(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】研削品質推定モデル生成装置、研削品質推定装置、および、研削盤の動作指令データ更新装置
(51)【国際特許分類】
B24B 49/10 20060101AFI20240123BHJP
B24B 49/04 20060101ALI20240123BHJP
B24B 5/04 20060101ALI20240123BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
B24B49/10
B24B49/04 A
B24B5/04
G05B23/02 T
(21)【出願番号】P 2022206749
(22)【出願日】2022-12-23
(62)【分割の表示】P 2019018312の分割
【原出願日】2019-02-04
【審査請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2018139210
(32)【優先日】2018-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 祐生
(72)【発明者】
【氏名】河原 徹
(72)【発明者】
【氏名】村上 慎二
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-129145(JP,A)
【文献】特開2015-199152(JP,A)
【文献】特開平07-195183(JP,A)
【文献】特開平08-032281(JP,A)
【文献】特開2017-045300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 49/10
B24B 49/04
B24B 5/04
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗研、精研、微研、スパークアウトの順番の研削工程で砥石車による工作物の研削が行われる研削盤にて
前記砥石車により研削した
前記工作物の外径を測定する定寸装置と、
前記定寸装置に設けられ、前記工作物の外径測定時に前記定寸装置に発生する振動、および、前記砥石車による前記工作物の研削部位において発生する音の少なくとも一方を工作物情報として検出可能な検出器と、
前記検出器により出力された前記工作物情報に関する波形データをフーリエ変換することにより、第一次データを生成する第一次データ生成部を有し、前記第一次データを用いて前記研削部位に関する実測データを生成する実測データ生成部と、
前記実測データを、前記工作物毎に
かつ前記研削工程毎に取得する実測データ取得部と、
複数の前記工作物に関する前記実測データを第一学習用入力データとする機械学習により、前記工作物の研削品質を推定するための
学習モデルである第一学習モデルを
前記研削工程毎に生成する
学習モデル生成部と、
を備える、研削品質推定モデル生成装置。
【請求項2】
前記定寸装置は、
装置本体と、
前記工作物に接触可能な接触子と、
前記接触子を保持すると共に前記装置本体に対して変位可能に支持されたフィンガと、
を備え、
前記検出器は、回転する前記工作物に前記接触子を接触させた状態で、前記フィンガに発生する前記振動を前記工作物情報として検出する、請求項1に記載の研削品質推定モデル生成装置。
【請求項3】
前記第一次データ生成部は、前記工作物のスパークアウト中において、または、前記工作物の研削後であって前記工作物の回転中において、前記検出器が検出した前記振動に関する波形データをフーリエ変換することにより前記第一次データを生成する、請求項2に記載の研削品質推定モデル生成装置。
【請求項4】
前記定寸装置は、前記装置本体に設けられ、前記フィンガの変位を検出可能な差動トランスを備え、
前記検出器は、前記差動トランスであり、
前記第一次データ生成部は、変位成分と時間成分とを含む波形データをフーリエ変換することにより、前記変位成分と周波数成分とを含む前記第一次データを生成する、請求項2または3に記載の研削品質推定モデル生成装置。
【請求項5】
前記検出器は、前記フィンガに取り付けられ、前記フィンガの前記振動を検出可能な加速度センサであり、
前記第一次データ生成部は、加速度成分と時間成分とを含む波形データをフーリエ変換することにより、前記加速度成分と周波数成分とを含む前記第一次データを生成する、請求項2または3に記載の研削品質推定モデル生成装置。
【請求項6】
前記実測データ生成部は、前記第一次データの前記加速度成分を変位成分に変換した第二次データを生成する第二次データ生成部を備える、請求項5に記載の研削品質推定モデル生成装置。
【請求項7】
前記実測データ生成部は、前記第一次データ
に含まれる前記変位成分のうち特定の周波数帯域以外の前記変位成分を、前記第一次データ
から除去した特定周波数データを生成する特定周波数データ生成部を備える、請求項4に記載の研削品質推定モデル生成装置。
【請求項8】
前記実測データ生成部は、前記第二次データに含まれる前記変位成分のうち特定の周波数帯域以外の前記変位成分を、前記第二次データから除去した特定周波数データを生成する特定周波数データ生成部を備える、請求項6に記載の研削品質推定モデル生成装置。
【請求項9】
前記実測データ生成部は、前記第二次データに基づいて生成された前記特定周波数データを逆フーリエ変換することにより、前記変位成分と前記時間成分とを含む第三次データを生成する第三次データ生成部を備える、請求項
8に記載の研削品質推定モデル生成装置。
【請求項10】
前記検出器は、前記定寸装置に取り付けられ、前記研削部位において発生する前記音を前記工作物情報として検出可能なマイクロフォンである、請求項1に記載の研削品質推定モデル生成装置。
【請求項11】
前記研削品質推定モデル生成装置は、さらに、前記工作物の研削品質データを前記工作物毎に取得する研削品質データ取得部を備え、
前記
学習モデル生成部は、前記研削品質データを教師データとする前記機械学習により、
前記研削工程毎の前記
学習モデルを生成する、請求項1-
10の何れか一項に記載の研削品質推定モデル生成装置。
【請求項12】
粗研、精研、微研、スパークアウトの順番の研削工程で砥石車による工作物の研削が行われる研削盤にて
前記砥石車により
前記工作物の研削を行っている際の実測データであって、前記研削盤の構造部材の状態を表す第一実測データ、および、研削部位に関する第二実測データの少なくとも一つである前記実測データを、前記工作物毎に
かつ前記研削工程毎に取得する実測データ取得部と、
複数の前記工作物に関する前記実測データを第一学習用入力データとする機械学習により、前記工作物の研削品質を推定するための
学習モデルである第二学習モデルを
前記研削工程毎に生成する
学習モデル生成部と、
前記砥石車により研削した前記工作物の外径を測定可能な定寸装置と、
前記定寸装置に設けられ、前記工作物の外径測定時に前記定寸装置に発生する振動、および、前記砥石車による前記工作物の研削部位において発生する音の少なくとも一方を工作物情報として検出可能な検出器と、
前記検出器により検出された前記工作物情報に関する波形データをフーリエ変換することにより、第一次データを生成する第一次データ生成部を有し、前記第一次データを用いて前記工作物の研削品質データを生成する研削品質データ生成部と、
前記研削品質データを前記工作物毎に取得する研削品質データ取得部と、
を備え、
前記
学習モデル生成部は、前記研削品質データを教師データとする前記機械学習により、前記第二学習モデルを生成する、研削品質推定モデル生成装置。
【請求項13】
前記工作物の前記研削品質データは、前記工作物の真円度データ、前記工作物の表面性状データ
、前記工作物のびびり模様データ
、および、前記工作物の加工変質層データの少なくとも一つである、請求項
12に記載の研削品質推定モデル生成装置。
【請求項14】
前記研削品質推定モデル生成装置は、さらに、前記研削盤の制御装置への動作指令データ、および、前記制御装置により制御される駆動装置の実動作データの少なくとも一つである動作関連データを、前記工作物毎に
かつ前記研削工程毎に取得する動作関連データ取得部を備え、
前記
学習モデル生成部は、複数の前記工作物に関する前記実測データおよび前記動作関連データを前記第一学習用入力データとする前記機械学習により、前記
学習モデルを生成する、請求項1-13の何れか一項に記載の研削品質推定モデル生成装置。
【請求項15】
請求項1-14の何れか一項に記載の研削品質推定モデル生成装置と、
推定フェーズにおいて、新たな工作物の研削を行っている際の
前記研削工程毎の前記実測データである推定用入力データと前記
学習モデルとを用いて、前記新たな工作物の前記研削品質を推定する研削品質推定部と、
を備える、研削品質推定装置。
【請求項16】
前記
学習モデル生成部は、前記工作物の前記研削品質として、前記工作物の真円度、前記工作物の表面性状
、前記工作物のびびり模様状態
、および、前記工作物の加工変質層データの少なくとも一つを推定するための前記
学習モデルを生成し、
前記研削品質推定部は、前記新たな工作物の前記研削品質として、前記工作物の真円度、前記工作物の表面性状
、前記工作物のびびり模様状態
、および、前記工作物の加工変質層データの少なくとも一つを推定する、請求項15に記載の研削品質推定装置。
【請求項17】
前記研削品質推定装置は、さらに、前記研削品質推定部により推定された前記工作物の前記研削品質に基づいて前記工作物の良否を判別する判別部を備える、請求項15または16に記載の研削品質推定装置。
【請求項18】
請求項15-17の何れか一項に記載の研削品質推定装置と、
前記研削盤にて
前記砥石車により
前記工作物の研削を行う際において、前記研削盤の制御装置への動作指令データを前記工作物毎に取得する動作指令データ取得部と、
前記工作物の研削品質データを前記工作物毎に取得する研削品質データ取得部と、
前記工作物毎に、前記研削品質データに応じて前記動作指令データに対する報酬を決定する報酬決定部と、
複数の前記工作物に関する前記動作指令データおよび前記報酬を用いた機械学習により、前記報酬を多くするように前記動作指令データを調整するための第三学習モデルを生成する第三学習モデル生成部と、
更新フェーズにおいて、新たな工作物の研削に関する前記動作指令データ、前記新たな工作物ついて前記研削品質推定部により推定された前記研削品質データ、前記報酬、および、前記第三学習モデルを用いて、前記動作指令データの調整を行う動作指令データ調整部と、
を備える、研削盤の動作指令データ
更新装置。
【請求項19】
前記工作物の前記研削品質データは、前記工作物の真円度データ、前記工作物の表面性状データ
、前記工作物のびびり模様データ
、および、前記工作物の加工変質層データの少なくとも一つである、請求項18に記載の研削盤の動作指令データ
更新装置。
【請求項20】
前記報酬決定部は、前記工作物の前記真円度データにおいて、真円度が所定値未満である場合に前記報酬を多くし、前記真円度が所定値以上である場合に前記報酬を少なくする、請求項19に記載の研削盤の動作指令データ
更新装置。
【請求項21】
前記報酬決定部は、前記工作物の前記表面性状データが所定閾値以下の場合に前記報酬を多くし、前記所定閾値より大きい場合に前記報酬を少なくする、請求項19に記載の研削盤の動作指令データ
更新装置。
【請求項22】
前記報酬決定部は、前記工作物の前記びびり模様データにおいて、びびり模様が無しの場合に前記報酬を多くし、びびり模様が有りの場合に前記報酬を少なくする、請求項19に記載の研削盤の動作指令データ
更新装置。
【請求項23】
前記報酬決定部は、前記工作物の前記加工変質層データにおいて、加工変質層が無い場合に前記報酬を多くし、前記加工変質層が有る場合に前記報酬を少なくする、請求項19記載の研削盤の動作指令データ更新装置。
【請求項24】
前記研削盤の動作指令データ調整モデル生成装置は、さらに、前記砥石車の表面状態データを前記工作物毎に取得する表面状態データ取得部を備え、
前記報酬決定部は、前記工作物毎に、前記研削品質データおよび前記表面状態データに応じて前記動作指令データに対する報酬を決定する、請求項18-
23の何れか一項に記載の研削盤の動作指令データ
更新装置。
【請求項25】
前記砥石車の前記表面状態データは、前記工作物の研削品質に影響を及ぼすデータである、請求項
24に記載の研削盤の動作指令データ
更新装置。
【請求項26】
前記砥石車の前記表面状態データは、前記工作物の真円度に対応する第一表面状態データ、前記工作物の表面性状に対応する第二表面状態データ
、前記工作物のびびり模様状態に対応する第三表面状態データ
、および、前記工作物の加工変質層の状態に対応する第四表面状態データの少なくとも一つである、請求項
25に記載の研削盤の動作指令データ
更新装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削品質推定モデル生成装置、研削品質推定装置、および、研削盤の動作指令データ調整モデル更新装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
研削盤にて砥石車による工作物の研削において、工作物の研削品質が所定条件を満たすようにすることが求められる。例えば、工作物に加工変質層が生じないようにすること、工作物の表面性状(例えば表面粗さ)が所定値以内であること、工作物にびびり模様が生じないようにすること、真円度が所定値未満であること等が求められる。
【0003】
作業者が、研削後の工作物の検査を行うことで、研削品質が所定条件を満たすか否かを確認し、所定条件を満たす場合に良品とすることが行われている。また、特許文献1には、研削を行っている際において測定した研削負荷に基づいて、工作物に加工変質層が生じているか否かを判定することが記載されている。
【0004】
ところで、近年コンピュータの処理速度の向上に伴い、人工知能が急速に発展しており、例えば、特許文献2には、機械学習により、レーザ加工条件データを生成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-129028号公報
【文献】特開2017-164801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されているように、研削負荷を用いるだけでは、加工変質層の有無を高精度に判定することができない。加工変質層が生じる要因には、種々の要因が存在するためである。そこで、種々の要因を考慮して、加工変質層の有無等の工作物の研削品質を取得することが求められる。さらに、工作物の研削品質が良好となるような研削条件を得ることが求められる。
【0007】
本発明は、工作物の研削品質を良好に取得できる研削品質推定モデル生成装置、および、研削品質推定装置を提供することを目的とする。また、本発明は、工作物の研削品質を用いて、研削品質を向上させることができる研削盤の動作指令データを取得するために、研削盤の動作指令データ更新装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1.第1の研削品質推定モデル生成装置)
本発明の一態様は、粗研、精研、微研、スパークアウトの順番の研削工程で砥石車による工作物の研削が行われる研削盤にて前記砥石車により研削した前記工作物の外径を測定する定寸装置と、
前記定寸装置に設けられ、前記工作物の外径測定時に前記定寸装置に発生する振動、および、前記砥石車による前記工作物の研削部位において発生する音の少なくとも一方を工作物情報として検出可能な検出器と、
前記検出器により出力された前記工作物情報に関する波形データをフーリエ変換することにより、第一次データを生成する第一次データ生成部を有し、前記第一次データを用いて前記研削部位に関する実測データを生成する実測データ生成部と、
前記実測データを、前記工作物毎にかつ前記研削工程毎に取得する実測データ取得部と、
複数の前記工作物に関する前記実測データを第一学習用入力データとする機械学習により、前記工作物の研削品質を推定するための学習モデルである第一学習モデルを前記研削工程毎に生成する学習モデル生成部と、
を備える、研削品質推定モデル生成装置にある。
【0009】
第一学習モデルは、実測データを第一学習用入力データとする機械学習により生成されている。実測データは、工作物毎にかつ研削工程毎に取得したデータであり、実測データ生成部により生成される。実測データ生成部は、工作物情報に関する波形データをフーリエ変換することにより、第一次データを生成する。工作物情報は、工作物の外径測定時に定寸装置に発生する振動、および、砥石車による工作物の研削部位において発生する音の少なくとも一方であり、定寸装置に設けられた検出器により検出される。この場合、検出器は、工作物に近い位置に配置されるので、工作物の研削品質との相関性が高い工作物情報を検出できる。
【0010】
実測データ生成部は、検出器により出力された工作物情報に基づいて第一次データを生成すると共に、当該第一次データを用いて、実測データを生成する。そして、第一学習モデル生成部は、実測データ生成部により生成された実測データを第一学習用入力データとする機械学習により、工作物の研削品質を推定するための第一学習モデルを研削工程毎に生成する。その結果、当該研削品質推定モデル生成装置は、工作物の研削品質を良好に取得できる。
【0011】
(2.第2の研削品質推定モデル生成装置)
本発明の他の態様は、粗研、精研、微研、スパークアウトの順番の研削工程で砥石車による工作物の研削が行われる研削盤にて前記砥石車により前記工作物の研削を行っている際の実測データであって、前記研削盤の構造部材の状態を表す第一実測データ、および、研削部位に関する第二実測データの少なくとも一つである前記実測データを、前記工作物毎にかつ前記研削工程毎に取得する実測データ取得部と、
複数の前記工作物に関する前記実測データを第一学習用入力データとする機械学習により、前記工作物の研削品質を推定するための学習モデルである第二学習モデルを前記研削工程毎に生成する学習モデル生成部と、
前記砥石車により研削した前記工作物の外径を測定可能な定寸装置と、
前記定寸装置に設けられ、前記工作物の外径測定時に前記定寸装置に発生する振動、および、前記砥石車による前記工作物の研削部位において発生する音の少なくとも一方を工作物情報として検出可能な検出器と、
前記検出器により検出された前記工作物情報に関する波形データをフーリエ変換することにより、第一次データを生成する第一次データ生成部を有し、前記第一次データを用いて前記工作物の研削品質データを生成する研削品質データ生成部と、
前記研削品質データを前記工作物毎に取得する研削品質データ取得部と、
を備え、
前記学習モデル生成部は、前記研削品質データを教師データとする前記機械学習により、前記第二学習モデルを生成する、研削品質推定モデル生成装置にある。
当該研削品質推定モデル生成装置は、工作物の研削品質を良好に取得できる。また、第二学習モデル生成部は、研削品質データを教師データとする機械学習により、第二学習モデルを研削工程毎に生成するので、機外に設けられた外部装置により検出された研削品質データを教師データとする場合と比べて、サイクルタイムの短縮を図ることができる。
【0012】
(3.研削品質推定装置)
本発明の他の態様は、上述した研削品質推定モデル生成装置と、
推定フェーズにおいて、新たな工作物の研削を行っている際の前記研削工程毎の前記実測データである推定用入力データと前記学習モデルとを用いて、前記新たな工作物の前記研削品質を推定する研削品質推定部と、
を備える、研削品質推定装置にある。
当該研削品質推定装置は、機械学習により生成された学習モデルを用いることで、新たな工作物に関する多量の実測データである推定用入力データに基づいて、当該新たな工作物の研削品質を推定することができる。
【0013】
(4.研削盤の動作指令データ更新装置)
本発明の他の態様は、上述した研削品質推定装置と、
前記研削盤にて前記砥石車により前記工作物の研削を行う際において、前記研削盤の制御装置への動作指令データを前記工作物毎に取得する動作指令データ取得部と、
前記工作物の研削品質データを前記工作物毎に取得する研削品質データ取得部と、
前記工作物毎に、前記研削品質データに応じて前記動作指令データに対する報酬を決定する報酬決定部と、
複数の前記工作物に関する前記動作指令データおよび前記報酬を用いた機械学習により、前記報酬を多くするように前記動作指令データを調整するための第三学習モデルを生成する第三学習モデル生成部と、
更新フェーズにおいて、新たな工作物の研削に関する前記動作指令データ、前記新たな工作物ついて前記研削品質推定部により推定された前記研削品質データ、前記報酬、および、前記第三学習モデルを用いて、前記動作指令データの調整を行う動作指令データ調整部と、
を備える、研削盤の動作指令データ更新装置にある。
【0014】
当該更新装置は、機械学習により、研削盤の動作指令データを調整するための第三学習モデルを生成する。そして、機械学習においては、複数の工作物に関する動作指令データおよび報酬を用いている。従って、多量のデータを用いたとしても、機械学習を適用することにより、第三学習モデルを容易に生成することができる。さらに、機械学習においては、工作物の研削品質データを用いて決定された報酬を多くするように、研削盤の動作指令データが調整されている。従って、研削品質が良好となるような動作指令データを生成することができるようになる。
【0015】
さらに、機械学習により生成された第三学習モデルを用いて動作指令データが更新される。そのため、研削状態が変化したとしても、動作指令データが現在の研削状態に応じて更新されていく。このように動作指令データが更新されることによって、工作物の研削品質を良好とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】第一実施形態の機械学習装置の概要構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】第一実施形態の機械学習装置の学習フェーズの詳細構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】定寸装置および実測データ生成装置の構成を示す図である。
【
図5】第一実施形態の機械学習装置の推定フェーズの詳細構成を示す機能ブロック図である。
【
図6】第二実施形態の機械学習装置の概要構成を示す機能ブロック図である。
【
図7】第二実施形態の機械学習装置の学習フェーズの詳細構成を示す機能ブロック図である。
【
図8】外部装置による測定結果を示す波形データおよび第二次データを示すグラフである。
【
図9】第三実施形態の機械学習装置の概要構成を示す機能ブロック図である。
【
図10】第三実施形態の機械学習装置の学習フェーズの詳細構成を示す機能ブロック図である。
【
図11】第三実施形態の機械学習装置の推定フェーズの詳細構成を示す機能ブロック図である。
【
図12】第四実施形態の機械学習装置の概要構成を示す機能ブロック図である。
【
図13】第四実施形態の機械学習装置の学習フェーズの詳細構成を示す機能ブロック図である。
【
図14】第四実施形態の機械学習装置の推定フェーズの詳細構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(1.第一実施形態)
(1-1.研削盤の構成)
研削盤1の構成について、
図1を参照して説明する。研削盤1は、工作物Wを研削するための機械である。研削盤1は、円筒研削盤、カム研削盤等、種々の構成の研削盤を適用できる。本実施形態においては、研削盤1は、砥石台トラバース型の円筒研削盤を例にあげる。ただし、研削盤1は、テーブルトラバース型を適用することもできる。
【0018】
研削盤1は、主として、ベッド11、主軸台12、心押台13、トラバースベース14、砥石台15、砥石車16、定寸装置17、砥石車修正装置18、クーラント装置19、および、制御装置20を備える。
【0019】
ベッド11は、設置面上に固定されている。主軸台12は、ベッド11の上面において、X軸方向の手前側(
図1の下側)且つZ軸方向の一端側(
図1の左側)に設けられている。主軸台12は、工作物WをZ軸回りに回転可能に支持する。工作物Wは、主軸台12に設けられたモータ12aの駆動により回転される。心押台13は、ベッド11の上面において、主軸台12に対してZ軸方向に対向する位置、すなわち、X軸方向の手前側(
図1の下側)且つZ軸方向の他端側(
図1の右側)に設けられている。つまり、主軸台12および心押台13が、工作物Wを回転可能に両端支持する。
【0020】
トラバースベース14は、ベッド11の上面において、Z軸方向に移動可能に設けられている。トラバースベース14は、ベッド11に設けられたモータ14aの駆動により移動する。砥石台15は、トラバースベース14の上面において、X軸方向に移動可能に設けられている。砥石台15は、トラバースベース14に設けられたモータ15aの駆動により移動する。砥石車16は、砥石台15に回転可能に支持されている。砥石車16は、砥石台15に設けられたモータ16aの駆動により回転する。砥石車16は、複数の砥粒をボンド材により固定されて構成されている。
【0021】
定寸装置17は、工作物Wの寸法(径)を測定する。砥石車修正装置18は、砥石車16の形状を修正する。砥石車修正装置18は、砥石車16のツルーイングを行う装置である。砥石車修正装置18は、ツルーイングに加えて、または、ツルーイングに代えて、砥石車16のドレッシングを行う装置としてもよい。さらに、砥石車修正装置18は、砥石車16の寸法(径)を測定する機能も有する。
【0022】
ここで、ツルーイングは、形直し作業であり、研削によって砥石車16が摩耗した場合に工作物Wの形状に合わせて砥石車16を成形する作業、片摩耗によって砥石車16の振れを取り除く作業等である。ドレッシングは、目直し(目立て)作業であり、砥粒の突き出し量を調整したり、砥粒の切れ刃を創成したりする作業である。ドレッシングは、目つぶれ、目詰まり、目こぼれ等を修正する作業であって、通常ツルーイング後に行われる。
【0023】
クーラント装置19は、砥石車16による工作物Wの研削点にクーラントを供給する。クーラント装置19は、回収したクーラントを、所定温度に冷却して、再度研削点に供給する。
【0024】
制御装置20は、工作物Wの形状、加工条件、砥石車16の形状、クーラントの供給タイミング情報等の動作指令データに基づいて生成されたNCプログラムに基づいて、各駆動装置を制御する。すなわち、制御装置20は、動作指令データを入力し、動作指令データに基づいてNCプログラムを生成し、NCプログラムに基づいて各モータ12a,14a,15a,16aおよびクーラント装置19等を制御することにより工作物Wの研削を行う。特に、制御装置20は、定寸装置17により測定される工作物Wの径に基づいて、工作物Wが仕上げ形状となるまで研削を行う。また、制御装置20は、砥石車16を修正するタイミングにおいて、各モータ14a,15a,16a、および、砥石車修正装置18等を制御することにより、砥石車16の修正(ツルーイングおよびドレッシング)を行う。
【0025】
また、
図1には一部を図示しないが、研削盤1は、後述する各種センサ21,22,23(
図3等に示す)を備えている。例えば、研削盤1は、各モータ等の実動作データ、研削盤1を構成する構造部材の状態を示すデータ、定寸装置17、砥石径センサ、温度センサ、加速度センサ、マイクロフォン等を備える。なお、各種センサ等の詳細は、後述する。
【0026】
(1-2.機械学習装置100の概要)
次に、第一実施形態の機械学習装置100の概要について、
図2を参照して説明する。機械学習装置100は、(a)工作物Wの研削品質を推定するための第一学習モデルを生成すると共に、(b)第一学習モデルを用いて工作物Wの研削品質を推定する。機械学習装置100は、研削盤1とは別の装置として構成することもできるし、研削盤1の制御装置20等に組み込まれた装置として構成することもできる。本実施形態においては、機械学習装置100は、研削盤1とネットワーク線により接続されており、各種データの送受信を行う。
【0027】
機械学習装置100は、第一学習モデルを生成する第一学習フェーズ101において機能する要素101a,101b,101c、および、研削品質を推定する推定フェーズ102(一般に「推論フェーズ」とも称する)において機能する要素102a,102bを備える。機械学習装置100は、第一学習フェーズ101において機能する要素として、第一学習用入力データを取得する要素101a、第一教師データを取得する要素101b、および、第一学習モデルの生成を行う要素101cを備える。
【0028】
要素101aにおいて取得される第一学習用入力データは、機械学習に用いられる入力データであって、例えば、動作指令データ、実動作データ、第一実測データ(構造部材の状態を表すデータ)、第二実測データ(研削部位に関するデータ)等である。
【0029】
要素101bにおいて取得される第一教師データは、教師有り学習における機械学習に用いられる教師データである。第一教師データは、工作物Wの研削品質データであって、例えば、工作物Wの加工変質層データ、工作物Wの表面性状データ、工作物Wのびびり模様データ、真円度データ等である。
【0030】
要素101cにおいて生成される第一学習モデルは、第一学習用入力データおよび第一教師データに基づいて、機械学習のうち教師有り学習を行うことによって工作物Wの研削品質を推定するためのモデル(関数)である。ただし、第一学習モデルは、研削品質の分類分けを行うことを目的として、教師無し学習を適用することにより生成することもできる。ただし、教師有り学習を適用する場合には、高精度に研削品質を取得することができる。
【0031】
機械学習装置100は、推定フェーズ102において機能する要素として、推定用入力データを取得する要素102a、並びに、研削品質の推定および工作物Wの良否の判別を行う要素102bを備える。要素102aにおいて取得される推定用入力データは、第一学習用入力データと同種のデータであって、学習に用いた工作物Wとは異なる工作物W(新しい工作物W)に関して取得されるデータである。要素102bは、推定用入力データと第一学習モデルとを用いて研削品質を推定すると共に、推定された研削品質に基づいて工作物Wの良否を判別する。要素102bにて用いる第一学習モデルは、第一学習フェーズ101において機械学習によって生成される第一学習モデルである。
【0032】
(1-3.機械学習装置100に関連する研削盤1の構成)
機械学習装置100に関連する研削盤1の構成について、
図3を参照して説明する。
図3に示すように、研削盤1は、制御装置20を備える。制御装置20は、いわゆるCNC(Computerized Numerical Control)装置である。上述したように、制御装置20は、動作指令データに基づいてNCプログラムを生成し、当該NCプログラムに基づいて、各駆動装置12a,14a,15a,16a,17,18(
図3では「12a等」と記載する)を制御する。
【0033】
各駆動装置12a,14a,15a,16a,17,18が駆動することによって、構造部材12,13,14,15(
図3では「15等」を記載する。)が動作する。構造部材12,13,14,15の動作によって、工作物Wが砥石車16による研削が行われる。
図3では、工作物Wにおいて砥石車16によって研削される部位が研削部位として示される。
【0034】
研削盤1は、さらに、駆動装置12a等の実動作データを検出するセンサ21、構造部材15等の状態(構造部材の状態を表すデータ)を検出するセンサ22、研削によって変化する研削部位に関するデータ(研削部位データ)を検出するセンサ23を備える。センサ21は、例えば、モータ12aの駆動電流を検出する電流センサ、モータ12aの現在位置(回転角度)を検出する位置センサ等である。センサ21は、他の駆動装置14a,15a,16a,17,18についても同様の情報を検出する。センサ22は、構造部材15等の振動を検出する振動センサ、構造部材15等の変形量を検出する歪センサ等である。振動センサは、振動に対応する加速度を検出するセンサ、振動に対応する音波を検出するセンサ等を適用できる。センサ23は、研削によって変化する工作物Wの寸法(径)を検出する定寸装置17、定寸装置17の振動を検出するセンサ、研削時における音(振動に対応する音波)を検出するセンサ、研削時における研削点温度を検出する温度センサ等である。
【0035】
ここで、
図4を参照して、定寸装置17の構成を説明する。
図4に示すように、定寸装置17は、装置本体17aと、一対の接触子17b1,17b2と、一対のフィンガ17c1,17c2と、差動トランス17dとを主に備える。接触子17b1,17b2は、工作物Wの外周面に対して接触可能に設けられる。具体的に、一対の接触子17b1,17b2のうち、一方の接触子17b1は、工作物Wの外周面に対して上方から接触し、他方の接触子17b2は、工作物Wの外周面に対して下方から接触する。フィンガ17c1,17c2は、接触子17b1,17b2を保持すると共に、装置本体17aに対し、接触子17b1,17b2を相対変位可能に支持する。具体的に、一対のフィンガ17c1,17c2のうち、一方のフィンガ17c1は、一方の接触子17b1を支持し、他方のフィンガ17c2は、他方の接触子17b2を支持する。
【0036】
差動トランス17dは、装置本体17aに収容される。差動トランス17dは、一対の接触子17b1,17b2の変位に伴って変位する一対のフィンガ17c1,17c2の変位を検出し、フィンガ17c1,17c2の変位に応じた電気信号を制御装置20に出力する。制御装置20は、差動トランス17dから出力された電気信号に基づいて、一対の接触子17b1,17b2が工作物Wの外周面に接触したときのフィンガ17c1,17c2の位置を把握し、フィンガ17c1,17c2の位置に基づいて、定寸装置17による工作物Wの外径の測定結果を把握する。
【0037】
また、定寸装置17には、センサ23の一部である複数の検出器23aが設けられる。検出器23aは、工作物Wの外径測定時に定寸装置17に発生する振動、または、砥石車16による工作物Wの研削部位において発生する音を、工作物情報として検出する。具体的に、定寸装置17には、検出器23aとして、差動トランス17dと、加速度センサ17eと、マイクロフォン17fとが設けられる。
【0038】
差動トランス17dは、上記したように、フィンガ17c1,17c2の変位を検出可能な変位センサであり、装置本体17aに収容される。そして、検出器23aとしての差動トランス17dは、一方のフィンガ17c1の変位を検出するために用いられる。つまり、回転する工作物Wの外周面に一方の接触子17b1を接触させると、一方の接触子17b1および一方のフィンガ17c1は、工作物Wの外周面の形状に応じて変位する。そのため、差動トランス17dから出力される信号は、研削部位の周方向における形状との相関性が高いデータであると考えられる。そこで、機械学習装置100は、差動トランス17dが出力する信号の挙動を示す波形データを、研削部位の周方向における形状を示すデータとして活用する。
【0039】
加速度センサ17eは、一方のフィンガ17c1の振動に対応する加速度を検出可能な振動センサであり、一方のフィンガ17c1に取り付けられる。具体的に、加速度センサ17eは、装置本体17aよりも一方の接触子17b1に近い位置で、一方のフィンガ17c1に取り付けられる。これにより、研削盤1は、一方の接触子17b1と工作物Wとの接触位置に対し、より近い位置に加速度センサ17eを配置できる。その結果、研削盤1は、加速度センサ17eが出力する信号の挙動を示す波形データと、工作物Wの研削品質との相関性を高めることができる。なお、
図4において、加速度センサ17eは、一方のフィンガ17c1の外側に取り付けられているが、一方のフィンガ17c1の内部に収容されていてもよい。また、加速度センサ17eは、他方のフィンガ17c2に取り付けてもよい。
【0040】
また、加速度センサ17eから出力される波形データは、差動トランス17dから出力される波形データとは周波数特性が異なる。つまり、差動トランス17dは、一方のフィンガ17c1の変位(振動)に関して、加速度センサ17eよりも低い周波数帯域の変位(振動)を検出することができる。これに対し、加速度センサ17eは、一方のフィンガ17c1の変位(振動)に関して、差動トランス17dよりも高い周波数帯域の変位(振動)を検出することができる。また、差動トランス17dにおける周波数特性の範囲と加速度センサ17eにおける周波数特性の範囲とは、一部分において重複する。従って、周波数特性が重複する範囲において、機械学習装置100は、差動トランス17dと加速度センサ17eとの双方から波形データを取得することができる。
【0041】
ここで、検出器23aとしての差動トランス17dおよび加速度センサ17eは、仕上げ研削(微研)後における工作物Wの研削部位データを取得するために用いられる。そして、検出器23aとしての差動トランス17dおよび加速度センサ17eは、工作物Wのスパークアウト中において、または、工作物Wの研削後であって工作物Wの回転中(回転停止前)において、一方のフィンガ17c1の振動を工作物情報として検出する。つまり、研削盤1は、スパークアウトを開始してから工作物の回転を停止するまでの間に、回転する工作物Wに一方の接触子17b1を接触させた状態で、一方のフィンガ17c1の振動を検出する。これにより、研削盤1は、研削部位データを取得するための時間を追加で設ける必要がなくなるので、サイクルタイムの長期化を回避できる。
【0042】
なお、検出器23aによる工作物情報の取得を行うタイミングは、スパークアウト中又は工作物Wの研削後でなくてもよい。つまり、検出器23aによる工作物情報の取得は、荒加工中や仕上加工中に行うことも可能である。
【0043】
マイクロフォン17fは、工作物Wの研削時において研削部位に発生する音を検出可能なセンサであり、一方のフィンガ17c1に取り付けられる。具体的に、マイクロフォン17fは、加速度センサ17eよりも研削部位に近い位置で、一方のフィンガ17c1に取り付けられる。これにより、研削盤1は、研削部位に対し、より近い位置にマイクロフォン17fを配置できる。その結果、研削盤1は、マイクロフォン17fが出力する信号の挙動を示す波形データと、工作物Wの研削品質との相関性を高めることができる。
【0044】
また、マイクロフォン17fから出力される波形データは、差動トランス17dおよび加速度センサ17eから出力される波形データとは周波数特性が異なる。つまり、マイクロフォン17fは、差動トランス17dおよび加速度センサ17eよりも高い周波数帯域の振動を検出することができる。また、加速度センサ17eにおける周波数特性の範囲とマイクロフォン17fにおける周波数特性の範囲とは、一部分において重複する。従って、周波数特性が重複する範囲において、機械学習装置100は、加速度センサ17eとマイクロフォン17fとの双方から波形データを取得することができる。
【0045】
このように、研削盤1は、センサ23としての検出器23aを定寸装置17に設けることにより、検出器23a、工作物に近い位置に配置できる。その結果、検出器23aは、工作物の研削品質との相関性が高い工作物情報を検出できる。即ち、研削盤1は、検出器23aから出力される信号に対し、構造部材15等から発生する振動や音が与える影響を少なくすることができる。そして、機械学習装置100は、検出器23aにより検出された工作物情報を研削部位データとして用いる。よって、検出器23aは、研削部位データとして、工作物Wの研削品質との相関性が高いデータを検出することができる。
【0046】
また、機械学習装置100は、検出器23aとして、周波数特性の異なる複数種類のセンサ23を設けることにより、幅広い周波数帯域の振動情報および音情報を、第二実測データとして取得することができる。さらに、機械学習装置100は、複数種類のセンサ23間において、周波数特性の範囲を一部重複させることにより、周波数特性が重複する範囲において、複数のセンサ23から異なる波形データを、第二実測データとして取得することができる。その結果、機械学習装置100は、第一学習モデルの学習精度を向上させることができる。
【0047】
また、機械学習装置100は、さらに、実測データ生成部30を備える。実測データ生成部30は、検出器23aにより出力された工作物情報に関する波形データに基づき、研削部位に関する実測データを生成する。実測データ生成部30により生成された実測データは、第二実測データとして、要素101a(
図2参照)に取得される。つまり、実測データ生成部30は、検出器23aにより検出された研削部位データを加工し、要素101aは、実測データ生成部30により加工された研削部位データを、第二実測データとして取得する。実測データ生成部30は、第一次データ生成部31と、第二次データ生成部32と、特定周波数データ生成部33と、第三次データ生成部34とを備える。
【0048】
第一次データ生成部31は、検出器23aにより検出された工作物情報に関する波形データをフーリエ変換することにより、第一次データD1を生成する。具体的に、検出器23aから出力された波形データD0は、振幅成分と時間成分とを含むのに対し、第一次データ生成部31は、当該波形データD0を、振幅成分と周波数成分とを含む第一次データD1に変換する。なお、差動トランス17dから出力された波形データD0の振幅成分は、一方のフィンガ17c1の変位を示す変位成分である。また、加速度センサ17eから出力された波形データの振幅成分は、一方のフィンガ17c1の振動に対応する加速度を示す加速度成分である。
【0049】
第二次データ生成部32は、加速度センサ17eにより出力された波形データD0から得られた第一次データD1を加工対象とする。第二次データ生成部32は、当該第一次データD1の振幅成分である加速度成分を変位成分に変換することにより、第二次データD2を生成する。具体的に、第二次データ生成部32は、第一次データD1を二回積分することにより、加速度成分を変位成分に変換する。これにより、第二次データD2は、差動トランス17dにより出力された波形データD0から得られた第一次データD1と同様に、変位成分と周波数成分とを含む波形データとなる。その結果、加速度センサ17eから出力された波形データD0は、研削部位の周方向における形状との相関性が高い第二次データD2に変換される。
【0050】
特定周波数データ生成部33は、差動トランス17dおよび加速度センサ17eにより出力された波形データD0から得られた第一次データD1または第二次データD2を加工対象とする。特定周波数データ生成部33は、当該第一次データD1または第二次データD2から、特定の周波数帯域に含まれる変位成分を抽出した特定周波数データD11,D21を生成する。
【0051】
具体的に、特定周波数データ生成部33は、差動トランス17dにより出力された波形データD0から得られた第一次データD1に含まれる変位成分のうち、特定の周波数帯域以外の変位成分を第一次データD1から除去した特定周波数データD11を生成する。同様に、特定周波数データ生成部33は、第二次データD2に含まれる変位成分のうち、特定の周波数帯域以外の変位成分を第二次データD2から除去した特定周波数データD21を生成する。
【0052】
なお、特定周波数データ生成部33において抽出される特定の周波数帯域は、各々の検出器23aが有する周波数特性により決定される。例えば、特定周波数データ生成部33は、第一次データD1または第二次データD2の波形データにおいて、特徴が振幅の大きさとして現れる周波数帯域の変位成分を抽出する。また、特定周波数データ生成部33は、1つの第一次データD1または第二次データD2から、抽出する周波数帯域が異なる複数の特定周波数データD11,D21を生成することができる。
【0053】
この点に関して、差動トランス17dと加速度センサ17eとでは、周波数特性が異なる。従って、実測データ生成部30は、差動トランス17dおよび加速度センサ17eの各々から得られた波形データから特定周波数データを生成することにより、研削部位データとして有効となり得る特定周波数データを、多く生成することができる。また、差動トランス17dと加速度センサ17eとでは、周波数特性の範囲が一部において重複するので、周波数特性が重複するに範囲おいて、差動トランス17dと加速度センサ17eとの双方から特定周波数データを取得できる。
【0054】
第三次データ生成部34は、特定周波数データD11,D21を逆フーリエ変換することにより、変位成分と時間成分とを含む第三次データD31,D32を生成する。具体的に、第三次データ生成部34は、差動トランス17dにより出力された波形データD0から得られた特定周波数データD11を逆フーリエ変換することにより、第三次データD31を生成する。つまり、当該第三次データD31は、差動トランス17dにより出力された波形データD0から特定の周波数帯域以外の周波数成分を除去した波形データである。
【0055】
また、第三次データ生成部34は、加速度センサ17eにより出力された波形データD0から得られた特定周波数データD21を逆フーリエ変換することにより、第三次データD32を生成する。つまり、当該第三次データD32は、加速度センサ17eにより出力された波形データD0から特定の周波数帯域以外の周波数成分を除去し、加速度成分を変位成分に変換した波形データである。
【0056】
このように、実測データ生成部30は、検出器23aにより出力された波形データD0を加工し、工作物Wの研削品質との相関性が高い波形データ(第一次データD1、第二次データD2、特定周波数データD11,D21および第三次データD31、D32)に変換する。そして、機械学習装置100は、実測データ生成部30により生成された実測データを、第二実測データとする取得し、第一学習モデルを生成することで、第一学習モデルの学習精度を向上させることができる。
【0057】
(1-4.機械学習装置100に関連する外部装置2の構成)
図3に戻り、機械学習装置100に関連する外部装置2の構成を説明する。外部装置2は、研削盤1にて砥石車16によって研削された工作物Wの研削品質データを工作物W毎に検出する。研削品質データには、例えば、加工変質層データ(研削焼け等のデータ)、表面性状データ(表面粗さ等のデータ)、びびり模様データ、真円度データ等が含まれる。
【0058】
すなわち、外部装置2は、加工変質層データ(研削焼け、研削による軟化層等に関するデータ)を取得する加工変質層検出器、表面性状データ(表面粗さ等に関するデータ)を取得する表面性状測定器、びびり模様データを取得するびびり検出器、真円度を測定する真円度測定器等である。なお、外部装置2は、当該データを直接取得する装置としてもよい。また、外部装置2は、相関を有する別データを取得して、当該別データを用いて演算することにより目的のデータを取得する装置、すなわち目的のデータを間接的に取得する装置としてもよい。
【0059】
加工変質層データは、加工変質層の有無に関するデータとしてもよいし、加工変質層の程度に関するスコアとしてもよい。表面性状データは、例えば表面粗さの値そのものとしてもよいし、表面粗さの程度に関するスコアとしてもよい。また、びびり模様データは、びびり模様の有無に関するデータとしてもよいし、びびり模様の程度に関するスコアとしてもよい。真円度データは、例えば真円度の値そのものとしてもよいし、真円度に関するスコアとしてもよい。各スコアは、例えば、複数段階の評点などで表される。
【0060】
(1-5.機械学習装置100の第一学習フェーズ101の詳細構成)
機械学習装置100の第一学習フェーズ101の詳細構成について
図3を参照して説明する。ここで、第一学習フェーズ101の構成が、研削品質推定モデル生成装置に相当する。
【0061】
第一学習フェーズ101の構成は、第一入力データを取得する第一入力データ取得部130と、研削品質データを取得する研削品質データ取得部140と、第一学習モデル生成部150と、第一学習モデル記憶部160とを備えて構成される。
【0062】
第一入力データ取得部130は、複数の工作物Wに関する第一入力データを、機械学習の第一学習用入力データとして取得する。また、研削品質データ取得部140は、当該複数の工作物Wに関する研削品質データを、機械学習の第一教師データとして取得する。ここで、第一学習用入力データおよび第一教師データは、表1に示すとおりである。表1に示すように、第一学習用入力データは、多数のデータとしているが、表1に示す全てのデータを用いる必要はなく、一部のデータのみを用いるようにしてもよい。
【0063】
【0064】
第一入力データ取得部130は、動作関連データ取得部110と、実測データ取得部120とを備える。動作関連データ取得部110は、制御装置20への動作指令データを取得する動作指令データ取得部111、制御装置20により制御される駆動装置12a等の実動作データをセンサ21から取得する実動作データ取得部112を備える。
【0065】
動作関連データのうちの動作指令データは、表1に示すように、工程毎の指令切込速度、工程切替時の移動体14,15の指令位置、砥石車16の指令回転速度、工作物Wの指令回転速度、クーラントの供給情報等である。ここで、工作物Wの研削は、例えば、粗研、精研、微研、スパークアウト等の複数の研削工程によって行われる。動作関連データのうちの実動作データは、表1に示すように、モータ12a等の駆動電流、モータ12a等の実位置等である。実動作データ取得部112は、工作物W毎に所定期間分の実動作データを取得する。所定期間分とは、例えば、研削初期から研削終期まで、粗研の初期から粗研の終期まで等である。なお、研削が非定常状態の時には、不安定であるため、定常状態のみを対象としてデータを取得することも可能である。
【0066】
実測データ取得部120は、第一実測データをセンサ22から取得する第一実測データ取得部121、第二実測データをセンサ23および実測データ生成部30から取得する第二実測データ取得部122を備える。第一実測データは、砥石車16により工作物Wの研削を行っている際の実測データであって、構造部材15等の振動、構造部材15等の変形量等である。第二実測データは、砥石車16により工作物Wの研削を行う際の実測データであって、工作物Wの寸法(径)、研削点温度、定寸装置17の振動、研削部位において発生する音等である。
【0067】
第一実測データ取得部121は、第一実測データを、工作物W毎に所定期間分取得する。また、第二実測データ取得部122も、第二実測データを、工作物W毎に所定期間分取得する。第一実測データおよび第二実測データは、上述した実動作データと同一の所定期間の分だけ取得される。所定期間は、上述したように、例えば、研削初期から研削終期まで、粗研の初期から粗研の終期まで等である。
【0068】
なお、第二実測データ取得部122は、各々の検出器23aにより出力された波形データD0に基づいて実測データ生成部30が生成した実測データに関して、当該実測データの一部または全部を取得する。つまり、第二実測データ取得部122は、実測データ生成部30において生成された第一次データD1、第二次データD2、特定周波数データD11,D21、第三次データD31、D32の一部のみを取得してもよく、全てを取得してもよい。
【0069】
研削品質データ取得部140は、外部装置2によって取得された複数の工作物Wに関する研削品質データを、教師有り学習の第一教師データとして取得する。つまり、研削品質データ取得部140は、例えば、加工変質層データ(研削焼け、研削による軟化層等に関するデータ)、表面性状データ(表面粗さ等のデータ)、びびり模様データ、真円度データ等を、第一教師データとして取得する。
【0070】
第一学習モデル生成部150は、教師有り学習を行って、第一学習モデルを生成する。詳細には、第一学習モデル生成部150は、第一入力データ取得部130が取得した複数の工作物Wに関する第一入力データを第一学習用入力データとし、且つ、研削品質データ取得部140が取得した複数の工作物Wに関する研削品質データを第一教師データとする機械学習により、工作物Wの研削品質を推定するための第一学習モデルを生成する。
【0071】
つまり、第一学習モデル生成部150は、動作指令データ、実動作データ、第一実測データ、第二実測データを第一学習用入力データとし、且つ、研削品質データを第一教師データとする機械学習により、第一学習モデルを生成する。第一学習モデルは、第一学習用入力データと第一教師データとの関係を示すモデルである。
【0072】
ここで、第一学習用入力データのうち、少なくとも、実動作データ、第一実測データおよび第二実測データは、工作物W毎の所定期間分のデータである。従って、1つの工作物Wに関する第一学習用入力データだけでも、多量のデータとなる。さらに、複数の工作物Wに関する第一学習用入力データとなれば、極めて多量のデータとなる。しかし、第一学習モデルは、機械学習を用いることによって、複数の工作物Wに関する多量の第一学習用入力データを用いるとしても、容易に生成することができる。従って、後述するが、工作物Wの研削品質に影響を及ぼす多量の第一学習用入力データを考慮して第一学習モデルを生成することで、結果として、工作物Wの研削品質を取得することができる。
【0073】
第一学習モデルは、工作物Wの研削品質として、工作物Wの加工変質層の状態、工作物Wの表面性状、工作物Wのびびり模様状態、および、真円度データを推定するためのモデルである。ただし、第一学習モデルは、これら全ての研削品質を推定する場合に限られず、これらの一部のみの研削品質を推定するようにしてもよい。そして、第一学習モデル生成部150によって生成された第一学習モデルは、第一学習モデル記憶部160に記憶される。
【0074】
また、取得する所定期間が、研削初期から研削終期までである場合には、第一学習モデルは、全ての研削工程を考慮したモデルとなる。一方、取得する所定期間が、例えば粗研の初期から粗研の終期までである場合には、第一学習モデルは、粗研工程のみを考慮した学習モデルとなる。研削品質に影響を及ぼす工程を特定したい場合には、工程毎に第一学習モデルを取得するようにしてもよい。
【0075】
(1-6.機械学習装置100の推定フェーズ102の詳細構成)
機械学習装置100の推定フェーズ102の詳細構成について
図5を参照して説明する。ここで、第一学習フェーズ101の構成および推定フェーズ102の構成が、研削品質推定装置に相当する。第一学習フェーズ101の構成は、上述したとおりである。
【0076】
推定フェーズ102の構成は、第一入力データを取得する第一入力データ取得部130と、第一学習モデル記憶部160と、研削品質推定部170と、判別部180とを備えて構成される。第一入力データ取得部130は、新たな工作物Wの研削における第一入力データを所定期間分取得しており、第一学習フェーズ101において説明した内容と実質的に同一である。ここでの所定期間とは、第一学習フェーズ101における所定期間と同一とする。第一学習モデル記憶部160は、第一学習フェーズ101において説明したように、第一学習モデル生成部150によって生成された第一学習モデルを記憶する。
【0077】
研削品質推定部170は、新たな工作物Wの研削を行っている際の所定期間分の第一入力データを推定用入力データとし、第一学習モデル記憶部160に記憶されている第一学習モデルを用いることで、新たな工作物Wの研削品質を推定する。ここで、第一学習モデルは、上述したように、第一学習用入力データと、第一教師データとの関係を示すモデルである。そして、第一学習モデルは、第一教師データである研削品質データとして、工作物Wの加工変質層の状態、工作物Wの表面性状、工作物Wのびびり模様状態、および、真円度データに関するモデルである。
【0078】
そこで、研削品質推定部170は、研削品質として、工作物Wの加工変質層の状態、工作物Wの表面性状、工作物Wのびびり模様状態、および真円度を推定する。ただし、研削品質推定部170は、当該全ての研削品質を推定するのではなく、一部の研削品質のみを推定するようにしてもよい。例えば、研削品質推定部170は、真円度のみを推定するようにしてもよい。この場合、第一学習モデルが、真円度のみを推定するようなモデルとして生成されていることになる。
【0079】
研削品質推定部170は、上記のように、複数の対象を推定している。機械学習を適用して生成された第一学習モデルを用いることにより、研削品質推定部170は、複数の対象を容易に推定することができる。このように、機械学習装置100は、複雑化された対象を一度に推定することができる。
【0080】
判別部180は、研削品質推定部170により推定された工作物Wの研削品質に基づいて工作物Wの良否を判別する。例えば、判別部180は、推定された加工変質層の状態に基づいて、工作物Wに加工変質層が存在している(所定条件を満たしていない)と判別された場合には、当該工作物Wは不良品と判別する。また、判別部180は、推定された表面性状が所定条件を満たしていないと判別された場合には、当該工作物Wは不良品と判別する。また、判別部180は、推定されたびびり模様状態に基づいて、びびり模様が存在している(所定条件を満たしていない)と判別された場合には、当該工作物Wは不良品と判別する。また、判別部180は、推定された真円度に基づいて、真円度が所定値以上であると判別された場合には、当該工作物Wは不良品と判別する。
【0081】
一方、判別部180は、加工変質層の状態、表面性状、びびり模様状態、および真円度に関して各条件を満たす場合に、当該工作物Wは良品と判別する。このように、機械学習を適用して生成された第一学習モデルを用いることにより、複数の条件について、容易に判別することができる。
【0082】
(2.第二実施形態)
(2-1.機械学習装置200の概要)
第二実施形態の機械学習装置200の概要について、
図6を参照して説明する。機械学習装置200は、第一実施形態の機械学習装置100と同様に、(a)工作物Wの研削品質を推定するための第二学習モデルを生成すると共に、(b)第二学習モデルを用いて工作物Wの研削品質を推定する。
【0083】
機械学習装置200は、第二学習モデルを生成する第二学習フェーズ201において機能する要素101a,101b,201c、および、研削品質を推定する推定フェーズ102において機能する要素102a,102bを備える。なお、推定フェーズ102は、第一実施形態の対応するフェーズと同一構成を有する。
【0084】
機械学習装置200は、第一学習フェーズ101において機能する要素として、第一学習用入力データを取得する要素101a、第一教師データを取得する要素101b、および、第二学習モデルの生成を行う要素201cを備える。要素201cにおいて生成される第二学習モデルは、第一学習用入力データおよび第一教師データに基づいて、機械学習のうち教師有り学習を行うことによって工作物Wの研削品質を推定するためのモデル(関数)である。ただし、第二学習モデルは、研削品質の分類分けを行うことを目的として、教師無し学習を適用することにより生成することもできる。ただし、教師有り学習を適用する場合には、高精度に研削品質を取得することができる。
【0085】
機械学習装置200に関連する研削盤1の構成について、
図7を参照して説明する。
図7に示すように、研削盤1は、研削品質データを生成する研削品質データ生成部40を備える。この研削品質データ生成部40は、一部の外部装置2の代わりとして用いられ、研削品質データ取得部140は、研削品質データを外部装置2および研削品質データ生成部40の双方から取得する。
【0086】
なお、研削品質データ生成部40は、第一実施形態の機械学習装置100に設けられる実測データ生成部30と同一構成を有する。つまり、機械学習装置200は、第一実施形態の機械学習装置100において、実測データ生成部30により生成され、実測データ取得部120により第二実測データとして取得されていたデータを、研削品質データとして用いる。
【0087】
そして、研削品質データ生成部40により生成される研削品質データには、表面性状データ(表面粗さ等のデータ)、びびり模様データ、真円度データ等が含まれる。例えば、真円度との相関性が高い第三次データD31,D32が得られる場合に、当該第三次データD31,D32は、真円度測定器による測定結果の代わりに、真円度データとして用いることができる。また、びびり模様の有無との相関性が高い特定周波数データD11,D21が得られる場合に、当該特定周波数データD11,D21は、びびり検出器による検出結果の代わりに、びびり模様データとして用いることができる。つまり、機械学習装置200は、研削品質データ生成部40により生成された研削品質データを、表面性状測定器、びびり検出器、真円度測定器から得られる表面性状データ、びびり模様データ、真円度データの代わりに用いることができる。
【0088】
ここで、
図8を参照して、研削盤1の機外に設けられた外部装置2により検出された研削品質データと、加速度センサ17eにより出力された波形データから生成された第二次データD2との比較結果を説明する。
図8に示す上のグラフは、一の工作物Wに対し、外部装置2により検出された研削品質データを示し、
図8に示す下のグラフは、第二次データD2を示す。
図8において、横軸は、周波数成分を示し、縦軸は、変位成分を示す。
【0089】
図8に示すように、第二次データD2の波形データは、特徴が振幅の大きさとして示される周波数帯域、および、当該周波数帯域における変位成分の程度が近似する。そこで、機械学習装置200は、第二学習フェーズ201において、研削品質データの一部を研削品質データ生成部40から取得する。これにより、機械学習装置200は、全ての研削品質データを外部装置2から取得する場合と比べて、機外での研削品質データの取得に要する時間を短縮できるので、サイクルタイムの短縮を図ることができる。
【0090】
(2-3.機械学習装置200の第二学習フェーズ201の詳細構成)
図7に戻り、機械学習装置200の第二学習フェーズ201の詳細構成を説明する。機械学習装置200の第二学習フェーズ201の構成は、第一入力データ取得部130と、研削品質データを取得する研削品質データ取得部140と、第二学習モデル生成部250と、第二学習モデル記憶部260とを備えて構成される。第二学習モデル生成部250は、第一実施形態における第一学習モデル生成部150と同一構成であり、第二学習モデル記憶部260は、第一実施形態における第一学習モデル記憶部160と同一構成である。
【0091】
なお、機械学習装置200の第一学習フェーズ101において、第二実測データ取得部122は、センサ23から第二実測データを、工作物W毎に所定期間分取得する。つまり、第二実施形態における第二実測データ取得部122は、実測データ生成部30から第二実測データを取得しない点において、第一実施形態における第二実測データ取得部122と異なる。また、研削品質データ取得部140は、複数の工作物Wに関する研削品質データを外部装置2および研削品質データ生成部40から取得する。そして、外部装置2および研削品質データ生成部40から取得した研削品質データは、教師有り学習の第一教師データとして用いられる。つまり、機械学習装置200において第一学習用入力データおよび第一教師データは、表2に示すとおりとなる。ここで、表2に示すように、第一学習用入力データは、多数のデータとしているが、表2に示す全てのデータを用いる必要はなく、一部のデータのみを用いるようにしてもよい。
【表2】
【0092】
(2-4.機械学習装置200の推定フェーズ102の詳細構成)
機械学習装置200の推定フェーズ102は、第一実施形態の推定フェーズ102と同一である。
【0093】
なお、本実施形態において、機械学習装置200は、実測データ生成部30を研削品質データ生成部40と併せて備えていてもよい。この場合、研削品質データ生成部40により生成可能なデータのうち、一のデータを研削品質データとして用いる場合、実測データ取得部120は、当該一のデータを取得しない。これにより、機械学習装置200は、当該一のデータが第一学習用入力データおよび第一教師データの両方に用いられることを回避できる。
【0094】
(3.第三実施形態)
(3-1.機械学習装置300の概要)
第三実施形態の機械学習装置300の概要について、
図9を参照して説明する。機械学習装置300は、第一実施形態の機械学習装置100と同様に、(a)工作物Wの研削品質を推定するための第一学習モデルを生成すると共に、(b)第一学習モデルを用いて工作物Wの研削品質を推定する。さらに、機械学習装置300は、(c)研削品質が良好となるように、研削盤1の動作指令データを調整するための第三学習モデルを生成すると共に、(d)第三学習モデルを用いて研削品質が良好となるように、研削盤1の動作指令データを更新する。なお、機械学習装置300は、上記(a)において、第一学習モデルの代わりに第二学習モデルを生成し、上記(b)において、第一学習モデルの代わりに第二学習モデルを用いて工作物Wの研削品質を推定してもよい。
【0095】
機械学習装置300は、第一学習モデルを生成する第一学習フェーズ101において機能する要素101a,101b,101c、および、研削品質を推定する推定フェーズ102において機能する要素102a,102bを備える。第一学習フェーズ101および推定フェーズ102は、第一実施形態の対応するフェーズと同一構成を有する。
【0096】
また、機械学習装置300は、第三学習モデルを生成する第三学習フェーズ303において機能する要素として、第二学習用入力データを取得する要素303a、第一評価結果データを取得する要素303b、および、第三学習モデルの生成を行う要素303cを備える。
【0097】
要素303aにおいて取得される第二学習用入力データは、機械学習に用いられる入力データであって、例えば、動作指令データ等である。動作指令データは、第一実施形態における表1に示すように、工程毎の指令切込速度、工程切替時の移動体14,15の指令位置、砥石車16の指令回転速度、工作物Wの指令回転速度、クーラントの供給情報等である。動作指令データは、制御装置20にて実行されるNCプログラムを生成するためのデータである。
【0098】
要素303bにおいて取得される第一評価結果データは、強化学習における機械学習に用いられる報酬を導き出すための評価結果データである。第一評価結果データは、工作物Wの研削品質データであって、例えば、工作物Wの加工変質層データ、工作物Wの表面性状データ、工作物Wのびびり模様データ、真円度データ等である。要素303cにおいて生成される第三学習モデルは、第二学習用入力データおよび第一評価結果データに基づいて、機械学習のうち強化学習を行うことによって研削盤1の動作指令データを調整するためのモデル(関数)である。
【0099】
機械学習装置300は、動作指令データを更新する更新フェーズ304において機能する要素として、更新用入力データを取得する要素304a、並びに、動作指令データの更新を行う要素304bを備える。要素304aにおいて取得される更新用入力データは、第二学習用入力データと同種のデータであって、学習に用いた工作物Wとは異なる工作物W(新しい工作物W)に関して取得されるデータである。要素304bは、更新用入力データ、第三学習モデル、および、推定された研削品質を用いて、動作指令データを更新する。要素304bにて用いる第三学習モデルは、第三学習フェーズ303において機械学習によって生成される第三学習モデルである。また、推定された研削品質は、推定フェーズ102において推定された研削品質である。
【0100】
(3-2.機械学習装置200の第一学習フェーズ101の詳細構成)
機械学習装置200の第一学習フェーズ101の詳細構成は、第一実施形態と同一構成である。
【0101】
(3-3.機械学習装置300の第三学習フェーズ303の詳細構成)
機械学習装置300の第三学習フェーズ303の詳細構成について
図10を参照して説明する。ここで、第三学習フェーズ303の構成が、研削盤の動作指令データ調整モデル生成装置に相当する。
【0102】
第三学習フェーズ303の構成は、動作指令データ取得部111と、研削品質データ取得部140と、報酬決定部310と、第三学習モデル生成部320と、第三学習モデル記憶部330とを備えて構成される。
【0103】
動作指令データ取得部111は、研削盤1にて砥石車16により工作物Wの研削を行う際において、研削盤1の制御装置20への動作指令データを取得する。動作指令データ取得部111は、複数の工作物Wに関する動作指令データを、機械学習の第二学習用入力データとして取得する。また、研削品質データ取得部140は、複数の工作物Wに関する研削品質データを、機械学習の第一評価結果データとして取得する。ここで、第二学習用入力データおよび第一評価結果データは、表3に示すとおりである。ここで、表3に示すように、第二学習用入力データは、多数のデータとしているが、表3に示す全てのデータを用いる必要はなく、一部のデータのみを用いるようにしてもよい。
【0104】
【0105】
報酬決定部は310、第二学習用入力データである動作指令データおよび第一評価結果データである研削品質データを取得して、研削品質データに応じて、動作指令データに対する報酬を決定する。ここで、報酬は、強化学習において、動作指令データの組み合わせに対する報酬である。そして、当該動作指令データに対応する研削品質データが望ましい結果を導き出した時に、当該動作指令データに対して多くの報酬が付与され、望ましくない結果を導き出した時に、当該動作指令データに対して少ない報酬(マイナスの報酬を含む)が付与される。
【0106】
例えば、報酬決定部310は、工作物Wの加工変質層データにおいて、加工変質層が無い場合に報酬を多くし、加工変質層が有る場合に報酬を少なくする。また、報酬決定部310は、工作物Wの表面性状データが所定閾値以下の場合に報酬を多くし、表面性状データが所定閾値より大きい場合に報酬を少なくする。さらに、報酬決定部310は、工作物Wのびびり模様データにおいて、びびり模様が無しの場合に報酬を多くし、びびり模様が有りの場合に報酬を少なくする。さらに、報酬決定部310は、真円度データにおいて、真円度が所定値未満の場合に報酬を多くし、真円度が所定値以上の場合に報酬を少なくする。なお、報酬決定部310は、加工変質層データ、表面性状データ、びびり模様データ、および、真円度データの全てに基づいて報酬を決定してもよいし、これらの何れかのみに基づいて報酬を決定してもよい。
【0107】
第三学習モデル生成部320は、機械学習により、報酬を多くするように動作指令データを調整するための第三学習モデルを生成する。第三学習モデル生成部320において、強化学習として、例えば、Q学習、Sarsa、モンテカルロ法等が適用される。
【0108】
ここで、調整前の動作指令データが、第一の工作物Wに関するデータであり、調整後の動作指令データが、第二の工作物Wに関するデータであるとする。第一の工作物Wに関する動作指令データと当該第一の工作物Wの研削品質データとの関係を、第一データ関係とする。第二の工作物Wの動作指令データと当該第二の工作物Wの研削品質データとの関係を、第二データ関係とする。
【0109】
そして、第三学習モデルは、調整前である第一データ関係と調整後である第二データ関係との相互関係を表すモデルである。第三学習モデル生成部320は、調整後である第二の工作物Wの研削品質データが調整前である第一の工作物Wの研削品質データより良好となるように、すなわち報酬が多くなるように、調整前である第一の工作物Wの動作指令データから調整後である第二の工作物Wの動作指令データへの調整方法を学習する。
【0110】
ただし、調整後の動作指令データは、調整前の動作指令データに対して、予め設定された制約の範囲内で調整可能とされている。例えば、調整可能なパラメータの一つである指令切込速度においては、調整後の指令切込速度は、調整前の指令切込速度に対して所定割合(例えば±3%)内に制限されている。所定割合は、任意に設定可能である。その他の調整可能なパラメータについても同様である。また、調整可能なパラメータを設定することも可能である。そして、生成された第三学習モデルは、第三学習モデル記憶部330に記憶される。
【0111】
なお、第三学習モデル生成部320は、後述する更新フェーズ304においても第三学習モデルを学習することも可能である。この場合、第一評価結果データである研削品質データは、推定フェーズ102(第一実施形態にて説明)により得られた研削品質データを用いる。
【0112】
(3-4.機械学習装置300の推定フェーズ102の詳細構成)
機械学習装置300の推定フェーズ102は、第一実施形態の推定フェーズ102と同一である。
【0113】
(3-5.機械学習装置300の更新フェーズ304の詳細構成)
機械学習装置300の更新フェーズ304の詳細構成について
図11を参照して説明する。ここで、第三学習フェーズ303の構成および更新フェーズ304の構成が、研削盤の動作指令データ更新装置に相当する。第三学習フェーズ303の構成は、上述したとおりである。
【0114】
更新フェーズ304の構成は、動作指令データ取得部111と、研削品質データ取得部140と、報酬決定部310と、第三学習モデル記憶部330と、動作指令データ調整部340とを備えて構成される。
【0115】
動作指令データ取得部111および研削品質データ取得部140は、新たな工作物Wの研削における各データを取得し、第三学習フェーズ303において説明した内容と実質的に同一である。報酬決定部310は、新たな工作物Wの研削において取得した動作指令データおよび研削品質データを用いて、報酬を決定する。すなわち、報酬決定部310は、新たな工作物Wの研削に関して、研削品質データに応じて、動作指令データに対する報酬を決定する。第三学習モデル記憶部330は、第三学習フェーズ303において説明したように、第三学習モデル生成部320によって生成された第三学習モデルを記憶する。
【0116】
動作指令データ調整部340は、新たな工作物Wの研削に関する動作指令データ、新たな工作物Wの研削品質データ、報酬、および、第三学習モデルを用いて、動作指令データの調整方法を決定し、決定した調整方法に基づいて動作指令データの調整を行う。ここで、第三学習モデルは、報酬が多くなるように、調整前の動作指令データから調整後の動作指令データへの調整方法を学習することによって生成されたモデルである。
【0117】
詳細には、動作指令データ調整部340は、現在の動作指令データを調整前の動作指令データとして取得し、そのときの報酬を取得する。この場合に、動作指令データ調整部340は、現在の動作指令データと、現在の動作指令データに対する報酬と、第三学習モデルとを用いて、調整すべき動作指令データを決定する。つまり、調整すべき動作指令データは、現在の動作指令データにおける報酬よりも多くの報酬となるような動作指令データとなる。
【0118】
動作指令データ調整部340の処理において、調整すべき動作指令データとして、報酬が同等となる複数の候補が出力される場合がある。この場合には、例えば、動作指令データ調整部340は、調整するパラメータの優先順位を設定することにより、複数の候補に対して順位付けを行うことができる。例えば、調整するパラメータの優先順位とは、第一位を指令切込速度とし、第二位を工作物Wの指令回転速度とする等である。
【0119】
そして、動作指令データ調整部340は、第一位の候補を、調整すべき動作指令データと決定し、現在の動作指令データを当該調整すべき動作指令データに更新する。そうすると、研削盤1は、更新された動作指令データに基づいて工作物Wの研削を行う。そして、機械学習装置300の更新フェーズ304において、当該工作物Wの研削における各データに基づいて、再び、次の研削における動作指令データを調整する。なお、動作指令データの調整の頻度を設定することもできる。例えば、設定数の工作物Wを研削した後に、動作指令データを調整するようにしてもよい。
【0120】
つまり、機械学習装置300の機械学習により生成された第三学習モデルを用いて動作指令データが更新される。そのため、研削状態が変化したとしても、動作指令データが現在の研削状態に応じて更新されていく。このように動作指令データが更新されることによって、工作物Wの研削品質を良好とすることができる。
【0121】
(4.第四実施形態)
(4-1.機械学習装置400の概要)
第四実施形態の機械学習装置400の概要について、
図12を参照して説明する。機械学習装置400は、(a)工作物Wの研削品質を推定するための第一学習モデルを生成すると共に、(b)第一学習モデルを用いて工作物Wの研削品質を推定する。なお、機械学習装置400は、上記(a)において、第一学習モデルの代わりに第二学習モデルを生成し、上記(b)において、第一学習モデルの代わりに第二学習モデルを用いて工作物Wの研削品質を推定してもよい。
【0122】
さらに、機械学習装置400は、(e)砥石車16の表面状態を推定するための第四学習モデルを生成すると共に、(f)第四学習モデルを用いて砥石車16の表面状態を推定する。さらに、機械学習装置400は、(g)研削品質が良好となるように、且つ、砥石車16の修正または交換の頻度を少なくするように、研削盤1の動作指令データを調整するための第三学習モデルを生成すると共に、(h)第三学習モデルを用いて、研削品質が良好となるように、且つ、砥石車16の修正または交換の頻度を少なくするように、研削盤1の動作指令データを更新する。
【0123】
機械学習装置400は、第一学習モデルおよび第四学習モデルを生成する第一学習フェーズ405において機能する要素101a,101b,101c,405d,405eを備える。機械学習装置400は、第一学習フェーズ405において機能する要素として、第一学習用入力データを取得する要素101a、第一教師データを取得する要素101b、第一学習モデルの生成を行う要素101c、第二教師データを取得する要素405d、および、第四学習モデルの生成を行う要素405eを備える。ここで、要素101a,101b,101cは、第一実施形態の対応する要素と同一構成を有する。
【0124】
要素405dにおいて取得される第二教師データは、教師有り学習における機械学習に用いられる教師データである。第二教師データは、砥石車16の表面状態を表すデータ(砥石車16の表面状態データ)である。砥石車16の表面状態データは、例えば、目つぶれ、目詰まり、目こぼれ等が生じている状態に関するデータ、目立てすぎの状態に関するデータ等である。
【0125】
砥石車16の表面は、工作物Wの研削品質に影響を及ぼす。すなわち、砥石車16の表面状態とは、工作物Wの研削品質に影響を及ぼす程度である。砥石車16の表面状態とは、例えば、目つぶれ、目詰まり、目こぼれ等が生じている状態、目立てすぎの状態等である。そして、砥石車16の表面状態が良好でない場合には、工作物Wの研削品質が低下するおそれがある。従って、砥石車16の表面状態を把握することが求められる。
【0126】
砥石車16の表面状態が、目つぶれ、目詰まり、目こぼれ等が生じている場合には、ドレッシングを行ったり、ツルーイングにより成形した後にドレッシングを行ったりすることが必要となる。また、砥石車16の表面状態が、目立てすぎの状態であれば、ツルーイングを行うことが必要となる。通常、ツルーイング後には、ドレッシングが行われる。そして、ツルーイング回数が所定回数に到達した場合には、または、ツルーイングにより所定量成形した場合には、砥石車16の交換を行う必要がある。
【0127】
そして、砥石車16の寿命を向上するためには、ツルーイングおよびドレッシングを行う回数を少なくすることが求められる。さらに、ツルーイング、ドレッシングおよび砥石車16の交換を行うと、これらに要する時間によって、研削サイクル時間が長くなることになる。当然に、研削サイクル時間を短くすることが求められる。この観点においても、砥石車16の表面状態を把握することが求められる。そこで、要素405dは、砥石車16の表面状態データを第二教師データとして取得することとしている。なお、砥石車16の表面状態データとは、工作物の研削品質に影響を及ぼす程度を示すデータである。
【0128】
要素405eにおいて生成される第四学習モデルは、第一学習用入力データおよび第二教師データに基づいて、機械学習のうち教師有り学習を行うことによって砥石車16の表面状態を推定するためのモデル(関数)である。ただし、第四学習モデルは、砥石車16の表面状態の分類分けを行うことを目的として、教師無し学習を適用することにより生成することもできる。ただし、教師有り学習を適用する場合には、高精度に、砥石車16の表面状態を取得することができる。
【0129】
機械学習装置400は、第三学習モデルを生成する第三学習フェーズ406において機能する要素303a,303b,406d,406eを備える。機械学習装置400は、第三学習フェーズ406において機能する要素として、第二学習用入力データを取得する要素303a、第一評価結果データを取得する要素303b、第二評価結果データを取得する要素406d、および、第三学習モデルの生成を行う要素406eを備える。ここで、要素303a,303bは、第三実施形態の対応する要素と同一構成を有する。
【0130】
要素406dにおいて取得する第二評価結果データは、強化学習における機械学習に用いられる報酬を導き出すための評価結果データである。第二評価結果データは、砥石車16の表面状態データである。要素406eにおいて生成される第三学習モデルは、第二学習用入力データ、第一評価結果データおよび第二評価結果データに基づいて、機械学習のうち強化学習を行うことによって研削盤1の動作指令データを調整するためのモデル(関数)である。
【0131】
機械学習装置400は、研削品質および砥石車16の表面状態を推定する推定フェーズ407において機能する要素として、推定用入力データを取得する要素102a、並びに、研削品質の推定および工作物Wの良否の判別を行う要素102bを備える。ここで、要素102a,102bは、第一実施形態の対応する要素と同一構成を有する。
【0132】
さらに、機械学習装置400は、推定フェーズ407において機能する要素として、砥石車16の表面状態の推定、並びに、砥石車16のツルーイングの実行、砥石車16のドレッシングの実行、および、砥石車16の交換の実行を判別する要素407cを備える。要素407cは、推定用入力データと第四学習モデルとを用いて砥石車16の表面状態を推定すると共に、推定された砥石車16の表面状態に基づいて、砥石車16のツルーイングの実行、砥石車16のドレッシングの実行、および、砥石車16の交換の実行を判別する。要素407cにて用いる第三学習モデルは、第一学習フェーズ405において機械学習によって生成される第四学習モデルである。
【0133】
機械学習装置400は、動作指令データを更新する更新フェーズ408において機能する要素として、更新用入力データを取得する要素304a、並びに、動作指令データの更新を行う要素408cを備える。ここで、要素304aは、第三実施形態の対応する要素と同一構成を有する。要素408cは、更新用入力データ、第三学習モデル、推定された研削品質、および、推定された砥石車16の表面状態を用いて、動作指令データを更新する。要素408cにて用いる第三学習モデルは、第三学習フェーズ406において機械学習によって生成される第三学習モデルである。また、推定された研削品質は、推定フェーズ407において推定された研削品質である。推定された砥石車16の表面状態は、推定フェーズ407において推定された砥石車16の表面状態である。
【0134】
(4-2.機械学習装置400の第一学習フェーズ405の詳細構成)
機械学習装置400の第一学習フェーズ405の詳細構成について
図13を参照して説明する。第一学習フェーズ405の構成は、研削品質推定モデル生成装置、および、砥石車表面状態推定モデル生成装置を構成する。第一学習フェーズ405の構成は、第一入力データ取得部130と、品質データ取得部410と、第一学習モデル生成部150と、第四学習モデル生成部420と、第一学習モデル記憶部160と、第四学習モデル記憶部430とを備えて構成される。
【0135】
第一入力データ取得部130は、複数の工作物Wに関する第一入力データを、機械学習の第一学習用入力データとして取得する。品質データ取得部410は、研削品質データを取得する研削品質データ取得部140と、砥石車16の表面状態データを取得する砥石車表面状態データ取得部411とを備える。研削品質データ取得部140は、複数の工作物Wに関する研削品質データを、機械学習の第一教師データとして取得する。また、砥石車表面状態データ取得部411は、工作物W毎に研削後における砥石車16の表面状態を、機械学習の第二教師データとして取得する。ここで、第一学習用入力データ、第一教師データおよび第二教師データは、表4に示すとおりである。
【0136】
【0137】
第一入力データ取得部130および研削品質データ取得部140は、第一実施形態の対応する構成と同一構成を有する。砥石車表面状態データ取得部411は、外部装置2によって取得された工作物Wの研削品質データに対応する砥石車16の表面状態データを、教師有り学習の第二教師データとして取得する。
【0138】
砥石車16の表面状態データは、工作物Wの真円度に対応する第一表面状態データ、工作物Wの表面性状に対応する第二表面状態データ、工作物Wのびびり模様状態に対応する第三表面状態データ、および、工作物Wの加工変質層の状態に対応する第四表面状態データを含む。ただし、第一表面状態データは、真円度データそのものとしてもよいし、真円度データに基づいて演算したデータとしてもよい。また、第二表面状態データは、工作物Wの表面性状データそのものとしてもよいし、表面性状データに基づいて演算したデータとしてもよい。第三表面状態データは、びびり模様データそのものとしてもよいし、びびり模様データに基づいて演算したデータとしてもよい。同様に、第四表面状態データは、加工変質層データそのものとしてもよいし、加工変質層データに基づいて演算したデータとしてもよい。
【0139】
第一学習モデル生成部150は、第一学習モデルを学習し、第一実施形態の対応する構成と同一構成を有する。第一学習モデル記憶部160は、第一学習モデル生成部150によって生成された第一学習モデルを記憶する。
【0140】
第四学習モデル生成部420は、教師有り学習を行って、第四学習モデルを生成する。詳細には、第四学習モデル生成部420は、第一入力データ取得部130が取得した第一入力データを第一学習用入力データとし、且つ、砥石車表面状態データ取得部411が取得した工作物W毎の砥石車16の表面状態データを第二教師データとする機械学習により、砥石車16の表面状態を推定するための第四学習モデルを生成する。
【0141】
つまり、第四学習モデル生成部420は、動作指令データ、実動作データ、第一実測データ、第二実測データを第一学習用入力データとし、且つ、砥石車表面状態データを第二教師データとする機械学習により、第四学習モデルを生成する。第四学習モデルは、第一学習用入力データと第二教師データとの関係を示すモデルである。第一学習用入力データの種類が多数存在するとしても、機械学習を適用することにより第四学習モデルの生成が可能となる。
【0142】
第四学習モデルは、砥石車16の表面状態として、工作物の研削品質に影響を及ぼす程度を推定するためのモデルである。例えば、第一学習モデルは、砥石車16の表面状態として、砥石車16の目つぶれ、目詰まり、目こぼれ等が生じている状態、砥石車16の目立てすぎの状態等を推定するためのモデルである。
【0143】
例えば、第一学習モデルは、砥石車16の表面状態として、工作物Wの真円度に対応する第一表面状態、工作物Wの表面性状に対応する第二表面状態、工作物Wのびびり模様状態に対応する第三表面状態、および、工作物Wの加工変質層の状態に対応する第四表面状態を推定するためのモデルである。ただし、第四学習モデルは、これら全ての表面状態を推定する場合に限られず、これらの一部のみの表面状態を推定するようにしてもよい。そして、第四学習モデル生成部420によって生成された第四学習モデルは、第四学習モデル記憶部430に記憶される。
【0144】
(4-3.機械学習装置400の第三学習フェーズ406の詳細構成)
機械学習装置400の第三学習フェーズ406の詳細構成について
図13を参照して説明する。第三学習フェーズ406の構成は、研削盤の動作指令データ調整モデル生成装置を構成する。
【0145】
第三学習フェーズ406の構成は、動作指令データ取得部111と、研削品質データ取得部140と、砥石車表面状態データ取得部411と、研削サイクル時間演算部440と、砥石車形状情報取得部450と、報酬決定部310と、第三学習モデル生成部320と、第三学習モデル記憶部330とを備えて構成される。
【0146】
動作指令データ取得部111は、複数の工作物Wに関する動作指令データを、機械学習の第二学習用入力データとして取得する。また、研削品質データ取得部140は、当該複数の工作物Wに関する研削品質データを、機械学習の第一評価結果データとして取得する。砥石車表面状態データ取得部411は、工作物W毎の研削後における砥石車16の表面状態データを、機械学習の第二評価結果データとして取得する。ここで、第二学習用入力データ、第一評価結果データおよび第二評価結果データは、表5に示すとおりである。ここで、表5に示すように、第二学習用入力データは、多数のデータとしているが、表5に示す全てのデータを用いる必要はなく、一部のデータのみを用いるようにしてもよい。
【0147】
【0148】
研削サイクル時間演算部440は、1個の工作物W当たりの研削サイクル時間を演算する。研削サイクル時間には、複数の工作物Wの研削に要する時間、前記研削において砥石車16の交換に要する時間、前記研削において砥石車16のドレッシングに要する時間、および、前記研削において砥石車16のツルーイングに要する時間の合計を、工作物Wの数で除算した値である。つまり、砥石車16の交換回数が少ないほど、砥石車16のドレッシングの回数が少ないほど、さらには、砥石車16のツルーイングの回数が少ないほど、研削サイクル時間が短くなる。
【0149】
砥石車形状情報取得部450は、砥石車16の形状情報を取得する。砥石車形状情報取得部450は、砥石車修正装置18により測定された砥石車16の寸法(径)を取得する。つまり、砥石車形状情報取得部450は、砥石車修正装置18によって、砥石車16のツルーイングまたはドレッシングが行われるときに取得される。さらに、砥石車形状情報取得部350は、砥石車16の形状情報として、砥石車16の寸法変化、および、砥石車16の形崩れを取得することができる。
【0150】
報酬決定部は310、第二学習用入力データである動作指令データ、第一評価結果データである研削品質データ、および、第二評価結果データである砥石車16の表面状態データを取得して、研削品質データおよび表面状態データに応じて、動作指令データに対する報酬を決定する。ここで、報酬は、強化学習において、動作指令データの組み合わせに対する報酬である。
【0151】
第二実施形態と同様に、当該動作指令データに対応する研削品質データが望ましい結果を導き出した時に、当該動作指令データに対して多くの報酬が付与され、望ましくない結果を導き出した時に、当該動作指令データに対して少ない報酬(マイナスの報酬を含む)が付与される。
【0152】
さらに、当該動作指令データに対応する表面状態データが望ましい結果を導き出した時に、当該動作指令データに対して多くの報酬が付与され、望ましくない結果を導き出した時に、当該動作指令データに対して少ない報酬が付与される。
【0153】
例えば、報酬決定部310は、第一表面状態データに対応する真円度が所定値未満の場合に報酬を多くし、真円度が所定値以上の場合に報酬を少なくする。また、報酬決定部310は、第二表面状態データに対応する工作物Wの表面性状データが所定閾値以下の場合に報酬を多くし、表面性状が所定閾値より大きい場合に報酬を少なくする。また、報酬決定部310は、第三表面状態データに対応するびびり模様が無しの場合に報酬を多くし、びびり模様が有りの場合に報酬を少なくする。同様に、報酬決定部310は、第四表面状態データに対応する加工変質層が無い場合に報酬を多くし、加工変質層が有る場合に報酬を少なくする。
【0154】
さらに、報酬決定部310は、研削サイクル時間演算部440によって演算された研削サイクル時間を取得し、研削サイクル時間に応じて、動作指令データに対する報酬を決定する。詳細には、報酬決定部310は、研削サイクル時間が短くなるほど報酬を多くする。つまり、報酬決定部310は、砥石車16の交換に要する時間、砥石車16のドレッシングに要する時間、および、砥石車16のツルーイングに要する時間の少なくとも一つが短くなるほど、報酬を多くする。
【0155】
さらに、報酬決定部310は、砥石車形状情報取得部450が取得した砥石車16の形状情報に基づいて、報酬を決定する。詳細には、報酬決定部310は、砥石車16の寸法変化が小さくなるほど、砥石車16の形崩れが小さくなるほど、報酬を多くする。
【0156】
第三学習モデル生成部320は、機械学習により、報酬を多くするように動作指令データを調整するための第三学習モデルを生成する。生成された第三学習モデルは、第三学習モデル記憶部330に記憶される。
【0157】
(4-4.機械学習装置400の推定フェーズ407の詳細構成)
機械学習装置400の推定フェーズ407の詳細構成について、
図14を参照して説明する。推定フェーズ407の構成は、第一入力データ取得部130と、第一学習モデル記憶部160と、第四学習モデル記憶部430と、研削品質推定部170と、砥石車表面状態推定部460と、判別部470とを備えて構成される。
【0158】
砥石車表面状態推定部460は、新たな工作物Wの研削を行っている際の所定期間分の第一入力データを推定用入力データとし、第四学習モデル記憶部430に記憶されている第四学習モデルを用いることで、新たな工作物Wの研削を行った場合の砥石車16の表面状態を推定する。ここで、第四学習モデルは、上述したように、第一学習用入力データと、第二教師データとの関係を示すモデルである。
【0159】
そこで、砥石車表面状態推定部460は、砥石車16の表面状態として、工作物Wの研削品質に影響を及ぼす程度を推定する。例えば、砥石車表面状態推定部460は、砥石車16の表面状態として、工作物Wの真円度に対応する第一表面状態、工作物Wの表面性状に対応する第二表面状態、工作物Wのびびり模様状態に対応する第三表面状態、および、工作物Wの加工変質層の状態に対応する第四表面状態を推定する。ただし、砥石車表面状態推定部460は、当該全ての砥石車16の表面状態を推定するのではなく、一部の表面状態のみを推定するようにしてもよい。例えば、砥石車表面状態推定部460は、第一表面状態のみを推定するようにしてもよい。この場合、第一学習モデルが、第一表面状態のみを推定するようなモデルとして生成されていることになる。
【0160】
砥石車表面状態推定部460は、上記のように、表面状態として複数の対象を推定している。機械学習を適用して生成された第四学習モデルを用いることにより、砥石車表面状態推定部460は、複数の対象を容易に推定することができる。このように、機械学習装置400は、複雑化された対象を一度に推定することができる。
【0161】
判別部470は、研削品質推定部170により推定された工作物Wの研削品質に基づいて工作物Wの良否を判別する。さらに、判別部470は、砥石車表面状態推定部460により推定された砥石車16の表面状態に基づいて、砥石車16のツルーイングの実行、砥石車16のドレッシングの実行、および、砥石車16の交換の実行の少なくとも一つを判別する。
【0162】
(4-5.機械学習装置300の更新フェーズ408の詳細構成)
機械学習装置400の更新フェーズ408の詳細構成について
図14を参照して説明する。更新フェーズ408の構成は、動作指令データ取得部111と、研削品質データ取得部140と、砥石車表面状態データ取得部411と、研削サイクル時間演算部440と、砥石車形状情報取得部450と、報酬決定部310と、第三学習モデル記憶部330と、動作指令データ調整部340とを備えて構成される。
【0163】
動作指令データ取得部111、研削品質データ取得部140、および、砥石車表面状態データ取得部411は、新たな工作物Wの研削における各データを取得し、第三学習フェーズ406において説明した内容と実質的に同一である。また、研削サイクル時間演算部440、および、砥石車形状情報取得部450も、第三学習フェーズ406において説明した内容と実質的に同一である。
【0164】
報酬決定部310は、新たな工作物Wの研削において取得した動作指令データ、研削品質データ、および、砥石車16の表面状態データを用いて、報酬を決定する。すなわち、報酬決定部310は、新たな工作物Wの研削に関して、研削品質データおよび砥石車16の表面状態データに応じて、動作指令データに対する報酬を決定する。さらに、報酬決定部310は、研削サイクル時間および砥石車16の形状情報に応じて、動作指令データに対する報酬を決定する。第三学習モデル記憶部330は、第三学習フェーズ406において説明したように、第三学習モデル生成部320によって生成された第三学習モデルを記憶する。
【0165】
動作指令データ調整部340は、新たな工作物Wの研削に関する動作指令データ、新たな工作物Wの研削品質データ、新たな工作物Wの研削を行った場合の砥石車16の表面状態データ、報酬、および、第三学習モデルを用いて、動作指令データの調整方法を決定し、決定した調整方法に基づいて動作指令データの調整を行う。ここで、第三学習モデルは、報酬が多くなるように、調整前の動作指令データから調整後の動作指令データへの調整方法を学習することによって生成されたモデルである。動作指令データ調整部340は、実質的に、第三実施形態で説明した動作指令データ調整部340と同一である。
【0166】
そして、機械学習装置300の機械学習により生成された第三学習モデルを用いて動作指令データが更新される。そのため、研削状態が変化したとしても、動作指令データが現在の研削状態に応じて更新されていく。このように動作指令データが更新されることによって、工作物Wの研削品質を良好とすることができる。
【0167】
さらに、動作指令データが更新されることによって、砥石車の表面状態に応じた研削を行うことができる。すなわち、動作指令データが更新されることによって、砥石車16の表面状態が良好となる。砥石車16の表面状態を良好とすることにより、工作物Wの研削品質を向上させることにつながる。さらに、動作指令データが更新されることによって、砥石車16の交換に要する時間、砥石車16のドレッシングに要する時間、および、砥石車16のツルーイングに要する時間が少なくなる。結果として、研削サイクル時間が短くなる。さらに、動作指令データが更新されることによって、砥石車16の寸法変化が小さくなり、砥石車16の形崩れが小さくなる。
【符号の説明】
【0168】
1:研削盤、2:外部装置、11:ベッド、12:主軸台(構造部材)、12a,14a,15a,16a:モータ(駆動装置)、13:心押台(構造部材)、14:トラバースベース(構造部材、移動体)、15:砥石台(構造部材、移動体)、16:砥石車、17:定寸装置(駆動装置)、17a:装置本体、17b1,17b2:接触子、17c1,17c2:フィンガ、17d:差動トランス、17e:加速度センサ、17f:マイクロフォン、18:砥石車修正装置(駆動装置)、19:クーラント装置、20:制御装置、21,22,23:センサ、23a:検出器、30:実測データ生成部、31:第一次データ生成部、32:第二次データ生成部、33:特定周波数データ生成部、34:第三次データ生成部、40:研削品質データ生成部、100:機械学習装置、101:第一学習フェーズ、102:推定フェーズ、110:動作関連データ取得部、111:動作指令データ取得部、112:実動作データ取得部、120:実測データ取得部、121:第一実測データ取得部、122:第二実測データ取得部、130:第一入力データ取得部、140:研削品質データ取得部、150:第一学習モデル生成部、160:第一学習モデル記憶部、170:研削品質推定部、180:判別部、200:機械学習装置、201:第二学習フェーズ、250:第二学習モデル生成部、260:第二学習モデル記憶部、300:機械学習装置、303:第三学習フェーズ、304:更新フェーズ、310:報酬決定部、320:第三学習モデル生成部、330:第三学習モデル記憶部、340:動作指令データ調整部、400:機械学習装置、405:第一学習フェーズ、406:第三学習フェーズ、407:推定フェーズ、408:更新フェーズ、410:品質データ取得部、411:砥石車表面状態データ取得部、420:第四学習モデル生成部、430:第四学習モデル記憶部、440:研削サイクル時間演算部、450:砥石車形状情報取得部、460:砥石車表面状態推定部、470:判別部、D0:波形データ、D1:第一次データ、D11,D21:特定周波数データ、D2:第二次データ、D31,D32:第三次データ、W:工作物(研削部位)