(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】ブラシレスモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/167 20060101AFI20240123BHJP
H02K 7/08 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
H02K5/167 A
H02K7/08 Z
(21)【出願番号】P 2022553476
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2021024719
(87)【国際公開番号】W WO2022070538
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2020166697
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 修
(72)【発明者】
【氏名】古屋 美幸
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-023782(JP,U)
【文献】特開2007-318985(JP,A)
【文献】特開2001-157407(JP,A)
【文献】特開2005-168264(JP,A)
【文献】特開平11-275806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/167
H02K 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト、前記シャフトを保持するとともに前記シャフトの周面を覆うロータヨーク、および、前記ロータヨークの外周に配置された永久磁石を備えたロータと、
前記ロータの外周側に配置されたステータと、
前記シャフトを回転可能に保持する軸受け部材と、
前記軸受け部材における前記ロータヨークが前記シャフトを保持する側の端部に配置され、前記ロータヨークに対する吸引力を発生する吸引力発生部材と、
前記吸引力を補助する吸引力補助部材と、
前記シャフトにおける前記ロータヨークに保持される端部と反対側の先端に当接し、前記シャフトの軸方向に沿った前記ロータの位置を調整して、前記ロータヨークと前記ステータとの前記軸方向の離間距離を調整する位置調整部材と、
を備える、ブラシレスモータ。
【請求項2】
前記吸引力発生部材は、前記ロータヨークに対向して配置された吸引磁石であり、
前記吸引力補助部材は、前記吸引磁石に対して前記ロータヨークと反対側に配置された吸引用ヨークである、
請求項1に記載のブラシレスモータ。
【請求項3】
前記ロータヨークは、
前記シャフトの周面に平行な円筒状の主体部と、
前記シャフトを保持する保持部と、
前記主体部と前記保持部とを接続し、前記シャフトの延びる方向に直交する面を有する接続部と、
を備え、
前記吸引磁石は、前記接続部に対向する、
請求項2に記載のブラシレスモータ。
【請求項4】
前記吸引磁石および前記吸引用ヨークは、環形である、
請求項3に記載のブラシレスモータ。
【請求項5】
前記ステータを囲む筐体を備え、
前記位置調整部材は、前記筐体に対して螺合する部材である、
請求項1に記載のブラシレスモータ。
【請求項6】
前記位置調整部材は、前記筐体の内側に配置される、
請求項5に記載のブラシレスモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片軸構造のブラシレスモータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、片軸構造のブラシレスモータが記載されている。
【0003】
特許文献1に記載のブラシレスモータは、ロータ、ステータ、および、予圧調整機構を備える。
【0004】
予圧調整機構は、ヘリコイド方式で摺動する機構を備える。使用によって、摺動用のボールが摩耗すると、シャフトを支持する底板をねじ込むことで、予圧調整機構を調整し、シャフトの位置を補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば回転対象物がファン等の場合、ロータをステータから引き離す力(スラスト発生力)が大きく、特許文献1に示すような従来の構成では、ロータのスラスト移動を抑制することは難しい。
【0007】
したがって、本発明の目的は、スラスト発生力が大きくても、ロータのスラスト移動をより確実に抑制できるブラシレスモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のブラシレスモータは、ロータ、ステータ、軸受け部材、吸引発生部材、および、吸引力補助部材を備える。ロータは、シャフト、シャフトを保持するとともにシャフトの周面を覆うロータヨーク、および、ロータヨークの外周に配置された永久磁石を備える。ステータは、ロータの外周側に配置される。軸受け部材は、シャフトを回転可能に保持する。吸引力発生部材は、軸受け部材におけるロータヨークがシャフトを保持する側の端部に配置され、ロータヨークに対する吸引力を発生する。吸引力補助部材は、吸引力を補助する。
【0009】
この構成では、ロータヨークに対する吸引力を高くできる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、ロータのスラスト移動をより確実に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るブラシレスモータ10の外観斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係るブラシレスモータ10の構成を示す側面断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係るステータアッシー20の構成を示す側面断面図である。
【
図4】
図4(A)は、ロータ30の分解斜視図であり、
図4(B)は、ロータ30の構成を示す側面断面図である。
【
図5】
図5(A)、
図5(B)は、ロータ30とステータ40との近接部の拡大図である。
【
図6】
図6は、ロータ30とステータ40との離間距離と磁気吸引力との関係を示すグラフである。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係るブラシレスモータ10の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、本発明のブラシレスモータ10の利用例であるポンプ1の構成例を示す側面断面図である。
【
図9】
図9は、インペラー90の回転数に対するロータ30とステータ40との間の必要吸引力の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係るブラシレスモータ、ステータアッシー、および、これらの製造方法について、図を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るブラシレスモータ10の外観斜視図である。
図2は、本発明の実施形態に係るブラシレスモータ10の構成を示す側面断面図である。
図3は、本発明の実施形態に係るステータアッシー20の構成を示す側面断面図である。
図4(A)は、ロータ30の分解斜視図であり、
図4(B)は、ロータ30の構成を示す側面断面図である。
【0014】
(ブラシレスモータ10の概略構成)
図1、
図2に示すように、ブラシレスモータ10は、ステータアッシー20、および、ロータ30を備える。ステータアッシー20およびロータ30の具体的な構造は後述する。
【0015】
ステータアッシー20は、開口234を有する。ロータ30は、開口234から、ステータアッシー20の内部に挿入される。ブラシレスモータ10(ステータアッシー20)を平面視して、開口234は、ステータ40の中央空間と重なっている。これにより、ロータ30は、ステータ40の内側に配置される。言い換えれば、ステータ40は、ロータ30の外周側に配置される。
【0016】
ロータ30のシャフト33の延びる方向の一方端は、ステータアッシー20の開口234側から外部に突出している。ロータ30のシャフト33の延びる方向の他方端は、ステータアッシー20によって回転可能に支持されている。
【0017】
この構成において、ステータ40に与える信号を制御することで、ロータ30の回転は、制御される。これにより、ブラシレスモータ10は、インナーロータ型で片軸構造のブラシレスモータを実現する。
【0018】
(ステータアッシー20の具体的な構成)
図1、
図2、
図3に示すように、ステータアッシー20は、筐体21、絶縁性樹脂24、軸用蓋部材25、軸受け26、吸引磁石27、ヨーク28、および、ステータ40を備える。
【0019】
筐体21は、第1筐体部材22および第2筐体部材23を備える。第1筐体部材22および第2筐体部材23は、SUS等の剛性の高い材料からなる。
【0020】
第1筐体部材22は、主壁221、側壁222、および、内部壁223を備える。主壁221は、平面視して、円形である。側壁222は、円筒形であり、主壁221の外周端に沿って形成され、主壁221の主面に直交する方向に延びる形状である。
【0021】
内部壁223は円筒形であり、主壁221の中央に形成され、主壁221の主面に直交する方向に延びる形状である。内部壁223は、円筒形の両側で開口する中空部225を有する。主壁231には、中空部225と重なる領域に開口を有する。したがって、中空部225は、第1筐体部材22における主壁231側の外部にも連通する。
【0022】
主壁221、側壁222、および、内部壁223が上述の構成であることによって、第1筐体部材22は、主壁221、側壁222、および、内部壁223によって囲まれる空間224を有する。空間224は、平面視して環状であり、主壁221側と反対側で開口する。
【0023】
第2筐体部材23は、主壁231と側壁232とを備える。主壁231は、平面視して円形である。側壁232は、平面視して円筒形である。側壁232は、円筒形であり、主壁231の外周端に沿って形成され、主壁231の主面に直交する方向に延びる形状である。これにより、第2筐体部材23は、主壁231と側壁232とによって囲まれる空間235を有する。空間235は、平面視において円形であり、主壁231側と反対側で開口する。
【0024】
主壁231は、主壁231を厚み方向に貫通する開口234を、中央に有する。開口234は、空間235に連通する。開口234は、平面視して円形である。開口234の外形は、ロータ30を平面視した外形(シャフト33の一方端または他方端側から視た外形)に対して相似形である。開口234の面積は、ロータ30が挿入可能な面積であり、例えば、ステータ40の中央空間の平面面積程度である。
【0025】
また、主壁231は、複数の孔236を有する。複数の孔236は、主壁231を厚み方向に貫通し、空間235に連通する。複数の孔236は、開口234の外周に沿って配置される。
【0026】
第1筐体部材22と第2筐体部材23とは、互いに組み付けられる。より具体的には、第1筐体部材22は、空間224の開口が第2筐体部材23側に向くように、第2筐体部材23は、空間235の開口が第1筐体部材22側に向くように、配置される。そして、第2筐体部材23は、側壁232の外壁が第1筐体部材22の側壁222の内壁面2221に当接するように、第1筐体部材22に嵌め込まれる。
【0027】
これにより、筐体21は、内部空間を有する。筐体21の内部空間は、上述の開口234および複数の孔236によって、第2筐体部材23側の外部に連通する。
【0028】
軸用蓋部材25は、円板形であり、一方主面から凹む凹部250を有する。軸用蓋部材25は、中空部225における主壁221側の端部付近に配置される。
【0029】
軸用蓋部材25は、外周に螺合用の溝を有する。凹部250における主壁221側の端部付近の壁面には、螺合用の溝が形成されている。軸用蓋部材25は、これら螺合用の溝によって、凹部250を形成する壁面に螺合する。そして、この螺合状態を調整することによって、凹部250の軸方向における軸用蓋部材25の位置(筐体21に対して軸用蓋部材25が埋め込まれる深さ(
図5(A)の埋め込み深さHS1、
図5(B)の埋め込み深さHS2を参照))が調整される。
【0030】
軸受け26は、円筒形であり、中空部225に配置され、内部壁223の中空部225側の壁に固定される。これら軸受け26と内部壁223とからなる構造体が、本発明の「軸受け部材」に対応する。
【0031】
吸引磁石27は、円環形である。吸引磁石27は、内部壁223の先端、言い換えれば、内部壁223における主壁221への接続端と反対側の端部に配置される。吸引磁石27が、本発明の「吸引力発生部材」に対応する。
【0032】
ヨーク28は、円環形である。ヨーク28の形状は、吸引磁石27の形状と略同じである。ヨーク28は、内部壁223の先端付近に配置され、吸引磁石27の主壁221側に配置される。ヨーク28が、本発明の「吸引力補助部材」および「吸引用ヨーク」に対応する。
【0033】
ステータ40は、複数のステータコア、インシュレータ、および、複数のコイル導体を備える。ステータ40は、円環形であり、中央空間を有する。複数のステータコアは、円環形の周方向に沿って、互いに間隔を空けて配置される。複数のコイル導体は、インシュレータを間に挟んで、複数のステータコアに巻き付けられている。より具体的には、複数のコイル導体は、ステータ40の円環形の中心から外方に延びる方向を軸としてステータコアに対して、巻回される。
【0034】
ステータ40を平面視した外形は、第1筐体部材22の側壁222の内壁面2221と略同じ形状で、且つ、内壁面2221よりも小さい。ステータ40を平面視した中央空間の外形、言い換えれば、ステータ40の内端の形状は、後述するロータ30の外形と略同じ形状で、且つ、ロータ30の外形よりも大きい。
【0035】
ステータ40は、筐体21の内部空間に配置される。より具体的には、ステータ40は、第1筐体部材22の空間224および第2筐体部材23の空間235に収容されるように配置される。この際、平面視した状態において、ステータ40の中心と筐体21の内部空間の中心とは略一致する。また、ステータ40の外周端は、第1筐体部材22の側壁222の内壁面2221に接触せず、近接する。なお、ステータ40の第1筐体部材22に対する位置決めは、例えば、ステータ40に形成された脚部材を第1筐体部材22の主壁221の内面に当接することによって実現される。
【0036】
絶縁性樹脂24は、筐体21の内部空間に配置される。この構成によって、ステータ40と筐体21とは、絶縁性樹脂24によって固定される。さらに、第1筐体部材22、および、第2筐体部材23は、絶縁性樹脂24によって固定される。
【0037】
(ロータ30の具体的な構成)
図4(A)、
図4(B)に示すように、ロータ30は、ロータヨーク31、磁石32、および、シャフト33を備える。
【0038】
ロータヨーク31は、主体部311、接続部312、および、シャフト保持部313を備える。ロータヨーク31は、SUS等の磁化する金属からなる。
【0039】
主体部311は、内部空間3110を有する円筒形である。主体部311の内壁面の形状は、第1筐体部材22の内部壁223の外形と略同じであり、内壁面の直径は、内部壁223の外形の直径よりも大きい。主体部311は、シャフト33の周面を覆うように配置される。すなわち、主体部311は、シャフト33の周面に平行な面を有する円筒状の構造体であり、シャフト33の周面から外方に所定距離で離間するように配置されている。
【0040】
シャフト保持部313は、内部空間3130を有する円筒形である。シャフト保持部313の内壁面の形状は、シャフト33の側面(周面)の形状と略同じであり、シャフト保持部313の内壁面の直径は、シャフト33の直径と同じである。シャフト保持部313は、主体部311の軸方向の一方端に配置される。この際、シャフト保持部313の中心軸と、主体部311の中心軸とは一致する。シャフト保持部313は、シャフト33を保持する。
【0041】
接続部312は、円環形の平板であり、主体部311およびシャフト保持部313の軸方向に対して直交する平面を有する。言い換えれば、接続部312は、シャフト33の軸方向(延びる方向)に直交する平面を有する。接続部312は、主体部311とシャフト保持部313とを接続する。
【0042】
磁石32は、円環形である。磁石32は、ロータヨーク31の主体部311の外面に沿って配置される。
【0043】
シャフト33は、円柱である。シャフト33は、主体部311の内部空間3110を挿通し、シャフト保持部313の内部空間3130に挿嵌される。シャフト33の一方端は、主体部311よりも外部に突出する。
【0044】
(ステータアッシー20とロータ30との具体的な位置関係)
図2に示すように、ロータ30は、ステータアッシー20に挿入され、支持される。より具体的には、ロータ30は、ロータヨーク31の主体部311の開口側がステータアッシー20における第1筐体部材22の主壁221側となるように、開口234から挿入される。そして、ロータヨーク31は、ステータアッシー20における第1筐体部材22の内部壁223を離間した状態で覆う。
【0045】
また、シャフト33は、軸受け26を挿通し、シャフト33の一方端(ロータヨーク31で保持される側と反対側の端)は、軸用蓋部材25に当接する。そして、ロータ30の磁石32は、ステータアッシー20のステータ40のステータコアに近接する。
【0046】
この状態において、ステータ40の複数のコイル導体に与える電流を制御することによって、ブラシレスモータ10は、ロータ30を回転制御できる。
【0047】
(ロータ30のスラスト移動の抑制構造)
図5(A)、
図5(B)は、ロータとステータとの近接部の拡大図である。
図5(A)、
図5(B)、および、上述の
図2に示すように、ブラシレスモータ10では、吸引磁石27は、ロータヨーク31の接続部312に対向し、近接する。これにより、ロータヨーク31の接続部312と吸引磁石27との間には、磁気吸引力が発生し、ロータヨーク31は、ステータアッシー20の主壁221側に吸引される。
【0048】
そして、この構成では、ロータヨーク31の接続部312と吸引磁石27とが所定面積で対向するので、強い磁気吸引力を発生できる。したがって、ロータ30のスラスト移動を抑制できる。
【0049】
さらに、ブラシレスモータ10では、吸引磁石27に対してロータヨーク31の接続部312側と反対側に、ヨーク28が配置される。これにより、吸引磁石27とロータヨーク31の接続部312との間に生じる磁気吸引力を、さらに強く(補助)できる。したがって、吸引磁石27を大きくすることなく、ロータ30のスラスト移動を抑制できる。すなわち、ロータ30のスラスト移動を抑制しながら、ブラシレスモータ10を小型にできる。また、ロータヨーク31を小さくできるので、ステータ40の内側にロータ30が配置されるインナーロータ側のブラシレスモータ10を、容易且つより確実に実現できる。
【0050】
また、この構成では、従来技術のように、シャフト33の端部に配置される部材を吸引用磁石にしないことによって、シャフト33の端部に配置される部材、すなわち、ブラシレスモータ10における軸用蓋部材25を小さくできる。これにより、ステータアッシー20を小型にでき、ブラシレスモータ10を小型にできる。
【0051】
また、ブラシレスモータ10では、回転力発生用の磁石32の磁界の主たる方向と、吸引磁石27の磁界の主たる方向とが略直交する。したがって、吸引磁石27の発生する磁界が、回転力の発生に悪影響を生じることは抑制される。
【0052】
また、
図5(A)、
図5(B)に示すように、ブラシレスモータ10では、軸用蓋部材25の位置をシャフト33の軸方向に沿って移動させることができる。言い換えれば、ブラシレスモータ10では、軸用蓋部材25が筐体21の主壁221の外面から埋め込まれる深さ(
図5(A)の埋め込み深さHS1および
図5(B)の埋め込み深さHS2)を調整できる。
【0053】
これにより、
図5(A)、
図5(B)に示すように、吸引磁石27とロータヨーク31の接続部312との距離(
図5(A)の距離D1および
図5(B)の距離D2)を調整できる。したがって、吸引磁石27とロータヨーク31の接続部312との間に生じる磁気吸引力の大きさを調整できる。
【0054】
図6は、ロータ30とステータ40との離間距離と磁気吸引力との関係を示すグラフである。
図6の離間距離は、上述の距離D1、D2等に対応する距離であり、ロータ30とステータアッシー20と軸方向に沿った離間距離である。
図6に示すように、離間距離を調整することで、ロータ30とステータアッシー20との間の軸方向の磁気吸引力を調整できる。特に、この構成を用いることで、離間距離を連続的な値に調整でき、磁気吸引力を連続的な値に調整できる。
【0055】
この結果、例えば、ブラシレスモータ10を構成する各部品に製造誤差があっても、最適な磁気吸引力を実現するように、吸引磁石27とロータヨーク31の接続部312との距離を調整できる。よって、必要以上に大きな吸引磁石を用いなくてもよく、ブラシレスモータ10を小型化できる。
【0056】
また、ブラシレスモータ10では、軸用蓋部材25が筐体21から突出していない。したがって、ブラシレスモータ10の外形が不要に大きくなることを抑制できる。
【0057】
また、軸用蓋部材25の位置は、螺合によって調整されるので、位置の微調整が可能であり、最適な磁気吸引力をより確実に実現できる。
【0058】
また、ブラシレスモータ10では、吸引磁石27が環状であるので、ロータ30の周方向における磁界の大きさのばらつきを小さくできる。言い換えれば、ブラシレスモータ10では、吸引磁石27が、ロータ30の周方向に離散的に配置されている、または、周方向の特定位置のみに配置されている構成ではない。これにより、ロータ30の中心軸から全方位において磁力を均一にでき、ロータ30の傾き等を抑制できる。
【0059】
また、
図2、
図5(A)、
図5(B)に示すように、ブラシレスモータ10では、吸引磁石27およびヨーク28は、内部壁223の先端部に形成された凹部2230に嵌め込まれている。これにより、吸引磁石27およびヨーク28を装着する領域を内部壁223と別に設ける必要が無く、ブラシレスモータ10を小型にできる。特に、ヨーク28を用いることで、吸引磁石27を不要に大きくしなくてもよいので、吸引磁石27およびヨーク28が内部壁223の周面から突出しない構造を実現できる。したがって、ブラシレスモータ10をさらに小型にできる。
【0060】
(ブラシレスモータ10の製造方法)
上述の構成からなるブラシレスモータ10は、例えば、次に示す方法によって製造できる。
図7は、本発明の実施形態に係るブラシレスモータの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【0061】
図7に示すように、まず、ステータアッシー20とロータ30とを個別に形成する(S21、S22)。次に、ロータ30をステータアッシー20に装着する(S23)。次に、ロータ30の位置を、軸用蓋部材25を用いて調整する(S23)。
【0062】
(ブラシレスモータ10の利用例)
図8は、本発明のブラシレスモータ10の利用例であるポンプ1の構成例を示す側面断面図である。
図8に示すように、ポンプ1は、ブラシレスモータ10とインペラー90とを備える。インペラー90は、ロータ30に固定される。
【0063】
このようなポンプ1では、利用用途によって、インペラー90を高速で回転させる必要がある。インペラー90が高速回転すると、ロータ30をスラスト移動させる力は大きくなる。
【0064】
しかしながら、ブラシレスモータ10の構成を用いることによって、ロータ30のスラスト移動を、より確実に抑制できる。また、ブラシレスモータ10の構成を用いることによって、ブラシレスモータ10を小型にでき、ポンプ1を小型にできる。
【0065】
また、使用用途によっては、インペラー90の回転数を異なる値に設定する必要がある。
図9は、インペラー90の回転数に対するロータ30とステータ40との間の必要吸引力の変化を示すグラフである。
図9に示すように、回転数(回転速度)が変化すると、必要吸引力も変化する。
【0066】
しかしながら、ブラシレスモータ10の構成を用いることによって、ロータ30とステータアッシー20との軸方向の離間距離を調整できるので、ロータ30とステータアッシー20との軸方向の磁気吸引力を調整できる。したがって、必要吸引力に応じた適切な磁気吸引力となるように、ロータ30とステータアッシー20との軸方向の位置関係を、調整できる。
【0067】
なお、本実施形態では、ポンプ1を例に示したが、ロータ30の高速回転を利用する装置であれば、本発明のブラシレスモータ10の構成は、有効に作用する。また、ロータ30の回転を調整する必要がある装置であれば、本発明のブラシレスモータ10の構成は、有効に作用する。
【符号の説明】
【0068】
1:ポンプ
10:ブラシレスモータ
20:ステータアッシー
21:筐体
22:第1筐体部材
23:第2筐体部材
24:絶縁性樹脂
25:軸用蓋部材
26:軸受け
27:吸引磁石
28:ヨーク
30:ロータ
31:ロータヨーク
32:磁石
33:シャフト
40:ステータ
90:インペラー