面温度をタイヤ周方向に沿って1周にわたって測定する工程を繰り返し行う。また、このタイヤ故障検知方法では、所定の時間的間隔をおいて測定された前後の表面温度データをタイヤ周上の各対応する位置で比較してその温度変化量を算出する。のタイヤ故障検知方法は、該温度変化量が所定の閾値以上になった場合にタイヤの破損の予兆である内部故障が発生したと判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-239724号公報
【発明の概要】
【0004】
判定システムでは、取得部が、試験対象物に耐久性試験のための負荷を発生させる駆動装置に供給される電流に関する波形を示す波形データを取得する。判定部が、波形データから得られる、駆動装置にかかる力の特定方向の成分に起因する変化に基づき、試験対象物の破損の予兆を判定する。
【0005】
この判定システムは、試験対象物の破損の予兆の判定の精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態の判定システムのブロック図である。
図2図2は、上記判定システムが適用される試験装置の斜視図である。
図3図3は、上記試験装置の駆動装置に供給される電流の周波数成分を示す図である。
図4図4は、上記判定システムの動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(1)実施形態
(1.1)概要
図1は、実施形態の判定システム10のブロック図である。図2は、判定システム10が適用される試験装置30の斜視図である。判定システム10は、取得部11と、判定部13とを備える。取得部11は、試験対象物40(図2参照)に耐久性試験のための負荷を発生させる駆動装置31に供給される電流I30に関する波形を示す波形データを取得する。判定部13は、波形データから得られる、駆動装置31にかかる力の特定方向の成分に起因する変化から、試験対象物40の破損の予兆を判定する。判定システム10と試験装置30とは試験システム1001を構成する。
【0008】
試験対象物40の耐久性試験においては、試験対象物40の破損の予兆と、駆動装置31にかかる力の特定方向の成分に起因する変化との間に相関があることが見いだされた。判定システム10では、試験対象物40の破損の予兆を判定するにあたって、駆動装置31に供給される電流I30に関する波形を示す波形データを利用する。つまり、判定システム10では、試験対象物40の破損の予兆を判定するにあたって、駆動装置31に供給される電流I30に関する波形を示す波形データを得る。そのため、試験対象物40に判定用の装置を接触させる場合及び試験対象物40の近傍にセンサを設置する場合等とは異なり、試験対象物40の破損の予兆の判定においては、試験対象物40の周辺環境の影響を受け難くなる。したがって、判定システム10によれば、試験対象物40の破損の予兆の判定の精度を向上できる。
【0009】
特許文献1に開示のタイヤ故障検知方法、タイヤの内部故障の有無の判定のために、非接触式温度センサによりタイヤの表面温度を測定する。しかし、非接触式温度センサは、周囲環境の影響を受けやすく、したがってタイヤの内部故障の判定結果も周囲環境の影響を受けやすい。
【0010】
対して、実施形態の判定システム10は、前述のように、試験対象物40の破損の予兆の判定の精度を向上できる。
【0011】
(1.2)詳細
以下、判定システム10について更に詳細に説明する。判定システム10は、試験装置30による耐久性試験での試験対象物40の破損の予兆を判定する。
【0012】
(1.2.1)試験装置
試験装置30は、試験対象物40の耐久性試験のための装置である。耐久性試験は、試験対象物40の耐久性を評価する試験であって、耐久試験及び寿命試験を含み得る。一例として、耐久試験は、試験対象物40に規定の負荷を規定の期間に亘って与えて試験対象物40の状態を評価する試験である。一例として、寿命試験は、試験対象物40に規定の負荷を試験対象物40が破損するまで与える試験である。
【0013】
試験対象物40は、使用時に回転させられる物体である。試験対象物40の例としては、移動体の移動に用いられる物体があり、一例としては、タイヤ、及びホイールが挙げられる。本実施形態では、試験対象物40は、タイヤである。タイヤの用途に基づく分類の例としては、自動車用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、農業機械用タイヤ、産業車両用タイヤ、及び建設車両用タイヤが挙げられる。また、自動車用タイヤの例としては、乗用車用タイヤ、軽トラック用タイヤ、小形トラック用タイヤ、トラック用タイヤ、及びバス用タイヤが挙げられる。また、タイヤの構造に基づく分類の例としては、ラジアルプライタイヤ、バイアスプライタイヤ、チューブレスタイヤ、及び、チューブタイプタイヤが挙げられる。なお、試験対象物40は、タイヤに限らず、ホイールであってもよい。
【0014】
図2は、試験装置30の一例を示す。試験装置30は、駆動装置31と、電線32と、制御装置33と、機構部34とを含む。
【0015】
機構部34は、試験対象物40の耐久性試験を行うための装置である。本実施形態では、機構部34は、一度に2つの試験対象物40の耐久性試験を実施できる。機構部34は、ドラムである回転体341と、一対のホルダ342,343とを含む。回転体341は、試験対象物40を回転させるための装置である。つまり、回転体341は、試験対象物40に、試験対象物40を回転させる負荷をかける。試験対象物40を回転させる負荷は、試験対象物40の回転速度に関係する。つまり、回転体341が回転することで、試験対象物40が回転し、これによって、試験対象物40であるタイヤもしくはホイールが装着された車両の走行状態を疑似的に再現できる。特に、回転体341の回転速度を調整することで、試験対象物40で再現する走行速度を調整できる。ホルダ342,343は、試験対象物40を試験対象物40の回転軸40axの周りに回転可能に保持する。また、ホルダ342,343は、試験対象物40を回転体341に対して所定の位置に保持する。本実施形態では、ホルダ342,343は、試験対象物40を回転体341に所定の接触圧で接触させた状態で試験対象物40を保持するように構成されている。つまり、ホルダ342,343は、試験対象物40を回転体341に押し付ける負荷を試験対象物40に与える。試験対象物40を回転体341に押し付ける負荷は、試験対象物40にかかる荷重に関係する。例えば、試験対象物40を回転体341に押し付けることで、擬似的に車両の車体の重量を再現できる。なお、機構部34は、必ずしも一対のホルダ342,343を有している必要はなく、少なくとも一つのホルダを有していてよい。
【0016】
駆動装置31は、機構部34を駆動する。言い換えれば、駆動装置31は、機構部34の動力源である。駆動装置31は、複数のモータ311,312,313を含む。各モータ311,312,313は、与えられた電流に応じて出力が変化する。
【0017】
モータ311は直動モータである。モータ311は、試験対象物40の回転軸40axに交差(本実施形態では、直交)する方向D311で移動させて試験対象物40を回転体341に対して所定の位置にホルダ342により保持するために利用される。つまり、駆動装置31は、モータ311によって、試験対象物40の回転軸40axに交差する方向D311で試験対象物40を回転体341の外周面に押し当てるように構成される。本実施形態では、モータ311のロータ311aの回転軸311axは、試験対象物40の回転軸40axに交差する方向に延びるが、これに限定されない。
【0018】
モータ312は回転モータである。モータ312は、回転体341を回転させる。つまり、駆動装置31は、モータ312によって回転体341を回転させる。本実施形態では、モータ312のロータ312aが回転する回転軸312axは、回転体341が回転する回転軸341axと平行であるが、これに限定されない。
【0019】
モータ313は、直動モータである。モータ313は、試験対象物40の回転軸40axに交差(本実施形態では、直交)する方向D313で試験対象物40を回転体341に対して所定の位置にホルダ343により保持するために利用される。つまり、駆動装置31は、モータ313によって、試験対象物40の回転軸40axに交差する方向D313で試験対象物40を回転体341の外周面に押し当てるように構成される。本実施形態では、モータ313のロータ313aの回転軸313axは、試験対象物40の回転軸40axに交差する方向に延びるが、これに限定されない。
【0020】
モータ311,312,313は、交流で動作する交流モータである。交流モータは、三相交流モータや単相交流モータであってよい。具体的には、モータ311,312,313は、与えられた交流電流の基準周波数の変化に応じて出力すなわち回転速度(単位時間当たりの回転数)が変化する。一例として、基準周波数が高くなければ出力が大きくなり(出力軸の回転が速くなり)、基準周波数が低くなれば出力が小さくなる(出力軸の回転が遅くなる)。
【0021】
制御装置33は、駆動装置31を制御する。制御装置33は、電線32を介して駆動装置31に接続され、電線32を介して電流I30を駆動装置31に供給する。より詳細には、制御装置33は、電源装置331,332,333を備える。また、電線32は、電線321,322,323を含む。電源装置331,332,333は、駆動装置31のモータ311,312,313に電線321,322,323を介してそれぞれ接続される。電源装置331,332,333は、電線321,322,323によって電流I31,I32,I33を駆動装置31のモータ311,312,313にそれぞれ供給する。以下では、電流I31,I32,I33を区別しない場合には、単に、電流I30ということがある。
【0022】
特に、電源装置331,332,333は、機構部34で試験対象物40の耐久性試験を実行するために、駆動装置31のモータ311,312,313に電流I31,I32,I33をそれぞれ供給する。つまり、電流I31,I32,I33は、試験装置30による試験対象物40の耐久性試験中に駆動装置31に供給される。なお、ホルダ342を用いない場合には、ホルダ342を回転させるモータ311に電流I31を供給する必要はない。同様に、ホルダ343を用いない場合には、ホルダ343を回転させるモータ313に電流I33を供給する必要はない。
【0023】
本実施形態では、モータ311,312,313は交流モータであるから、電流I31,I32,I33は、基準周波数f0を有する交流である。電源装置331,332,333は、電流I31,I32,I33の基準周波数f0を調整する機能を有する。
【0024】
(1.2.2)判定システム
判定システム10は、試験対象物40の破損の予兆の判定として、試験対象物40の破損の予兆の有無を判定する。つまり、判定システム10は、試験対象物40の破損の予兆を検出するシステムとしての機能を有する。判定システム10は、図1に示すように、測定部20を備える。また、判定システム10は、取得部11と、抽出部12と、判定部13と、出力部14と、収集部15と、生成部16と、記憶部17とを備える。
【0025】
測定部20は、試験装置30の駆動装置31に供給される電流I30を測定し、電流I30に関する波形を示す波形データ(電流波形データ)を出力する。測定部20は、制御装置33から駆動装置31への電流I30が流れる電線32に取り付けられる。より詳細には、図2に示すように、測定部20は、電流センサ201,202,203を含む。電流センサ201,202,203は、それぞれ、電線321,322,323に取り付けられる。電流センサ201,202,203は、微分型の電流センサである。したがって、波形データは、電流I30を時間で微分して得られた波形を示すデータである。この種の微分型の電流センサとしては、カレントトランス及びサーチコイルが挙げられる。この種の微分型の電流センサを用いることで、測定部20を、電線32に後付けすることが可能になる。
【0026】
判定システム10は、測定部20を駆動装置31の特にモータ311,312,313のロータ311a,312a,313aの近傍に設置する必要がない。測定部20は、駆動装置31に供給される電流I30を測定できる限り、制御装置33を収納する制御盤等の内部に設置できる。よって、機構部34において、測定部20の設置のための装置や、配線の引き回しが不要であり、また、測定部20の設置に起因するバランス調整等の必要がなくなる。更に、そのため、測定部20の設置にあたって、試験対象物40の耐久性試験中に測定部20を使用できるようにするための対策(例えば、耐油対策、耐熱対策、防水対策等)が必要ない。よって、測定部20のメンテナンスの負担を軽減可能である。また、試験対象物40の破損の影響を受けない位置に測定部20を配置できる。そのため、耐久性試験において試験対象物40が破損した場合でも、試験対象物40の破損によって測定部20が破壊されることがない。また、試験対象物40の耐久性試験中でも、波形データの取得が可能である。そのため、判定システム10での判定のために、試験装置30での耐久性試験を中断する必要がない。更に、試験装置30での耐久性試験中でも、波形データの取得が可能であることから、試験対象物40の状態を随時把握できる。
【0027】
図3は、試験装置30の駆動装置31に供給される電流I30の周波数成分を示すグラフである。図3は、試験対象物40の破損の前の電流I30、特に、回転体341の回転に利用されるモータ312に供給される電流I32の周波数成分G10,G11,G12を示す。試験対象物40の破損の2分前では電流I32は周波数成分G10を有する。試験対象物40の破損の1分前では電流I32は周波数成分G11を有する。試験対象物40の破損の直前ではでは電流I32は周波数成分G12を有する。図3から、周波数成分G10,G11,G12では周波数に対してのピークが見られる。ここで、周波数成分G10,G11では、ピークの位置は約2095Hzでほぼ同じである。一方、周波数成分G12のピークの位置は約2097Hzと周波数成分G10,G11のピークの位置の約2095Hzから十分に区別可能に離れている。したがって、電流I30の周波数成分の変化と試験対象物40の破損の予兆とには相関がある。そして、電流I30の周波数成分の変化は、駆動装置31にかかる力、特にモータ311,312,313のロータ311a,312a,313aにかかる力の特定方向の成分に起因する。試験対象物40に破損の予兆がない場合には、試験対象物40がスムーズに回転し、試験対象物40の回転方向において不規則な力が試験対象物40にはかからない。一方、試験対象物40に破損の予兆がある場合には、試験対象物40がスムーズには回転しにくく、試験対象物40の回転方向において不規則な力が試験対象物40にかかる。以上の点から、試験対象物40の破損の予兆と、駆動装置31にかかる力の特定方向の成分に起因する変化とに相関がある。判定システム10では、試験対象物40の破損の予兆と、駆動装置31にかかる力の特定方向の成分に起因する変化と相関を利用して、試験対象物40の破損の予兆を判定する。なお、上記の特定方向は、試験装置30の構成に依存する。例えば、試験装置30が、モータ311,312,313のロータ311a,312a,313aの回転軸311ax、312ax、313axに対して、どのような方向の力を試験対象物40に作用させるかによって、上記の特定方向は変わり得る。つまり、上記の特定方向は、耐久性試験のために試験対象物40にかける負荷に依存し得る。本実施形態では、試験装置30は、回転体341の回転により、試験対象物40に、試験対象物40を回転させるような負荷をかける。この場合、駆動装置31にかかる力は、モータ312のロータ312aにかかる力であって、上記の特定方向は、モータ312のロータ312aの回転軸312axに交差する方向である。また、本実施形態では、試験装置30は、ホルダ342,343によって、試験対象物40に、試験対象物40を回転体341に押し付けるような負荷をかける。この場合、駆動装置31にかかる力は、モータ311,313のロータ311a,313aにかかる力であって、上記の特定方向は、モータ311,313のロータ311a,313aの回転軸311ax、313axに平行である。
【0028】
取得部11は、試験装置30の駆動装置31に供給される電流I30に関する波形を示す波形データ(電流波形データ)を取得する。より詳細には、取得部11は、測定部20に接続されており、測定部20から波形データを取得する。測定部20からの波形データは、電流I30を時間で微分して得られた波形を示すデータである。試験装置30に関しては、取得部11は、試験装置30の駆動装置31のモータ311,312,313に供給される電流I31,I32,I33に関する波形を示す波形データ(電流波形データ)を取得する。
【0029】
抽出部12は、取得部11で取得された波形データから、判定部13で利用する情報を取得する。判定部13で利用する情報は、駆動装置31にかかる力の特定方向の成分に起因する変化に関する情報である。抽出部12は、取得部11で取得された波形データが示す波形を周波数軸波形(図3参照)に変換する。時間軸波形の周波数軸波形へは、例えば、高速フーリエ変換(FFT)で変換できる。抽出部12は、変換によって得られた周波数軸波形から、駆動装置31にかかる力の特定方向の成分に起因する変化を含み得る着目部分を抽出する。図3に示すように、電流I30の周波数成分には、試験対象物40の破損の予兆に関連するピークが存在する。よって、抽出部12は、着目部分としてピークを含む所定範囲の部分を周波数軸波形から抽出してもよい。
【0030】
判定部13は、駆動装置31にかかる力の特定方向の成分に起因する変化から試験対象物40の破損の予兆を判定する。本実施形態では、判定部13は、抽出部12で抽出された着目部分に基づいて、試験対象物40の破損の予兆を判定する。本実施形態では、判定部13は、試験対象物40の破損の予兆の判定として、試験対象物40の破損の予兆の有無を判定する。
【0031】
判定部13は、学習済みモデルM11を利用して、着目部分から試験対象物40の破損の予兆の有無を判定する。学習済みモデルM11は、与えられた入力(着目部分)に対して、判定値を出力するように設計されている。判定部13は、抽出部12から得た着目部分を学習済みモデルM11に与え、これによって学習済みモデルM11から得られた判定値に基づいて、試験対象物40の破損の予兆の有無を判定する。例えば、判定値が閾値以上であれば、判定部13は、試験対象物40の破損の予兆があると判定してよい。また、判定値が閾値未満であれば、判定部13は、試験対象物40の破損の予兆がないと判定してよい。このような学習済みモデルM11は、試験対象物40に破損の予兆が有る場合又は試験対象物40に破損の予兆が無い場合の着目部分を学習用データ(訓練標本)として用いた教師なし学習により生成することができる。学習済みモデルM11は記憶部17に記憶されている。なお、記憶部17は、モータ311,312,313の種類毎に、学習済みモデルM11を記憶してよい。つまり、判定部13は、モータ311,312,313それぞれに対して異なる学習済みモデルM11を利用してよい。
【0032】
このように、判定部13は、試験対象物40の破損の予兆を判定することができる。特に、判定部13は、試験対象物40の破損の予兆の有無を判定することができる。
【0033】
本実施形態では、取得部11によって、3種類の電流I31,I32,I33の波形データが得られる。そのため、3種類の電流I31,I32,I33の波形データそれぞれから、試験対象物40の破損の予兆の判定の結果が得られる。判定部13は、ホルダ342で保持されている試験対象物40について、電流I31,I32の波形データから、最終的な試験対象物40の破損の予兆の有無を決定してよい。例えば、判定部13は、電流I31,I32の波形データそれぞれで試験対象物40の破損の予兆が有ると判断した場合に、試験対象物40に破損の予兆があると結論付けてよい。同様に、判定部13は、ホルダ343で保持されている試験対象物40について、電流I32,I33の波形データから、最終的な試験対象物40の破損の予兆の有無を決定してよい。例えば、判定部13は、電流I32,I33の波形データそれぞれで試験対象物40の破損の予兆が有ると判断した場合に、試験対象物40に破損の予兆があると採取的に判定してよい。
【0034】
出力部14は、判定部13での判定の結果を出力する。出力部14は、例えば、音声出力装置と、ディスプレイとを有する。ディスプレイは、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの薄型のディスプレイ装置である。出力部14は、判定部13での判定の結果をディスプレイに表示したり、音声出力装置で報知したりしてもよい。また、出力部14は、判定部13での判定の結果をデータとして外部装置に送信したり、蓄積したりしてもよい。なお、出力部14は、音声出力装置とディスプレイとの両方を有する必要はない。また、出力部14は、判定部13での判定の結果を電子メール等で出力することもできる。
【0035】
収集部15は、取得部11で取得されたデータを収集して蓄積する。本実施形態では、取得部11で取得されたデータは、測定部20からの波形データを含む。収集部15が収集したデータは、学習済みモデルM11の生成・更新に利用される。
【0036】
生成部16は、判定部13が利用する学習済みモデルM11を生成する。生成部16は、一定量以上の学習用データを用いて、機械学習アルゴリズムによって学習済みモデルM11を生成する。学習用データは、予め用意されていてもよいし、収集部15が蓄積したデータから生成されてもよい。収集部15が蓄積したデータから生成された学習用データを採用することで、学習済みモデルM11を用いた状態判定の精度の更なる向上が見込める。生成部16は、新しく生成した学習済みモデルM11を評価し、学習済みモデルM11の評価が向上すると、記憶部17に記憶されている学習済みモデルM11を新しく生成した学習済みモデルM11に置き換えて、学習済みモデルM11を更新する。学習済みモデルM11の生成の方法としては、上述したように、教師なし学習を適宜利用できる。なお、教師なし学習としては、代表的な、主成分分析、自己組織化マップ、オートエンコーダ等の次元圧縮手法を利用できる。
【0037】
判定システム10において、取得部11と、抽出部12と、判定部13と、出力部14と、収集部15と、生成部16とは、例えば、1以上のプロセッサ(一例としてはマイクロプロセッサ)と1以上のメモリとを含むコンピュータシステムにより実現され得る。つまり、1以上のプロセッサが1以上のメモリに記憶された1以上のプログラムを実行することで、取得部11と、抽出部12と、判定部13と、出力部14と、収集部15と、生成部16として機能する。1以上のプログラムは、メモリに予め記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0038】
(1.3)動作
次に、図4を参照して判定システム10の基本的な動作について簡単に説明する。以下では、説明を簡略化するために、ホルダ342で保持された試験対象物40の破損の予兆の判定について説明する。
【0039】
判定システム10では、取得部11は、試験装置30の駆動装置31のモータ311,312に供給される電流I31,I32に関する波形を示す波形データ(電流波形データ)を取得する(ステップS11)。次に、抽出部12は、取得部11で取得された波形データが示す波形を周波数軸波形に変換し、周波数軸波形に基づいて駆動装置31の時にモータ311、312のロータ311a,312aにかかる力の特定方向の成分に起因する変化を含む部分を抽出する(ステップS12)。その後、判定部13は、複数の学習済みモデルM11を利用して、抽出部12で抽出された部分から、試験対象物40の破損の予兆を判定する(ステップS13)。最後に、出力部14により、判定部13での判定の結果を出力する(ステップS14)。このように、判定システム10は、駆動装置31に供給される電流I31,I32に関する波形を示す波形データから、試験対象物40の破損の予兆を判定して、判定の結果を提示できる。
【0040】
(1.4)まとめ
以上述べた判定システム10は、取得部11と、判定部13とを備える。取得部11は、試験対象物40に耐久性試験のための負荷を発生させる駆動装置31に供給される電流I30に関する波形を示す波形データを取得する。判定部13は、波形データから得られる、駆動装置31にかかる力の特定方向の成分に起因する変化から、試験対象物の破損の予兆を判定する。このような判定システム10によれば、試験対象物40の破損の予兆に関する判定の精度を向上できる。
【0041】
換言すれば、判定システム10は、下記の判定方法を実行しているといえる。判定方法は、取得ステップと、判定ステップとを備える。取得ステップは、試験対象物40に耐久性試験のための負荷を発生させる駆動装置31に供給される電流I30に関する波形を示す波形データを取得するステップである。判定部13は、波形データから得られる、駆動装置31にかかる力の特定方向の成分に起因する変化から、試験対象物の破損の予兆に関する判定を行うステップである。このような判定方法によれば、試験対象物40の破損の予兆に関する判定の精度を向上できる。
【0042】
判定システム10は、1以上のプロセッサを含むコンピュータシステムにより実現されている。つまり、判定システム10は、1以上のプロセッサがプログラム(判定プログラム)を実行することにより実現される。このプログラムは、1以上のプロセッサに判定方法を実行させるためのプログラム(コンピュータプログラム)である。このようなプログラムによれば、判定方法と同様に、試験対象物40の破損の予兆に関する判定の精度を向上できる。
【0043】
(2)変形例
本開示の実施形態は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に、上記実施形態の変形例を列挙する。
【0044】
一変形例では、取得部11は、必ずしも3種類の電流I31,I32,I33の波形データを取得しなくてよい。例えば、取得部11は、モータ311,312,313のいずれか一つに供給される電流I30、つまり、電流I31,I32,I33のいずれか一つの波形データだけを取得してよい。この場合、測定部20は、電流I31,I32,I33のいずれか一つだけを測定する。
【0045】
一変形例では、取得部11は、駆動装置31で発生させる耐久性試験のための負荷を変動させたときの波形データを取得してよい。試験装置30の場合、耐久性試験のための負荷としては、試験対象物40を回転させる負荷、及び、試験対象物40を回転体341に押し付ける負荷があり得る。試験対象物40を回転させる負荷は、試験対象物40の回転速度に関係する。試験対象物40を回転体341に押し付ける負荷は、試験対象物40にかかる荷重に関係する。このようにして、試験対象物40に積極的に変化を生じさせることで、駆動装置31に供給される電流I30に試験対象物40の破損の予兆が反映される可能性がある。これによって、取得部11で取得される電流I30の波形データにおいて試験対象物40の破損の予兆に起因する変化が生じることが期待できる。したがって、試験対象物40の破損の予兆に関する判定の精度の更なる向上が図れる。
【0046】
一変形例では、学習済みモデルM11は、与えられた入力(着目部分)に対して、試験対象物40の破損の予兆の有無を出力するように設計されていてよい。このような学習済みモデルM11は、試験対象物40の破損の予兆の有無に対応するラベルと着目部分との関係を規定する学習用データ(データセット)を用いた教師あり学習により生成することができる。教師あり学習としては、代表的な、教師あり学習機構を有する多層ニューラルネットワークを利用できる。
【0047】
一変形例では、判定部13は、試験対象物40の破損の予兆に関する判定として、試験対象物40の破損の予兆の種類を判定してよい。例えば、判定部13は、与えられた入力(着目部分)に対して、試験対象物40の破損の予兆の種類を出力するように設計された学習済みモデルを利用してよい。このような学習済みモデルは、予兆の種類に対応するラベルと着目部分との関係を規定する学習用データ(データセット)を用いた教師あり学習により生成することができる。
【0048】
一変形例では、判定部13は、ホルダ342で保持されている試験対象物40について、電流I31,I32の波形データの少なくとも一方で試験対象物40の破損の予兆が有ると判断した場合に、試験対象物40に破損の予兆があると最終的に判定してよい。同様に、判定部13は、ホルダ343で保持されている試験対象物40について、電流I32,I33の波形データの少なくとも一方で試験対象物40の破損の予兆が有ると判断した場合に、試験対象物40に破損の予兆があると最終的に判定してよい。
【0049】
例えば、判定システム10は、必ずしも、測定部20を備えている必要はない。一例として、測定部20が予め試験装置30に備えられていれば、判定システム10は、取得部11、抽出部12、判定部13、出力部14、収集部15、生成部16、及び記憶部17を有している。
【0050】
ここで、測定部20の電流センサ201,202,203は微分型の電流センサに限らず、その他の電流センサであってもよい。
【0051】
また、判定システム10は、必ずしも、収集部15、生成部16、及び記憶部17を有している必要はない。つまり、判定システム10は、学習済みモデルM11を自身で更新する機能を有していなくてよい。
【0052】
また、抽出部12は、必須ではない。例えば、抽出部12での処理をユーザが代替して行う場合、判定システム10は、駆動装置31にかかる力の特定方向の成分に起因する変化を含む着目部分を抽出しなくてよい。また、取得部11で取得された波形データが示す波形の全体を入力として学習済みモデルM11に基づいて試験対象物40の破損の予兆の判定の結果を出力として得てよい。つまり、変化を含む着目部分の抽出を省略してよい。
【0053】
また、判定システム10は、複数のコンピュータにより構成されていてもよく、判定システム10の機能(特に、取得部11、抽出部12、判定部13、出力部14、収集部15、及び生成部16)は、複数の装置に分散されていてもよい。例えば、取得部11、抽出部12、判定部13及び出力部14は、機器のある施設に設置されるパーソナルコンピュータ等に設けられてよく、生成部16及び出力部14は、外部のサーバ等に設けられてよい。この場合、パーソナルコンピュータとサーバとが協働することで、判定システム10が実現される。更に、判定システム10の機能の少なくとも一部が、例えば、クラウド(クラウドコンピューティング)によって実現されていてもよい。
【0054】
以上述べた判定システム10の実行主体は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを有する。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における判定システム10の実行主体としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されていてもよいが、電気通信回線を通じて提供されてもよい。また、プログラムは、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1乃至複数の電子回路で構成される。ここでは、ICやLSIと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(verylarge scale integration)、若しくはULSI(ultralarge scale integration)と呼ばれるものであってもよい。LSIの製造後にプログラムされる、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FGPA)、又はLSI内部の接合関係の再構成又はLSI内部の回路区画のセットアップができる再構成可能な論理デバイスも同じ目的で使うことができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。
【0055】
(3)態様
上記実施形態及び変形例から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。以下では、実施形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。
【0056】
第1の態様は、判定システム(10)であって、取得部(11)と、判定部(13)とを備える。前記取得部(11)は、試験対象物(40)に耐久性試験のための負荷を発生させる駆動装置(31)に供給される電流(I30,I31,I32,I33)に関する波形を示す波形データを取得する。前記判定部(13)は、前記波形データから得られる、前記駆動装置(31)にかかる力の特定方向の成分に起因する変化から、前記試験対象物(40)の破損の予兆に関する判定を行う。この態様によれば、試験対象物(40)の破損の予兆に関する判定の精度を向上できる。
【0057】
第2の態様は、第1の態様に基づく判定システム(10)である。第2の態様では、前記電流(I30,I31,I32,I33)は、前記耐久性試験中に前記駆動装置(31)に供給される。この態様によれば、耐久性試験を中断することなく、試験対象物(40)の破損の予兆に関する判定が可能となる。
【0058】
第3の態様は、第1又は第2の態様に基づく判定システム(10)である。第3の態様では、前記試験対象物(40)は、使用時に回転させられる物体である。この態様によれば、使用時に回転させられる物体について、破損の予兆に関する判定が可能となる。
【0059】
第4の態様は、第3の態様に基づく判定システム(10)である。第4の態様では、前記試験対象物(40)は、タイヤ又はホイールである。この態様によれば、タイヤ又はホイールについて、破損の予兆に関する判定が可能となる。
【0060】
第5の態様は、第3又は第4の態様に基づく判定システム(10)である。第5の態様では、前記駆動装置(31)は、前記試験対象物(40)に接触して前記試験対象物(40)を回転させる回転体(341)を回転させるモータ(312)を含む。前記駆動装置(31)にかかる力は、前記モータ(312)のロータ(312a)にかかる力である。この態様によれば、試験対象物(40)の破損の予兆に関する判定の精度の更なる向上が図れる。
【0061】
第6の態様は、第5の態様に基づく判定システム(10)である。第6の態様では、前記特定方向は、前記ロータ(312a)の回転軸に交差する方向である。この態様によれば、試験対象物(40)の破損の予兆に関する判定の精度の更なる向上が図れる。
【0062】
第7の態様は、第3又は第4の態様に基づく判定システム(10)である。第7の態様では、前記駆動装置(31)は、前記試験対象物(40)に接触して前記試験対象物(40)を回転させる回転体(341)に前記試験対象物(40)を押し付けるためのモータ(311,313)を含む。前記駆動装置(31)にかかる力は、前記モータ(311,313)のロータ(311a,313a)にかかる力である。この態様によれば、試験対象物(40)の破損の予兆に関する判定の精度の更なる向上が図れる。
【0063】
第8の態様は、第7の態様に基づく判定システム(10)である。第8の態様では、前記特定方向は、前記試験対象物(40)を前記回転体(341)に接触させる方向に沿った方向である。この態様によれば、試験対象物(40)の破損の予兆に関する判定の精度の更なる向上が図れる。
【0064】
第9の態様は、第1~第8の態様のいずれか一つに基づく判定システム(10)である。第9の態様では、前記取得部(11)は、前記駆動装置(31)で発生させる前記耐久性試験のための負荷を変動させたときの前記波形データを取得する。この態様によれば、試験対象物(40)の破損の予兆に関する判定の精度の更なる向上が図れる。
【0065】
第10の態様は、第1~第9の態様のいずれか一つに基づく判定システム(10)である。第10の態様では、前記判定システム(10)は、前記波形を周波数軸波形に変換し、前記周波数軸波形から前記変化を含み得る部分を抽出する抽出部(12)を更に備える。前記判定部(13)は、前記抽出部(12)で抽出された前記部分に基づいて、前記試験対象物(40)の破損の予兆に関する判定をする。この態様によれば、試験対象物(40)の破損の予兆に関する判定の精度の更なる向上が図れる。
【0066】
第11の態様は、第10の態様に基づく判定システム(10)である。第11の態様では、前記判定部(13)は、学習済みモデル(M11)を利用して、前記部分から前記試験対象物(40)の破損の予兆に関する判定をする。前記学習済みモデル(M11)は、前記試験対象物(40)に破損の予兆が有る場合又は前記試験対象物(40)に破損の予兆が無い場合の前記部分を学習用データとして用いた教師なし学習により生成される。この態様によれば、試験対象物(40)の破損の予兆に関する判定の精度の更なる向上が図れる。
【0067】
第12の態様は、第1~第11の態様のいずれか一つに基づく判定システム(10)である。第12の態様では、前記判定システム(10)は、前記電流(I30,I31,I32,I33)を測定して前記波形データを出力する測定部(20)を更に備える。前記測定部(20)は、微分型の電流センサ(201,202,203)を含む。この態様によれば、試験対象物(40)の破損の予兆に関する判定の精度を向上できる。
【0068】
第13の態様は、第12の態様に基づく判定システム(10)である。第13の態様では、前記測定部(20)は、前記電流(I30,I31,I32,I33)が流れる電線(32,321,322,323)に取り付けられる。この態様によれば、判定システム(10)の実装が容易になる。
【0069】
第14の態様は、判定方法であって、取得ステップと、判定ステップとを含む。前記取得ステップは、試験対象物(40)に耐久性試験のための負荷を発生させる駆動装置(31)に供給される電流(I30,I31,I32,I33)に関する波形を示す波形データを取得するステップである。前記判定ステップは、前記波形データから得られる、前記駆動装置(31)にかかる力の特定方向の成分に起因する変化から、前記試験対象物(40)の破損の予兆に関する判定を行うステップである。この態様によれば、試験対象物(40)の破損の予兆に関する判定の精度を向上できる。
【0070】
第15の態様は、プログラムであって、1以上のプロセッサに、第14の態様の判定方法を実行させるための、プログラムである。この態様によれば、試験対象物(40)の破損の予兆に関する判定の精度を向上できる。
【符号の説明】
【0071】
10 判定システム
11 取得部
12 抽出部
13 判定部
20 測定部
201,202,203 電流センサ
31 駆動装置
311,312,313 モータ
311a,312a,313a ロータ
32,321,322,323 電線
341 回転体
40 試験対象物
I30,I31,I32,I33 電流
M11 学習済みモデル
図1
図2
図3
図4