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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】床構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/18 20060101AFI20240123BHJP
   E04F 15/20 20060101ALI20240123BHJP
   E04B 1/82 20060101ALI20240123BHJP
   E04B 5/43 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
E04F15/18 601K
E04F15/18 602M
E04F15/20
E04B1/82 F
E04B5/43 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022185594
(22)【出願日】2022-11-21
(62)【分割の表示】P 2018228168の分割
【原出願日】2018-12-05
(65)【公開番号】P2023010844
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】高山 峻
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-236958(JP,A)
【文献】特開2000-008526(JP,A)
【文献】特開2012-001993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00-15/22
E04B 1/62- 1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造床と、
前記構造床上に、互いに所定寸法の間隔を隔てた複数の木製の下支持材により支持されている中間板材と、
前記中間板材上に、互いに前記所定寸法の間隔を隔てた複数の木製の上支持材により支持されている上方材と、
を有し、
前記上支持材は、互いに隣り合う前記下支持材の中間位置に配置されており、
前記構造床と前記中間板材との間、及び、前記中間板材と前記上方材との間には、前記中間板材及び前記上方材の外周縁に、前記構造床と前記中間板材との間、及び、前記中間板材と前記上方材との間を埋める間詰材としての制振ゴムが設けられている
ことを特徴とする床構造。
【請求項2】
請求項1に記載の床構造であって、
前記間詰材は、奥行き方向における中央においても左右方向に亘って設けられており、
前記床構造は、前記間詰材により前記奥行き方向における中央で、手前側と奥行き側とに分けられた領域毎に構成されている
ことを特徴とする床構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の床構造であって、
前記上方材に働く長期荷重を、前記中間板材の弾性変形範囲の耐力により支持し、前記上方材に働く衝撃荷重を、前記中間板材の弾性変形に伴い減衰させる減衰手段を備えていることを特徴とする床構造。
【請求項4】
請求項3に記載の床構造であって、
前記減衰手段は、互いに隣り合う前記下支持材の前記中間位置と、互いに隣り合う前記上支持材の前記中間位置と、のうちの少なくともいずれか一方に設けられていることを特徴とする床構造。
【請求項5】
請求項4に記載の床構造であって、
前記下支持材の前記中間位置に設けられている前記減衰手段は、前記中間板材に固定された突起材と、前記構造床上に敷設され、前記突起材が半埋設される粉体と、を有していることを特徴とする床構造。
【請求項6】
請求項4に記載の床構造であって、
前記上支持材の前記中間位置に設けられている前記減衰手段は、前記上方材に固定された突起材と、前記中間板材上に敷設され、前記突起材が半埋設される粉体と、を有していることを特徴とする床構造。
【請求項7】
請求項4に記載の床構造であって、
前記減衰手段は、制振部材であることを特徴とする床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、梁間を繋ぐように配置された小梁と梁とを覆うように二重床下側板が梁に固定され、二重床下側板の上に支持スペーサを介して二重床上側板が配置されており、二重床下側板と二重床上側板との間の空間には吸音材が設けられ、二重床上側板の上に2枚の遮音マットと床下地板とが設けられている床構造は、知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-10346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の床構造に用いられている遮音マットは、アスファルト系素材のため重量が大きく、遮音マットを用いて重量を増すことにより、重量衝撃源による音を響きにくくしている。このため、構造上の耐力は満たすものの遮音性を高めるためだけに重量が嵩む、また、遮音マットのみならず高価な吸音材も用いるため部材が増えるとともに施工工程も増えるためコストが嵩むという課題がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、コストを抑えつつも遮音性に優れた床構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために本発明の床構造は、
構造床と、
前記構造床上に、互いに所定寸法の間隔を隔てた複数の木製の下支持材により支持されている中間板材と、
前記中間板材上に、互いに前記所定寸法の間隔を隔てた複数の木製の上支持材により支持されている上方材と、
を有し、
前記上支持材は、互いに隣り合う前記下支持材の中間位置に配置されており、
前記構造床と前記中間板材との間、及び、前記中間板材と前記上方材との間には、前記中間板材及び前記上方材の外周縁に、前記構造床と前記中間板材との間、及び、前記中間板材と前記上方材との間を埋める間詰材としての制振ゴムが設けられている
ことを特徴とする床構造である。
【0006】
このような床構造によれば、構造床上にて所定寸法の間隔を隔てた複数の下支持材により支持されている中間板材上には、上方材を支持している上支持材が、互いに隣り合う下支持材の中間位置に配置されているので、上方材に衝撃荷重が作用すると、中間板材は下支持材間において上支持材により押圧され、下方に撓むように弾性変形する。このため、上方材に作用した衝撃荷重は構造床に直接伝達されないので、下階に対する音の伝搬を軽減することが可能である。また、本床構造は、構造床上に、複数の下支持材により中間板材を支持し、中間板材上に複数の上支持材により上方材を支持しているだけなので、部材点数及び施工工程を少なく抑えてコストを抑えることが可能である。このため、コストを抑えつつも遮音性に優れた床構造を提供することが可能である。
【0007】
かかる床構造であって、
前記上方材に働く長期荷重を、前記中間板材の弾性変形範囲の耐力により支持し、前記
上方材に働く衝撃荷重を、前記中間板材の弾性変形に伴い減衰させる減衰手段を備えていることを特徴とする。
【0008】
このような床構造によれば、上方材に働く長期荷重を中間板材の弾性変形範囲の耐力により支持し、上方材に働く衝撃荷重を、中間板材の弾性変形に伴い減衰させる減衰手段を備えているので、減衰手段により、上方材上に載置される、例えば家具などによる長期荷重を支持しつつも、歩行振動荷重のような衝撃荷重による振動を減衰させることが可能である。
【0009】
かかる床構造であって、
前記減衰手段は、互いに隣り合う前記下支持材の前記中間位置と、互いに隣り合う前記上支持材の前記中間位置と、のうちの少なくともいずれか一方に設けられていることを特徴とする。
【0010】
このような床構造によれば、互いに隣り合う下支持材の中間位置、及び、互いに隣り合う上支持材の中間位置は、上方材に衝撃荷重が作用したときに、中間板材が最も大きく変位する位置なので、減衰手段により効率良く振動を減衰させることが可能である。このため、下支持材の中間位置、及び、上支持材の中間位置のうちの少なくともいずれか一方に減衰手段が設けられていれば、振動を減衰させることが可能である。
【0011】
かかる床構造であって、
前記下支持材の前記中間位置に設けられている前記減衰手段は、前記中間板材に固定された突起材と、前記構造床上に敷設され、前記突起材が半埋設される粉体と、を有していることを特徴とする。
【0012】
このような床構造によれば、上方材に衝撃荷重が作用したときに、隣り合う下支持材の中間位置に設けられた突起材は、中間板材の撓みによる変位に伴って粉体に半埋設されるので、突起材と粉体との摩擦により振動を減衰させることが可能である。
【0013】
かかる床構造であって、
前記上支持材の前記中間位置に設けられている前記減衰手段は、前記上方材に固定された突起材と、前記中間板材上に敷設され、前記突起材が半埋設される粉体と、を有していることを特徴とする。
【0014】
このような床構造によれば、上方材に衝撃荷重が作用したときに、中間板材の撓みに降下した上方材の隣り合う上支持材の中間位置に設けられた突起材は、上方材の降下に伴って粉体に半埋設されるので、突起材と粉体との摩擦により振動を減衰させることが可能である。
【0015】
かかる床構造であって、
前記減衰手段は、制振部材であることを特徴とする。
このような床構造によれば、隣り合う下支持材の中間位置に制振部材を設けるだけで、振動を減衰させることが可能である。
【0016】
かかる床構造であって、
前記中間板材の固有振動は30Hz以下に設定されていることを特徴とする。
このような床構造によれば、中間板材の固有振動数は30Hz以下なので、共振する周波数を可聴域から外すことが可能である。このため、より高い遮音性を備えることが可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コストを抑えつつも遮音性に優れた床構造を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る床構造を示す平面図である。
図2】本実施形態に係る床構造を示す縦断面図である。
図3】本実施形態に係る床構造の作用効果を説明する縦断面図である。
図4】減衰手段の変形例を示す縦断面図である。
図5】下支持材及び上支持材の変形例を示す平面図である。
図6】耐火性能を備えた床構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の床構造を、図を用いて説明する。
本実施形態では、図1に示すように、四隅に設けられた柱1の内側に形成される床2を例に挙げて説明する。4本の柱1は、奥行き方向に隣り合う2本の柱1間の間隔が、左右方向に隣り合う2本の柱1の間隔より長くなる位置に配置されている。
4本の柱1には、互いに隣り合う柱1間に梁3が掛け渡されており、梁3の上に構造床としての木造床4が全面に亘って設けられている。
【0020】
本実施形態の床構造は、図2に示すように、木造床4と、木造床4の上に下支持材5に支持された合板でなる中間板材6と、中間板材6の上に上支持材7に支持された合板でなる上方材8と、上方材8の上に設けられた床仕上げ材10と、を有している。すなわち、木造床4と中間板材6との間、及び、中間板材6と上方材8との間は、下支持材5または上支持材7により上下方向に間隔が隔てられている。
【0021】
木造床4と中間板材6との間、及び、中間板材6と上方材8との間には、中間板材6及び上方材8の外周縁と奥行き方向における中央にて左右方向に亘って、木造床4と中間板材6との間、及び、中間板材6と上方材8との間を埋める間詰材11が設けられている。本実施形態の床構造は、間詰材11により奥行き方向における中央で、手前側と奥行き側とに分けられた領域毎に構成されている。間詰材11としては、例えば、制振ゴムが用いられる。
【0022】
間詰材11により囲まれた領域内において、木造床4の上には、棒状をなす木製の角材でなる3本の下支持材5が奥行き方向に沿って配置されている。3本の下支持材5は、左右方向に互いに所定寸法の間隔を隔てて平行に並べて配置されている。3本の下支持材5上には中間板材6が取り付けられている。
【0023】
中間板材6の上には、棒状をなす木製の角材でなる4本の上支持材7が奥行き方向に沿って配置されている。すなわち、中間板材6の下に設けられている下支持材5と同一方向に向けられて上支持材7が設けられている。4本の上支持材7は、左右方向に互いに所定寸法の間隔を隔てて平行に並べて配置されている。このとき、下支持材5の左右方向における間隔の所定寸法と、上支持材7の左右方向における間隔の所定寸法とは一致しており、上支持材7は、左右方向において、互いに隣り合う下支持材5間のほぼ中央となる中間位置に配置されている。4本の上支持材7上には上方材8が取り付けられている。また、このとき合板でなる中間板材6は、繊維方向が左右方向に沿うように配置されている。
【0024】
また、下支持材5により支持された中間板材6と木造床4との間、上支持材7により支持された上方材8と中間板材6との間には、それぞれ珪砂などの粉体12、13が設けられている。粉体12、13は、間詰材11により囲まれた全領域内に設けられており、木
造床4上に設けられた粉体12は中間板材6との間に空間S1を備え、中間板材6上に設けられた粉体13は上方材8との間に空間S2を備えるとともに、所定の深さを有するように設けられている。
【0025】
中間板材6の下面6aには、上面6bに上支持材7が設けられている位置に、突起材14が設けられている。突起材14の下方への突出量は、下支持材5の高さより小さく、下端部には、先端に向かって左右方向の幅が狭くなる傾斜部14aが設けられている。
【0026】
上方材8の下面に8aは、下支持材5が設けられている位置の真上に位置させて突起材15が設けられている。突起材15の下方への突出量は、上支持材7の高さより小さく、下端部には、先端に向かって左右方向の幅が狭くなる傾斜部15aが設けられている。
【0027】
本実施形態の床2は、中間板材6の下に設けられている下支持材5と、中間板材6の上に設けられている上支持材7とを左右方向にずらして配置しているため中間板材6が弾性変形し板ばねとして機能する。具体的には、床2上に家具などが載置される場合のような長期的に加わる鉛直荷重は、中間板材6の弾性変形範囲の耐力により支持し、歩行振動などの衝撃荷重が加わると中間板材6が弾性変形するように構成されている。
【0028】
中間板材6が弾性変形することにより、図3に示すように、下支持材5に支持されている部位間の中間板材6が下方に撓むことにより、下方に最も大きく撓む中間位置にて上支持材7に支持されている上方材8が降下する。このとき、中間板材6に設けられている突起材14は、木造床4上の粉体12に貫入(半埋設)され、上方材8に設けられている突起材15は中間板材6上の粉体13に貫入(半埋設)され、また、中間板材6上の粉体13が中間板材6の振動により揺動される。
【0029】
このとき、突起材14、15の粉体12、13への貫入時には、摩擦による抵抗が生じるため、中間板材6の変形による床2の柔らかさ感が改善される。突起材14、15の下端部は、先端に向かって左右方向の幅が狭くなる傾斜部14a、15aが設けられているので、突起材14、15が粉体12、13から抜け出るときには、粉体12、13が中央の窪みに崩れ落ち、元の状態に戻りやすい。ここで、突起材14、15の下端部は、傾斜部14a、15aに限らず、例えば下方に突出する半球面であっても構わない。
【0030】
また、粉体12、13の揺動は、それ自身が減衰効果を発揮するとともに、粉体12、13間の隙間による吸音効果も期待できる。さらに、音波による粉体12、13の振動でも音の減衰効果を発揮する。
【0031】
このような減衰効果を奏するべく、突起材14、15の下方への突出量は、下支持材5に支持された中間板材6に撓みが生じたとき、突起材14、15の下端が木造床4または中間板材6に接触しない突出量であり、また、粉体12、13の深さは、中間板材6に撓みが生じたとき、中間板材6及び上方材8が粉体12、13に接触しない深さに設定されている。本実施形態においては、中間板材6の弾性変形に伴って相対変位する粉体12、13と突起材14、15とが減衰手段16に相当する。
【0032】
本実施形態の床構造によれば、木造床4上にて所定寸法の間隔を隔てた複数の下支持材5により支持されている中間板材6上には、上方材8を支持している上支持材7が、下支持材5の中間位置に配置されているので、上方材8に衝撃荷重が作用すると、中間板材6は下支持材5間において上支持材7により押圧され、下方に撓むように弾性変形する。このため、上方材8に作用した衝撃荷重は木造床4に直接伝達されないので、下階に対する音の伝搬を軽減することが可能である。
【0033】
また、木造床4と中間板材6との間には、中間板材6に固定された突起材14と、木造床4上に敷設されて突起材14が半埋設される粉体12とを有する減衰手段16が設けられているので、上方材8に衝撃荷重が作用したときに、隣り合う下支持材5の中間位置に設けられた突起材14が、中間板材6の撓みによる変位に伴って粉体12に半埋設される。また、中間板材6と上方材8との間には、上方材8に固定された突起材15と、中間板材6上に敷設されて突起材15が半埋設される粉体13とを有する減衰手段16が設けられているので、上方材8に衝撃荷重が作用したときに、中間板材6の撓みにより降下した上方材8の、隣り合う上支持材7の中間位置に設けられた突起材15は、上方材8の降下に伴って粉体13に半埋設される。このため、木造床4と中間板材6との間、及び、中間板材6と上方材8との間のいずれにおいても、突起材14、15と粉体12、13との摩擦により振動を減衰させることが可能である。
【0034】
また、減衰手段16は、上方材8に働く長期荷重を、中間板材6の弾性変形範囲の耐力により支持し、上方材8に働く衝撃荷重を、中間板材6の弾性変形を減衰させて制振するので、上方材8上に載置される、例えば家具などによる長期荷重を支持しつつも、歩行振動荷重のような衝撃荷重による振動を減衰させることが可能である。
【0035】
上記実施形態においては、減衰手段16として、互いに隣り合う下支持材5及び上支持材7の中間位置に設けられた突起材14、15と、木造床4及び中間板材6に敷設された粉体12、13により構成している例について説明したが、これに限るものではない。例えば、図4に示すように、減衰手段16として、互いに隣り合う下支持材5及び上支持材7の中間位置に木造床4と中間板材6、または、中間板材6と上方材8とを繋ぐ、例えば、粘性体や粘弾性体などの制振部材17が設けられていても構わない。
【0036】
上記実施形態においては、減衰手段16が、木造床4と中間板材6との間、及び、中間板材6と上方材8との間のいずれにも設けられている例について説明したが、これに限らず、いずれか一方のみに設けられていても構わない。また、減衰手段は、必ずしも設けられていなくとも構わない。
【0037】
この場合には、木造床4上にて所定寸法の間隔を隔てた複数の下支持材5により支持されている中間板材6上には、上方材8を支持している上支持材7が、下支持材5の中間位置に配置されているので、上方材8に衝撃荷重が作用すると、中間板材6は下支持材5間において上支持材7により押圧され、下方に撓むように弾性変形する。このため、上方材8に作用した衝撃荷重は木造床4に直接伝達されないので、下階に対する音の伝搬を軽減することが可能である。また、本床構造は、木造床4上に、複数の下支持材5により中間板材6を支持し、中間板材6上に複数の上支持材7により上方材8を支持しているだけなので、部材点数及び施工工程を少なく抑えてコストを抑えることが可能である。このため、コストを抑えつつも遮音性に優れた床構造を提供することが可能である。
【0038】
上記実施形態のように減衰手段16が設けられていない場合には、中間板材6の固有振動は63Hz以下に設定されていることが望ましい。人間の可聴域は、約20Hz~15000Hzであり、重量衝撃源による音としては、約30Hz~200Hzである。このため、中間板材6の固有振動を30Hz以下に設定することにより中間板材6の共振を抑えて、衝撃荷重による振動を減衰させることが可能である。
【0039】
また、振動を減衰させるために中間板材6の固有振動を衝撃荷重の振動の共振領域から外すことが有効である。例えば、板ばね(両端固定梁)システムの固有振動数は、式(1)により求められる。
ここで、 f:1次固有振動数
L:根太スパン
E:板ばねのヤング係数
I:板ばねの断面2次モーメント
W:支持重量+自重
【0040】
式(1)より、板ばねは、ばねの1次固有振動数の√2倍以上の振動数に対して応答低
減効果が確認される。このため、30Hzの1次固有振動に対しては、中間板材6の固有振動数を30/√2=21(Hz)以下に設定すれば、板ばねとして機能する中間板材6単体で低減効果を得ることが可能である。
【0041】
上記実施形態においては、木造床4上に設けられている複数の下支持材5、及び、中間板材6上に設けられている上支持材7が、いずれも棒状をなす木製の角材でなり奥行き方向に沿って配置されている例について説明したが、これに限るものではない。たとえば、図5に示すように、キューブ状をなす木製の下支持材5a、及び、上支持材7aが、奥行き方向及び左右方向に各々所定寸法の間隔を隔てて配置されており、奥行き方向または左右方向において互いに隣り合う下支持材5aの中間位置に、上支持材7aが配置されていても構わない。
【0042】
また、上記床構造に耐火性能が要求される場合には、図6に示すように、上方材8の上及び木造床4と梁3の下に耐火ボードなどの耐火被覆材9を設け、不燃性または難燃性の部材でなる下支持材5及び上支持材7を用いることが望ましい。このとき、上方材に代えて耐火ボードを用いても構わない。
【0043】
また、上記実施形態においては、木製の中間板材6を用いた例について説明したが、これに限るものではない。例えば、木製の中間板材6に代えて、超高強度モルタルに超高強度鋼繊維を混入した高強度繊維補強コンクリート材料、例えば、株式会社大林組製の商品名「スリムクリート」(登録商標)を用いても構わない。高強度繊維補強コンクリート材料はプレキャストコンクリート材料なので、中間板材と下支持材及び上板材を一体に形成することが可能であり、施工性に優れている。
【0044】
以上、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0045】
2 床、4 木造床(構造床)、5 下支持材、5a 下支持材、6 中間板材、7 上支持材、
7a 上支持材、8 上方材、12 粉体、13 粉体、14 突起材、15 突起材、16 減衰手段、17 制振ゴム(減衰材)、
図1
図2
図3
図4
図5
図6