(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】はんだ線保持具、はんだ線保持機構、はんだ付け装置、はんだ付け方法、及びはんだ線保持具の分解方法
(51)【国際特許分類】
B65H 75/22 20060101AFI20240123BHJP
B23K 3/06 20060101ALI20240123BHJP
B65H 75/18 20060101ALI20240123BHJP
B65H 75/14 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
B65H75/22
B23K3/06 K
B65H75/18 Z
B65H75/14
(21)【出願番号】P 2019138628
(22)【出願日】2019-07-29
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】592025786
【氏名又は名称】株式会社日本スペリア社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【氏名又は名称】大西 裕人
(72)【発明者】
【氏名】目見田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】藤本 英次
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-052028(JP,A)
【文献】特開2005-009644(JP,A)
【文献】特開2007-030022(JP,A)
【文献】実開昭52-165966(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 75/22
B23K 3/06
B65H 75/18
B65H 75/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ線が円筒状に巻き回されたはんだ線コイルを保持するはんだ線保持具であって、
前記はんだ線コイルの中心孔に挿入される筒状の外芯体と前記はんだ線コイルの一端面を覆う第一フランジ部とを有する第一保形部材と、
前記外芯体内に挿入される内芯体と前記はんだ線コイルの他端面を覆う第二フランジ部とを有する第二保形部材とを備え、
前記外芯体には、その先端部から軸方向に伸びる一対の切欠きが形成されるとともに、
前記一対の切欠きの間には、前記外芯体の内方側に突出する係止用突部を有する係止爪が設けられ、
前記内芯体の外周面には、前記係止用突部が係脱可能に係止される止着溝が形成されるとともに、
前記内芯体の外周面には、前記外芯体に設けられた位置決め部に係合される係合部が設けられ、
前記第二フランジ部及び前記内芯体には、前記止着溝に連通する連通溝が形成され、
前記係合部が前記位置決め部に係合された状態では、前記係止用突部と前記連通溝とが前記第二保形部材の平面視において重なるように配設され
、
前記係止爪の設置部に、その外周面を前記外芯体の内方側に凹入させた凹入部が設けられることにより、係止爪の板厚が、前記外芯体の本体部の板厚に比べて薄肉に形成されているはんだ線保持具。
【請求項2】
前記係止用突部は、前記外芯体の先端部内周面に形成されるとともに、
前記止着溝は、前記内芯体の基端部外周面に形成されている請求項
1記載のはんだ線保持具。
【請求項3】
前記位置決め部は、前記外芯体の先端部から前記外芯体の基端部側に延びるように形成されたスリットからなる請求項1
又は2記載のはんだ線保持具。
【請求項4】
前記係合部は、前記内芯体の基端部から前記内芯体の先端部側に延びるように形成された突起部からなり、
前記係合部の軸方向長さが、前記位置決め部の軸方向長さと略等しい値に設定されている請求項
3記載のはんだ線保持具。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のはんだ線保持具と、
前記止着溝に対する前記係止用突部の係止状態を解除する止着解除治具とを備え、
前記止着解除治具には、前記連通溝内に挿入されて、前記係止用突部を前記止着溝外に押し出す方向に押動する突条が設けられているはんだ線保持機構。
【請求項6】
前記外芯体には、前記係止爪が複数、設けられ、
前記第二フランジ部には、前記係止爪と同数の前記連通溝が形成され、
前記止着解除治具の前記突条は、前記各連通溝に対応した位置に配置されている請求項
5記載のはんだ線保持機構。
【請求項7】
前記止着解除治具は、ドーナツ盤状の基板と、前記基板の内側部同士を連結する連結板とを有し、
前記連結板の一方の面に前記突条が設けられている請求項
5又は
6記載のはんだ線保持機構。
【請求項8】
前記止着解除治具は、一方の面に前記突条が設けられた基板を有し、
前記基板の他方の面には、電気はんだゴテを備えたはんだ付け装置の導電線を抱持する抱持部が設けられている請求項
5又は
6記載のはんだ線保持機構。
【請求項9】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のはんだ線保持具と、
前記はんだ線保持具を支持する支持軸を有するはんだ線支持部と、
はんだ鏝が設けられたはんだ付け部と、
前記はんだ線支持部から引き出されたはんだ線を前記はんだ付け部に供給するはんだ線供給部とを備えるはんだ付け装置。
【請求項10】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のはんだ線保持具にはんだ線コイルを保持させるはんだ線保持工程と、
前記はんだ線保持具からはんだ線を引き出してはんだ付部に供給するはんだ線供給工程と、
前記はんだ付部において前記はんだ線を溶融させてはんだ付けを行うはんだ付け工程とを備えるはんだ付方法。
【請求項11】
前記はんだ線保持工程は、
結合状態にある前記第一保形部材と前記第二保形部材とを分離することにより前記はんだ線保持具を分解する分解工程と、
前記外芯体を前記はんだ線コイルの中心孔に挿入する第一挿入工程と、
前記内芯体を前記外芯体内に挿入する第二挿入工程と、
前記係合部を前記位置決め部に係合して前記係止用突部を前記止着溝に止着する止着工程とを有する請求項
10記載のはんだ付方法。
【請求項12】
請求項5乃至8の何れか1項に記載のはんだ線保持機構を構成する前記
止着解除治具の前記突条を、前記連通溝及び前記止着溝内に挿入することにより、前記係止用突部を前記止着溝外に押し出して、前記止着溝に対する前記係止用突部の止着状態を解除する止着解除工程と、
前記内芯体を前記外芯体外に引き出して前記第一保形部材と前記第二保形部材とを分離する分離工程とを備えるはんだ線保持具の分解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ線が円筒状に巻き回されることにより形成されたはんだ線コイルを保持するはんだ線保持具、このはんだ線保持具を備えたはんだ線保持機構、はんだ線保持具を備えたはんだ付け装置、はんだ線保持具を用いたはんだ付け方法、及びはんだ線保持具の分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器等の部品接合に用いられるはんだは、細長く線状に成形された線はんだといわれるタイプが多く用いられている。このような線はんだは、一般的に、はんだ付け時の取扱いを考慮してプラスチック製の筒状体(ボビン)に巻きつけられた状態で使用される。そして、はんだ線を使い切った後には、上述のボビンがプラスチック廃棄物として処分されており、これらが海洋投棄される等により環境が汚染されるという問題があった。
【0003】
そこで、はんだ線コイルが巻き付けられる筒状の芯部材と、芯部材の両端に設けられた二つのフランジ部を備え、少なくとも一方のフランジ部を芯部材に対して着脱可能に螺着し、はんだ線コイルを着脱できるよう構成した再利用可能なはんだ線の取付具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、本発明者等は、はんだ線コイルの中心孔に挿入される筒状の外芯体とはんだ線コイルの一端面を覆う第一フランジ部とを有する第一保形部材と、外芯体内に挿入される内芯体とはんだ線コイルの他端面を覆う第二フランジ部とを有する第二保形部材とを備え、前記外芯体に、その先端部から軸方向に伸びる複数のスリットが形成されるとともに、前記外芯体の内周面に、その周方向に延びる突条が形成され、かつ前記内芯体の外周面に、前記突条が係合される係合溝が形成されたはんだ線の保持具を開発した(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-100825号公報
【文献】特開2019-52028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1に開示されたはんだ線コイルの取付具では、はんだ線コイルの消費後に新たなはんだ線コイルを装着することができるため、はんだ線コイルの取付具がプラスチック廃棄物として投棄されるのを防止することができる。しかし、上述のはんだ線コイルの取付具は、はんだ供給装置の支持軸等に支持された状態で、はんだ線が取付具から順次引き出される等により使用されるため、このはんだ線の引き出し操作に応じて芯部材とフランジ部との螺合が次第に緩められ、フランジ部が離脱する可能性があり、はんだ線コイルを安定して保持することが困難であった。
【0007】
一方、特許文献2に開示されたはんだ線の保持具では、第二保形部材の内芯体を第一保形部材の外芯体内に挿入して、外芯体の突条を内芯体の係合溝に係合するように構成されているため、はんだ線の引き出し操作に応じてフランジ部が離脱することはない。しかし、上述のはんだ線の保持具では、これに保持されるはんだ線コイルを交換する際に、ユーザーが、一対の分割片を揺動変位させて外芯体を開拡変位させるように手で操作して、外芯体の突条を内芯体の係合溝から離脱させた後に、第一保形部材と第二保形部材とを分解する必要があり、作業性が悪いという問題があった。
【0008】
特に、使用途中のはんだ線コイルを保持具に保持させた状態では、一対の分割片を揺動させて外芯体を開拡変位させることが極めて困難である。このため、例えば外芯体の突条と内芯体の係合溝と間に遊びを持たせて、ユーザーが、第一保形部材の外芯体から第二保形部材の内芯体を無理やり引き抜き得るように構成する必要があり、この引き抜き操作時に外芯体の突条又は内芯体の係合溝が損傷し易いという問題がある。しかも、外芯体の突条と内芯体の係合溝と間に形成された遊びにより、第一保形部材と第二保形部材との結合状態でがたつきが生じ易く、はんだ線コイルを安定して保持することができないという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、再利用可能に構成されるとともに、はんだ線コイルを容易かつ安定して保持することができるはんだ線保持具、このはんだ線保持具を備えたはんだ線保持機構、はんだ線保持具を備えたはんだ付け装置、はんだ線保持具を用いたはんだ付方法、及びはんだ線保持具の分解方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るはんだ線保持具は、はんだ線が円筒状に巻き回されたはんだ線コイルを保持するはんだ線保持具であって、前記はんだ線コイルの中心孔に挿入される筒状の外芯体と前記はんだ線コイルの一端面を覆う第一フランジ部とを有する第一保形部材と、前記外芯体内に挿入される内芯体と前記はんだ線コイルの他端面を覆う第二フランジ部とを有する第二保形部材とを備え、前記外芯体には、その先端部から軸方向に伸びる一対の切欠きが形成されるとともに、前記一対の切欠きの間には、前記外芯体の内方側に突出する係止用突部を有する係止爪が設けられ、前記内芯体の外周面には、前記係止用突部が係脱可能に係止される止着溝が形成されるとともに、前記内芯体の外周面には、前記外芯体に設けられた位置決め部に係合される係合部が設けられ、前記第二フランジ部及び前記内芯体には、前記止着溝に連通する連通溝が形成され、前記係合部が前記位置決め部に係合された状態では、前記係止用突部と前記連通溝とが前記第二保形部材の平面視において重なるように配設されているものである。
【0011】
この構成によれば、第二保形部材の内芯体を第一保形部材の外芯体内に挿入して、外芯体の係止用突部を内芯体の止着溝に係合するだけで、第一保形部材と第二保形部材とを一体に結合することができ、はんだ線コイルを容易に保持することができる。そして、はんだ線コイルからはんだ線を順次繰り出す等してはんだ付けを行う際に、第一保形部材と第二保形部材とが分離することが防止される。また、ユーザーが、止着解除治具の突条等を連通溝及び止着溝内に挿入することにより、係止用突部を止着溝外に押し出して、この止着溝に対する係止用突部の止着状態を容易かつ適正に解除することができるため、第二保形部材の内芯体を第一保形部材の外芯体外に引き出すだけで、第一保形部材と第二保形部材とを容易かつスムーズに分離することができる。したがって、外芯体の係止用突部もしくは内芯体の止着溝が損傷する虞がなく、はんだ線保持具を何度でも使用可能であり、はんだ線保持具が海洋投棄され等により環境が汚染されるという事態の発生を効果的に抑制できる等の利点がある。
【0012】
また、上述のはんだ線保持具において、前記係止爪の設置部に、その外周面を前記外芯体の内方側に凹入させた凹入部が設けられることにより、係止爪の板厚が、前記外芯体の本体部の板厚に比べて薄肉に形成されていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、係止爪の外周面とはんだ線コイルの内周面との間に、凹入部の凹入量に対応した隙間が形成され、この隙間の存在によって係止爪の揺動変位が許容される。しかも、第一保形部材の外芯体が所定の剛性を有する素材で形成されている場合であっても、止着解除治具の突条等を第二保形部材の連通溝内に挿入して、止着溝に対する係止用突部の止着状態を解除する際に、係止爪を容易に揺動変位させることにより、止着溝に対する係止用突部の止着状態を確実に解除することができる。
【0014】
また、前記係止用突部は、前記外芯体の先端部内周面に形成されるとともに、前記止着溝は、前記内芯体の基端部外周面に形成されている構成としてもよい。
【0015】
この構成によれば、係止用突部及び止着溝が、第二フランジ部に近い位置に設けられるため、第二フランジ部に形成された連通溝を介して止着溝に対する係止用突部の止着状態を解除する操作を容易に行うことができる。
【0016】
また、前記位置決め部は、前記外芯体の先端部から前記外芯体の基端部側に延びるように形成されたスリットからなるものであることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、スリットからなる位置決め部により、例えば外芯体が半円形の断面形状を有する左右一対の分割片等に分断されるため、はんだ線コイルの中心孔に外芯体を挿入する際に、各分割片を揺動変位させて外芯体を縮径させることにより、外芯体の挿入操作をスムーズに行うことができるという利点がある。
【0018】
また、前記係合部は、前記内芯体の基端部から前記内芯体の先端部側に延びるように形成された突起部からなり、前記係合部の軸方向長さが、前記位置決め部の軸方向長さと略等しい値に設定されている構成としてもよい。
【0019】
この構成によれば、内芯体を外芯体内に挿入する際に、予め係合部を位置決め部に位置合わせした後、外芯体内に内芯体を真っ直ぐに挿入するだけで、係止爪の係止用突部を止着溝に嵌入することができる。そして、係止用突部が止着溝に嵌入された時点で、「カチッ」という操作音が発生するため、ユーザーは、第一保形部材と第二保形部材との結合操作が完了したことを明確に認識することができる。
【0020】
また、本発明に係るはんだ線保持機構は、上述のはんだ線保持具と、前記止着溝に対する前記係止用突部の係止状態を解除する止着解除治具とを備え、前記止着解除治具には、前記連通溝内に挿入されて、前記係止用突部を前記止着溝外に押し出す方向に押動する突条が設けられているものである。
【0021】
この構成によれば、止着解除治具の突条を、第二保形部材の連通溝内に挿入することにより、係止用突部を止着溝外に押し出す方向に押動して止着溝に対する係止用突部の係止状態を容易に解除することができる。
【0022】
また、外芯体には、前記係止爪が複数、設けられ、前記第二フランジ部には、前記係止爪と同数の前記連通溝が形成され、前記止着解除治具の前記突条は、前記各連通溝に対応した位置に配置されていることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、例えば突条の左右両側方部を一対の連通溝内に挿入することにより、一対の係止爪を同時に押動操作して、止着溝に対する各係止用突部の係止状態を容易かつ確実に解除できるという利点がある。
【0024】
また、前記止着解除治具は、ドーナツ盤状の基板と、前記基板の内側部同士を連結する連結板とを有し、前記連結板の一方の面に前記突条が設けられていることが好ましい。
【0025】
この構成によれば、例えば止着解除治具の不使用時に、止着解除治具の突条をはんだ線保持具の連通溝内に挿入するとともに、止着解除治具の基板を第二フランジ部上に重ねた状態で、止着解除治具をはんだ線保持具に保持させることができる。そのため、止着解除治具の不使用時に、これを紛失するという事態の発生を効果的に防止できるという利点がある。また、ドーナツ盤状の基板と連結板との間に形成された開口部に紐を通し、この紐をユーザーの首に掛けるように構成することも可能である。
【0026】
また、前記止着解除治具は、一方の面に前記突条が設けられた基板を有し、前記基板の他方の面には、電気はんだゴテを備えたはんだ付け装置の導電線を抱持する抱持部が設けられている構成としてもよい。
【0027】
この構成によれば、抱持部を利用して電気はんだ鏝の導電線に止着解除治具を取り付けることにより、この止着解除治具の紛失を防止しつつ、これを必要に応じてすぐに使用することができるという利点がある。
【0028】
本発明に係るはんだ付け装置は、上述のはんだ線保持具と、前記はんだ線保持具を支持する支持軸を有するはんだ線支持部と、はんだ鏝が設けられたはんだ付け部と、前記はんだ線支持部から引き出されたはんだ線を前記はんだ付け部に供給するはんだ線供給部とを備えるものである。
【0029】
この構成によれば、再利用可能に構成されるとともに、はんだ線コイルを容易かつ安定して保持することができる上述のはんだ線保持具を使用してはんだ付け作業を適正に行うことができる。
【0030】
本発明に係るはんだ付け方法は、上述のはんだ線保持具にはんだ線コイルを保持させるはんだ線保持工程と、前記はんだ線保持具からはんだ線を引き出してはんだ付部に供給するはんだ線供給工程と、前記はんだ付部において前記はんだ線を溶融させてはんだ付けを行うはんだ付け工程とを備えるものである。
【0031】
この構成によれば、再利用可能に構成されるとともに、はんだ線コイルを容易かつ安定して保持することができる上述のはんだ線保持具を使用してはんだ付け作業を適正に行うことができる。
【0032】
前記はんだ線保持工程は、結合状態にある前記第一保形部材と前記第二保形部材とを分離することにより前記はんだ線保持具を分解する分解工程と、前記外芯体を前記はんだ線コイルの中心孔に挿入する第一挿入工程と、前記内芯体を前記外芯体内に挿入する第二挿入工程と、前記係合部を前記位置決め部に係合して前記係止用突部を前記止着溝に止着する止着工程とを有することが好ましい。
【0033】
この構成によれば、分解工程において、例えば上述の止着解除治具等を使用することにより、結合状態にある第一保形部材と第二保形部材とを容易に分離することができる。したがって、上述のはんだ付け方法において、はんだ線保持具に保持されたはんだ線コイルを新たなものに交換する作業等を容易に行うことができる。また、係止爪の復元力に応じて係止用突部が止着溝に嵌入される際に、「カチッ」という操作音が発生するため、ユーザーは、第一保形部材と第二保形部材との結合操作が完了したことを明確に認識することができる。
【0034】
また、本発明に係るはんだ線保持具の分解方法は、上述のはんだ線保持機構を構成する前記止着解除治具の前記突条を、前記連通溝及び前記止着溝内に挿入することにより、前記係止用突部を前記止着溝外に押し出して、前記止着溝に対する前記係止用突部の止着状態を解除する止着解除工程と、前記内芯体を前記外芯体外に引き出して前記第一保形部材と前記第二保形部材とを分離する分離工程とを備えるものである。
【0035】
この構成によれば、上述の止着解除治具を用いて、結合状態にある第一保形部材と第二保形部材とを分離することにより、はんだ線保持具を容易かつ適正に分解することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の一局面に従うはんだ線保持具、はんだ線保持機構、はんだ付け装置、はんだ線保持具の分解方法及びはんだ付け方法によれば、はんだ線コイルの中心孔に挿入される外芯体を有する第一保形部材と、外芯体内に挿入される内芯体を有する第二保形部材とを容易に着脱することができるとともに、はんだ線コイルを安定して保持することが可能であり、はんだ付け作業を容易かつ適正行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るはんだ線保持具及びはんだ線保持機構の断面図である。
【
図2】はんだ線保持具を構成する第一保形部材を斜め上方から見た斜視図である。
【
図9】はんだ線保持具を構成する第二保形部材を斜め上方から見た斜視図である。
【
図10】第二保形部材を斜め下方から見た斜視図である。
【
図17】はんだ線保持機構の止着解除治具を斜め下方から見た斜視図である。
【
図21】はんだ線コイルの具体的構造を示す斜視図である。
【
図22】はんだ線コイルの具体的構造を示す断面図である。
【
図23】はんだ線コイルを第一保形部材に保持させた状態を示す断面図である。
【
図24】第一保形部材と第二保形部材との結合過程を示す断面図である。
【
図25】内芯体が外芯体内に挿入された状態を示す断面図である。
【
図26】はんだ付け装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図27】はんだ線保持具を用いたはんだ付け方法を示す工程図である。
【
図28】はんだ線保持工程の具体例を示す工程図である。
【
図29】はんだ線保持具の分解方法を示す工程図である。
【
図30】はんだ線保持具の分解過程を示す断面図である。
【
図31】第二保形部材の変形例を示す右側面図である。
【
図32】止着解除治具の変形例を示す底面図である。
【
図33】標語が表示された看板ボードの構成を示す斜視図である。
【
図34】看板ボードに止着解除治具を保持させた状態を正面図である。
【
図35】本発明の第二実施形態に係るはんだ線保持機構を構成する止着解除治具の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
(第一実施形態)
【0039】
図1は、本発明の第一実施形態に係るはんだ線保持具10を備えたはんだ線保持機構20の断面図、
図2は、はんだ線保持具10を構成する第一保形部材1を斜め上方から見た斜視図、
図3は、第一保形部材1の平面図、
図4は、
図3のIV-IV線断面図、
図5は、
図3のV-V線断面図、
図6は、第一保形部材1の正面図、
図7は、第一保形部材1の右側面図、
図8は、第一保形部材1の底面図である。なお、第一保形部材1の背面図は
図6に示す正面図と同一である。また、第一保形部材1の左側面図は、
図7に示す右側面図と同一である。
【0040】
本発明の第一実施形態に係るはんだ線保持具10は、
図1に示すように、第一保形部材1と、第二保形部材2とを備え、これらが一体に結合された状態ではんだ線コイルHを保持するように構成されている。また、本発明の第一実施形態に係るはんだ線保持機構20は、上述のはんだ線保持具10と、これを後述のように第一保形部材1と第二保形部材2とに分離する際に使用される止着解除治具3とを備えている。
【0041】
第一保形部材1は、はんだ線コイルHの中心孔に挿入される円筒状の外芯体11と、その基端部に連設された円板状の第一フランジ部12とを有している。
図5に示すように、外芯体11の軸方向寸法L1は、はんだ線コイルHの軸方向寸法と略同一の値、例えば58mm程度に設定されている。外芯体11の外径D1は、後述の
図21及び
図22に示すはんだ線コイルHの中心孔H11の直径と略同一の寸法か、それよりもやや小さい値、例えば42mm程度に設定されている。また、外芯体11の内径D2は、35mm程度に設定されるとともに、外芯体11の厚みT1は、3.5mm程度に設定されている。
【0042】
第一保形部材1の外芯体11には、
図5等に示すように、例えば1mm程度のスリット幅を有する一対の切欠き13が、外芯体11の先端部から外芯体11の基端部側に向けて延びるように形成されている。両切欠き13の延出寸法S1、つまり外芯体11の軸方向における設置長さは、15mm程度であり、両切欠き13の設置間隔S2は、8mm程度である。
【0043】
両切欠き13の間には、
図4に示すように、外芯体11の先端部から外芯体11の内方側に向けて突出する係止用突部14を有するとともに、両切欠き13の設置間隔S2に対応した8mm程度の幅寸法とを有する係止爪15が設けられている。この係止爪15の設置部が、両切欠き13を介して外芯体11の本体部(係止爪15の設置部以外の部分)から分断されることにより、係止爪15の揺動変位が許容されるように構成されている。これにより、後述するように第一保形部材1と第二保形部材2とを結合する際に、係止爪15の係止用突部14が、第二保形部材2の止着溝23に対して係脱可能に係止されるように構成されている。
【0044】
係止用突部14は、2mm程度の突出量U1と、2mm程度の軸方向寸法U2とを有している。この係止用突部14の先端部内周面には、先拡がりのテーパ面14a、つまり外芯体11の先端部側に至るほど内径が大きくなるように傾斜した傾斜面が設けられることにより、係止用突部14が略断面台角形状に形成されている。なお、上述のテーパ面14aに代えて、円弧状の湾曲面からなる案内面が、係止用突部14の先端部内周面に設けられた構成としてもよい。
【0045】
また、係止爪15の設置部には、その外周面部を1mm程度、外芯体11の内方側に凹入させた凹入部16が、外芯体11の先端部から基端部に至る軸方向寸法L1の全長に亘って形成されている。これにより、係止爪15は、その板厚T2が2.5mm程度となり、3.5mm程度の厚みT1を有する外芯体11の本体部に比べて1mm程度、薄肉に形成されている。
【0046】
また、外芯体11には、5mm程度の溝幅Wを有する一対のスリットからなる位置決め部17が、外芯体11の先端部から軸方向に伸びるように形成されている。この位置決め部17の基端部には、
図5に示すように、外芯体11の本体部に比べて薄肉に形成された接続部17aが設けられ、この接続部17aにより各分割片18の相対向する側壁面同士が接続されている。なお、接続部17aの厚みT4は、1.5mm程度であり、接続部17aの軸方向寸法S3は、10mm程度である。
【0047】
当第一実施形態では、
図3に示す第一保形部材1の平面視において、外芯体11の軸芯Oを挟んで
図3の上下方向(以下、Y軸方向と称する)に相対向した一対の位置決め部(スリット)17が形成され、この位置決め部17により、外芯体11が半円形の断面形状を有する左右一対の分割片18に分断されている。また、各分割片18の周方向中央部に一対の係止爪15が設けられることにより、
図3の左右方向(以下、X軸方向と称する)に配列された一対の係止爪15と、
図3のY軸方向に配列された一対の位置決め部17が、外芯体11の軸芯Oを中心として十字形に交差した状態で配置されている。
【0048】
外芯体11の基端部には、はんだ線コイルHの外径寸法と略等しいか、又ははんだ線コイルHの外径寸法よりやや大きい外径、例えば65mm程度の外径D3と、2mm程度の厚みT3とを有する円板状の第一フランジ部12が連設されている(
図5参照)。そして、後述するようにはんだ線コイルHの中心孔に外芯体11を挿入した際に、はんだ線コイルHの一端面が、第一フランジ部12により覆われて保護されるように構成されている。
【0049】
また、第一フランジ部12の中心部には、円形の透孔19が設けられている。この透孔19の直径D4は、第二保形部材2(
図13参照)に設けられた内芯体21の内径d2と略同一の値であって、かつ後述のはんだ供給装置に設けられたはんだ支持軸に外嵌可能な値、例えば20mm程度に形成されている。
【0050】
図9は、はんだ線保持具10を構成する第二保形部材2を斜め上方から見た斜視図、
図10は、第二保形部材2を斜め下方から見た斜視図、
図11は、第二保形部材2の底面図、
図12は、第二保形部材2の要部である連通溝26の具体的構成を示す
図11のXII-XII線断面図、
図13は、
図11のXIII-XIII線断面図、
図14は、第二保形部材2の正面図、
図15は、第二保形部材2の右側面図、
図16は、第二保形部材2の平面図である。なお、第二保形部材2の背面図は、
図14に示す正面図と同一である。また、第二保形部材2の左側面図は、
図15に示す右側面図と同一である。
【0051】
第二保形部材2は、第一保形部材1の外芯体11内に挿入される筒状の内芯体21と、その基端部に連設された第二フランジ部22とを備えている。内芯体21の外径d1(
図13参照)は、外芯体11の内径D2(35mm程度)と略同一か、これよりもやや小さい値、例えば34.5mm程度に設定されている。一方、内芯体21の内径d2は、第一フランジ部12に形成された透孔19の直径D4と略同一の値、例えば20mm程度に設定されている。また、内芯体21の軸方向寸法l1は、第一保形部材1の軸方向寸法L1と略同一の値、例えば58mm程度に設定されている。
【0052】
内芯体21の基端部外周面、つまり
図14の上方側部に位置する内芯体21の外周面には、断面コ字状の止着溝23が、内芯体21の周方向に延びるように形成されている。この止着溝23の溝深さm1は、係止用突部14の突出量U1(2mm程度)と略同一の値に設定されている。また、止着溝23の溝幅m2は、係止用突部14の軸方向寸法U2(2mm程度)と略同一か、これよりもやや大きい値、例えば2.5mm程度に設定されている。
【0053】
そして、後述のように、第一保形部材1と第二保形部材2とが一体に結合されてはんだ線保持具10が組み立てられる際に、外芯体11の係止用突部14が内芯体21の止着溝23内に嵌入されて係止されることにより、第一保形部材1と第二保形部材2との結合状態が保持されるように構成されている。
【0054】
内芯体21の基端部外周面には、外芯体11の位置決め部17に係合される一対の係合部24が形成されている。この係合部24は、
図11に示す第二保形部材2の平面視において、内芯体21の外周面からその外方側に突出する矩形の突部からなっている。
図11のY軸方向における係合部24の突出量s1は、外芯体11の厚みT1(3.5mm程度)よりもやや小さい値、例えば3mm程度に設定されている。一方、
図11のX軸方向における係合部24の幅寸法s2は、位置決め部17の溝幅W(5mm程度)よりもやや小さい値、例えば4.5mm程度に設定されている。また、内芯体21の軸方向における係合部24の延出距離s3(
図13参照)は、例えば4mm程度に設定されている。
【0055】
第二保形部材2の第二フランジ部22には、
図13に示すように、内芯体21の内周面に連通する透孔25が形成されている。この透孔25の内径(d2)は、第一保形部材1の透孔19の直径D4と略同一の値、例えば20mm程度に設定されている。また、
図9、
図12及び
図15等に示すように、第二フランジ部22及び内芯体21の基端部には、係止爪15の幅寸法(8mm程度)よりも小さい溝幅、例えば3mm程度の溝幅v1を有し、かつ止着溝23に連通する一対の連通溝26が形成されている。この連通溝26は、第二保形部材2の平面視において、
図16に示すように、透孔25を挟んで第二フランジ部22の左右に延びるように形成されるとともに、第二保形部材2の断面図(
図12参照)に示すように、止着溝23の設置部を分断して内芯体21の軸方向に延びるように形成されている。
【0056】
図16に示す第二保形部材2の平面視における連通溝26の延出距離v2は、内芯体21の外径d1(34.5mm程度)よりもやや大きい値である35mm程度に設定されている。また、
図15に示す第二保形部材2の側面視における連通溝26の延出距離v3は、係止爪15の軸方向長さ、つまり外芯体11の軸方向における切欠き13の延出寸法S1(15mm程度)と略同一の値に設定されている。これにより、第二フランジ部22に形成された連通溝26が、止着溝23に連通するとともに、一対の内芯体21の基端部に沿って、その軸方向に延びるように形成されている。
【0057】
内芯体21の先端部外周面には、先窄まりのテーパ面27が形成されている。このテーパ面27は、後述するように外芯体11内に内芯体21を挿入して第一保形部材1と第二保形部材2とを結合する際における案内面としての機能を有するものである。
【0058】
また、
図11に示す第二保形部材2の底面視において、一対の連通溝26が
図11のX軸方向に延びるように配列されるとともに、一対の係合部24が
図11のY軸方向に延びるように配列されることにより、両連通溝26と両係合部24とが、内芯体21の軸芯oを中心として十字形に交差した状態で配置されている。
【0059】
この結果、第一保形部材1と第二保形部材2とを結合する際に、内芯体21の係合部24が外芯体11の位置決め部17に係合された状態では、内芯体21の連通溝26と、外芯体11の係止爪15とが重なる位置に配設されるようになっている。
【0060】
すなわち、外芯体11に設けられた一対の係止爪15と、一対の位置決め部17とが平面視において十字形に交差して配置されるとともに、内芯体21に形成された一対の係合部24と、一対の連通溝26とが平面視において十字形に交差して配置されている。このため、内芯体21の係合部24が外芯体11の位置決め部17に係合されて、第一保形部材1及び第二保形部材2の周方向における位置合わせが行われることにより、
図16に示す第二保形部材2の平面視において、内芯体21の連通溝26と、外芯体11の係止爪15とが重なった位置に配置されることになる。
【0061】
第二フランジ部22は、第一保形部材1の第一フランジ部12と同様に、はんだ線コイルHの外径寸法と略等しいか、それよりもやや大きい外径、例えば65mmの外径d3を有する円板状に形成されている。そして、はんだ線コイルHがはんだ線保持具10に保持された際に、はんだ線コイルHの他端面が、第二フランジ部22により覆われて保護されるように構成されている。また、第二フランジ部22の板厚t(
図13参照)は、第一保形部材1の第一フランジ部12よりもやや大きい値、例えば3mm程度に設定されている。
【0062】
図17は、本発明の第一実施形態に係るはんだ線保持機構20を構成する止着解除治具3を斜め下方から見た斜視図、
図18は、止着解除治具3の正面図、
図19は、止着解除治具3の底面図、
図20は、止着解除治具の平面図である。なお、止着解除治具3の背面図は、
図18に示す止着解除治具3の正面図と同一である。
【0063】
止着解除治具3は、
図19等に示すように、ドーナツ盤状の基板31と、この基板31の内側部同士を連結する連結板32と、この連結板32の一方の面、当実施形態では止着解除治具3の底面側に位置する面に設けられた突条33とを有している。基板31は、第二フランジ部22の外径d3(65mm程度)と略同一の値に設定された外径α1(
図19参照)と、45mm程度の内径α2とを有し、かつ連結板32の幅寸法βは、7mm程度に設定されている。また、基板31及び連結板32の板厚α3(
図18参照)は、3mm程度に設定されている。
【0064】
突条33は、第二保形部材2の連通溝26内に挿入可能な板厚γ1と、左右幅γ2とを有している。すなわち、突条33の板厚γ1(
図19参照)は、連通溝26の溝幅v1(3mm程度)と同一か、これよりもやや小さい値、例えば2.5mm程度に設定されている。また、突条33の左右幅γ2は、第二保形部材2の平面視における連通溝26の延出距離v2(35mm程度)と略同一か、これよりもやや小さい値、例えば34.5mm程度に形成されている。
【0065】
さらに、
図18のY軸方向に突出する突条33の上下寸法γ3(
図18参照)は、第二保形部材2の側面視における連通溝26の延出距離v3(15mm程度)と略同一の値に設定されている。なお、後述のように突条33を第二保形部材2の連通溝26に挿入する際に、その操作を容易に行い得るようにするため、突条33の左右両側辺部には、R状の面取り部34が形成されている。
【0066】
そして、ユーザーが、結合状態にある第一保形部材1と第二保形部材2と分解する際に、止着解除治具の突条33を、第二保形部材2の連通溝26内に挿入すると、第一保形部材1の係止用突部14に突条33の側面が当接する。この結果、後述するように、突条33により係止用突部14に押動されて、第二保形部材2の止着溝23外に押し出され、止着溝23に対する係止用突部の14の係止状態が解除されるようになっている(
図30参照)。
【0067】
上述の第一保形部材1、第二保形部材2及び止着解除治具3は、例えばABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ナイロン樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、ビニール樹脂、もしくはPTFT等の所定の剛性及び適度の弾力性を有する素材によりそれぞれ形成される。なお、十分な強度を有する第一保形部材1等を形成するためには、これらをABS樹脂又はポリカーボネート樹脂で形成することが好ましい。また、第一保形部材1等を各種の色彩に着色する際の着色性を考慮すると、これらをABS樹脂で形成することが、より好ましい。
【0068】
また、第一保形部材1、第二保形部材2及び止着解除治具3は、射出成型機を使用した射出成形、切削加工機を使用した切削加工、もしくは3Dプリンターを使用した造形加工等の手段により、適宜に成形される。なお、金属材又は木材を切削加工する等により第一保形部材1及び第二保形部材2を形成することも可能である。
【0069】
さらに、第一保形部材1及び第二保形部材2等を各種の色彩に着色し、ユーザーの好み等に応じた色彩のものを選択して組み合わせることにより、はんだ線保持具10を構成してもよい。さらに、はんだ線保持具10に保持されるはんだ線コイルHの型式や材質等に対応させて第一保形部材1及び第二保形部材2等を色分けし、これらの色彩に応じて、はんだ線保持具10に保持されたはんだ線コイルHの型式や材質等を一目で確認し得るように構成してもよい。
【0070】
図21は、はんだ線コイルHの具体的構造を示す斜視図、
図22は、はんだ線コイルHの具体的構造を示す断面図、
図23は、はんだ線コイルHを第一保形部材1に保持させた状態を示す断面図、
図24は、第一保形部材1と第二保形部材2との結合過程を示す断面図、
図25は、内芯体21が外芯体11内に挿入された状態を示す断面図である。
【0071】
はんだ線コイルHは、はんだ線が巻回されることにより円筒状に形成されたコイル本体部H1と、その外表面を覆う被覆フィルムH2と、はんだ線コイルHの一端側面(
図22の上方側面)を覆う被覆フィルムH2の上面に貼付された略ドーナッツ板状のラベルH3とを備えている。被覆フィルムH2及びラベルH3には、コイル本体部H1に形成された中心孔H11の上方開口に対応した開口部H21,H31がそれぞれ形成されている。また、被覆フィルムH2には、前記中心孔H11の下方開口に対応した開口部H32が形成されている。
【0072】
被覆フィルムH2は、例えば熱収縮性を有するフィルム材等によって形成される。具体的には、例えば熱収縮フィルム材からなる筒状体を、コイル本体部H1に外嵌した状態で加熱して熱収縮させる等により、コイル本体部H1の外表面を覆う被覆フィルムH2を形成することができる。
【0073】
被覆フィルムH2用の熱収縮フィルム材としては、ポジ塩化ビニール(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリオレフィン(PO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネー卜(PC)、エチレンービニルアルコール共重合体(EVA)等、また、PET/PETやPP/PE等の2層及び、上述の材料を多層に組み合わせた種々の熱収縮材料を用いることができる。
【0074】
はんだ線コイルHのラベルH3としては、例えば紙や樹脂シート等のシート状体等からなる種々の材料を用いることができる。ラベルH3の表面には、メーカ名、はんだ線の型式や材質等を示す記号などの記載、はんだ線の太さ、はんだ線コイルHの重量、ロット番号等からなる種々の情報が記載されている。
【0075】
はんだ線コイルHをはんだ線保持具10に保持させるには、まず
図23に示すように、はんだ線コイルHの下方側からその中心孔H11に、第一保形部材1の外芯体11を挿入する。次いで、
図24に示すように、はんだ線コイルHの上方側から、第一保形部材1の外芯体11内に第二保形部材2の内芯体21を挿入する。
【0076】
この際に、内芯体21の先端部に設けられた内窄まりのテーパ面27を案内面として利用することにより、外芯体11に対する内芯体21の挿入操作を容易に行うことができる。また、テーパ面27の設置部を超えて内芯体21が外芯体11内に挿入されると、内芯体21の外周面が係止爪15の係止用突部14に当接する(
図24参照)。そして、内芯体21の外周面を、係止用突部14のテーパ面14aに沿って摺動させることにより、係止用突部14が外芯体11の径方向外方側に押動されて、係止爪15が弾性変形した状態となる。
【0077】
第一保形部材1と第二保形部材2との結合過程の最終段階において、
図25に示すように、外芯体11の奥深くまで内芯体21が挿入されると、第二保形部材2の係合部24が、第一保形部材1の外芯体11及び係止爪15の先端部に当接して、外芯体11に対する内芯体21の挿入操作が阻止される。この結果、外芯体11の奥深くまで内芯体21が挿入されたことがユーザーにより確認され、この時点でユーザーが、
図25の矢印Aに示すように、第二保形部材2の第二フランジ部22を回動操作することにより、係合部24と位置決め部17との位置合わせを行う。
【0078】
第二フランジ部22の回動操作に応じ、第二保形部材2の係合部24が第一保形部材1の位置決め部17に対向する位置に到達すると、
図1の破線で示すように、係合部24が位置決め部17内に挿入される。これにより、第二フランジ部22の下面が外芯体11の先端部に当接するとともに、外芯体11の係止用突部14が内芯体21の止着溝23に対向した状態となり、係止爪15の復元力に応じて係止用突部14が止着溝23に嵌入される。この際に、「カチッ」という操作音が発生するため、ユーザーは、第一保形部材1と第二保形部材2との結合操作が完了したことを明確に認識することができる。
【0079】
このようにして第一保形部材1と第二保形部材2とが一体に結合されることにより、
図1に示すように、はんだ線コイルHがはんだ線保持具10に保持された状態となる。そして、後述のはんだ付け装置40に設けられた支持軸41等に、はんだ線保持具10を支持させた状態で、このはんだ線保持具10からはんだ線を順次繰り出すことにより、はんだ付け作業を行うことができる。
【0080】
図26は、はんだ線保持具10を用いてはんだ付けを行うはんだ付け装置40の概略構成を示す斜視図、
図27は、はんだ付け装置40を用いたはんだ付け方法を示す工程図、
図28は、
図27のはんだ付け方法において実施されるはんだ線保持工程K1の具体例を示す工程図、
図29は、はんだ線保持具10の分解方法を示す工程図、
図30は、はんだ線保持具10の分解過程を示す断面図、
図31は、第二保形部材2の変形例を示す右側面図、
図32は、止着解除治具3の変形例を示す底面図である。
【0081】
はんだ付け装置40は、大略的に、はんだ線保持具10を支持する支持軸41を備えたはんだ線支持部42と、はんだ鏝43が設けられたはんだ付け部44と、はんだ線保持具10から引き出されたはんだ線45をはんだ付け部44に供給するはんだ線供給部46とを備えている。
【0082】
上述のはんだ線保持具10を用いたはんだ付け方法は、
図27に示すように、はんだ線コイルHをはんだ線保持具10に保持させるはんだ線保持工程K1と、はんだ線保持具10から引き出されたはんだ線をはんだ付け部に供給するはんだ線供給工程K2と、はんだ付け部44においてはんだ線を溶融させてはんだ付けを行うはんだ付け工程K3とを備えている。
【0083】
また、上述のはんだ線保持工程K1は、
図28に示すように、はんだ線保持具10を第一保形部材1と第二保形部材2とに分解する分解工程K11と、外芯体11をはんだ線コイルHの中心孔H11に挿入する第一挿入工程K12と、内芯体21を外芯体11内に挿入する第二挿入工程K13と、係合部24を位置決め部17に係合して係止用突部14を止着溝23に止着する止着工程K14とを有している。
【0084】
上述の分解工程K11において実施されるはんだ線保持具の分解方法は、
図29に示すように、止着溝23に対する係止用突部14の止着状態を解除する止着解除工程K21と、第一保形部材1と第二保形部材2とを分離する分離工程K22とを備えている。
【0085】
止着解除工程K21では、第一保形部材1と第二保形部材2とが一体に結合された状態にあるはんだ線保持具10(
図1参照)において、その連通溝26及び止着溝23内に、
図30に示すように、止着解除治具3の突条33を挿入することにより、係止用突部14を止着溝23外に押し出すようにする。この結果、止着溝23に対する係止用突部14の止着状態が解除され、上述の分離工程K22において、第二保形部材2の内芯体21を第一保形部材1の外芯体11外に引き出すことにより、第一保形部材1と第二保形部材2とを分離する操作をスムーズに行うことができる。
【0086】
上述のように第一保形部材1と第二保形部材2とを分解した後、
図28の第一挿入工程K12において、外芯体11をはんだ線コイルHの中心孔H11に挿入した後(
図23参照)、
図28の第二挿入工程K13において、内芯体21を外芯体11内に挿入する(
図24及び
図25参照)。そして、
図28の止着工程K14において、
図25の矢印Aに示すように、第二フランジ部22を回動操作することにより、係合部24を位置決め部17に係合して係止用突部14を止着溝23に止着する。この結果、第一保形部材1と第二保形部材2とが一体に結合され、
図1に示すように、はんだ線コイルHがはんだ線保持具10に保持された状態となる。
【0087】
このようにはんだ線が円筒状に巻き回されてなるはんだ線コイルHの中心孔H11に挿入される筒状の外芯体11とはんだ線コイルHの一端面を覆う第一フランジ部12とを有する第一保形部材1と、外芯体11内に挿入される内芯体21とはんだ線コイルHの他端面を覆う第二フランジ部22とを有する第二保形部材2とを備え、外芯体11には、その先端部から軸方向に伸びる一対の切欠き13が形成されるとともに、一対の切欠き13の間には、外芯体11の内方側に突出する係止用突部14を有する係止爪15が設けられ、内芯体21の内周面には、係止用突部14が係脱可能に係止される止着溝23が形成されたはんだ線保持具10によれば、第二保形部材2の内芯体21を第一保形部材1の外芯体11内に挿入して、外芯体11の係止用突部14を内芯体21の止着溝23に係合するだけで、第一保形部材1と第二保形部材2とを一体に結合することができ、はんだ線コイルHを容易に保持することができる。
【0088】
そして、ユーザーが、はんだ線保持具10を、例えばはんだ付け装置40に設けられた支持軸41に支持させた状態で、はんだ線コイルHからはんだ線45を順次繰り出す等により、はんだ付けを行う際に、第一保形部材1と第二保形部材2とが分離することが確実に防止され、はんだ線コイルHを安定して保持することができる。すなわち、本発明に係るはんだ線保持具10によれば、特許文献1に開示された従来技術のように、はんだ線の繰り出し操作に応じて芯部材とフランジ部との螺合が次第に緩められることはなく、はんだ線コイルHの支持状態を安定して維持することができる。
【0089】
しかも、上述のように内芯体21の外周面には、外芯体11に設けられたスリットからなる位置決め部17に係合される係合部24が設けられるとともに、第二フランジ部22及び内芯体21には、止着溝23に連通する連通溝26が形成されている。これにより、係合部24が位置決め部17に係合された状態では、係止用突部14と連通溝26とが第二保形部材2の平面視において重なるように配設されるため、ユーザーが、止着解除治具3の突条33を連通溝26及び止着溝23内に挿入することにより、係止用突部14を止着溝23外に押し出して、この止着溝23に対する係止用突部14の止着状態を容易かつ適正に解除することができる。
【0090】
すなわち、特許文献2に開示された従来技術では、はんだ線コイルを使い切った場合には、ユーザーが、外筒体に形成されたスリットを介して左右に分断された一対の分割片を揺動させて、外芯体の係止用突部と内芯体の止着溝との係合を離脱させるように手で操作して、外芯体の突条を内芯体の係合溝から離脱させた後に、第一保形部材と第二保形部材とを分離するという煩雑な操作が必要であった。
【0091】
これに対して本発明に係るはんだ線保持具10では、
図1に示すように、第一保形部材1に結合された状態にある第二保形部材2の連通溝26内に、止着解除治具3の突条33を第二保形部材2挿入する等により、止着溝23に対する係止用突部14の止着状態を解除することができ、第二保形部材2の内芯体21を第一保形部材1の外芯体11外に引き出すだけで、第一保形部材1と第二保形部材2とを容易かつスムーズに分離することができる。
【0092】
この結果、外芯体11の係止用突部14と内芯体21の止着溝23と間に遊びを持たせる必要はなく、外芯体11の内径D2と内芯体21の外径d1とを略同一の値に設定し、かつ止着溝23の溝深さm1及び溝幅m2を係止用突部14の突出量U1及び軸方向寸法U2(2mm程度)とを略同一の値に設定することにより、上述の遊びに起因したがたつきが、第一保形部材1と第二保形部材2との間に生じるのを効果的に防止することができる。
【0093】
また、ユーザーが、第一保形部材1の外芯体11から第二保形部材2の内芯体21を無理やり引き抜いたりすることなく、はんだ線保持具10を容易に分解して、新たなはんだ線コイルHを保持させることができる。しかも、第一保形部材1の外芯体11から第二保形部材2の内芯体21を引き抜く際に、外芯体11の係止用突部14もしくは内芯体21の止着溝23が損傷する虞がなく、はんだ線保持具10を何度でも使用可能である。したがって、はんだ線保持具10が海洋投棄され等により環境が汚染されるという事態の発生を効果的に抑制することができる。
【0094】
また、はんだ線コイルHが残存している状態、つまり第一保形部材1の外芯体11がはんだ線コイルHにより外側から拘束されている状態においても、ユーザーは、止着解除治具3の突条33を第二保形部材2の連通溝26内に挿入することにより、止着溝23に対する係止用突部14の止着状態を解除することができる。このため、はんだ線コイルHを使い切る前に、第一保形部材1と第二保形部材2との結合状態を解除し、使用中のはんだ線コイルHを別のものと交換する作業等を容易に行うことができる。
【0095】
上述の第一実施形態では、外芯体11に設けられた係止爪15の設置部に、その外周面を凹入させた凹入部16を設けることにより、係止爪15の板厚を、外芯体11の本体部の板厚に比べて薄肉に形成している。このため、
図1に示すように、係止爪15の外周面と、はんだ線コイルHの内周面との間に、凹入部16の凹入量に対応した隙間が形成され、この隙間の存在によって係止爪15の揺動変位が許容される。
【0096】
しかも、第一保形部材1の外芯体11が所定の剛性を有する素材で形成されている場合であっても、
図30に示すように、止着解除治具3の突条33を第二保形部材2の連通溝26内に挿入して止着溝23に対する係止用突部14の止着状態を解除する際に、係止爪15を容易に揺動変位させることにより、止着溝23に対する係止用突部14の止着状態を確実に解除することができる。
【0097】
なお、上述の第一実施形態では、係止爪15の設置部の外周面を凹入した凹入部16を、外芯体11の先端部から基端部までの全長に亘り形成した例について説明したが、必ずしも外芯体11の先端部から基端部までの全長に亘って凹入部16を形成する必要はなく、係止爪15よりも下方に位置する部分の凹入部16を省略してもよい。しかし、この場合には、係止爪15の基端部に応力集中が発生して、係止爪15の基端部が損傷し易いため、上述のように、外芯体11の先端部から基端部までの全長に亘り凹入部16を形成することが望ましい。
【0098】
また、外芯体の11の先端部内周面に係止用突部14を形成するとともに、内芯体21の基端部外周面に止着溝23を形成してなる上述の第一実施形態に代え、例えば外芯体の11の軸方向中間部に位置する内周面に係止用突部14を形成するとともに、内芯体21の軸方向中間部に位置する外周面に止着溝23を形成することも可能である。
【0099】
しかし、上述の構成では、係止用突部14及び止着溝23が、第二フランジ部22から離れた位置に設けられるため、第二フランジ部22に形成された連通溝26を介して止着溝23に対する係止用突部14の止着状態を解除する操作を容易に行うことができない。このため、上述の第一実施形態に示すように、第二フランジ部22に近い位置に係止用突部14及び止着溝23を形成することにより、第二フランジ部22に形成された連通溝26を介して止着溝23に対する係止用突部14の止着状態を解除する操作を容易に行い得るように構成することが望ましい。
【0100】
さらに、上述の第一実施形態では、内芯体21の係合部24が係合される位置決め部17を、外芯体11の先端部からその基端部側に延びるように形成された一対のスリットにより構成し、このスリットからなる位置決め部17により、外芯体11を半円形の断面形状を有する左右一対の分割片18に分断している。このため、はんだ線コイルHの内径、つまり中心孔H11の直径が製作誤差によって外芯体11の外径D1よりも小さくなっている場合においても、はんだ線コイルHの中心孔H11に外芯体11を挿入する際に、各分割片18を揺動変位させて外芯体11を縮径させることにより、外芯体11の挿入操作をスムーズに行うことができるという利点がある。
【0101】
また、上述の第一実施形態では、外芯体11に形成された位置決め部17の基端部に、外芯体11の本体部に比べて薄肉に形成された接続部17aが設けられ、この接続部17aにより各分割片18の相対向する側壁面同士が接続された構成としたため、接続部17aにより外芯体11の基端部を補強して、外芯体11の強度を充分に確保することができる。しかも、上述の第一実施形態に示すように、接続部17aの板厚を外芯体11の本体部に比べて薄肉に形成した場合には、スリットからなる位置決め部17により分断された左右一対の分割片18の基端部に応力集中が生じるのを防止しつつ、外芯体11の基端部を適正に補強できるという利点がある。
【0102】
また、第一実施形態では、第二フランジ部22の板厚t(3mm程度)を、第一フランジ部12の板厚T(2mm程度)よりもやや大きい値に設定したため、第二フランジ部22の補強作用により、はんだ線保持具10の強度を適正に維持することができる。しかも、第一フランジ部12の板厚Tが、第二フランジ部22の板厚tよりも小さく設定されることにより、はんだ線コイルHの中心孔H11に外芯体11を挿入する際に、第一フランジ部12を容易に弾性変形させることができる。この結果、はんだ線コイルHの中心孔H11に外芯体11を挿入する際に、各分割片18を、より円滑に揺動変位させて外芯体11を縮径させることができる。これにより、はんだ線を傷付けることなく、はんだ線コイルHの中心孔H11に対して第一保形部材1の外芯体11をスムーズに挿入することができる。
【0103】
なお、内芯体21の基端部外周面に、矩形の突部からなる係合部24を設けてなる上述の第一実施形態に代え、
図31に示すように、内芯体21の基端部からその先端部側に延びるように形成された突起部からなる係合部24aを設け、この係合部24aの軸方向長さl2を、スリットからなる位置決め部17の軸方向長さに略等しい値に設定した構成としてもよい。このように構成した場合には、内芯体21を外芯体11内に挿入する際に、予め係合部24aを位置決め部17に位置合わせすることができる。
【0104】
このため、第一保形部材1と第二保形部材2との結合過程の最終段階において、
図25の矢印Aに示すように、第二保形部材2の第二フランジ部22を回動操作する必要はなく、外芯体11内に内芯体21を真っ直ぐに挿入するだけで、係止爪15の係止用突部14を止着溝23に嵌入することができる。この場合においても、係止用突部14が止着溝23に嵌入された時点で、「カチッ」という操作音が発生するため、ユーザーは、第一保形部材1と第二保形部材2との結合操作が完了したことを明確に認識することができる。
【0105】
また、本発明に係るはんだ線保持機構20は、上述のように第一保形部材1及び第二保形部材2を有するはんだ線保持具10と、止着溝23に対する係止用突部14の係止状態を解除する止着解除治具3とを備えている。そして、止着解除治具3に設けられた突条33を、連通溝26内に挿入することにより、係止用突部14を止着溝23外に押し出す方向に押動するように構成したため、外芯体11に複数の係止爪15が設けられている場合においても、これらを同時に押動操作して止着溝23に対する係止用突部14の係止状態を容易に解除することができる。
【0106】
すなわち、上述の第一実施形態では、外芯体11に一対の係止爪15が設けられるとともに、内芯体21に一対の連通溝26が設けられた構成とし、かつ止着解除治具3の突条33が各連通溝26に対応した位置に配置された構成としたため、突条33の左右両側方部を一対の連通溝26内に挿入することにより、一対の係止爪15を同時に押動操作して止着溝23に対する各係止用突部14の係止状態を容易かつ確実に解除できるという利点がある。
【0107】
なお、外芯体11に一対の係止爪15が設けられた上述の第一実施形態に代え、三個以上の係止爪15が外芯体11に設けられるとともに、これに対応した個数の連通溝26が内芯体21に設けられた構成とし、かつ止着解除治具3の突条33が各連通溝26に対応した位置に配置された構成としてもよい。例えば、外芯体11に三個の係止爪15が設けられるとともに、これに対応して三個の連通溝26が内芯体21に設けられている場合には、
図32に示すように、Y字形に配列された三個の突条33を止着解除治具3に設けた構成としてもよい。
【0108】
また、はんだ線保持具10が、必ずしも複数個の係止爪15及び連通溝26を備えた構成とする必要はなく、はんだ線保持具10が、一個の係止爪15及び連通溝26を備えた構成としてもよい。この場合、突条33を備えた止着解除治具3を使用することなく、例えばマイナスドライバーの先端部を連通溝26内に挿入して、止着溝23に対する係止用突部14の係止状態を解除することも可能である。
【0109】
上述の第一実施形態では、止着解除治具3が、ドーナツ盤状の基板31と、その内側部同士を連結する連結板32とを有し、この連結板32の一方の面(下面)に突条33が設けられた構成とし、かつ基板31の外径α1を、第二フランジ部22の外径d3(65mm程度)と略同一の値に設定している。この構成によれば、止着解除治具3の不使用に、例えば
図30に示すように、止着解除治具3の突条33をはんだ線保持具10の連通溝26内に挿入するとともに、止着解除治具3の基板31を第二フランジ部22上に重ねた状態で、止着解除治具3をはんだ線保持具10に保持させることができるため、止着解除治具3の不使用時に、これを紛失するという事態の発生を効果的に防止できるという利点がある。
【0110】
なお、例えば
図32に示すように、ドーナツ盤状の基板31と連結板32との間に形成された開口部35に紐36を通し、この紐36をユーザーの首に掛けるように構成してもよい。この構成によれば、止着解除治具3の紛失を、より効果的に防止できるとともに、ユーザーが必要に応じて止着解除治具3を迅速に使用できるというという利点がある。
【0111】
図33及び
図34は、はんだ付けを行う工場等に設置されるとともに、標語が表示された看板ボード5の構成を示す斜視図及び正面図である。この看板ボード5には、止着解除治具3の基板31が嵌着される凹部51が所定の位置に形成されている。この構成によれば、止着解除治具3の不使用に、これを看板ボード5に保持させることができる。また、必要に応じて止着解除治具3を看板ボード5から止着解除治具3を取り外すことにより直ぐに使用することができる。しかも、止着解除治具3を使用する際に、看板ボード5に表示された標語を、作業者が視認することにより、プラスチック製品の使い捨てを防止しようという強い意識が作業者に植え付けられることになる。
【0112】
上述の構成を有するはんだ線保持具10と、このはんだ線保持具10を支持する支持軸41を有するはんだ線支持部42と、はんだ鏝43が設けられたはんだ付け部44と、はんだ線支持部42から引き出されたはんだ線45をはんだ付け部44に供給するはんだ線供給部46とを備えたはんだ付け装置40によれば、何度でも再利用可能に構成されるとともに、はんだ線コイルHを容易かつ安定して保持することができる上述のはんだ線保持具10を使用してはんだ付け作業を適正に行うことができる。
【0113】
また、
図27に示すように、上述のはんだ線保持具10にはんだ線コイルHを保持させるはんだ線保持工程K1と、はんだ線保持具10からはんだ線45を引き出してはんだ付け部44に供給するはんだ線供給工程K2と、はんだ付け部44においてはんだ線45を溶融させてはんだ付けを行うはんだ付け工程K3とを備えたはんだ付方法によれば、何度でも再利用可能に構成されるとともに、はんだ線コイルHを容易かつ安定して保持することが可能な上述のはんだ線保持具10を使用して、はんだ付け作業を適正に行うことができる。
【0114】
さらに、上述のはんだ線保持工程K1が、
図28に示すように、結合状態にある第一保形部材1と第二保形部材2とを分離することによりはんだ線保持具10を分解する分解工程K11と、外芯体11をはんだ線コイルHの中心孔H11に挿入する第一挿入工程K12(
図23参照)と、内芯体21を外芯体11内に挿入する第二挿入工程K13(
図24及び
図25参照)と、係合部24を位置決め部17に係合して係止用突部14を止着溝23に止着する止着工程K14(
図25及び
図1参照)とを有している場合には、分解工程K11において上述の止着解除治具3を使用することにより、結合状態にある第一保形部材1と第二保形部材2とを分離することができる。
【0115】
したがって、上述のはんだ付け方法において、はんだ線保持具10に保持されたはんだ線コイルHを交換する作業等を容易に行うことができる。また、止着工程K14において、係止爪15の復元力に応じて係止用突部14が止着溝23に嵌入される際に、「カチッ」という操作音が発生するため、ユーザーは、第一保形部材1と第二保形部材2との結合操作が完了したことを明確に認識することができる。
【0116】
また、
図29に示すように、止着解除治具3の突条33を、連通溝26及び止着溝23内に挿入することにより、係止用突部14を止着溝23外に押し出して、この止着溝23に対する係止用突部14の止着状態を解除する止着解除工程K21と、内芯体21を外芯体11外に引き出して第一保形部材1と第二保形部材2とを分離する分離工程K22とを備えるはんだ線保持具10の分解方法によれば、上述の止着解除治具3を用いて、結合状態にある第一保形部材1と第二保形部材2とを分離することにより、はんだ線保持具10を容易かつ適正に分解することができる。
【0117】
なお、外芯体11の先端部から軸方向に伸びる一対の切欠き13が形成されるとともに、一対の切欠き13の間に、外芯体11の内方側に突出する係止用突部14を有する係止爪が設けられ、かつ内芯体21の内周面に、係止用突部14が係脱可能に係止される止着溝23が形成された上述の構成に代え、内芯体の外方側に突出する係止用突部を有する係止爪を内芯体の先端部に設けるとともに、この係止用突部が係脱可能に係止される止着溝を外芯体の基端部内周面に設けた構成とすることも可能である。
【0118】
そして、第一保形部材の第一フランジ部及び外芯体に止着溝に連通する連通溝を形成し、この連通溝内に止着解除治具の突条を挿入して、係止用突部を止着溝外に押し出す方向、つまり内芯体の内方側に押動することにより、止着溝に対する前記係止用突部の止着状態を解除することも可能である。このような構成を有するはんだ線保持具は、本発明とは直接の関係はないが、第一保形部材と第二保形部材とを容易に着脱できるとともに、はんだ線コイルを安定して保持できるという点で共通している。
(第二実施形態)
【0119】
図35は、本発明の第二実施形態に係るはんだ線保持機構を構成する止着解除治具3aの具体的な構造を示す正面図、
図36は、止着解除治具3aの側面図である。この止着解除治具3aは、一方の面に突条33が設けられた矩形状の基板31aを有し、この基板31aの他方の面には、電気はんだ鏝の導電線6を抱持する断面円弧状の抱持部37が設けられている。
【0120】
上述の止着解除治具3aを備えたはんだ線保持機構によれば、抱持部37を利用して電気はんだ鏝の導電線6に止着解除治具3aを取り付けることにより、この止着解除治具3aの紛失を防止しつつ、これを必要に応じてすぐに使用することができるという利点がある。
【符号の説明】
【0121】
1 第一保形部材
2 第二保形部材
3,3a 止着解除治具
5 看板ボード
6 導電線
10 はんだ線保持具
11 外芯体
12 第一フランジ部
14 係止用突部
15 係止爪
16 凹入部
17 位置決め部
18 分割片
19 透孔
20 はんだ線保持機構
21 内芯体
22 第二フランジ部
23 止着溝
24,24a 係合部
25 透孔
26 連通溝
27 テーパ面
31,31a 基板
32 連結板
33 突条
35開口部
36 紐
37 抱持部
40 はんだ付け装置
41 支持軸
42 はんだ線支持部
43 はんだ鏝
44 はんだ付け部
45 はんだ線
46 はんだ線供給部
51 凹部