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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】故障対応支援装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
B66B5/00 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023568154
(86)(22)【出願日】2022-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2022026482
【審査請求日】2023-11-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 寛明
(72)【発明者】
【氏名】松枝 豊
(72)【発明者】
【氏名】西出 恭平
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-116377(JP,A)
【文献】特開2021-022264(JP,A)
【文献】特開2018-100176(JP,A)
【文献】特開2009-120360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00- 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保守員による昇降機設備の故障対応作業を支援する故障対応支援装置であって、
前記昇降機設備の故障対応手順が検索可能な形態で記憶された故障対応手順データベースと、
保守員による前記故障対応作業での故障対応履歴が自由形式文で記憶された故障対応履歴データベースと、
前記故障対応履歴の情報を前記故障対応手順データベースに記憶されている前記故障対応手順に反映させる制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記故障対応履歴の自由形式文から、前記昇降機設備の故障の原因に該当する原因文と、前記原因に対して作業した処置に該当する処置文を抽出する抽出部と、
前記抽出部によって抽出された前記原因文のうち、前記故障対応手順データベースに記憶されていない原因文を未記載原因文として登録する比較部と、
前記未記載原因文と当該未記載原因文に対応する処置文とを前記故障対応手順データベースに追記する反映部と、
前記原因文に含まれる機器名用語と前記処置文に含まれる機器名用語の関係性に基づいて、前記処置文の処置が、前記原因文の原因に直接関係のある必須処置であるか、前記原因に直接関係のない予防処置であるかを判定する判定部と、
を備える故障対応支援装置。
【請求項2】
前記昇降機設備の機器名用語及び他の機器との上位下位の関係性又は同義語の関係性が、検索可能な形態で記憶された機器名辞書データベースを備え、
前記判定部は、
前記機器名辞書データベースを用いて、前記原因文に含まれる機器名用語と前記処置文に含まれる機器名用語とが、上位下位の関係性又は同義語の関係性を有するかどうかを判定し、前記判定が成立した場合に前記処置文の処置を前記必須処置と判定し、前記判定が成立しない場合に前記処置文の処置を前記予防処置と判定する
ように構成される請求項に記載の故障対応支援装置。
【請求項3】
前記機器名辞書データベースは、前記他の機器との前記上位下位の関係性が複数階層に渡って記憶され、
前記判定部は、前記複数階層の階層数が予め定められた階層数を超えない範囲で前記上位下位の関係性の有無を判定する
ように構成される請求項に記載の故障対応支援装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記抽出部によって抽出された前記原因文又は前記処置文に対し、辞書データベースを用いて表記揺れを解消する解消部を備える
請求項1から請求項の何れか1項に記載の故障対応支援装置。
【請求項5】
保守員による昇降機設備の故障対応作業を支援する故障対応支援装置であって、
前記昇降機設備の故障対応手順が検索可能な形態で記憶された故障対応手順データベースと、
保守員による前記故障対応作業での故障対応履歴が自由形式文で記憶された故障対応履歴データベースと、
前記故障対応履歴の情報を前記故障対応手順データベースに記憶されている前記故障対応手順に反映させる制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記故障対応履歴の自由形式文から、前記昇降機設備の故障の原因に該当する原因文と、前記原因に対して作業した処置に該当する処置文を抽出する抽出部と、
前記抽出部によって抽出された前記原因文のうち、前記故障対応手順データベースに記憶されていない原因文を未記載原因文として登録する比較部と、
前記未記載原因文と当該未記載原因文に対応する処置文とを前記故障対応手順データベースに追記する反映部と、
前記未記載原因文に対応する前記処置文の登録頻度を集計する集計部と、を備え、
前記反映部は、前記登録頻度に基づいて、前記故障対応手順データベースに反映させる処置文を選択する
ように構成される故障対応支援装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記抽出部によって抽出された前記原因文又は前記処置文に対し、辞書データベースを用いて表記揺れを解消する解消部を備える
請求項5に記載の故障対応支援装置。
【請求項7】
前記集計部は、前記未記載原因文に対応する保守員の情報に基づいて、前記登録頻度に対して重みづけを行う請求項5又は請求項6に記載の故障対応支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、昇降機設備の故障対応支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、機器の故障箇所を特定する作業を支援するシステムに関する技術が開示されている。この技術のシステムは、対象アセットの異常発生時に、故障知識データを用いて作業者に対象アセットの調査手順を提示するとともに、作業者の調査結果及び判断結果を得て、対象アセットの故障箇所の特定と診断の支援を行う。作業者が故障箇所を選択して、故障調査を終了することが妥当であるかを確認することで、見落としがない調査を実現するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本特開2021-15328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昇降機設備の故障対応作業を行う保守員は、故障の原因及び処置が検索可能にデータベース化された故障対応手順書を参照する場合がある。故障対応作業を担当した保守員が故障対応手順書に記載されていない故障対応を行った場合、当該故障対応履歴が故障対応手順書に自動的に反映されていくことが望ましい。特許文献1の技術では、作業員が故障知識データに記載されていない作業によって故障を解決した場合、その結果を自動で故障知識データに反映させることができない。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたもので、昇降機設備の故障対応履歴を故障対応手順書に自動で反映させることにより故障対応手順書の使い勝手を向上させることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、保守員による昇降機設備の故障対応作業を支援する故障対応支援装置であって、昇降機設備の故障対応手順が検索可能な形態で記憶された故障対応手順データベースと、保守員による故障対応作業での故障対応履歴が自由形式文で記憶された故障対応履歴データベースと、故障対応履歴の情報を故障対応手順データベースに記憶されている故障対応手順に反映させる制御装置と、を備える。制御装置は、故障対応履歴の自由形式文から、昇降機設備の故障の原因に該当する原因文と、原因に対して作業した処置に該当する処置文を抽出する抽出部と、抽出部によって抽出された原因文のうち、故障対応手順データベースに記憶されていない原因文を未記載原因文として登録する比較部と、未記載原因文と当該未記載原因文に対応する処置文とを故障対応手順データベースに追記する反映部と、原因文に含まれる機器名用語と処置文に含まれる機器名用語の関係性に基づいて、処置文の処置が、原因文の原因に直接関係のある必須処置であるか、原因に直接関係のない予防処置であるかを判定する判定部と、を備える。
また、本開示は、保守員による昇降機設備の故障対応作業を支援する故障対応支援装置であって、昇降機設備の故障対応手順が検索可能な形態で記憶された故障対応手順データベースと、保守員による故障対応作業での故障対応履歴が自由形式文で記憶された故障対応履歴データベースと、故障対応履歴の情報を故障対応手順データベースに記憶されている故障対応手順に反映させる制御装置と、を備える。制御装置は、故障対応履歴の自由形式文から、昇降機設備の故障の原因に該当する原因文と、原因に対して作業した処置に該当する処置文を抽出する抽出部と、抽出部によって抽出された原因文のうち、故障対応手順データベースに記憶されていない原因文を未記載原因文として登録する比較部と、未記載原因文と当該未記載原因文に対応する処置文とを故障対応手順データベースに追記する反映部と、未記載原因文に対応する処置文の登録頻度を集計する集計部と、を備え、反映部は、登録頻度に基づいて、故障対応手順データベースに反映させる処置文を選択するように構成される。
【発明の効果】
【0007】
本開示の故障判定支援装置によれば、自由形式文で記憶された故障対応履歴から故障の原因文及び処置文が抽出される。そして、抽出された原因文が故障対応手順に含まれていない場合、当該抽出された未記載原因文及びその処置文が故障対応手順に反映される。これにより、故障対応手順の使い勝手が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係る故障対応支援装置の機能ブロック図である。
図2】故障対応履歴DBの一例を示す図である。
図3】機器名辞書の一例を示す図である。
図4】状況辞書の一例を示す図である。
図5】外的要因辞書の一例を示す図である。
図6】作業辞書の一例を示す図である。
図7】故障対応履歴DBから原因文及び処置文を抽出する第一抽出例を示す図である。
図8】故障対応履歴DBから原因文及び処置文を抽出する第二抽出例を示す図である。
図9】抽出した原因文に対応する処置文の種類を分類する分類例を示す図である。
図10】表記揺れの解消例を示す図である。
図11】抽出した原因文と故障対応手順書の原因文の比較例を示す図である。
図12】未記載原因文に対応する処置文の集計例を示す図である。
図13】故障対応支援装置における制御装置の抽出部において実行されるルーチンを示すフローチャートである。
図14】故障対応支援装置における制御装置の判定部において実行されるルーチンを示すフローチャートである。
図15】故障対応支援装置における制御装置の判定部において実行されるルーチンを示すフローチャートである。
図16】故障対応支援装置における制御装置の解消部において実行されるルーチンを示すフローチャートである。
図17】故障対応支援装置における制御装置の比較部において実行されるルーチンを示すフローチャートである。
図18】故障対応支援装置における制御装置の集計部及び反映部において実行されるルーチンを示すフローチャートである。
図19】機器名辞書の記憶形態の変形例を示す図である。
図20】故障対応支援装置のハードウェア資源の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0010】
実施の形態.
1.故障対応支援装置の構成
図1は、実施の形態に係る故障対応支援装置の機能ブロック図である。故障対応支援装置10は、保守員による昇降機設備の故障対応作業を支援するための装置である。ここでの昇降機設備は、ビル等の建物に設置されたエレベーター、エスカレーター、及びそれらの関連設備を含む。故障対応作業では、保守員は、後述する故障対応手順DBに記憶されている情報を参照する。故障対応手順DBは故障対応手順書のデータベースであり、昇降機設備の故障の原因及びその解決のために実施した処置が、検索可能な形態で記憶されている。本実施の形態の故障対応支援装置10は、故障対応手順DBへの新たな情報の反映を自動で行うための装置として機能する。
【0011】
故障対応支援装置10は、制御装置20と、記憶装置30と、を備えている。制御装置20は、例えば1又は複数のプロセッサにより構成され、後述する故障対応履歴を故障対応手順DBに反映させるための各種処理を実行する。
【0012】
記憶装置30は、制御装置20と結合された記憶媒体であり、制御装置20からの書き込み又は制御装置20への読み出しが可能に構成されている。記憶装置30は、複数のデータベースとして、故障対応履歴DB31と、辞書DB32と、故障対応手順DB37と、を含む。図2は、故障対応履歴DBの一例を示す図である。保守員は、故障対応作業後に、対応にあたった昇降機設備の故障状況等を報告する。故障対応履歴DB31は、保守員によって入力されたこれらの故障状況等を検索可能な形態で記憶したデータベースである。図2に示す故障対応履歴DB31は、故障コードと、故障対応履歴と、を含む。故障コードは、故障分類を細分化したコード情報である。故障対応履歴は、故障原因及び実施した処置を含む作業内容を保守員が自由形式文で入力した情報である。故障対応履歴DB31には、このような故障対応履歴が随時蓄積されている。
【0013】
辞書DB32は、制御装置20において各種処理を実行する際に参照される辞書データベースである。辞書DB32は、機器名辞書33と、状況辞書34と、外的要因辞書35と、作業辞書36と、を含んでいる。
【0014】
機器名辞書33は、昇降機設備を構成する機器類の機器名及び他の機器との関係性が検索可能な形態で記憶されたデータベースである。図3は、機器名辞書の一例を示す図である。図3に示す機器名辞書では、昇降機設備を構成する機器名を示す用語1が、他の機器名を示す用語2との関係性に対応付けられて記憶されている。ここでの関係性は、例えば、「上位下位」の関係、「同義語」の関係を含む。図3に示す「上位下位」の関係は、用語1の機器名が上位であり用語2の機器名が下位であることを示している。
【0015】
状況辞書34は、昇降機設備の故障原因の状況が検索可能な形態で記憶されたデータベースである。図4は、状況辞書の一例を示す図である。図4に示す状況辞書では、原因の状況を示す状況用語が分類に対応付けられて記憶されている。ここでは、後述する抽出処理において、機器名用語と組み合わせて抽出される状況用語には分類「1」が付され、機器名用語と外的要因用語と組み合わせて抽出される状況用語には分類「2」が付され、単独で抽出される状況用語には分類「3」が付されている。分類1には、例えば、不良、故障、等の用語が分類される。分類2には、混入、等の用語が分類される。分類3には、大雨、戸開閉不良、等の用語が分類される。
【0016】
外的要因辞書35は、昇降機設備の故障原因の外的要因が検索可能な形態で記憶されたデータベースである。図5は、外的要因辞書の一例を示す図である。図5に示す外的要因辞書では、例えば、異物、プラスチック片、ゴミ、水滴、等の外的要因用語が記憶されている。
【0017】
作業辞書36は、昇降機設備の故障原因に対する処置の作業内容を示す処置用語が検索可能な形態で記憶されたデータベースである。図6は、作業辞書の一例を示す図である。図6に示す作業辞書では、処置用語が分類に対応付けられて記憶されている。ここでは、後述する抽出処理において、機器名用語と組み合わせて抽出される処置用語には分類「1」が付され、機器名用語及び外的要因用語と組み合わせて抽出される処置用語には分類「2」が付され、単独で抽出される処置用語には分類「3」が付されている。分類1には、例えば、交換、確認、点検、等の用語が分類される。分類2には、取除く、等の用語が分類される。分類3には、静観、等の用語が分類される。
【0018】
故障対応手順DB37は、保守員によって参照される故障対応手順書のデータベースである。故障対応作業では、保守員は、後述する故障対応手順DB37に記憶されている情報を参照する。故障対応手順DB37には、昇降機設備の故障原因及びその解決のために実施した処置が、検索可能な形態で記憶されている。
【0019】
制御装置20は、故障対応履歴DB31に記憶されている故障対応履歴を抽出し、故障対応手順DB37に自動で反映させるための複数の機能ブロックとして、抽出部21と、判定部22と、解消部23と、比較部24と、集計部25と、反映部26と、を備える。以下、制御装置20の機能ブロックの特徴について説明する。
【0020】
2.制御装置20の特徴
2-1.抽出部21
抽出部21は、故障対応履歴から故障の原因と処置に該当する用語を抽出するための機能ブロックである。抽出部21において実行される処理は、以下「抽出処理」と呼ばれる。図7は、故障対応履歴DBから原因文及び処置文を抽出する第一抽出例を示す図である。図8は、故障対応履歴DBから原因文及び処置文を抽出する第二抽出例を示す図である。図7に示すように、故障対応履歴は自由形式文で記載されているため、当該記載に含まれる原因と処置を抽出するためには自由形式文の解析が必要となる。抽出処理において、抽出部21は、先ず、故障対応手順DB37の故障対応履歴を読み込んで、自由形式文を1文ずつに区切る。次に、抽出部21は、機器名辞書33、状況辞書、外的要因辞書35、及び作業辞書36を参照して、自由形式文の中からこれらの辞書に記載されている機器名用語、状況用語、外的要因用語、及び作業用語をそれぞれ取得する。図7に示す例では、取得された機器名用語を実線で囲み、取得された状況用語を鎖線で囲み、取得された作業用語を一点鎖線で囲み、取得された外的要因辞書用語を二点鎖線で囲んでいる。
【0021】
抽出部21は、隣り合う機器名用語を結合した用語が機器名辞書33の機器名用語に含まれる場合、これらの機器名用語を結合する。図7に示す例では、「基板2」と「swB接点」を結合した「基板2swB接点」、及び「基板1」と「コネクタ」を結合した「基板1コネクタ」が、それぞれ機器名辞書33の機器名用語に含まれるため、これらの用語をそれぞれ結合する。
【0022】
抽出部21は、状況用語の分類に従い、自由形式文から「原因文」を抽出する。図7に示す例では、状況用語である「不良」が分類1に該当する。このため、抽出部21は、当該状況用語と、前出の機器名用語である「基板2swB接点」を抽出し、「基板2swB接点が不良」の抽出結果を得る。
【0023】
また、抽出部21は、作業用語の分類に従い、自由形式文から「処置文」を抽出する。図7に示す例では、作業辞書用語である「手直し」及び「点検」が分類1に該当する。このため、抽出部21は、当該状況辞書用語と、それぞれの前出の機器名用語である「接点」及び「基板1コネクタ」を抽出し、「接点を手直し」と「基板1コネクタを点検」の抽出結果を得る。
【0024】
図8に示す例では、抽出部21は、図7に示す例と同様に、故障対応手順DB37の故障対応履歴を読み込んで、自由形式文を1文ずつに区切る。次に、抽出部21は、機器名辞書33、状況辞書34、外的要因辞書35、及び作業辞書36を参照して、自由形式文の中からこれらの辞書に記載されている機器名用語、状況用語、外的要因用語、及び作業用語をそれぞれ取得する。
【0025】
抽出部21は、状況辞書用語の分類に従い自由形式文から「原因文」を抽出する。図8に示す例では、状況用語である「混入」が分類2に該当する。このため、抽出部21は、当該状況用語と、前出の機器名用語である「敷居」と、外的要因用語である「プラスチック片」を抽出し、「敷居にプラスチック片が混入」の抽出結果を得る。
【0026】
また、図8に示す例では、状況用語である「戸開閉不良」が分類3に該当する。このため、抽出部21は、当該状況用語のみを抽出し、「戸開閉不良」の抽出結果を得る。
【0027】
また、抽出部21は、作業用語の分類に従い、自由形式文から「処置文」を抽出する。図8に示す例では、作業用語である「取り除き」が分類2に該当する。このため、抽出部21は、当該状況用語と、前出の機器名用語である「敷居」と、前出の外的要因用語である「プラスチック片」を抽出し、「敷居のプラスチック片を取り除き」の抽出結果を得る。
【0028】
また、図8に示す例では、作業用語である「清掃」及び「点検」が分類1に該当する。このため、抽出部21は、当該状況用語と、それぞれの前出の機器名用語を抽出し、「敷居を清掃」、「乗場を点検」、及び「ドア基板を点検」の抽出結果を得る。
【0029】
このように、抽出部21における抽出処理によれば、自由形式文で入力されている故障対応履歴を解析して故障の原因文及び処置文を精度よく抽出することができる。なお、上記の抽出処理の方法では、状況用語又は作業用語の分類に従いこれらの用語と組み合わせて抽出される用語を決定する構成としたが、抽出部21における抽出処理は、上記の方法に限定されない。すなわち、抽出部21における抽出処理は、例えば、故障対応履歴の自由文形式分に対して公知の係り受け解析を行うことで、状況用語又は作業用語と修飾関係がある機器名用語又は外的要因用語を抽出し、原因文及び処置文を抽出する方法でもよい。
【0030】
2-2.判定部22
判定部22は、抽出した処置文が必須処置であるか予防処置であるかを判定するための機能ブロックである。判定部22において実行される処理は、以下「判定処理」と呼ばれる。ここでの「必須処置」は、原因文に記載の原因に直接関係のある処置を示し、「予防処置」は、原因文に記載の原因に直接関係のない処置を示している。必須処置は、当該原因の解決のために必ず行うべき処置であるのに対して、予防処置は、必ずしも行う必要がない。
【0031】
図9は、抽出した原因文に対応する処置文の種類を分類する分類例を示す図である。判定処理において、判定部22は、機器名辞書を参照し、抽出した原因文に含まれる機器名用語と抽出した処置文に含まれる機器名用語との関係性が上位下位の関係又は同義語の関係にあるかどうかを判定する。その結果、機器名用語同士が上位下位の関係又は同義語の関係にある場合、原因の機器に対して処置を行ったと判断することができるので、当該処置文の内容が必須処置と判定される。一方、判定部22は、抽出した原因の機器名と抽出した処置の機器名との関係性が上位下位の関係又は同義語の関係にない場合、原因の機器以外を念のために確認したと判断し、当該処置文の内容が予防処置と判定される。
【0032】
図9に示す例では、原因の機器名用語である「基板2swB接点」と、処置の機器名用語である「接点」とは上位下位の関係にあるため、「接点を手直し」する処置文は必須処置と判定される。一方、原因の機器名用語である「基板2swB接点」と、処置の機器名用語である「基板1コネクタ」とは上位下位の関係にないため、「基板1コネクタを点検」する処置文は予防処置と判定される。
【0033】
また、図9に示す他の例では、原因の機器名用語である「敷居」と、処置の機器名用語である「敷居」とは同義語の関係にあるため、「敷居のプラスチック片を取り除き」及び「敷居を清掃」の処置は必須処置と判定される。一方、原因の機器名用語である「敷居」と、処置の機器名用語である「乗場」又は「ドア基板」とは上位下位及び同義語の関係にないため、「乗場を点検」及び「ドア基板を点検」する処置文は予防処置と判定される。
【0034】
このように、判定部22によれば、抽出した原因文の機器名用語と処置文の機器名用語との関係性に基づいて、当該処置文の内容が必須処置であるか予防処置であるかを精度よく判定することができる。
【0035】
2-3.解消部23
解消部23は、抽出した原因文及び処置文に含まれる表記揺れを解消するための機能ブロックである。解消部23において実行される処理は、以下「解消処理」と呼ばれる。図10は、表記揺れの解消例を示す図である。状況辞書34、外的要因辞書35、及び作業辞書36には、上位の用語、下位の用語、及び同義語との関係性がそれぞれ関係付けられている。
【0036】
解消部23は、抽出した原因文の機器名用語と処置文の機器名用語に上位下位の関係が存在する場合、下位の機器名用語に統一する。図10に示す例では、#1の処置文の「スイッチ」が下位用語の「スイッチA」に置換されている。#4の処置文の「接点」は、下位用語の「基板2スイッチB接点」に置換されている。
【0037】
また、解消部23は、抽出した原因文及び処置文に含まれる同義語を共通用語に置換する。機器名辞書33には、例えば「スイッチB接点」と「swB接点」が同義語として関係付けられている。状況辞書34には、「不良」と「故障」と「破損」と「変形」が、同義語として関係付けられている。また、作業辞書36には、「交換」と「取り替え」、及び「確認」と「点検」が、それぞれ同義語として関係付けられている。図10に示す例では、#1の原因文の「不良」が同義語の「不良」に置換され、#4の原因文の「基板2swB接点」が、同義語の「基板2スイッチB接点」に置換されている。また、#3の処置文の「取り替え」が同義語の「交換」に置換され、#5の処置文の「確認」が同義語の「点検」に置換されている。
【0038】
このように、解消部23によれば、用語の表記揺れが解消されるので、その後の比較部24又は集計部25において精度の高い比較処理及び集計処理が可能となる。なお、解消部23の構成は必須ではない。
【0039】
2-4.比較部24
比較部24は、抽出した原因文と故障対応履歴に記載された原因文とを比較するための機能ブロックである。比較部24において実行される処理は、以下「比較処理」と呼ばれる。図11は、抽出した原因文と故障対応手順書の原因文の比較例を示す図である。比較部24は、抽出した原因文と故障対応履歴に記載された原因文の機器名用語が一致又は上位下位の関係にあり、状況用語が一致し、且つ外的要因用語が一致する場合、当該原因文は既記載であるとして、集計対象から除外する。図11に示す例では、抽出した複数の原因文のうち、#1の「スイッチAが故障」と#2の「基板1が不良」は、故障対応手順書の原因文と一致する。このため、図11に示す例では、比較部24は、#1-#2を集計対象から除外し、#3-#5を集計対象と判定する。集計対象の原因文は未記載原因文として未記載原因リストに登録される。
【0040】
このように、比較部24によれば、故障対応手順書への重複記載を防ぐことができる。
【0041】
2-5.集計部25
集計部25は、故障対応手順書に記載されていない未記載原因文に対応する処置文の登録頻度を集計するための機能ブロックである。集計部25において実行される処理は、以下「集計処理」と呼ばれる。図12は、未記載原因文に対応する処置文の集計例を示す図である。図12に示す例では、未記載原因リストの各未記載原因文に対して実施した処置文の登録頻度の指標として、登録回数が集計されている。集計結果は反映部26に送られる。
【0042】
2-6.反映部26
反映部26は、集計結果の中から予め定めた規則に従い選択された原因文及び処置文を故障対応手順書DBに反映させるための機能ブロックである。反映部26において実行される処理は、以下「反映処理」と呼ばれる。規則の内容に限定はない。図12に示す例では、登録回数が最多の1件の必須処置と、登録回数が多い方から最大3件の予防処置が原因文毎に選択されている。このような規則によれば、図12において、#1,#3,#4,#5,#7,#8に記載の原因文及び処置文が故障対応手順書DBに追記される。
【0043】
以上説明した故障対応支援装置10の制御装置20の機能によれば、以下の作用及び効果が得られる。
【0044】
故障対応履歴の自由形式文を解析することによって、故障対応手順書DBに記載されていない原因文及び処置文が抽出される。これにより、故障対応手順書DBに記載されていない原因文及び処置文を故障対応手順書DBに反映させることができるので、故障対応手順書DBの品質が向上する。これにより、故障対応手順書DBを参照する保守員の作業時間の短縮、及び作業品質の向上が図れる。
【0045】
3.故障対応支援装置において実行される具体的処理
図13から図17は、本実施の形態の故障対応支援装置10の制御装置20において実行されるルーチンを示すフローチャートである。図13に示すルーチンは、制御装置20の抽出部21において実行される。
【0046】
図13に示すルーチンのステップS100では、故障対応履歴DB31から故障対応履歴が取得される。ステップS102では、取得した故障対応履歴の中から指定した故障コードの故障対応履歴の自由形式文が取得される。ステップS104では、取得した自由形式文の中から原因文と処置文が抽出される。ここでは、上述した抽出処理が抽出部21によりを実行される。抽出部21において抽出された原因文と処置文は、判定部22に送られる。
【0047】
ステップS104の処理が実行されると、処理は図14に示すルーチンのステップS110に進む。図14に示すルーチンは、制御装置20の判定部22において実行される。ステップS110では、変数iが0に設定される。ここでの変数iは、取得した原因文を順に特定するための識別子に相当し、0以上の整数である。ステップS112では、変数iがステップS104において抽出された原因文の個数よりも小さいかどうかが判定される。その結果、判定の成立が認められない場合、処理は図15に示すルーチンに進み、判定の成立が認められた場合、ステップS114の処理に進む。
【0048】
ステップS114では、変数jが0に設定される。ここでの変数jは、取得した処置文を順に特定するための識別子に相当し、0以上の整数である。ステップS116では、変数jがステップS104において抽出された処置文の個数よりも小さいかどうかが判定される。その結果、判定の成立が認められない場合、処理はステップS124に進み、判定の成立が認められた場合、ステップS118の処理に進む。
【0049】
ステップS118では、原因文iの機器名用語と処置文jの機器名用語とに上位下位の関係性があるかどうかが判定される。その結果、関係性がある場合、処理はステップS120に進み、関係性がない場合、処理はステップS122に進む。
【0050】
ステップS120では、処置文jが原因文iの必須処置として登録される。ステップS120の処理が完了すると、処理はステップS122に進む。ステップS122では、変数jがインクリメントされて、処理は再びステップS116に戻る。これにより、取得された処置文の個数が変数jを上回るまで、ステップS116からステップS122までの処理が繰り返し実行される。
【0051】
ステップS116において変数jが取得された処置文の個数以上となると、処理はステップS124に進む。ステップS124では、変数iがインクリメントされて、処理は再びステップS112に戻る。これにより、変数iが取得された原因文の個数以上となるまで、ステップS112からステップS124までの処理が繰り返し実行される。ステップS112において取得された原因文の個数が変数iを上回ると、処理は図15に示すステップS130に進む。
【0052】
図15に示すルーチンについても、制御装置20の判定部22において実行される。ステップS130では、ステップS110と同様に変数iが0に設定される。ステップS132では、変数iがステップS104において抽出された原因文の個数よりも小さいかどうかが判定される。その結果、判定の成立が認められない場合、処理は図16に示すルーチンに進み、判定の成立が認められた場合、ステップS134の処理に進む。
【0053】
ステップS134では、ステップS114と同様に変数jが0に設定される。ステップS136では、変数jが、ステップS104において抽出された処置文の個数よりも小さいかどうかが判定される。その結果、判定の成立が認められない場合、処理はステップS146に進み、判定の成立が認められた場合、ステップS138の処理に進む。
【0054】
ステップS138では、処置文jがいずれの原因文の必須処置にも属していないかどうかが判定される。その結果、判定の成立が認められない場合、処理はステップS142に進み、判定の成立が認められた場合、処理はステップS140に進む。
【0055】
ステップS140では、処置文jが原因文iの予防処置として登録される。ステップS120の処理が完了すると、処理はステップS142に進む。ステップS142では、変数jがインクリメントされて、処理は再びステップS136に戻る。これにより、取得された処置文の個数が変数jを上回るまで、ステップS136からステップS142までの処理が繰り返し実行される。
【0056】
ステップS136において取得された処置文の個数が変数jを上回ると、処理はステップS146に進む。ステップS146では、変数iがインクリメントされて、処理は再びステップS132に戻る。これにより、取得された原因文の個数が変数iを上回るまで、ステップS132からステップS146までの処理が繰り返し実行される。ステップS132において、変数iが取得された原因文の個数以上となると、処理は図16に示すルーチンのステップS150に進む。
【0057】
図16に示すルーチンは、制御装置20の解消部23によって実行される。ステップS150では、解消部23において解消処理が実行されることにより、原因文と処置文に含まれる表記揺れが解消される。表記揺れが解消された原因文及び処置文は、比較部24に送られる。ステップS150の処理が完了すると、処理は図17のステップS160に進む。
【0058】
図17に示すルーチンは、制御装置20の比較部24によって実行される。ステップS160では、指定した故障コードの故障対応手順が故障対応手順DB37から取得される。次のステップS162では、ステップS110と同様に変数iが0に設定される。ステップS164では、ステップS104において抽出された原因文の個数が変数iよりも大きいかどうかが判定される。その結果、判定の成立が認められない場合、処理は図18に示すルーチンに進み、判定の成立が認められた場合、ステップS166の処理に進む。
【0059】
ステップS166では、変数kが0に設定される。ここでの変数kは、取得した故障対応手順に記載されている原因文を順に特定するための識別子に相当し、0以上の整数である。ステップS168では、変数kが、取得した故障対応手順に記載の原因文の個数よりも小さいかどうかが判定される。その結果、判定の成立が認められない場合、処理はステップS176に進み、判定の成立が認められた場合、ステップS170の処理に進む。
【0060】
ステップS170では、取得した原因文iと故障対応手順の原因文kとが同じかどうかが判定される。その結果、判定の成立が認められない場合、処理はステップS174に進み、判定の成立が認められた場合、処理はステップS172に進む。
【0061】
ステップS172では、取得した原因文iが故障対応手順に記載済みであると判定される。ステップS172の処理が完了すると、処理はステップS174に進む。ステップS174では、変数kがインクリメントされて、処理は再びステップS168に戻る。これにより、変数kが故障対応手順に記載の原因文の個数以上となるまで、ステップS168からステップS174までの処理が繰り返し実行される。
【0062】
ステップS168において、変数kが故障対応手順に記載の原因文の個数以上となると、処理はステップS176に進む。ステップS176では、原因文iが故障対応手順に未記載かどうかが判定される。その結果、判定の成立が認められた場合、処理はステップS178に進み、判定の成立が認められない場合、処理はステップS180に進む。
【0063】
ステップS178では、未記載原因リストに未記載原因文iが登録される。ステップS178の処理が完了すると、処理はステップS180に進む。ステップS180では、変数iがインクリメントされて、処理は再びステップS168に戻る。これにより、変数iが取得された原因文の個数以上となるまで、ステップS164からステップS180までの処理が繰り返し実行される。ステップS164において変数iが取得された原因文の個数以上となると、処理は図18に示すルーチンのステップS190に進む。
【0064】
図18に示すルーチンは、制御装置20の集計部25及び反映部26によって実行される。ステップS190では、集計部25は、集計処理を実行することによって、未記載原因リストの各未記載原因文に対応する各処置文の登録回数を集計する。集計処理での集計結果は反映部26に送られる。ステップS192では、反映部26は、反映処理を実行することによって、未記載の原因文及び処置文を故障対応手順書DBに追記する。ここでは、反映部26は、予め定めた規則に従い、追記する原因文及び処置文を選択する。
【0065】
以上のような故障対応支援装置10によれば、保守員の故障対応結果を示す故障対応履歴の自由形式文を解析することによって、故障対応手順書DBに未記載の原因文及び処置文を抽出することができる。これにより、これまで想定されていなかった故障の原因を追記することができるので、故障対応手順書DBの使い勝手が向上する。
【0066】
また、故障対応支援装置10によれば、故障の原因に対する処置を、必須処置と予防処置とに分類して追記することができるので故障対応手順書DB勝手がさらに向上する。
【0067】
4.本実施の形態の変形例
本実施の形態の故障対応支援装置10は、以下のように変形した態様を適用してもよい。
【0068】
4-1.機器名辞書33
機器名辞書33の記憶形態に限定はない。図19は、機器名辞書の記憶形態の変形例を示す図である。図19に示すように、機器名辞書33は、機器名用語同士の関係性が一対一で対応付けられている形態に限らず、上位下位の関係性が複数階層に渡って対応づけられていてもよい。
【0069】
4-2.判定部22
また、図19に示すように、機器名辞書33において機器名用語の上位下位の関係性が複数階層に渡って対応づけられている場合、判定部22は、判定処理において上位下位の関係性の有無を判定する際に利用する複数階層の階層数を予め定めたN階層を超えない範囲に制限してもよい。または、機器名辞書33において、機器同士の物理的距離の関係性が対応付けられている場合、判定部22は、関係性の有無を判定する際に物理的距離を考慮してもよい。このような構成によれば、判定部22における誤判定を減らして判定精度を高めることができる。
【0070】
4-3.集計部
集計部25は、集計処理において、故障対応に当たった担当保守員の情報を反映させてもよい。すなわち、故障対応作業を行う担当保守員は、熟練の者から経験の浅い者までそれぞれ経験値が異なる。熟練の保守員ほど故障対応に関する知識が豊富であり、予防のために確認すべき部品等を熟知している傾向がある。
【0071】
そこで、集計部25は、集計処理において、担当保守員の経験値を用いて集計結果に重みづけを行うこととしてもよい。典型的には、故障対応履歴DB31には、各故障対応履歴の担当保守員の情報が関係づけられている。また、担当保守員には、それぞれの経験値に対応したランク値が関係づけられている。このようなランク値は、例えば保守員の経験年数、実績、等に応じて設定することができる。未記載原因リストの各原因文には、担当保守員のランク値も対応付けられている。集計部25は、集計処理において、ランク値を用いて、経験値が高い保守員の処置文ほど登録回数の重みを増やし、経験値が低い保守員の処置文ほど登録回数の重みを減らすように重みづけを行う。このような集計処理によれば、熟練の保守員が行った処置が優先して故障対応手順書に追記されるので、参照する保守員は、熟練者が予防のために確認した機器を優先して確認できるようになる。
【0072】
故障対応作業の実施後、一定の期間が経過した後に同一の故障コードの故障が発報されることがある。このような場合、実施した故障対応作業における処置が適切ではなかった可能性がある。集計部25において集計される未記載原因リストに、このような不適切な故障対応履歴に基づく処置文が含まれていると、原因に対する誤った処置が故障対応手順DB37に追記されてしまうおそれがある。そこで、集計部25は、集計処理において、不適切な故障対応履歴に基づく処置文の重みづけを下げるように重みづけを行ってもよい。このような集計処理によれば、処置の正しさを考慮して故障対応手順DBを改善することができる。
【0073】
4-4.記憶装置30
記憶装置30の構成及び機能配置に限定はない。すなわち、記憶装置30は、故障対応履歴DB31、辞書DB32、及び故障対応手順DB37が、それぞれ別体の記憶装置として構成されていてもよい。また、記憶装置としての故障対応履歴DB31、辞書DB32、及び故障対応手順DB37は、制御装置20と通信回線を通じて接続されたサーバにそれぞれ配置されていてもよい。
【0074】
4-4.制御装置20
制御装置20は、故障対応作業を行う保守員からの要求に応じて故障対応手順DBに記載されている情報を提示する提示部をさらに備えていてもよい。提示部は、保守員によって入力された検索クエリに基づいて、関連する故障の原因文及び処置文を提示する。なお、提示部の機能は、サーバ又は保守員の端末に配置されていてもよい。
【0075】
4-5.故障対応支援装置10
図20は、故障対応支援装置10のハードウェア資源の変形例を示す図である。図20に示す例では、故障対応支援装置10は、例えばプロセッサを含む制御装置20、記憶装置30、及び専用ハードウェア40を含む処理回路42を備える。図20は、故障対応支援装置10が有する機能の一部を専用ハードウェア40によって実現する例を示す。故障対応支援装置10が有する機能の全部を専用ハードウェア40によって実現しても良い。専用ハードウェア40として、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらの組み合わせを採用できる。
【符号の説明】
【0076】
10 故障対応支援装置、 20 制御装置、 21 抽出部、 22 判定部、 23 解消部、 24 比較部、 25 集計部、 26 反映部、 30 記憶装置、 31 故障対応履歴DB 32 辞書DB 33 機器名辞書、 34 状況辞書、 35 外的要因辞書、 36 作業辞書、 37 故障対応手順DB 40 専用ハードウェア、 42 処理回路
【要約】
昇降機設備の故障対応履歴を故障対応手順書に自動で反映させることにより故障対応手順書の使い勝手を向上させる。
保守員による昇降機設備の故障対応作業を支援する故障対応支援装置は、昇降機設備の故障対応手順が検索可能な形態で記憶された故障対応手順DBと、保守員による故障対応作業での故障対応履歴が自由形式文で記憶された故障対応履歴DBと、故障対応履歴の情報を故障対応手順DBに記憶されている故障対応手順に反映させる制御装置と、を備える。制御装置は、故障対応履歴の自由形式文から、昇降機設備の故障の原因に該当する原因文と、原因に対して作業した処置に該当する処置文を抽出する抽出部と、抽出された原因文のうち、故障対応手順DBに記憶されていない未記載原因文を登録する比較部と、未記載原因文とそれに対応する処置文とを、故障対応手順DBに追記する反映部と、を備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20