(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】電気化学デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20240123BHJP
C07D 233/58 20060101ALI20240123BHJP
C07D 233/91 20060101ALI20240123BHJP
C07D 235/06 20060101ALI20240123BHJP
C07D 235/08 20060101ALI20240123BHJP
H01G 11/62 20130101ALI20240123BHJP
H01G 11/64 20130101ALI20240123BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240123BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20240123BHJP
【FI】
H01M10/0567
C07D233/58
C07D233/91
C07D235/06
C07D235/08
H01G11/62
H01G11/64
H01M10/052
H01M10/0568
(21)【出願番号】P 2022531913
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 JP2021023057
(87)【国際公開番号】W WO2021261376
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2020108054
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】大江 秀明
(72)【発明者】
【氏名】三田 洋樹
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111293359(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110518279(CN,A)
【文献】特開2018-118211(JP,A)
【文献】特開2018-167150(JP,A)
【文献】特開2015-165462(JP,A)
【文献】特開2016-178005(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103474696(CN,A)
【文献】特表2020-508542(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0254567(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0567
C07D 233/58
C07D 233/91
C07D 235/06
C07D 235/08
H01G 11/62
H01G 11/64
H01M 10/052
H01M 10/0568
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水系電解液を含む電気化学デバイスであって、
前記非水系電解液は、疎水性基を有していてもよいアゾール系有機分子および金属原子を含有する金属有機構造体を含
み、
前記金属有機構造体は、2Å以上5Å以下の細孔径を有する、電気化学デバイス。
【請求項2】
前記アゾール系有機分子は、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾールおよびプリンからなる群から選択される有機分子である、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項3】
前記疎水性基は、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、フェニル基、ピリジル基およびシアノ基からなる群から選択される置換基である、請求項1または2に記載の電気化学デバイス。
【請求項4】
前記金属原子は、亜鉛原子、コバルト原子、鉄原子、プラセオジム原子、カドミウム原子、水銀原子、銅原子、インジウム原子、マンガン原子、リチウム原子、ホウ素原子からなる群から選択される、請求項1~3のいずれかに記載の電気化学デバイス。
【請求項5】
前記アゾール系有機分子は、下記一般式(1)で表されるイミダゾール系分子、下記一般式(2)で表されるベンズイミダゾール系分子、下記一般式(3)および(4)で表されるトリアゾール系分子、ならびに一般式(5)で表されるおよびプリン系分子である、請求項1~4のいずれかに記載の電気化学デバイス:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
(式(1)~(5)中、R
1~R
3、R
11~R
15、R
21~R
22、R
31~R
32、およびR
41~R
43は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、フェニル基、ピリジル基またはシアノ基である)
【請求項6】
前記非水系電解液中、前記金属有機構造体は分散されている、請求項1~5のいずれかに記載の電気化学デバイス。
【請求項7】
前記金属有機構造体は、2Å以上3Å以下の細孔径を有する、請求項1~
6のいずれかに記載の電気化学デバイス。
【請求項8】
前記非水系電解液は、前記金属有機構造体を該非水系電解液全量に対して、0.1重量%以上50重量%以下の量で含む、請求項1~
7のいずれかに記載の電気化学デバイス。
【請求項9】
前記非水系電解液は有機溶剤および電解質塩をさらに含む、請求項1~
8のいずれかに記載の電気化学デバイス。
【請求項10】
前記電気化学デバイスはリチウムイオン二次電池または電気二重層コンデンサである、請求項1~
9のいずれかに記載の電気化学デバイス。
【請求項11】
前記電気化学デバイスはリチウムイオン二次電池であり、
前記リチウムイオン二次電池はさらに正極および負極を含み、
前記正極および前記負極はリチウムイオンを吸蔵放出可能な層を有する、請求項1~
10のいずれかに記載の電気化学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウムイオン二次電池および電気二重層コンデンサ等の電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、リチウムイオン二次電池および電気二重層コンデンサ等の電気化学デバイスは、正極、負極、セパレータおよび非水系電解液が外装体内に封入された構造を有している。このような電気化学デバイスにおいては、非水系電解液が使用時に酸化し、二酸化炭素などのガスが発生する。そのため、内圧が上昇して膨れが発生し、場合によっては破裂するなど、安全性および信頼性が問題となることが知られている。
【0003】
そこで、特許文献1では、リチウムイオン電池の膨れを防止し安全性を高めるために、気密容器内に吸着材としてゼオライトを、電解液と分離して配置する試みがなされている。
【0004】
一方、特許文献2では、金属有機構造体(MOF)の細孔内に、イオン液体を保持させることにより、イオン液体の融点を用途に応じて制御する試みがなされている。
【0005】
また特許文献3では、リチウム二次電池の電解質の重合開始剤として、重合性反応基を有する金属有機構造体(MOF)を用いることにより、リチウム二次電池の寿命および安全性を向上させる試みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-5496号公報
【文献】国際公開WO2013/161452A1
【文献】特開2016-62895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明の発明者等は、従来の技術では、以下の新たな問題が生じることを見出した。
(1)特許文献1の技術において、ゼオライトなどの多孔性材料は一般に吸水性が高いため、製造時またはそれ以前における水の吸着を避けることができず、電解液と混合すると、Li塩が分解し特性を劣化させる。そのため電解液と分離して配置しているが、電池のサイズが大きくなる上に、構造が複雑になりコストが高い。
(2)特許文献2の技術では、電解液中にMOFを含むが、MOFの細孔内に電解液が存在するため、ガス吸着効果はない。膨れの防止効果は得られない。
(3)特許文献3の技術では、MOFは電解質の重合開始剤として使用されるため、多孔構造が維持されず、ガス吸着効果が小さい。重合性反応基を有するMOFは、その吸水性のため、リチウム塩の分解により電池の性能を低下させる。
【0008】
本発明は、簡易な構造を有しながらも、二酸化炭素等のガスの発生による膨れおよびリチウム塩の分解をより十分に防止することができる、電気化学デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
非水系電解液を含む電気化学デバイスであって、
前記非水系電解液は、疎水性基を有していてもよいアゾール系有機分子および金属原子を含有する金属有機構造体を含む、電気化学デバイスに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電気化学デバイスは、簡易な構造を有しながらも、二酸化炭素等のガスの発生による膨れおよびリチウム塩の分解をより十分に防止することができる。詳しくは、本発明の電気化学デバイスにおいて、電解液に含まれる金属有機構造体は吸水性が低いため、電解液に混ぜてもリチウム塩の分解を起こすことなく、膨れ防止を簡易な構造で実現できる。より詳しくは、電解液の影響を受けずに電気化学デバイスから発生するガスを吸着でき、安全性および信頼性の高い電気化学デバイスを簡易な構造で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の電気化学デバイスの非水系電解液に含まれる金属有機構造体の結晶構造を模式的に示す金属有機構造体の模式図である。
【
図2】本発明の電気化学デバイスの一例としての二次電池の模式的断面図である。
【
図3】本発明の電気化学デバイスの一例としてのコンデンサの模式的断面図である。
【
図4】実施例で測定した二酸化炭素の吸着量の測定方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[電気化学デバイス]
本発明の電気化学デバイスは、電気化学反応を利用した、あらゆるデバイスであってもよく、通常は非水系電解液を含む。そのような電気化学デバイスの具体例として、例えば、二次電池(特にリチウムイオン二次電池)、コンデンサ(特に電気二重層コンデンサ)等が挙げられる。非水系電解液とは、電解質イオンが移動する媒体が水を含まない電解液、すなわち媒体として有機溶媒のみを用いた電解液という意味である。「二次電池」は、その名称に過度に拘泥されるものではなく、例えば、「蓄電デバイス」なども包含し得る。
【0013】
本発明の電気化学デバイスに含まれる非水系電解液は特定の金属有機構造体(すなわち、MOF:Metal-Oraganic Framework)を含む。金属有機構造体は、例えば
図1に示すように、有機分子OMが配位子として金属原子(特に金属原子イオン)MAを架橋して形成された結晶性錯体であって、有機分子と金属原子(特に金属原子イオン)との配位結合に基づく多孔体のことである。本明細書中、図面における各種の要素は、本発明の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観および寸法比などは実物と異なり得る。本明細書で直接的または間接的に用いる“上下方向”、“左右方向”および“表裏方向”はそれぞれ、特記しない限り、図中における上下方向、左右方向および表裏方向に対応した方向に相当する。同じ符号または記号は、特記しない限り、形状が異なること以外、同じ部材または同じ意味内容を示すものとする。
【0014】
本発明において非水系電解液に含まれる金属有機構造体は、疎水性基を有していてもよいアゾール系有機分子および金属原子を含有する金属有機構造体である。ここで重要なことは、当該金属有機構造体を構成する有機分子は、置換基を有さないアゾール系有機分子であるか、または置換基を有したとしても、置換基として疎水性基のみを有するアゾール系有機分子であることである。金属有機構造体を構成する有機分子としてのアゾール系有機分子は、アミノ基、イミノ基、カルボキシル基、カルボキシレート基(すなわちカルボン酸エステル基)、ヒドロキシル基、ケトン基、またはアルデヒド基等の吸水性基(または親水性基)を有さない。このようなアゾール系有機分子を含む金属有機構造体は、耐吸水性を有しながらも、電気化学デバイスから発生するガス(特に二酸化炭素)の吸着性を有することができる。このため、リチウム塩の分解をより十分に防止しながらも、電気化学デバイスから発生するガス(特に二酸化炭素)を吸着して膨れをより十分に防止することができる。詳しくは、当該金属有機構造体の多孔性に基づいて、電気化学デバイスから発生するガス(特に二酸化炭素)を吸着できるため、膨れ防止効果が得られる。これと同時に、当該金属有機構造体は耐吸水性を有するため、電解液に混ぜても塩の分解を起こすことなく、膨れ防止効果を簡易な構造で実現できる。その結果、安全性および信頼性の高い電気化学デバイスを簡易な構造で実現できる。例えば、ゼオライトなどの多孔体は二酸化炭素ガス以外にも水も吸着しやすい。このため、非水系電解液が上記金属有機構造体の代わりに、ゼオライトなどの多孔体を含むと、吸着水との反応により、リチウム塩が分解し、フッ酸が発生し、電極などの部材が劣化する。そのため、リチウムイオン電池や電気二重層コンデンサなどの電気化学デバイスとしての信頼性が低下する。また例えば、金属有機構造体を構成する有機分子が吸水性基(または親水性基)を有すると、当該有機分子が水を吸着するため、ゼオライトなどの多孔体を用いる場合と同様に、吸着水との反応により、リチウム塩が分解し、電極などの部材が劣化し、電気化学デバイスとしての信頼性が低下する。
【0015】
金属有機構造体を構成するアゾール系有機分子は、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾールおよびプリンからなる群から選択される有機分子である。ガス発生による膨れおよびリチウム塩の分解のさらなる防止の観点から、好ましくはイミダゾール、ベンズイミダゾール、およびプリンであり、より好ましくはイミダゾール、およびベンズイミダゾールであり、さらに好ましくはイミダゾールである。
【0016】
アゾール系有機分子が有していてもよい疎水性基は、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、フェニル基、ピリジル基およびシアノ基からなる群から選択される1種以上の置換基である。
アルキル基は、例えば、炭素原子数1以上5以下(特に1以上3以下)のアルキル基である。アルキル基の具体例として、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。
ハロゲン原子として、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0017】
疎水性基は、ガス発生による膨れおよびリチウム塩の分解のさらなる防止の観点から、アルキル基およびニトロ基からなる群から選択されることが好ましく、より好ましくはアルキル基である。
【0018】
金属有機構造体を構成するアゾール系有機分子は、ガス発生による膨れおよびリチウム塩の分解のさらなる防止の観点から、好ましくはアルキル基またはニトロ基を有していてもよいアゾール系有機分子であり、より好ましくはアルキル基を有していてもよいアゾール系有機分子であり、さらに好ましくは疎水性基および吸水性基等の置換基を有さないアゾール系有機分子である。
【0019】
金属有機構造体を構成するアゾール系有機分子として、例えば、下記一般式(1)で表されるイミダゾール系分子、下記一般式(2)で表されるベンズイミダゾール系分子、下記一般式(3)および(4)で表されるトリアゾール系分子、ならびに一般式(5)で表されるプリン系分子が挙げられる。
【0020】
【0021】
式(1)中、R1~R3は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、フェニル基、ピリジル基またはシアノ基であり、ガス発生による膨れおよびリチウム塩の分解のさらなる防止の観点から、好ましくは水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基またはシアノ基である。同様の観点からより好ましい実施態様においては、R1は水素原子、アルキル基、またはニトロ基であり、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、ニトロ基、ハロゲン原子、またはシアノ基である。
【0022】
一般式(1)で表されるイミダゾール系分子の具体例として、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0023】
【0024】
【0025】
式(2)中、R11~R15は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、フェニル基、ピリジル基またはシアノ基であり、ガス発生による膨れおよびリチウム塩の分解のさらなる防止の観点から、好ましくは水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、またはニトロ基である。同様の観点からより好ましい実施態様においては、R11、R14およびR15は水素原子であり、R12およびR13は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、またはニトロ基である。
【0026】
一般式(2)で表されるベンズイミダゾール系分子の具体例として、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0027】
【0028】
【0029】
式(3)中、R21~R22は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、フェニル基、ピリジル基またはシアノ基であり、ガス発生による膨れおよびリチウム塩の分解のさらなる防止の観点から、好ましくは水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、フェニル基、またはニトロ基である。同様の観点からより好ましい実施態様においては、R21は水素原子またはハロゲン原子、ニトロ基であり、R22は水素原子またはハロゲン原子、ニトロ基である。
【0030】
一般式(3)で表されるトリアゾール系分子の具体例として、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0031】
【0032】
【0033】
式(4)中、R31~R32は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、フェニル基、ピリジル基またはシアノ基であり、ガス発生による膨れおよびリチウム塩の分解のさらなる防止の観点から、好ましくは水素原子、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、フェニル基である。同様の観点からより好ましい実施態様においては、R31は水素原子またはハロゲン原子、ニトロ基であり、R32は水素原子またはハロゲン原子、ニトロ基である。
【0034】
一般式(4)で表されるトリアゾール系分子の具体例として、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0035】
【0036】
【0037】
式(5)中、R41~R43は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、フェニル基、ピリジル基またはシアノ基であり、ガス発生による膨れおよびリチウム塩の分解のさらなる防止の観点から、好ましくは水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、フェニル基である。である。同様の観点からより好ましい実施態様においては、R41は水素原子またはニトロ基であり、R42は水素原子またはニトロ基であり、R43は水素原子またはハロゲン原子、ニトロ基である。
【0038】
一般式(5)で表されるプリン系分子の具体例として、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0039】
【0040】
金属有機構造体を構成する金属原子は、亜鉛原子、コバルト原子、鉄原子、プラセオジム原子、カドミウム原子、水銀原子、銅原子、インジウム原子、マンガン原子、リチウム原子、ホウ素原子からなる群から選択され、ガス発生による膨れおよびリチウム塩の分解のさらなる防止の観点から、好ましくは亜鉛原子、コバルト原子および鉄原子からなる群から選択され、より好ましくは亜鉛原子およびコバルト原子からなる群から選択され、さらに好ましくは亜鉛原子である。
【0041】
金属有機構造体における有機分子と金属原子との組み合わせは、特に限定されないが、ガス発生による膨れおよびリチウム塩の分解のさらなる防止の観点から、好ましくは以下の組み合わせである:
組み合わせ(C1)=一般式(1)で表されるイミダゾール系分子と、亜鉛原子および鉄原子からなる群から選択される1種以上の金属原子との組み合わせ;
組み合わせ(C2)=一般式(2)で表されるベンズイミダゾール系分子と、亜鉛原子およびコバルト原子からなる群から選択される1種以上の金属原子との組み合わせ; 組み合わせ(C3)=一般式(3)で表されるトリアゾール系分子と、亜鉛原子およびコバルト原子からなる群から選択される1種以上の金属原子との組み合わせ; 組み合わせ(C4)=一般式(4)で表されるトリアゾール系分子と、亜鉛原子およびコバルト原子からなる群から選択される1種以上の金属原子との組み合わせ; 組み合わせ(C5)=一般式(5)で表されるプリン系分子と、亜鉛原子およびコバルト原子からなる群から選択される1種以上の金属原子との組み合わせ;
組み合わせ(C6)=一般式(1)で表されるイミダゾール系分子および一般式(2)で表されるベンズイミダゾール系分子と、コバルト原子との組み合わせ。
【0042】
金属有機構造体における有機分子と金属原子との比率は、特に限定されないが、通常は、当該金属有機構造体を構成する有機分子の種類および金属原子の種類により決定される。
例えば、イミダゾール系分子(Im)(例えば、一般式(1)で表されるイミダゾール系分子)と、亜鉛原子、コバルト原子、鉄原子、銅原子、マンガン原子、インジウム原子、カドミウム原子、リチウム原子、ホウ素原子からなる群から選択される1種以上の金属原子(M1)を含む金属有機構造体は、組成式:M1(Im)2により表され得る;ここでホウ素原子は必ずしも金属に分類されない場合もあるが、金属有機構造体では金属と同様の性質を有するため、ここでは金属原子と記載している(以下、同様)。
【0043】
また例えば、ベンズイミダゾール系分子(bIm)(例えば、一般式(2)で表されるベンズイミダゾール系分子)と、亜鉛原子、コバルト原子、鉄原子、銅原子、マンガン原子、インジウム原子、カドミウム原子、リチウム原子、ホウ素原子からなる群から選択される1種以上の金属原子(M1)を含む金属有機構造体は、組成式:M1(bIm)2により表され得る。
【0044】
また例えば、トリアゾール系分子(Tra)(例えば、一般式(3)および/または(4)で表されるトリアゾール系分子)と、亜鉛原子、コバルト原子、鉄原子、銅原子、マンガン原子、インジウム原子、カドミウム原子、リチウム原子、ホウ素原子からなる群から選択される1種以上の金属原子(M1)を含む金属有機構造体は、組成式:M1(Tra)2により表され得る。
【0045】
また例えば、プリン系分子(Pur)(例えば、一般式(5)で表されるトリアゾール系分子)と、亜鉛原子、コバルト原子、鉄原子、銅原子、マンガン原子、インジウム原子、カドミウム原子、リチウム原子、ホウ素原子からなる群から選択される1種以上の金属原子(M1)を含む金属有機構造体は、組成式:M1(Pur)2により表され得る。
【0046】
また例えば、イミダゾール系分子(Im)(例えば、一般式(1)で表されるイミダゾール系分子)およびベンズイミダゾール系分子(bIm)(例えば、一般式(2)で表されるベンズイミダゾール系分子)と、亜鉛原子、コバルト原子、鉄原子、銅原子、マンガン原子、インジウム原子、カドミウム原子、リチウム原子、ホウ素原子からなる群から選択される1種以上の金属原子(M1)を含む金属有機構造体は、組成式:M1(Im)x(bIm)y(式中、x+y=2である)により表され得る。
【0047】
また例えば、イミダゾール系分子(Im)(例えば、一般式(1)で表されるイミダゾール系分子)と、亜鉛原子、コバルト原子、鉄原子、銅原子、マンガン原子、インジウム原子、カドミウム原子、リチウム原子、ホウ素原子からなる群から選択される2種以上の金属原子(M1およびM2)を含む金属有機構造体は、組成式:M1M2(Im)4により表され得る。
【0048】
金属有機構造体は、所定の有機分子および所定の金属原子を含む化合物を水溶媒、あるいは有機溶媒中で混合することで合成することができる。粒成長を促進するために、60~150℃に加熱することにより、製造することができる。所定の金属原子を含む化合物としては、硝酸亜鉛、硝酸コバルト、硝酸鉄等が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、メタノール等が挙げられる。
【0049】
金属有機構造体はまた、市販品として入手することもできる。
例えば、上記した組み合わせ(C1)について、2-メチルイミダゾールと亜鉛原子とを組み合わせ含む金属有機構造体は、市販のZIF-8(製品名:BASOLITE Z1200SigmaAldrich社製、組成式:Zn(mIm)2)として入手可能である。
【0050】
本発明において非水系電解液に含まれる金属有機構造体は通常、1Å以上50Å以下の細孔径を有し、ガス発生による膨れおよびリチウム塩の分解のさらなる防止の観点から、好ましくは1Å以上15Å以下、特に好ましくは1.5Å以上5Å以下、より好ましくは2Å以上5Å以下、さらに好ましくは2Å以上3Å以下の細孔径を有する。なお、二酸化炭素の動的分子径は3.3Åであるが、本発明においては金属有機構造体の細孔径が3.3Å未満であっても当該二酸化炭素を吸着または捕捉可能である。しかも、このような金属有機構造体に吸着または捕捉された二酸化炭素は遊離し難い。このことは、金属有機構造体は配位子として有機分子を含み、当該有機分子が有する柔軟性に起因するものと考えられる。このように、細孔径が比較的小さくても二酸化炭素が捕捉され、遊離し難いことは、ガス発生による膨れおよびリチウム塩の分解のさらなる防止により一層、貢献するものと考えられる。
【0051】
細孔径は、金属有機構造体を構成する有機分子および金属原子の種類(特に嵩高さ、大きさ)に依存する。このため、有機分子および金属原子の種類を選択することにより、細孔径を調整することができる。
【0052】
本明細書中、細孔径は、「結晶中の各原子を、ファンデルワールス半径を持つ剛体球としたときに、内包できる最大の球の直径」と定義され、細孔内に分子を何ら含まない状態での細孔径である。従って、細孔径は結晶構造から計算することが可能である。このような細孔径は、以下の文献の表1にdp(Å)として記載されており、当該文献に記載の値を用いることができる:
ANH PHAN et al., “Synthesis, Structure, and Carbon Dioxide Capture Properties of Zeolitic Imidazolate Frameworks”(ACCOUNTS OF CHEMICAL RESEARCH 58 67 January 2010 Vol. 43, No. 1)
【0053】
金属有機構造体は通常、非水系電解液中、0.01μm以上1μm以下の平均粒径を有し、ガス発生による膨れおよびリチウム塩の分解のさらなる防止の観点から、好ましくは0.02μm以上0.5μm以下、より好ましくは0.05μm以上0.2μm以下の平均粒径を有する。
【0054】
金属有機構造体の平均粒径は、顕微鏡写真に基づく任意の100個の金属有機構造体粒子の最大長に関する平均値を用いている。
【0055】
金属有機構造体の含有量は特に限定されず、通常は、非水系電解液全量に対して、0.1重量%以上50重量%以下であり、ガス発生による膨れおよびリチウム塩の分解のさらなる防止の観点から、好ましくは1重量%以上5重量%以下である。非水系電解液は、有機分子の構造および/または金属原子の種類が相互に異なる2種以上の金属有機構造体を含んでもよく、その場合、それらの合計含有量が上記範囲内であればよい。
【0056】
非水系電解液は通常、金属有機構造体以外に、有機溶剤および電解質塩をさらに含む。
【0057】
有機溶剤としては、電気化学デバイスの非水系電解液の分野で従来から公知のあらゆる有機溶剤が挙げられる。有機溶剤の具体例として、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)等、γ一ブチロラクトンの環状カーボネート類;ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルエチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;テトラヒドロフラン、ジオキソラン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
【0058】
有機溶剤の含有量は通常、非水系電解液全量に対して、40重量%以上95重量%以下であり、ガス発生による膨れおよびリチウム塩の分解のさらなる防止の観点から、好ましくは70重量%以上90重量%以下である。
【0059】
電解質塩としては、電気化学デバイスの非水系電解液の分野で従来から公知のあらゆる電解質塩が挙げられる。電解質塩の具体例として、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3等が挙げられる。
【0060】
電解質塩の含有量は通常、非水系電解液全量に対して、5重量%以上25重量%以下であり、ガス発生による膨れおよびリチウム塩の分解のさらなる防止の観点から、好ましくは10重量%以上20重量%以下である。
【0061】
非水系電解液は、電気化学デバイスの非水系電解液の分野で従来から公知のあらゆる添加剤(例えば、バインダー、フィラー等)をさらに含んでもよい。
【0062】
バインダーとして、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン-四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンオキシド、塩化ビニル等が挙げられる。バインダーは、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、上記バインダーを構成するモノマー2種以上から構成された共重合体であってもよい。そのような共重合体として、具体的には、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロピレンとの共重合体等を例示することができる。中でも、電気化学的な安定性といった観点から、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロピレンとの共重合体が好ましい。
【0063】
フィラーとして、Al2O3、SiO2、TiO2、BN(窒化ホウ素)等の耐熱性の高い化合物を含んでいてもよい。
【0064】
非水系電解液は、金属有機構造体、有機溶剤および電解質塩、ならびにその他所望の添加剤を混合することにより、得ることができる。非水系電解液は液体状またはゲル状などの形態を有し得る。
【0065】
[二次電池]
本発明の電気化学デバイスが二次電池である場合、当該二次電池は、上記した非水系電解液以外に、正極、負極およびセパレータ等が外装体内に封入されてなっている。平面視において、二次電池の周縁部には通常、外装体内部に非水系電解液等を保持するためのシール部(封止部)が形成されている。平面視とは、二次電池を載置してその厚み(高さ)方向の真上から見たときの状態のことであり、平面図と同意である。載置は、例えば二次電池の最大面積の面を底面にした載置である。本明細書中、「二次電池」という用語は充電・放電の繰り返しが可能な電池のことを指している。
【0066】
本発明の二次電池10は、例えば
図2に示すように、非水系電解液1、正極2、負極3およびセパレータ4を含み、正極2と負極3とはセパレータ4を介して交互に配置されている。2つの外部端子(図示せず)は集電リード(図示せず)を介して電極(正極または負極)に連結され、結果としてシール部から外部に導出される。非水系電解液1は電極(正極・負極)から放出された金属イオンの移動を助力する。
図2において、二次電池10は、正極2、負極3および正極2と負極3との間に配置されたセパレータ4を平面状に積層した平面積層構造を有しているが、平面積層構造に限定されない。例えば、二次電池は、正極2、負極3および正極2と負極3との間に配置されたセパレータ4をロール状に巻回した巻回構造を有していてもよい。また例えば、二次電池は、正極2、負極3および正極2と負極3との間に配置されたセパレータ4を積層してから折りたたんだ、いわゆるスタックアンドフォールディング構造を有していてもよい。
図2は、本発明の電気化学デバイスの一例としての二次電池の模式的断面図である。
【0067】
正極2は通常、少なくとも正極層および正極集電体(箔)から構成されており、正極集電体の少なくとも片面に正極層が設けられている。例えば、正極2は、正極集電体の両面に正極層が設けられていてもよいし、または正極集電体の片面に正極層が設けられていてもよい。二次電池のさらなる高容量化の観点から好ましい正極2は正極集電体の両面に正極層が設けられている。正極層には正極活物質が含まれている。
【0068】
負極3は通常、少なくとも負極層および負極集電体(箔)から構成されており、負極集電体の少なくとも片面に負極層が設けられている。例えば、負極3は、負極集電体の両面に負極層が設けられていてもよいし、または負極集電体の片面に負極層が設けられていてもよい。二次電池のさらなる高容量化の観点から好ましい負極3は負極集電体の両面に負極層が設けられている。負極層には負極活物質が含まれている。
【0069】
正極層に含まれる正極活物質および負極層に含まれる負極活物質は、二次電池において電子の受け渡しに直接関与する物質であり、充放電、すなわち電池反応を担う正負極の主物質である。より具体的には、「正極層に含まれる正極活物質」および「負極層に含まれる負極活物質」に起因して非水系電解液にイオンがもたらされ、かかるイオンが正極と負極との間で移動して電子の受け渡しが行われて充放電がなされる。正極層および負極層は特にリチウムイオンを吸蔵放出可能な層であることが好ましい。つまり、非水系電解液を介してリチウムイオンが正極と負極との間で移動して電池の充放電が行われる二次電池が好ましい。充放電にリチウムイオンが関与する場合、本実施態様に係る二次電池は、いわゆる“リチウムイオン二次電池”に相当する。
【0070】
正極層の正極活物質は例えば粒状体から成るところ、粒子同士の十分な接触と形状保持のためにバインダーが正極層に含まれていることが好ましい。更には、電池反応を推進する電子の伝達を円滑にするために導電助剤が正極層に含まれていることも好ましい。同様にして、負極層の負極活物質は例えば粒状体から成るところ、粒子同士の十分な接触と形状保持のためにバインダーが含まれることが好ましく、電池反応を推進する電子の伝達を円滑にするために導電助剤が負極層に含まれていてもよい。このように、複数の成分が含有されて成る形態ゆえ、正極層および負極層はそれぞれ“正極合材層”および“負極合材層”などと称すこともできる。
【0071】
正極活物質は、リチウムイオンの吸蔵放出に資する物質であることが好ましい。かかる観点でいえば、正極活物質は例えばリチウム含有複合酸化物であることが好ましい。より具体的には、正極活物質は、リチウムと、コバルト、ニッケル、マンガンおよび鉄から成る群から選択される少なくとも1種の遷移金属とを含むリチウム遷移金属複合酸化物であることが好ましい。つまり、本実施態様に係る二次電池の正極層においては、そのようなリチウム遷移金属複合酸化物が正極活物質として好ましくは含まれている。例えば、正極活物質はコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、チタン酸リチウム、または、それらの遷移金属の一部を別の金属で置き換えたものであってよい。このような正極活物質は、単独種として含まれてよいものの、二種以上が組み合わされて含まれていてもよい。より好適な態様では正極層に含まれる正極活物質がコバルト酸リチウムとなっている。
【0072】
正極層に含まれ得るバインダーとしては、特に制限されるわけではないが、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド-テトラフルオロチレン共重合体およびポリテトラフルオロチレンなどから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。正極層に含まれ得る導電助剤としては、特に制限されるわけではないが、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックおよびアセチレンブラック等のカーボンブラック、銅、ニッケル、アルミニウムおよび銀等の金属粉末、ならびに、ポリフェニレン誘導体などから選択される少なくとも1種を挙げることができる。より好適な態様では正極層のバインダーはポリフッ化ビニリデンであり、また、別のより好適な態様では正極層の導電助剤はカーボンブラックである。さらに好適な態様では、正極層のバインダーおよび導電助剤が、ポリフッ化ビニリデンとカーボンブラックとの組合せとなっている。
【0073】
負極活物質は、リチウムイオンの吸蔵放出に資する物質であることが好ましい。かかる観点でいえば、負極活物質は例えば各種の炭素材料、酸化物、または、リチウム合金などであることが好ましい。
【0074】
負極活物質の各種の炭素材料としては、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)、ハードカーボン、ダイヤモンド状炭素などを挙げることができる。特に、黒鉛は電子伝導性が高く、負極集電体との接着性が優れる点などで好ましい。負極活物質の酸化物としては、酸化シリコン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛および酸化リチウムなどから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。負極活物質のリチウム合金は、リチウムと合金形成され得る金属であればよく、例えば、Al、Si、Pb、Sn、In、Bi、Ag、Ba、Ca、Hg、Pd、Pt、Te、Zn、Laなどの金属とリチウムとの2元、3元またはそれ以上の合金であってよい。このような酸化物は、その構造形態としてアモルファスとなっていることが好ましい。結晶粒界または欠陥といった不均一性に起因する劣化が引き起こされにくくなるからである。より好適な態様では負極層の負極活物質が人造黒鉛となっている。
【0075】
負極層に含まれ得るバインダーとしては、特に制限されるわけではないが、スチレンブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド系樹脂およびポリアミドイミド系樹脂から成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。より好適な実施態様では負極層に含まれるバインダーはスチレンブタジエンゴムとなっている。負極層に含まれ得る導電助剤としては、特に制限されるわけではないが、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックおよびアセチレンブラック等のカーボンブラック、銅、ニッケル、アルミニウムおよび銀等の金属粉末、ならびに、ポリフェニレン誘導体などから選択される少なくとも1種を挙げることができる。なお、負極層には、電池製造時に使用された増粘剤成分(例えばカルボキシルメチルセルロース)に起因する成分が含まれていてもよい。
【0076】
さらに好適な態様では、負極層における負極活物質およびバインダーが人造黒鉛とスチレンブタジエンゴムとの組合せとなっている。
【0077】
正極および負極に用いられる正極集電体および負極集電体は電池反応に起因して活物質で発生した電子を集めたり供給したりするのに資する部材である。このような集電体は、シート状の金属部材であってよく、多孔または穿孔の形態を有していてよい。例えば、集電体は金属箔、パンチングメタル、網またはエキスパンドメタル等であってよい。正極に用いられる正極集電体は、アルミニウム、ステンレスおよびニッケル等から成る群から選択される少なくとも1種を含んだ金属箔から成るものが好ましく、例えばアルミニウム箔であってよい。一方、負極に用いられる負極集電体は、銅、ステンレスおよびニッケル等から成る群から選択される少なくとも1種を含んだ金属箔から成るものが好ましく、例えば銅箔であってよい。
【0078】
セパレータ4は、正負極の接触による短絡防止および非水系電解液保持などの観点から設けられる部材である。換言すれば、セパレータは、正極と負極との間の電子的接触を防止しつつイオンを通過させる部材であるといえる。好ましくは、セパレータは多孔性または微多孔性の絶縁性部材であり、その小さい厚みに起因して膜形態を有している。あくまでも例示にすぎないが、ポリオレフィン製の微多孔膜がセパレータとして用いられてよい。この点、セパレータとして用いられる微多孔膜は、例えば、ポリオレフィンとしてポリエチレン(PE)のみ又はポリエチレン(PP)のみを含んだものであってよい。更にいえば、セパレータは、“PE製の微多孔膜”と“PP製の微多孔膜”とから構成される積層体であってもよい。
【0079】
外装体5はフレキシブルパウチ(軟質袋体)であることが好ましいが、ハードケース(硬質筐体)であってもよい。外装体5がフレキシブルパウチである場合、フレキシブルパウチは通常、ラミネートフィルムから形成され、周縁部をヒートシールすることにより、シール部を形成する。ラミネートフィルムとしては、金属箔とポリマーフィルムを積層したフィルムが一般的であり、具体的には、外層ポリマーフィルム/金属箔/内層ポリマーフィルムから成る3層構成のものが例示される。外層ポリマーフィルムは水分等の透過および接触等による金属箔の損傷を防止するためのものであり、ポリアミドおよびポリエステル等のポリマーが好適に使用できる。金属箔は水分およびガスの透過を防止するためのものであり、銅、アルミニウム、ステンレス等の箔が好適に使用できる。内層ポリマーフィルムは、内部に収納する電解質から金属箔を保護するとともに、ヒートシール時に溶融封口させるためのものであり、ポリオレフィンまたは酸変性ポリオレフィンが好適に使用できる。ラミネートフィルムの厚さは特に限定されず、例えば、1μm以上1mm以下が好ましい。例えば
図2に示す二次電池10において、外装体5はフレキシブルパウチであり、下位フィルム5aと上位フィルム5bは、平面視におけるその周縁部でヒートシールされている。
【0080】
外装体6がハードケースである場合、ハードケースは通常、金属板から形成され、周縁部をレーザー照射することにより、シール部を形成する。金属板としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、銅、ステンレスなどからなる金属材料が一般的である。金属板の厚さは特に限定されず、例えば、1μm以上1mm以下が好ましい。
【0081】
二次電池は以下の方法により製造することができる。
まず、正極2および負極3を作製する。詳しくは、正極2は、正極活物質およびバインダー等を共に混合し、有機溶剤を加えてスラリーを作製し、スラリーを任意の塗工方法で正極集電体上に塗工し、乾燥させることにより、得ることができる。負極3は、負極活物質およびバインダー等を共に混合し、有機溶剤を加えてスラリーを作製し、スラリーを任意の塗工方法で負極集電体上に塗工し、乾燥させることにより、得ることができる。二次電池の正極および負極の製造のためのスラリーに含有される有機溶剤は特に限定されるものではなく、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、γ-ブチロラクトン等の塩基性溶媒、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ニトロベンゼン、アセトン等の非水溶媒、メタノール、エタノール等のプロトン性溶媒等の有機溶剤を使用することができる。
次いで、正極2に正極リード(図示せず)を取り付け、負極3に負極リード(図示せず)を取り付け、セパレータ4を介して正極2と負極3とを積層し、積層電極体を形成する。必要により、積層電極体を巻回して、捲回電極体を作製した後、巻回電極体の最外周部に保護テープを貼り付ける。
熱融着法等を用いて、外装体5(5a、5b)の平面視における外周縁部の内の一辺の外周縁部を除いた残りの外周縁部を接着し、袋状の外装体を形成する。この内部に積層電極体または巻回電極体を収納する。
袋状の外装体の内部に非水系電解液1を注入した後、熱融着法等を用いて外装体を密封する。
必要に応じてモノマー熱重合などのための熱処理を行ってもよい。
【0082】
[電気二重層コンデンサ]
本発明の電気化学デバイスが電気二重層コンデンサである場合、当該電気二重層コンデンサは、上記した非水系電解液以外に、正極、負極およびセパレータ等が外装体内に封入されてなっている。
図3に示すように、外装体27は、正極ケース27aと負極ケース27bとを有し、これら正極ケース27aおよび負極ケース27bは、いずれも円盤状の薄板形状に形成されている。正極ケース27aの底部中央には、正極活物質(電極活物質)および導電剤を含有した正極22が配されている。すなわち、正極22は、正極集電体上に正極活物質(電極活物質)および導電剤を含有した混合物がシート状に成形されている。そして、正極22上には微多孔膜、織布、不織布などの多孔性のシート又はフィルムで形成されたセパレータ24が積層され、さらにセパレータ24には負極23が積層されている。すなわち、負極23は、正極22と同様、負極活物質(電極活物質)および導電剤を含有した混合物が金属製の負極集電体25上にシート状に成形されている。そして、負極23はセパレータ24を介して正極22と対向状に配されると共に、負極集電体25には金属製ばね26が載置されている。そして、非水系電解液21が内部空間に充填されると共に、負極ケース27bは金属製ばね26の付勢力に抗して正極ケース27aに固着され、ガスケット28を介して封止されている。
図3は、本発明に係る電気二重層コンデンサの一実施形態としてのコイン型電気二重層コンデンサを模式的に示す模式的断面図である。
【0083】
電気二重層コンデンサ20では、正極22および負極23間に電圧を印加する前は、非水系電解液21中の荷電粒子は該非水系電解液21中を不規則に分布する。一方、正極22および負極23間に電圧が印加されると、正極(正極活物質)22と非水系電解液21との界面には正極22中の正イオンと非水系電解液21中の負イオンとが対となって分布する。また、負極(負極活物質)23と非水系電解液21との界面には負極23中の負イオンと非水系電解液21中の正イオンとが対となって分布する。その結果、正極22側の非水系電解液21との接触界面では正イオンと負イオンが層状に分布し、負極23側の非水系電解液21との接触界面では負イオンと正イオンが層状に分布し、これらにより大きな表面積を有する電気二重層が形成される。
【0084】
正極活物質としては、電気二重層コンデンサの分野で正極活物質として使用可能なあらゆる物質が使用可能である。正極活物質の具体例として、例えば、活性炭等が挙げられる。
【0085】
負極活物質としては、電気二重層コンデンサの分野で負極活物質として使用可能なあらゆる物質が使用可能である。負極活物質の具体例として、例えば、炭素等が挙げられる。
【0086】
正極および負極に含まれ得る導電剤としては特に限定されるものでなく、例えば、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素質微粒子、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等の炭素繊維、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセン等の導電性高分子などを使用することができる。導電剤は単独で、あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0087】
正極および負極は、それぞれ独立して、バインダーを含んでもよい。バインダーとしては、電気二重層コンデンサの正極および負極の分野でバインダーとして使用可能なあらゆるバインダーが使用可能である。そのようなバインダーの具体例として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンオキサイド、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエン共重合体、ポリアクリル酸メチル等が挙げられる。バインダーは単独で、あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0088】
セパレータ24は、二次電池のセパレータ4と同様の範囲内から選択されてもよい。
【0089】
電気二重層コンデンサは以下の方法により製造することができる。
まず、正極22および負極23を作製する。詳しくは、正極22は、正極活物質、導電剤およびバインダー等を共に混合し、有機溶剤を加えてスラリーを作製し、スラリーを任意の塗工方法で正極集電体上に塗工し、乾燥させることにより、得ることができる。負極23は、負極活物質、導電剤およびバインダー等を共に混合し、有機溶剤を加えてスラリーを作製し、スラリーを任意の塗工方法で負極集電体上に塗工し、乾燥させることにより、得ることができる。電気二重層コンデンサの正極および負極の製造のためのスラリーに含有される有機溶剤は特に限定されるものではなく、例えば、二次電池の正極および負極の製造のためのスラリーに含有される有機溶剤と同様の有機溶剤が使用されてもよい。
次いで、正極22を非水系電解液21に含浸させ、さらに非水系電解液21を含浸させたセパレータ24を介して正極22と対向するように負極23および負極集電体25を配し、その後内部空間に非水系電解液21を注入する。そして、負極集電体25上に金属製ばね26を着座させると共に、ガスケット28を周縁に配し、かしめ機等で負極ケース27bを正極ケース27aに固着して外装封止し、これによりコイン型電気二重層コンデンサが作製される。
【0090】
本実施態様の電気二重層コンデンサは、コイン型電気二重層コンデンサについて説明したが、形状は特に限定されるものでない。電気二重層コンデンサは、円筒型、角型、シート型等であってもよい。また、外装体27も特に限定されず、金属ケースや、モールド樹脂、アルミラミネートフイルム等を使用してもよい。
【実施例】
【0091】
[非水系電解液の製造]
(実施例1)
・有機溶剤:EC/PC(質量比:1/1)
・リチウム塩:LiPF6 1.0モル/有機溶剤1kg
上記した有機溶剤およびリチウム塩に、全量に対して2重量%のZIF-4(試料)を混合し、超音波ホモジナイザーにより十分に攪拌し、非水系電解液を得た。非水系電解液中、リチウム塩は溶解されており、試料は分散されている。
【0092】
(実施例2~6および比較例1~4)
試料を表に記載の試料に変更したこと以外、実施例1と同様の方法により、非水系電解液を得た。
【0093】
詳しくは、実施例1で使用された「ZIF-4」は、本発明で使用される金属有機構造体の範疇に包含される物質であり、詳しくは、イミダゾールと亜鉛原子との金属有機構造体である(平均粒子径0.2μm)。この金属有機構造体は、イミダゾール0.15MのN.N-ジメチルホムムアミド溶液60mLおよび硝酸亜鉛0.15MのN.N-ジメチルホムムアミド溶液20mLを混合しステンレスジャケット中で100℃24時間加熱し析出させることにより得た。
【0094】
実施例2で使用された「ZIF-7」は、本発明で使用される金属有機構造体の範疇に包含される物質であり、詳しくは、ベンズイミダゾールと亜鉛原子との金属有機構造体である(平均粒子径0.2μm)。この金属有機構造体は、ベンズイミダゾール0.2MのN.N-ジメチルホムムアミド溶液60mLおよび硝酸亜鉛0.2MのN.N-ジメチルホムムアミド溶液20mLを混合しステンレスジャケット中で140℃24時間加熱し析出させることにより得た。
【0095】
実施例3で使用された「ZIF-8」は、本発明で使用される金属有機構造体の範疇に包含される物質であり、詳しくは、2-メチルイミダゾールと亜鉛原子との金属有機構造体である(平均粒子径0.2μm)。この金属有機構造体は、2-メチルイミダゾール0.2Mの水溶液60mLおよび硝酸亜鉛0.2Mの水溶液20mLを混合し室温で24時間加熱し析出させることにより得た。
【0096】
実施例4で使用された「ZIF-9」は、本発明で使用される金属有機構造体の範疇に包含される物質であり、詳しくは、ベンズイミダゾールとコバルト原子との金属有機構造体である(平均粒子径0.2μm)。この金属有機構造体は、ベンズイミダゾール0.2MのN.N-ジメチルホムムアミド溶液60mLおよび硝酸コバルト0.2MのN.N-ジメチルホムムアミド溶液20mLを混合しステンレスジャケット中で140℃24時間加熱し析出させることにより得た。
【0097】
実施例5で使用された「ZIF-75」は、本発明で使用される金属有機構造体の範疇に包含される物質であり、詳しくは、2-ニトロイミダゾールおよび2-メチルベンズイミダゾールとコバルト原子との金属有機構造体である(平均粒子径0.2μm)。この金属有機構造体は、ニトロイミダゾール0.15Mと0.15M 2-メチルベンズイミダゾールのN.N-ジメチルホムムアミド溶液60mL、および硝酸コバルト0.2MのN.N-ジメチルホムムアミド溶液20mLを混合しステンレスジャケット中で85℃24時間加熱し析出させることにより得た。
【0098】
実施例6で使用された「Fe(Im)2」は、本発明で使用される金属有機構造体の範疇に包含される物質であり、詳しくは、イミダゾールと鉄原子との金属有機構造体である(平均粒子径0.2μm)。この金属有機構造体は、イミダゾール0.2MのN.N-ジメチルホムムアミド溶液60mLおよび硝酸鉄0.2MのN.N-ジメチルホムムアミド溶液20mLを混合しステンレスジャケット中で140℃24時間加熱し析出させることにより得た。
【0099】
比較例1で使用された「Cu-BTC」は、いわゆる金属有機構造体の範疇に包含される物質であるが、本発明で使用される金属有機構造体の範疇に包含されない物質(詳しくは、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸と銅原子との金属有機構造体)であり(平均粒子径0.2μm)、置換基としてカルボキシル基(吸水性基)を有している。
【0100】
比較例2で使用された「CPO-27-Zn」は、いわゆる金属有機構造体の範疇に包含される物質であるが、本発明で使用される金属有機構造体の範疇に包含されない物質(詳しくは、2,5-ジオキシド-1,4-ベンゼン-ジカルボキシレートと亜鉛原子との金属有機構造体)であり(平均粒子径0.2μm)、置換基としてカルボキシレート基(吸水性基)を有している。
【0101】
比較例3で使用された「Zn(Adenine)」は、いわゆる金属有機構造体の範疇に包含される物質であるが、本発明で使用される金属有機構造体の範疇に包含されない物質(詳しくは、下記一般式で表される、プリン系分子と亜鉛原子との金属有機構造体)であり(平均粒子径0.2μm)、置換基としてアミノ基(吸水性基)を有している。
【0102】
【0103】
比較例4で使用された「4A型ゼオライト」は、いわゆる金属有機構造体の範疇に包含されない物質であり(平均粒子径0.2μm)、詳しくは、有機分子を含まない無機構造体である。
【0104】
[評価]
(CO
2吸着量)
図4に示す方法に従って、非水系電解液のCO
2吸着量を測定した。詳しくは、以下の通りである。
(1)測定用外装体51を準備した。外装体51は、平面視において、2枚の矩形ラミネートフィルムの三方の外周縁部と中央部60をヒートシールすることにより得た。中央部60のシール部を形成することにより、ガス吸着室51aおよびガス注入室51bを設けた。中央部60のシール部の形成に際しては、CO
2ガスを後述のように移動させるための非シール部61を設けた。ガス注入室51bには、ガスを注入するための注入口52を設けた。
【0105】
(2)外装体51を中央部60のヒートシール部分で折り返し、ガス吸着室51aの開口部より、各実施例/比較例で得られた非水系電解液2mLを注入した。なお、ガス吸着室51aおよびガス注入室51bの下部ではクリップ53により、両室の内容物についての相互の移動を制限した。
(3)ガス吸着室51aの開口部をヒートシールし、秤量した。クリップ53、ガス注入口52および試験体(すなわち電解液封入外装体)を含む重量と、クリップ53とガス注入口52の重量より、試験体のみの重量Wsを算出した。
【0106】
(4)ガス注入室51bに、ガス注入口52より、CO2ガス(1.5mL)を注入した。
(5)ガス注入室51bにおけるガス注入口52の近傍部55をヒートシールすることにより、ガス漏れを防止した。
(6)アルキメデスの原理に従って、クリップ53を備えた試験体の体積(V1)を測定した。
(7)クリップ53を外し、CO2ガスをガス注入室51bからガス吸着室51aに移動させ、CO2ガスの吸着を十分に行った。
(8)CO2ガスの吸着後、アルキメデスの原理に従って、クリップ53を備えた試験体の体積(V2)を測定した。
【0107】
以上の方法で測定された値より、以下の式に従って、ガス吸着量を算出し、以下の基準に従って評価した。
ガス吸着量(mL/g)=(V1-V2)/Ws
【0108】
◎:40mL/g≦ガス吸着量(最良);
○:30mL/g≦ガス吸着量<40mL/g(優良);
△:10mL/g≦ガス吸着量<30mL/g(実用上問題なし);
×:ガス吸着量<10mL/g(実用上問題あり)。
【0109】
(H2O吸着量)
各実施例/比較例で使用された試料を用いた、BELSORP MAXII(マイクロトラック・ベル社製)により、H2O吸着量を測定し、以下の基準に従って評価した。
【0110】
◎:H2O吸着量≦1.0mL/g(最良);
○:1.0mL/g<H2O吸着量≦10.0mL/g(優良);
△:10.0mL/g<H2O吸着量≦15.0mL/g(実用上問題なし);
×:15.0mL/g<H2O吸着量(実用上問題あり)。
【0111】
(リチウム塩の分解率)
各実施例/比較例で得られた非水系電解液を、ドライルーム中の80℃恒温槽で3日間保管した。
保管3日後の非水系電解液(すなわち分散液)を遠心分離機(15,000rpm,30分間)に供し、試料(例えばゼオライトあるいはMOF)と上澄み液とを分離させ、上澄み溶液を回収することで、サンプル溶液を得た。
このサンプル溶液のFT-IRスペクトルを測定し、LiPF6のP-F結合のピークである840cm-1ピークと、カーボネートのエーテル結合のピークである1070cm-1ピークとのピーク強度比から、リチウム塩の分解率を得た。分解率を以下の基準に従って評価した。
【0112】
◎:分解率=0%(最良);
○:0%<分解率≦1.0%(優良);
△:1.0%<分解率≦2.0%(実用上問題なし);
×:2.0%<分解率(実用上問題あり)。
【0113】
【0114】
各実施例/比較例で得られた非水系電解液を用いて二次電池を製造したところ、当該二次電池は二次電池本来の機能を有していた。
【0115】
各実施例/比較例で得られた非水系電解液を用いて電気二重層コンデンサを製造したところ、当該電気二重層コンデンサは電気二重層コンデンサ本来の機能を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明に係る電気化学デバイスは、電池使用または蓄電が想定される様々な分野に利用することができる。あくまでも例示にすぎないが、本発明に係る電気化学デバイス、特に二次電池および電気二重層コンデンサは、エレクトロニクス実装分野で用いることができる。本発明の一実施形態に係る電気化学デバイスはまた、モバイル機器などが使用される電気・情報・通信分野(例えば、携帯電話、スマートフォン、ノートパソコン、デジタルカメラ、活動量計、アームコンピューター、電子ペーパー、ウェアラブルデバイス、RFIDタグ、カード型電子マネー、スマートウォッチなどの小型電子機などを含む電気・電子機器分野あるいはモバイル機器分野)、家庭・小型産業用途(例えば、電動工具、ゴルフカート、家庭用・介護用・産業用ロボットの分野)、大型産業用途(例えば、フォークリフト、エレベーター、湾港クレーンの分野)、交通システム分野(例えば、ハイブリッド車、電気自動車、バス、電車、電動アシスト自転車、電動二輪車などの分野)、電力系統用途(例えば、各種発電、ロードコンディショナー、スマートグリッド、一般家庭設置型蓄電システムなどの分野)、医療用途(イヤホン補聴器などの医療用機器分野)、医薬用途(服用管理システムなどの分野)、ならびに、IoT分野、宇宙・深海用途(例えば、宇宙探査機、潜水調査船などの分野)に利用することができる。
【符号の説明】
【0117】
1:非水系電解液
2:正極
3:負極
4:セパレータ
5:外装体
10:二次電池
20:電気二重層コンデンサ
21:非水系電解液
22:正極
23:負極
24:セパレータ
27:外装体