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  • 特許-覆工コンクリートの温度測定装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】覆工コンクリートの温度測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/14 20210101AFI20240123BHJP
   E21D 11/10 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
G01K1/14 B
G01K1/14 L
E21D11/10 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020001774
(22)【出願日】2020-01-09
(65)【公開番号】P2021110605
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000158725
【氏名又は名称】岐阜工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】小枝 保彦
(72)【発明者】
【氏名】金橋 直央都
(72)【発明者】
【氏名】林 敦史
(72)【発明者】
【氏名】今崎 伸彦
(72)【発明者】
【氏名】松澤 郷至
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-007351(JP,A)
【文献】特開2019-007141(JP,A)
【文献】特開2003-139623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/14
E21D 1/00-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体とトンネル内壁との間に形成されたコンクリート打設空間内に枠体側から突出させられて、打設された覆工コンクリートの巻厚を測定するために使用されるピン体と、前記ピン体に設けられて、打設された覆工コンクリートの温度を測定する測温素子とを備え、かつ前記ピン体を先端閉鎖の筒体とし、当該筒体の側面に取付穴を設けて、当該取付穴内に、前記測温素子を内設した栓部材を圧入した覆工コンクリートの温度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は覆工コンクリートの温度測定装置に関し、特にトンネルの覆工コンクリートの巻厚測定に使用する検測ピンとしても使用できる覆工コンクリートの温度測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
覆工コンクリートはトンネルセントルの枠体外周とトンネル内壁との間に形成された打設空間内に注入される。そして、打設された覆工コンクリートの巻厚を測定するのに検測ピンが使用される。一方、打設された覆工コンクリートの養生中の温度測定は、当該コンクリートの強度発現想定を適正に行うために非常に重要であり、温度測定を常時可能にするために例えば特許文献1に示す温度計測装置が提案されている。この温度計測装置は、枠体の周面に設けた取付穴に、連結具および枠体固定具で保護管の基端を固定して当該保護管を打設空間内に突出させ、保護管の先端部内に温度センサを樹脂で埋め込み固定したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-13013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上記従来の温度計測装置では、枠体に当該装置を取り付けるための専用の取付穴を設ける必要があるとともに、測温終了(コンクリート養生終了)後の連結具や枠体固定具の取り外しのためにその都度ねじ結合を解消する等の手間を要し、しかも保護管が、打設された覆工コンクリート内に埋設された状態で残置されるため、コンクリート内に異物が残るという問題がある。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、枠体に新たな専用の取付穴を設ける必要が無く、しかも測温終了後も取り外しが容易でかつ覆工コンクリート内に異物が残置されることもない覆工コンクリートの温度測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本第1発明では、枠体(12)とトンネル内壁との間に形成されたコンクリート打設空間(S)内に枠体(12)側から突出させられて、打設された覆工コンクリートの巻厚を測定するために使用されるピン体(22)と、前記ピン体(22)に設けられて、打設された覆工コンクリートの温度を測定する測温素子(3)とを備え、かつ前記ピン体(22)を先端閉鎖の筒体とし、当該筒体の側面に取付穴(225)を設けて、当該取付穴(225)内に、前記測温素子(3)を内設した栓部材(33)を圧入する。
【0007】
本第1発明によれば、巻厚測定のために従来設けられている検測ピン用の取付穴を使用することができるから、型枠に新たな専用の取付穴を設ける必要が無い。そして測温終了後にはピン体をその中心軸周りに回転させてコンクリートから分離することによって容易に取り外すことができるから、コンクリート内に異物が残置されることもない。さらに、本第1発明では打設空間内に注入された覆工コンクリートの内部の温度管理を行うことができる。
【0014】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を参考的に示すものである。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明の覆工コンクリートの温度測定装置によれば、枠体に新たな専用の取付穴を設ける必要が無く、しかも測温終了後も取り外しが容易でかつ覆工コンクリート内に異物が残置されることもない
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】温度測定装置を設けたトンネルセントルの全体正面図である。
図2】本発明の第1実施形態における温度測定装置の半断面側面図である。
図3図2のA部の拡大断面図である。
図4】保持板の一部断面側面図および平面図である。
図5】温度測定装置配線を示す図である。
図6】本発明の第2実施形態における温度測定装置の半断面部分側面図である。
図7】本発明の第3実施形態における温度測定装置の半断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0018】
(第1実施形態)
図1には本発明の温度測定装置を設置したトンネルセントルの全体正面図を示す。トンネルセントル1はトンネル長手方向へ移動可能なガントリー11を備え、ガントリー11上にトンネルの断面形状に倣った略円弧状の枠体12が支持されている。そして枠体12の外周と図略のトンネル内周との間に覆工コンクリート打設空間(以下、単に打設空間という)Sが形成される。本実施形態では、枠体12の頂部に位置する天フォーム121の断面周方向の3カ所に、打設空間S内へ突出させて温度測定装置2が設けられている。なお、温度測定装置2は天フォーム121やこれの両側に連結された側フォーム122のトンネル長手方向の複数位置にも設置されることがある。
【0019】
図2には温度測定装置2の半断面側面図を示す。図2において、枠体12には開口123が設けられて、当該開口123に連通するガイド筒21が枠体12内方へ突設されている。そして枠体12の内方からガイド筒21内へピン体22が挿入されて、枠体12の外周から打設空間S内へ突出している。ピン体22は検測ピンとして従来知られているものと同一の構造のもので、枠体12から突出する先端側の半部が先端に向かってテーパ状に小径となった、先端閉鎖の円筒体である。
【0020】
ピン体22をガイド筒21内へ挿入して枠体12から所定高さにピン体22を突出させた状態で、ガイド筒21の下端部に設けた位置決め穴212とピン体22の対向する周壁に設けた貫通穴221に止めピン24を貫通させることによって、ピン体22を所定高さでガイド筒21に固定することができる。また、止めピン24を使用せず、ガイド筒21の対向位置に設けた操作リング付きの止めねじ23を図示のようにピン体22の外周へ前進圧接させることによってピン体22を任意の突出位置で固定することも可能である。
【0021】
ピン体22先端の円筒開口を閉鎖する端板222部分の詳細を図3に示す。図3において、ピン体22の先端開口には薄肉の円形端板222が溶接固定されてこれを閉鎖しており、これに重ねて厚肉の円形スペーサ板25が位置し、当該スペーサ板25の貫通穴251に一致させた端板222のねじ孔223に皿ねじ252を捩じ込んで、上記スペーサ板25にさらに薄肉の保持板26が取り付けられている。保持板26の断面図と平面図をそれぞれ図4(1),(2)に示す。保持板26には左右位置に上記皿ねじ252を挿入する開口261が形成され、これら開口261の間の保持板26裏面中心に、測温素子としての熱電対3の先端測温部31が溶着固定されている。なお、スペーサ板25はピン体22の熱に影響されない熱伝導率が低い樹脂材で製作するのが望ましい。またスペーサ板25を省略して、保持板26を円形端板222に直接固定しても良い。
【0022】
図3において、スペーサ板25および端板222にはこれらの中心部に、互いに連通する貫通穴253が形成されており、保持板26から延びる熱電対3のリード線32を、貫通穴253を経てピン体22の筒内下方へ挿通し、コネクタ41(図5)を経て積算温度管理制御盤(以下、単に制御盤という)4へ入力接続してある。
【0023】
このような構造の温度測定装置において、打設空間S内へ覆工コンクリートを注入すると、打設空間S内はコンクリートで満たされ、ピン体22の先端に設けた熱電対3によって、打設された覆工コンクリートの温度が経時的に検出されて、制御盤4でコンクリート養生工程における積算温度が管理される。覆工コンクリートの養生が完了すると、止めねじ23を緩めるとともに止めピン24を抜き出し、さらにピン体21の基端の筒壁対向部に設けられた操作穴224(図2)内に操作棒を水平に挿入してこれを旋回操作して、ピン体22をその中心軸周りに回転させることによって、ピン体22をその周囲のコンクリートから分離しガイド筒21内から枠体12内下方へ抜き出す。この状態で、ピン体22を抜き出した後に生じたコンクリートの凹所内へ、ガイド筒21を経てスケールを挿入することにより、コンクリートの巻厚を測定することができる。
【0024】
本実施形態の温度測定装置によれば、取付用開口123やガイド筒21として、コンクリート巻厚測定のために従来設けている検測ピン用のものを利用できるから、型枠12に温度測定装置用の新たな専用の取付用開口を設ける必要が無い。また測温終了後は速やかに取り外しが可能で、コンクリート内に異物が残置されることもない。そして、熱電対3は切断されないから、抜き出したピン体22およびこれに設けた熱電対3を再度使用することができる。また、熱電対3を新しいものに取り換える場合には、使用済みの熱電対3が取り付けられている保持板26を、新たな熱電対3を取り付けて予め準備しておいた新たな保持板26に取り換えることで容易に行うことができる。
【0025】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では熱電対3をピン体22の先端に設けたが、これに代えて図6に示すように、ピン体22の側面に設けても良い。本実施形態では枠体12から打設空間S内へ突出するピン体22の長手方向中間位置の側面に取付穴225を設け、ここに筒状のゴム又は樹脂の栓部材33を圧入している。熱電対3の先端測温部31は金属円柱34に溶着固定されて栓部材33内に予め圧入固定されている。
このような構造によれば、打設空間S内に注入された覆工コンクリートの巻厚の中間位置でその温度管理を行うことができる。
【0026】
(第3実施形態)
図7に示す温度測定装置2のピン体5は、ガイド筒21に案内されて枠体12外の打設空間S内へ突出する外筒51と、外筒51内に設けられてこれに案内されて打設空間S内へ突出する内筒52より構成されている。そして、外筒51が止めねじ53によってガイド筒21に位置決め固定されるとともに、内筒52が止めねじ54によって外筒51に位置決め固定されている。内筒51の先端には、上記第1実施形態で説明したのと同様の構造で、熱電対3の先端測温部31を溶着固定した保持板26が取り付けられ、熱電対3のリード線32は内筒52内を下方へ延びて、第1実施形態と同様にコネクタ41を介して制御盤4へ入力接続されている。
【0027】
このような構造によれば、外筒51の先端と内筒52の先端を一致させてこの位置と、さらに外筒51から内筒52を突出させた位置とで、打設空間S内に注入された覆工コンクリートの温度を測定することができる。覆工コンクリートの養生が完了すると、止めねじ54を緩め、内筒52下端部の操作穴521内に挿入した操作棒を旋回操作して、内筒52を外筒51内から枠体12内下方へ抜き出す。
【0028】
その後、止めねじ53を緩め、外筒51下端部の操作穴511内に挿入した操作棒を旋回操作して、外筒51をガイド筒21内から枠体12内下方へ抜き出す。そして、ピン体5を抜き出した後に生じたコンクリートの凹所内へガイド筒21を経てスケールを挿入して、コンクリートの巻厚を測定することができる。本実施形態によっても第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0029】
なお、熱電対の取付構造や取付位置は上記各実施形態に示したものには限られない。
【符号の説明】
【0030】
1…トンネルセントル、12…枠体、2…温度測定装置、22…ピン体、26…保持板、3…熱電対(測温素子)、31…先端測温部、32…リード線、5…ピン体、51…外筒、52…内筒、S…コンクリート打設空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7