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特許7424581構造物設計評価管理システム、および、構造物設計評価管理方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】構造物設計評価管理システム、および、構造物設計評価管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20240123BHJP
   G06F 30/23 20200101ALI20240123BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20240123BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/23
G06F30/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020087585
(22)【出願日】2020-05-19
(65)【公開番号】P2021182277
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】518034894
【氏名又は名称】株式会社HRC研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】仁平 達也
(72)【発明者】
【氏名】土橋 亮太
(72)【発明者】
【氏名】金島 篤希
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 忠朋
(72)【発明者】
【氏名】大滝 航
(72)【発明者】
【氏名】坂口 淳一
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-168838(JP,A)
【文献】特開2002-373183(JP,A)
【文献】特開2007-264840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00-30/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の設計支援を行い、前記構造物の3次元図面情報を生成する設計処理部と、
前記設計処理部の処理により生成された前記3次元図面情報を記憶する3次元情報管理データベースと、
前記構造物の検査結果を記憶する検査情報管理データベースと、
前記構造物の前記3次元図面情報、および、前記検査情報管理データベースに記憶されている前記検査結果に基づいて、モデルを複数構築する複数モデル構築部と、
前記複数モデル構築部の処理により構築された複数の前記モデルを用いて構造解析を実行する構造解析処理部と、
前記構造解析処理部の処理による構造解析結果を記憶する構造解析結果情報管理データベースと、
前記検査情報管理データベースに記憶されている、実作用時の前記検査結果に基づいて、前記構造解析結果情報管理データベースに記憶されている複数の前記モデルの前記構造解析結果のうちの整合するモデルを選択するモデル選択処理部と、
前記モデル選択処理部により選択された前記整合するモデルの前記構造解析結果を用いて、前記構造物の状態変化を推定する状態変化推定処理部と
を有することを特徴とする構造物設計評価管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の構造物設計評価管理システムにおいて、
前記検査情報管理データベースに記憶されている初回検査の検査結果を、前記複数モデル構築部の処理により構築された複数の前記モデルに反映させる検査情報反映部をさらに有し、
前記構造解析処理部は、前記検査情報反映部により前記初回検査の検査結果が反映された複数の前記モデルを用いて構造解析を実行する
ことを特徴とする構造物設計評価管理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の構造物設計評価管理システムにおいて、
前記検査情報反映部は前記初回検査の検査結果として、かぶりの値の実測値を複数の前記モデルに反映させる
ことを特徴とする構造物設計評価管理システム。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の構造物設計評価管理システムにおいて、
前記モデル選択処理部は、前記実作用時の検査結果として、前記構造物の実負荷時のたわみの値や変状状態を用いて、複数の前記モデルの前記構造解析結果のうちの前記整合するモデルを選択する
ことを特徴とする構造物設計評価管理システム。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の構造物設計評価管理システムにおいて、
前記状態変化推定処理部の処理による前記構造物の状態変化の推定結果と、前記検査情報管理データベースに記憶されている前記構造物の維持管理に必要な各種検査結果を比較する推定‐実測比較処理部をさらに有する
ことを特徴とする構造物設計評価管理システム。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の構造物設計評価管理システムにおいて、
前記設計処理部は、前記構造物の前記3次元図面情報に基づいて、前記構造物の骨組みに関する各種計算を実行する骨組み計算処理部と、
前記構造物の前記3次元図面情報、および、前記骨組み計算処理部による計算結果に基づいて、前記構造物に課された設計基準を満たしているか否かを判定する基準判定部をさらに有する
ことを特徴とする構造物設計評価管理システム。
【請求項7】
構造物の設計支援を行い、前記構造物の3次元図面情報を生成する設計ステップと、
前記設計ステップの処理により生成された前記3次元図面情報を3次元情報管理データベースに記憶する第1の記憶ステップと、
前記構造物の検査結果を検査情報管理データベースに記憶する第2の記憶ステップと、
前記設計ステップの処理により生成され、前記第1の記憶ステップの処理により前記3次元情報管理データベースに記憶された前記構造物の前記3次元図面情報、および、前記第2の記憶ステップの処理により検査情報管理データベースに記憶された前記検査結果に基づいて、モデルを複数構築する複数モデル構築ステップと、
前記複数モデル構築ステップの処理により構築された複数の前記モデルを用いて構造解析を実行する構造解析ステップと、
前記構造解析ステップの処理による構造解析結果を構造解析結果情報管理データベースに記憶する第3の記憶ステップと、
前記第2の記憶ステップの処理により検査情報管理データベースに記憶されている、実作用時の前記検査結果に基づいて、前記第3の記憶ステップの処理により前記構造解析結果情報管理データベースに記憶されている複数の前記モデルの前記構造解析結果のうちの整合するモデルを選択するモデル選択ステップと、
前記モデル選択ステップの処理により選択された前記整合するモデルの前記構造解析結果を用いて、前記構造物の状態変化を推定する状態変化推定ステップと
を含むことを特徴とする構造物設計評価管理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物設計評価管理システム、および、構造物設計評価管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複雑な構造物の設計において、例えば、有限要素法(FEM:Finite Element Method、以下、FEMと称する)などの構造解析手法による解析結果に基づいて設計を行えるよう支援するための技術がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-195713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複雑で大規模な構造物においては、必ずしも設計された通りに構造物が構築されているものではないのが現状である。具体的には、設計は、例えば、かぶりやコンクリートの品質が確保されるものとして行われるが、実際の施工においては、かぶり不足やコンクリートの品質不良などが発生してしまう場合がある。
【0005】
また、設計において強度等の計算を行う場合、基本的には、主部材のみを考慮した骨組み計算により、耐力や応力度等の耐荷性能を算定する計算モデルが用いられている。しかしながら、実際に施工される構造物には、例えば、防音壁や路盤コンクリートなどの2次部材が存在し、それらが、剛性や耐力に影響を与える。このため、主部材のみを考慮した骨組み計算により想定される耐荷性能と、実際に施工される構造物の耐荷性能とが異なるものとなってしまう場合があった。
【0006】
複雑な構造物の設計においては、例えば、特許文献1に記載のように、3次元FEM解析が広く用いられている。しかしながら、局所的なかぶり不足などが構造物に及ぼす影響、または、2次部材が耐力や応力度等の耐荷性能に与える影響等を、設計、施工、構造解析、および、評価、ならびに、その後の構造物の保守等までを考慮して管理する技術は存在しなかった。
【0007】
そこで、本発明は、前記課題を解決すること、すなわち、設計、施工、構造解析、および、評価、ならびに、その後の構造物の保守までを管理し、2次部材が耐力や応力度等の耐荷性能に与える影響を考慮することができる、構造物設計評価管理システム、および、構造物設計評価管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の構造物設計評価管理システムの一側面は、構造物の設計支援を行い、構造物の3次元図面情報を生成する設計処理部と、設計処理部の処理により生成された3次元図面情報を記憶する3次元情報管理データベースと、構造物の検査結果を記憶する検査情報管理データベースと、構造物の3次元図面情報、および、検査情報管理データベースに記憶されている検査結果に基づいて、モデルを複数構築する複数モデル構築部と、複数モデル構築部の処理により構築された複数のモデルを用いて構造解析を実行する構造解析処理部と、構造解析処理部の処理による構造解析結果を記憶する構造解析結果情報管理データベースと、検査情報管理データベースに記憶されている、実作用時の検査結果に基づいて、構造解析結果情報管理データベースに記憶されている複数のモデルの構造解析結果のうちの整合するモデルを選択するモデル選択処理部と、モデル選択処理部により選択された整合するモデルの構造解析結果を用いて、構造物の状態変化を推定する状態変化推定処理部とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明の構造物設計評価管理システムの他の側面は、検査情報管理データベースに記憶されている初回検査の検査結果を、複数モデル構築部の処理により構築された複数のモデルに反映させる検査情報反映部をさらに有し、構造解析処理部は、検査情報反映部により初回検査の検査結果が反映された複数のモデルを用いて構造解析を実行することを特徴とする。
【0010】
本発明の構造物設計評価管理システムの他の側面は、検査情報反映部は初回検査の検査結果として、かぶりの値の実測値を複数のモデルに反映させることを特徴とする。
【0011】
本発明の構造物設計評価管理システムの他の側面は、モデル選択処理部は、実作用時の検査結果として、構造物の実負荷時のたわみの値を用いて、複数のモデルの構造解析結果のうちの整合するモデルを選択することを特徴とする。
【0012】
本発明の構造物設計評価管理システムの他の側面は、状態変化推定処理部の処理による構造物の状態変化の推定結果と、検査情報管理データベースに記憶されている構造物の維持管理に必要な各種検査結果を比較する推定‐実測比較処理部をさらに有することを特徴とする。
【0013】
本発明の構造物設計評価管理システムの他の側面は、設計処理部は、構造物の3次元図面情報に基づいて、構造物の骨組みに関する各種計算を実行する骨組み計算処理部と、構造物の3次元図面情報、および、骨組み計算処理部による計算結果に基づいて、構造物に課された設計基準を満たしているか否かを判定する基準判定部をさらに有することを特徴とする。
【0014】
本発明の構造物設計評価管理方法の一側面は、構造物の設計支援を行い、構造物の3次元図面情報を生成する設計ステップと、設計ステップの処理により生成された3次元図面情報を3次元情報管理データベースに記憶する第1の記憶ステップと、構造物の検査結果を検査情報管理データベースに記憶する第2の記憶ステップと、設計ステップの処理により生成され、第1の記憶ステップの処理により3次元情報管理データベースに記憶された構造物の3次元図面情報、および、第2の記憶ステップの処理により検査情報管理データベースに記憶された検査結果に基づいて、モデルを複数構築する複数モデル構築ステップと、複数モデル構築ステップの処理により構築された複数のモデルを用いて構造解析を実行する構造解析ステップと、構造解析ステップの処理による構造解析結果を構造解析結果情報管理データベースに記憶する第3の記憶ステップと、第2の記憶ステップの処理により検査情報管理データベースに記憶されている、実作用時の検査結果に基づいて、第3の記憶ステップの処理により構造解析結果情報管理データベースに記憶されている複数のモデルの構造解析結果のうちの整合するモデルを選択するモデル選択ステップと、モデル選択ステップの処理により選択された整合するモデルの構造解析結果を用いて、構造物の状態変化を推定する状態変化推定ステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、設計、施工、構造解析、および、評価、ならびに、その後の構造物の保守までを管理し、2次部材が耐力や応力度等の耐荷性能に与える影響を考慮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】構造物設計評価管理システム1の概要を示す図である。
図2】3次元情報管理データベース23に登録されているライブラリ図面情報の一例について説明するための図である。
図3】3次元情報管理データベース23に登録されているライブラリ図面情報の一例について説明するための図である。
図4】3次元情報管理データベース23に登録されているライブラリ図面情報の一例について説明するための図である。
図5】3次元情報管理データベース23に登録されているライブラリ図面情報の一例について説明するための図である。
図6】設計装置11が有する機能を示す機能ブロック図である。
図7】設計支援のための表示画面を示す図である。
図8】骨組み解析のためのモデルを示す図である。
図9】断面の配筋情報の抽出について説明するための図である。
図10】断面力の大きさを、配筋図の軸線に重畳させたグラフのデータについて説明するための図である。
図11】パラメータ入力画面を示す図である。
図12】判定結果を含む表示画面を示す図である。
図13】設計装置11により作図される3次元図面を示す図である。
図14】データベース制御装置21の機能構成を示す機能ブロック図である。
図15】かぶりの実測データの一例を示す図である。
図16】構造解析装置13が有する機能構成を示す機能ブロック図である。
図17】主部材のみを考慮したモデルの一例を示す図である。
図18】2次部材を考慮したモデルの一例を示す図である。
図19】2次部材を考慮したモデルの一例を示す図である。
図20】主部材のみを考慮した第1のモデルの一例を示す図である。
図21】2次部材を考慮した第2のモデルの一例を示す図である。
図22】ボロノイ分割を用いた、モデルに対する初回検査結果の反映方法について説明するための図である。
図23】ボロノイ分割を用いた、モデルに対する初回検査結果の反映方法について説明するための図である。
図24】ボロノイ分割を用いた、モデルに対する初回検査結果の反映方法について説明するための図である。
図25】ボロノイ分割を用いた、モデルに対する初回検査結果の反映方法について説明するための図である。
図26】構築されたモデルに対して、初回検査において測定されたかぶり値を反映させた状態を示す3次元図について説明するための図である。
図27】第1のモデルに対してFEMを用いた場合のたわみの解析結果の一例を示す図である。
図28】第2のモデルに対してFEMを用いた場合のたわみの解析結果の一例を示す図である。
図29】評価管理処理装置14が有する機能構成を示す機能ブロック図である。
図30】解析値とたわみの実測値との比較について説明するための図である。
図31】鉄筋の質量減少率と供用年数の関係について説明するための図である。
図32】鉄筋の腐食によるひび割れ発生と剥落発生の予測結果の一例を示す図である。
図33】鉄筋の腐食によるひび割れ発生と剥落発生の予測結果の一例を示す図である。
図34】鉄筋の腐食によるひび割れ発生と剥落発生の予測結果の一例を示す図である。
図35】列車荷重の荷重倍率に対する垂直変異予測結果の一例を示す図である。
図36】列車荷重がかかった場合のひずみ分布の予測結果の一例を示す図である。
図37】列車荷重がかかった場合のひずみ分布の予測結果の一例を示す図である。
図38】列車荷重がかかった場合のひずみ分布の予測結果の一例を示す図である。
図39】列車荷重がかかった場合のひずみ分布の予測結果の一例を示す図である。
図40】設計処理について説明するためのフローチャートである。
図41】構造解析処理について説明するためのフローチャートである。
図42】モデル選定・経時変化予測処理について説明するためのフローチャートである。
図43】管理処理について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態の構造物設計評価管理システムについて、図1図43を参照しながら説明する。
【0018】
図1を参照して、本発明の一実施例である構造物設計評価管理システム1について説明する。
【0019】
構造物設計評価管理システム1は、構造物の設計、施工、構造解析、および、評価、ならびに、その後の構造物の保守管理等を管理するシステムである。構造物設計評価管理システム1は、設計装置11、データベースシステム12、構造解析装置13、および、評価管理処理装置14を含んで構成されている。データベースシステム12は、データベース制御装置21、構造解析結果情報管理データベース22、3次元情報管理データベース23、および、検査情報管理データベース24を含んで構成されている。
【0020】
以下、構造物設計評価管理システム1は、構造物の一例として、鉄道構造物の設計、施工、構造解析、および、評価、ならびに、その後の構造物の保守管理等を管理するシステムであるものとして説明するが、構造物設計評価管理システム1は、鉄道構造物以外の一般的な構造物の設計、施工、構造解析、および、評価、ならびに、その後の構造物の保守管理等を管理するシステムとして機能することが可能であることは言うまでもない。
【0021】
なお、図1においては、設計装置11、データベースシステム12、構造解析装置13、および、評価管理処理装置14を、それぞれ異なる装置として図示しているが、構造物設計評価管理システム1は、これ以上または以下の複数の装置、もしくは、1つの装置で構成されていてもよいことは言うまでもない。
【0022】
設計装置11は、ユーザによる操作入力に基づいて、データベースシステム12において管理されている過去の実績のある設計事例を適宜参照し、または、利用しながら、構造物の骨組み計算や3次元図面の作図処理を行い、その結果得られる3次元図面情報等を、データベースシステム12に供給し、登録するものである。設計装置11の更に詳細な機能構成については、図6を用いて後述する。
【0023】
データベースシステム12のデータベース制御装置21は、設計装置11、構造解析装置13、および、評価管理処理装置14からの要求に基づいて、構造解析結果情報管理データベース22、3次元情報管理データベース23、および、検査情報管理データベース24に記録されている各種情報を呼び出して、要求元となる装置に供給する。また、データベース制御装置21は、設計装置11、構造解析装置13、および、評価管理処理装置14から供給される各種データ、並びに、外部の図示しない情報処理装置等から供給される各種検査データ等を、構造解析結果情報管理データベース22、3次元情報管理データベース23、または、検査情報管理データベース24のうちの適切なデータベースに登録する。また、データベース制御装置21は、構造解析結果情報管理データベース22、3次元情報管理データベース23、および、検査情報管理データベース24に情報を登録する際、必要に応じて、それぞれの関連する情報をひも付け(リンク)する。データベース制御装置21の更に詳細な機能構成については、図14を用いて後述する。
【0024】
構造解析結果情報管理データベース22には、構造解析装置13による構造解析結果が供給されて登録される。
【0025】
3次元情報管理データベース23には、過去の実績のある設計事例の3次元図面情報がライブラリとして登録され、設計装置11により、適宜参照可能なようになされているとともに、設計装置11により新たに設計された3次元図面情報、および、それに付随する情報が供給されて登録される。更に、3次元情報管理データベース23には、評価管理処理装置14から供給される構造物の経時変化の推定値や構造物の管理に関する情報が、3次元図面情報とリンクされて登録される。
【0026】
図2図5を参照して、3次元情報管理データベース23に登録されているライブラリ図面情報の一例について説明する。
【0027】
3次元情報管理データベース23には、すでに建築実績のある3次元図面がライブラリ図面情報として格納されている。すでに建築実績のある3次元図面としては、例えば、図2に示されるように、RC桁の3次元図面31、および、ラーメン高架橋の3次元図面32,33などが登録されている。
【0028】
また、3次元情報管理データベース23には、すでに建築実績のある3次元配筋図面がライブラリ図面情報として格納されている。すでに建築実績のある3次元配筋図面としては、例えば、図3にその一部が拡大されて示される、ラーメン高架橋の3次元配筋図面35などが登録されている。
【0029】
また、3次元情報管理データベース23には、すでに建築実績のあるパーツの概形図面がライブラリ図面情報として格納されている。すでに建築実績のあるパーツの概形図面としては、例えば、図4に示されるように、スラブの概形図面41、縦梁および横梁の概形図面42、柱の概形図面43、並びに、地中梁の概形図面44などが登録されている。
【0030】
また、3次元情報管理データベース23には、すでに建築実績のあるパーツの配筋図面がライブラリ図面情報として格納されている。すでに建築実績のあるパーツの配筋図面としては、例えば、図5に示されるように、スラブの配筋図面51、縦梁および横梁の配筋図面52、柱の配筋図面53、並びに、地中梁の配筋図面54などが登録されている。
【0031】
また、3次元情報管理データベース23には、設計装置11により設計された構造物に関する3次元情報、具体的には、3DCADによる作図情報とそれに付随される情報が、図2を用いて説明した場合と同様な所定構造物や図3を用いて説明した場合と同様な所定構造物単位の配筋図として、または、図4を用いて説明した場合と同様なパーツ概形図や図5を用いて説明した場合と同様なパーツ配筋図として供給されて登録される。
【0032】
図1に戻り、検査情報管理データベース24には、構造物の各種検査結果が供給されて登録される。具体的には、検査情報管理データベース24には、例えば、施工後、実際に鉄道構造物に車両等が走行する前に実行される初回検査、実際の鉄道の営業運行前に車両等が走行、すなわち、構造物に実負荷が与えられた場合の検査、そして、その後、構造物の管理運営のために実施される各種検査の結果が供給されて登録される。
【0033】
構造解析装置13は、ユーザによる操作入力に基づいて、設計装置11により設計された構造物の構造解析処理を実行する。構造解析の手法としてはいずれの手法を用いるものであってもよいが、例えば、有限要素法(FEM:Finite Element Method、以下、FEMと称する)を用いることができる。構造解析装置13は、データベースシステム12から、設計装置11により設計され、3次元情報管理データベース23に登録された、構造解析対象となる構造物に関する3次元情報、具体的には、3DCADによる作図情報とそれに付随される情報を取得するとともに、データベースシステム12の検査情報管理データベース24に登録された、構造解析対象となる構造物の初回検査結果を取得し、これらの情報に基づいて、構造物の構造解析処理を実行する。構造解析装置13は、基本的な主部材のみを考慮した構造解析のみならず、2次部材を考慮した複数パターンの構造物モデルにおける構造解析処理を実行する。構造解析装置13は、構造物の構造解析処理結果をデータベースシステム12に供給し、登録する。構造解析装置13の更に詳細な機能構成については、図16を用いて後述する。
【0034】
評価管理処理装置14は、ユーザによる操作入力に基づいて、設計装置11により設計され、3次元情報管理データベース23に登録された、評価管理対象となる構造物に関する3次元図面情報、構造解析装置13により構造解析され、構造解析結果情報管理データベース22に登録された、評価管理対象となる構造物の構造解析処理結果、および、検査情報管理データベース24に登録された、評価管理対象となる構造物に対して行われる各種検査情報を、データベースシステム12から取得し、構造物の評価および管理に関する処理を実行する。具体的には、評価管理処理装置14は、複数モデルの構造解析結果と、車両等が走行、すなわち、構造物に実負荷が与えられた場合の検査における、例えば、たわみなどの実測値に基づいて、複数パターンの構造物モデルのうち、最も適当である(整合する)と思われるモデルを選択する。そして、評価管理処理装置14は、最も適当と思われる評価モデルを用いて、評価管理対象となる構造物の経時変化の推定を行い、推定結果を、データベースシステム12に供給し、3次元情報管理データベース23に登録する。
【0035】
また、評価管理処理装置14は、3次元情報管理データベース23に登録された、評価管理対象となる構造物の経時変化の推定結果と、検査情報管理データベース24に登録された、管理運営時に行われる各種検査結果とを読み出し、推定と実測を比較し、構造物の状態を評価し管理する。評価管理処理装置14の更に詳細な機能構成については、図29を用いて後述する。
【0036】
図6は、設計装置11が有する機能を示す機能ブロック図である。設計装置11は、構造物の設計支援を行うものである。具体的には、設計装置11は、ユーザによる操作入力に基づいて、データベースシステム12において管理されている過去の実績のある設計事例を適宜参照し、または、利用しながら、構造物の骨組み計算や3次元図面の作図処理を行い、その結果得られる3次元図面情報とそれに付随する各種情報を、データベースシステム12の3次元情報管理データベース23に供給し、登録するものである。設計装置11は、設計処理部に対応する。
【0037】
設計装置11は、第1の操作入力制御部61、作図処理部62、第1の3次元情報取得制御部63、骨組み計算処理部64、第1の表示制御部66、基準判定部67、および、第1の出力制御部68を含んで構成されている。
【0038】
第1の操作入力制御部61は、設計装置11を操作するユーザからの図示しない入力デバイスを用いた操作入力を受け、その内容を、作図処理部62、骨組み計算処理部64、および、基準判定部67に供給する。
【0039】
作図処理部62は、第1の操作入力制御部61から供給されたユーザの操作入力の内容に基づいて、構造物の3次元の図面を作図し、作図の過程、または、作図結果を第1の表示制御部66に供給し、例えば、図7に示されるような設計支援のための表示画面を、図示しない表示装置に表示させる。作図処理部62の処理により作図される図面は、例えば、構造物の3次元の概形図面、構造物の3次元の配筋図面、パーツの3次元の概形図、パーツの3次元の配筋図などである。具体的には、作図処理部62は、例えば、図2図5を用いて説明した場合と同様な図面を作成することができる。また、作図においては、例えば、構造物の仕様部材、寸法、鉄筋系、かぶりの厚さなど、施工のために必要な各種情報が入力される。
【0040】
また、作図処理部62は、必要に応じて、第1の3次元情報取得制御部63を制御して、データベースシステム12の3次元情報管理データベース23から、例えば、図2図5を用いて説明したような実績のある図面を取得させ、これらを用いて作図を行うことも可能である。作図処理部62は、第1の操作入力制御部61から供給されたユーザの操作入力の内容に基づいて、作成された3次元図面とそれに付随する情報を、骨組み計算処理部64および基準判定部67に供給する。そして、作図処理部62は、第1の操作入力制御部61から供給されたユーザの操作入力の内容に基づいて、作成された3次元図面とそれに付随する情報を、第1の出力制御部68に供給し、データベースシステム12の3次元情報管理データベース23に登録させる。
【0041】
第1の3次元情報取得制御部63は、作図処理部62の制御に基づいて、データベースシステム12の3次元情報管理データベース23から、例えば、図2図5を用いて説明したような実績のある図面を取得し、作図処理部62に供給する。
【0042】
骨組み計算処理部64は、第1の操作入力制御部61から供給されたユーザの操作入力の内容に基づいて、作図処理部62により作図された3次元図面とそれに付随する情報を取得し、例えば、骨組みの耐力、応力度等の、構造物の骨組みに関する各種計算を実行し、その計算過程に必要な情報、および、計算結果を第1の表示制御部66に供給し、図示しない表示装置に表示させる。
【0043】
具体的には、骨組み計算処理部64は、作図処理部62により作図された、例えば、図8に示されるような骨組み解析のためのモデルから、軸線、接点、および、各要素諸元等の情報を抽出したり、図9に示されるように、必要な部分における断面の配筋情報を抽出することにより、スラブ自重、柱自重、断面力、および変異等の骨組みに関する計算を行う。骨組み計算処理部64は、例えば、得られた断面力の計算結果に基づいて、図10に示されるように、それぞれの位置の断面力の大きさを、配筋図の軸線に重畳させたグラフのデータを生成して、第1の表示制御部66に供給し、図示しない表示装置に表示させることができる。図10においては、軸線に対応するそれぞれの位置における断面力の大きさを直線で示し、それぞれの直線の頂点を結ぶ曲線を用いて、配筋各所の断面力の推移が一目でわかるようになされている。
【0044】
骨組み計算処理部64は、第1の操作入力制御部61から供給されたユーザの操作入力の内容に基づいて、骨組みの耐力、応力度等の計算結果を、作図処理部62および基準判定部67に供給する。そして、骨組み計算処理部64は、第1の操作入力制御部61から供給されたユーザの操作入力の内容に基づいて、骨組みの耐力、応力度等の計算結果を、第1の出力制御部68に供給し、データベースシステム12の3次元情報管理データベース23に登録させる。
【0045】
基準判定部67は、作図処理部62および骨組み計算処理部64の処理により設計された構造物の情報、および、骨組み計算処理部64による骨組み計算結果を取得し、第1の表示制御部66を制御して、例えば、図11に示されるような、構造物に課された設計基準を満たしているか否かを判定するための各種パラメータ入力画面を表示させる。基準判定部67は、第1の操作入力制御部61から供給されたユーザの操作入力の内容に基づいて、作図処理部62および骨組み計算処理部64の処理により設計された構造物が、構造物に課された設計基準を満たしているか否かを判定し、判定結果を、作図処理部62および骨組み計算処理部64に供給するとともに、第1の表示制御部66に供給し、例えば、図12に示されるような、判定結果を含む表示画面を図示せぬ表示装置に表示させ、ユーザに判定結果を通知させる。
【0046】
第1の表示制御部66は、設計装置11、骨組み計算処理部64、および、基準判定部67の処理の実行に必要な各種パラメータの入力を促すための情報、または、実行中の処理に対応する情報、もしくは、実行結果をユーザに対して表示する図示しない表示装置の表示を制御する。具体的には、第1の表示制御部66は、例えば、作図処理部62による処理に必要な入力を促すユーザインタフェース、作図処理部62による作図過程または処理結果、骨組み計算処理部64による骨組み計算結果、基準判定部67による判定結果など、図7図12を用いて説明した各種情報の、図示しない表示装置への表示を制御する。
【0047】
設計装置11のユーザは、上述したようにして、作図処理部62により作図された3次元図面と、骨組み計算処理部64による強度等の計算に用いられる骨組みモデルとをリンクさせ、基準判定部67の処理による、構造物に課された設計基準を満たしているか否かの判定結果の通知を受けることにより、必要に応じて、骨組み計算処理部64により得られる計算結果を確認しながら、作図処理部62による3次元設計図面を適宜修正し、設計を行うことができる。その結果、設計装置11のユーザは、耐力、応力度等においてすべて基準を満たした構造物を設計することができる。
【0048】
第1の出力制御部68は、第1の操作入力制御部61から供給されたユーザの操作入力の内容に基づいて、作図処理部62により作図された、例えば、図13に示されるようなラーメン高架橋の3次元図面およびその図面に付随する各種情報、並びに、骨組み計算処理部64の処理により得られた計算結果の供給を受け、データベースシステム12のデータベース制御装置21に供給し、3次元情報管理データベース23に登録させる。
【0049】
設計装置11の処理により設計され、データベースシステム12のデータベース制御装置21の処理により3次元情報管理データベース23に登録された図面情報に基づいて、構造物が建設される。そして、構造物の建設後、まず、初回検査と称される検査が実行されて、その検査結果が、データベースシステム12に供給されて、データベース制御装置21の処理により、検査情報管理データベース24に登録される。また、その後、構造解析装置13において実行される構造解析結果、外部の各種装置から供給される各種検査結果、および、評価管理処理装置14において実行される各種推定処理の結果および評価管理処理の結果が、データベースシステム12に供給されて、データベース制御装置21の処理により、構造解析結果情報管理データベース22、3次元情報管理データベース23、および、検査情報管理データベース24のうちの対応するデータベースに登録される。
【0050】
図14は、データベース制御装置21の機能構成を示す機能ブロック図である。
【0051】
データベース制御装置21は、設計装置11、構造解析装置13、および、評価管理処理装置14からの要求に基づいて、構造解析結果情報管理データベース22、3次元情報管理データベース23、および、検査情報管理データベース24に記録されている各種情報を呼び出して、要求元となる装置に供給する。また、データベース制御装置21は、設計装置11、構造解析装置13、および、評価管理処理装置14から供給される各種データ、および、外部から供給される各種検査データ等を、構造解析結果情報管理データベース22、3次元情報管理データベース23、または、検査情報管理データベース24のうちの適切なデータベースに登録する。また、データベース制御装置21は、構造解析結果情報管理データベース22、3次元情報管理データベース23、および、検査情報管理データベース24に情報を登録する際、必要に応じて、それぞれの関連する情報をひも付け(リンク)する。
【0052】
データベース制御装置21は、登録データ取得制御部81、検査結果取得処理部82、データリンク処理部83、データ取得要求処理部84、および、ライブラリ管理処理部85の機能を含んで構成されている。
【0053】
登録データ取得制御部81は、設計装置11から供給される3次元画像データ、構造解析装置13から供給される構造解析結果、および、評価管理処理装置14から供給される評価管理情報を取得し、データリンク処理部83に供給する。
【0054】
検査結果取得処理部82は、図示しない外部の装置から、所定のネットワークを介して入力される各種検査結果を取得し、データリンク処理部83に供給する。具体的には、検査結果取得処理部82は、図示しない外部の装置から、上述したように、施工後の初回検査結果の供給を受け、データリンク処理部83に供給する。初回検査結果には、例えば、実際に建設された構造物のかぶりの検査結果が含まれる。図15に、図13を用いて説明したラーメン高架橋のスラブ下面から測定されたかぶりの実測データの一例を示す。図15中の〇は、かぶりの検査を行った測定点を示す。また、検査結果取得処理部82は、構造物に実負荷をかけた場合、すなわち、実際に車両を走行させた場合における構造物の各箇所のたわみ量等の検査結果を、図示しない外部の装置から取得し、データリンク処理部83に供給する。また、検査結果取得処理部82は、図示しない外部の装置から、構造物の維持管理に必要となる各項目における検査結果を取得し、データリンク処理部83に供給する。
【0055】
データリンク処理部83は、登録データ取得制御部81および検査結果取得処理部82から供給された各種データのうち、関連のあるものをリンクし、ライブラリ管理処理部85に供給する。リンクの方法については、例えば、登録データ取得制御部81から供給された、3次元図面およびそれに付随する情報に対して、登録データ取得制御部81から供給された、対応する部分の構造解析結果、ならびに、検査結果取得処理部82から供給された、対応する部分の施工後の初回検査結果、構造物に実負荷をかけた場合の各箇所のたわみ量等の検査結果、および、構造物の維持管理に必要となる各項目における検査結果をリンクさせて、ライブラリ管理処理部85に供給する。
【0056】
データ取得要求処理部84は、設計装置11から、作図に用いるための3次元画像データの要求を受け、ライブラリ管理処理部85に要求内容を通知する。また、データ取得要求処理部84は、構造解析装置13から、構造解析に用いるための3次元画像データおよび検査情報の要求を受け、ライブラリ管理処理部85に要求内容を通知する。また、データ取得要求処理部84は、評価管理処理装置14から、評価管理に用いるための3次元画像データ、構造解析結果、および、検査情報の要求を受け、ライブラリ管理処理部85に要求内容を通知する。
【0057】
ライブラリ管理処理部85は、データリンク処理部83により適切にリンク付けされて供給された各種データを、構造解析結果情報管理データベース22、3次元情報管理データベース23、および、検査情報管理データベース24の適切なデータベースに記憶させる。また、ライブラリ管理処理部85は、データ取得要求処理部84から供給された要求内容に基づいて、構造解析結果情報管理データベース22、3次元情報管理データベース23、および、検査情報管理データベース24の適切なデータベースから、要求されたデータを読み出し、設計装置11、構造解析装置13、または、評価管理処理装置14に供給する。
【0058】
図16は、構造解析装置13が有する機能構成を示す機能ブロック図である。
【0059】
構造解析装置13を用いた構造解析は、設計が終了し、初回検査が行われたのち、初回検査の検査結果を設計内容に反映させた情報を用いて実行される。すなわち、構造解析装置13は、データベースシステム12から、設計装置11により設計された構造物に関する3次元情報、具体的には、3DCADによる作図情報とそれに付随される情報に加えて、対応する構造物の初回検査結果を取得し、これらの情報に基づいて、構造物の構造解析処理を実行する。構造解析装置13は、基本的な主部材のみを考慮した構造解析のみならず、2次部材を考慮した複数パターンにおける構造物の構造解析処理を実行する。構造解析装置13は、構造物の構造解析処理結果をデータベースシステム12に供給し、登録する。構造解析の手法としては、いかなる手法であってもよいが、例えば、有限要素法(FEM:Finite Element Method)を用いることができる。
【0060】
構造解析装置13は、第2の操作入力制御部101、第2の3次元情報取得制御部102、第1の検査情報取得制御部103、複数モデル構築部104、検査情報反映部105、構造解析処理部106、第2の表示制御部107、および、第2の出力制御部108の機能を含んで構成されている。
【0061】
第2の操作入力制御部101は、構造解析装置13を使用するユーザからの、図示しない入力デバイスを用いた操作入力情報を取得し、第2の3次元情報取得制御部102、第1の検査情報取得制御部103、複数モデル構築部104、および、構造解析処理部106に供給する。
【0062】
第2の3次元情報取得制御部102は、第2の操作入力制御部101から供給されたユーザの操作入力に基づいて、データベースシステム12の3次元情報管理データベース23に登録されている3次元図面情報を要求する情報をデータベースシステム12に供給するとともに、データベースシステム12から供給された3次元図面情報を複数モデル構築部104に供給する。
【0063】
第1の検査情報取得制御部103は、第2の操作入力制御部101から供給されたユーザの操作入力に基づいて、データベースシステム12の検査情報管理データベース24に登録されている検査情報を要求する情報をデータベースシステム12に供給するとともに、データベースシステム12から供給された検査情報を、検査情報反映部105に供給する。具体的には、第1の検査情報取得制御部103は、例えば、図15を用いて説明したような、施工された建造物の実際のかぶりの値の初回検査結果を取得し、検査情報反映部105に供給する。
【0064】
複数モデル構築部104は、第2の操作入力制御部101から供給されたユーザの操作入力に基づいて、第2の3次元情報取得制御部102から供給された3次元図面情報から、構造解析を行うための複数モデルを構築する。複数モデル構築部104は、複数モデルを構築するにあたり、ユーザに必要な情報の入力や操作を促すための表示画面や、構築されたモデルを表示するための表示画面を生成するために必要な情報を、第2の表示制御部107に供給する。
【0065】
複数モデル構築部104は、例えば、図13を用いて説明したラーメン高架橋に対応する部分の構造解析を行うにあたって、主部材のみを考慮するのではなく、防音壁や路盤コンクリートなどの2次部材を考慮した複数モデルを構築することができる。具体的には、複数モデル構築部104は、例えば、図17に示されるような主部材のみを考慮したモデル、図18に示されるような、主部材に加えて、高欄、地覆・ダクト、および路盤コンクリートの2次部材を考慮したモデル、並びに、図19に示されるような、主部材に加えて、高欄、地覆・ダクト、路盤コンクリート、軌道スラブ、および、CAモルタルの2次部材を考慮したモデルなどの複数のモデルを構築することができる。複数モデル構築部104は、図17図19を用いて説明したように、3つのモデルではなく、2つのモデルを構築してもよいし、4つ以上のモデルを構築してもよい。これにより、後述する処理において、2次部材が耐力や応力度等の耐荷性能に与える影響を考慮することができる。
【0066】
ここでは、複数モデル構築部104は、構造解析に利用するモデルとして、図20に示されるような、主部材のみを考慮したモデルを第1のモデルとし、図21に示されるような、主部材に加えて、高欄、地覆・ダクト、および路盤コンクリートの2次部材を考慮したモデルを第2のモデルとして構築するものとして、以下の説明を行う。複数モデル構築部104は、構築した複数のモデルに関する情報を、検査情報反映部105に供給する。
【0067】
検査情報反映部105は、複数モデル構築部104から供給された、図20および図21を用いて説明した第1のモデルおよび第2のモデルに対して、第1の検査情報取得制御部103から供給された、施工された建造物の実際のかぶりの値の初回検査結果を反映させる。検査情報反映部105は、複数モデルに実際のかぶりの値を反映させるにあたり、ユーザに必要な情報の入力や操作を促すための表示画面や、構築されたモデルに対して、初回検査において測定されたかぶり値を反映させた状態を示す図、表、または数値などの情報を表示するための表示画面を生成するために必要な情報を、第2の表示制御部107に供給する。モデルに対する初回検査結果の反映方法は、いずれの方法であってもよいが、例えば、ボロノイ分割を用いて、それぞれのモデルに対して初回検査結果を反映させることができる。
【0068】
図22図25を参照して、ボロノイ分割を用いた、モデルに対する初回検査結果の反映方法について説明する。
【0069】
図22は、構造物の表面における計測値と計測値の適応領域を示している。図22において、数値は、構造物のかぶりの実測値を示す。そして、図23は、解析モデルの対応する表面における配筋情報に基づいた要素分割結果を示す。図23において、〇は、各要素の重心位置を示す。検査情報反映部105は、図24に示されるように、図22を用いて説明したかぶりの実測値を、図23を用いて説明した要素分割結果と重畳させ、図25に示されるように、要素分析された領域ごとに、構造物のかぶりの実測値を対応させる。そして、検査情報反映部105は、複数モデル構築部104から供給された複数の構造解析用モデルの各領域において、同様の処理を行い、例えば、図26に示されるように、構築されたモデルに対して、初回検査において測定されたかぶり値を反映させた状態を示す3次元図を生成し、構造解析処理部106に供給する。このように初回検査において実測されたかぶりの値をモデルに反映させるので、実際の施工おけるかぶり不足を考慮した構造解析を行うことができる。
【0070】
構造解析処理部106は、複数モデル構築部104により構築され、検査情報反映部105により初回検査におけるかぶりの実測値が反映された複数のモデルに対して、例えば、有限要素法(FEM)を用いて構造解析を実行し、その結果を第2の出力制御部108に供給する。また、構造解析処理部106は、実際のかぶりの値を反映させた複数モデルを構造解析するにあたり、ユーザに必要な情報の入力や操作を促すための表示画面や、構造解析結果を示す図、表、または数値などの情報を表示するための表示画面を生成するために必要な情報を、第2の表示制御部107に供給する。
【0071】
図27および図28に、構造解析としてFEMを用いた場合のたわみの解析結果の一例を示す。図27は、図20を用いて説明した第1のモデルに初回検査により得られた実際のかぶりの値を反映させたものに対するたわみ値のFEM解析結果である。図28は、図21を用いて説明した第2のモデルに初回検査により得られた実際のかぶりの値を反映させたものに対するたわみ値のFEM解析結果である。構造解析処理部106は、図27および図28を用いて説明したような解析結果を、第2の表示制御部107に供給するとともに、第2の出力制御部108に供給する。
【0072】
第2の表示制御部107は、複数モデル構築部104、検査情報反映部105、または、構造解析処理部106から供給されたそれぞれの情報の、図示しない表示デバイスへの表示を制御する。
【0073】
第2の出力制御部108は、構造解析処理部106から供給された構造解析結果をデータベースシステム12に供給して保存させる。
【0074】
図29は、評価管理処理装置14が有する機能構成を示す機能ブロック図である。
【0075】
評価管理処理装置14は、ユーザによる操作入力に基づいて、設計装置11により設計された構造物に関する3次元情報、構造解析装置13による構造物の構造解析処理結果、および、構造物に対して行われる各種検査情報を、データベースシステム12から取得し、構造物の評価および管理に関する処理を実行する。
【0076】
評価管理処理装置14は、構造解析結果情報取得制御部121、第3の3次元情報取得制御部122、第2の検査情報取得制御部123、第3の操作入力制御部124、モデル選択処理部125、第3の表示制御部126、状態変化推定処理部127、推定‐実測比較処理部128、および、第3の出力制御部129の機能を含んで構成されている。
【0077】
構造解析結果情報取得制御部121は、第3の操作入力制御部124から供給されたユーザの操作入力に基づいて、データベースシステム12の構造解析結果情報管理データベース22に登録されている構造解析結果情報を要求する情報をデータベースシステム12に供給するとともに、データベースシステム12から供給された構造解析結果情報をモデル選択処理部125に供給する。ここでは、構造解析結果情報取得制御部121は、図27および図28を用いて説明した第1のモデルおよび第2のモデルに関する各種構造解析結果を取得し、モデル選択処理部125に供給するものとして説明する。
【0078】
第3の3次元情報取得制御部122は、第3の操作入力制御部124から供給されたユーザの操作入力に基づいて、データベースシステム12の3次元情報管理データベース23に登録されている3次元図面情報、または、後述する状態変化の推定結果を要求する情報をデータベースシステム12に供給するとともに、データベースシステム12から供給された3次元図面情報をモデル選択処理部125に、状態変化の推定結果を推定‐実測比較処理部128に、それぞれ供給する。
【0079】
第2の検査情報取得制御部123は、第3の操作入力制御部124から供給されたユーザの操作入力に基づいて、データベースシステム12の検査情報管理データベース24に登録されている検査情報を要求する情報をデータベースシステム12に供給するとともに、データベースシステム12から供給された検査情報をモデル選択処理部125、または、推定‐実測比較処理部128に供給する。ここでは、構造解析結果情報取得制御部121は、図13を用いて説明したラーメン高架橋の3次元図面に対応する部分において、実車両が走行した場合のたわみの値を取得し、モデル選択処理部125に供給するとともに、その後の維持管理に必要な各種検査情報を取得し、推定‐実測比較処理部128に供給するものとして説明する。
【0080】
第3の操作入力制御部124は、評価管理処理装置14を利用するユーザからの、図示しない入力デバイスを用いた操作入力情報を取得し、評価管理処理装置14の各部にユーザの操作入力に対応する情報を供給する。
【0081】
モデル選択処理部125は、構造解析結果情報取得制御部121から供給された複数のモデルの構造解析結果、第3の3次元情報取得制御部122から供給された複数のモデルの3次元図面情報、および、第2の検査情報取得制御部123から取得された検査結果に基づいて、複数モデルのうちの最も維持管理に適した(整合する)モデルを選択し、選択されたモデルに関する各種情報を、状態変化推定処理部127に供給する。また、モデル選択処理部125は、ユーザに必要な情報の入力や操作を促すための表示画像や、複数モデルのうちの最も維持管理に適したモデルを選択する過程で用いられる、図、表、または数値などの情報、並びに、選択されたモデルなどを表示するための表示画面を生成するために必要な情報を、第3の表示制御部126に供給する。
【0082】
具体的には、モデル選択処理部125は、例えば、構造解析結果情報取得制御部121から供給された、図27および図28を用いて説明した構造解析結果、第2の検査情報取得制御部123から供給された、図13を用いて説明したラーメン高架橋の3次元図面に対応する部分において、実負荷時、すなわち、実車両が走行した場合のたわみの値や変状状態に基づいて、例えば、図30に示されるように、各モデルにおける解析値とたわみの実測値や変状状態とを比較し、実測値に最も近いモデルを、最も維持管理に適したモデルとして選択する。この場合、非構造部材も併せてモデル化したケース2が実測値に近いため、ケース2が最も維持管理に適したモデルとして選択される。
【0083】
状態変化推定処理部127は、モデル選択処理部125の処理により、最も維持管理に適したモデルと選択されたモデルによる構造解析結果を用いて、構造物の状態変化を推定し、推定結果を第3の出力制御部129に供給する。また、状態変化推定処理部127は、ユーザに必要な情報の入力や操作を促すための表示画像や、構造物の状態変化を推定する過程で用いられる、図、表、または数値などの情報、並びに、構造物の状態変化の推定結果を表示するための表示画面を生成するために必要な情報を、第3の表示制御部126に供給する。この時、状態変化推定処理部127は、図31に示される、鉄筋の質量減少率と供用年数の関係を考慮して、構造物の状態変化を推定する。なお、図31においては、Cはかぶりの厚さを示し、太線は異形鉄筋の径が13mmである場合、細線は、異形鉄筋の径が29mmである場合を示す。
【0084】
具体的には、状態変化推定処理部127は、最も維持管理に適したモデルと選択されたモデルによる構造解析結果を用いて、例えば、実負荷時のたわみ値、鋼材の腐食量、ひび割れ発生、剥落発生、または、耐力低下などを推定する。
【0085】
図32図34に、最も維持管理に適したモデルと選択されたモデルによる構造解析結果に基づいた、鉄筋の腐食によるひび割れ発生と剥落発生の予測結果の一例を示す。図32は、35年後のひび割れ発生と剥落発生の予測結果であり、図33は、100年後のひび割れ発生と剥落発生の予測結果であり、図34は、200年後のひび割れ発生と剥落発生の予測結果である。図32図34に示されるように、状態変化推定処理部127の処理により、ひび割れや剥落の発生可能性が時間の経過にともなって高くなる箇所の予測が可能となる。
【0086】
また、図35に、最も維持管理に適したモデルと選択されたモデルによる構造解析結果を用いて生成された、列車荷重の荷重倍率に対する垂直変異予測結果の一例を、経過年ごとに示したグラフの一例を示す。図35において、T-0は、現在の垂直変異予測を示し、T-35は、35年後の垂直変異予測を示し、T-100は、100年後の垂直変異予測を示し、T-200は、200年後の垂直変異予測を示している。図35に示されるように、状態変化推定処理部127の処理により、列車荷重の荷重倍率ごとの垂直変異、すなわち、たわみ量の時間の経過に伴う増加量の予測が可能となる。
【0087】
また、図36図39に、最も維持管理に適したモデルと選択されたモデルによる構造解析結果における、列車荷重がかかった場合のひずみ分布の予測結果の一例を示す。図36は、現在のひずみ分布の解析結果を示し、図37は、35年後のひずみ分布の解析結果を示し、図38は、100年後のひずみ分布の解析結果を示し、図39は、200年後のひずみ分布の解析結果を示す。図36図39に示されるように、状態変化推定処理部127の処理により、列車荷重がかかった場合のひずみ分布の時間の経過に伴う増加量の予測が可能となる。
【0088】
評価管理処理装置14のユーザは、状態変化推定処理部127の処理により得られる構造物の時間の経過に伴う状態変化の推定結果を、構造物の維持管理のために用いることができる。すなわち、主部材のみを考慮するのではなく、防音壁や路盤コンクリートなどの2次部材を考慮し、かつ、初回検査の検査結果を反映させた複数モデルのうち、最も維持管理に適しているとして選択されたモデルを用いて、構造物の時間の経過に伴う状態変化が推定されるので、評価管理処理装置14のユーザは、精度の良い推定結果を用いて構造物の維持管理を行うことが可能となる。
【0089】
図29に戻り、推定‐実測比較処理部128は、第3の3次元情報取得制御部122から供給された、最も維持管理に適したモデルと選択されたモデルを用いて推定された、管理対象となる構造物の状態変化の推定結果、および、第2の検査情報取得制御部123から取得された、維持管理に必要な各種検査結果に基づいて、構造物の状態変化の推定結果と実測値を比較し、比較結果を第3の出力制御部129に供給する。また、状態変化推定処理部127は、ユーザに必要な情報の入力や操作を促すための表示画像や、構造物の状態変化の推定結果と実測値を比較する過程で用いられる、図、表、または数値などの情報、並びに、比較結果を表示するための表示画面を生成するために必要な情報を、第3の表示制御部126に供給する。
【0090】
評価管理処理装置14のユーザは、推定-実測比較処理部128の処理による比較結果に基づいて、構造物を維持管理したり、構造物の時間の経過に伴う状態変化の推定値を適宜修正することができる。具体的には、例えば、モデル選択処理部125は、第3の操作入力制御部124から供給されるユーザの操作入力に基づいて、選択するモデルを変更することができ、状態変化推定処理部127は、第3の操作入力制御部124から供給されるユーザの操作入力に基づいて、状態推定のためのパラメータを変更することができる。また、構造解析装置13が実行する構造解析処理において、複数モデル構築部104による複数モデルの構築方法を変更したり、構造解析処理部106による構造解析処理のパラメータを変更するなどを行うことも可能である。
【0091】
第3の表示制御部126は、モデル選択処理部125、状態変化推定処理部127、および、推定‐実測比較処理部128から供給されたそれぞれの情報の、図示しない表示デバイスへの表示を制御する。
【0092】
第3の出力制御部129は、評価管理処理の結果、すなわち、状態変化推定処理部127による状態変化推定結果、および、推定‐実測比較処理部128による推定と実測の比較処理結果をデータベースシステム12に供給して保存させる。
【0093】
このように、構造物設計評価管理システム1は、構造物の設計支援を行い、構造物の3次元図面情報を生成する設計装置11と、設計処理部の処理により生成された3次元図面情報を記憶する3次元情報管理データベース23と、構造物の検査結果を記憶する検査情報管理データベース24と、構造物の3次元図面情報、および、検査情報管理データベース24に記憶されている検査結果に基づいて、モデルを複数構築する複数モデル構築部104と、複数モデル構築部104の処理により構築された複数のモデルを用いて構造解析を実行する構造解析処理部106と、構造解析処理部106の処理による構造解析結果を記憶する構造解析結果情報管理データベース22と、検査情報管理データベース24に記憶されている、実作用時の検査結果に基づいて、構造解析結果情報管理データベース22に記憶されている複数のモデルの構造解析結果のうちの整合するモデルを選択するモデル選択処理部125と、モデル選択処理部125により選択された整合するモデルの構造解析結果を用いて、構造物の状態変化を推定する状態変化推定処理部127とを有するので、設計、施工、構造解析、および、評価、ならびに、その後の構造物の保守までを管理し、2次部材が耐力や応力度等の耐荷性能に与える影響を考慮することができる。
【0094】
次に、図40のフローチャートを参照して、設計処理について説明する。
【0095】
ステップS1において、設計装置11の作図処理部62は、必要に応じて、第1の3次元情報取得制御部63を制御して、データベースシステム12の3次元情報管理データベース23から、例えば、図2図5を用いて説明したような実績のある図面を取得させ、第1の操作入力制御部61から供給されたユーザの操作入力の内容に基づいて、構造物の3次元の図面を作図し、作図の過程、または、作図結果を第1の表示制御部66に供給し、例えば、図7を用いて説明したような設計支援のための表示画面を、図示しない表示装置に表示させ、3次元図面を作図する。そして、作図処理部62は、作成された3次元図面とそれに付随する情報を、骨組み計算処理部64および基準判定部67に供給する。
【0096】
ステップS2において、骨組み計算処理部64は、第1の操作入力制御部61から供給されたユーザの操作入力の内容に基づいて、例えば、骨組みの耐力、応力度等の、構造物の骨組みに関する各種計算を、実行し、図8図10を用いて説明したように、その計算過程に必要な情報、および、計算結果を第1の表示制御部66に供給し、図示しない表示装置に表示させる。骨組み計算処理部64は、第1の操作入力制御部61から供給されたユーザの操作入力の内容に基づいて、骨組み計算を実行し、骨組みの耐力、応力度等の計算結果を、作図処理部62および基準判定部67に供給する。
【0097】
基準判定部67は、ステップS3において、作図処理部62および骨組み計算処理部64の処理により設計された構造物の情報、および、骨組み計算処理部64による骨組み計算結果に基づいて、設計された構造物が、構造物に課された設計基準を満たしているか否かを判定し、ステップS4において、設計基準を満たしているか否かを判断する。
【0098】
ステップS4において、設計基準を満たしていないと判断された場合、判断処理は、ステップS1に戻り、それ以降の処理が繰り返される。
【0099】
ステップS4において、設計基準を満たしていると判断された場合、ステップS5において、基準判定部67は、第1の出力制御部68に、第1の操作入力制御部61から供給されたユーザの操作入力の内容に基づいて、作図処理部62により作図された、例えば、図13を用いて説明したような3次元図面およびその図面に付随する各種情報、並びに、骨組み計算処理部64の処理により得られた計算結果を供給する。第1の出力制御部68は、これらの情報の供給を受け、データベースシステム12のデータベース制御装置21に供給し、3次元情報管理データベース23に登録させ、処理が終了される。
【0100】
このような処理により、設計装置11においては、構造物に課された設計基準を満たしているか否かが判定されるので、設計装置11のユーザは、必要に応じて、骨組み計算処理部64により得られる計算結果を確認しながら、作図処理部62による3次元設計図面を適宜修正し、設計を行うことができる。その結果、設計装置11のユーザは、耐力、応力度等においてすべて基準を満たした構造物を設計することができる。
【0101】
次に、図41のフローチャートを参照して、構造解析処理について説明する。
【0102】
ステップS21において、データベース制御装置21の検査結果取得処理部82は、図示しない外部の装置から、所定のネットワークを介して入力される初回検査結果として、例えば、構造物のかぶりの実測値を取得し、データリンク処理部83に供給する。
【0103】
ステップS22において、データリンク処理部83は、登録データ取得制御部81から供給され、図40のステップS5の処理により3次元情報管理データベース23に登録された3次元図面およびその図面に付随する情報に対して、検査結果取得処理部82から供給された初回検査結果をリンクして、ライブラリ管理処理部85に供給する。ライブラリ管理処理部85は、データリンク処理部83によりリンク付けされた初回検査結果を、検査情報管理データベース24に登録する。
【0104】
ステップS23において、構造解析装置13の第2の3次元情報取得制御部102は、データベースシステム12の3次元情報管理データベース23に登録されている3次元図面情報を取得し、複数モデル構築部104に供給する。第1の検査情報取得制御部103は、データベースシステム12の検査情報管理データベース24に登録されている初回検査結果を取得し、検査情報反映部105に供給する。
【0105】
ステップS24において、複数モデル構築部104は、第2の操作入力制御部101から供給されたユーザの操作入力に基づいて、第2の3次元情報取得制御部102から供給された3次元図面情報から、構造解析を行うための複数モデルを構築する。複数モデル構築部104は、構造解析を行うにあたって、主部材のみを考慮するのではなく、防音壁や路盤コンクリートなどの2次部材を考慮した複数モデルを構築することができる。具体的には、複数モデル構築部104は、例えば、図30を用いて説明した主部材のみを考慮した第1のモデル、および、図21を用いて説明した、主部材に加えて、高欄、地覆・ダクト、および路盤コンクリートの2次部材を考慮した第2のモデルなどの複数のモデルを構築することができる。これにより、後述する処理において、2次部材が耐力や応力度等の耐荷性能に与える影響を考慮することができる。複数モデル構築部104は、構築した複数のモデルに関する情報を、検査情報反映部105に供給する。
【0106】
ステップS25において、検査情報反映部105は、複数モデル構築部104から供給された、複数のモデルのそれぞれに対して、第1の検査情報取得制御部103から供給された、施工された建造物の実際のかぶりの値の初回検査結果を反映させる。モデルに対する初回検査結果の反映方法は、いずれの方法であってもよいが、例えば、図22図25を用いて説明したボロノイ分割を用いて、それぞれのモデルに対して初回検査結果を反映させることができる。そして、検査情報反映部105は、複数モデル構築部104から供給された複数の構造解析用モデルの各領域において、同様の処理を行い、例えば、図26を用いて説明したように、構築されたモデルに対して、初回検査において測定されたかぶり値を反映させた状態を示す3次元図を生成し、構造解析処理部106に供給する。
【0107】
ステップS26において、構造解析処理部106は、複数モデル構築部104により構築され、検査情報反映部105により初回検査におけるかぶりの実測値が反映された複数のモデルに対して、例えば、有限要素法(FEM)を用いて構造解析を実行し、その結果を第2の出力制御部108に供給する。
【0108】
ステップS27において、第2の出力制御部108は、構造解析処理部106から供給された構造解析結果をデータベースシステム12に供給して登録させ、処理が終了される。
【0109】
この様な処理により、構造解析装置13は、複数のモデルに対して構造解析を行うので、後述する処理において、2次部材が耐力や応力度等の耐荷性能に与える影響を考慮することができる。また、構造解析装置13は、初回検査結果を反映させたモデルに対して構造解析を行うので、実際の施工おけるかぶり不足を考慮した構造解析を行うことができる。
【0110】
次に、図42のフローチャートを参照して、モデル選定・経時変化予測処理について説明する。
【0111】
ステップS41において、評価管理処理装置14の第2の検査情報取得制御部123は、第3の操作入力制御部124から供給されたユーザの操作入力に基づいて、データベースシステム12の検査情報管理データベース24に登録されている、実作用を与えた場合、すなわち、実車両が走行した場合の各種実測値を取得し、モデル選択処理部125に供給する。実測値として、例えば、実車両が走行した場合の構造物のたわみの値が取得される。
【0112】
ステップS42において、構造解析結果情報取得制御部121は、第3の操作入力制御部124から供給されたユーザの操作入力に基づいて、データベースシステム12の構造解析結果情報管理データベース22に登録されている複数モデルそれぞれの構造解析結果を取得し、モデル選択処理部125に供給する。
【0113】
ステップS43において、モデル選択処理部125は、構造解析結果情報取得制御部121から供給された複数のモデルの構造解析結果と、第2の検査情報取得制御部123から取得された実作用を与えた場合の各種実測値に基づいて、例えば、図20を用いて説明したようにして、各モデルにおける解析値とたわみの実測値や変状状態とを比較し、実測値に最も近いモデルを評価に適した適正モデル(整合したモデル)として選択し、選択されたモデルに関する各種情報を、状態変化推定処理部127に供給する。
【0114】
ステップS44において、状態変化推定処理部127は、最も維持管理に適したモデルと選択されたモデルによる構造解析結果を用いて、例えば、図32図39を用いて説明したようにして、構造物の耐荷性能、ひび割れ、剥落などの経年状態推移を推定し、推定結果を第3の出力制御部129に供給する。
【0115】
ステップS45において、第3の出力制御部129は、選択された適正モデルと、適正モデルを用いた推定結果を、データベースシステム12の3次元情報管理データベース23に登録して、処理が終了される。
【0116】
このようにして、評価管理処理装置14は、複数モデルのうち、実際の検査によって得られた値に基づいて、整合するモデルを選択し、そのモデルを用いて、経年状態推移を推定することができるので、より精度良く、構造物の維持管理を行うことが可能となる。
【0117】
次に、図43のフローチャートを参照して、管理処理について説明する。
【0118】
ステップS61において、評価管理処理装置14の第3の3次元情報取得制御部122は、第3の操作入力制御部124から供給されたユーザの操作入力に基づいて、データベースシステム12の3次元情報管理データベース23に登録されている、適正モデルを用いた、耐荷性能、ひび割れ、剥落などの経年状態推移の推定結果を取得し、推定‐実測比較処理部128に供給する。
【0119】
ステップS62において、第2の検査情報取得制御部123は、第3の操作入力制御部124から供給されたユーザの操作入力に基づいて、データベースシステム12の検査情報管理データベース24に登録されている維持管理に必要な各種検査結果を取得し、推定‐実測比較処理部128に供給する。
【0120】
ステップS63において、推定‐実測比較処理部128は、第3の3次元情報取得制御部122から供給された、最も維持管理に適したモデルと選択されたモデルを用いて推定された、管理対象となる構造物の状態変化の推定結果、および、第2の検査情報取得制御部123から取得された、維持管理に必要な各種検査結果に基づいて、構造物の状態変化の推定結果と実測値を比較し、比較結果を第3の出力制御部129に供給して、データベースシステム12に登録させる。また、状態変化推定処理部127は、ユーザに必要な情報の入力や操作を促すための表示画像や、構造物の状態変化の推定結果と実測値を比較する過程で用いられる、図、表、または数値などの情報、並びに、比較結果を表示するための表示画面を生成するために必要な情報を、第3の表示制御部126に供給して表示させる。
【0121】
ステップS64において、評価管理処理装置14の各部は、必要に応じて第3の操作入力制御部124から供給されたユーザの操作入力に基づいて、推定モデルを修正し、処理が終了される。
【0122】
このように、評価管理処理装置14のユーザは、推定‐実測比較処理部128の処理による比較結果に基づいて、構造物を維持管理したり、構造物の時間の経過に伴う状態変化の推定値を適宜修正することができるので、より容易に正確に、構造物の維持管理を行うことができる。
【0123】
上述した技術は、ハードウェアとしては、例えば、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用することができる。
【0124】
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行することもできるし、ソフトウェアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行する場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、プログラム記録媒体からインストールされる。
【0125】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0126】
また、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0127】
1…構造物設計評価管理システム、 11…設計装置、 12…データベースシステム、 13…構造解析装置、 14…評価管理処理装置、 21…データベース制御装置、 22…構造解析結果情報管理データベース、 23…3次元情報管理データベース、 24…検査情報管理データベース、 61…第1の操作入力制御部、 62…作図処理部、 63…第1の3次元情報取得制御部、 64…骨組み計算処理部、 66…第1の表示制御部、 67…基準判定部、 68…第1の出力制御部、 81…登録データ取得制御部、 82…検査結果取得処理部、 83…データリンク処理部、 84…データ取得要求処理部、 85…ライブラリ管理処理部、 101…第2の操作入力制御部、 102…第2の3次元情報取得制御部、 103…第1の検査情報取得制御部、 104…複数モデル構築部、 105…検査情報反映部、 106…構造解析処理部、 107…第2の表示制御部、 108…第2の出力制御部、 121…構造解析結果情報取得制御部、 122…第3の3次元情報取得制御部、 123…第2の検査情報取得制御部、 124…第3の操作入力制御部、 125…モデル選択処理部、 126…第3の表示制御部、 127…状態変化推定処理部、 128…推定‐実測比較処理部、 129…第3の出力制御部
図1
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