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特許7424401プリプレグ用樹脂組成物、プリプレグ、金属張積層板、プリント配線板、および半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】プリプレグ用樹脂組成物、プリプレグ、金属張積層板、プリント配線板、および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/24 20060101AFI20240123BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240123BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240123BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240123BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240123BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
C08J5/24 CFC
C08L101/00
C08K3/013
C08K3/22
C08L63/00 C
H05K1/03 610L
H05K1/03 610H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022051796
(22)【出願日】2022-03-28
(62)【分割の表示】P 2018063814の分割
【原出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2022100320
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2022-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】枝川 知史
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昭仁
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特許第7052482(JP,B2)
【文献】特開平02-219642(JP,A)
【文献】特開2008-133412(JP,A)
【文献】特開2008-050546(JP,A)
【文献】特開2000-345007(JP,A)
【文献】特開2017-052884(JP,A)
【文献】特開2014-185221(JP,A)
【文献】特開2017-043649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
C08J 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂と、
無機充填材と、
黒色顔料と、を含むプリプレグ用樹脂組成物であって、
当該プリプレグ用樹脂組成物の硬化物の、厚み60μmにおける400nm~1100nmの波長の光に対する透過率の最大値が、10%以下であるプリプレグ用樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂を含む、請求項1に記載のプリプレグ用樹脂組成物。
【請求項3】
硬化剤をさらに含む、請求項1または2に記載のプリプレグ用樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂組成物が含浸された繊維基材からなる繊維基材層を備えるプリプレグであって、
前記樹脂組成物は、請求項1~のいずれかに記載のプリプレグ用樹脂組成物である、プリプレグ。
【請求項5】
前記繊維基材層の少なくとも一方の面に積層された樹脂層をさらに備え、
前記樹脂層は、請求項1~のいずれかに記載のプリプレグ用樹脂組成物からなり、
前記樹脂層の厚みは、1μm以上50μm以下である、請求項に記載のプリプレグ。
【請求項6】
請求項またはに記載のプリプレグと、
前記プリプレグに積層された金属箔とを備える、金属張積層板。
【請求項7】
請求項に記載のプリプレグの成形体と、前記成形体の両面または片面に設けられた配線パターンとを備える、プリント配線板。
【請求項8】
請求項に記載のプリント配線板と、
前記プリント配線板に搭載された半導体素子と、を備える半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板材料用樹脂組成物、プリプレグ、金属張積層板、プリント配線板、および半導体装置に関する。より詳細には、コア材等を含む基板材料を製造するために用いられる樹脂組成物、ならびにこの樹脂組成物を用いて製造されるプリプレグ、金属張積層板、プリント配線板、および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子部品を搭載するための配線基板においては、下地となる絶縁基板や絶縁層上に、エポキシ樹脂等の樹脂ペーストを塗布し、硬化させて樹脂絶縁層を形成するものが知られている。この様な配線基板としては、例えば、樹脂絶縁層間に配線層を形成しつつ、樹脂絶縁層を積層したビルドアップ配線基板や、樹脂絶縁層をソルダーレジスト層として用いたプリント配線基板が提案されている(たとえば、特許文献1)。
特許文献1では、光学素子への入射光や光学素子からの出射光等が、光学素子と基板との接続部にて反射や拡散するのを抑制して、光学素子への光情報の誤入力、光学素子からの光情報の誤出力が発生するのを防止できるプリント配線板の材料として、硬化性樹脂、金属系の導電性フィラーおよび黒色着色剤を含有する導電性樹脂組成物を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-91748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これまで提案されてきたプリント配線基板はソルダーレジスト層に黒色着色剤が配合されており、樹脂絶縁層自体が低光透過性を有するものは提案されていない。
本発明者らは、光学素子の出射光やの反射や拡散、および光学素子搭載面とは反対側の面から入射する光の反射や拡散により、光学素子の誤作動が生じ、これを防止するには基板自体が低光透過性を備えればよいことを知見した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、光学素子が搭載される基板自体を、紫外から赤外領域にわたる波長領域の光を吸収する材料で形成することにより、光学素子の誤作動を防止できることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
本発明によれば、熱硬化性樹脂と、無機充填材と、黒色顔料と、を含む基板材料用樹脂組成物であって、当該基板材料用組成物の硬化物の、厚み60μmにおける400nm~1100nmの波長の光に対する透過率の最大値が、10%以下である基板材料用樹脂組成物が提供される。
【0007】
また本発明によれば、樹脂組成物が含浸された繊維基材からなる繊維基材層を備えるプリプレグであって、前記樹脂組成物は、上記基板材料用樹脂組成物である、プリプレグが提供される。
【0008】
また本発明によれば、上記プリプレグと、前記プリプレグに積層された金属箔とを備える、金属張積層板が提供される。
【0009】
また本発明によれば、上記プリプレグの成形体と、前記成形体の両面または片面に設けられた配線パターンとを備える、プリント配線板が提供される。
【0010】
また本発明によれば、上記プリント配線板と、前記プリント配線板に搭載された半導体素子と、を備える半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、紫外から赤外領域にわたる波長領域の光を吸収する基板材料用樹脂組成物、当該樹脂組成物の硬化物を備えるプリプレグ、金属張積層板、プリント配線板、および半導体装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態の基板材料用樹脂組成物(以下、樹脂組成物と称する)は、熱硬化性樹脂と、無機充填材と、黒色顔料とを含み、当該樹脂組成物の硬化物の、厚み60μmにおける400nm~1100nmの波長の光に対する透過率の最大値は、10%以下である。
【0013】
一実施形態において、本実施形態の樹脂組成物は、その硬化物の厚み60μmにおける400nm~1100nmの波長の光に対する透過率の最大値が、5%以下であることが好ましく、4%以下であることがさらに好ましい。透過率の最大値が10%以下であることにより、この硬化物をコア材とした基板上に光学素子を搭載した場合、光学素子の出射光の反射や拡散が抑制され、また光学素子搭載面とは反対側の面から入射する光の反射や拡散が防止される。これにより、光学素子の光による誤作動を防止することができる。また、光学素子を任意の位置に配置することができるため、光学素子の配置の自由度を上げることができる。
【0014】
本実施形態の樹脂組成物は、黒色顔料を含む。黒色顔料を含むことにより、紫外から赤外領域にわたる波長領域の光透過率を低減することができる。そのため、当該樹脂組成物の硬化物をコア材として基板を作製したとき、この基板は、紫外から赤外領域にわたる波長領域の光を通さず、またこの基板に光学素子を搭載した場合、光学素子の出射光の反射や拡散が抑制され、そのため光学素子の誤作動が低減される。
【0015】
本実施形態の樹脂組成物に用いられる熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、マレイミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。熱硬化性樹脂としては、中でも、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。これにより、以下で説明する黒色顔料の分散性を向上できる。
【0016】
上述したエポキシ樹脂としては、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4’-(1,3-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4’-(1,4-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4’-シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)などのビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン変性クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;フェノキシ型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ノルボルネン型エポキシ樹脂;アダマンタン型エポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂などが挙げられる。エポキシ樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
エポキシ樹脂の中でも、樹脂組成物の硬化物の耐熱性および絶縁信頼性をより一層向上できる観点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂からなる群から選択される一種または二種以上が好ましく、アラルキル型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂およびナフタレン型エポキシ樹脂からなる群から選択される一種または二種以上がより好ましい。
【0018】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、三菱化学社製の「エピコート828EL」および「YL980」等を用いることができる。ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、三菱化学社製の「jER806H」および「YL983U」、DIC社製の「EPICLON 830S」等を用いることができる。2官能ナフタレン型エポキシ樹脂としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」および「HP4032SS」等を用いることができる。4官能ナフタレン型エポキシ樹脂としては、DIC社製の「HP4700」および「HP4710」等を用いることができる。ナフトール型エポキシ樹脂としては、新日鐵化学社製の「ESN-475V」、日本化薬社製の「NC7000L」等を用いることができる。アラルキル型エポキシ樹脂としては、日本化薬社製の「NC3000」、「NC3000H」、「NC3000L」、「NC3000S」、「NC3000S-H」、「NC3100」、新日鐵化学社製の「ESN-170」、および「ESN-480」等を用いることができる。ビフェニル型エポキシ樹脂としては、三菱化学社製の「YX4000」、「YX4000H」、「YX4000HK」および「YL6121」等を用いることができる。アントラセン型エポキシ樹脂としては、三菱化学社製の「YX8800」等を用いることができる。ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂としては、DIC社製の「HP6000」、「EXA-7310」、「EXA-7311」、「EXA-7311L」および「EXA7311-G3」等を用いることができる。
【0019】
これらエポキシ樹脂の中でも特にアラルキル型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、樹脂組成物の硬化物の吸湿半田耐熱性および難燃性をさらに向上させることができる。
【0020】
アラルキル型エポキシ樹脂は、例えば、下記一般式(1)で表される。
【0021】
【化1】
(上記一般式(1)中、AおよびBは、ベンゼン環、ビフェニル構造等の芳香族環を表す。またAおよびBの芳香族環の水素が置換されていてもよい。置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基等が挙げられる。nは繰返し単位を表し、例えば、1~10の整数である。)
【0022】
アラルキル型エポキシ樹脂の具体例としては、以下の式(1a)および式(1b)が挙げられる。
【0023】
【化2】
(式(1a)中、nは、1~5の整数を示す。)
【0024】
【化3】
(式(1b)中、nは、1~5の整数を示す。)
【0025】
上記以外のエポキシ樹脂としては縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、耐熱性、低熱膨張性をさらに向上させることができる。
【0026】
縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂は、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、クリセン、ピレン、トリフェニレン、テトラフェン、またはその他の縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂である。縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂は、複数の芳香環が規則的に配列することができるため低熱膨張性に優れる。また、ガラス転移温度も高いため耐熱性に優れる。さらに、繰返し構造の分子量が大きいため従来のノボラック型エポキシ樹脂に比べ難燃性に優れる。
【0027】
縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂は、フェノール類化合物、アルデヒド類化合物、および縮合環芳香族炭化水素化合物から合成された、ノボラック型フェノール樹脂をエポキシ化したものである。
【0028】
マレイミド化合物のマレイミド基は、5員環の平面構造を有し、マレイミド基の二重結合が分子間で相互作用しやすく極性が高いため、マレイミド基、ベンゼン環、その他の平面構造を有する化合物等と強い分子間相互作用を示し、分子運動を抑制することができる。そのため、樹脂組成物は、マレイミド化合物を含むことにより、得られる硬化物の線膨張係数を下げ、ガラス転移温度を向上させることができ、さらに、耐熱性を向上させることができる。
【0029】
マレイミド化合物としては、分子内に少なくとも2つのマレイミド基を有するマレイミド化合物が好ましい。分子内に少なくとも2つのマレイミド基を有するマレイミド化合物としては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、p-フェニレンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、N,N’-エチレンジマレイミド、N,N’-ヘキサメチレンジマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド等の分子内に2つのマレイミド基を有する化合物、ポリフェニルメタンマレイミド等の分子内に3つ以上のマレイミド基を有する化合物等が挙げられる。
【0030】
これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用することもできる。これらのマレイミド化合物の中でも、低吸水率である点等から、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミドが好ましい。
【0031】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するフェノキシ樹脂、アントラセン骨格を有するフェノキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂などが挙げられる。また、これらの骨格を複数種有した構造のフェノキシ樹脂を用いることもできる。
【0032】
これらの中でも、フェノキシ樹脂には、ビフェニル骨格およびビスフェノールS骨格を有するフェノキシ樹脂を用いるのが好ましい。ビフェニル骨格が有する剛直性により、フェノキシ樹脂のガラス転移温度を高くすることができるとともに、ビスフェノールS骨格の存在により、フェノキシ樹脂と金属との密着性を向上させることができる。その結果、樹脂組成物の硬化物の耐熱性の向上を図ることができるとともに、樹脂組成物の硬化物を樹脂絶縁層として用いて回路基板を製造する際に、樹脂絶縁層に対する配線層の密着性を向上させることができる。また、フェノキシ樹脂には、ビスフェノールA骨格およびビスフェノールF骨格を有するフェノキシ樹脂を用いるのも好ましい。これにより、回路基板の製造時に、樹脂絶縁層に対する配線層の密着性をさらに向上させることができる。
【0033】
また、下記一般式(X)で表されるビスフェノールアセトフェノン構造を有するフェノキシ樹脂を用いるのも好ましい。
【0034】
【化4】
【0035】
(式中、R1は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1以上10以下の炭化水素基またはハロゲン元素から選ばれる基であり、R2は、水素原子、炭素数1以上10以下の炭化水素基またはハロゲン元素から選ばれる基であり、R3は、水素原子または炭素数1以上10以下の炭化水素基であり、mは0以上5以下の整数である。)
【0036】
ビスフェノールアセトフェノン構造を含むフェノキシ樹脂は、嵩高い構造を持っているため、溶剤溶解性や、配合する熱硬化性樹脂成分との相溶性に優れる。また、低粗度で均一な粗面を形成することができるため微細配線形成性に優れる。
【0037】
ビスフェノールアセトフェノン構造を有するフェノキシ樹脂は、エポキシ樹脂とフェノール樹脂を触媒で高分子量化させる方法などの公知の方法で合成することができる。
【0038】
ビスフェノールアセトフェノン構造を有するフェノキシ樹脂は、一般式(X)のビスフェノールアセトフェノン構造以外の構造が含まれていても良く、その構造はとくに限定されないが、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、ビフェニル型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型の構造などが挙げられる。中でも、ビフェニル型の構造を含むものが、ガラス転移温度が高く好ましい。
【0039】
ビスフェノールアセトフェノン構造を含むフェノキシ樹脂中の一般式(X)のビスフェノールアセトフェノン構造の含有量はとくに限定されないが、好ましくは5モル%以上95モル%以下であり、より好ましくは10モル%以上85モル%以下であり、さらに好ましくは15モル%以上75モル%以下である。含有量が上記下限値以上であると、得られる樹脂組成物の硬化物の耐熱性や耐湿信頼性を向上させる効果を十分に発揮させることができる。また、含有量が上記上限値以下であると、樹脂組成物の溶剤溶解性を向上させることができる。
【0040】
フェノキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、とくに限定されないが、Mw5,000以上100,000以下が好ましく、10,000以上70,000以下がより好ましく20,000以上50,000以下がさらに好ましい。Mwが上記上限値以下であると、他の樹脂との相溶性や溶剤への溶解性を向上させることができる。上記下限値以上であると、製膜性が向上し、回路基板の製造に用いる場合に不具合が発生するのを抑制することができる。
【0041】
フェノキシ樹脂の含有量は、とくに限定されないが、充填材を除く樹脂組成物の0.5重量%以上40重量%以下が好ましく、1重量%以上20重量%以下がより好ましい。含有量が上記下限値以上であると絶縁樹脂層の機械強度の低下や、導体回路とのメッキ密着性の低下を抑制することができる。上記上限値以下であると、樹脂絶縁層の熱膨張率の増加を抑制でき、耐熱性を低下させることができる。
【0042】
本実施形態の樹脂組成物に用いられる無機充填材としては、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラスなどのケイ酸塩;酸化チタン、アルミナ、ベーマイト、シリカ、溶融シリカなどの酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトなどの炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウムなどの硫酸塩または亜硫酸塩;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウムなどのホウ酸塩;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素などの窒化物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムなどのチタン酸塩などが挙げられる。充填材は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。充填材としては、シリカを用いることが好ましい。
【0043】
本実施形態の樹脂組成物に用いられる黒色顔料としては、黒色酸化チタンなどの無機酸化物;カーボンブラック、グラファイト、フラーレン、カーボンファイバーなどの炭素化合物などが挙げられる。中でも、黒色顔料としては、黒色酸化チタンが好ましい。黒色酸化チタンは、Ti2n-1(nは正の整数)で表されるチタン酸化物であり、この黒色酸化チタンTi2n-1(nは正の整数)は、例えば、黒色酸化チタンTi2n-1(nは2以上6以下の整数)を含むことが好ましい。このような黒色酸化チタンは、樹脂組成物中に高分散するため、得られる樹脂組成物の光透過率を低減することができる。
【0044】
黒色酸化チタンの平均粒径の上限値は、特に限定されないが、例えば、2.0μm以下が好ましく、1.9μm以下がより好ましく、1.8μm以下がさらに好ましい。これにより、黒色酸化チタンの樹脂組成物中への分散性を高めることができる。また、黒色酸化チタンの平均粒径の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がさらに好ましい。このような平均粒径を有する黒色酸化チタンは、製造容易性および取扱い性の観点から好ましい。
【0045】
本実施形態において、黒色酸化チタンは、樹脂組成物の固形分全体に対して、1重量%以上10重量%以下の量で配合されることが好ましい。このような含有量で黒色酸化チタンを用いることにより、得られる樹脂組成物の光透過率を所望の範囲に調整することができる。
【0046】
本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて、硬化剤を含んでもよい。使用できる硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂、活性エステル樹脂などを用いることができる。硬化剤としては、例えば、シアネート樹脂を用いることが好ましい。これにより、黒色酸化チタンを樹脂組成物中に好適に分散させることができ、また得られる樹脂組成物の硬化物は高ガラス転移温度Tg、高剛性、低線膨張性を有する。
【0047】
上記フェノール樹脂は、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマーであり、具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂;トリフェノールメタン型フェノール樹脂などの多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂などの変性フェノール樹脂;フェニレン骨格および/またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂などのアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール化合物などが挙げられる。フェノール樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、フェノール樹脂としては、室温25℃で液状である液状フェノール樹脂を含むことが好ましい。
【0048】
上記ベンゾオキサジン樹脂としては、具体的には、o-クレゾールアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、m-クレゾールアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、p-クレゾールアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール-メチルアミン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール-シクロヘキシルアミン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール-m-トルイジン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール-3,5-ジメチルアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールA-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールA-アミン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールF-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールS-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ジヒドロキシジフェニルスルホン-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ジヒドロキシジフェニルエーテル-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾフェノン型ベンゾオキサジン樹脂、ビフェニル型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールAF-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールA-メチルアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール-ジアミノジフェニルメタン型ベンゾオキサジン樹脂、トリフェニルメタン型ベンゾオキサジン樹脂、およびフェノールフタレイン型ベンゾオキサジン樹脂などが挙げられる。
また、ベンゾオキサジン樹脂の市販品としては、例えば、BF-BXZ、BS-BXZ、BA-BXZ(以上、小西化学工業社製)などを用いることができる。
【0049】
上記シアネート樹脂としては、シアネートエステル樹脂を用いることができる。
シアネートエステル樹脂としては、具体的には、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアネートフェニル)エーテルなどの2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ジシクロペンタジエン構造含有フェノール樹脂などから誘導される多官能シアネート樹脂;上記例示したシアネートエステル樹脂の一部がトリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。
ここで、シアネートエステル樹脂の市販品としては、例えば、ロンザジャパン社製のPT30、BA230、DT-4000、DT-7000などを用いることができる。
【0050】
上記活性エステル樹脂としては、具体的には、フェノールエステル化合物、チオフェノールエステル化合物、N-ヒドロキシアミンエステル化合物、複素環ヒドロキシ基がエステル化された化合物等の反応活性の高いエステル基を有し、エポキシ樹脂の硬化作用を有するものを用いることができる。
活性エステル樹脂としては、上記具体例のうち、例えば、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られるものを用いることが好ましい。ここで、ヒドロキシ化合物としては、具体的には、フェノール化合物、ナフトール化合物などが挙げられる。
【0051】
上記カルボン酸化合物としては、具体的には、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸などが挙げられる。
また、上記フェノール化合物としては、具体的には、ヒドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックなどが挙げられる。
また、上記ナフトール化合物としては、具体的には、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレンなどが挙げられる。
【0052】
本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて、硬化促進剤、着色剤、カップリング剤、レベリング剤、難燃剤等のさらなる成分を含んでもよい。
【0053】
上記硬化促進剤としては、エポキシ樹脂と、硬化剤との反応を促進させるものを用いることができる。硬化促進剤の具体例としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)などの有機金属塩、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなどの3級アミン類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート(TPP-K)、テトラフェニルホスホニウム・テトラキス(4-メチルフェニル)ボレート(TPP-MK)、テトラフェニルホスホニウムのビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケート付加物のような四級ホスホニウム系化合物、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-エチルイミダゾール、2-フェニル-4-エチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシイミダゾールなどのイミダゾール類、フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノールなどのフェノール化合物、酢酸、安息香酸、サリチル酸、パラトルエンスルホン酸などの有機酸、およびオニウム塩化合物などが挙げられる。
【0054】
硬化促進剤として用いられるオニウム塩化合物は、特に限定されないが、例えば、下記一般式(2)で表される化合物を用いることができる。
【0055】
【化5】
(上記一般式(2)中、Pはリン原子、R3、R4、R5およびR6は、それぞれ、置換もしくは無置換の芳香環または複素環を有する有機基、あるいは置換もしくは無置換の脂肪族基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。A-は分子外に放出しうるプロトンを少なくとも1個以上分子内に有するn(n≧1)価のプロトン供与体のアニオン、またはその錯アニオンを示す)
【0056】
硬化促進剤の含有量の下限値は、例えば、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100重量%に対して、たとえば、0.01重量%以上としてもよく、好ましくは0.05重量%以上としてもよい。硬化促進剤の含有量を上記下限値以上とすることにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化性をより効果的に向上させることができる。一方、硬化促進剤の含有量の上限値は、例えば、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100重量%に対して、2.5重量%以下としてもよく、好ましくは1重量%以下としてもよい。硬化促進剤の含有量を上記上限値以下とすることにより、熱硬化性樹脂組成物の保存性を向上させることができる。
【0057】
上記着色剤としては、上述の黒色顔料以外の黒色染料または黒色色素を用いることができる。黒色染料としては、具体的には、アゾ系等の金属錯塩黒色染料、または、アントラキノン系化合物等の有機黒色染料などが挙げられ、より具体的には、Kayaset Black A-N(日本化薬社製)、Kayaset Black G(日本化薬社製)等が挙げられる。本実施形態において、黒色染料は1種または2種以上用いてもよい。
【0058】
上記カップリング剤としては、エポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤などのシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤などが挙げられる。カップリング剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
本実施形態における回路基板用樹脂組成物は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂などの熱可塑性樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体などのポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマーなどの熱可塑性エラストマ-、ポリブタジエン、エポキシ変性ポリブタジエン、アクリル変性ポリブタジエン、メタクリル変性ポリブタジエンなどのジエン系エラストマーをさらに併用してもよい。
【0060】
本実施形態の樹脂組成物は、原料成分を溶媒に溶解、分散させることにより、ワニス状の組成物として提供される。
溶媒としては、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、ヘプタン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系、アニソール、およびN-メチルピロリドンなどが挙げられる。溶媒は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
(基板材料用樹脂組成物の製造方法)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、上述した原料成分を、例えば、超音波分散方式、高圧衝突式分散方式、高速回転分散方式、ビーズミル方式、高速せん断分散方式、および自転公転式分散方式などの各種混合機を用いて溶剤中に溶解、混合、撹拌することにより調製することができる。
基板材料用樹脂組成物の製造方法としては、黒色顔料を溶媒中に溶解、分散させた後、黒色顔料以外の基板材料用樹脂組成物の原料成分を溶解、分散させることが重要である。これにより、従来の基板材料用樹脂組成物と比べて、黒色顔料を基板材料用樹脂組成物中に高度に分散させることができる。
黒色顔料を溶媒に溶解、分散させる方法としては、例えば、超音波分散を用いることが好ましい。これにより、黒色顔料を基板材料用樹脂組成物中にさらに高度に分散させることができる。
なお、黒色顔料の分散性を向上する観点から、超音波分散させる時間は、例えば、30分間以上60分間以下とすることが好ましい。これにより、黒色顔料の含有量を低減しつつ、光の透過率を低減することができる。
【0062】
本実施形態の樹脂組成物は、基板材料を作製するために用いることができる。例えば、本実施形態の樹脂組成物は、樹脂組成物の成形体を作製するために用いられる。樹脂組成物を成形する方法としては、特に限定されないが、トランスファー成形、射出成形、ポッティング成形(液注成形)が挙げられる。トランスファー成形法により成形体を得るための成形の一態様としては、任意の大きさのタブレット状に予備成形した前記硬化性樹脂組成物を、あらかじめ加熱したトランスファー成形機へと投入し、取り付けた任意の形状および材質の型へプランジャーによる加圧によって移送する方法が挙げられる。
【0063】
または、本実施形態の樹脂組成物は、プリプレグを作製するために用いることができる。プリプレグは、例えば、繊維基材を、本実施形態の樹脂組成物(ワニス状)に浸漬することにより作製される。プリプレグに用いられる繊維基材としては、ガラス織布、ガラス不織布等のガラス繊維基材、ポリアミド樹脂繊維、芳香族ポリアミド樹脂繊維、全芳香族ポリアミド樹脂繊維等のポリアミド系樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、芳香族ポリエステル樹脂繊維、全芳香族ポリエステル樹脂繊維等のポリエステル系樹脂繊維、ポリイミド樹脂繊維、フッ素樹脂繊維等を主成分とする織布または不織布で構成される合成繊維基材、クラフト紙、コットンリンター紙、リンターとクラフトパルプの混抄紙等を主成分とする紙基材等の有機繊維基材等が挙げられる。
【0064】
一実施形態において、プリプレグは、上述の樹脂組成物が含浸された上記繊維基材からなる繊維基材層と、上述の樹脂組成物からなる樹脂層とが積層された構造を有してもよい。樹脂層の厚みは、1μm以上50μm以下であり、好ましくは10μm以上40μm以下である。樹脂層の厚みを上記下限値以上とすることにより、樹脂層の透過率を低くすることができる。また、樹脂層の厚みが上記上限値を超えると、樹脂層の吸水率が上昇する。そのため、樹脂層の厚みを上記上限値以下とすることで、吸湿耐熱性の悪化を回避することができる。
【0065】
一実施形態において、上述の樹脂組成物は、金属張積層板を作製するために用いられる。本実施形態において、金属張積層板は、上述のプリプレグの硬化物の少なくとも一面に金属箔を積層して、金属張積層板を作製することができる。金属張積層板は、例えば、上述のプリプレグまたはプリプレグを2枚以上重ねた積層体の外側の上下両面または片面に金属箔を重ね、ラミネーター装置やベクレル装置を用いて高真空条件下でこれらを接合するか、あるいはそのままプリプレグの外側の上下両面または片面に金属箔を重ね、次いで、プリプレグと金属箔とを重ねた積層体を加熱加圧成形することにより作製することができる。
【0066】
上記金属箔を構成する金属としては、例えば、銅、銅系合金、アルミ、アルミ系合金、銀、銀系合金、金、金系合金、亜鉛、亜鉛系合金、ニッケル、ニッケル系合金、錫、錫系合金、鉄、鉄系合金、コバール(商標名)、42アロイ、インバー、スーパーインバー等のFe-Ni系の合金、W、Mo等が挙げられる。これらの中でも、導電性に優れ、エッチングによる回路形成が容易であり、また安価であることから銅または銅合金が好ましい。
【0067】
一実施形態において、上述のプリプレグまたは金属張積層板を用いて、プリント配線板が作製される。本実施形態のプリント配線板は、上述のプリプレグの成形体と、成形体の両面または片面に設けられた配線パターンとを備える。本実施形態のプリント配線板におけるその他の構成は特に限定されず、従来公知の種々の部品を備えていてもよく、種々の加工が施されていてもよい。本実施形態のプリント配線板は、LSI、抵抗素子、キャパシタ、インダクタ等の半導体素子(電子部品)を固定し、該半導体素子(電子部品)間を配線で接続するための部品として用いることができる。本発明のプリント配線板は、上述のプリプレグの成形体または上述の金属張積層板の片面又は両面に、サブトラクティブ法、アディティブ法、セミアディティブ法等の公知の方法を用いて配線パターンを形成することにより製造することができる。
【0068】
一実施形態において、上述のプリント配線板と、当該プリント配線板に搭載された半導体素子とを備える半導体装置が提供される。半導体素子の具体例としては、LSI、抵抗素子、キャパシタ、インダクタ等が挙げられる。本発明の半導体装置におけるその他の構成は特に限定されず、半導体素子のほかに従来公知の半導体装置部材を備えていてもよい。そのような半導体装置部材の一例としては、例えば、引き出し配線、ワイヤー配線、制御素子、ヒートシンク、導電部材、ダイボンド材、ボンディングパッド等が挙げられる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例
【0070】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の記載に限定されるものではない。
【0071】
(実施例1~5、比較例1、および参考例1)
(熱硬化性樹脂組成物の調製)
実施例および比較例について、ワニス状の熱硬化性樹脂組成物を調製した。
まず、表1に記載した配合量の黒色顔料を、高速撹拌装置を用いて、メチルイソブチルケトンと、シクロヘキサノンとの混合溶剤(メチルイソブチルケトン:シクロヘキサノン=26:9)に溶解させ、次いで、30分間超音波分散させることでスラリーとした。次いで、表1に記載した配合量の黒色顔料以外の成分を、高速撹拌装置を用いて、スラリーに溶解、分散させ、実施例、比較例の樹脂ワニスを調製した。
【0072】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂1:ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、NC-3000H、エポキシ当量275、重量平均分子量2000)
熱硬化性樹脂2:変性ビフェノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製、YX6900BH45)
熱硬化性樹脂3:下記式(3)において、nが0以上3以下、Xが「-CH-」で表される基、aが0、bが0であるマレイミド化合物(BMI-2300、大和化成工業社製、Mw=750)
【化6】
【0073】
(硬化剤)
フェノール系硬化剤1:シアネート樹脂(LONZA社製、Primaset PT-30)
フェノール系硬化剤2:フェノール樹脂系硬化剤(日本化薬社製、GPH-103)
フェノール系硬化剤3:フェノール樹脂系硬化剤(大和化成工業社製、DABPA)
(無機充填材)
無機充填材1:シリカ粒子(アドマテックス社製、SC4050-KNR)
無機充填材2:シリカ粒子(アドマテックス社製、YA050C-HHA)
(着色剤)
黒色染料1:アントラキノン系化合物(日本化薬社製、Kayaset Black A-N)
黒色顔料2:黒色酸化チタン(赤穂化成社製、Tilack D)
黒色顔料3:カーボンブラック(三菱化学社製、MA600)
(硬化促進剤)
硬化促進剤1:テトラフェニルホスホニウムのビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケート付加物(住友ベークライト社製)
(カップリング剤)
カップリング剤1:エポキシシラン型カップリング剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、A-187)
(レベリング剤)
レベリング剤1:レベリング剤(ビックケミー社製)
【0074】
(プリプレグ)
実施例および比較例において、得られた樹脂ワニスをガラスクロス(クロスタイプ#1078、Eガラス、坪量48g/m)に塗布することにより、当該樹脂ワニスをガラスクロスに含浸させた。その後、180℃の加熱炉で2分間乾燥させて、厚み70μmのプリプレグを得た。
【0075】
実施例および比較例において、次のような評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0076】
(調合後24時間後における分散性)
得られた樹脂ワニスを24時間静置後、分散具合を目視で確認した。樹脂固形分が均一に分散しているものを「○」、樹脂固形分の沈降が見られるものを「×」として表1に示す。
【0077】
(プリプレグの硬化物)
得られたプリプレグを220℃で2時間熱処理し、熱硬化性樹脂組成物のプリプレグ硬化物(厚み60μm)を得た。
【0078】
(透過率)
各実施例及び比較例のプリプレグの硬化物について透過率を評価した。以下に詳細を説明する。
紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製、V-670)を用いて、当該測定サンプルの透過率を測定した。なお、測定波長は400nm~1100nmとした。評価結果を下記表1に示す。なお、最大透過率の単位は%である。
【0079】
(ガラス転移温度、30℃での貯蔵弾性率)
得られたプリプレグ硬化物から8mm×40mmのテストピースを切り出し、そのテストピースに対し、動的粘弾性測定(DMA装置、TAインスツルメント社製、Q800)を用いて、昇温速度5℃/min、周波数1Hzで動的粘弾性測定を行い、30℃での貯蔵弾性率を算出した。また、ガラス転移温度は、損失正接tanδが最大値を示す温度とした。
【0080】
(線膨張係数(CTE))
得られたプリプレグ硬化物から4mm×20mmの試験片を作製した。この試験片について、熱機械分析装置TMA(TAインスツルメント社製、Q400)を用いて、温度範囲30~300℃、昇温速度10℃/min、荷重10g、引張モードの条件で熱機械分析(TMA)を2サイクル測定した。この結果から、2サイクル目の30℃から250℃の範囲における平面方向(XY方向)の線膨張係数(CTE)の平均値を算出した。なお、線膨脹係数は、2サイクル目の値を採用した。
【0081】
(体積抵抗率の測定)
体積抵抗率はJIS K 6911に準拠して行った。試験片は実施例および比較例から得られたプリプレグ硬化物から10cm×10cmになるように切り出したものを用いた。結果を表1に示す。
【表1】
【0082】
表1に示すように、各実施例の樹脂ワニスは分散性が優れていた。また、各実施例のプリプレグ硬化物は、400nm~1100nmの波長の光に対する透過率が、10%以下であるとともに、高体積抵抗率、高ガラス転移温度、低線膨張性、高剛性といった優れた物理特性を備えていた。これにより、各実施例のプリプレグ硬化物を絶縁層として備えるプリント配線板に光学素子を搭載して半導体装置を作製した場合、光学素子の誤作動が抑制された信頼性の高い半導体装置を実現できると考えられる。