IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特許-界磁子 図1
  • 特許-界磁子 図2
  • 特許-界磁子 図3
  • 特許-界磁子 図4
  • 特許-界磁子 図5
  • 特許-界磁子 図6
  • 特許-界磁子 図7
  • 特許-界磁子 図8
  • 特許-界磁子 図9
  • 特許-界磁子 図10
  • 特許-界磁子 図11
  • 特許-界磁子 図12
  • 特許-界磁子 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】界磁子
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/2706 20220101AFI20240123BHJP
   H02K 1/2786 20220101ALI20240123BHJP
【FI】
H02K1/2706
H02K1/2786
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023503773
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 JP2022007723
(87)【国際公開番号】W WO2022186058
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2021032025
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕樹
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-122232(JP,A)
【文献】特開2007-150194(JP,A)
【文献】特開2007-068270(JP,A)
【文献】特開2019-122225(JP,A)
【文献】特開2013-106499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/2706
H02K 1/2786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電機子巻線(51)を有する電機子(50)を備える回転電機(10)を構成し、径方向において前記電機子に対向して配置される界磁子(20)において、
周方向に極性が交互となる複数の磁極を有する磁石(31,35,36)を備え、
磁極中心であるd軸の側の磁化容易軸の向きが、磁極境界であるq軸の側の磁化容易軸の向きよりもd軸の側の向きに近づくように前記磁石の配向がなされており、
前記磁石において、磁化容易軸の向きの線膨張係数が正であり、磁化容易軸に垂直な向きの線膨張係数が負であり、かつ、磁化容易軸の向きの線膨張係数の絶対値が、磁化容易軸に垂直な向きの線膨張係数の絶対値よりも大きくされており、
前記磁石のd軸部において単位温度変化あたりの周方向における寸法変化量をFdとし、前記磁石のq軸部において単位温度変化あたりの周方向における寸法変化量をFqとする場合、
d軸の側の磁化容易軸の向きが、q軸の側の磁化容易軸の向きよりもd軸の側の向きに近づいて、かつ、
【数1】
を満たすように前記磁石の配向がなされている、界磁子。
【請求項2】
前記磁石が取り付けられた周面を有する磁石保持部(21)を備える表面磁石型の界磁子において、
前記磁石は、周方向に分割された複数の分割磁石により構成されており、
周方向において隣り合う前記各分割磁石の割面が互いに当接している、請求項に記載の界磁子。
【請求項3】
前記磁石(31)が取り付けられた周面を有する磁石保持部(21)を備える表面磁石型の界磁子において、
前記磁石は、周方向に分割された複数の分割磁石により構成されており、
前記磁石保持部から径方向において前記電機子側に突出し、線膨張係数が正である突出部(33,34)を備え、
前記分割磁石の周方向における端部が前記突出部に当接している、請求項に記載の界磁子。
【請求項4】
電機子巻線(51)を有する電機子(50)を備える回転電機(10)を構成し、径方向において前記電機子に対向して配置される界磁子(120)において、
周方向に極性が交互となる複数の磁極を有する磁石(123,143)と、
界磁子コア(121)と、を備え、
前記界磁子は、前記界磁子コアに形成された磁石収容孔(122,144)に前記磁石(123,143)が収容された埋込磁石型の界磁子であり、
磁極中心であるd軸の側の磁化容易軸の向きが、磁極境界であるq軸の側の磁化容易軸の向きよりもd軸の側の向きに近づくように前記磁石の配向がなされており、
前記磁石収容孔及び前記磁石は、d軸側からq軸側に向かって長尺状に延びており、
前記磁石において、磁化容易軸の向きの線膨張係数が正であり、磁化容易軸に垂直な向きの線膨張係数が負であり、かつ、磁化容易軸の向きの線膨張係数の絶対値が、磁化容易軸に垂直な向きの線膨張係数の絶対値よりも大きくされており、
前記磁石のd軸部において単位温度変化あたりの長手方向における寸法変化量をGdとし、前記磁石のq軸部において単位温度変化あたりの長手方向における寸法変化量をGqとする場合、
d軸の側の磁化容易軸の向きが、q軸の側の磁化容易軸の向きよりもd軸の側の向きに近づいて、かつ、
【数2】
を満たすように前記磁石の配向がなされている、界磁子。
【請求項5】
前記磁石は、軸方向に分割された複数の磁石の積層体により構成されている請求項1~4のいずれか1項に記載の界磁子。
【請求項6】
前記磁石は、焼結ネオジム磁石である請求項1~5のいずれか1項に記載の界磁子。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年3月1日に出願された日本出願番号2021-032025号に基づくもので、ここにその記載内容を援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、回転電機を構成する界磁子に関する。
【背景技術】
【0003】
界磁子として、電機子巻線を有する電機子を備える回転電機を構成し、径方向において電機子に対向して配置されるものが知られている。例えば、特許文献1に見られるように、界磁子が表面磁石型のロータとして用いられるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-24296号公報
【発明の概要】
【0005】
界磁子が有する磁石の温度変化により、磁石の寸法が周方向に変化し得る。これに伴い、磁石に熱応力が加わることが懸念される。
【0006】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、磁石に加わる熱応力を低減することができる界磁子を提供することである。
【0007】
手段1は、電機子巻線を有する電機子を備える回転電機を構成し、径方向において前記電機子に対向して配置される界磁子において、周方向に極性が交互となる複数の磁極を有する磁石を備え、磁極中心であるd軸の側の磁化容易軸の向きが、磁極境界であるq軸の側の磁化容易軸の向きよりもd軸の側の向きに近づくように前記磁石の配向がなされており、前記磁石において、磁化容易軸の向きと磁化容易軸に垂直な向きとで線膨張係数が異なる。
【0008】
手段1では、磁石は、磁化容易軸の向きと磁化容易軸に垂直な向きとで線膨張係数が異なる。この場合、d軸の側の磁化容易軸の向きが、q軸の側の磁化容易軸の向きよりもd軸の向きに近づくように磁石の配向がなされていることにより、周方向において、d軸の側の線膨張係数と、q軸の側の線膨張係数とが異なる。このため、磁石のd軸の側と、磁石のq軸の側とでは、磁石の温度変化による周方向における寸法の変化が異なる。そのため、磁石全体としての周方向における寸法の変化を抑制することができる。その結果、磁石に加わる熱応力を低減することができる。
【0009】
手段2は、手段1において、前記磁石において、磁化容易軸の向きの線膨張係数が正であり、磁化容易軸に垂直な向きの線膨張係数が負である。
【0010】
手段2によれば、磁石において、温度が高くなるほど、d軸の側の周方向における寸法は小さくなり、q軸の側の周方向における寸法は大きくなる。一方、磁石において、温度が低くなるほど、d軸の側の周方向における寸法は大きくなり、q軸の側の周方向における寸法は小さくなる。そのため、磁石全体としての周方向における寸法の変化を好適に抑制することができる。
【0011】
手段3は、手段2において、前記磁石が取り付けられた周面を有する磁石保持部を備える表面磁石型の界磁子において、前記磁石は、周方向に分割された複数の分割磁石により構成されており、周方向において隣り合う前記各分割磁石の割面が互いに当接している。
【0012】
手段3では、磁石の温度変化による磁石の寸法変化が生じた場合、周方向において隣り合う各分割磁石同士が押し合う方向の熱応力、又は隣り合う各分割磁石同士が離れる方向の熱応力が大きくなりやすい。この点、磁化容易軸の向きの線膨張係数が正であり、磁化容易軸に垂直な向きの線膨張係数が負である磁石が用いられるメリットが大きい。
【0013】
手段4は、手段2において、前記磁石が取り付けられた周面を有する磁石保持部を備える表面磁石型の界磁子において、前記磁石は、周方向に分割された複数の分割磁石により構成されており、前記磁石保持部から径方向において前記電機子側に突出し、線膨張係数が正である突出部を備え、前記分割磁石の周方向における端部が前記突出部に当接している。
【0014】
手段4では、例えば磁石保持部に対する分割磁石の位置決め用に、界磁子が突出部を備えている。手段4では、磁石の温度変化による磁石の寸法変化が生じた場合、周方向において分割磁石と突出部との間で押し合う方向の熱応力、又は分割磁石と突出部とが離れる方向の熱応力が大きくなりやすい。この点、磁化容易軸の向きの線膨張係数が正であり、磁化容易軸に垂直な向きの線膨張係数が負である磁石が用いられるメリットが大きい。
【0015】
手段5は、手段2~4のいずれか1つにおいて、前記磁石において、磁化容易軸の向きの線膨張係数の絶対値が、磁化容易軸に垂直な向きの線膨張係数の絶対値よりも大きくされており、前記磁石のd軸部において単位温度変化あたりの周方向における寸法変化量をFdとし、前記磁石のq軸部において単位温度変化あたりの周方向における寸法変化量をFqとする場合、d軸の側の磁化容易軸の向きが、q軸の側の磁化容易軸の向きよりもd軸の側の向きに近づいて、かつ、
【0016】
【数1】
を満たすように前記磁石の配向がなされている。
【0017】
手段5では、磁石において、磁化容易軸の向きの線膨張係数の絶対値が、磁化容易軸に垂直な向きの線膨張係数の絶対値よりも大きくされている。このため、d軸に磁石磁束を集中させる配向、つまり、d軸の側の磁化容易軸の向きがq軸の側の磁化容易軸の向きよりもd軸の側の向きに近づくように磁石の配向がなされることにより、上記|Fd/Fq|で表される比率が1未満となる。この比率が1に近いほど、温度変化に伴う磁石の周方向の寸法変化量が小さくなる。このため、手段5によれば、d軸に磁石磁束を集中させる配向を実現して回転電機のトルクを高めつつ、温度変化に伴う磁石の周方向の寸法変化を好適に抑制できる。
【0018】
手段6では、手段2において、界磁子コアを備え、前記界磁子コアに形成された磁石収容孔に前記磁石が収容された埋込磁石型の界磁子において、前記磁石収容孔及び前記磁石は、d軸側からq軸側に向かって長尺状に延びており、前記磁石において、磁化容易軸の向きの線膨張係数の絶対値が、磁化容易軸に垂直な向きの線膨張係数の絶対値よりも大きくされており、前記磁石のd軸部において単位温度変化あたりの長手方向における寸法変化量をGdとし、前記磁石のq軸部において単位温度変化あたりの長手方向における寸法変化量をGqとする場合、d軸の側の磁化容易軸の向きが、q軸の側の磁化容易軸の向きよりもd軸の側の向きに近づいて、かつ、
【0019】
【数2】
を満たすように前記磁石の配向がなされている。
【0020】
手段6によれば、埋込磁石型の界磁子において、d軸に磁石磁束を集中させる配向を実現して回転電機のトルクを高めつつ、温度変化に伴う磁石の周方向の寸法変化を好適に抑制できる。
【0021】
手段7では、手段1~6のいずれか1つにおいて、磁石は、軸方向に分割された複数の磁石の積層体により構成されている。
【0022】
手段7では、磁石の温度変化による磁石の寸法変化が生じた場合、軸方向に隣り合う磁石間の熱応力が大きくなりやすい。この点、磁化容易軸の向きと磁化容易軸に垂直な向きとで線膨張係数が異なる磁石を備えるメリットが大きい。
【0023】
なお、磁石としては、例えば手段8のように焼結ネオジム磁石を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本開示についての上記目的およびその他の目的、特徴や利点は、添付の図面を参照しながら下記の詳細な記述により、より明確になる。その図面は、
図1図1は、第1実施形態に係る回転電機の縦断面図であり、
図2図2は、回転子の横断面図であり、
図3図3は、磁石の構成を示す図であり、
図4図4は、磁石ユニットを周方向に展開した図であり、
図5図5は、規定長さを示す図であり、
図6図6は、第2実施形態に係る磁石ユニットを周方向に展開した図であり、
図7図7は、第3実施形態に係る磁石ユニットを周方向に展開した図であり、
図8図8は、第4実施形態に係る回転子の横断面図であり、
図9図9は、規定長さを示す図であり、
図10図10は、その他の実施形態に係る回転子の横断面図であり、
図11図11は、その他の実施形態に係る軸方向に積層された磁石を示す図であり、
図12図12は、その他の実施形態に係る磁石の構成を示す図であり、
図13図13は、その他の実施形態に係る磁石の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号、または百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分および/又は関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0026】
本実施形態における回転電機は、例えば車両動力源として用いられるものとなっている。ただし、回転電機は、産業用、車両用、航空機用、家電用、OA機器用、遊技機用などとして広く用いられることが可能となっている。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一又は均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0027】
<第1実施形態>
回転電機10は、同期式多相交流モータであり、アウタロータ構造(外転構造)のものとなっている。回転電機10の概要を図1図3に示す。以下の記載では、回転電機10において、回転軸11が延びる方向を軸方向とし、回転軸11の中心から放射状に延びる方向を径方向とし、回転軸11を中心として円周状に延びる方向を周方向としている。
【0028】
回転電機10は、大別して、回転子20及び固定子ユニット30を有する回転電機本体と、回転電機本体を囲むように設けられるハウジング40とを備えている。これら各部材はいずれも、回転子20に一体に設けられた回転軸11に対して同軸に配置されており、所定順序で軸方向に組み付けられることで回転電機10が構成されている。回転軸11は、固定子ユニット30及びハウジング40にそれぞれ設けられた図示しない一対の軸受に支持され、その状態で回転可能となっている。回転軸11の回転により、例えば車両の車軸が回転する。回転電機10は、ハウジング40が車体フレーム等に固定されることにより車両に搭載可能となっている。
【0029】
回転電機10において、固定子ユニット30は回転軸11を囲むように設けられ、固定子ユニット30の径方向外側に回転子20が配置されている。固定子ユニット30は、固定子50と、その径方向内側に組み付けられた固定子ホルダ60とを有している。回転子20と固定子50とはエアギャップを挟んで径方向に対向配置されており、回転子20が回転軸11と共に一体回転することにより、固定子50の径方向外側にて回転子20が回転する。本実施形態において、回転子20が「界磁子」に相当し、固定子50が「電機子」に相当する。
【0030】
次に、固定子ユニット30の構成を説明する。
【0031】
固定子ユニット30は、その概要として、固定子50とその径方向内側の固定子ホルダ60とを有している。固定子50は、「電機子巻線」としての固定子巻線51と、固定子コア52とを有している。固定子ホルダ60は、例えば、鋳鉄等の軟磁性材料、又はアルミニウムや炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等の非磁性材料により構成され、円筒形状をなしている。
【0032】
固定子50は、軸方向において、回転子20と径方向に対向するコイルサイドに相当する部分と、そのコイルサイドの軸方向外側であるコイルエンドに相当する部分とを有している。この場合、固定子コア52は、軸方向においてコイルサイドに相当する範囲で設けられている。
【0033】
固定子巻線51は、複数の相巻線を有し、各相の相巻線が周方向に所定順序で配置されることで円筒状に形成されている。本実施形態では、U相、V相及びW相の相巻線を用いることで、固定子巻線51が3相の相巻線を有する構成となっている。
【0034】
各相の固定子巻線51は、軸方向に延びるとともにコイルサイドを含む範囲に配置された導線部53と、周方向に隣り合う同相の導線部53同士を接続する渡り部とを有している。図1には、コイルサイドにおけるU相、V相及びW相の導線部53U,53V,53Wの並び順が示されている。
【0035】
固定子コア52は、磁性体である電磁鋼板からなるコアシートが軸方向に積層されたコアシート積層体として構成されており、径方向に所定の厚さを有する円筒状をなしている。固定子コア52において回転子20側となる径方向外側には固定子巻線51が組み付けられている。固定子コア52の外周面は凹凸のない曲面状をなしている。固定子コア52はバックヨークとして機能する。固定子コア52は、例えば円環板状に打ち抜き形成された複数枚のコアシートが軸方向に積層されて構成されている。ただし、固定子コア52として、帯状のコアシートからなるヘリカルコア構造を有するものを用いてもよい。
【0036】
本実施形態において、固定子50は、スロットを形成するためのティースを有していないスロットレス構造を有するものであるが、その構成は以下の(A)~(C)のいずれかを用いたものであってもよい。
(A)固定子50において、周方向における各導線部53の間に導線間部材を設け、かつその導線間部材として、1磁極における導線間部材の周方向の幅寸法をWt、導線間部材の飽和磁束密度をBs、1磁極における磁石31の周方向の幅寸法をWm、磁石31の残留磁束密度をBrとした場合に、Wt×Bs≦Wm×Brの関係となる磁性材料を用いている。
(B)固定子50において、周方向における各導線部53の間に導線間部材を設け、かつその導線間部材として、非磁性材料を用いている。
(C)固定子50において、周方向における各導線部53の間に導線間部材を設けていない構成となっている。
【0037】
図2は、回転子20の縦断面図である。図2に示すように、回転子20は、略円筒状の回転子キャリア21と、回転子キャリア21に固定された環状の磁石ユニット22とを有している。回転子キャリア21は、円筒状をなす円筒部23と、円筒部23の軸方向一端に設けられた端板部24とを有しており、それらが一体化されることで構成されている。回転子キャリア21は、「磁石保持部」として機能し、円筒部23の径方向内側に環状に磁石ユニット22が固定されている。端板部24に対して回転軸11が固定されている。本実施形態において、円筒部23は、非磁性材料により構成されており、具体的には例えばアルミニウムにより構成されている。
【0038】
磁石ユニット22は、回転子20の回転中心と同心の円環状をなしており、円筒部23の内周面に固定された複数の磁石31を有している。つまり、回転電機10は、表面磁石型の同期機(SPMSM)である。磁石31は、円筒部23に径方向外側から包囲された状態で設けられており、径方向内側に配置された固定子50のコイルサイドと対向するように設けられている。
【0039】
図3は、磁石ユニット22の断面構造を示す部分横断面図である。図3には、磁石31の磁化容易軸の向きを矢印にて示している。
【0040】
磁石ユニット22において、磁石31は、回転子20の周方向に沿って極性が交互に変わるように並べて設けられている。これにより、磁石ユニット22には、周方向に複数の磁極が形成されている。磁石31は、極異方性の永久磁石であり、固有保磁力が400[kA/m]以上であり、かつ残留磁束密度Brが1.0[T]以上である。
【0041】
磁石31において径方向内側の周面が、磁束の授受が行われる磁束作用面32である。磁石ユニット22は、磁石31の磁束作用面32において、磁極中心であるd軸付近の領域に集中的に磁束を生じさせるものとなっている。具体的には、磁石31では、d軸側(d軸寄りの部分)とq軸側(q軸寄りの部分)とで磁化容易軸の向きが相違しており、d軸側では磁化容易軸の向きがd軸に平行する向きとなり、q軸側では磁化容易軸の向きがq軸に直交する向きとなっている。この場合、磁化容易軸の向きに沿って円弧状の磁石磁路が形成されている。要するに、磁石31は、d軸の側の磁化容易軸の向きが、q軸の側の磁化容易軸の向きよりもd軸の側の向きに近づくように配向がなされている。
【0042】
本実施形態において、磁石31は、1つで1磁極を構成し、q軸に割面を有する分割磁石である。周方向に隣り合う各磁石31は、互いに当接した状態で配置されている。q軸を挟んで両側の磁石31は互いに吸引し合うため、これら各磁石31は互いの接触状態を保持できる。そのため、パーミアンスの向上に寄与する構造となっている。磁石31において径方向外側の周面と、円筒部23において径方向内側の周面との間に接着剤等からなる接着層が介在している。これにより、磁石31が円筒部23に固定されている。
【0043】
磁石31の温度変化により、磁石31の寸法が周方向に変化し得る。磁石31の温度上昇に伴い、周方向において隣り合う各磁石31同士が押し合う方向の熱応力の増大が懸念される。この場合、例えば、磁石31の破損が懸念される。また、磁石31の温度低下に伴い、周方向において隣り合う各磁石31が離れる方向の熱応力の発生が懸念される。この場合、例えば、隣り合う各磁石31の間に隙間ができ、磁気回路の磁気抵抗が増大し、回転電機10のトルク低下が懸念される。
【0044】
そこで、本願発明者は、上述した課題を解決するべく磁石31の線膨張係数に着目し、磁石31に加わる熱応力を低減できることを見出した。
【0045】
線膨張係数は、物体の温度変化に対応して物体の寸法が変化する割合を示すものである。物体の線膨張係数が正の場合、温度が高くなるほど物体は膨張する。一方、物体の線膨張係数が負の場合、温度が高くなるほど物体は収縮する。永久磁石では、磁化容易軸の向きと磁化容易軸に垂直な向きとで線膨張係数が異なるものが存在する。
【0046】
本実施形態では、磁石31として、磁化容易軸の向きと磁化容易軸に垂直な向きとで線膨張係数が異なる永久磁石を用いる。具体的には、磁石31は、磁化容易軸の向きの線膨張係数αpが正となり、磁化容易軸に垂直な向きの線膨張係数αvが負となる焼結ネオジム磁石である。このため、磁石31において、温度が高くなるほど、磁化容易軸の向きの寸法は大きくなり、磁化容易軸に垂直な向きの寸法は小さくなる。一方、磁石31において、温度が低くなるほど、磁化容易軸の向きの寸法は小さくなり、磁化容易軸に垂直な向きの寸法は大きくなる。
【0047】
磁石31において、磁化容易軸の向きの線膨張係数αpの絶対値が、磁化容易軸に直交する向きの線膨張係数αvの絶対値よりも大きくされている。磁化容易軸の向きの線膨張係数αpは、例えば5.5~7.5ppm/℃であり、磁化容易軸に垂直な向きの線膨張係数αvは、例えば-3.0~-0.5ppm/℃である。磁化容易軸の向きの線膨張係数αpの絶対値は、例えば、磁化容易軸に垂直な向きの線膨張係数αvの絶対値の2~15倍、5~15倍、8~15倍、10~15倍、8~13倍又は10~13倍の値である。
【0048】
図4に、磁石ユニット22を周方向に直線状に展開して示す。d軸側では、磁石31の磁化容易軸は周方向に対して垂直となる向きに近づくため、周方向における磁石31の線膨張係数はαv(<0)となる。q軸側では、磁石31の磁化容易軸は周方向に近づくため、周方向における磁石31の線膨張係数はαp(>0)となる。これにより、磁石31の温度が高くなるほど、周方向において、d軸側では磁石31の寸法は小さくなり、q軸側では磁石31の寸法は大きくなる。一方、磁石31の温度が低くなるほど、周方向において、d軸側では磁石31の寸法は大きくなり、q軸側では磁石31の寸法は小さくなる。そのため、磁石31全体としての周方向における寸法の変化を抑制することができる。その結果、周方向において隣り合う各磁石31同士が押し合う方向の熱応力や、周方向において隣り合う各磁石31が離れる方向の熱応力を抑制できる。その結果、磁石31の破損や磁気抵抗の増加を抑制できる。
【0049】
ここで、磁石31のd軸部において、温度が単位温度だけ上昇した場合の周方向における寸法減少量をFdとする。また、磁石31のq軸部において、温度が上記単位温度だけ上昇した場合の周方向における寸法増加量をFqとする。この場合において、d軸の側の磁化容易軸の向きが、q軸の側の磁化容易軸の向きよりもd軸の側の向きに近づいて、かつ、
【0050】
【数3】
を満たすように磁石31の配向がなされていることが望ましい。これにより、d軸に磁石磁束を集中させる配向を実現して回転電機10のトルクを高めつつ、温度変化に伴う磁石31の周方向の寸法変化を好適に抑制できる。なお、上記|Fd/Fq|で表される比率は、例えば、0.9以上であってかつ1未満であることが望ましく、0.95以上であってかつ1未満であることがより望ましい。
【0051】
図5に示すように、磁石31のq軸部は、例えば、磁石31のq軸の割面から周方向においてd軸に向かう特定位置までの部分であって、q軸の割面から周方向において規定長さLaまでの部分である。規定長さLaは、例えば、磁石31において径方向中央位置の周方向長さの1/8~1/4の値である。
【0052】
Fqは、例えば、磁石31のq軸部において径方向中央位置の周方向長さの変化量、又はq軸部において、径方向の複数位置それぞれにおける周方向長さの変化量の平均値である。
【0053】
図5に示すように、磁石31のd軸部は、例えば、磁石31においてd軸を跨ぐ一部分であって、d軸から周方向において一方の割面に向かってLa/2までの部分と、d軸から周方向において他方の割面に向かってLa/2までの部分とからなる。
【0054】
Fdは、例えば、磁石31のd軸部において径方向中央位置の周方向長さの変化量、又はd軸部において、径方向の複数位置それぞれにおける周方向長さの変化量の平均値である。
【0055】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図6に示すように、回転子20は、回転子キャリア21のうちq軸を跨ぐ部分から径方向内側に突出したq軸側突出部33を有している。q軸側突出部33は、磁石31のq軸側に設けられた割面に当接しており、例えば、周方向における磁石31の位置決めに用いられる。図6では、径方向において、q軸側突出部33の寸法と磁石31の寸法とが同じとされる例を示している。なお、図6は、磁石ユニット22を周方向に直線状に展開したものである。また、磁石31としては、第1実施形態と同様のものを用いることができる。
【0056】
本実施形態において、q軸側突出部33は、鋳鉄等の軟磁性材料により構成されており、q軸側突出部33の線膨張係数βは任意の方向において正の値である。このため、q軸側突出部33において、温度が高くなるほどq軸側突出部33の周方向の寸法は大きくなり、温度が低くなるほどq軸側突出部33の周方向の寸法は小さくなる。
【0057】
本実施形態では、周方向において隣り合う磁石31は、q軸側突出部33を挟んで配置される。この場合、磁石31及びq軸側突出部33の温度変化により、周方向における磁石31及びq軸側突出部33の寸法変化が生じた場合、磁石31とq軸側突出部33との間で押し合う方向、及び磁石31とq軸側突出部33とが離れる方向のいずれかに熱応力が大きくなりやすい。この点、磁石31において、磁化容易軸の向きの線膨張係数αpは正とされ、磁化容易軸に垂直な向きの線膨張係数αvは負とされる本実施形態の構成を適用するメリットが大きい。
【0058】
なお、q軸側突出部33は、回転子キャリア21と一体のものであってもよいし、回転子キャリア21とは別部材であってもよい。
【0059】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、磁石31は、d軸側に割面を有するものとなっている。
【0060】
図7に、磁石ユニット22を周方向に直線状に展開して示す。回転子20は、回転子キャリア21のうちd軸を跨ぐ部分から径方向内側に突出したd軸側突出部34を有している。d軸側突出部34は、磁石31のd軸側に設けられた割面に当接しており、周方向における磁石31の位置決めに用いられる。図7では、径方向において、d軸側突出部34の寸法と磁石31の寸法とが同じとされる一例を示している。
【0061】
d軸側突出部34の線膨張係数γは任意の方向において正の値である。このため、d軸側突出部34において、温度が高くなるほどd軸側突出部34の周方向の寸法は大きくなり、温度が低くなるほどd軸側突出部34の周方向の寸法は小さくなる。d軸側突出部34は、例えば、鋳鉄等の軟磁性材料又は合成樹脂等の非磁性材料により構成されている。なお、磁石31としては、第1実施形態と同様のものを用いることができる。
【0062】
本実施形態では、周方向において隣り合う磁石31は、d軸側突出部34を挟んで配置される。この場合、磁石31及びd軸側突出部34の温度が高くなると、周方向において、d軸側の磁石31の寸法は小さくなり、d軸側突出部34の寸法は大きくなる。一方、磁石31及びd軸側突出部34の温度が低くなると、周方向において、d軸側の磁石31の寸法は大きくなり、d軸側突出部34の寸法は小さくなる。これにより、d軸近傍における磁石31及びd軸側突出部34の周方向への寸法変化を好適に抑制できる。
【0063】
<第4実施形態>
以下、第4実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態の回転電機は、インナロータ構造(内転構造)のIPMモータである。
【0064】
図8に、回転電機を構成する回転子120の部分横断面図を示す。
【0065】
回転子120は、図示しない回転軸に固定された回転子コア121(「界磁子コア」に相当)を備えている。回転子コア121には、周方向に配列された複数の磁石収容孔122が形成されており、各磁石収容孔122には、磁石123(永久磁石)が埋設されている。
【0066】
回転子コア121には、円弧状(弓なりの形状)をなす一対の磁石収容孔122が形成されている。一対の磁石収容孔122が、外周側に向かうにつれて対向間距離が大きくなるように略V字状に形成されており、一対の磁石収容孔122は、d軸を対称の軸とする線対称となっている。
【0067】
磁石収容孔122は、互いに等距離で隔てられた円弧状の曲面122a,122bと、その曲面122a,122bの両端位置を互いに連結する平坦状の連結面122c,122dとにより囲まれて形成されている。連結面122c,122dのうちq軸に近い連結面122cは、q軸に平行になるように設けられている。また、d軸に近い連結面122dは、d軸に垂直になるように設けられている。
【0068】
磁石収容孔122内に、その孔形状と同じ形状の磁石123が挿入配置されている。この場合、一対の磁石収容孔122に収容された一対の磁石123により1つの磁極が形成されている。磁石123は、長手方向において対向する123a及び123bを有しており、磁石123の磁化容易軸が矢印で示されている。磁石123は、両端123a,123bにおけるq軸に近い端部123bからd軸に近い端部123aに向かうに従って、磁化容易軸が、q軸に対して直交する方向に近い向きからd軸に対して平行な方向に近い向きに、反固定子側に凸の非直線状に切り替わるように設けられている。つまり、磁石123における磁石磁路は、磁石123を短手方向に横切る方向に定められており、かつその向きが回転子コア121の中心軸側に凸となる円弧状をなしている。
【0069】
このように磁石123の磁化容易軸が定められていることにより、磁石123において、磁化容易軸が、磁石123におけるq軸に近い端部123bではq軸に対して直交する方向に近い向きとなり、かつd軸に近い端部123aではd軸に対して平行な方向に近い向きとなる。
【0070】
磁石123は、第1実施形態と同様に焼結ネオジム磁石である。また、第1実施形態と同様に、磁石123において、磁化容易軸の向きの線膨張係数の絶対値が、磁化容易軸に垂直な向きの線膨張係数の絶対値よりも大きくされている。
【0071】
磁石123のd軸部において、温度が単位温度だけ上昇した場合の長手方向における寸法減少量をGdとする。また、磁石123のq軸部において、温度が単位温度だけ上昇した場合の長手方向における寸法増加量をGqとする。この場合において、d軸の側の磁化容易軸の向きが、q軸の側の磁化容易軸の向きよりもd軸の側の向きに近づいて、かつ、
【0072】
【数4】
を満たすように磁石123の配向がなされていることが望ましい。これにより、d軸に磁石磁束を集中させる配向を実現して回転電機のトルクを高めつつ、温度変化に伴う磁石123の長手方向の寸法変化を好適に抑制できる。なお、上記|Gd/Gq|で表される比率は、例えば、0.9以上であってかつ1未満であることが望ましく、0.95以上であってかつ1未満であることがより望ましい。
【0073】
図9に示すように、磁石123のq軸部は、例えば、磁石123において、q軸側の端部123bから長手方向においてd軸側の端部123aに向かう特定位置までの部分であって、q軸側の端部123bから長手方向において規定長さGaまでの部分である。規定長さGaは、例えば、磁石123において径方向中央位置の長手方向長さの1/8~1/4の値である。
【0074】
Gqは、例えば、磁石123のq軸部において径方向中央位置の周方向長さの変化量、又はq軸部において、径方向の複数位置それぞれにおける周方向長さの変化量の平均値である。
【0075】
図9に示すように、磁石123のd軸部は、例えば、磁石123において、d軸側の端部123aから長手方向においてq軸側の端部123bに向かう特定位置までの部分であって、d軸側の端部123aから長手方向において上記規定長さGaまでの部分である。
【0076】
Gdは、例えば、磁石123のd軸部において径方向中央位置の周方向長さの変化量、又はd軸部において、径方向の複数位置それぞれにおける周方向長さの変化量の平均値である。
【0077】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0078】
・回転子120としては、第4実施形態の図8に示したものに代えて、例えば図10に示すものが用いられてもよい。
【0079】
図10に示すように、回転子コア121に形成された磁石収容孔144と、その内部に収容される磁石143との横断面(軸方向に直交する断面)が、それぞれ円弧状でなく長方形状となっている。磁石収容孔144は、互いに等距離で隔てられた平坦面144a,144bと、その平坦面144a,144bの両極位置を互いに連結する連結面144c,144bとにより囲まれて形成されている。回転子120の横断面において、磁石収容孔144は、d軸側からq軸側に向かう方向を長辺とする長方形状をなしている。また、d軸を挟んで左右一対の磁石収容孔144及び磁石143がV字状に配置されている。
【0080】
磁石143において、d軸側の端部に近い位置における磁化容易軸とq軸側の端部に近い位置における磁化容易軸とを相違させている。すなわち、磁石143において、d軸寄りの部分とq軸寄りの部分とで磁化方向を相違させている。この場合、磁石143において、d軸側の端部に近い位置における磁化容易軸は、q軸側の端部に近い位置における磁化容易軸よりも、d軸に対して平行に近くなっている。
【0081】
・磁石31は、図11に示すように、軸方向において複数に分割された磁石31aにより構成されてもよい。つまり、磁石31は、複数の磁石31aの積層体により構成されてもよい。磁石31aは、軸方向において対向する一対の平行な平坦面を有している。軸方向に隣り合う平坦面同士が当接した状態で接着剤などにより固定されることで、複数の磁石31aの積層体が一体化されている。この場合、周方向において、軸方向に隣り合う分割磁石間の熱応力が大きくなりやすい。この点、磁化容易軸の向きの線膨張係数αpは正とされ、磁化容易軸に垂直な向きの線膨張係数αvは負とされる本実施形態の構成を適用するメリットが大きい。
【0082】
・第1実施形態において、磁石31として、磁化容易軸の向きの線膨張係数αpは正であり、磁化容易軸に垂直な向きの線膨張係数αvは負であるものが用いられたが、これに限らない。例えば、磁石31として、磁化容易軸の向きの線膨張係数αp及び磁化容易軸に垂直な向きの線膨張係数αvがともに正であり、磁化容易軸に垂直な向きの線膨張係数αvの絶対値と、磁化容易軸の向きにおける線膨張係数αpの絶対値とが異なるものを用いてもよい。このような磁石としては、例えばサマリウムコバルト磁石又はフェライト磁石が挙げられる。この場合でも、磁石31の周方向における寸法の変化を抑制することはできる。
【0083】
・q軸側突出部33の寸法及びd軸側突出部34の寸法は、径方向において、磁石31の寸法と同じとされたが、これに限らない。q軸側突出部33の寸法及びd軸側突出部34の寸法は、径方向において、磁石31の寸法よりも小さくてよい。
【0084】
・第1実施形態において、磁石として、例えば、図12に示すようにd軸に割面を有している磁石35、又は図13に示すようにq軸に加えd軸にも割面を有している磁石36が用いられてもよい。図13に示す磁石36は、周方向に並ぶ2つの磁石36a,36bで1磁極を構成している。
【0085】
図12に示すように磁石35がd軸に割面を有している場合、磁石35のd軸部は、例えば、磁石35のd軸の割面から周方向においてq軸に向かうまでの一部分であって、d軸の割面から周方向において上記規定長さLaまでの部分である。
【0086】
Fdは、例えば、磁石35のd軸部において径方向中央位置の周方向長さの変化量、又はq軸部において、径方向の複数位置それぞれにおける周方向長さの変化量の平均値である。
【0087】
図12に示すように磁石35がd軸に割面を有している場合、磁石35のq軸部は、例えば、磁石35においてq軸を跨ぐ一部分であって、q軸から周方向において一方の割面に向かってLa/2までの部分と、q軸から周方向において他方の割面に向かってLa/2までの部分とからなる。
【0088】
Fqは、例えば、磁石35のq軸部において径方向中央位置の周方向長さの変化量、又はq軸部において、径方向の複数位置それぞれにおける周方向長さの変化量の平均値である。
【0089】
図13に示す磁石36aを例にして説明すると、磁石36aのq軸部は、例えば、磁石36aのq軸の割面から周方向においてd軸に向かうまでの一部分であって、q軸の割面から周方向において上記La/2までの部分である。
【0090】
Fqは、例えば、磁石36aのq軸部において径方向中央位置の周方向長さの変化量、又はq軸部において、径方向の複数位置それぞれにおける周方向長さの変化量の平均値である。
【0091】
図13に示す磁石36aを例にして説明すると、磁石36aのd軸部は、例えば、磁石36aのd軸の割面から周方向においてq軸に向かうまでの一部分であって、d軸の割面から周方向において上記La/2までの部分である。
【0092】
Fdは、例えば、磁石36aのd軸部において径方向中央位置の周方向長さの変化量、又はd軸部において、径方向の複数位置それぞれにおける周方向長さの変化量の平均値である。
【0093】
また、磁石における周方向の分割位置は、図12,13に示した位置に限らず、任意の位置とすることができる。磁石における周方向の分割数は、磁石を製造可能な範囲で増やすことができる。また、磁石としては、周方向に分割されたものに限らず、円環状の磁石が用いられてもよい。
【0094】
・回転電機としては、スロットレス構造のものに限らず、ティースを備えるものであってもよい。
【0095】
・界磁子及び電機子のうち、界磁子が回転子とされる回転電機に限らず、電機子が回転子とされる回転電機であってもよい。
【0096】
・この明細書における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0097】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13