(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】車両の後部構造
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20240123BHJP
B60R 5/04 20060101ALI20240123BHJP
B60R 16/04 20060101ALI20240123BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20240123BHJP
H01M 50/244 20210101ALI20240123BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20240123BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B60R5/04 Z
B60R16/04 A
B62D25/20 J
H01M50/244 A
H01M50/249
(21)【出願番号】P 2023532043
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2022026148
(87)【国際公開番号】W WO2023277115
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】P 2021108543
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177460
【氏名又は名称】山崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】窪田 陽考
(72)【発明者】
【氏名】岡田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】三浦 康太
(72)【発明者】
【氏名】山岡 一哉
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-19444(JP,A)
【文献】特開2020-111306(JP,A)
【文献】特開2012-179963(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0008574(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B60R 5/04, 16/04
B62D 17/00- 25/08,25/14-29/04
H01M 50/249,50/244
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後部に配置されるリヤフロアパネルと、
前記リヤフロアパネルの上面の車幅方向の一方側に偏った位置に配置され、電解液を収容したバッテリと、
前記バッテリを上側から覆う天板と、前記天板の車幅方向の前記一方側の端部から下方に延びる端板と、前記端板と前記バッテリとの間に設けられ、前記天板から下側へ一体に突出形成された縦壁部と、を有するカーゴボックスと、
を備えた車両の後部構造。
【請求項2】
前記縦壁部は、前記天板の上面側が開放された中空箱状に形成されている請求項1に記載の車両の後部構造。
【請求項3】
前記縦壁部の下端部は、車両前後方向に二股に分かれて形成されている請求項1または2に記載の車両の後部構造。
【請求項4】
前記端板の下端部には、車幅方向から見て、前記縦壁部の下端部の二股の間の空間と重なる位置に、車幅方向に貫通する切欠きが形成されている請求項3に記載の車両の後部構造。
【請求項5】
前記縦壁部は、車両前後方向から見て、前記縦壁部の上側部分が前記縦壁部の下側部分に対して前記バッテリに向かって突出する段差形状を有する
請求項1または2に記載の車両の後部構造。
【請求項6】
前記バッテリと前記リヤフロアパネルとの間に設けられ、前記バッテリの下面を受け支えるバッテリトレイをさらに備え、
前記縦壁部の上側部分の車幅方向他方側の端は、前記バッテリトレイの外周縁の位置よりも前記バッテリに近い側に配置されている請求項5に記載の車両の後部構造。
【請求項7】
前記縦壁部は、鉛直方向から見たときに、車両前後方向の前側から後側に向かうほど前記バッテリ側に突出する形状を有する
請求項1または2に記載の車両の後部構造。
【請求項8】
前記端板は、車両後部の荷室側面を構成するクォータートリムと車幅方向に対向して配置されている
請求項1または2に記載の車両の後部構造。
【請求項9】
前記リヤフロアパネルを下側から支持し、車両前後方向に延びる一対のサイドメンバをさらに有し、
前記端板および前記縦壁部は、前記一対のサイドメンバのうちの少なくとも一方の直上に配置されている
請求項1または2に記載の車両の後部構造。
【請求項10】
前記一方のサイドメンバは、車幅方向に対向する一対の側壁と、その一対の側壁の下端同士を連結する底壁とを有し、
前記縦壁部は、前記一対の側壁のうち、前記バッテリに近い側の側壁の直上に配置され、
前記端板は、前記一対の側壁のうち、前記バッテリから遠い側の側壁の直上に配置されている請求項9に記載の車両の後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、ランプ類やエアコン等の電装品に電力を供給するバッテリが搭載される。このバッテリは、車両前部のエンジンルーム内に搭載されることが多いが、レイアウトによっては、車両後部のカーゴボックス内に搭載される場合もある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリは、電解液を流動状態で収容したウェットバッテリと、電解液をシート等に吸収させて非流動状態にし、そのシート等を収容したドライバッテリと、に大別される。このうちウェットバッテリ(以下単に「バッテリ」という)を車両後部の荷室に搭載した場合、後続車両が自車両に衝突する事故が起きたときに、カーゴボックスおよびカーゴボックス内に搭載されたバッテリが破損することがある。
【0005】
また、レイアウトの関係上、カーゴボックス内における車幅方向一方側の偏った位置にバッテリを配置しなければならない車両がある。このような車両では、バッテリからカーゴボックスの外側の車室内までの距離が近くなるため、上記のようにバッテリが破損した際、当該バッテリ内の電解液が車室内まで飛散するおそれがある。
【0006】
この発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、後続車両が自車両に衝突した際のカーゴボックスおよびカーゴボックス内に搭載されたバッテリの破損を防止するとともに、上記衝突の衝撃等によりバッテリの破損が生じた場合であっても、車室内への電解液の飛散を防止することができる車両の後部構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明では、以下の構成の車両の後部構造を提供する。
車両後部に配置されるリヤフロアパネルと、
前記リヤフロアパネルの上面の車幅方向の一方側に偏った位置に配置され、電解液を収容したバッテリと、
前記バッテリを上側から覆う天板と、前記天板の車幅方向の前記一方側の端部から下方に延びる端板と、前記端板と前記バッテリとの間に設けられ、前記天板から下側へ一体に突出形成された縦壁部と、を有するカーゴボックスと、
を備えた車両の後部構造。
【0008】
前記縦壁部は、前記天板の上面側が開放された中空箱状に形成されている構成を採用することができる。
【0009】
前記縦壁部の下端部は、車両前後方向に二股に分かれて形成されている構成を採用することができる。
【0010】
前記端板の下端部には、車幅方向から見て、前記縦壁部の下端部の二股の間の空間と重なる位置に、車幅方向に貫通する切欠きが形成されている構成を採用することができる。
【0011】
前記縦壁部は、車両前後方向から見て、前記縦壁部の上側部分が前記縦壁部の下側部分に対して前記バッテリに向かって突出する段差形状を有する構成を採用することができる。
【0012】
前記バッテリと前記リヤフロアパネルとの間に設けられ、前記バッテリの下面を受け支えるバッテリトレイをさらに備え、
前記縦壁部の上側部分の車幅方向他方側の端は、前記バッテリトレイの外周縁の位置よりも前記バッテリに近い側に配置されている構成を採用することができる。
【0013】
前記縦壁部は、鉛直方向から見たときに、車両前後方向の前側から後側に向かうほど前記バッテリ側に突出する形状を有する構成を採用することができる。
【0014】
前記端板は、車両後部の荷室側面を構成するクォータートリムと車幅方向に対向して配置されている構成を採用することができる。
【0015】
前記リヤフロアパネルを下側から支持し、車両前後方向に延びる一対のサイドメンバをさらに有し、
前記端板および前記縦壁部は、前記一対のサイドメンバのうちの少なくとも一方の直上に配置されている構成を採用することができる。
【0016】
前記一方のサイドメンバは、車幅方向に対向する一対の側壁と、その一対の側壁の下端同士を連結する底壁とを有し、
前記縦壁部は、前記一対の側壁のうち、前記バッテリに近い側の側壁の直上に配置され、
前記端板は、前記一対の側壁のうち、前記バッテリから遠い側の側壁の直上に配置されている構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、縦壁部が天板から下側へ一体に突出形成されている。これにより、カーゴボックス自体の剛性を高めることができるため、後続車両が自車両に衝突した際のカーゴボックスの破損および当該カーゴボックスの破損に伴うバッテリの破損を防止することができる。さらに、バッテリの車幅方向一方の外側に縦壁部と端板とが設けられている。従って、レイアウトの関係上、車幅方向一方側の偏った位置にバッテリを配置しなければならず、当該バッテリから車室内までの距離が近い車両において、上記衝突の衝撃等によりバッテリが破損した場合であっても、縦壁部および端板が障壁となり、車室内への電解液の飛散を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】この発明の実施形態の車両の後部構造を採用した車両のテールゲートを開き、車両後部の荷室を開放した状態を模式的に示す図
【
図3】
図2に示すカーゴリッドを取り除いた状態を示す一部断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施形態について説明する。
図1は、車両後部の荷室1を開閉するテールゲート(図示せず)を開き、荷室1を開放した状態を模式的に示す。荷室1は、リヤシート2よりも車両前後方向の後方の車内空間である。左側のクォータートリム3は、荷室1の左側の側面を構成し、右側のクォータートリム4は、荷室1の右側の側面を構成している。クォータートリム3,4は、車両後部のボデー5の内面に沿って設けられる内装部材である。
【0020】
図2、
図3に示すように、荷室1(
図1参照)の下部には、カーゴボックス6と、カーゴボックス6の上面を覆うカーゴリッド7と、が設けられている。カーゴボックス6は、車両前後方向に対向するリヤシート2とリヤエンドパネル8との間に配置されている。カーゴボックス6の上面には、工具や清掃用品などの荷物を収容可能な収容凹部9が形成されている。
【0021】
カーゴリッド7(
図2参照)は、カーゴリッド7の車両前後方向の前端部を支点にして上下に揺動可能に支持されている。このカーゴリッド7をカーゴボックス6の上に重ね合わせることで、カーゴボックス6の上面の収容凹部9を閉鎖することができる。また、カーゴリッド7を上方に持ち上げることで、カーゴボックス6の上面の収容凹部9を開放することができるようになっている。
【0022】
図4に示すように、車両後部には、車両前後方向に延びる左右一対のサイドメンバ10,11と、その一対のサイドメンバ10,11で下側から支持されたリヤフロアパネル12と、が設けられている。一対のサイドメンバ10,11は、車幅方向(車両の左右方向)の中心に対して対称に配置されている。リヤフロアパネル12の下面は、サイドメンバ10,11の上面に固定されている。
図5に示すように、サイドメンバ10は、車幅方向に対向する一対の側壁13,14と、その一対の側壁13,14の下端同士を連結する底壁15と、を有する断面C形の鋼材である。
【0023】
図4に示すように、リヤフロアパネル12とカーゴボックス6の間に、バッテリ16が設けられている。バッテリ16は、電解液を流動状態で収容したウェットバッテリである。バッテリ16は、リヤフロアパネル12の上面の、車幅方向の一方側(図では左側)に偏った位置に配置されている。図では、バッテリ16は、リヤフロアパネル12の上面のうち、リヤフロアパネル12の車幅方向の中央位置に対して一方側(図では左側)の部分の直上にのみ存在するように配置されている。
【0024】
カーゴボックス6は、バッテリ16を上側から覆うようにリヤフロアパネル12の上方に対向して配置された天板20と、天板20の車幅方向の一方側(図では左側)の端から下方に延びる第1の端板21と、天板20の車幅方向の他方側(図では右側)の端から下方に延びる第2の端板22と、天板20から第1の端板21とバッテリ16の間を通って下方に延びる縦壁部23と、天板20から第2の端板22とバッテリ16の間を通って下方に延びる箱壁部24と、を有する。箱壁部24は、箱壁部24の内側に収容凹部9(
図2、
図3参照)を形成するように、天板20の上面側が開放する中空箱状に形成されている。天板20の上面には、箱壁部24の上端開口を閉じるようにカーゴリッド7が重ね合わされている。
【0025】
第1の端板21は、天板20と一体に形成され、第2の端板22も、天板20と一体に形成されている。第1の端板21は、左側のクォータートリム3と車幅方向に対向して配置され、第2の端板22も、右側のクォータートリム4と車幅方向に対向して配置されている。第1の端板21の下端は、左側のクォータートリム3の下端に一体に形成された水平部25で支持され、第2の端板22の下端も、右側のクォータートリム4の下端に一体に形成された水平部26で支持されている。第1の端板21の下端と第2の端板22の下端とを、リヤフロアパネル12で直接支持するようにしてもよい。
【0026】
縦壁部23も、箱壁部24と同様、天板20の上面側が開放する中空箱状に形成され、その中に、工具や清掃用品などの荷物を収容することができるようになっている。箱壁部24は、天板20から下側へ一体に突出形成され、縦壁部23も、天板20から下側へ一体に突出形成されている。天板20、第1の端板21、第2の端板22、箱壁部24、縦壁部23を含むカーゴボックス6は、合成樹脂または合成ゴムで形成することができる。合成ゴム(例えば、エチレンプロピレンジエンゴム)でカーゴボックス6を形成すると、後続車両が自車両に衝突したときに、カーゴボックス6が割れるのを確実に防止することが可能となる。
【0027】
図5に示すように、バッテリ16は、電槽27と、電槽27の上端に設けられた蓋28と、蓋28に設けられた一対の端子29と、を有する。電槽27には、流動状態の電解液と、その電解液に浸かる図示しない電極と、が収容されている。電解液としては、希硫酸を用いることができる。蓋28に設けられた各端子29には、バッテリハーネス30が接続されている。バッテリ16は、12Vの直流電圧を出力し、車両のランプ類やエアコン等の電装品に電力を供給する。バッテリ16には、バッテリ16を保護するバッテリカバー31が装着されている。
【0028】
カーゴボックス6の天板20のうち、バッテリ16の真上に位置する部分はバッテリサービスホールカバー33とされる。そのバッテリサービスホールカバー33を着脱することにより、天板20を上下に貫通するバッテリサービスホール32を開閉することができるようになっている。
【0029】
バッテリ16とリヤフロアパネル12の間には、バッテリ16の下面を受け支えるバッテリトレイ34が設けられている。バッテリトレイ34は、バッテリ16が載置されるトレイ底部35と、トレイ底部35の周縁から立ち上がるトレイ周壁部36と、を有する。バッテリトレイ34は、リヤフロアパネル12の上面に形成したバッテリトレイ嵌合凹部37に嵌め込まれている。バッテリトレイ34は、バッテリ16の電解液が付着した場合にも腐食しないように樹脂または防錆塗装を施した金属で形成されている。
【0030】
図6に示すように、車幅方向から見たときに、縦壁部23は、バッテリ16の車両前後方向の全長をカバーするように設けられている。すなわち、縦壁部23の車両前後方向の長さは、バッテリ16の車両前後方向の長さよりも長く設定され、その縦壁部23の車両前後方向の前端が、バッテリ16の車両前後方向の前端よりも前方に位置し、かつ、縦壁部23の車両前後方向の後端が、バッテリ16の車両前後方向の後端よりも後方に位置するように縦壁部23が設けられている。
【0031】
図7、
図8に示すように、縦壁部23の下端部は、車両前後方向に二股に分かれて形成され、その二股の間に車幅方向に貫通する空間が形成されている。また、
図7に示すように、第1の端板21の下端部には、車幅方向から見て、縦壁部23の下端部の二股の間の空間と重なる位置に、車幅方向に貫通する切欠き38が形成されている。これにより、
図5に示すように、バッテリ16の端子29に接続されるバッテリハーネス30を、縦壁部23の下端部の二股の間の空間と第1の端板21の下端部の切欠き38とを順に通って配線することが可能となっている。
【0032】
図5、
図8に示すように、縦壁部23は、車両前後方向から見て、縦壁部23の上側部分23aが縦壁部23の下側部分23bに対してバッテリ16に向かって突出する段差形状を有する。すなわち、縦壁部23の上側部分23aは、縦壁部23の下側部分23bのバッテリ16に対する対向面よりも、車幅方向に沿ってバッテリ16に近い位置に、バッテリ16に対する対向面を有する。その縦壁部23の上側部分23aのバッテリ16に対する対向面の下端と、縦壁部23の下側部分23bのバッテリ16に対する対向面の上端とが、水平の段差部23cを介して接続されている。
図5に示すように、車両前後方向から見て、縦壁部23の上側部分23aの車幅方向の他方側(図では右側)の端は、バッテリトレイ34の外周縁の位置よりもバッテリ16に近い側に配置されている。
【0033】
図8に示すように、縦壁部23の上側部分23aは、鉛直方向から見たときに、車両前後方向の前側から後側に向かうほどバッテリ16側に突出する形状(バッテリ16に近づく形状)を有する。すなわち、縦壁部23の上側部分23aの車幅方向の幅寸法が、車両前後方向の前側から後側に向かうにつれて次第に大きくなり、その幅寸法の変化に対応して、縦壁部23とバッテリ16の間の距離が次第に小さくなるように縦壁部23が形成されている。
【0034】
図5に示すように、カーゴボックス6の第1の端板21および縦壁部23は、サイドメンバ10の直上に配置されている。すなわち、第1の端板21は、鉛直方向から見たときに、サイドメンバ10と重なる部分を有するように配置され、同様に、縦壁部23も、鉛直方向から見たときに、サイドメンバ10と重なる部分を有するように配置されている。縦壁部23は、サイドメンバ10の一対の側壁13,14のうち、バッテリ16に近い側の側壁14の直上に配置されている。第1の端板21は、サイドメンバ10の一対の側壁13,14のうち、バッテリ16から遠い側の側壁13の直上に配置されている。
【0035】
ところで、
図1に示すように、車両後部の車幅方向の左側に偏った位置にバッテリ16を搭載した場合、後続車両が自車両に衝突することで、バッテリ16が破損すると、そのバッテリ16から飛散する電解液が、
図1の鎖線に示すように、荷室1の左側の側面に沿ってリヤシート2の上側を通り、飛散する可能性がある。
【0036】
この問題に対し、上記実施形態の車両の後部構造では、
図5に示すように、カーゴボックス6の車幅方向の左側に設けられた第1の端板21と、リヤフロアパネル12の上面の車幅方向の左側に偏った位置にあるバッテリ16と、の間に、カーゴボックス6の天板20と一体に形成された縦壁部23が設けられている。したがって、後続車両が自車両に衝突し、バッテリ16が破損したときに、バッテリ16から車幅方向の左側に飛散する電解液を、その飛散が広がる前に、カーゴボックス6の縦壁部23で受け止めることができる。そのため、後続車両が自車両に衝突し、車両後部に搭載したバッテリ16が破損したときに、バッテリ16の電解液が飛散するのを防止することが可能である。
【0037】
この実施形態の車両の後部構造は、
図5に示すように、縦壁部23が天板20から下側へ一体に突出形成されている。これにより、カーゴボックス6自体の剛性を高めることができるため、後続車両が自車両に衝突した際のカーゴボックス6の破損および当該カーゴボックス6の破損に伴うバッテリ16の破損を防止することができる。さらに、バッテリ16の車幅方向の一方(図では左方向)の外側に縦壁部23と第1の端板21とが設けられている。従って、レイアウトの関係上、車幅方向の一方側(図では左側)の偏った位置にバッテリ16を配置しなければならず、当該バッテリ16から車室内までの距離が近い車両において、上記衝突の衝撃等によりバッテリ16が破損した場合であっても、縦壁部23および第1の端板21が障壁となり、車室内への電解液の飛散を防止することができる。
【0038】
また、この実施形態の車両の後部構造は、天板20と一体に形成された中空箱状の縦壁部23によって、カーゴボックス6の構造上の剛性を高めることができる。
【0039】
また、この実施形態の車両の後部構造は、
図8に示すように、カーゴボックス6の縦壁部23が、天板20の上面側が開放する中空箱状に形成されているので、
図2に示す収容凹部9だけでなく、縦壁部23の中にも工具や清掃用品などの荷物を収容することができ、多くの荷物を収容することが可能である。
【0040】
また、この実施形態の車両の後部構造は、
図7、
図8に示すように、縦壁部23の下端部が、車両前後方向に二股に分かれて形成されているので、
図5に示すように、バッテリ16から電力を取り出すバッテリハーネス30を、縦壁部23の下端部の二股の間の空間を通って配線することが可能である。また、後続車両が自車両に衝突したときに、バッテリハーネス30を縦壁部23で保護することができ、バッテリハーネス30の断線を防止することが可能である。
【0041】
また、この実施形態の車両の後部構造は、
図5、
図8に示すように、車両前後方向から見て、縦壁部23の上側部分23aが縦壁部23の下側部分23bに対してバッテリ16に向かって突出する段差形状を有する縦壁部23を採用しているので、縦壁部23の上側部分23aが、バッテリ16に比較的近く配置され、バッテリ16の上部から飛散する電解液を、その飛散が広がる前に、効果的に縦壁部23の上側部分23aで受け止めることができる。また、縦壁部23の下側部分23bが、バッテリ16から比較的遠く配置されるので、縦壁部23の下側部分23bとバッテリ16の間に他部材(例えば、バッテリハーネス30等)の配置スペースを確保することができる。
【0042】
また、この実施形態の車両の後部構造は、
図5に示すように、縦壁部23の上側部分23aの車幅方向の他方側(図では右側)の端が、バッテリトレイ34の外周縁の位置よりもバッテリ16に近い側に配置されているので、バッテリ16から飛散する電解液を縦壁部23の上側部分23aで受け止めたときに、縦壁部23の上側部分23aから下方に流れ落ちる電解液を、バッテリトレイ34で受けることが可能である。
【0043】
また、
図8に示すように、縦壁部23が、車両前後方向の前側から後側に向かうほどバッテリ16側に突出する形状を有するので、後続車両が自車両に衝突したときに比較的破損しやすいバッテリ16の車両前後方向の後側部分において、バッテリ16と縦壁部23の間の間隔を狭くし、バッテリ16からの電解液の飛散を効果的に抑制することが可能である。また、後続車両が自車両に衝突したときに比較的破損しにくいバッテリ16の車両前後方向の前側部分において、バッテリ16と縦壁部23の間の間隔を比較的広くすることで、縦壁部23とバッテリ16の間に他部材(例えば、バッテリハーネス30や図示しないヒュージブルリンク等)の配置スペースを確保することが可能である。
【0044】
また、この実施形態の車両の後部構造は、
図5に示すように、車両前後方向に作用する外力に対して高い剛性を有するサイドメンバ10の直上にカーゴボックス6の第1の端板21および縦壁部23が位置するので、後続車両が自車両に衝突したときに、カーゴボックス6の第1の端板21および縦壁部23の変形を抑えることが可能である。そのため、バッテリ16から飛散する電解液を、確実にカーゴボックス6の第1の端板21および縦壁部23で受け止めることができる。
【0045】
上記実施形態では、バッテリ16を、リヤフロアパネル12の車幅方向の左側に偏った位置に配置したものを例に挙げて説明したが、バッテリ16は、リヤフロアパネル12の車幅方向の右側に偏った位置に配置することも可能である。この場合、上記実施形態の左右の構成を入れ替えればよい。
【0046】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0047】
なお、本出願は、2021年6月30日出願の日本特許出願(特願2021-108543)に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として援用される。
【符号の説明】
【0048】
1 荷室
3,4 クォータートリム
6 カーゴボックス
10,11 サイドメンバ
12 リヤフロアパネル
13,14 側壁
15 底壁
16 バッテリ
20 天板
21 第1の端板
23 縦壁部
23a 縦壁部の上側部分
23b 縦壁部の下側部分
34 バッテリトレイ
38 切欠き