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特許7424561静電容量式圧力センサ及びそれを使用する圧力検出方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】静電容量式圧力センサ及びそれを使用する圧力検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/12 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
G01L9/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023508849
(86)(22)【出願日】2022-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2022008151
(87)【国際公開番号】W WO2022202115
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2021053066
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】110002893
【氏名又は名称】弁理士法人KEN知財総合事務所
(72)【発明者】
【氏名】須川 成利
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-505145(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0118265(US,A1)
【文献】特表2008-527329(JP,A)
【文献】特開2003-28740(JP,A)
【文献】特開平11-258092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00-23/32
G01L27/00-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定電極と該固定電極に対向して配され流体の圧力に応じて撓む可動電極と、両電極間に設けた基準室と、流体で満たされ前記可動電極に撓みを起こさせるための測定室と、を備え、前記可動電極の可動変位に応じて変化する両電極間の静電容量の変化量を電気信号に直接変換して流体の圧力を測定する静電容量式圧力センサにおいて、
第1の電位と第2の電位を前記可動電極に順次印加して前記第1の電位に応じた第1の出力信号と前記第2の電位に応じた第2の出力信号とを生成する手段と、
前記第1の出力信号と前記第2の出力信号との差分信号を生成する手段と、
を備えていることを特徴とする静電容量式圧力センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の前記静電容量式圧力センサにおいて、前記可動電極は絶縁層上に形成されている静電容量式圧力センサ。
【請求項3】
請求項1に記載の前記静電容量式圧力センサにおいて、前記固定電極の表面に絶縁膜が設けてある静電容量式圧力センサ。
【請求項4】
固定電極と該固定電極に対向して配され流体の圧力に応じて撓む可動電極と、両電極間に設けた基準室と、流体で満たされ前記可動電極に撓みを起こさせるための測定室と、を備え、前記可動電極の可動変位に応じて変化する両電極間の静電容量の変化量を電気信号に直接変換して流体の圧力を測定する静電容量式圧力センサを用いる流体の圧力検知方法において、
前記測定室を被圧力検知流体で満たし、
前記可動電極に、第1の電位と第2の電位を順次印加し、前記第1の電位に応じた第1の出力信号と前記第2の電位に応じた第2の出力信号とを生成し、前記第1の出力信号と前記第2の出力信号との差分信号を生成し、該差分信号に基づいて前記被圧力検知流体の圧力を検知することを特徴とする流体の圧力検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変キャパシターにより流体(液体もしくは気体)の圧力を測定するのに使用される静電容量式圧力センサ及びそれを使用する圧力検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多機能化・高度化・複雑化された現代の工業製品において,物理現象や状態を取り込み信号変換するセンシング技術は,最も基本的で重要な技術の一つである。その中でも,多くのガス(気体)や液体をコントロールして行う半導体/FPD/LED/太陽電池パネル等の製造プロセス(以後、これらの製造プロセスを「半導体装置の製造法(プロセス)」で代表する)では,マスフローコントローラをはじめとする各種流量・圧力制御機器が用いられるが、これらの機器に搭載可能な圧力センサはキーパーツの一つである。
【0003】
半導体装置の製造プロセスでは、気相成長による様々な成膜装置が用いられている。このような成膜装置では、nm単位の厚さの薄膜を形成するため、成膜室内の圧力や原料ガスの分圧などを正確に制御するのに、それらの圧力を正確に検出(計測/測定)することが重要となる。このような圧力の検出のために、静電容量式の圧力センサが用いられている(特許文献1,2、3、技術文献1)。
この種の圧力センサでは、被圧力測定対象である流体の圧力に起因するダイヤフラム(英 : diaphragm)の撓みによる変位量を電気信号に直接変換して流体の圧力を測定する。
このような静電容量式センサのセンサヘッドの既知のデザインの一例を図5に示す。
図5に示す静電容量式の圧力センサのセンサヘッド400は、圧力が感知される流体を受け入れるための内部(第2)チャンバ402と流入口407と流出口408が規定されているハウジング(不図示)を備えている。
【0004】
ハウジング内には、第1並びに第2の導電性電極403,404が、ほぼ互いに平行に装着されており、また、平行平板キャパシターを形成するように、小さいギャップdにより互いに離間されている。この第1の電極(固定電極)403はスペーサ410に対して固定されている。一方第2の電極(可動電極)404は、受けた流体に応答するように、第1の電極403に対して可動する様になっている。
第1の電極403は、例えばセラミック製の支持ディスク405上に形成されている。また、第2の電極404は、例えばニッケルとクロムと鉄との合金のような金属で形成されたダイヤフラムでもある。
前記可動可能な第2の電極404は、代表的には周囲が第2のスペーサ411にクランプされている別途用意されたダイヤフラムの表面(第1チャンバ401側の表面)に設けられることもある。
クランプされている第2の電極404は、センサヘッド400の幅方向に延びて第1のチャンバ401と第2のチャンバ402とを規定している。
【0005】
第1のチャンバ401は、基準入口406が嵌入されている第1のスペーサ410に第1電極403と第2電極404が固着されることで上内壁と下内壁が区画されて形成されている。
第2のチャンバ402は、計測される流体を受け入れるための流入口407を有し、第2の電極404(ダイヤフラム)の中央部分を流体の圧力変化に応答して逸らす。この逸れることによる第2の電極404表面の変位移動により、前記電極間のギャップdが変化する。電気信号が前記第1の電極403(可動な第2の電極404は代表的には接地されている)に与えられ、この結果、第1の電極403と第2の電極404との間のキャパシタンスの変化が感知されて、第2チャンバ402を満たしている流体の圧力に関連付けられる。
【0006】
図5に示すセンサヘッド400を備えた圧力センサでは、第2の電極404がダイヤフラムの機能を備えている例であるが、第2の電極404は別途別部材もしくは同質部材で形成されたダイヤフラムの表面(第1のチャンバ401側の表面)上に設けることもできる。この際、ダイヤフラムは、金属の他、セラミックなどの絶縁体で構成する例もある。
第2のチャンバ402には、該第2のチャンバ402内に充填される流体を流出するための流出口408が備えてある。第2のチャンバ402内の流体は、圧力検知中、流れを形成(動状態)していてもいいし、静止状態であっても圧力検知が可能といわれている。
【0007】
流体の圧力を慎重に感知するために、また、正確な分解能を得るためには、前記ギャップdの変化、即ち、キャパシタンスの変化が充分な分解能で感知され得るようにする必要がある。
そのためには、前記ダイヤフラム(第2の電極404)の大きさを、充分に大きくすることが考えられるが、圧力センサ自体の小型化を阻害する要因の一つになることは避けられない。
或いは、圧力センサを小型化しようとしてダイヤフラム(第2の電極403)を小さくすると、電極間のギャップdも、小さくしなければならない。
この点を数学上で示せば、以下の通りである。
平行平板キャパシターに対して

C=eA/d ・・・・・(1)

であることが知られている。
ここで、Cはキャパシタンス、eは、平板間の材料に基づく定数(真空に対してはe=1)、Aは、前記平行平板の共通領域(平行平板がキャパシターとして働く領域/面積)、そして、dは、ギャップである。
これは、ギャップの変化に対応したキャパシタンスの変化が

d(C)/d(d) =-eAd-2 ・・・・・(2)

であることを意味する。
【0008】
測定精度は、式(1)に与えられる静電容量の出力が大きいほど向上するので,セルの電極面積、即ち、共通領域Aが大きい方が有利であるが、センサの大型化や空間分解能の低下を招くことになる。
一方、式(2)が示すように、共通領域Aが小さくなるのに従って、d(C)/d(d)の変化を正確に検出するのが困難になってくる。即ち、共通領域Aを小さくすれば、圧力センサの小型化が図れるが、圧力の正確な感知を果たすためには、ギャップd(電極間距離)を非常に狭くしなければならず、その狭いギャップdの変化に伴うキャパシタンスの変化を正確に感知する必要がある。
又、ギャップd(電極間距離)を小さくすると、変形可能な量が小さくなり,柔軟性を損なうだけでなく、底付きしやすくなるため測定可能な圧力範囲(ダイナミックレンジ)が狭くなってしまう。
【0009】
以上の説明から解る様に、上記の何れの方法でも測定精度は向上させることは出来るが、それぞれには一長一短があり、高測定精度、高分解能(高感度)、広ダイナミックレンジ及び小型の全ての要求を満足することは,従来の静電容量式圧力センサでは困難であった。
加えて、従来の静電容量式圧力センサの多くでは、高周波交流信号を印加した際に流れる電流を計測して容量を検出しており,信号サンプリングの際に、充放電の位相差や検出回路の応答遅延による信号のゆがみの影響を排除することが難しかった。
しかも、今日では、半導体装置の製法においてはこれから益々微細化が進む中で膜厚や品質の均一化が一層進められ、より高精度なプロセスが要求されており、かかる要求に応じた最適な静電容量式圧力センサとその圧力センサを使用する圧力検出方法の実用化が強く切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特表2001-509585号公報
【文献】特表2019-51023号公報
【文献】特開2017-133841号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】Feature Article 特集論文「小型静電容量式圧力センサ」畑板剛久著、Readout pp10-13、No.36、May 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記点に鑑み鋭意なされたものであって、その主たる目的の一つは、流体の圧力を動的状態でも静的状態でもより高精度で検出(検知/計測/測定)でき、より小型化が可能で、圧力検出範囲がより広い(広ダイナミックレンジ)静電容量式圧力センサ及びそれを使用する圧力検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一つの側面は、固定電極と該固定電極に対向して配され流体の圧力に応じて撓む可動電極と、両電極間に設けた基準室と、流体で満たされ前記可動電極に撓みを起こさせるための測定室と、を備え、前記可動電極の可動変位に応じて変化する両電極間の静電容量の変化量を電気信号に直接変換して流体の圧力を測定する静電容量式圧力センサにおいて、
第1の電位と第2の電位を前記可動電極に順次印加して前記第1の電位に応じた第1の出力信号と前記第2の電位に応じた第2の出力信号とを生成する手段と、
前記第1の出力信号と前記第2の出力信号との差分信号を生成する手段と、
を備えていることを特徴とする静電容量式圧力センサにある。
【0014】
本発明の別の側面は、前記静電容量式圧力センサにおいて、前記可動電極は絶縁層上に形成されている静電容量式圧力センサにある。
本発明の更に別の側面は、前記静電容量式圧力センサにおいて、前記固定電極の表面に絶縁膜が設けてある静電容量式圧力センサにある。
【0015】
本発明のもう一つの側面は、固定電極と該固定電極に対向して配され流体の圧力に応じて撓む可動電極と、両電極間に設けた基準室と、流体で満たされ前記可動電極に撓みを起こさせるための測定室と、を備え、前記可動電極の可動変位に応じて変化する両電極間の静電容量の変化量を電気信号に直接変換して流体の圧力を測定する静電容量式圧力センサを用いる流体の圧力検知方法において、
前記測定室を被圧力検知流体で満たし、
前記可動電極に、第1の電位と第2の電位を順次印加し、前記第1の電位に応じた第1の出力信号と前記第2の電位に応じた第2の出力信号とを生成し、前記第1の出力信号と前記第2の出力信号との差分信号を生成し、該差分信号に基づいて前記被圧力検知流体の圧力を検知することを特徴とする流体の圧力検知方法にある。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、流体の圧力を動的状態でも静的状態でもより高精度に検知/計測/測定でき、加えて、圧力検出範囲とダイナミックレンジが広く、より小型化が可能な静電容量式圧力センサ及び該静電容量式圧力センを使用する圧力検出方を提供することができる。
その他、可撓性が低い材質の材料でできたダイヤフラムを使用する場合であっても、分解能が高いことから広ダイナミックレンジのセンサの実現が可能である。このため、ダイヤフラムの材料の選択範囲を広げることが出来るとともに、分解能が高いので高精度の計測が容易にできる。
【0017】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照とした以下の説明により明らかになるであろう。なお、添付図面においては、同じ若しくは同様の構成には、同じ参照番号を付す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
添付図面は、明細書に含まれ、その一部を構成し、本発明の実施の形態を示し、その記述と共に本発明の原理を説明するために用いられる。
図1A】概念ブロック図。本発明の実施態様を説明するための図である。
図1B】静電容量検出の原理を説明するための模式的概略回路図。本発明の実施態様を説明するための図である。
図1C】タイミングチャート図。本発明の実施態様を説明するための図である。
図2A図2Cに示す線分XYで切断した模式的切断面図。本発明の静電容量式の圧力センサのセンサヘッドの好適な実施態様の一つを説明するための図である。
図2B図2Aに枠で示すA部の模式的拡大図。本発明の静電容量式の圧力センサのセンサヘッドの好適な実施態様の一つを説明するための図である。
図2C】絶縁体のダイヤフラム側表面を説明するための模式的平面図。本発明の静電容量式の圧力センサのセンサヘッドの好適な実施態様の一つを説明するための図である。
図2D】絶縁体の電極パット配設側の表面を説明するための模式的平面図。本発明の静電容量式の圧力センサのセンサヘッドの好適な実施態様の一つを説明するための図である。
図3A】ICセンサチップの概略ブロックレイアウト図。本発明に係るICセンサチップの好適な例の1つを説明するための図である。
図3B図3Aに枠で示すB部の模式的拡大図。本発明に係るICセンサチップの好適な例の1つを説明するための図である。
図3C】概略回路図。本発明に係るICセンサチップの好適な例の1つを説明するための図である。
図3D】駆動タイミングを説明するためのタイミングチャート図。本発明に係るICセンサチップの好適な例の1つを説明するための図である。
図3E】ADCのサンプリングタイミングを説明するためのタイミングチャート図。本発明に係るICセンサチップの好適な例の1つを説明するための図である。
図4】本発明に係るセンサヘッドにおける検出電極の形状・配置の他の好適な実施態様を説明するための模式的説明図である。
図5】静電容量式圧力センサの従来のセンサヘッドの典型例を説明するための模式的構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の理解を促すために必要に応じて図面を利用しながら具体的に説明する。
図1A乃至図Cは、本発明の実施態様を説明するための図である。
図1Aは、概念ブロック図、図1Bは、静電容量検出の原理を説明するための模式的概略回路図、図1Cは、タイミングチャート図である。
【0020】
図1Aには、本発明の実施態様の構成の概略が示される。
本発明の静電容量式圧力センサECPSは、センサヘッド100と信号処理部123を備えている。
前記センサヘッド100は、電極部EPを有する。該電極部EPは、流体の圧力を感知するために、固定電極110と、可動電極111と、該固定電極110及び該可動電極111の間に形成された基準室120と、流体の圧力に応じて変形して前記可動電極111に可動変位を起こさせて前記基準室120の静電容量に変化を与えるための測定室115と、を備えている。
【0021】
前記信号処理部123は、図1Bに示す様に、容量検出回路127を備えている。
前記固定電極110と前記可動電極111とで、一種の平行平板コンデンサー(容量Cs)を形成している。
前記可動電極111は、前記測定室115の一つの壁を構成するダイヤフラム自体(第一形態)でも良く、又は、該ダイヤフラムの表面に別途設ける(第二形態)ことも出来る。
第一形態は、ダイヤフラムと電極の両機能を一つの要素が備えている形態であり、第二形態は、ダイヤフラムの機能と電極の機能とを別々の要素が備えている形態である。ダイヤフラムの機能は、外力によってその形状が撓むが、外力が外れると元の形状に復帰する性質に基づくものであり、可撓性に基づくものであるとも言える。
【0022】
以後、第一形態と第二形態の何れかの形状を備えた可動電極を「ダイヤフラム電極」という場合もある。又、特に断りなく「可動電極」の語を使用する際は、第一形態と第二形態の何れかの形状を備えた電極の意味で使用する。
【0023】
前記測定室115内に充満している流体の圧力の検知は、第1の電位(S1a)と、該第1の電位(S1a)と電位差(VIN)のある第2の電位(S1b)とがパルス信号ΦDとして、前記可動電極111に電位付与手段122により周期t0で付与されることによりなされる。
前記固定電極110は、通常、GNDに接地されるが、所定の電位(S2)が前記電位付与手段122により付与されても良い。
容量Ccは、固定電極110の寄生容量で、その成分は、主に、スイッチSW1のドレイン容量,SF Amp のゲート容量、および、配線容量から成る。
【0024】
前記固定電極に第1の電位(S1a)と第2の電位(S1b)とを順次付与すると、前記固定電極110と前記可動電極111との間(ギャップd)の静電容量(Cs)に応じて、第1の電位(S1a)に対応する第1の信号(S2a)と第2の電位(S1b)に対応する第2の信号(S2b)とがセンサヘッド100から出力されて入力端子(IN1~INn)から信号処理部123に入力される。
第1の信号(S2a)の入力に応じて第1の出力信号(VOUTN)が、第2の信号(VOUTS)の入力に応じて第2の出力信号(VOUTS)が、それぞれ、信号処理部123から出力される。第1の出力信号(VOUTN)と第2の出力信号(VOUTS)とが差分信号生成手段125に入力されると差分信号(VOUT)が生成され、該差分信号生成手段125から出力される。
【0025】
次に、図1B図1Cで、本発明の静電容量式圧力センサECPSの動作の説明をする。
パルス信号ΦDは、期間(周期)t0で第1の電位(S1a)と第2の電位(S1b)が可動電極111に付与される信号を表す。
先ず、スイッチSW1のON‐OFFすることにより、固定電極リセットパルスΦRを前記固定電極(検出電極)110に印加して前記固定電極110をリセットする。その後、可動電極111に、第1の電位(S1a)と第2の電位(S1b)とから形成されるパルス信号ΦDを印加する。
【0026】
前記可動電極111が第1の電位(S1a)にある時にスイッチSW2NにサンプルホールドパルスΦNが印加されてON‐OFFする間に、第1の出力信号(VOUTN)が出力される。
同様に、前記可動電極111が第2の電位(S1b)にある時にスイッチSW2SにサンプルホールドパルスΦSが印加されてON‐OFFする間に、第2の出力信号(VOUTS)が出力される。
第1の出力信号(VOUTN)と第2の出力信号(VOUTS)との差分から、差分信号(VOUT)が形成される。

差分信号(VOUT)= 第1の出力信号(VOUTN)-第2の出力信号(VOUTS)・・・・(3)


但し、GSFは SFAmp(Sauce Follower Amp)の利得である。
【0027】
この結果、設計される電気回路において、固定電極(検出電極)110のリセット熱ノイズ・低周波ノイズ、SF(ソースフォロアー:Sauce Follower)トランジスタの低周波ノイズ・しきい値電圧のばらつき、及び、可動電極(対向電極)111、電源、SFトランジスタ・列電流源トランジスタなどに含まれる周期t0 よりも長周期の低周波ノイズなどのRN(ランダムノイズ:Random Noise)、FPN(フィックストパターンノイズ:Fixed Pattern Noise)を除去することが出来るので、高精度(高分解度)で、広ダイナミックレンジの静電容量式圧力センサを具現化できる。
又、SF Ampを設ければ、一つのトランジスタで電荷増幅を行うことができ,小さな面積で線形性のよい信号を読み出すことができる。
【0028】
次に、本発明を具体的に詳述する。
図2A乃至図2Dには、本発明の好適な実施態様の一つの例が示される。
図2Aは、図2Cに示す線分XYでの模式的切断面である。
静電容量型のセンサヘッド100は、センサベース101の周囲面上に、逆凹突形状のハーメチックベース102が設けられた構成を有する。ハーメチックベース102の内部空間(予備室)114の下部には、絶縁体104がスペーサ103-1,103-2を介してセンサベース101上に設けられている。
【0029】
空間(予備室)114は、リードピン106と電極パット113とをリード線109で結線するために組み立ての便宜上設けられてあるもので、本発明においては本質的には必要とされない。
リードピン106と電極パット113とを結線するには、リード線109の代わりにスプリングバネを用いる方法もある。このスプリングバネを用いる方法では、スプリングバネの弾力性を利用してリードピン106と電極パット113の間にスプリングバネを機械的に挿入するだけでよいので、リード線109を用いる方法の様に、リードピン106とリード線109、リード線109と電極パット113、とをそれぞれ電着させる煩わしさを避けることができる。
本発明においては、この他、リードピン106と電極パット113とを直接結線する方法を用いることもある。
【0030】
センサベース101内の空間(測定室)115の上位には、図2Aに示すように、可撓(変位)領域(空間115の上面を画定する領域)Bを有するセンサダイヤフラム105がセンサベース101を加工してセンサベース101との一体部材としてセンサベース101の上部に設けられている。即ち、可撓(変位)領域Bの下面は、空間115の上面を画定している。センサベース101は、図2Aに示すようにセンサダイヤフラムベース101との一体部材として設けるのが加工組み立て上好ましい。その他、センサベース101とは別体としてセンサベース101上に空間115の上部を塞ぐようにセンサベース101にその周囲部が密着する構造体として設けても良い。
センサダイヤフラム105の厚みは、薄い方が圧力計測の精度を高めることが出来るので、機械的強度の許容範囲で出来るだけ薄い方が好ましい。
【0031】
絶縁体104の上表面104-2には5個の電極パット113-1~113-5(一つは、図2Aには不図示で、図2Dに記載されている)が、下表面104-1には、絶縁体側電極(検出電極/基準電極)110が配設されている。絶縁体側電極110は固定電極である。
図示される絶縁体側電極110は、4個の検出電極110-1~110-4と必要に応じて設けられる基準電極110-5で構成されている。
基準電極110-5は、圧力感知の零点修正のために、ダイヤフラム電極(可動電極)111の非可撓領域Cの表面と固定ギャップを挟んで対向する位置に配される。図2Bでは、必要において設けられるプローブピン接合電極パット128が介在されている。
【0032】
電極パット113-1~113-5には、それぞれに対応するリード配線109-1~109-5を介してそれぞれに対応するリードピン106-1~106-5が電気的に接続されている。
リードピン106、プローブピン107は、ハーメチックガラス108によってハーメチックベース102との間隙を封止されつつハーメチックベース102を貫通してハーメチックベース102の内外に通じている。
貫通孔112-1の内表面には表面電極がコーティングされていて電極パット113-1と基準電極110-5とが電気的に接続されている。
同様な構成・構造で、電極パット113-2と第三検出電極110-3、電極パット113-3と第一検出電極110-1、電極パット113-4と第二検出電極110-2、電極パット113-5(不図示)と第四検出電極110-4、とが夫々電気的に接続されている。
【0033】
図2Aに示されているA部の拡大図が図2Bに示される。
絶縁体104のダイヤフラム105側の表面104-1には、絶縁体側電極110が設けてあり、その表面は必要に応じて絶縁膜118で被っても良い。
センサベース101の絶縁体104側の表面101-1には、絶縁膜117を介してダイヤフラム側電極111が設けられている。
【0034】
プローブピン107は、貫通孔112-2の中を通過して、ダイヤフラム側電極111に電気的に接続されている。図2Bには、電極パット128を介して電気的に接続されているのが示されるが、本発明においては、電極パット128は必要に応じて設ければよく必ずしも要するものではない。
【0035】
空間114と空間(基準室)120は貫通孔112-2を介して連通されており、センサヘッド100の少なくとも完成時には減圧状態、好ましくは真空状態にされているのが望ましい。その際の真空度は、作成されるセンサヘッド100に求められる圧力検出精度に応じて適宜決められる。ダイヤフラム105の可動特性(変位特性)や絶縁体側電極110の配設・形状にもよるが、真空度は高い程検出精度を高くできる。
【0036】
又、空間114、空間120は、減圧状態で窒素(N)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)などの不活性ガスで満たしても良い。
空間114は、空間120と連通していても、又は、遮断されていても良いが、連通している方が、センサヘッド100を組み立てる際に、空間120を減圧状態又は真空状態にするのが容易である点で好都合である。
空間(測定室)115は、被測定流体(気体、液体)で満たされる。空間115に満たされる被測定流体の圧力は、圧力測定時に当該被測定流体が動的状態であっても静止状態であっても測定可能である。
【0037】
図2A乃至図2Dに記載される例では、ダイヤフラム105は、円形平板の形状を備えている。ダイヤフラム105は、空間115側に内可撓面121-1を備え、絶縁縁膜114側に外可撓面121-2を備えている。外可撓面121-2は、センサベース101の絶縁体104側の表面101-1の一部である。外可撓面121-2と内可撓面121-1は、ダイヤフラム105の可撓(変位)領域Bの上下面を夫々構成する。
【0038】
空間115の上面は、図2Aに示すように、可撓(変位)領域B(空間115の上面の範囲を画定する領域)によって画定されている。
ダイヤフラム105の可撓(変位)領域Bは、 図2A図2Bに記載される例では、円形平板の形状を備え、空間115の上を塞いでいる。
ダイヤフラム105は、可撓(変位)領域Bの中心が、ダイヤフラム105自体の中心と一致し、この中心から可撓性を有する前記可撓(変位)領域Bが等方的に全方位に亘って広がっている円形平板形状を備えていると、流体の圧力を受けて等方位的で同心円的に(半球状的に)変形するので、圧力をより正確に検知することが出来、好都合である。
この他、ダイヤフラム105の形状は、圧力検知の正確性を厳密に求めない圧力センサの場合には、楕円平板形状、多角形平板形状であっても差し支えない。
【0039】
検出電極110(図2A乃至図2Dに示す例では、4個)は、絶縁体104のダイヤフラム105側表面104-1のダイヤフラム105の可動(可撓)領域Bの表面(可動領域B表面)上に、該表面の中心若しくは実質的中心を中心点として同心円的に配される。その中で、基準電極110-5を設ける場合は、この基準電極110-5は最外周に配される。
【0040】
ここに記す「実質的中心」の「実質的」とは、中心と見做される許容範囲内のことを云う。この中心と見做される許容範囲は、計測精度に応じて適宜決められる。
以後、特に断りなく本明細書で使用される「実質的」の意味は、この意味で使用される。又、以後、「中心」の意味には、特に断りなく本明細書で使用される場合は、この「実質的中心」も含むものである。
【0041】
図2Cに図示される例では、表面104-1上に4つの検出電極(110-1~110-4)が配設され、このうち第一検出電極110-1が表面の中心に配され、他の3つの検出電極(110-2~110-4)は、第一検出電極110-1の周りに同心円状に配されている。最外周には、基準電極110-5が同心円状に配されている。
図2Cに図示される例では、第一検出電極110-1は円板形状で、その中心が表面104-1の中心と一致若しくは実質的に一致する様に表面104-1に配されているが、第一検出電極110-1の形状は、必ずしも円板形状であることを要しない。第一検出電極110-1の形状は、例えば、板状ドーナツ形状であっても良い。
【0042】
図2A乃至図2Dに記載される例では、検出電極110は、4個(110-1~110-4)であり、図2Cに示す様に、絶縁体104のダイヤフラム105側の表面104-1上に配設されているが、本発明においては、検出電極110の数は、4個に限られるものではなく、1個以上あれば良い。
しかし、検出電極110の数は多い方が、圧力検知精度が上がるので、検出電極110の数を設計許容範囲で出来るだけ多くする方が好ましい。又、検出電極110の数とその配置の仕方は、求める圧力センサの仕様と用途、製造コストに応じて決められる。
【0043】
前記可動電極111が導電性のダイヤフラムの表面に別途電極層を設けた第二形態を有し、且つ該ダイヤフラムと該電極層の間に絶縁性の介在膜が設けてある場合は、基準(参照)電極(固定電極)110-5を該導電性のダイヤフラムに接続することで印加電圧に比例した信号を検出電極に伝達することができ,よりS/N比の高い高精度な検出を行うことができる。
【0044】
絶縁体104は、上面側(リードピン106側の表面)に表面104-2,下面側(ダイヤフラム105側)に表面104-1を有する円柱形状を備えている。その上で、センサダイヤフラム105の可動領域B(図1A図1Dに示す例では円形)を覆うに十分な大きさの円表面面積を有する。即ち、絶縁体104は、輪形状のスペーサ103を介して円形の表面104-1の周端部領域でセンサベース101上に設置(クランプ)されるに十分な大きさの面積の円表面を有する。
絶縁体104が、スペーサ103を介してセンサベース101上に設けられることで、空間120の厚さ(ギャップ)が精度高く設けることが出来るので、空間120の厚さ(ギャップ)を狭くすることが出来、高精度で圧力を検知することが可能となる。
【0045】
空間114と空間120が真空状態で完全に密閉されていると、センサヘッド100の外部の温度に左右されずに絶対圧での測定ができる。
空間114と空間120の完全密閉は、例えば図示されているように、ハーメチックベース102がセンサベース101に気密に嵌合されることでなされる。或いは、ハーメチックベース102とセンサベース101とを半導体レーザで熱溶着することでも空間114と空間120の完全密閉は可能である。
【0046】
センサダイヤフラム105の可動の際に若しくは不測の事態が原因で絶縁体側電極(検出電極/基準電極)110の表面とダイヤフラム側電極111の表面とが接触して起こる電気的ショートを防ぐ目的で、絶縁膜118を絶縁体側電極(検出電極/基準電極)110上に設けるのが望ましい。
尚、本発明においては、絶縁膜118は作成されるセンサヘッド100の仕様によっては必ずしも設けられなくてもよい。
【0047】
これまでに説明した様に本発明に係る容量検出法に従って容量検出すれば、セル検出電極(絶縁体側電極110)のリセット時の熱ノイズ・低周波ノイズ,SFトランジスタの低周波ノイズ・しきい値電圧ばらつき,および,対向電極(可動電極)111,電源,SFトランジスタ,列電流源トランジスタなどに含まれるt0 よりも長周期の低周波ノイズなどのRN(ランダムノイズ),FPN(フィックストパターンノイズ)を除去することが出来、高精度での圧力検出が可能になる。
【0048】
次に、本発明に係るICセンサチップの好適な例の1つを説明する。
図3A乃至図3Eは、本発明に係るICセンサチップの好適な例の1つを説明するための図であって、図3Aは、ICセンサチップの概略ブロックレイアウト図、図3Bは、図3Aに枠で示すB部の模式的拡大図である。図3Cは、概略回路図、図3Dは、駆動タイミングの一例を説明するためのタイミングチャート図、図3Eは、ADCのサンプリングタイミングを説明するためのタイミングチャート図である。
【0049】
下記表1には、ICチップ200の備える電気的PAD(以後、電気的「端子」若しくは「接点」と称することもある)(No.1~20)と名称の対応関係が示されている。
No.1~5は、5個の容量検出セル201―1~201-5の夫々に対応する5個の端子IN1~IN5を示す。
【0050】
図3Bに示すB部の枠内には、容量検出セル201が仕様に応じたセルピッチ、例えば12μmセルピッチで5セル(201-1~201-5)設けられている。
容量検出セル201(201-1)の周囲にはダミーセル208が9個(208-1a~208-1h)配設されている。ダミーセル208は、容量検出セル201が入力端子を有するのに対して入力端子を有さずGNDや電源の固定電圧(固定電位)に設置されている回路構成を備えている点を除いて、容量検出セル201と同等の構成・構造である。
このように、容量検出セル201の周囲全般に上記のダミーセル208(図3Bでは9つ)を配設することで、計測ノイズの低減を図ることが出来る。
【0051】
ダミーセル208の下部に隣接した領域にはSFトランジスタTSFの定電流負荷となるトランジスタTX2a,トランジスタTX3aからなるトランジスタ定電流回路209が設けられている。
S/H容量セル領域210には、S/H容量C1a,S/H容量C2aが並列に配備されるS/H容量セル202が5個(202-1~202-5)まとめて設けられている。
出力バッファアンプ領域211には、2個の出力バッファアンプ205-1、出力バッファアンプ205―2が設けられている。定電流電源領域212には、定電流電源204が設けてある。
水平シフトレジスタ(HSR)領域213には、水平シフトレジスタ(HSR)206が設けられている。
【0052】
次に、図3C乃至図3Eを用いて、センサヘッド100で圧力を検知する際の、ICチップ200の電気的駆動方法を説明する。
図3Cは、ICチップ200の概略回路図(回路の一部は省略されている)である。
図3Dは、ICチップ200の駆動タイミングの好適な例の一つを示すタイミングチャートである。
図上部の駆動タイミングは、S/H容量セル202(202-1~202-5)の容量C1(C1a~C1e)、容量C2(C2a~C2e)に電荷が蓄積(保存)される駆動タイミングを示す。図下部の駆動タイミングは、水平シフトレジスタ(HSR)206の駆動タイミングを示す。
図3Eには、シフトレジスタパルスと出力信号の関係の具体例の一つが示されている。
【0053】
図3Cには、5個の容量検出セル201-1~201-5の中、3個の容量検出セル201-3~201-5は、「・・・」と表示して省略し不図示にしてある。また、5個のS/H容量セル202-1~202-5の中、3個のS/H容量セル202-3~202-5も同様に「・・・」と表示して省略し不図示にしてある。
又、保護回路203についても、2個の保護回路203-1,保護回路203-2については図示されているが、その他の3個の保護回路203-3、保護回路203-4、保護回路203-5は図示を省略してある。
同様に、定電流回路209についても、2個の定電流回路209-1,定電流回路209-2については図示されているが、その他の3個の定電流回路209-3、定電流回路209-4,定電流回路209-5については図示を省略してある。
更に、同様に、SF array回路214につても、2個のSF array回路路214-1、保護回路214-2については図示されているが、その他の3個のSF array回路214-3、保護回路214-4,保護回路214-5については図示を省略してある。
【0054】
ライン1は、5個の容量検出セル201-1~202-5の夫々に設けられている5個のトランジスタTR1~TR5のゲート電極に結線されている。
ライン3は、5個のSF array回路214-1~214-5の夫々に設けられている5個のトランジスタTX1a~TX1eのゲート電極に結線されている。
ライン4は、5個のSF array回路214-1~214-5の夫々に設けられている5個のトランジスタTX2a~TX2eのゲート電極に結線されている。
ライン5は、5個のSF array回路214-1~214-5の夫々に設けられている5個のトランジスタTX3a~TX3eのゲート電極に結線されている。
尚、図3Cにおいて、トランジスタTR2~TR5、トランジスタTX1b~TX1e、トランジスタTX2b~TX2e、トランジスタTX3b~TX3eは、図示を省略してある。
ライン6は、5個のS/H容量セル202-1~202-5の夫々に設けられている5個のトランジスタTY1a~TY5aのゲート電極に結線されている。
ライン7は、5個のS/H容量セル202-1~202-5の夫々に設けられている5個のトランジスタTY2a~TY2eのゲート電極に結線されている。
尚、図3Cにおいて、トランジスタTY1b~TY1e、トランジスタTY2b~TY2e、トランジスタT1b~T1e、トランジスタT2b~T2e、容量C1b~C1e、容量C2b~C2eは、図示を省略してある。
【0055】
流体が圧力センサ100の空間120を満たすことで、電気信号ΦDが、容量検出セル201-1の端子IN1に入力されると、図3Dに示す駆動タイミングで、S/H容量セル202-1内の容量C1a、容量C2aにダイヤフラム105が変位することで生ずる変位量に応じた所定の電荷量が蓄積される。その際のトランジスタTR1のON・OFFは、端子ΦRに信号ΦRが図3Dに示すタイミングで入力されることでなされる。トランジスタTX1aがON・OFFすると、トランジスタTX2aおよびトランジスタTX3aに電流が流れ、トランジスタTSFがON・OFFする。トランジスタTX1aのON・OFFは、端子ΦXに信号ΦXが図3Dに示すタイミングで入力されることでなされる。容量C1aへの電荷の蓄積は、図3Dに示す、端子ΦNへの信号ΦNnの入力タイミングでトランジスタTY1aがON・OFFすることでなされる。同様に容量C2aへの電荷の蓄積は、図3Dに示す、端子ΦSへの信号ΦSの入力タイミングでトランジスタTY2aがON・OFFすることでなされる。
【0056】
従来技術の多くは高周波交流信号を印加した際に流れる電流を計測して容量を検出しており,信号サンプリングの際に、充放電の位相差や検出回路の応答遅延による信号のゆがみの影響を排除することが難しかったが、上記本発明の一具体例である駆動法によれば、ダイヤフラムに印加する第1電位と第2電位に対応したトランジスタTSFの出力信号が安定した時間のところで容量C1a,容量C2aに信号電荷を蓄積できるので、高精度な信号を容易に得ることができる。

【表1】
【0057】
電気信号ΦDは、端子IN1に入力されると同時に端子IN2~N5にも入力されるので、S/H容量セル202-2~202-5の容量C1a、容量C2aに対応する各容量にも同様に蓄積される。
端子ΦHRに信号ΦHRが図3Dに示すタイミングで入力されることで駆動するHSR(水平シフトレジスタ)206の出力に接続されたトランジスタT1a~T1eがON・OFFすることによりにより容量C1a~C1eの夫々に蓄積された電荷量に応じた信号が順次ライン10を通じて、端子OUTNより順次信号OUTNとして出力される。
同様に、端子ΦSに信号ΦHSが図3Dに示すタイミングで入力されることで駆動するHSR206の出力に接続されたトランジスタT2a~T2eがON・OFFすることにより容量C2a~C2eの夫々に蓄積された電荷量に応じた信号が順次ライン9を通じて、端子OUTSより順次信号OUTSとして出力される。
【0058】
次に、ADC(アナログ・デジタル変換器)のサンプリングタイミングを説明する。
図3Eは、ADCのサンプリングタイミングの一具体例を説明するためのタイミングチャート図であり、シフトレジスタパルスと出力信号のタイミング関係を示している
図3Eに示す例では、水平シフトレジスタクロックパルスΦHCの立ち上がり後100nsから立下り前50nsまでの間でADCサンプリングする例である。
【0059】
このような関係のタイミングにすることにより、ICチップ200の中で生じる信号の時間遅延の影響を受けずに,ICチップ200から出力される信号が安定した時刻で精度よくAD変換を行うことができる。
【0060】
図3D図3Eのタイミングは5つの検出電極から得られる信号を20μs毎,すなわち1秒当たり50,000回の周期で出力する場合の例であるが,必ずしもこれに限定されるものではない。また,例えば1秒当たり1000回の周期で信号を得られればよいときには,50回の出力を平均化した信号を用いればよく,それにより検出精度をさらに向上させることができる。
【0061】
次に、本発明に係るセンサヘッドにおける検出電極の形状・配置の他の好適な実施態様を説明する。
図4は、本発明に係るセンサヘッドにおける検出電極の形状・配置の他の好適な実施態様を説明するための模式的説明図である。
図4の(A)の例は、検出電極が9個、図4の(B)の例は、検出電極が7個、図4の(C)の例は、検出電極が2個の例である。
【0062】
図4の(A)~(C)の例の何れも基準電極(参照電極)(No.10,8,3)は最外周にリング状に配し、No.1の検出電極は、円形状で中心に配してある。
No.1以外の検出電極については、図4の(A)、(B)の何れも、No.1の検出電極の外側に、No.1の検出電極と同心円状に2つのリング状電極を設け、これらのリング状電極を、図4の(A)の場合は、4分割してNo.2~9の8個の検出電極を配し、図4の(B)の場合は、3分割してNo.2~7の6個の検出電極を配した例である。
図4の(C)の場合は、No.1の検出電極の外側に、リング状のNo.2の検出電極をNo.1の検出電極の同心円状に配した例である。
【0063】
検出電極は、これまで説明してきた例では、複数設けた例であったが、本発明においては、複数に限定される訳ではなく、単数でも良いし、また、その形状、配置もこれまでの説明に限定される訳でもないが、
図4に示す様に、リング状の電極を複数に分割して設けることで、検出電極の寄生容量を低減することができ,さらにダイヤフラムが大きく変形し中央部の変形が制限された後も周辺部のダイヤフラムの変形量を検出することができ,高感度化・ ダイナミックレンジ拡大化を図ることが出来るため、分割の数は多い方がより効果的に図ることが出来る。
【0064】
以上、これまでに説明した本発明の実施態様の好適な例のいくつかとそれらの変形例は、何れも半導体の製造にかかわる静電容量式圧力センサの例として記載したが、本発明の静電容量式圧力センサの用途はこれらに限定されるものではなく、例えば、介護医療に於ける床ずれ検知センサや排泄尿の量検知センサ、食品加工・飲料製造・薬液製造などの流体を使用する製造現場で使用される圧力センサにも応用できる。
【0065】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。
【符号の説明】
【0066】
1~10、2-1,2-2 ライン
100 センサヘッド
101 センサベース
101-1 センサベース101の絶縁体104側の表面
102 ハーメチックベース
103-1、103-2 スペーサ
104 絶縁体
104-1 絶縁体104のダイヤフラム105側の表面
104-2 絶縁体104のリーピン106側の表面
105 (センサ)ダイヤフラム
106(106-1~106-4) リードピン
107 プローブピン
108(108-1,108-2) ハーメチックガラス
109(109-1~109-4) リード配線
110 絶縁体側電極(固定電極:検出電極/基準電極)
110-1~110-4 検出電極
110-5 基準電極
111 ダイヤフラム側電極(可動電極)
112-1 貫通孔(内表面電極コーティング)
112-2 貫通孔
113(113-1~113-4) 電極パッド
114 空間(予備室)
115 空間(測定室)
116 空間ギャップd
117、118 絶縁膜
119 電極パット
120 空間(基準室)
121-1 内可動面
121-2 外可動面
122 電位付与手段
123 信号処理部
124 入力端子IN1~INn
125 差分信号生成手段
126 流体
127 容量検出回路
128 プローブピン接合電極パット
200 ICチップ
201(201-1~201-5) 容量検出セル
202(202-1~202-5) S/H容量セル
203(203-1~203-5) 保護回路
204 定電流電源
205(205S、205N) 出力バッファアンプ
206 水平シフトレジスタ(HSR)
207-1~207-3 端子
208(208-1a~208-5a、208-1h~208-5h) ダミーセル
209(209-1~209-5) 定電流回路
210 S/H容量セル領域
211 出力バッファアンプ領域
212 定電流電源領域
213 水平シフトレジスタ(HSR)領域
214(214-1~214-5) SF array回路
400 センサヘッド
401 第1チャンバ
402 第2チャンバ
403 第1電極
404 第2電極
405 支持ディスク
406 基準入口
407 入口
408 出口
409 基体
410 第1のスペーサ
411 第2のスペーサ

図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5