(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】パーソナル空調機器の制御装置、パーソナル空調システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/74 20180101AFI20240123BHJP
F24F 11/61 20180101ALI20240123BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20240123BHJP
【FI】
F24F11/74
F24F11/61
F24F11/64
(21)【出願番号】P 2020076347
(22)【出願日】2020-04-22
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】田中 規敏
(72)【発明者】
【氏名】和田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】米田 拓朗
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-67427(JP,A)
【文献】特開2019-178858(JP,A)
【文献】特開平6-127254(JP,A)
【文献】特開2002-120537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内に設置されたパーソナル空調機器を使用するユーザが前記建物に入ったときの前記建物の外部の空気の温度及び湿度と、前記パーソナル空調機器が前記ユーザによって起動されてからの現在の経過時間と、前記建物の内部の空気の現在の温度及び湿度と、前記パーソナル空調機器の現在の吹出風量の各々のデータを取得するデータ取得部と、
前記経過時間が規定時間以内であるか否かを判定する経過時間判定部と、
前記経過時間が前記規定時間以内である場合の前記データを記憶するデータ記憶部と、
前記データ記憶部に記憶された前記データを用いて機械学習を実行し、前記ユーザのための予測モデルを更新する機械学習部と、
前記予測モデルを用い、前記ユーザが前記建物に入ったときの前記建物の外部の空気の温度及び湿度と、前記パーソナル空調機器が起動されたときの前記建物の内部の空気の温度及び湿度とに基づいて、前記パーソナル空調機器の吹出風量の設定値を決定する予測処理部と、
前記経過時間が前記規定時間に達するまで、前記パーソナル空調機器の吹出風量が前記設定値から減少又は増加するように、前記経過時間に基づいて、前記パーソナル空調機器の吹出風量を制御する制御部と、
を備えるパーソナル空調機器の制御装置。
【請求項2】
前記経過時間が前記規定時間以内である場合の前記データを第一データとして記憶する前記データ記憶部としての第一データ記憶部と、
前記経過時間が前記規定時間を超えた場合の前記データを第二データとして記憶する第二データ記憶部と、
前記第一データを用いて機械学習を実行し、前記ユーザのための第一予測モデルを更新する前記機械学習部としての第一機械学習部と、
前記第二データを用いて機械学習を実行し、前記ユーザのための第二予測モデルを更新する第二機械学習部と、
前記第一予測モデルを用い、前記ユーザが前記建物に入ったときの前記建物の外部の空気の温度及び湿度と、前記パーソナル空調機器が起動されたときの前記建物の内部の空気の温度及び湿度とに基づいて、前記パーソナル空調機器の吹出風量の第一設定値を決定する前記予測処理部としての第一予測処理部と、
前記第二予測モデルを用い、前記ユーザが前記建物に入ったときの前記建物の外部の空気の温度及び湿度と、前記パーソナル空調機器が起動されたときの前記建物の内部の空気の温度及び湿度に基づいて、前記パーソナル空調機器の吹出風量の第二設定値を決定する第二予測処理部と、
を備え、
前記制御部は、
前記経過時間が前記規定時間に達するまで、前記パーソナル空調機器の吹出風量が前記第一設定値から前記第二設定値に変更されるように、前記経過時間に基づいて、前記パーソナル空調機器の吹出風量を制御し、
前記経過時間が前記規定時間に達した後は、前記パーソナル空調機器の吹出風量を前記第二設定値に維持する制御を行う、
請求項1に記載のパーソナル空調機器の制御装置。
【請求項3】
前記経過時間が前記規定時間以内である場合に、前記パーソナル空調機器の吹出風量が前記ユーザによって変更操作されたことを判定する第一操作判定部と、
前記経過時間が前記規定時間を超えた場合に、前記パーソナル空調機器の吹出風量が前記ユーザによって変更操作されたことを判定する第二操作判定部と、
をさらに備え、
前記第一データ記憶部は、前記第一操作判定部によって前記変更操作がされたと判定された場合に前記第一データを記憶し、
前記第二データ記憶部は、前記第二操作判定部によって前記変更操作がされたと判定された場合に前記第二データを記憶する、
請求項2に記載のパーソナル空調機器の制御装置。
【請求項4】
前記経過時間判定部は、前記建物の外部の空気の温度に基づいて前記規定時間を変更する、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のパーソナル空調機器の制御装置。
【請求項5】
前記データ取得部は、前記ユーザに関するユーザ情報を読み取るユーザ情報読取部で前記ユーザ情報が保持されている間、前記経過時間をカウントし、前記ユーザ情報読取部で前記ユーザ情報の保持が解除された場合には、前記経過時間をリセットする、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のパーソナル空調機器の制御装置。
【請求項6】
建物内に設置されたパーソナル空調機器と、
前記建物の外部の空気の温度及び湿度を検出する外部センサと、
前記建物の内部の空気の温度及び湿度を検出する内部センサと、
前記パーソナル空調機器を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記パーソナル空調機器を使用するユーザが前記建物に入ったときの前記建物の外部の空気の温度及び湿度と、前記パーソナル空調機器が前記ユーザによって起動されてからの現在の経過時間と、前記建物の内部の空気の現在の温度及び湿度と、前記パーソナル空調機器の現在の吹出風量の各々のデータを取得するデータ取得部と、
前記経過時間が規定時間以内であるか否かを判定する経過時間判定部と、
前記経過時間が前記規定時間以内である場合の前記データを記憶するデータ記憶部と、
前記データ記憶部に記憶された前記データを用いて機械学習を実行し、前記ユーザのための予測モデルを更新する機械学習部と、
前記予測モデルを用い、前記ユーザが前記建物に入ったときの前記建物の外部の空気の温度及び湿度と、前記パーソナル空調機器が起動されたときの前記建物の内部の空気の温度及び湿度とに基づいて、前記パーソナル空調機器の吹出風量の設定値を決定する予測処理部と、
前記経過時間が前記規定時間に達するまで、前記パーソナル空調機器の吹出風量が前記設定値から減少又は増加するように、前記経過時間に基づいて、前記パーソナル空調機器の吹出風量を制御する制御部と、
を備える、
パーソナル空調システム。
【請求項7】
建物内に設置されたパーソナル空調機器を使用するユーザが前記建物に入ったときの前記建物の外部の空気の温度及び湿度と、前記パーソナル空調機器が前記ユーザによって起動されてからの現在の経過時間と、前記建物の内部の空気の現在の温度及び湿度と、前記パーソナル空調機器の現在の吹出風量の各々のデータを取得するデータ取得ステップと、
前記経過時間が規定時間以内であるか否かを判定する経過時間判定ステップと、
前記経過時間が前記規定時間以内である場合の前記データをデータ記憶部に記憶させるデータ記憶ステップと、
前記データ記憶部に記憶された前記データを用いて機械学習を実行し、前記ユーザのための予測モデルを更新する機械学習ステップと、
前記予測モデルを用い、前記ユーザが前記建物に入ったときの前記建物の外部の空気の温度及び湿度と、前記パーソナル空調機器が起動されたときの前記建物の内部の空気の温度及び湿度とに基づいて、前記パーソナル空調機器の吹出風量の設定値を決定する予測処理ステップと、
前記経過時間が前記規定時間に達するまで、前記パーソナル空調機器の吹出風量が前記設定値から減少又は増加するように、前記経過時間に基づいて、前記パーソナル空調機器の吹出風量を制御する制御ステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーソナル空調機器の制御装置、パーソナル空調システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機械学習により構築された予測モデルを用い、空調機器が設置された環境の温度及び湿度並びに空調機器の吹出温度等の条件に基づいて空調機器の吹出風量等を制御する空調機器の制御装置がある(例えば、特許文献1、2参照)。この従来の制御装置では、空調機器の吹出風量等がユーザの好みに合わない場合に、ユーザが申告すると、この申告時のデータが記憶される。そして、この記憶されたデータを用いて機械学習が実行され、予測モデルが更新される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-94292号公報
【文献】特開2018-9770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の制御装置では、例えば、ユーザの好みの吹出風量に合うように予測モデルを更新するためには、ユーザの申告が必要であり煩わしい。また、この種の制御装置では、ユーザの好みに対する吹出風量の精度を向上させることが要求される。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ユーザの申告が無くても、ユーザの好みの吹出風量に合うように予測モデルを更新でき、しかも、ユーザの好みに対する吹出風量の精度を向上させることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係るパーソナル空調機器の制御装置は、建物内に設置されたパーソナル空調機器を使用するユーザが前記建物に入ったときの前記建物の外部の空気の温度及び湿度と、前記パーソナル空調機器が前記ユーザによって起動されてからの現在の経過時間と、前記建物の内部の空気の現在の温度及び湿度と、前記パーソナル空調機器の現在の吹出風量の各々のデータを取得するデータ取得部と、前記経過時間が規定時間以内であるか否かを判定する経過時間判定部と、前記経過時間が前記規定時間以内である場合の前記データを記憶するデータ記憶部と、前記データ記憶部に記憶された前記データを用いて機械学習を実行し、前記ユーザのための予測モデルを更新する機械学習部と、前記予測モデルを用い、前記ユーザが前記建物に入ったときの前記建物の外部の空気の温度及び湿度と、前記パーソナル空調機器が起動されたときの前記建物の内部の空気の温度及び湿度とに基づいて、前記パーソナル空調機器の吹出風量の設定値を決定する予測処理部と、前記経過時間が前記規定時間に達するまで、前記パーソナル空調機器の吹出風量が前記設定値から減少又は増加するように、前記経過時間に基づいて、前記パーソナル空調機器の吹出風量を制御する制御部と、を備える。
【0007】
このパーソナル空調機器の制御装置によれば、ユーザが建物に入ったときの建物の外部の空気の温度及び湿度と、パーソナル空調機器がユーザによって起動されてからの現在の経過時間と、建物の内部の空気の現在の温度及び湿度と、パーソナル空調機器の現在の吹出風量の各々のデータがデータ取得部で取得され、経過時間が規定時間以内であるか否かが経過時間判定部で判定される。また、経過時間が規定時間以内である場合に、この経過時間に対応するデータがデータ記憶部に記憶される。そして、機械学習部によって、データ記憶部に記憶されたデータを用いて機械学習が実行され、予測モデルが更新される。したがって、ユーザの申告が無くても、ユーザの好みの吹出風量に合うように予測モデルを更新できる。
【0008】
しかも、このパーソナル空調機器の制御装置によれば、上述の通り、経過時間が規定時間以内である場合のデータを用いて機械学習が実行され、予測モデルが更新される。したがって、経過時間が規定時間以内である場合に予測モデルを用いて吹出風量の制御を行うときには、経過時間が規定時間以内である場合のデータが反映されるので、ユーザの好みに対する吹出風量の精度を向上させることができる。
【0009】
上記パーソナル空調機器の制御装置は、前記経過時間が前記規定時間以内である場合の前記データを第一データとして記憶する前記データ記憶部としての第一データ記憶部と、前記経過時間が前記規定時間を超えた場合の前記データを第二データとして記憶する第二データ記憶部と、前記第一データを用いて機械学習を実行し、前記ユーザのための第一予測モデルを更新する前記機械学習部としての第一機械学習部と、前記第二データを用いて機械学習を実行し、前記ユーザのための第二予測モデルを更新する第二機械学習部と、前記第一予測モデルを用い、前記ユーザが前記建物に入ったときの前記建物の外部の空気の温度及び湿度と、前記パーソナル空調機器が起動されたときの前記建物の内部の空気の温度及び湿度とに基づいて、前記パーソナル空調機器の吹出風量の第一設定値を決定する前記予測処理部としての第一予測処理部と、前記第二予測モデルを用い、前記ユーザが前記建物に入ったときの前記建物の外部の空気の温度及び湿度と、前記パーソナル空調機器が起動されたときの前記建物の内部の空気の温度及び湿度に基づいて、前記パーソナル空調機器の吹出風量の第二設定値を決定する第二予測処理部と、を備え、前記制御部は、前記経過時間が前記規定時間に達するまで、前記パーソナル空調機器の吹出風量が前記第一設定値から前記第二設定値に変更されるように、前記経過時間に基づいて、前記パーソナル空調機器の吹出風量を制御し、前記経過時間が前記規定時間に達した後は、前記パーソナル空調機器の吹出風量を前記第二設定値に維持する制御を行ってもよい。
【0010】
このパーソナル空調機器の制御装置によれば、経過時間が規定時間を超えた場合に、この経過時間に対応するデータが第二データとして第二データ記憶部に記憶される。そして、第二機械学習部によって、第二データ記憶部に記憶された第二データを用いて機械学習が実行され、第二予測モデルが更新される。したがって、ユーザの申告が無くても、ユーザの好みの吹出風量に合うように第二予測モデルを更新できる。
【0011】
しかも、このパーソナル空調機器の制御装置によれば、上述の通り、経過時間が規定時間を超えた場合の第二データを用いて機械学習が実行され、第二予測モデルが更新される。したがって、経過時間が規定時間を超えた場合に第二予測モデルを用いて吹出風量の制御を行うときには、経過時間が規定時間を超えた場合のデータが反映されるので、ユーザの好みに対する吹出風量の精度を向上させることができる。
【0012】
上記パーソナル空調機器の制御装置は、前記経過時間が前記規定時間以内である場合に、前記パーソナル空調機器の吹出風量が前記ユーザによって変更操作されたことを判定する第一操作判定部と、前記経過時間が前記規定時間を超えた場合に、前記パーソナル空調機器の吹出風量が前記ユーザによって変更操作されたことを判定する第二操作判定部と、をさらに備え、前記第一データ記憶部は、前記第一操作判定部によって前記変更操作がされたと判定された場合に前記第一データを記憶し、前記第二データ記憶部は、前記第二操作判定部によって前記変更操作がされたと判定された場合に前記第二データを記憶してもよい。
【0013】
このパーソナル空調機器の制御装置によれば、経過時間が規定時間以内である場合に、パーソナル空調機器の吹出風量がユーザによって変更操作されると、第一データ記憶部に第一データが記憶される。したがって、第一データ記憶部には、ユーザの好みを反映した第一データが記憶されるので、この第一データを用いて第一予測モデルを機械学習することで、経過時間が規定時間以内である場合に、ユーザの好みをより反映した吹出風量に制御することができる。同様に、経過時間が規定時間を超えた場合に、パーソナル空調機器の吹出風量がユーザによって変更操作されると、第二データ記憶部に第二データが記憶される。したがって、第二データ記憶部には、ユーザの好みを反映した第二データが記憶されるので、この第二データを用いて第二予測モデルを機械学習することで、経過時間が規定時間を超えた場合に、ユーザの好みをより反映した吹出風量に制御することができる。
【0014】
上記パーソナル空調機器の制御装置において、前記経過時間判定部は、前記建物の外部の空気の温度に基づいて前記規定時間を変更してもよい。
【0015】
このパーソナル空調機器の制御装置によれば、建物の外部の空気の温度に基づいて規定時間が変更されるので、建物の外部の空気の温度に応じた吹出風量の制御を行うことができる。
【0016】
上記パーソナル空調機器の制御装置において、前記データ取得部は、前記ユーザに関するユーザ情報を読み取るユーザ情報読取部で前記ユーザ情報が保持されている間、前記経過時間をカウントし、前記ユーザ情報読取部で前記ユーザ情報の保持が解除された場合には、前記経過時間をリセットしてもよい。
【0017】
このパーソナル空調機器の制御装置によれば、ユーザに関するユーザ情報がユーザ情報読取部で保持されている間、経過時間がカウントされ、ユーザ情報読取部でユーザ情報の保持が解除された場合には、経過時間がリセットされる。したがって、ユーザ情報読取部でユーザ情報の保持が解除される動作をユーザが行うまで、経過時間がカウントされ、この経過時間に応じた吹出風量の制御が行われる。これにより、例えば、ユーザが席を一時的に離れた場合などに、ユーザの意に反して経過時間がリセットされて、ユーザの意に反した吹出風量の制御が行われることを防止できる。
【0018】
本発明の第二態様に係るパーソナル空調システムは、建物内に設置されたパーソナル空調機器と、前記建物の外部の空気の温度及び湿度を検出する外部センサと、前記建物の内部の空気の温度及び湿度を検出する内部センサと、前記パーソナル空調機器を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記パーソナル空調機器を使用するユーザが前記建物に入ったときの前記建物の外部の空気の温度及び湿度と、前記パーソナル空調機器が前記ユーザによって起動されてからの現在の経過時間と、前記建物の内部の空気の現在の温度及び湿度と、前記パーソナル空調機器の現在の吹出風量の各々のデータを取得するデータ取得部と、前記経過時間が規定時間以内であるか否かを判定する経過時間判定部と、前記経過時間が前記規定時間以内である場合の前記データを記憶するデータ記憶部と、前記データ記憶部に記憶された前記データを用いて機械学習を実行し、前記ユーザのための予測モデルを更新する機械学習部と、前記予測モデルを用い、前記ユーザが前記建物に入ったときの前記建物の外部の空気の温度及び湿度と、前記パーソナル空調機器が起動されたときの前記建物の内部の空気の温度及び湿度とに基づいて、前記パーソナル空調機器の吹出風量の設定値を決定する予測処理部と、前記経過時間が前記規定時間に達するまで、前記パーソナル空調機器の吹出風量が前記設定値から減少又は増加するように、前記経過時間に基づいて、前記パーソナル空調機器の吹出風量を制御する制御部と、を備える。
【0019】
このパーソナル空調システムによれば、ユーザが建物に入ったときの建物の外部の空気の温度及び湿度と、パーソナル空調機器がユーザによって起動されてからの現在の経過時間と、建物の内部の空気の現在の温度及び湿度と、パーソナル空調機器の現在の吹出風量の各々のデータがデータ取得部で取得され、経過時間が規定時間以内であるか否かが経過時間判定部で判定される。また、経過時間が規定時間以内である場合に、この経過時間に対応するデータがデータ記憶部に記憶される。そして、機械学習部によって、データ記憶部に記憶されたデータを用いて機械学習が実行され、予測モデルが更新される。したがって、ユーザの申告が無くても、ユーザの好みの吹出風量に合うように予測モデルを更新できる。
【0020】
しかも、このパーソナル空調システムによれば、上述の通り、経過時間が規定時間以内である場合のデータを用いて機械学習が実行され、予測モデルが更新される。したがって、経過時間が規定時間以内である場合に予測モデルを用いて吹出風量の制御を行うときには、経過時間が規定時間以内である場合のデータが反映されるので、ユーザの好みに対する吹出風量の精度を向上させることができる。
【0021】
本発明の第三態様に係るプログラムは、建物内に設置されたパーソナル空調機器を使用するユーザが前記建物に入ったときの前記建物の外部の空気の温度及び湿度と、前記パーソナル空調機器が前記ユーザによって起動されてからの現在の経過時間と、前記建物の内部の空気の現在の温度及び湿度と、前記パーソナル空調機器の現在の吹出風量の各々のデータを取得するデータ取得ステップと、前記経過時間が規定時間以内であるか否かを判定する経過時間判定ステップと、前記経過時間が前記規定時間以内である場合の前記データをデータ記憶部に記憶させるデータ記憶ステップと、前記データ記憶部に記憶された前記データを用いて機械学習を実行し、前記ユーザのための予測モデルを更新する機械学習ステップと、前記予測モデルを用い、前記ユーザが前記建物に入ったときの前記建物の外部の空気の温度及び湿度と、前記パーソナル空調機器が起動されたときの前記建物の内部の空気の温度及び湿度とに基づいて、前記パーソナル空調機器の吹出風量の設定値を決定する予測処理ステップと、前記経過時間が前記規定時間に達するまで、前記パーソナル空調機器の吹出風量が前記設定値から減少又は増加するように、前記経過時間に基づいて、前記パーソナル空調機器の吹出風量を制御する制御ステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0022】
このプログラムによれば、ユーザが建物に入ったときの建物の外部の空気の温度及び湿度と、パーソナル空調機器がユーザによって起動されてからの現在の経過時間と、建物の内部の空気の現在の温度及び湿度と、パーソナル空調機器の現在の吹出風量の各々のデータがデータ取得ステップで取得され、経過時間が規定時間以内であるか否かが経過時間判定ステップで判定される。また、経過時間が規定時間以内である場合に、この経過時間に対応するデータがデータ記憶部に記憶される。そして、機械学習ステップにおいて、データ記憶部に記憶されたデータを用いて機械学習が実行され、予測モデルが更新される。したがって、ユーザの申告が無くても、ユーザの好みの吹出風量に合うように予測モデルを更新できる。
【0023】
しかも、このプログラムによれば、上述の通り、経過時間が規定時間以内である場合のデータを用いて機械学習が実行され、予測モデルが更新される。したがって、経過時間が規定時間以内である場合に予測モデルを用いて吹出風量の制御を行うときには、経過時間が規定時間以内である場合のデータが反映されるので、ユーザの好みに対する吹出風量の精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上詳述したように、本発明によれば、ユーザの申告が無くても、ユーザの好みの吹出風量に合うように予測モデルを更新でき、しかも、ユーザの好みに対する吹出風量の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係るパーソナル空調システムの全体構成図であって、制御装置をハードウェア構成によって示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るパーソナル空調システムの全体構成図であって、制御装置をデータ記録処理の機能ブロックによって示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るパーソナル空調システムの全体構成図であって、制御装置を制御処理の機能ブロックによって示す図である。
【
図4】制御装置で実行されるデータ記録処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】制御装置で実行される制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】冷房時にパーソナル空調機器の吹出風量を制御する制御パターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
【0027】
図1には、本発明の一実施形態に係るパーソナル空調システム10の全体構成が示されている。
図1に示されるように、本実施形態に係るパーソナル空調システム10は、例えばオフィスを備えるビル等の建物12に設置されるものであり、パーソナル空調機器14と、外部センサ16と、内部センサ18と、ユーザ情報読取機20と、制御装置22とを備える。
【0028】
パーソナル空調機器14と、外部センサ16と、内部センサ18と、ユーザ情報読取機20は、制御装置22と通信可能に接続されている。また、建物12には、入館管理システム24が備えられている。入館管理システム24は、制御装置22と通信可能に接続されている。入館管理システム24は、例えば、ユーザ26が所有する入館証に記録されたユーザ情報をユーザ26の入館時及び退館時に読み取り、ユーザ26の入館時には入館情報を出力し、ユーザ26の退館時には退館情報を出力する。
【0029】
パーソナル空調機器14は、建物12の内部に設置されている。このパーソナル空調機器14は、ユーザ26が使用する座席28を備えており、ユーザ26が個別に使用するものである。このパーソナル空調機器14は、座席28に着席するユーザ26に対して空調空気30を吹き出す構成とされている。
【0030】
このパーソナル空調機器14は、起動と停止に切り替え可能なオンオフ機能と、自動モード(ウェルネスモード)と手動モードに切り替え可能なモード切替機能と、空調空気30の吹出温度及び吹出風量を設定可能な空調設定機能とを有している。パーソナル空調機器14は、操作パネル32を有しており、この操作パネル32には、上記各機能に対応するボタン等の操作部が設けられている。
【0031】
操作パネル32は、この操作パネル32でオンオフ機能の操作部が操作されると、この操作に対応するオンオフ情報を出力し、操作パネル32でモード切替機能の操作部が操作されると、この操作に対応するモード切替情報を出力し、操作パネル32で空調設定機能の操作部が操作され、吹出温度及び吹出風量が変更されると、この変更された吹出温度及び吹出風量のデータを出力する構成とされている。
【0032】
なお、ユーザ26が所有するスマートフォンや、タブレット端末、ノート型パソコン等のユーザ端末34がパーソナル空調機器14と通信可能とされ、このユーザ端末34が操作パネル32の代わりに用いられてもよい。また、操作パネル32のオンオフ機能の代わりに、ユーザ26が着席したことを検知する着座センサが用いられ、着座センサからユーザ26の着席の有無に応じてオンオフ情報が出力されてもよい。
【0033】
外部センサ16は、建物12の外部(例えば、建物12の入り口の近辺)に設けられている。この外部センサ16は、外部温度センサ36と、外部湿度センサ38とを有する。外部温度センサ36は、建物12の外部の空気の温度(外気温度)を検出し、外部湿度センサ38は、建物12の外部の空気の湿度(外気湿度)を検出する。この外部センサ16は、外部温度センサ36及び外部湿度センサ38で検出した建物12の外部の空気の温度及び湿度のデータを出力する構成とされている。
【0034】
内部センサ18は、建物12の内部(例えば、パーソナル空調機器14の近辺)に設けられている。この内部センサ18は、内部温度センサ40と、内部湿度センサ42とを有する。内部温度センサ40は、建物12の内部の空気の温度(内気温度)を検出し、内部湿度センサ42は、建物12の内部の空気の湿度(内気湿度)を検出する。この内部センサ18は、内部温度センサ40及び内部湿度センサ42で検出した建物12の内部の空気の温度及び湿度のデータを出力する構成とされている。
【0035】
ユーザ情報読取機20は、ユーザ端末34と通信可能である。このユーザ情報読取機20は、例えば、ユーザ26がユーザ情報読取機20にユーザ端末34を近づけるなど、ユーザ26による読取要求操作が行われた場合に、ユーザ端末34に記憶されたユーザ情報を読み取り、この読み取ったユーザ情報を出力する構成とされている。ユーザ情報読取機20と通信されるユーザ端末34は、スマートフォンや、タブレット端末、ノート型パソコンの他に、例えば、IDカードやウェアラブル端末でもよい。また、上述の操作パネル32のオンオフ機能の代わりに、ユーザ情報読取機20でユーザ情報が読み取られた場合に、ユーザ情報読取機20からオンオフ情報が出力されてもよい。
【0036】
制御装置22は、「コンピュータ」の一例である。この制御装置22は、パーソナル空調機器14、外部センサ16、内部センサ18、ユーザ情報読取機20及び入館管理システム24から出力された情報やデータに基づいてパーソナル空調機器14の吹出風量を制御するものである。
図1には、制御装置22のハードウェア構成が示されている。
【0037】
この制御装置22は、ハードウェア構成として、入出力インターフェース44と、CPU(Central Processing Unit)46と、ROM(Read Only Memory)48と、RAM(Random Access Memory)50と、不揮発性メモリ52を有している。
【0038】
入出力インターフェース44と、CPU46と、ROM48と、RAM50と、不揮発性メモリ52とは、バス54を介して相互に通信可能に接続されている。不揮発性メモリ52には、パーソナル空調機器14の吹出風量を制御するためのプログラム56が記憶されている。このプログラム56は、データ記録処理のためのプロセスと、制御処理のためのプロセスとを有する。
【0039】
図2には、データ記録処理を実行する制御装置22の機能ブロックが示されている。
図2に示されるように、制御装置22は、データ記録処理を実行する機能部として、データ取得部60と、データ記録部62と、モード判定部64と、経過時間判定部66と、第一操作判定部68と、第二操作判定部70と、第一データ記憶部72と、第二データ記憶部74と、第一機械学習部76と、第二機械学習部78と、第一予測モデル記憶部80と、第二予測モデル記憶部82とを有する。
【0040】
データ取得部60と、モード判定部64と、経過時間判定部66と、第一操作判定部68と、第二操作判定部70と、第一機械学習部76と、第二機械学習部78は、
図1に示されるCPU46がプログラム56を実行することにより実現される。一方、データ記録部62と、第一データ記憶部72と、第二データ記憶部74と、第一予測モデル記憶部80と、第二予測モデル記憶部82は、
図1に示される不揮発性メモリ52によって形成される。第一データ記憶部72は、「データ記憶部」の一例であり、第一機械学習部76は、「機械学習部」の一例である。
【0041】
図3には、制御処理を実行する制御装置22の機能ブロックが示されている。
図3に示されるように、制御装置22は、制御処理を実行する機能部として、上述のデータ取得部60、データ記録部62、経過時間判定部66、第一予測モデル記憶部80及び第二予測モデル記憶部82の他に、ユーザ判定部84と、第一予測処理部86と、第二予測処理部88と、制御部90と、デフォルト処理部92とを有する。
【0042】
ユーザ判定部84と、第一予測処理部86と、第二予測処理部88と、制御部90と、デフォルト処理部92は、
図1に示されるCPU46がプログラム56を実行することにより実現される。第一予測処理部86は、「予測処理部」の一例である。
【0043】
次に、本実施形態に係るパーソナル空調機器14の制御方法について説明する。
【0044】
なお、以下の説明において、パーソナル空調システム10の構成については、上述の
図1~
図3を適宜参照することにする。
図4には、制御装置22で実行されるデータ記録処理の流れが示されている。データ記録処理は、パーソナル空調機器14が起動されると実行される。このデータ記録処理では、以下のステップS1~ステップS12が繰り返し実行される。
【0045】
ステップS1では、パーソナル空調機器14がユーザ26によって起動されてからの現在の経過時間と、建物12の内部の空気の現在の温度及び湿度と、パーソナル空調機器14の現在の吹出風量及び吹出温度の各々のデータがデータ取得部60によって取得される。パーソナル空調機器14がユーザ26によって起動されてからの現在の経過時間のデータは、制御装置22が有する時計機能を用いて取得される。
【0046】
なお、制御装置22は、パーソナル空調機器14が起動される以前(上述のステップS1が実行される以前)に、入館管理システム24から出力された入館情報に基づいてユーザ26が建物12に入ったことを検知し、このユーザ26が建物12に入ったときの建物12の外部の空気の温度及び湿度のデータを予め取得し、これを一時的に記憶している。
【0047】
そして、ステップS1では、ユーザ26が建物12に入ったときの建物12の外部の空気の温度及び湿度と、パーソナル空調機器14がユーザ26によって起動されてからの現在の経過時間と、建物12の内部の空気の現在の温度及び湿度と、パーソナル空調機器14の現在の吹出風量及び吹出温度の各々のデータがセットとなってデータ取得部60によって取得される。また、このステップS1では、取得された上述のデータと併せてユーザ情報及びモード切替情報がデータ取得部60によって取得される。このステップS1は、「データ取得ステップ」の一例である。
【0048】
ステップS2では、データ取得部60で取得されたデータがユーザ情報及びモード切替情報と関連付けてデータ記録部62に記録される。
【0049】
ステップS3では、パーソナル空調機器14のモードがモード判定部64によって判定される。ここで、パーソナル空調機器14のモードが自動モード(ウェルネスモード)である場合には、上述のステップS1に戻り、パーソナル空調機器14のモードが手動モードである場合には、ステップS4に移る。
【0050】
ステップS4では、パーソナル空調機器14がユーザ26によって起動されてからの現在の経過時間が規定時間以内であるか否かが経過時間判定部66によって判定される。このステップS4は、「経過時間判定ステップ」の一例である。
【0051】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ユーザ26が代謝の高い状態で着座しても、着座してから30分経過すれば、ユーザ26の代謝状態が通常の安定状態に戻るという知見を得た。規定時間は、ユーザ26の代謝状態が通常の安定状態に戻るまでに要する時間に相当する。上記知見に基づき、本実施形態では、一例として、規定時間を30分とする。ここで、経過時間が規定時間以内である場合には、ステップS5に移る。
【0052】
ステップS5では、現在の経過時間においてパーソナル空調機器14の吹出風量が変更操作されたか否かが第一操作判定部68によって判定される。パーソナル空調機器14の吹出風量が変更操作されたか否かは、現在の経過時間における吹出風量とデータ記録部62に記録された過去の吹出風量を比べることで判定される。このステップS5は、「第一操作判定ステップ」の一例である。
【0053】
ここで、パーソナル空調機器14の吹出風量が変更操作されていない場合には、ステップS1に戻り、パーソナル空調機器14の吹出風量が変更操作された場合には、ステップS6に移る。
【0054】
ステップS6では、上述のステップS1で取得されたデータ、すなわち、現在の経過時間が規定時間以内である場合のデータが第一データとして第一データ記憶部72に記憶される。このステップS6は、「データ記憶ステップ」及び「第一データ記憶ステップ」の一例である。
【0055】
ステップS7では、第一機械学習部76によって、第一データ記憶部72に記憶された第一データを用いて機械学習が実行され、ユーザ26のための第一予測モデルが更新される。このステップS7は、「機械学習ステップ」及び「第一機械学習ステップ」の一例である。
【0056】
第一予測モデルには、例えば、サポートベクター回帰(SVR:Support Vector Regression)や、ニューラルネットワーク等が用いられる。第一予測モデルは、ユーザ26が建物12に入ったときの建物12の外部の空気の温度及び湿度と、パーソナル空調機器14がユーザ26によって起動されてからの現在の経過時間と、建物12の内部の空気の現在の温度及び湿度と、パーソナル空調機器14の現在の吹出温度を説明変数とし、パーソナル空調機器14の現在の吹出風量を目的変数とし、この説明変数と目的変数を教師データとして学習される。
【0057】
ステップS8では、第一機械学習部76によって更新された第一予測モデルが第一予測モデル記憶部80に記憶される。
【0058】
一方、ステップS4において、経過時間が規定時間を超えた場合には、ステップS9に移る。
【0059】
ステップS9では、現在の経過時間においてパーソナル空調機器14の吹出風量が変更操作されたか否かが第二操作判定部70によって判定される。パーソナル空調機器14の吹出風量が変更操作されたか否かは、現在の経過時間における吹出風量とデータ記録部62に記録された過去の吹出風量を比べることで判定される。このステップS9は、「第二操作判定ステップ」の一例である。
【0060】
ここで、パーソナル空調機器14の吹出風量が変更操作されていない場合には、ステップS1に戻り、パーソナル空調機器14の吹出風量が変更操作された場合には、ステップS10に移る。
【0061】
なお、現在の経過時間が規定時間を超えてから初回のステップS9では、変更操作の有無にかかわらず、ステップS10に移ることとする。
【0062】
ステップS10では、上述のステップS1で取得されたデータ、すなわち、現在の経過時間が規定時間を超えた場合のデータが第二データとして第二データ記憶部74に記憶される。このステップS10は、「第二データ記憶ステップ」の一例である。
【0063】
ステップS11では、第二機械学習部78によって、第二データ記憶部74に記憶された第二データを用いて機械学習が実行され、ユーザ26のための第二予測モデルが更新される。このステップS11は、「第二機械学習ステップ」の一例である。
【0064】
第二予測モデルには、例えば、サポートベクター回帰(SVR:Support Vector Regression)や、ニューラルネットワーク等が用いられる。第二予測モデルは、第一予測モデルと同様に、ユーザ26が建物12に入ったときの建物12の外部の空気の温度及び湿度と、パーソナル空調機器14がユーザ26によって起動されてからの現在の経過時間と、建物12の内部の空気の現在の温度及び湿度と、パーソナル空調機器14の現在の吹出温度を説明変数とし、パーソナル空調機器14の現在の吹出風量を目的変数とし、この説明変数と目的変数を教師データとして学習される。
【0065】
ステップS12では、第二機械学習部78によって更新された第二予測モデルが第二予測モデル記憶部82に記憶される。
【0066】
以上のステップS1~ステップS12は、データ取得部60でデータが取得される毎に実行される。
【0067】
図5には、制御装置22で実行される制御処理の流れが示されている。制御処理は、自動モード(ウェルネスモード)が選択された場合に実行される。この制御処理では、以下のステップS21~ステップS26が繰り返し実行される。
【0068】
ステップS21では、パーソナル空調機器14がユーザ26によって起動されてからの現在の経過時間のデータがデータ取得部60によって取得される。パーソナル空調機器14がユーザ26によって起動されてからの現在の経過時間のデータは、制御装置22が有する時計機能を用いて取得される。
【0069】
なお、制御装置22は、パーソナル空調機器14が起動される以前(上述のステップS21が実行される以前)に、入館管理システム24から出力された入館情報に基づいてユーザ26が建物12に入ったことを検知し、このユーザ26が建物12に入ったときの建物12の外部の空気の温度及び湿度のデータを予め取得し、これを一時的に記憶している。また、制御装置22は、パーソナル空調機器14が起動されたときに、内部センサ18から出力された建物12の内部の空気の温度及び湿度と、パーソナル空調機器14から出力された吹出温度のデータを取得し、これを一時的に記憶している。
【0070】
そして、ステップS21では、ユーザ26が建物12に入ったときの建物12の外部の空気の温度及び湿度と、パーソナル空調機器14がユーザ26によって起動されてからの現在の経過時間と、パーソナル空調機器14がユーザ26によって起動されたときの建物12の内部の空気の温度及び湿度と、パーソナル空調機器14がユーザ26によって起動されたときのパーソナル空調機器14の吹出温度の各々のデータがセットとなってデータ取得部60によって取得される。
【0071】
このステップS21で取得されたデータのうち、ユーザ26が建物12に入ったときの建物12の外部の空気の温度及び湿度と、パーソナル空調機器14がユーザ26によって起動されたときの建物12の内部の空気の温度及び湿度と、パーソナル空調機器14がユーザ26によって起動されたときのパーソナル空調機器14の吹出温度の各々のデータは、パーソナル空調機器14の起動時のデータとして扱われる。また、このステップS21では、取得された上述のデータと併せてユーザ情報がデータ取得部60によって取得される。
【0072】
ステップS22では、ユーザ判定部84によって、データ取得部60で取得されたユーザ情報が読み出され、このユーザ情報に基づいて、データ記録部62に記録されたデータから、ユーザ26が過去にパーソナル空調機器14の吹出風量を変更操作したことがある人であるか否かが判定される。
【0073】
ここで、ステップS22において、ユーザ26が過去にパーソナル空調機器14の吹出風量を変更操作したことがある人ではないと判定された場合には、ステップS23に移る。
【0074】
ステップS23では、デフォルト処理部92によってデフォルト処理が実行される。すなわち、デフォルト処理として、パーソナル空調機器14の吹出風量が予め定められた吹出風量(デフォルト値)に制御される。
【0075】
一方、ステップS22において、ユーザ26が過去にパーソナル空調機器14の吹出風量を変更操作したことがある人であると判定された場合には、ステップS24に移る。
【0076】
ステップS24では、パーソナル空調機器14がユーザ26によって起動された起動時であるか否かが経過時間判定部66によって判定される。ここで、起動時である場合には、ステップS25-1、S25-2に移る。
【0077】
ステップS25-1では、第一予測処理部86によって、第一予測モデル記憶部80に記憶された第一予測モデルが読み出され、この第一予測モデルを用い、上述のステップS21で取得されたデータのうち、ユーザ26が建物12に入ったときの建物12の外部の空気の温度及び湿度と、パーソナル空調機器14がユーザ26によって起動されたときの建物12の内部の空気の温度及び湿度と、パーソナル空調機器14がユーザ26によって起動されたときのパーソナル空調機器14の吹出温度の各々のデータ(起動時のデータ)に基づいて、パーソナル空調機器14の吹出風量の第一設定値SP1(
図6参照)が決定される。第一設定値SP1については、後述する。このステップS25-1は、「予測処理ステップ」及び「第一予測処理ステップ」の一例である。
【0078】
ステップS25-2では、第二予測処理部88によって、第二予測モデル記憶部82に記憶された第二予測モデルが読み出され、この第二予測モデルを用い、上述のステップS21で取得されたデータのうち、ユーザ26が建物12に入ったときの建物12の外部の空気の温度及び湿度と、パーソナル空調機器14がユーザ26によって起動されたときの建物12の内部の空気の温度及び湿度と、パーソナル空調機器14がユーザ26によって起動されたときのパーソナル空調機器14の吹出温度の各々のデータ(起動時のデータ)に基づいて、パーソナル空調機器14の吹出風量の第二設定値SP2(
図6参照)が決定される。第二設定値SP2については、後述する。このステップS25-2は、「第二予測処理ステップ」の一例である。
【0079】
ここで、
図6には、冷房時にパーソナル空調機器14の吹出風量を制御する制御パターンの一例が示されている。上述のステップS25-1で決定された第一設定値SP1は、一例として、吹出風量の上限値であり、上述のステップS25-2で決定された第二設定値SP2は、一例として、吹出風量の下限値である。
【0080】
この制御パターンでは、一例として、経過時間が規定時間Tに達するまでに、パーソナル空調機器14の吹出風量が第一設定値SP1から第二設定値SP2に段階的に減少される。経過時間が規定時間Tに達するまでの時間は、第一時間t1と複数の第二時間t2に区切られる。
【0081】
第一時間t1は、パーソナル空調機器14が起動されてから初めの時間区間であり、複数の第二時間t2は、第一時間t1の後の時間区間である。例えば、規定時間Tは30分であり、第一時間t1は10分であり、第二時間t2は3分である。吹出風量の減少量は、第一設定値SP1と第二設定値SP2の差、複数の第二時間t2の数及び規定時間Tに応じて定まる。
【0082】
ステップS26では、制御部90によって、
図6に示される制御パターンに基づいてパーソナル空調機器14の吹出風量が制御される。
【0083】
すなわち、初回のステップS26では、ステップS21で取得された経過時間がパーソナル空調機器14の起動時であるので、パーソナル空調機器14の吹出風量の制御値が第一設定値SP1に決定される。
【0084】
また、パーソナル空調機器14の起動後には、ステップS24の後にステップS26が実行され、この二回目以降のステップS26では、ステップS21で取得された経過時間と、
図6に示される制御パターンに基づいて、パーソナル空調機器14の吹出風量の制御値が決定される。
【0085】
そして、経過時間が規定時間Tに達するまでは、パーソナル空調機器14の吹出風量が第一設定値SP1から第二設定値SP2に段階的に減少されるように、ステップS21で取得された経過時間に基づいて、パーソナル空調機器14の吹出風量が制御される。一方、規定時間Tに達した後は、パーソナル空調機器14の吹出風量を第二設定値SP2に維持する制御が行われる。このステップS26は、「制御ステップ」の一例である。
【0086】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0087】
以上詳述した通り、本実施形態によれば、ユーザ26が建物12に入ったときの建物12の外部の空気の温度及び湿度と、パーソナル空調機器14がユーザ26によって起動されてからの現在の経過時間と、建物12の内部の空気の現在の温度及び湿度と、パーソナル空調機器14の現在の吹出風量及び吹出温度の各々のデータがデータ取得部60で取得され、経過時間が規定時間以内であるか否かが経過時間判定部66で判定される。
【0088】
また、経過時間が規定時間以内である場合に、この経過時間に対応するデータが第一データとして第一データ記憶部72に記憶される。そして、第一機械学習部76によって、第一データ記憶部72に記憶された第一データを用いて機械学習が実行され、第一予測モデルが更新される。したがって、ユーザ26の申告が無くても、ユーザ26の好みの吹出風量に合うように第一予測モデルを更新できる。
【0089】
しかも、上述の通り、経過時間が規定時間以内である場合の第一データを用いて機械学習が実行され、第一予測モデルが更新される。したがって、経過時間が規定時間以内である場合に第一予測モデルを用いて吹出風量の制御を行うときには、経過時間が規定時間以内である場合の第一データが反映されるので、ユーザ26の好みに対する吹出風量の精度を向上させることができる。
【0090】
同様に、経過時間が規定時間を超えた場合に、この経過時間に対応するデータが第二データとして第二データ記憶部74に記憶される。そして、第二機械学習部78によって、第二データ記憶部74に記憶された第二データを用いて機械学習が実行され、第二予測モデルが更新される。したがって、ユーザ26の申告が無くても、ユーザ26の好みの吹出風量に合うように第二予測モデルを更新できる。
【0091】
しかも、上述の通り、経過時間が規定時間を超えた場合の第二データを用いて機械学習が実行され、第二予測モデルが更新される。したがって、経過時間が規定時間を超えた場合に第二予測モデルを用いて吹出風量の制御を行うときには、経過時間が規定時間を超えた場合のデータが反映されるので、ユーザ26の好みに対する吹出風量の精度を向上させることができる。
【0092】
また、本実施形態によれば、経過時間が規定時間以内である場合に、パーソナル空調機器14の吹出風量がユーザ26によって変更操作されると、第一データ記憶部72に第一データが記憶される。したがって、第一データ記憶部72には、ユーザ26の好みを反映した第一データが記憶されるので、この第一データを用いて第一予測モデルを機械学習することで、経過時間が規定時間以内である場合に、ユーザ26の好みをより反映した吹出風量に制御することができる。
【0093】
同様に、経過時間が規定時間を超えた場合に、パーソナル空調機器14の吹出風量がユーザ26によって変更操作されると、第二データ記憶部74に第二データが記憶される。したがって、第二データ記憶部74には、ユーザ26の好みを反映した第二データが記憶されるので、この第二データを用いて第二予測モデルを機械学習することで、経過時間が規定時間を超えた場合に、ユーザ26の好みをより反映した吹出風量に制御することができる。
【0094】
次に、第一実施形態の変形例について説明する。
【0095】
上記実施形態では、パーソナル空調機器14の吹出温度が変更可能とされているが、吹出温度は変更可能でなくてもよい。
【0096】
上記実施形態では、パーソナル空調機器14から吹出温度のデータが出力され、この吹出温度のデータは、上述のデータ記録処理及び制御処理に用いられるが、吹出温度のデータは、上述のデータ記録処理及び制御処理に用いられなくてもよい。また、パーソナル空調機器14から吹出温度のデータが出力されなくてもよい。
【0097】
上記実施形態では、パーソナル空調機器14の吹出風量のみが制御されるが、吹出風量と併せて吹出温度が制御されてもよい。
【0098】
上記実施形態では、パーソナル空調機器14の吹出風量が、第一設定値SP1から第二設定値SP2に段階的に減少されるが、第一設定値SP1から第二設定値SP2に連続的に減少されてもよい。
【0099】
上記実施形態では、パーソナル空調機器14の冷房時の吹出風量を制御する際に上述のデータ記録処理及び制御処理が適用されるが、パーソナル空調機器14の暖房時の吹出風量を制御する際に上記データ記録処理及び制御処理が適用されてもよい。また、暖房時に、吹出風量は、第一設定値SP1から第二設定値SP2に減少されても増加されてもどちらでもよい。
【0100】
上記実施形態では、経過時間判定部66で経過時間と比較される規定時間は30分に設定されているが、規定時間は30分以外でもよい。
【0101】
上記実施形態では、規定時間が固定されているが、例えば、経過時間判定部66は、建物12の外部の空気の温度に基づいて規定時間を変更してもよい。すなわち、規定時間は、建物12の外部の空気の温度に応じて増減されてもよく、また、建物12の外部の空気の温度と建物12の内部の空気の温度の差の絶対値に応じて増減されてもよい。
【0102】
このように構成されていると、建物12の外部の空気の温度に基づいて規定時間が変更されるので、建物12の外部の空気の温度に応じた吹出風量の制御を行うことができる。
【0103】
上記実施形態において、データ取得部60は、ユーザ26が建物12に入り、入館管理システム24でユーザ情報が保持されている間、経過時間をカウントし、ユーザ26が建物12から出て、入館管理システム24でユーザ情報の保持が解除された場合には、経過時間をリセットしてもよい。
【0104】
同様に、データ取得部60は、ユーザ26による読取要求操作によりユーザ情報読取機20でユーザ情報が読み取られた場合には、ユーザ情報読取機20でユーザ情報が保持されている間、経過時間をカウントし、ユーザ26による読取解除操作によりユーザ情報読取機20でユーザ情報の保持が解除された場合には、経過時間をリセットしてもよい。
【0105】
このように構成されていると、入館管理システム24又はユーザ情報読取機20でユーザ情報の保持が解除される動作をユーザ26が行うまで、経過時間がカウントされ、この経過時間に応じた吹出風量の制御が行われる。これにより、例えば、ユーザ26が席を一時的に離れた場合などに、ユーザ26の意に反して経過時間がリセットされて、ユーザ26の意に反した吹出風量の制御が行われることを防止できる。この例において、入館管理システム24及びユーザ情報読取機20は、それぞれ「ユーザ情報読取部」の一例に相当する。
【0106】
なお、上記複数の変形例のうち組み合わせ可能な変形例は組み合わされてもよい。
【0107】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0108】
10 パーソナル空調システム
12 建物
14 パーソナル空調機器
16 外部センサ
18 内部センサ
20 ユーザ情報読取機(ユーザ情報読取部の一例)
22 制御装置(コンピュータの一例)
24 入館管理システム(ユーザ情報読取部の一例)
26 ユーザ
56 プログラム
60 データ取得部
62 データ記録部
64 モード判定部
66 経過時間判定部
68 第一操作判定部
70 第二操作判定部
72 第一データ記憶部(データ記憶部の一例)
74 第二データ記憶部
76 第一機械学習部(機械学習部の一例)
78 第二機械学習部
80 第一予測モデル記憶部
82 第二予測モデル記憶部
84 ユーザ判定部
86 第一予測処理部(予測処理部の一例)
88 第二予測処理部
90 制御部