(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】発電装置およびデバイス
(51)【国際特許分類】
H02J 50/30 20160101AFI20240123BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
H02J50/30
H02J7/00 302C
H02J7/00 K
(21)【出願番号】P 2020079843
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2023-02-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度 国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業、個人型研究(さきがけ)、「生命機能メカニズム解明のための光操作技術」、「完全ワイヤレス・インプランタブル光操作デバイスの実現」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】徳田 崇
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-014542(JP,A)
【文献】特開2006-042523(JP,A)
【文献】特開2014-087082(JP,A)
【文献】特開2017-192180(JP,A)
【文献】特開2019-144729(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0270709(US,A1)
【文献】石津岳明,Nattakarn Wuthibenjaphonchai,春田牧人,野田俊彦,笹川清隆,徳田崇,太田淳,光エナジーハーベスティングによる生体埋植型光刺激デバイス,第78回応用物理学会秋季学術講演会[講演予稿集],日本,公益社団法人応用物理学会,2017年08月25日,p.11-356,7a-A502-11, ISBN:978-4-86348-635-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/378
H02J 7/00
H02J 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントローラと、
それぞれが少なくともひとつのエネルギーハーベスト素子を含む複数N個(N≧2)のユニットセルと、
前記コントローラの電源端子と接続される第1電源ラインと、
負荷の電源端子と接続される第2電源ラインと、
接地ラインと、
前記複数のユニットセル、前記第1電源ライン、前記第2電源ライン、前記接地ラインと接続されるとともに、複数のスイッチを含み、(i)前記複数のユニットセルのN個が前記第1電源ラインと前記接地ラインの間に並列に接続される第1状態と、(ii)前記複数のユニットセルのm個(1≦m)が前記第1電源ラインと前記接地ラインの間に並列に接続され、前記複数のユニットセルのn個(n=N-m、n<m)が、前記第2電源ラインと前記第1電源ラインの間に接続される第2状態と、が、前記コントローラからの制御に応じて切り替え可能に構成されるスイッチ回路と、
を備えることを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記第2状態は、mとnの組み合わせが異なる複数のサブステートを含むことを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記コントローラは、少なくとも前記第1電源ラインの電圧にもとづいて、前記スイッチ回路の状態を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記第1電源ラインと前記接地ラインの間に設けられた第1キャパシタと、
前記第2電源ラインと前記接地ラインの間に設けられた第2キャパシタと、をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の発電装置。
【請求項5】
2次電池が接続される第3電源ラインをさらに備え、
前記スイッチ回路は、前記第1状態および前記第2状態に加えて、(iii)前記複数のユニットセルのm個が前記第1電源ラインと前記接地ラインの間に並列に接続され、前記複数のユニットセルのn個が、前記第2電源ラインと前記第1電源ラインの間に接続され、前記複数のユニットセルのl個(ただし、m+n+l=N)が、前記第3電源ラインと前記第2電源ラインの間に接続される第3状態に切り替え可能であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の発電装置。
【請求項6】
前記コントローラは、少なくとも前記第1電源ラインおよび前記第2電源ラインの電圧にもとづいて、前記スイッチ回路の状態を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の発電装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の発電装置を備えることを特徴とするデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型デバイスに内蔵される発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
センサデバイス、生体埋め込みデバイス、IoT(Internet Of Things)デバイスをはじめとする超小型デバイスの用途が広がっている。
図1は、超小型デバイスの一例であるセンサデバイスのブロック図である。センサデバイス2は、コントローラ10、センサ12、無線機14、電源回路20などを含む。コントローラ10は、センサデバイス2を統括的に制御するとともに、さまざまな演算処理を実行する。センサ12は、温度センサや加速度センサなどであり、周囲環境を測定する。センサ12の出力は、コントローラ10によって処理された後に、あるいは処理を経ずに、無線機14から外部に送信される。
【0003】
電源回路20は、コントローラ10、センサ12、無線機14などの負荷に電力を供給する。CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)回路で構成されるコントローラ10は、最低動作電圧が低く、センサ12や無線機14などの一部の回路の最低動作電圧は高いため、電源回路20は、複数の電圧レベルの電源電圧を生成する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-192180号公報
【文献】特開2019-114729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、センサデバイスやIoTデバイスなどの小型デバイスの電源回路に、光、熱、振動などの再生可能エネルギー(環境エネルギーともいう)を利用した発電素子(エネルギーハーベスト素子とも称される)を利用することを検討し、以下の課題を認識するに至った。
【0006】
コントローラ10の最低動作電圧の電源電圧は、1~2V程度、あるいは1V以下と低い。一方、センサ12や無線機14などの一部の回路の動作には、それより高い数Vの電源電圧が必要である。
【0007】
したがって小型デバイスの電源回路20には、異なる電圧レベルの電源電圧を生成することが要求される。エネルギーハーベスト素子の1セルの起電力は、1Vに満たない程度に低いため、数Vのアナログ回路を駆動するためには、昇圧回路などが必要であり、コストアップの要因となる。
【0008】
本発明は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、発電状況に応じて適応的に動作可能なデバイスの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。またこの概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、実施形態の欠くべからざる構成要素を限定するものではない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつ実施形態または複数の実施形態を指すものとして用いる場合がある。
【0010】
一実施形態に係る発電装置は、コントローラと、それぞれが少なくともひとつのエネルギーハーベスト素子を含む複数N個(N≧2)のユニットセルと、コントローラの電源端子と接続される第1電源ラインと、負荷の電源端子と接続される第2電源ラインと、複数のユニットセル、第1電源ライン、第2電源ライン、接地ラインと接続されるとともに、複数のスイッチを含み、(i)複数のユニットセルのN個が第1電源ラインと接地ラインの間に並列に接続される第1状態と、(ii)複数のユニットセルのm個(1≦m<N)が第1電源ラインと接地ラインの間に並列に接続され、複数のユニットセルのn個(n=N-m)が、第2電源ラインと第1電源ラインの間に接続される第2状態と、が、コントローラからの制御に応じて切り替え可能に構成されるスイッチ回路と、を備える。
【0011】
コントローラの最低動作電圧をVL(MIN)、負荷の最低動作電圧をVM(MIN)とするとき、ユニットセルは、その起電力VCELLが、以下の関係式を満たすように構成される。
VL(MIN)≦VCELL
VM(MIN)≦2×VCELL
第1状態では、N個すべてのユニットセルの電力をコントローラに集中的に供給することができる。また第2状態では、複数のユニットセルの電力の一部をコントローラに供給しつつ、負荷にも、最低動作電圧VM(MIN)以上の電源電圧VMを供給できる。
【0012】
第2状態は、mとnの組み合わせが異なる複数のサブステートを含んでもよい。ユニットセル当たりの発電量が増大するにしたがって、mを小さく、nを大きくしてもよい。
【0013】
一実施形態において、発電装置は、第1電源ラインと接地ラインの間に設けられた第1キャパシタと、第2電源ラインと接地ラインの間に設けられた第2キャパシタと、をさらに備えてもよい。第1キャパシタにより、コントローラに供給される電源電圧を平滑・安定化できる。また余剰の電力によって第2キャパシタを充電し、第2キャパシタの電圧が、負荷の最低動作電圧を上回ると、負荷を動作させることができる。
【0014】
一実施形態において、コントローラは、少なくとも第1電源ラインの電圧にもとづいて、スイッチ回路の状態を制御してもよい。あるいはコントローラは、ユニットセル当たりの電流にもとづいて、スイッチ回路の状態を制御してもよい。
【0015】
一実施形態において、発電装置は、2次電池が接続される第3電源ラインと、をさらに備えてもよい。スイッチ回路は、第1状態および第2状態に加えて、(iii)複数のユニットセルのm個(1≦m<N)が第1電源ラインと接地ラインの間に並列に接続され、複数のユニットセルのn個(1≦n<N)が、第2電源ラインと第1電源ラインの間に接続され、複数のユニットセルのl個(1≦l<N、ただし、n+m+l=N)が、第3電源ラインと第2電源ラインの間に接続される第3状態に切り替え可能であってもよい。
2次電池の充電に必要な最低電圧をVH(MIN)とするとき、ユニットセルの起電力VCELLは、以下の関係式を満たす。
VH(MIN)≦3×VCELL
【0016】
一実施形態において、コントローラは、少なくとも第1電源ラインおよび第2電源ラインの電圧にもとづいて、スイッチ回路の状態を制御してもよい。
【0017】
一実施形態において、コントローラは、ユニットセル1個当たりから得られる電流にもとづいて、スイッチ回路の状態を制御してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のある態様によれば、発電状況に応じて適応的に、コントローラおよび負荷に対して適切な電力を供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】超小型デバイスの一例であるセンサデバイスのブロック図である。
【
図2】実施形態1に係る発電装置を備えるデバイスのブロック図である。
【
図3】
図3(a)、(b)は、第1状態φ1および第2状態φ2を示す図である。
【
図4】デバイスの動作の一例を示すタイムチャートである。
【
図5】N=4の場合のサブステートの一例を説明する図である。
【
図6】N=4の場合のスイッチ回路の構成例を示す回路図である。
【
図7】ユニットセル130_iの負極側のスイッチSWiN#(#=G,L)の構成例を示す回路図である。
【
図8】ユニットセル130_iの正極側のスイッチSWiP#(#=L,M)の構成例を示す回路図である。
【
図9】実施形態2に係る発電装置を備えるデバイスのブロック図である。
【
図10】
図10(a)~(c)は、第1状態φ1~第3状態φ3を示す図である。
【
図11】デバイスの一例である生体埋め込みデバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態についていくつかの図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0021】
(実施形態1)
図2は、実施形態1に係る発電装置を備えるデバイスのブロック図である。発電装置内蔵のデバイス(以下、単にデバイスという)200Aは、センサデバイス、生体埋め込みデバイス、IoTデバイスなどの小型あるいは超小型デバイスである。
【0022】
デバイス200Aは、発電装置100Aおよび負荷210を備える。発電装置100Aは、環境エネルギーを電力に変換し、負荷210に電力を供給する。負荷210は、デバイス200Aの種類や機能に応じた構成および機能を有する。たとえばデバイス200Aがセンサデバイスである場合、負荷210は、センサ素子やA/Dコンバータなどを含みうる。またデバイス200Aが、無線通信機能を有する場合、負荷210は、無線送信機などを含みうる。デバイス200Aが、生体に刺激を与える生体埋め込みデバイスである場合、負荷210は、発光素子や振動素子、アクチュエータなどの刺激付与手段を含む。
【0023】
以下、発電装置100Aの構成を説明する。発電装置100Aは、第1電源ライン102、第2電源ライン104、接地ライン106、コントローラ110、複数のユニットセル130、スイッチ回路140Aを備える。
【0024】
コントローラ110は、発電装置100Aを統合的に制御するロジック回路である。コントローラ110は、デバイス200A全体を制御するコントローラを兼ねていてもよく、負荷210は、コントローラ110の制御下で動作する。
【0025】
複数N個のユニットセル130_1~130_Nはそれぞれ、少なくともひとつのエネルギーハーベスト素子132を含む。エネルギーハーベスト素子132の種類は特に限定されず、光発電素子(太陽電池)、振動発電素子、熱発電素子などを用いることができる。なお本明細書において、エネルギーハーベスト素子132は、自然界に存在するエネルギーを利用するものに限定されず、人為的に与える光エネルギー、振動エネルギー、熱エネルギーなど電気に変換する素子を含む。
【0026】
ユニットセル130が直列に接続されたk個のエネルギーハーベスト素子132を含む場合、ユニットセル130の起電力VCELLは、k×VCELLとなる。VCELLは、1個のエネルギーハーベスト素子132の起電力である。
【0027】
コントローラ110の最低動作電圧をVL(MIN)、負荷210の最低動作電圧をVM(MIN)とするとき、ユニットセル130は、その起電力VCELLが、以下の関係式を満たすように構成される。
VL(MIN)≦VCELL
VM(MIN)≦2×VCELL
【0028】
たとえばコントローラ110の最低動作電圧VL(MIN)=1.2V、負荷210の最低動作電圧VM(MIN)=2.4Vであるとき、VCELL≧1.2Vとすればよい。エネルギーハーベスト素子132が光発電素子であり、その起電力VCELLが0.4Vである場合、k=3個のエネルギーハーベスト素子132を直接に接続することで、VCELL≧1.2Vを得ることができる。
【0029】
第1電源ライン102は、コントローラ110の電源端子と接続される。第2電源ライン104は、負荷210の電源端子と接続される。接地ライン106は、デバイス200Aの基準となる接地電位(0V)に固定される。
【0030】
第1キャパシタC1は、第1電源ライン102と接地ライン106の間に設けられ、第2キャパシタC2は、第2電源ライン104と接地ライン106の間に設けられる。
【0031】
スイッチ回路140Aは、複数のユニットセル130_1~130_N、第1電源ライン102、第2電源ライン104、接地ライン106と接続される。スイッチ回路140Aは、複数のスイッチSWを含み、第1状態φ1および第2状態φ2が切り替え可能に構成され、コントローラ110によって制御される。
【0032】
第1状態φ1では、複数のユニットセル130_1~130_NのN個すべてが第1電源ライン102と接地ライン106の間に並列に接続される。
【0033】
第2状態φ2では、複数のユニットセルのm個(1≦m<N)が第1電源ライン102と接地ライン106の間に並列に接続され、複数の残りのユニットセルのn個(n=N-m)が、第2電源ライン104と第1電源ライン102の間に接続される。
【0034】
コントローラ110は、第1電源ライン102の電圧VLにもとづいて、第1状態φ1と第2状態φ2を切り替えてもよい。第1電源ライン102の電圧VLは、複数のユニットセル130_1~130_Nの発電量と、コントローラ110の動作電流(電源電流)のバランスによって変化し、発電量に余剰があるときには高く、余剰がないときあるいは不足するときには低くなる。たとえばコントローラ110は、第1電源ライン102の電圧VLと所定のしきい値電圧VTHとの比較結果にもとづき、VL<VTHのとき第1状態φ1を選択し、VL>VTHのとき第2状態φ2を選択してもよい。
【0035】
コントローラ110は、第1電源ライン102の電圧VLおよび第2電源ライン104の電圧VMの両方にもとづいて、スイッチ回路140Aの状態を制御してもよい。
【0036】
あるいは、ユニットセル130の1個当たりが発生する電流量を測定する電流センサを設け、電流量に応じて、第1状態φ1と第2状態φ2を切り替えてもよい。あるいは、コントローラ110は、電圧情報と電流情報の両方にもとづいて、スイッチ回路140Aの状態を制御してもよい。
【0037】
以上がデバイス200Aの構成である。続いてその動作を説明する。
【0038】
図3(a)、(b)は、第1状態φ1および第2状態φ2を示す図である。コントローラ110は、発電量が少ない状況下において、
図3(a)の第1状態φ1を選択する。これにより、全電力をコントローラ110に集中し、コントローラ110のみを確実に動作させることができる。
【0039】
コントローラ110は、発電量に余剰が生ずると、
図3(b)の第2状態φ2を選択する。これにより、コントローラ110の動作を維持しつつ、余剰の電力を負荷210に供給することができる。
【0040】
なおスイッチ回路140Aは、コントローラ110が動作不能である完全停止状態において、第1状態φ1が選択されるように構成される(この状態をφ1’と表記する)。これにより、コントローラ110が動作する前に、ユニットセル130から得られる電力によって、第1キャパシタC1を充電し、蓄電することができる。
【0041】
図4は、デバイス200Aの動作の一例を示すタイムチャートである。I
PVは、ユニットセル130の1個当たりの電流量を示す。時刻t
1より前は、I
PV=0であり、第1電源ライン102の電圧V
Lおよび第2電源ライン104の電圧V
Mは両方0Vである。この状態で、コントローラ110は動作不能であるが、スイッチ回路140Aは第1状態φ1’が選択される。その結果、I
PV×Nの電流量で、第1キャパシタC1が充電され、第1電源ライン102の電圧V
Lが時間とともに上昇していく。時刻t
2に、第1電源ライン102の電圧V
Lが、コントローラ110の最低動作電圧V
L(MIN)を超えると、コントローラ110が動作可能となる。その結果、スイッチ回路140Aが、コントローラ110からの制御によって、第1状態φ1にセットされる。
【0042】
その後、コントローラ110は、ユニットセル130の発電量がさらに増加すると、時刻t3に、スイッチ回路140Aを第2状態φ2に切り替える。その結果、第2キャパシタC2の充電が開始し、第2電源ライン104の電圧VMが時間とともに上昇する。時刻t4に、電圧VMが負荷210の最低動作電圧VM(MIN)を超えると、負荷210が動作可能となる。負荷210がコントローラ110からの制御に応じて動作すると、第2キャパシタC2が放電され、電圧VMが低下する。電圧VMがVM(MIN)を下回る場合には、負荷210は、動作、停止を繰り返す間欠動作をすることとなる。
【0043】
以上がデバイス200Aの動作である。
このデバイス200Aによれば、発電量が少ない状態では、第1状態φ1を選択することにより、N個すべてのユニットセル130の電力をコントローラ110に集中的に供給することで、最低限の動作を確保できる。また発電量に余剰が生じた状況では、第2状態φ2を選択することで、複数のユニットセル130の電力の一部をコントローラ110に供給してその動作を維持しつつ、負荷210にも、最低動作電圧VM(MIN)以上の電源電圧VMを供給でき、負荷210を動作させることができる。
【0044】
第2状態φ2は、mとnの組み合わせが異なる複数の状態(サブステートと称する)を含んでもよい。コントローラ110は、発電量に応じて、複数のサブステートを切り替えてもよい。
【0045】
図5は、N=4の場合のサブステートの一例を説明する図である。この例では、m=3,n=1のサブステートφs1と、m=2,n=2のサブステートφs2と、m=1,n=3のサブステートφs3が選択可能である。コントローラ110は、発電量が大きいほど、mが小さく、nを大きいサブステートを選択してもよい。ここでは3個のサブステートを示すが、それらのうちの2個が選択可能であってもよい。
【0046】
図6は、N=4の場合のスイッチ回路140Aの構成例を示す回路図である。このスイッチ回路140Aは、
図5のφ1,φs1,φs2の3状態が切り替え可能である。
【0047】
ユニットセル130_1,130_2の正極は、すべての状態φ1,φs1、φs2において、第1電源ライン102と接続されるため、スイッチSW1PL,SW2PLは省略することができる。同様に、ユニットセル130_1,130_2の負極は、すべての状態φ1,φs1、φs2において、接地ライン106と接続されるため、スイッチSW1NG,SW2NGも省略することができる。
【0048】
ユニットセル130_3,130_4の正極は、第1電源ライン102または第2電源ライン104と接続される。したがって、ユニットセル130_3の正極は、スイッチSW3PL、SW3PMを介して第1電源ライン102または第2電源ライン104と接続可能となっており、ユニットセル130_4の正極は、スイッチSW4PL、SW4PMを介して第1電源ライン102または第2電源ライン104と接続可能となっている。
【0049】
ユニットセル130_3,130_4の負極は、接地ライン106または第1電源ライン102と接続される。したがって、ユニットセル130_3の負極は、スイッチSW3NG、SW3NLを介して接地ライン106または第1電源ライン102と接続可能となっており、ユニットセル130_4の負極は、スイッチSW4NG、SW4NLを介して接地ライン106または第1電源ライン102と接続可能となっている。
【0050】
ここではN=4の場合のスイッチ回路140Aを示すが、当業者によれば、Nが4より多い場合にも、サポートすべき第1状態φ1および第2状態φ2(サブステート)に応じて、複数のスイッチのレイアウトを設計することができ、そうしたものも本発明の範囲に含まれる。
【0051】
一般化すると、i番目のユニットセル130_iの正極を、第1電源ライン102と接続可能としたい場合、ユニットセル130_iの正極と第1電源ライン102の間に、スイッチSWiPLを設ければよく、第2電源ライン104と接続可能としたい場合、ユニットセル130_iの正極と第2電源ライン104の間に、スイッチSWiPMを設ければよい。
【0052】
また、i番目のユニットセル130_iの負極を、接地ライン106と接続可能としたい場合、ユニットセル130_iの負極と接地ライン106の間に、スイッチSWiNGを設ければよく、第1電源ライン102と接続したい場合、ユニットセル130_iの負極と第1電源ライン102の間に、スイッチSWiNLを設ければよい。
【0053】
図7は、ユニットセル130_iの負極側のスイッチSWiN#(#=G,L)の構成例を示す回路図である。負極と接地ライン106との間に設けられるスイッチSWiNGは、NMOSトランジスタを含む片方向スイッチで構成することができる。負極と第1電源ライン102との間に設けられるスイッチSWiNLは、逆直列接続された2個のPMOSトランジスタを含む双方向スイッチで構成することができる。
【0054】
スイッチSWiNGおよびSWiNLの状態は、コントローラ110もしくは図示しないデコーダが生成する制御信号CNTiNに応じて相補的に制御される。上述のように、コントローラ110が動作不能な状態、言い換えると、制御信号CNTiNがローのときに、スイッチ回路140Aが第1状態φ1’となるように、言い換えるとスイッチSWiNGが優先してオンするように構成することが望ましい。そこで、制御信号CNTiNを反転するインバータINV1を挿入し、インバータINV1の出力によって、スイッチSWiNGおよびSWiNLのゲート信号Vgを生成してもよい。なお、インバータINV1の電源端子には、複数の電源ラインに発生する電圧(VL,VM)のうち最大電圧を供給するとよい。
【0055】
制御信号CNTiNがロー、すなわちゲート信号Vgがハイのとき、NMOSトランジスタで構成されるスイッチSWiNGはオンとなり、PMOSトランジスタで構成されるスイッチSWiNLはオフとなる。反対に、制御信号CNTiNがハイ、すなわちゲート信号Vgがローのとき、NMOSトランジスタで構成されるスイッチSWiNGはオフとなり、PMOSトランジスタで構成されるスイッチSWiNLはオンとなる。
【0056】
図8は、ユニットセル130_iの正極側のスイッチSWiP#(#=L,M)の構成例を示す回路図である。正極のスイッチSWiPL、SWiPMはいずれも、逆直列接続された2個のPMOSトランジスタを含む双方向スイッチで構成することができる。
【0057】
スイッチSWiPLおよびSWiPMの状態は、コントローラ110もしくは図示しないデコーダが生成する制御信号CNTiPに応じて相補的に制御される。上述のように、コントローラ110が動作不能な状態、言い換えると、制御信号CNTiPがローのときに、スイッチ回路140Aが第1状態φ1’となるように、言い換えるとスイッチSWiPLが優先してオンするように構成することが望ましい。この例では2個のインバータINV1,INV2によって、制御信号CNTiPが反転され、スイッチSWiPLおよびSWiPMそれぞれのゲート信号VgL,VgMが生成される。インバータINV1,INV2の電源端子には、複数の電源ラインに発生する電圧(VL,VM)のうち最大電圧が供給される。
【0058】
制御信号CNTiPがローのとき、ゲート信号VgLがロー、VgMがハイであるから、スイッチSWiPLはオンとなり、スイッチSWiPMはオフとなる。反対に制御信号CNTiPがハイのとき、ゲート信号VgLがハイ、VgMがローであるから、スイッチSWiPLはオフとなり、スイッチSWiPMはオンとなる。
【0059】
なお、スイッチの構成はここで例示したものに限定されない。たとえば、2個のNMOSトランジスタを直列接続してなる双方向スイッチを用いてもよい。この場合、ゲート信号の論理レベルを反転すればよい。
【0060】
(実施形態2)
図9は、実施形態2に係る発電装置100Bを備えるデバイス200Bのブロック図である。デバイス200Bは、
図2のデバイス200Aに加えて二次電池220を備える。二次電池220は、ユニットセル130_1~130_Nが発生した余剰電力を蓄えておき、ユニットセル130_1~130_Nが発電できない状況において、コントローラ110や負荷210に電力を供給する。
【0061】
スイッチ回路140Bは、第3電源ライン108を介して二次電池220と接続される。第3電源ライン108に生ずる電圧をVHと表記する。
【0062】
スイッチ回路140Bは、第1状態φ1および第2状態φ2に加えて第3状態φ3が選択可能に構成される。第3状態φ3では、複数のユニットセル130_1~130_Nのm個(m≧1)が第1電源ライン102と接地ライン106の間に並列に接続され、複数のユニットセル130_1~130_Nのn個(n≧1)が、第2電源ライン104と第1電源ライン102の間に接続され、複数のユニットセル130_1~130_Nのl個(ただし、m+n+l=N)が、第3電源ライン108と第2電源ライン104の間に接続される。
【0063】
コントローラ110は、第1電源ライン102の電圧VL、第2電源ライン104の電圧VMにもとづいて、スイッチ回路140Bの状態を制御してもよい。あるいはコントローラ110は、3つの電圧VL,VM,VHにもとづいて、スイッチ回路140Bの状態を制御してもよい。
【0064】
あるいは、ユニットセル130の1個当たりが発生する電流量を測定する電流センサを設け、電流量に応じて、スイッチ回路140Bの状態を制御してもよい。あるいは、コントローラ110は、電圧情報と電流情報の両方にもとづいて、スイッチ回路140Bの状態を制御してもよい。
【0065】
図10(a)~(c)は、第1状態φ1~第3状態φ3を示す図である。第1状態φ1および第2状態φ2は、
図3(a)、(b)と同様である。
図10(c)の第3状態φ3では、コントローラ110、負荷210に電源電圧V
L,V
Mを供給しつつ、第3電源ライン108に電源電圧V
H=3×V
CELLを発生させ、二次電池220を充電することが可能となる。二次電池220に蓄えた電力は、ユニットセル130の発電力が少ないあるいは0である状況下において、コントローラ110や負荷210に供給することができる。
【0066】
なお、実施形態2におけるスイッチ回路140Bも、
図6~
図9を参照して説明したのと同様の手法によって設計することができる。
【0067】
続いてデバイス200の用途を説明する。
図11は、デバイス200の一例である生体埋め込みデバイスを示す図である。このデバイス200は、動物の頭部の皮下に埋め込まれる。ユニットセル130は、皮膚を透過する波長(すなわち近赤外)に感度を有する光発電素子を用いるとよい。負荷210は、青色や赤色などの半導体発光素子(発光ダイオードやレーザダイオード)とその駆動回路を含みうる。生体の外部の光源300から赤外光IRを照射すると、ユニットセル130が発電する。はじめは第1状態φ1が選択され、コントローラ110が動作し、第2状態φ2に切り替わると、負荷210である発光素子が発光し、脳302に光刺激を与える。
【0068】
なおデバイス200の用途はこれに限定されず、センサデバイスやIoTデバイスなど、幅広い用途に用いることができる。
【符号の説明】
【0069】
100 発電装置
102 第1電源ライン
104 第2電源ライン
106 接地ライン
108 第3電源ライン
110 コントローラ
130 ユニットセル
132 エネルギーハーベスト素子
140 スイッチ回路
C1 第1キャパシタ
C2 第2キャパシタ
200 デバイス
210 負荷
220 二次電池