(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】イオン分析装置
(51)【国際特許分類】
H01J 49/00 20060101AFI20240123BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20240123BHJP
【FI】
H01J49/00 500
G01N27/62 B
(21)【出願番号】P 2022558936
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2021035582
(87)【国際公開番号】W WO2022091674
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2020183497
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古田 匡智
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 秀典
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/152806(WO,A1)
【文献】特開2019-164135(JP,A)
【文献】国際公開第2021/053865(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/00
G01N 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項7】
前記ジョイントがさらに、前記筒部の前記一端から該筒部の径方向の外側に向かって拡がるように設けられた板状の部材であって2個の貫通孔を有する密閉板を備え、
前記保持具が、前記2個の貫通孔の各々に挿通され前記外表面に締結されるボルトであって、該ボルトの頭部の径が前記貫通孔の径よりも大きく軸部の径が前記貫通孔の径よりも小さい、
請求項6に記載のイオン分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料成分由来のプリカーサイオンにラジカルを照射することによりプロダクトイオンを生成し、質量分析やイオン移動度の分析等を行うイオン分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子化合物を同定したりその構造を解析したりするために、高分子化合物由来のイオン(プリカーサイオン)を1又は複数回解離させてプロダクトイオンを生成し、それを質
量電荷比に応じて分離し検出する質量分析法が用いられている。イオンを解離させる代表的な方法として、イオンに窒素ガス等の不活性ガス分子を衝突させる、衝突誘起解離(CID: Collision-Induced Dissociation)法が知られている。CID法では不活性分子との衝突エネルギーによってイオンを解離させるため、様々なイオンを解離させることができるが、イオンが解離する位置の選択性が低い。そのため、CID法は、構造解析のためにイオン
内の特定の位置で解離させる必要がある場合には不向きである。
【0003】
特定の位置でイオンを解離させる方法として、従来よりプリカーサイオンに負イオンを衝突させる電子移動解離(ETD: Electron Transfer Dissociation)法や、プリカーサイ
オンに電子を照射する電子捕獲解離(ECD: Electron Capture Dissociation)法が用いられている。これらの方法では、プリカーサイオンに負イオンや電子を照射することにより、プリカーサイオン内の特定の位置に不対電子が生成され、その位置で解離が生じる。但し、ETD法やECD法では、プリカーサイオンが正イオンである場合には解離時にイオンの価数が減少するため、1価の正イオンを解離させると中性分子が生成されてしまう。そのた
め、1価の正イオンであるプリカーサイオンが多く含まれる場合には、ETD法やECD法は不
向きである。
【0004】
特許文献1には、プリカーサイオンにラジカルを照射することにより、特定の位置でイオンを解離させることが記載されている。この方法では、ラジカルの照射によってプリカーサイオン内の特定の位置に不対電子が生成され、それによってイオン内の特定の位置で解離が生じる。この方法は、不対電子を生成するという点ではETD法やECD法と共通しているが、解離時にイオンの価数が変化しないため、プリカーサイオンが1価の正イオンであ
る場合にも適用することができる。プリカーサイオンに照射されるラジカルには、水素ラジカル、ヒドロキシラジカル、酸素ラジカル、窒素ラジカル等を用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】D. R. Warren著、"Surface effects in combustion reactions. Part 2.- Activity of surfaces towards some possible chain-carriers and combustion intermediates"、Transactions of the Faraday Society、王立化学会発行、(英国)、1957年、第53巻、第206-209頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の装置では、ラジカル生成室で生成されたラジカルを、アルミナ又は石英から成るラジカル輸送管を通してイオントラップやコリジョンセル等の反応室に導入する。そして、該反応室においてラジカルをプリカーサイオンに照射することにより、プリカーサイオンを解離させる。その際、ラジカルの一部がラジカル輸送管の内壁面に付着してしまい、反応室に供給されるラジカルの量は該内壁面に付着した分だけ少なくなる。その結果、プリカーサイオンを解離させる効率が低くなってしまう。
【0008】
ここまではラジカルを照射してプリカーサイオンを解離させることにより生成したプロダクトイオンを質量分析する場合を例に説明したが、プロダクトイオンを他の方法で分析する場合にも上記同様の問題が生じる。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、プリカーサイオンをラジカルにより、より効率よく解離することができるイオン分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために成された本発明に係るイオン分析装置の第1の態様のものは、試料成分由来のプリカーサイオンにラジカルを照射することによりプロダクトイオンを生成して該プロダクトイオンを分析するイオン分析装置であって、
前記プリカーサイオンが導入される反応室と、
ラジカルを生成するラジカル生成部と、
前記ラジカル生成部と前記反応室を接続するラジカル輸送管と
を備え、
前記ラジカル輸送管の内壁面の少なくとも一部が、アルミナ又は石英よりも該ラジカル輸送管の内壁面に対する前記ラジカルの付着量が少ない又は付着力が小さい素材から構成されている。
【0011】
本発明に係るイオン分析装置の第2の態様のものは、試料成分由来のプリカーサイオンにラジカルを照射することによりプロダクトイオンを生成して該プロダクトイオンを分析するイオン分析装置であって、
前記プリカーサイオンが導入される反応室と、
ラジカルを生成するラジカル生成部と、
前記ラジカル生成部と前記反応室を接続するラジカル輸送管と
を備え、
前記ラジカル輸送管の一端が、前記反応室内に配置されており、前記反応室内においてイオンが偏在する所定の領域の方を向いている。
【0012】
本発明に係るイオン分析装置の第3の態様のものは、試料成分由来のプリカーサイオンにラジカルを照射することによりプロダクトイオンを生成して該プロダクトイオンを分析するイオン分析装置であって、
前記プリカーサイオンが導入される反応室と、
ラジカルを生成するラジカル生成部と、
前記ラジカル生成部と前記反応室を接続するラジカル輸送管と
を備え、
さらに、
前記反応室に設けられた開口を通して該反応室の内部と一端が接続され該開口の径よりも小さい内径を有し前記ラジカル輸送管が挿入された筒部と、該筒部の他端に接続して設けられた該他端から離れるに従って内径が拡径する拡径部とを有するジョイントと、
前記ジョイントを前記反応室の外表面に沿って移動可能に保持する保持具と
を備える。
【発明の効果】
【0013】
<第1の態様>
第1の態様のイオン分析装置では、内壁面の少なくとも一部がアルミナや石英等よりも前記ラジカル(すなわちラジカル生成部で生成されるラジカル)の付着量が少ない又は付着力が小さい素材から構成されているラジカル輸送管を用いることにより、ラジカル生成部で生成されるラジカルがラジカル輸送管の内壁面に付着することを抑制し、反応室に供給されるラジカルの量を多くすることができる。そのため、第1の態様のイオン分析装置により、プリカーサイオンを解離させる効率を高くすることができる。ここで或る物の表面(本発明ではラジカル輸送管の内壁面)へのラジカルの「付着量」や「付着力」は、当該物の表面に接するラジカルが当該物に付着する確率(付着確率)に関連して定まる。付着確率が小さいほど、当該物の表面への付着量は少なくなり、付着力は小さくなるといえる。アルミナや石英よりも表面へのラジカルの付着量が少なく、又は付着力が小さい材料として、例えば、ホウケイ酸ガラスが挙げられる。ホウケイ酸ガラスは、特に水素ラジカルや酸素ラジカルがアルミナや石英 等よりも付着し難いという特長を有する。
【0014】
<第2の態様>
イオントラップやコリジョンセル等の反応室では一般に、形成される電界の分布が不均一となる。また、コリジョンセルでは、イオンを高速に収束させるために意図的にイオンの進行方向に対して電界を傾斜させることが行われている。このような不均一又は傾斜した電界分布が形成されると、反応室内の特定の領域にイオン(プリカーサイオンや、プリカーサイオンが複数回解離する途中のイオンが含まれる)が偏在する。第2の態様のイオン分析装置では、このようなイオンが偏在する領域の方をラジカル輸送管の一端が向くようにされていることにより、当該領域に効率よくラジカルを供給することができ、イオンを解離させる効率を一層高くすることができる。
【0015】
ラジカル輸送管の一端を前記イオン偏在領域の方を向くようにするためには、ラジカル輸送管を反応室の壁面に斜めに取り付けてもよいし、該壁面に垂直に取り付け、反応室の中で屈曲させて先端が前記領域の方を向くようにしてもよい。ここで、ラジカル輸送管を屈曲させた場合、屈曲部においてラジカル輸送管の内壁面にラジカルが衝突し易くなり、それによってラジカルが内壁面に付着し、反応室に供給されるラジカルの量が少なくなるという問題が生じ得る。しかし、第2の態様のイオン分析装置では、アルミナや石英等よりも、ラジカル(特に酸素ラジカル)が付着し難い特長を有するラジカル輸送管を用いることにより、このような屈曲部が存在しても、反応室に供給されるラジカルの量が少なくなることを抑えることができる。
【0016】
<第3の態様>
質量分析装置では一般的にイオントラップやコリジョンセル等の反応室は真空容器内に配置されるのに対して、ラジカル生成部は電界や磁界の生成手段等を伴う大きなものであるため真空容器の外に配置される。そのため、ラジカル輸送管は真空容器の外から真空容器内の反応室まで取り回す必要がある。このような取り回し(特に、反応室内側の取り付け)作業を行う際、反応室に設けられた、ラジカル輸送管を通すべき開口の位置を作業者が目視で確認することができないため、位置が合わないままラジカル輸送管を押し込んでしまい、その結果ラジカル輸送管が折損してしまうおそれがある。例えば、本発明で用いるラジカル輸送管としてガラス製のもの等、アルミナや石英等から成る従来のラジカル輸送管よりも機械的強度が低いものを用いる場合には、折損が生じ易い。
【0017】
そこで第3の態様のイオン分析装置では、保持具によって反応室の外表面に沿って移動可能に保持されたジョイントを用いてラジカル輸送管を反応室の開口に挿入する。ラジカル輸送管を反応室に取り付ける際には、ジョイントの拡径部から筒部及び反応室の開口を通してラジカル輸送管を反応室内に挿入する。その際、ラジカル輸送管の位置が筒部の位置と多少ずれていても、ラジカル輸送管の先端が拡径部の内壁面を押すことによってジョイントが反応室の外表面に沿って移動し、ラジカル輸送管を筒部に挿入することができる。また、開口の径が筒部の内径よりも大きい(筒部の内径が開口の径よりも小さい)ため、ジョイントが前記外表面に沿って多少移動しても、筒部を通過したラジカル輸送管は該開口も通過する。これにより、ラジカル輸送管を折損させることなく容易に反応室に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るイオン分析装置の一実施形態である質量分析装置の全体の構成を示す概略図。
【
図2】本実施形態の質量分析装置の一部を拡大した図。
【
図3】本実施形態の質量分析装置の一部であってジョイントを含む部分をさらに拡大した図。
【
図4】ラジカル輸送管をコリジョンセルに取り付ける際に、ラジカル輸送管の第1部分の中心軸がコリジョンセル開口の中心からずれた状態で、第1部分がコリジョンセルに挿入されようとしている状態を示す図。
【
図5】ラジカル輸送管をコリジョンセルに取り付ける際にジョイントが図の左方向に移動した状態を示す図。
【
図6】ホウケイ酸ガラス製のラジカル輸送管(本実施形態相当)及びアルミナ製のラジカル輸送管(比較例)をそれぞれ用いた場合におけるOAD(酸素付着解離)効率を測定した結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1~
図6を用いて、本発明に係るイオン分析装置の実施形態を説明する。
【0020】
(1) 本実施形態のイオン分析装置(質量分析装置)の構成
図1に本実施形態のイオン分析装置である質量分析装置10の全体の構成を概略的に示し、
図2に該質量分析装置10の一部を拡大して、その部分の詳細な構成を示す。この質量分析装置10は、略大気圧であるイオン化室11と真空ポンプ(図示なし)により真空排気された高真空の分析室14との間に、段階的に真空度が高められた第1中間真空室12及び第2中間真空室13を備えた多段差動排気系の構成を有している。イオン化室11には、例えばESIプローブ111が設置される。イオンを収束させつつ後段へ輸送するために、第1中間真空室12にはイオンガイド121が、第2中間真空室13にはイオンガイド131が、それぞれ設置されている。分析室14には、イオンを質量電荷比に応じて分離する前段四重極マスフィルタ141、多重極イオンガイド143が内部に設置されたコリジョンセル(前記反応室に対応)142、イオンを質量電荷比に応じて分離する後段四重極マスフィルタ144、及びイオン検出器145が設置されている。
【0021】
質量分析装置10はさらに、ラジカル生成・照射部15を備える。ラジカル生成・照射部15は、ラジカル生成装置151とラジカル輸送管152を有する。
【0022】
ラジカル生成装置151は、ラジカル生成室1511と、ラジカル生成室1511内にラジカルの原料となるガスを供給するガス供給源1512と、高周波電磁界源1513とを備える。原料ガスには酸素、空気、水蒸気等が用いられる。高周波電磁界源1513は、コイルと高周波電源(図示せず)とを備え、高周波電源からコイルに高周波電流を流すことにより、ラジカル生成室1511内に高周波電磁界を形成するものである。ガス供給源1512からラジカル原料ガスをラジカル生成室1511内に導入したうえで、高周波電磁界源1513によってラジカル生成室1511内に高周波電磁界を形成することにより、ラジカル生成室1511内にラジカルが生成される。例えば、原料ガスが酸素である場合には酸素ラジカルが、原料ガスが空気である場合には酸素ラジカルと窒素ラジカルが、原料ガスが水蒸気である場合には水素ラジカル、酸素ラジカル及びヒドロキシラジカルが、それぞれ生成される。
【0023】
ラジカル輸送管152は、ラジカル生成室1511とコリジョンセル142を接続しており、ラジカル生成室1511内で生成されたラジカルをコリジョンセル142内に導入するための管である。本実施形態では、ラジカル輸送管152にはホウケイ酸ガラス製の管を用いる。ホウケイ酸ガラスの代表的な例として、コーニング社製のパイレックス(登録商標)が知られている。ホウケイ酸ガラス製のラジカル輸送管152は、アルミナや石英等を用いた場合よりも、ラジカル(特に酸素ラジカル)が付着し難い、すなわち付着量が少なく、付着力が小さいという特長を有する。
【0024】
ラジカル輸送管152は、分析室(上記真空容器に対応)14に設けられた分析室開口146及びコリジョンセル142に設けられたコリジョンセル開口(前記「反応室に設けられた開口」に対応)1421を通して、コリジョンセル142内に挿入されている。
【0025】
本実施形態では、ラジカル生成室1511はラジカル輸送管152と一体であるホウケイ酸ガラス製の管により構成されている。そのため、ラジカル生成室1511においてもラジカル輸送管152と同様に、ラジカルが付着し難い。但し、この点は本発明において必須ではなく、ラジカル輸送管152とは別体のラジカル生成室1511を用いてもよい。別体のラジカル生成室1511を用いる場合にもホウケイ酸ガラス製であることが好ましいが、この点も本発明において必須ではない。
【0026】
コリジョンセル142の外側には、ジョイント16が設けられている。
図3に、ジョイント16付近の拡大図を示す。ジョイント16には、筒部161と、拡径部162と、密閉板163が設けられている。筒部161は、一端がコリジョンセル開口1421を通してコリジョンセル142の内部と接続されており、コリジョンセル開口1421よりも小さい内径を有している。拡径部162は筒部161の他端に接続して設けられており、筒部161の他端から(あるいはコリジョンセル142から)離れるに従って(
図3における上側に向かって)内径が拡径する、ラッパ状の形状を有している。前記ラジカル輸送管152は、これら筒部161及び拡径部162に挿入されている。密閉板163は、筒部161の一端から径方向の外側に向かって拡がるように設けられた板状の部材であって、コリジョンセル開口1421の周囲にあるコリジョンセル142の外表面1420と接している。密閉板163とコリジョンセル142の外表面1420の間にはOリングから成る真空シール164が設けられている。
【0027】
ジョイント16は、密閉板163に設けられた2個の貫通孔1631にそれぞれ通されコリジョンセル142の外表面1420に締結されたボルト(上記保持具に対応)1632により、コリジョンセル142の外表面1420に取り付けられている。貫通孔1631の径はボルト1632の頭部の径よりも小さく、ボルト1632の軸部の径よりも大きい。そのため、貫通孔1631の淵とボルト1632の軸部の間には隙間1633が形成されている。本実施形態では、貫通孔1631の中心とボルト1632の中心軸が一致しているとき(このとき、筒部161の中心軸とコリジョンセル開口1421の中心も一致する)に、軸部の周囲に1mm程度の隙間1633が形成されるように設計しているが、隙
間1633の大きさの設計値は適宜変更してもよい。この隙間1633の分だけ、ジョイント16はコリジョンセル142の外表面1420に沿って移動することが可能である。
【0028】
分析室開口146の周囲にはフランジ1461が設けられている。このフランジ1461には、中央にラジカル輸送管152が挿通された蓋1462が取り付けられている。また、フランジ1461と蓋1462の間には、リング状の銅板から成る真空シール1463が設けられている。これにより、分析室開口146は気密に閉鎖される。
【0029】
ラジカル輸送管152は、筒部161内において、ラジカル生成室1511側にある第1部分1521とコリジョンセル142側の第2部分1522に分割されている。また、第1部分1521と筒部161の内壁面の間、及び第2部分1522と筒部161の内壁面の間にはそれぞれ、Oリングから成る真空シール1611が設けられている。第1部分1521と第2部分1522の継ぎ目は接着されておらず、また、この継ぎ目に真空シールは設けられていないが、これら第1部分1521及び第2部分1522と筒部161の内壁面の間に真空シール1611が設けられていることにより、この継ぎ目からジョイント16の外部にラジカルが漏れることはない。
【0030】
ラジカル輸送管152の第1部分1521は全体が直線状であるのに対して、コリジョンセル142内に配置されている第2部分1522は、ジョイント16内では直線状であるが、ジョイント16の外(コリジョンセル142側)では、先端(一端)1523が、コリジョンセル142のイオン出口1423付近の領域(前記「所定の領域」)1424を向くように、ラジカル輸送管152に屈曲部1524が設けられている(ラジカル輸送管152が屈曲している)。ラジカル輸送管152の先端1523が向いている先にある、イオン出口1423付近の領域1424はイオンが滞留しやすく、コリジョンセル142全体のうちでイオンの濃度が高い領域となっている。
【0031】
(2) 本実施形態の質量分析装置の組み立て時の操作
次に、本実施形態の質量分析装置10を組み立てる際の操作のうち、特にラジカル輸送管152をコリジョンセル142に取り付ける操作について説明する。
【0032】
まず、ラジカル輸送管152のうち、第1部分1521及びそれと一体となっているラジカル生成室1511から成る管を、高周波電磁界源1513のコイル内に挿入する。それと共に、第2部分1522のうち直線状の部分をジョイント16の筒部161に挿入する。ジョイント16及びそれに挿入された第2部分1522は、コリジョンセル142を分析室14に設置する前に、ボルト1632で外表面1420に取り付ける。その際、上記のように、ボルト1632の軸部の周囲には1mm程度の隙間1633が形成されている
。
【0033】
コリジョンセル142を分析室14内に設置した後、高周波電磁界源1513に固定されたラジカル輸送管152の第1部分1521を、分析室14の外から、分析室開口146を通して分析室14内に挿入し、さらにジョイント16の筒部161に挿入する。その際、分析室14内にあるジョイント16の位置を作業者が目視で確認することができないため、ラジカル輸送管152の中心軸と筒部161の中心軸の位置がずれたまま、ラジカル輸送管152の先端をジョイント16に押しつけることが生じ得る(
図4)。そのような場合、筒部161側から拡径するように形成されている拡径部162の内壁面がラジカル輸送管152の先端によって押され、それによってジョイント16がコリジョンセル142の外表面1420に沿って移動する(
図5に示した例では左方向に移動)。これにより、ラジカル輸送管152の中心軸と筒部161の中心軸の位置が一致し、ラジカル輸送管152の第1部分1521を筒部161に挿入することができる。その際、コリジョンセル開口1421が筒部161の内径(及び第2部分1522の外径)よりも大きいため、予め筒部161に取り付けられている第2部分1522もジョイント16と一緒に移動させることができる。こうして、第1部分1521と第2部分1522から成るラジカル輸送管152の設置作業が完了する。
【0034】
本実施形態のようにラジカル輸送管152の材料として機械的強度が比較的弱いホウケイ酸ガラスを用いる場合には、ラジカル輸送管152が正しい位置に配置されていないままコリジョンセル142を無理に取り付けようとすると折損してしまうおそれがある。しかし、本実施形態によれば、初期の時点ではラジカル輸送管152の中心軸と筒部161の中心軸の位置がずれていても、ラジカル輸送管152を筒部161に挿入することができるため、ラジカル輸送管152を無理に押し込むことで折損させてしまうことを防ぐことができる。
【0035】
また、本実施形態では、ラジカル輸送管152が、直線状の第1部分1521と、屈曲部1524が設けられている(屈曲している)第2部分1522とに分割されている。そのため、コリジョンセル142を分析室14に設置する前に予め第2部分1522をジョイント16に取り付けておくことにより、直線状の第1部分1521のみを、分析室14の外から分析室開口146を通して分析室14内のジョイント16に挿入すればよいため、作業が容易になる。
【0036】
なお、本実施形態の質量分析装置10では、組み立て時における第1部分1521の挿入位置によって、最終的に固定されるラジカル輸送管152の先端1523の位置が、コリジョンセル142のイオンが移動する方向に関して、ボルト1632の軸部の周囲の隙間1633に対応する範囲内(±1mm程度)で位置の相違が生じ得る。しかし、この位置
の相違の大きさよりもコリジョンセル142のイオンが移動する方向が十分に大きいため、この位置の相違は実用上問題とはならない。
【0037】
(3) 本実施形態の質量分析装置の動作
本実施形態の質量分析装置10における質量分析の動作を説明する。分析の開始前に、イオン化室11から分析室14までの空間が真空ポンプにより所定の真空度まで排気される。分析が開始されると、例えば液体クロマトグラフのカラム(図示せず)を通過した液体試料がESIプローブ111に供給される。ESIプローブ111では、液体試料が、接地との間に高電圧が印加されたキャピラリを通過してイオン化室11内に噴霧される。これにより、イオン化室11内において液体試料の溶媒が離脱し、試料由来のイオンが生成される。生成された各種イオンは第1中間真空室12に導入されてイオンガイド(イオンレンズ)121により収束され、続いて第2中間真空室13に導入されてオクタポール型のイオンガイド131によりさらに収束される。イオンガイド131により収束されたイオンは分析室14内の前段四重極マスフィルタ141に導入される。前段四重極マスフィルタ141では、それに印加されている電圧に応じた特定の質量電荷比を有するイオンのみが通過する。このように前段四重極マスフィルタ141を通過したイオンがプリカーサイオンとしてコリジョンセル142に導入される。
【0038】
コリジョンセル142では、多重極イオンガイド143を通過するプリカーサイオンに不活性ガス(CIDガス)を衝突させることにより、プリカーサイオンを解離させる。さらに、コリジョンセル142内には、ラジカル生成室1511で生成されたラジカルがラジカル輸送管152を通して供給される。これにより、プリカーサイオン、あるいはプリカーサイオンが解離したイオンがラジカルに接触し、それらのイオンが解離する。こうして各種のプロダクトイオンが生成される。生成されたプロダクトイオンは、後段四重極マスフィルタ144によって質量電荷比毎に分離され、イオン検出器145において質量電荷比毎に検出される。
【0039】
本実施形態の質量分析装置10では、コリジョンセル142にラジカルを供給するラジカル輸送管152にホウケイ酸ガラス製の管を用いている。非特許文献1に記載のようにホウケイ酸ガラスはラジカル、特に酸素ラジカルが付着し難い、すなわちラジカルの付着量が少なく、付着力が小さいという特長を有する。そのため、ラジカルがラジカル輸送管152の内壁面に付着することを抑制し、コリジョンセル142に供給されるラジカルの量を多くすることができる。その結果、コリジョンセル142内のプリカーサイオンを解離させる効率を高くすることができる。
【0040】
ここで、ラジカル輸送管の内壁面へのラジカルの付着の影響を確認するために、ホウケイ酸ガラス製及びアルミナ製のラジカル輸送管をそれぞれ用いて、OAD効率を測定する実
験を行った結果を示す。「OAD」は酸素付着解離(Oxygen Attachment Dissociation)を
意味し、「OAD効率」はOAD反応したイオン量をプリカーサイオン量で除した値を百分率で表したものである。OAD効率の値が高いほど、酸素ラジカルがラジカル輸送管の内壁面に
付着し難いことを意味する。なお、アルミナ製のラジカル輸送管は屈曲させる(屈曲部1524を設ける)ことが難しいことから、本実験では、ラジカルの付着抑制効果の差異が材料の相違に起因していることを明確にするために、ホウケイ酸ガラス製のラジカル輸送管についてもアルミナ製のものと同様に屈曲部1524が無いものを用いた。
【0041】
実験結果を
図6に示す。アルミナ製のラジカル輸送管よりもホウケイ酸ガラス製のラジカル輸送管を用いた場合の方が、OAD効率が高く、酸素ラジカルが内壁面に付着し難いこ
とがわかる。
【0042】
また、本実施形態の質量分析装置10では、ラジカル輸送管152の先端1523が、コリジョンセル142のイオン出口1423付近の領域1424を向くように、ラジカル輸送管152に屈曲部1524が設けられている。上記のようにこの領域1424はコリジョンセル142全体のうちでイオンの濃度が高い領域であるため、このような領域1424にラジカル輸送管152の先端1523が向いていることにより、当該領域1424に効率よくラジカルを供給することができる。その結果、コリジョンセル142内のプリカーサイオンを解離させる効率をより一層高くすることができる。
【0043】
屈曲部1524は直線部よりもラジカルが内壁面に接触し易いため、ラジカルの損失が生じ易い。しかしながら、本実施形態ではラジカル輸送管152の材料にラジカルが付着し難いホウケイ酸ガラスを用いているため、屈曲部1524を有していてもラジカルの損失を抑えることができる。
【0044】
(4) 変形例
本発明は上記の実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。例えば、ラジカル輸送管152はその全体がホウケイ酸ガラス製であってもよいし、内壁面はホウケイ酸ガラス製であって外壁面が他の材料から成るものであってもよい。後者の例として、ホウケイ酸ガラス製の管壁の周囲に石英やアルミナ製の管壁が設けられた二重構造の管を用いることにより、内壁面にラジカルを付着し難くすると共に機械的強度を高くすることができる。また、ラジカル輸送管の内壁面は、全体がホウケイ酸ガラス製であることが望ましいが、一部のみがホウケイ酸ガラス製であっても本発明の効果を奏する。さらに、アルミナや石英よりも表面へのラジカルの付着量が少なく、付着力が小さい材料であれば、ホウケイ酸ガラス以外の材料を用いてもよい。
【0045】
上記実施形態では、ラジカル輸送管152の先端1523が所定の領域1424の方を向いているという特徴と、筒部161と拡径部162とを有するジョイント16をボルト(保持具)1632によってコリジョンセル(反応室)142の外表面1420に沿って移動可能に保持するという2つの特徴を兼ね備えているが、これら2つの特徴のうちのいずれか一方のみを有していてもよい。また、これら2つの特徴もそれぞれ、以下のように各
種の変形が可能である。
【0046】
上記実施形態ではラジカル輸送管152に屈曲部1524を設けることによって先端1523を領域1424の方に向けている。その代わりに、直線状のラジカル輸送管を、コリジョンセル142内のイオンが進行する方向に対して傾斜するように挿入することにより、ラジカル輸送管の先端を所定の領域に向けるようにしてもよい。
【0047】
上記実施形態では、ジョイント16をコリジョンセル142の外表面1420に保持するボルト1632の軸部の径よりも、ジョイント16が有する密閉板163に設けられた貫通孔1631の径を大きくすることによって、貫通孔1631の縁とボルト1632の軸部の間の隙間の分だけジョイント16をコリジョンセル142の外表面1420に沿って移動可能としている。その代わりに、コリジョンセル142の外表面1420設けたガイドレールに沿ってジョイントが移動するように、ジョイントをガイドレールに保持させるようにしてもよい。
【0048】
上記実施形態ではコリジョンセル142にラジカルを供給している。反応室としてこのようなコリジョンセル142を用いる代わりに、イオントラップを用いてもよい。イオントラップは、例えば円環状のリング電極と、該リング電極を挟んで対向配置された一対のエンドキャップ電極(入口側エンドキャップ電極、出口側エンドキャップ電極)により構成される。このイオントラップでは、リング電極等に所定の電圧を印加することにより、リング電極のリング内に導入されたイオンのうち特定の質量電荷比を有するプリカーサイオンが選択的に捕捉される。補足されたプリカーサイオンにラジカルが照射されることによりプリカーサイオンがプロダクトイオンに解離する。こうして生成されたプロダクトイオンは、入口側エンドキャップ電極と出口側エンドキャップ電極の間に電圧が印加されることによってイオントラップから放出され、質量分離器(例えば飛行時間型質量分離器)に導入される。このようなイオントラップにおいて、上記実施形態のコリジョンセル142の場合と同様に、リング内にラジカルを供給するラジカル輸送管にホウケイ酸ガラス製の管を用いることができる。また、そのラジカル輸送管に屈曲部を設けることにより、ラジカル輸送管の先端をリング内の所定の領域の方に向けることもできる。さらには、イオントラップを収容する反応室にラジカル輸送管を取り付けるために、上記実施形態と同様のジョイントを用いることもできる。
【0049】
上記実施形態では質量分析装置を例として説明したが、イオン移動度分析装置等の他のイオン分析装置においても同様の構成を取ることができる。
【0050】
なお、ホウケイ酸ガラス以外の材料から成るラジカル輸送管を用いて、上記各実施形態又は変形例の構成を取ることもできる。例えば、ラジカル輸送管152の先端1523が所定の領域1424の方を向いているという構成において、ラジカル輸送管が屈曲部を有する場合には、ホウケイ酸ガラス以外の材料から成るラジカル輸送管ではラジカルが内壁に付着することによる損失が大きくなるが、それでもなお所定の領域に多くのラジカルを供給するために屈曲部を設けてもよい。また、直線状のラジカル輸送管をコリジョンセル内のイオンが進行する方向に対して傾斜するように挿入することによって先端を所定の方向に向ける場合には、ラジカル輸送管の材料に関わらず、ラジカル輸送管の内壁面でのラジカルの損失を抑えることができる。ジョイントをコリジョンセル(反応室)の外表面に沿って移動可能に保持するという構成は、ホウケイ酸ガラス以外の材料から成るラジカル輸送管を用いた場合にも、折損を防ぐという効果を奏する。
【0051】
[態様]
上述した例示的な実施形態が以下の態様の具体例であることは、当業者には明らかである。
【0052】
[第1項]
第1項に係るイオン分析装置は、試料成分由来のプリカーサイオンにラジカルを照射することによりプロダクトイオンを生成して該プロダクトイオンを分析するイオン分析装置であって、
前記プリカーサイオンが導入される反応室と、
ラジカルを生成するラジカル生成部と、
前記ラジカル生成部と前記反応室を接続するラジカル輸送管と
を備え、
前記ラジカル輸送管の内壁面の少なくとも一部が、アルミナ又は石英よりも該ラジカル輸送管の内壁面に対する前記ラジカルの付着量が少ない又は付着力が小さい素材から構成されている。
【0053】
第1項に係るイオン分析装置によれば、内壁面の少なくとも一部がアルミナや石英等よりも前記ラジカル(すなわちラジカル生成部で生成されるラジカル)の付着量が少ない又は付着力が小さい素材から構成されているラジカル輸送管を用いることにより、ラジカル生成部で生成されるラジカルがラジカル輸送管の内壁面に付着することを抑制し、反応室に供給されるラジカルの量を多くすることができる。そのため、プリカーサイオンを解離させる効率を高くすることができる。
【0054】
[第2項]
第2項に係るイオン分析装置は、第1項に係るイオン分析装置において、
前記素材がホウケイ酸ガラスである。
【0055】
[第3項]
第3項に係るイオン分析装置は、第2項に係るイオン分析装置において、
前記ラジカル生成部が酸素ラジカルを生成するものである。
【0056】
ホウケイ酸ガラスは、水素ラジカルや酸素ラジカル等の種々のラジカルが付着し難く、それらのラジカルの中でも特に酸素ラジカルが付着し難いという特長を有する。そのため、酸素ラジカルを用いてイオンを解離させる場合、すなわちラジカル生成部が酸素ラジカルを生成する場合に、内壁面の少なくとも一部がホウケイ酸ガラスであるラジカル輸送管を用いることによって特に顕著な効果を奏する。
【0057】
[第4項]
第4項に係るイオン分析装置は、試料成分由来のプリカーサイオンにラジカルを照射することによりプロダクトイオンを生成して該プロダクトイオンを分析するイオン分析装置であって、
前記プリカーサイオンが導入される反応室と、
ラジカルを生成するラジカル生成部と、
前記ラジカル生成部と前記反応室を接続するラジカル輸送管と
を備え、
前記ラジカル輸送管の一端が、前記反応室内に配置されており、前記反応室内においてイオンが偏在する所定の領域の方を向いている。
【0058】
第4項に係るイオン分析装置によれば、反応室に導入されたプリカーサイオンや、プリカーサイオンが複数回解離する途中のイオン等のイオンが偏在する領域の方をラジカル輸送管の一端が向いていることにより、当該領域に効率よくラジカルを供給することができ、イオンを解離させる効率を一層高くすることができる。
【0059】
[第5項]
第5項に係るイオン分析装置は、第4項に係るイオン分析装置において、前記ラジカル輸送管が屈曲している。
【0060】
このようにラジカル輸送管が屈曲していることにより、ラジカル輸送管の一端を前記所定の領域の方に向けることが容易になる。
【0061】
[第6項]
第6項に係るイオン分析装置は、試料成分由来のプリカーサイオンにラジカルを照射することによりプロダクトイオンを生成して該プロダクトイオンを分析するイオン分析装置であって、
前記プリカーサイオンが導入される反応室と、
ラジカルを生成するラジカル生成部と、
前記ラジカル生成部と前記反応室を接続するラジカル輸送管と
を備え、
前記反応室に設けられた開口を通して該反応室の内部と一端が接続され該開口の径よりも小さい内径を有し前記ラジカル輸送管が挿入された筒部と、該筒部の他端に接続して設けられた該他端から離れるに従って内径が拡径する拡径部とを有するジョイントと、
前記ジョイントを前記反応室の外表面に沿って移動可能に保持する保持具と
を備える。
【0062】
第6項に係るイオン分析装置によれば、ラジカル輸送管を反応室に取り付ける際に、ラジカル輸送管の位置がジョイントの筒部の位置と多少ずれていても、ラジカル輸送管の先端が拡径部の内壁面を押すことによってジョイントが反応室の外表面に沿って移動し、ラジカル輸送管を筒部に挿入することができる。また、開口の径が筒部の内径よりも大きい(筒部の内径が開口の径よりも小さい)ため、ジョイントが前記外表面に沿って多少移動しても、筒部を通過したラジカル輸送管は該開口も通過する。これにより、ラジカル輸送管を折損させることなく容易に反応室に取り付けることができる。
【0063】
[第7項]
第7項に係るイオン分析装置は、第6項に係るイオン分析装置において、
前記ジョイントがさらに、前記筒部の前記一端から該筒部の径方向の外側に向かって拡がるように設けられた板状の部材であって2個の貫通孔を有する密閉板を備え、
前記保持具が、前記2個の貫通孔の各々に挿通され前記外表面に締結されるボルトであって、該ボルトの頭部の径が前記貫通孔の径よりも大きく軸部の径が前記貫通孔の径よりも小さい。
【0064】
第7項に係るイオン分析装置では、保持具であるボルトの軸部の径が、密閉板に設けられた貫通孔の径よりも小さいため、貫通孔の淵とボルトの軸部の間に隙間が生じる。この隙間の分だけ、ジョイントが反応室の外表面に沿って移動することができる。
【符号の説明】
【0065】
10…質量分析装置
11…イオン化室
111…ESIプローブ
12…第1中間真空室
121、131…イオンガイド
13…第2中間真空室
14…分析室
141…前段四重極マスフィルタ
142…コリジョンセル
1420…コリジョンセルの外表面
1421…コリジョンセル開口
1423…イオン出口
1424…イオン出口付近の領域
143…多重極イオンガイド
144…後段四重極マスフィルタ
145…イオン検出器
146…分析室開口
1461…分析室開口のフランジ
1462…分析室開口の蓋
1463、1611、164…真空シール
15…ラジカル生成・照射部
151…ラジカル生成装置
1511…ラジカル生成室
1512…ガス供給源
1513…高周波電磁界源
152…ラジカル輸送管
1521…ラジカル輸送管の第1部分
1522…ラジカル輸送管の第2部分
1523…ラジカル輸送管の先端
1524…屈曲部
16…ジョイント
161…筒部
162…拡径部
163…密閉板
1631…貫通孔
1632…ボルト
1633…隙間