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特許7424584遣り方設置方法、遣り方設置プログラム及び測量システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】遣り方設置方法、遣り方設置プログラム及び測量システム
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/18 20060101AFI20240123BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
E04G21/18 B ESW
G01C15/00 102A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020120938
(22)【出願日】2020-07-14
(65)【公開番号】P2022018007
(43)【公開日】2022-01-26
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】西 義弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 康平
(72)【発明者】
【氏名】田中 崇
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-210479(JP,A)
【文献】特開2005-030789(JP,A)
【文献】特開2004-037385(JP,A)
【文献】米国特許第6628308(US,B1)
【文献】国際公開第2020/119912(WO,A1)
【文献】米国特許第2562597(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14-21/22
G01C 5/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測量装置と、端末装置を含む測量システムを用いて、遣り方杭、水貫き、及び水糸を有する遣り方を設置する遣り方設置方法であって、
前記測量装置を用いて、遣り方の高さの基準となるベンチマークの標高を測定するベンチマーク測定工程と、
設置された前記遣り方杭の杭頭の標高を測定する杭頭測定工程と、
予め記憶された基礎の基準高、前記ベンチマークの標高、及び前記遣り方杭の杭頭の標高に基づき、前記遣り方杭の杭頭から前記基礎の基準高までの高さの差分を算出して、前記端末装置に表示する貫き天端位置表示工程、を含む遣り方設置方法。
【請求項2】
測量装置と、端末装置を含む測量システムを用いた、遣り方杭、水貫き、及び水糸を有する遣り方装置を設置する遣り方設置方法であって、
前記測量装置を用いて、基準となるベンチマークの位置を測定するベンチマーク測定工程と、
水糸の張り渡し位置を示す基礎基準辺を延長した線である仮想延長線を算出する仮想延長線算出工程と、
測量位置と、前記仮想延長線との距離を前記端末装置に表示する水糸出入誘導工程、を含む遣り方設置方法。
【請求項3】
敷地の境界線を示す境界基準辺を算出する境界基準辺算出工程と、
前記境界基準辺と前記仮想延長線の交点を算出し、前記測量位置と前記交点との距離を前記端末装置に表示する境界出入誘導工程と、をさらに含む請求項2に記載の遣り方設置方法。
【請求項4】
前記測量位置と、前記基礎基準辺の前記敷地の境界線に近い一端との距離を算出する境界離れ算出工程、をさらに含む請求項3に記載の遣り方設置方法。
【請求項5】
遣り方杭、水貫き、水糸を有する遣り方の設置を支援するための測量システムであって、
遣り方の高さの基準となるベンチマークと、前記遣り方杭の標高を測定する測量装置と、
画面部を有する端末装置と、
予め記憶された基礎の基準高と、前記測量装置により測量したベンチマークの標高及び前記遣り方杭の杭頭の標高、に基づき、前記遣り方杭の杭頭から前記基礎の基準高までの高さの差分を算出して、画面部に表示する貫き天端位置算出部、を備える測量システム。
【請求項6】
遣り方杭、及び水貫きを有する遣り方の設置を支援するための測量システムであって、
基準となるベンチマークの位置を測定する測量装置と、
画面部を有する端末装置と、
水糸の張り渡し位置を示す基礎基準辺を延長した線である仮想延長線を算出する仮想延長線算出部と、
測量位置と、前記仮想延長線との距離を算出し、前記端末装置に表示する水糸出入誘導部、を備える測量システム。
【請求項7】
敷地の境界線を示す境界基準辺を算出する境界基準辺算出部と、
前記境界基準辺と前記仮想延長線の交点を算出し、前記測量位置と前記交点との距離を前記端末装置に表示する境界出入誘導部、をさらに備える請求項6に記載の測量システム。
【請求項8】
前記測量位置と、前記基礎基準辺の前記敷地の境界線に近い一端との距離を算出する境界離れ算出部、をさらに含む請求項7に記載の測量システム。
【請求項9】
測量装置と、端末装置を含む測量システムを用いて、遣り方杭、水貫き、及び水糸を有する遣り方を設置する遣り方設置プログラムであって、
前記測量装置により遣り方の高さの基準となるベンチマークの標高を測定させるベンチマーク測定ステップと、
前記測量装置により設置された前記遣り方杭の杭頭の標高を測定させる杭頭測定ステップと、
前記端末装置により予め記憶された基礎の基準高、前記ベンチマークの標高、及び前記遣り方杭の杭頭の標高に基づき、前記遣り方杭の杭頭から前記基礎の基準高までの高さの差分を算出して、前記端末装置に表示する貫き天端位置表示ステップ、を実行させる遣り方設置プログラム。
【請求項10】
測量装置と、端末装置を含む測量システムを用いた、遣り方杭、水貫き、及び水糸を有する遣り方装置を設置する遣り方設置プログラムであって、
前記測量装置により基準となるベンチマークの位置を測定させるベンチマーク測定ステップと、
前記端末装置により水糸の張り渡し位置を示す基礎基準辺を延長した線である仮想延長線を算出する仮想延長線算出ステップと、
前記端末装置により測量位置と、前記仮想延長線との距離を前記端末装置に表示する水糸出入誘導ステップ、を実行させる遣り方設置プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遣り方設置方法、遣り方設置プログラム及び測量システムに関する。
【背景技術】
【0002】
「遣り方」は、建築を始める前に柱や壁の位置を決めるためのものであり、基礎工事に先立って、コンクリートなどの建物の基礎の水平線等を設定するために、必要な個所に杭や横板を設置する仮設物である。
【0003】
従来、遣り方を設置するための様々な治具が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-241509
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、建築現場においてもICT技術の活用が進み、より作業の効率化が求められている。
【0006】
以上により、本開示の一側面は、係る事情を鑑みてなされたものであり、建築現場において作業者がより効率的に遣り方を設置することができる、遣り方設置方法、遣り方設置プログラム、及び測量システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本開示の遣り方設置方法は、測量装置と、端末装置を含む測量システムを用いて、遣り方杭、水貫き、及び水糸を有する遣り方を設置する遣り方設置方法であって、測量装置を用いて、遣り方の高さの基準となるベンチマークの標高を測定するベンチマーク測定工程と、設置された遣り方杭の杭頭の標高を測定する杭頭測定工程と、予め記憶された基礎の基準高、ベンチマークの標高、及び遣り方杭の杭頭の標高に基づき、遣り方杭の杭頭から基礎の基準高までの高さの差分を算出して、端末装置に表示する貫き天端位置表示工程、を含む。
【0008】
また、上記した目的を達成するために、本開示の遣り方設置方法は、測量装置と、端末装置を含む測量システムを用いた、遣り方杭、水貫き、及び水糸を有する遣り方装置を設置する遣り方設置方法であって、測量装置を用いて、基準となるベンチマークの位置を測定するベンチマーク測定工程と、水糸の張り渡し位置を示す基礎基準辺を延長した線である仮想延長線を算出する仮想延長線算出工程と、測量位置と、仮想延長線との距離を端末装置に表示する水糸出入誘導工程、を含む。
【0009】
また、上記した目的を達成するために、本開示の測量システムは、遣り方杭、水貫き、水糸を有する遣り方の設置を支援するための測量システムであって、遣り方の高さの基準となるベンチマークと、遣り方杭の標高を測定する測量装置と、画面部を有する端末装置と、予め記憶された基礎の基準高と、測量装置により測量したベンチマークの標高及び遣り方杭の杭頭の標高、に基づき、遣り方杭の杭頭から基礎の基準高までの高さの差分を算出して、画面部に表示する貫き天端位置算出部、を備える。
【0010】
また、上記した目的を達成するために、本開示の測量システムは、遣り方杭、及び水貫きを有する遣り方の設置を支援するための測量システムであって、基準となるベンチマークの位置を測定する測量装置と、画面部を有する端末装置と、水糸の張り渡し位置を示す基礎基準辺を延長した線である仮想延長線を算出する仮想延長線算出部と、測量位置と、仮想延長線との距離を算出し、端末装置に表示する水糸出入誘導部、を備える。
【0011】
また、上記した目的を達成するために、本開示の遣り方設置プログラムは、測量装置と、端末装置を含む測量システムを用いて、遣り方杭、水貫き、及び水糸を有する遣り方を設置する遣り方設置プログラムであって、測量装置により遣り方の高さの基準となるベンチマークの標高を測定させるベンチマーク測定ステップと、測量装置により設置された遣り方杭の杭頭の標高を測定させる杭頭測定ステップと、端末装置により予め記憶された基礎の基準高、ベンチマークの標高、及び遣り方杭の杭頭の標高に基づき、遣り方杭の杭頭から基礎の基準高までの高さの差分を算出して、端末装置に表示する貫き天端位置表示ステップ、を実行させる。
【0012】
また、上記した目的を達成するために、本開示の遣り方設置プログラムは、測量装置と、端末装置を含む測量システムを用いた、遣り方杭、水貫き、及び水糸を有する遣り方装置を設置する遣り方設置プログラムであって、測量装置により基準となるベンチマークの位置を測定させるベンチマーク測定ステップと、端末装置により水糸の張り渡し位置を示す基礎基準辺を延長した線である仮想延長線を算出する仮想延長線算出ステップと、
端末装置により測量位置と、仮想延長線との距離を端末装置に表示する水糸出入誘導ステップ、を実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本開示の遣り方設置方法、遣り方設置プログラム及び測量システムによれば、建築現場において作業者がより効率的に遣り方を設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】建築現場における遣り方について説明する図である。
図2】本開示の実施形態に係る測量システムの構成図である。
図3】遣り方杭とベンチマークの標高の関係について説明する図である。
図4】本開示に係る実施形態の処理の流れを示すフローチャート図である。
図5】画面の一例を示す図である。
図6】本開示に係る実施形態の処理の流れを示すフローチャート図である。
図7】画面の一例を示す図である。
図8】本開示に係る実施形態の処理の流れを示すフローチャート図である。
図9】画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。図1は、建築現場における遣り方の設置について説明する図である。「遣り方」は、上記したように建築を始める前に柱や壁の位置を決めるためのものであり、基礎工事に先立ってコンクリートなどの建物の基礎の水平線等を設定するために、必要な個所に杭や横板を設置する仮設物である。遣り方を用いた一連の作業を「遣り方を出す」ともいう。遣り方は、基準として動かないものに基準墨等のマークを設置した後は必要なくなり、最終的には撤去される。遣り方3は、例えば隅遣り方であり、遣り方杭31A、31B、31C、水貫き32A、32Bを備えている。このような隅遣り方は、矩形上の建物であれば、建物の四隅に設置される。対向する隅遣り方と隅遣り方の間には、水糸が張り渡される。なお、本開示において、遣り方杭31A、31B、31Cは同じ機能を有するものであり、これらを区別せず遣り方杭31ともいう。同様に、水貫き32A、32Bも、水貫き32ともいう。遣り方杭は、遣り方を設置するために地面に打つ杭のことであり、水杭、見当杭ともいう。水貫きは、遣り方杭に示した基礎の標高を示す、貫き天端位置に上端を合わせて設置される横板であり、水貫ともいう。
【0016】
各遣り方杭31には、貫き天端位置を示すマーク(墨)LMが描かれる。このマークLMは、水平墨ともいう。マークLMが示すのは建物の基礎の標高である。
【0017】
遣り方3の内側には、不図示の水糸が設置される。水糸は、遣り方の際に対面する水貫き間に張り渡される、水平を示す実物の糸である。水糸はナイロン製やポリエチレン製の糸、ピアノ線を用いてもよい。水糸の示す高さは建物の基礎の標高である。この図において、ML01、ML02に示す線は予め設定された設計情報として水糸が張設されるべき位置を示しており、これを水糸の基準辺という。基準辺を設定するに際して、設計情報として基礎点MP01、MP02、MP03が設定されている。これらの基礎点は基準辺の始点又は終点となりうる点であり、水糸のいわば設計図である。
【0018】
水糸は、水貫きに釘を打つなどして固定点を設け、対向する水貫きの間に張設する。この図においては、水貫き32Aと対向する不図示の墨遣り方の水貫きとの間で水糸を張設する。水貫き32の上端位置(貫き天端)は水糸の標高と同じであり、その位置に合わせて正確に水貫き32を設置するために、遣り方杭31には、マークLMが設置される。
【0019】
図2は、本開示の実施形態にかかる測量システムの構成図である。この図に示すように測量システム1は、測量装置200、端末装置100、被測量装置300を有している。
【0020】
測量装置200の一実施例は、例えば、既知である位置座標上に設けられているトータルステーション(TS)等光波方式による測量機器である。「TS等光波方式」とは、TSに加え、自動追尾機能を有するTSと同等の測定ができるもので、かつ望遠鏡を搭載しない光波方式を用いる測定機器等を含むものである。測量装置200は、ターゲットである被測量装置300を自動追尾して、ターゲットが設けられた所定位置を測量することが可能である。被測量装置300は、測量装置200より放射された光を再び測量装置200へ反射する光学素子を備えたものであり、光学素子はいわゆる再帰反射プリズムである。また、被測量装置300は、再帰反射プリズムを備えた既知の長さの測量用ポールであってよい。
【0021】
なお、測量装置200と、被測量装置300は物理的に別体の構成であるが、協働して測量という機能をなしえるものであり、被測量装置300も一体として測量装置200に含まれるものとして解釈しても構わない。
【0022】
測量装置200は、三脚に支持された水平方向に回転駆動可能な水平回転駆動部と、水平回転駆動部上にて鉛直方向に回転可能な鉛直回転駆動部を介して望遠鏡部が設けられている。図示しないが、測量装置200には、測角部212として、水平方向の回転角を検出する水平角検出部と、には鉛直方向の回転角を検出する鉛直角検出部が設けられている。これら水平角検出部及び鉛直角検出部により、視準している方向の鉛直角及び水平角を測角可能である。
【0023】
さらに、測量装置200には、測距部211として被測量装置300までの斜距離を測定する構成として、例えば光波距離計が設けられている。便宜上、これら測角部212と測距部211をあわせて測量部210と呼ぶ。
【0024】
また、測量装置200は、測量記憶部220、測量通信部230、測量制御部240、追尾制御部250を有している。
【0025】
測量記憶部220は、上記の測量制御や追尾制御等を行うための各種プログラムや、建築現場において使用する土地の情報(標高等)や設計情報等が予め記憶されている。
【0026】
測量通信部230は、端末装置100等の外部機器と通信可能な部分であり、例えば無線通信手段である。
【0027】
測量制御部240は、測量装置200による測量を制御する機能を有している。具体的には、自動又は手動で被測量装置300を視準し、上記した測角部212(水平角検出部、鉛直角検出部)、測距部211により、測量装置200と被測量装置300との水平角、鉛直角、斜距離を検出する。ここで、被測量装置300の一例である再帰反射プリズムは棒状のポールに取り付けられ、プリズムからポールの末端までの距離は既知であることから、測量制御部240は測角部212、測距部211により検出された水平角、鉛直角、斜距離を補正して、ポールの末端位置(上端位置、又は下端位置)を測量結果として算出する。
【0028】
追尾制御部250は、追尾部により追尾光を照射し、被測量装置300により反射された追尾光を受光し続けるよう水平回転駆動部及び鉛直回転駆動部の駆動を制御することで被測量装置300を追尾する。
【0029】
また、測量装置200の他の実施例はGNSS測量装置である。この場合、被測量装置300としてGNSS受信装置を用いて測量を行う。
【0030】
端末装置100は、例えば、スマートフォン、フィーチャーフォン、タブレット、ハンドヘルドコンピュータデバイス(例として、PDA(Personal Digital Assistant)等)、ウェアラブル端末(メガネ型デバイス、時計型デバイスなど)、等を含む。汎用の端末にアプリケーションソフトウェアをインストールすることで本実施形態にかかる携帯表示端末として用いることができる。これらの端末装置100は、画面部150を備え、作業現場に携帯して容易に持ち運びできる。また、ハンズフリーや、片手での保持により画面部150を視認することができる。また、電池等の内部電源を備え、外部電源を必要とすることなく一定時間動作することができる。
【0031】
端末装置100は、端末通信部130、端末記憶部120、端末処理部110、入力部140、画面部150を有している。
【0032】
端末処理部110は、図示しないが端末記憶部120に記憶されるプログラムに含まれるコード又は命令によって実現する機能、及び/又は方法を実行する。端末処理部110は、例として、中央処理装置(CPU)、MPU、GPU、マイクロプロセッサ、プロセッサコア、マルチプロセッサ、ASIC、FPGA等を含み、集積回路等に形成された論理回路や専用回路によって各実施形態に開示される各処理を実現してもよい。また、これらの回路は、1又は複数の集積回路により実現されてよく、各実施形態に示す複数の処理を1つの集積回路により実現されることとしてもよい。また、図示しないが、端末記憶部120から読み出したプログラムを一時的に記憶し、端末処理部110に対して作業領域を提供する主記憶部を備えてもよい。
【0033】
端末通信部130は、測量装置200の測量通信部230と通信可能であり、測量装置200により被測量装置300を測量した測量結果又は測量制御部240によって算出された位置情報(ポール先端までの水平角、鉛直角、斜距離)等を受信可能である。測量結果に基づく位置情報の演算は、測量装置200側で行ってもよく、端末装置100側で行ってもよい。通信は、有線、無線のいずれで実行されてもよく、互いの通信が実行できるのであれば、どのような通信プロトコルを用いてもよい。
【0034】
入力部140は、ユーザすなわち作業者2からの入力を受け付けて、その入力にかかる情報を端末処理部110に伝達できる全ての種類の装置のいずれか、又は、その組み合わせにより実現される。例えば、ボタン等によるハードウェア入力手段に加え、タッチパネル等の表示部上に表示されたソフトウェア入力手段、リモートコントローラ、マイク等の音声入力手段を含む。
【0035】
画面部150は、画面を表示することができる全ての種類の装置のいずれか又はその組み合わせにより実現される。例えば、液晶やOLED等の平面ディスプレイ、曲面ディスプレイ、折畳可能なフォルダブル端末に設けられた折畳画面、ヘッドマウントディスプレイ、又は小型プロジェクタを用いた物質への投影により表示可能な装置を含む。
【0036】
端末記憶部120は、必要とする各種プログラムや各種データを記憶する機能を有する。その他、端末通信部130にて受信した測量情報、及びその測量情報に基づき算出された位置情報を記憶可能である。例えば、端末記憶部120には、建築現場において使用する土地の情報(標高等)や設計情報等が記憶されている。端末記憶部120は、HDD、SSD、フラッシュメモリなど各種の記憶媒体により実現される。
【0037】
設計情報は、建築工事において必要な設計図を含む情報である。建築工事とは、例えば建築物、道路、線路、トンネル、橋梁、溝、水路、河川等の構造物の工事である。設計図には、基礎点、境界点当の点のデータや、基礎基準辺や境界基準辺などの線のデータ等が含まれている。
【0038】
端末記憶部120には、アプリケーションソフトウェアのプログラムとして、各種機能を実現する貫き天端位置算出部121、仮想延長線算出部122、境界基準辺算出部123、水糸出入誘導部124、境界出入誘導部125、境界離れ算出部126が記憶されている。
【0039】
後述するように、貫き天端位置算出部121は、予め記憶された基礎の基準高と、測量装置により測量したベンチマークの標高及び前記遣り方杭の杭頭の標高、に基づき、遣り方杭の杭頭から前記基礎の基準高までの高さの差分を算出して、画面部に表示する機能を備えている。
【0040】
後述するように、仮想延長線算出部122は、水糸の張り渡し位置を示す基礎基準辺を延長した線である仮想延長線を算出する機能を備えている。
【0041】
後述するように、水糸出入誘導部124は、測量位置と、仮想延長線との距離を前記端末装置に表示する機能を備えている。
【0042】
後述するように、境界基準辺算出部123は、敷地の境界線を示す境界基準辺を算出する機能を備えている。
【0043】
後述するように、境界出入誘導部125は、境界基準辺と仮想延長線の交点を算出し、測量位置と前記交点との距離を前記端末装置に表示する機能を有している。
【0044】
後述するように、境界離れ算出部126は、測量位置と、基礎基準辺の前記敷地の境界線に近い一端との距離を算出する機能を有している。
【0045】
(遣り方設置機能)
以下に、本開示の実施形態に係る遣り方設置方法、遣り方設置プログラム、測量システムの一側面である遣り方設置機能の概要について説明する。
【0046】
図1に示したように、遣り方3は、複数の遣り方杭31を備え、その各々に貫き天端位置を示すマークLMが付される。このマークLMが示す標高は、基本的に全ての遣り方杭31において共通しているが、使用される杭の長さや、手作業によって打ち込まれる杭の深さはまちまちであるため、共通した標高にマークLMを付す作業は容易ではない。
【0047】
このような遣り方杭31に等しく精度よくマークLMを付すための手順を、図3を用いて説明する。図3は、遣り方杭とベンチマークの標高の関係について説明する図である。この図において、紙面上下方向が遣り方杭31の高さ方向を表している。まず、打ち込まれている遣り方杭31の長さ及び杭頭の標高は未知である。そして、現場におけるベンチマーク(BM)の位置(標高を含む)は既知であり設計情報に含まれているか、その場で測量可能である。また、BMから現況の地面であるGLまでの標高差、GLから貫き天端までの標高差が既知であり、設計情報に含まれている。
【0048】
ここで、測量装置200、被測量装置300を用いて杭頭の標高の測定を行う。杭頭の標高を測定することができれば、既知であるBMからGLまでの標高差、GLから貫き天端までの標高差、あるいはBMから貫き天端までの標高差の情報を用いて、杭頭から貫き天端までの標高差を算出することができる。
【0049】
図4に本実施形態にかかる測量システムを用いた遣り方設置方法、遣り方設置プログラムの処理の流れを説明するフローチャートを示す。
【0050】
まず、ステップS101では、作業者が現場に測量装置200を設置し、測量装置200の機械点を設定した後、ベンチマーク(BM)の測量を行い、BMの標高を既知として、測量記憶部220、又は端末記憶部120に記憶する。
【0051】
次に、ステップS102では、現場において作業者が複数の遣り方杭31を設置する。遣り方杭31は、設計情報として予め定められている位置に手作業によって打ち込まれる。
【0052】
図5は、端末装置100の画面部150に表示される画面の一例であり、手作業による杭打ちを支援するための画面である。作業者2は、設計情報として記憶されている杭設置点の中から杭設置位置を選択する。そして、被測量装置300を保持しながらその位置に近づく。測量装置200は、被測量装置300を自動追尾しながらその位置を測量し、端末装置100に測量情報を送信する。端末装置100は、画面部150により、設計情報として定められた杭を打つべき位置TGと、被測量装置300の現在位置PLを表示し、またその位置の差分を表示する。この図において、その差分がX方向の差分表示GX、及び差分表示GYとして示されている。また、方位表示CM、Z方向の差分表示GZを表示して作業者を支援してもよい。
【0053】
次に、ステップS103では、遣り方杭31の杭頭の標高について、測量システム1を用いて測量する。測量した遣り方杭31の標高を既知として、測量記憶部220、又は端末記憶部120に記憶する。
【0054】
次に、ステップS104では、端末処理部110が、測量記憶部220、又は端末記憶部120に記憶されている、BMからGL、GLから貫き天端までの標高差、あるいはBMから貫き天端までの標高差の情報と、ステップ101で記憶したBMの標高、ステップ103で記憶した杭頭の標高の情報に基づき、杭頭から貫き天端位置までの標高差を算出する。
【0055】
次にステップS105では、端末処理部110が算出した杭頭から貫き天端位置までの標高差を、端末装置100の画面部150に表示する。作業者は、画面部150に表示された杭頭から貫き天端までの標高差情報をもとに、実際に遣り方杭31にマークLMを記す。この作業を各遣り方杭について実施する。
【0056】
このように、本開示の実施形態に係る遣り方設置方法によれば、測量装置200と、端末装置100を含む測量システム1を用いて、遣り方杭、水貫き、及び水糸を有する遣り方を設置する遣り方設置方法であって、測量装置を用いて、遣り方の高さの基準となるベンチマークの標高を測定するベンチマーク測定工程と、設置された遣り方杭の杭頭の標高を測定する杭頭測定工程と、予め記憶された基礎の基準高、ベンチマークの標高、及び遣り方杭の杭頭の標高に基づき、遣り方杭の杭頭から基礎の基準高までの高さの差分を算出して、端末装置に表示する貫き天端位置表示工程と、を含むことにより、打ち込まれた杭の長さ、及び深さがまちまちであっても、複数の遣り方杭において精度よく貫き天端の位置を示すマークLMを記すことができ、遣り方3の水貫き32を効率よく設置することができる。また、作業者一人でも被測量装置300と端末装置100を持ちながら杭頭を測量して、その場で杭頭から貫き天端までの標高差を端末装置100の画面部150で確認してマークLMを記すことができる。
【0057】
(水糸設置機能)
以下に、本開示の実施形態に係る遣り方設置方法、遣り方設置プログラム、測量システムの一側面である水糸設置機能の概要について説明する。
【0058】
図1に示したように、水糸は基本的に対向する2枚の水貫き31の間に張設されるため、水糸の一端を固定すべき点M1を水貫き32の頂面上に定めて、そこに釘などを打って水糸を固定する。そのため、水糸を正確に張設するにはM1の位置を正確に定めることが必要である。
【0059】
このように水糸の固定位置となる点M1を水貫き32の頂面上で定めるための手順を、図1を用いて説明する。水糸を設置すべき建物の基礎の位置は、設計情報により予め定められ記憶されている。これを基礎基準辺といい、図1において基礎基準辺ML01、ML02が示されている。これはあくまで設計情報であり、現場において水糸の両端を担うのは、水貫き32である。この水貫き32の頂面上において基礎基準辺と交差する点を、測量装置200を用いて探索するために、基礎基準辺の仮想延長線を算出する。そして、作業者は被測量装置300を用いて、被測量装置300が示す位置が仮想延長線に対して、どの程度離れているのかを把握しながらM1を探索し、位置ずれがなくなったところでM1を決定する。M1が決定した後は、そこに釘等を打ち込んで水糸の固定点とする。
【0060】
図6に本実施形態にかかる測量システムを用いた遣り方設置方法、遣り方設置プログラムの処理の流れを説明するフローチャートを示す。
【0061】
まず、ステップS201では、作業者が現場に測量装置200を設置し、ベンチマーク(BM)の測量を行い、BMの標高を既知として、測量記憶部220、又は端末記憶部120に記憶する。
【0062】
次に、ステップS202では、現場において作業者が遣り方3を設置する。
【0063】
次に、ステップS203では、作業者が、仮想延長線を算出したい基礎点2点を、端末装置100の画面部150を見ながら選択し、選択された2点の基礎点に基づき、端末処理部110が、基礎点2点から一方へ延長する仮想延長線を算出する。
【0064】
次に、ステップS204では、作業者が実際に被測量装置300を持ちながら、水貫き32の頂面上を走査、探索しながら測量する。その際に、被測量装置300により測量されている測量位置が、仮想延長線に対してどれほど離間しているかの距離を、端末処理部110が算出し、例えば端末装置100の画面部150に表示する。
【0065】
図7は、端末装置100の画面部150に表示される画面の一例であり、水糸設置位置の探索を支援するための画面である。この図において、選択された基礎点M01からM02方向へ延長するように描画された仮想延長線VL02と、被測量装置300の現在位置を示すPLとの差分が延長線出入として示されている。延長線出入は、例えばこの図において示すように仮想延長線VL01に対して、この直線に垂直な方向の軸を定め、仮想延長線VLの位置を0として、+と-で示すことができる。作業者はこの情報に誘導され、水貫き32の頂面上において、仮想延長線との離間距離がなくなるところを選定して、水糸を固定されるための釘を打ち込む。打ち込まれた釘により、水糸を固定することで作業は完了する。
【0066】
このように、本開示の実施形態に係る遣り方設置方法によれば、測量装置と、端末装置を含む測量システムを用いた、遣り方杭、水貫き、及び水糸を有する遣り方装置を設置する遣り方設置方法であって、測量装置を用いて、基準となるベンチマークの位置を測定するベンチマーク測定工程と、水糸の張り渡し位置を示す基礎基準辺を延長した線である仮想延長線を算出する仮想延長線算出工程と、測量位置と、仮想延長線との距離を端末装置に表示する水糸出入誘導工程、を含むことにより、水糸を固定すべき位置について、より正確に定めることができ、正確かつ効率よく水糸を張設することができる。
【0067】
(境界離れ測定機能)
以下に、本開示の実施形態に係る遣り方設置方法、遣り方設置プログラム、測量システムの一側面である境界離れ測定機能の概要について説明する。
【0068】
法令により、建物の基礎は敷地の境界線から一定距離を保って設置される必要がある。そのため、遣り方の設置において、水糸が張設される基礎点から敷地境界線までの距離を確認することは重要であるが、空中において交わっている水糸の交点である基礎点の位置を把握しながら敷地境界線までの距離である境界離れを測定することは容易ではない。
【0069】
このような水糸と敷地境界線の距離である境界離れを測定するための手順を、図1を用いて説明する。この図において、敷地と敷地の境界線として、境界基準辺DL01が示されている。境界基準辺DL01は、境界点DP01と境界DP02を結んだ辺である。境界基準辺DL01の外側には、例えば壁などの敷地外構造物4が存在している場合がある。ここで知りたい境界離れは、例えば基礎点MP02と、境界基準辺DL01との離間距離である。その距離を測るために、基礎点MP02を通る、水糸の延長線である仮想延長線VL01を算出し、仮想延長線VL01と、境界基準辺DL01との交点を算出する。そして、作業者は被測量装置300を用いて、当該交点について近づくように測量しながら移動し、交点との位置ずれがなくなったところで測量を行う。すると、基礎点MP01と、境界基準辺DL01と仮想延長線VL01との交点の両方の位置が既知となり、敷地境界線から基礎までの距離を算出することができる。
【0070】
図8に本実施形態にかかる測量システムを用いた遣り方設置方法、遣り方設置プログラムの処理の流れを説明するフローチャートを示す。
【0071】
まず、ステップS301では、作業者が現場に測量装置200を設置し、ベンチマーク(BM)の測量を行い、BMの標高を既知として、測量記憶部220、又は端末記憶部120に記憶する。
【0072】
次に、ステップS302では、現場において作業者が遣り方3を設置する。
【0073】
次に、ステップS303では、作業者が、敷地境界線を定めたい境界点2点を、端末装置100の画面部150を見ながら選択し、選択された2点の境界点に基づき、端末処理部110が、境界点2点を結ぶ境界基準辺を算出する。
【0074】
次に、ステップS304では、作業者が、仮想延長線を算出したい基礎点2点を、端末装置100の画面部150を見ながら選択し、選択された2点の基礎点に基づき、端末処理部110が、基礎点2点から一方へ延長する仮想延長線を算出する。
【0075】
次に、ステップS305では、算出された境界基準辺と、仮想延長線に基づき、端末処理部110が、これらの交点の位置を算出する。そして、作業者が実際に被測量装置300を持ちながら、交点の位置を探索しながら測量する。その際に、被測量装置300により測量されている測量位置が、交点に対してどれほど離間しているかの距離を、端末処理部110が算出し、例えば端末装置100の画面部150に表示する。
【0076】
図9は、端末装置100の画面部150に表示される画面の一例であり、境界離れの測定を支援するための画面である。この図において、選択された基礎点M01からM02方向へ延長するように描画された仮想延長線VL02と、被測量装置300の現在位置を示すPLとの差分が延長線出入として示されている。また、選択された境界点DP01とDP02を結ぶ境界基準辺DL01が描画され、仮想延長線VL02と境界基準辺DL01との交点CPが示されている。さらに、現在位置PLと交点CPとの距離の差分が「境界まで」として示されている。ここで、基礎点MP02と、CPとの距離も明らかになるため、CPの位置情報を取得できれば、境界離れも算出することができる。この画面には同時に計算した境界離れも示されている。これについては後述する。
【0077】
このような画面を画面部150に表示することにより、作業者に対して交点との出入りを誘導する。作業者はこの情報をもとに、交点CPとの離間距離がなくなるところを選定し、その位置における測量を行う。これにより、基礎点MP01と、境界基準辺DL01と仮想延長線VL01との交点の両方の位置が既知となり、敷地境界線から基礎までの距離を算出することができる。
【0078】
次に、ステップS305では、建物の基礎と敷地の境界線までの離れを算出して表示する。この離れは境界離れ、又は基礎離れともいう。被測量装置の測量位置を交点CP上に設置すれば、そこが境界線であるため、その境界線からの建物の基礎までの離れを算出することができる。
【0079】
このように、本開示の実施形態に係る遣り方設置方法によれば、敷地の境界線を示す境界基準辺を算出する境界基準辺算出工程と、境界基準辺と仮想延長線の交点を算出し、測量位置と交点との距離を端末装置に表示する境界出入誘導工程とを含むことにより、作業者は、敷地境界線から基礎までの境界離れを測定するための位置を効率よく特定することができる。
【0080】
また、測量位置と、基礎基準辺の前記敷地の境界線に近い一端との距離を算出する境界離れ算出工程、をさらに含むことにより、作業者は、敷地境界線から基礎までの境界離れを把握することができる。
【0081】
以上で本発明の実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0082】
1 測量システム
2 ユーザ
3 遣り方
31 遣り方杭
32 水貫き
4 敷地外構造物
100 端末装置
110 端末処理部
120 端末記憶部
121 貫き天端位置算出部
122 仮想延長線算出部
123 境界基準辺算出部
124 水糸出入誘導部
125 境界出入誘導部
126 境界離れ算出部

130 端末通信部
140 入力部
150 画面部
200 測量装置
210 測量部
211 測距部
212 測角部
220 測量記憶部
230 測量通信部
240 測量制御部
250 追尾制御部
300 被測量装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9