(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】薬剤判別ソフトウェア及び薬剤判別装置
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
A61J3/00 310K
(21)【出願番号】P 2020125501
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000151472
【氏名又は名称】株式会社トーショー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【氏名又は名称】工藤 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100204456
【氏名又は名称】調 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】大村 義人
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-076787(JP,A)
【文献】国際公開第2017/183533(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つ以上の薬剤を含む領域を撮影するステップと、
第1表示部に、前記薬剤を含む領域を撮影した画像を表示するステップと、
前記領域内に表示された薬剤のうち、選択された薬剤を第2表示部に表示するステップと、
判別の結果、前記選択された薬剤の候補となる薬剤の情報を、第3表示部に表示するステップと、
前記判別の結果を
操作者が確定する確定ステップと、
をコンピューターに行わせることで薬剤の判別を行う薬剤判別ソフトウェアであって、
前記判別が行われた前記第1表示部に表示された全ての薬剤の候補を
複数の群として管理可能であって、
前記コンピューターは、前記第1表示部に表示された薬剤を、予め前記薬剤とは重複しない位置に設けられた画像認識可能な複数の識別子に基づいて、前記識別子と紐づいた前記群に属する薬剤として認識し、
それぞれの前記群において、
前記操作者の指示に基づいて前記撮影するステップを実行する第1検出ボタンと、第2検出ボタンと、を有し、
前記第1検出ボタンは、押圧されることで前記群として管理された前記薬剤の候補及び前記第1表示部に表示される画像を更新し、
前記第2検出ボタンは、押圧されることで前記群として管理された前記薬剤の候補を保存するとともに、新たに撮影された前記第1表示部に表示される画像に含まれる薬剤を新たな群として登録することを特徴とする薬剤判別ソフトウェア。
【請求項2】
請求項1に記載の薬剤判別ソフトウェアであって、
前記第1検出ボタンは、前記確定ステップによって前記領域内に表示された薬剤が全て確定される前において操作可能であって、
前記第2検出ボタンは、前記確定ステップによって前記領域内に表示された薬剤が全て確定された後において操作可能となることを特徴とする薬剤判別ソフトウェア。
【請求項3】
請求項1または2に記載の薬剤判別ソフトウェアであって、
前記薬剤の候補を文字入力によって検索する文字入力部を備えることを特徴とする薬剤判別ソフトウェア。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1つに記載の薬剤判別ソフトウェアであって、
前記薬剤の情報は、当該薬剤の付加情報を含んだデータベース上に記憶され、
前記薬剤の候補に前記付加情報が存在する場合には、
前記第
3表示部に当該付加情報を表示することを特徴とする薬剤判別ソフトウェア。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1つに記載の薬剤判別ソフトウェアであって、
前記第1表示部の前記領域内に表示された薬剤のうち、最も数の多い種類の薬剤が自動
的に選択されて前記第2表示部に表示されることを特徴とする薬剤判別ソフトウェア。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1つに記載の薬剤判別ソフトウェアであって、
当該薬剤判別ソフトウェアは、前記群ごとに前記第1表示部および/または前記第3表示部の表示を切替可能な切替手段を備えることを特徴とする薬剤判別ソフトウェア。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1つに記載の薬剤判別ソフトウェアを用いて薬剤の判別を行う薬剤判別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤判別ソフトウェア及び薬剤判別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医師は、患者が複数の医療機関で受診している場合等に、当該患者が他の医療機関で処方された薬を把握しておく必要がある。このとき、患者に他の医療機関で処方された薬を持って来てもらうことがよくある。
薬剤の判別のためには、薬の外装に記された薬の識別コードを用いて判別することが一般的に行われているが、印刷されていない場合や、薬が裸で持ち込まれる場合も考えられる。
このような場合には、薬剤師が、薬剤の大きさ、形状、色等を手掛かりに、処方された未知の薬剤を手作業で特定する鑑別作業を行っているのが現状である。
かかる鑑別作業における負担を軽減するために、薬剤の鑑別を自動で行う薬剤鑑別装置が提案されている(特許文献1~3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-76787号公報
【文献】WO2017/183533号公報
【文献】特許第5916032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、薬剤鑑別装置を用いたとしても、最終的には操作者の目視判断や操作に基づいて鑑別を行うことを排除することは難しい。そのため操作者による誤操作等を生じ難いシステムの開発が求められている。
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、簡易で誤操作を生じ難い新規な薬剤判別ソフトウェアの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、少なくとも1つ以上の薬剤を含む領域を撮影するステップと、第1表示部に、前記薬剤を含む領域を撮影した画像を表示するステップと、前記領域内に表示された薬剤のうち、選択された薬剤を第2表示部に表示するステップと、判別の結果、前記選択された薬剤の候補となる薬剤の情報を、第3表示部に表示するステップと、前記判別の結果を操作者が確定する確定ステップと、をコンピューターに行わせることで薬剤の判別を行う薬剤判別ソフトウェアであって、前記判別が行われた前記第1表示部に表示された全ての薬剤の候補を複数の群として管理可能であって、前記コンピューターは、前記第1表示部に表示された薬剤を、予め前記薬剤とは重複しない位置に設けられた画像認識可能な複数の識別子に基づいて、前記識別子と紐づいた前記群に属する薬剤として認識し、それぞれの前記群において、前記操作者の指示に基づいて前記撮影するステップを実行する第1検出ボタンと、第2検出ボタンと、を有し、前記第1検出ボタンは、押圧されることで前記群として管理された前記薬剤の候補及び前記第1表示部に表示される画像を更新し、前記第2検出ボタンは、押圧されることで前記群として管理された前記薬剤の候補を保存するとともに、新たに撮影された前記第1表示部に表示される画像に含まれる薬剤を新たな群として登録することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、簡易で誤操作を生じ難い薬剤判別ソフトウェアを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】薬剤判別装置のユーザーインターフェースの画面構成例を示す図である。
【
図4】薬剤判別装置の鑑別時の画面構成例を示す図である。
【
図5】薬剤判別装置による鑑別動作の一例を示す図である。
【
図6】薬剤群においてやり直しを行う前の表示例を示す図である。
【
図7】
図6の再配置を行った場合の表示例を示す図である。
【
図8】
図7から第2検出ボタンを押下してタブが追加された場合の表示例を示す図である。
【
図9】薬剤判別装置による鑑別動作の表示例を示す図である。
【
図10】薬剤検索表示を行う際の表示の一例を示す図である。
【
図11】薬剤判別装置による同一薬チェック動作の一例を示す図である。
【
図12】薬剤判別装置のユーザーインターフェースのトップ画面の例を示す図である。
【
図13】薬剤判別装置のユーザーインターフェースの画面構成例を示す図である。
【
図14】
図10から異物となる薬剤を取り除いた時の画面構成例を示す図である。
【
図15】同一薬チェック操作における報告書作成画面の一例を示す図である。
【
図16】薬剤判別装置に用いられる薬剤トレイの他の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明に用いられる薬剤判別ソフトウェアが動作する制御部90を備えた薬剤判別装置100の基本的な構成を示している。
【0009】
薬剤判別装置100は、本実施形態においては、薬剤1を載置される薬剤トレイ10と、薬剤1を含む領域を撮影するための撮像部20と、薬剤トレイ10に対して光を投射する照明部30と、薬剤判別ソフトウェアを動作させるためのコンピューターたる制御部90と、を有している。制御部90は、
図1に示すように、データベース95、表示装置たるパソコン101とネットワークによって接続されている。
【0010】
薬剤1は、本実施形態においては、特に錠剤について説明するが、かかる構成に限定されるものではなく、撮像部20によって撮影された画像によって判別可能な薬剤であれば良い。例えば薬剤1は円盤状、円柱状、楕円球状等様々な形状であっても良い。
【0011】
薬剤トレイ10は、透明な底面を備えたシャーレ等の容器で構成された薬剤載置部である。薬剤トレイ10は、かかる構成に限定されるものではなく、薬剤1を撮像部20を用いて撮影可能な構成であれば良い。本実施形態では特に撮像部20は薬剤トレイ10の上下方向から薬剤1の画像を撮影するために、透明な底面を備えたシャーレを用いることが望ましい。
【0012】
撮像部20は、本実施形態においては、薬剤トレイ10の上方に取り付けられて、薬剤トレイ10上に載置された薬剤1を含む領域を撮影する第1カメラ21と、薬剤トレイ10の下方に取り付けられて、薬剤トレイ10上に載置された薬剤1を含む領域を撮影する第2カメラ22と、を有している。
このように、薬剤トレイ10の上下方向から薬剤1を撮影することにより、薬剤1の載置されるときの方向によらず、表面、裏面の両面の2枚の撮影画像Qを確保することができる。
以降の説明において、特に第1カメラ21によって撮影された画像と第2カメラ22によって撮影された画像とを区別する必要があるときには、
図2に示したように、第1カメラ21側を撮影画像Q1、第2カメラ22側を撮影画像Q2として表記する。また、撮影画像Q1、Q2の少なくとも何れか一方には、
図3に示すように、薬剤1の刻印が撮影される。
【0013】
照明部30は、第1カメラ21側に配置された第1照明部31と、第2カメラ22側に配置された第2照明部32と、を有している。
第1照明部31は、本実施形態では第1カメラ21の周囲にリング状に配置されて上方から光を薬剤トレイ10に向けて照射する正反射照明部31aと、薬剤トレイ10に斜めから光を照射する斜入射照明部31bと、を備えた照明装置である。
このように、入射角を変えた2種類の正反射照明部31aと斜入射照明部31bとを備えることにより、第1カメラ21には薬剤1の上面側の画像が撮影画像Qとして撮影されるとともに、斜入射照明部31bからの光の拡散光が第1カメラ21に入射することにより刻印がより判別しやすい。
かかる斜入射照明部31bを有することで、薬剤1の表面に段差を含む刻印が刻まれているときには、斜入射照明部31bからの投射光が拡散反射されてその一部が第1カメラ21に入射するため、薬剤1の表面に形成された段差や傷が判別しやすい。
なお、第1照明部31、第2照明部32はそれぞれ薬剤トレイ10の表面側と裏面側とに配置されたこと以外は同一の構成であるため、第2照明部32の詳細な構成については説明を適宜省略する。
【0014】
制御部90は、CPU(Central Processing Unit)、メインメモリ(MEM-P)、ノースブリッジ(NB)、サウスブリッジ(SB)等を有する計算機である。
制御部90はまた、AGP(Accelerated Graphics Port)バス、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、ローカルメモリ(MEM-C)を有している。
制御部90はまた、HD(Hard Disk)、HDD(Hard Disk Drive)、PCIバス、ネットワークI/Fを有している。
制御部90は、本実施形態では薬剤判別装置100内部に設けられた情報処理部として説明するが、薬剤判別ソフトウェアを動作させ得るのであれば、別体として設けた情報処理端末であっても良い。また、
図1に示したパソコン101のように表示装置側を制御端末としても良い。
このように制御部90を別体として設けた場合には、情報処理端末である制御部90と、薬剤判別装置100との間をネットワークで接続することが好ましい。
【0015】
薬剤判別装置100に薬剤1を投入して、薬剤1を判別するまでの動作について、
図2~
図5を用いて説明する。
図5は本実施形態における薬剤判別装置100の動作の一例を示すフローチャートである。
まず、薬剤判別装置100から薬剤トレイ10を取り出し、複数の薬剤1を薬剤トレイ10に投入した上で、薬剤トレイ10を薬剤判別装置100に設置する。
撮像部20は、薬剤トレイ10に載置された薬剤1を含む領域を撮影して、撮影画像Qを取得する(撮影ステップS101)。
【0016】
撮像部20によって撮影された画像は、撮影画像Qとして制御部90に送信される。本実施形態では
図2に示すように、撮影画像Q1、Q2として第1表示部91に表示される(第1表示ステップS102)。
なお、
図2は制御部90によって実行されるプログラムのユーザーインターフェース(UI)を示す図であり、制御部90に接続された任意のディスプレイ等の表示装置に表示される。
第1表示ステップにおいて第1表示部91に表示される撮影画像Qは、第1カメラ21によって撮影された撮影画像Q1であっても、第2カメラ22によって撮影された撮影画像Q2であっても、あるいは
図2のように両方表示するとしても良い。しかしながら、操作者が薬剤トレイ10を薬剤判別装置100に設置する際に見ているのは大抵は上部から見下ろした態様である。従って第1表示部91に表示される画像は少なくとも撮影画像Q1を含むことが望ましい。かかる構成とすれば、撮影画像Q1が操作者自身の設置した薬剤トレイ10と同一かどうかの確認が容易にできる。
【0017】
制御部90は、第1表示ステップにおいて表示した撮影画像Qの画像解析を行い、複数の薬剤1のそれぞれの形状と、刻印情報とを読み取る(画像解析ステップS103)。
画像解析ステップにおいて読み取られる刻印情報とは、例えば
図3にA2と示すような薬剤1表面に刻まれた文字情報であったり、画像情報であったりする。
制御部90は、かかる刻印情報を、制御部90内部あるいは外部に保持されたデータベース95に問い合わせ、薬剤1の種類や名称等を含む薬剤情報として受け取ると、候補となる薬剤情報を第3表示部93へと検出結果として表示する(候補表示ステップS104)。
このとき、候補となる薬剤情報は複数並べて第3表示部93に表示されていても良い。
また、撮影画像Qにおいてそれぞれの薬剤1について符号を割り振り、それぞれの符号に対応する候補薬情報を並べて表示しても良い。
【0018】
次に、操作者は、第1表示部91において撮影画像Q内の任意の点をポインティングデバイス等を用いて選択することによって、薬剤トレイ10に配置された複数の薬剤の中から、任意の薬剤1を選択する。または、第3表示部93に検出結果として表示された候補薬情報から任意の薬剤1を選択してもよい。
第1表示部91で選択された薬剤1は、
図2の左下に示すように、第2表示部92に拡大されて薬剤1のみが映った態様で表示される。
このとき第2表示部92に表示される画像は、撮影画像Q1及び撮影画像Q2からそれぞれ薬剤1が切り出された拡大図である。
第2表示部92には、画像解析ステップにおいて解析された薬剤1の大きさ・形状に関する情報が、例えば
図2の撮影画像Q1における長径9.1、短径5.2のように記載されている。かかる薬剤1の形状情報は、撮影画像Q1から読み取ったものと撮影画像Q2から読み取ったものとでは同一の薬剤1の形状情報であっても異なる場合が有り得る。
また、薬剤1が第1表示部91または第3表示部93において選択された状態において、鑑定作業部94には、候補表示ステップにおいて抽出された複数の検出結果の中から、選択された薬剤1に対応する候補薬1’の参照画像Rが表示されている。なお、ここで参照画像Rは、例えばデータベース95に保持された候補薬1’の薬剤情報が複数の参照画像Rとして3つの参照画像(例えばR1、R2、R3)を保持しているときには、かかる参照画像R1、R2、R3の中から最も薬剤1に近いと判定されたものを選択して表示可能とすることが好ましい。
【0019】
さらに、参照画像R1~R3を操作者が選択可能なように、鑑定作業部94には矢印ボタン等の参照画像選択部941が備えられている。
なお、鑑定作業部94には他にも、文字入力によって刻印情報から候補薬を検索するための候補薬検索部942と、候補薬が複数発見された場合にプルダウン式に候補薬を選択可能な候補薬選択部943と、を備えている。
鑑定作業部94は、本実施形態では候補薬検索部942または候補薬選択部943を用いて新たに更新された候補薬2’の参照画像Rを、既に選択された候補薬1’の参照画像Rの隣に表示可能となっている。
【0020】
操作者は、鑑定作業部94に表示された参照画像Rと、第2表示部92に表示された拡大画像とを比較して、薬剤1が候補薬1’に相違ないかどうかをさらに鑑定する。具体的には操作者は、薬剤1が候補薬1’である旨を確認した後、確定ボタンを押下することで、かかる薬剤1が候補薬1’であることを鑑別する(鑑別ステップS105)。
また、鑑別ステップにおいて、薬剤1と候補薬1’とが異なると判断した場合には、候補薬検索部942や候補薬選択部943を用いて、異なる候補薬2’やその他の候補薬を呼び出して、再度薬剤1と同一かどうかの鑑別を行う。
【0021】
鑑別ステップにおいて、確定ボタンが押下されると、第2表示部92において検出されている薬剤1について確定した旨が表示される(確定ステップS106)。
操作者は、第1表示部91に表示されている全ての薬剤1について、上述の操作を繰り返し行うことで、薬剤トレイ10に載置された全ての薬剤1について鑑別作業を行うことができる。
【0022】
薬剤トレイ10に載置された全ての薬剤1について鑑別作業が終了した状態を示すのが
図4の模式図である。
図4から明らかなように、鑑別作業が終了した段階では、第2表示部92に記載された全ての候補薬について、確定ボタンが押されたことを示す「確定」表示がついている。
なお、当然ながらかかる「確定」表示は、この構成に限定されるものではなく、該当の薬剤について鑑別作業が終了していることが操作者にとって明らかな表示であれば良く、例えば〇や済等の様々な表示形態をとっても構わない。
【0023】
さて、かかる鑑別操作においては、患者から提供された薬剤をまとめて薬剤トレイ10に載置し、それぞれの薬剤を鑑別する用途として行われることが多い。
従って、鑑別操作を行う際には、患者の持ち込んだ複数の薬剤と、後述するように薬剤判別装置100によって出力される鑑別報告書とが1:1で対応することが望ましい。
しかしながら、例えば画像認識の問題で薬剤トレイ10上に載置されているにも関わらず、読み取ることができなかった錠剤があった場合や、薬剤トレイ10に入れ忘れた錠剤があった場合等には、撮影画像Qをもう一度撮影しなおす必要がある。
他方、持ち込んだ錠剤が、1回では入りきらない量であり複数回に分ける必要がある場合には、1回でなく複数回の撮影を行い鑑別を行う必要が生じる。
これら2つの操作は、何れも既に
図5を用いて述べたような処理を複数回行うことになるのではあるが、前者は撮影のやり直しであって、撮影画像Qを新たなものに更新する操作であるのに対し、後者は複数回撮影された撮影画像Qのそれぞれについて鑑別操作を行う等、細かな部分が異なっている。
さらに、患者が(例えば朝、昼、夕の食後等の)用法毎に異なる錠剤を持ち込んだ場合には、これらの用法に合わせた鑑別を簡易な操作で行えるようにすることが最も望ましい。
しかしながら、従来の薬剤判別装置においては、このような操作が同じであるが用いられる状況が異なる場合には、操作者の判断によって操作を行うしかなく、操作者による誤操作等を生じ難いシステムの開発が求められていた。
【0024】
本発明は、かかる問題を解決すべく、上述した2つの操作を異なる操作であると容易に判別がつくように、薬剤トレイ10に投入された薬剤の組み合わせをタブ群として管理することで、管理を容易にして薬剤判別ソフトウェアの利便性を高めることを目的とする。
【0025】
そこで本実施形態では、
図6に示したように、制御部90は、撮影画像Qを取得する際に、薬剤トレイ10に載置された1まとまりの薬剤A群(例えば
図6における薬剤A1~A6)をユーザーインターフェース上では1つのタブAとなるように管理する。また、
図6には特に薬剤A群を示す名称としてタブAをタブ群911の中に表記している。
この点についてさらに詳しく説明する。
図4に示した表示画面においては、「検出」と表示された第1検出ボタン98と、「追加検出」と表示された第2検出ボタン99と、を有している。
図5に示した確定ステップS106において、確定ボタンが全ての薬剤について押下されるまで、操作者は第1検出ボタン98を押下可能である。
また、
図5に示した確定ステップS106において、確定ボタンが全ての薬剤について押下された後において、第2検出ボタン99を押下可能である。
【0026】
確定ステップS106において、操作者は、薬剤トレイ10に載置された薬剤に過不足がないかを第1表示部91を視認することで確認する(ステップS107)。このとき、例えば
図6に薬剤A6として示したように、2つの薬剤が重なっているような場合は、画像認識が上手くいかず、正しく2つの薬剤であると認識することが難しいため、1つの薬剤A6として検知されてしまう。第1表示部91を見てこのような重なりを確認した場合には、操作者は、薬剤トレイ10を薬剤判別装置100から取り出し、薬剤A6、薬剤A7を載置しなおして再度薬剤トレイ10を薬剤判別装置100に取り付ける(ステップS108)。あるいは、薬剤トレイ10に任意の手段で振動を与えて薬剤をばらけさせる方法を用いても良い。
ステップS108で薬剤A6と薬剤A7の重なりが解消された後、操作者は、「検出」ボタンすなわち第1検出ボタン98を押下し、第1表示部91に表示される撮影画像Qを更新して取得する(ステップS109)。
ステップS109において、制御部90は、第1検出ボタン98が押下されたことから、かかる薬剤トレイ10の撮影画像Qを薬剤A群のものであると判断して、
図7に示したようにタブ群911はタブAの表示のままで第1表示部91に表示される撮影画像Qを更新する。
操作者は、ステップS109において新たに取得された撮影画像Qを視認によって確認して、引き続き再度の鑑定作業を行う。
【0027】
ステップS107において、操作者が、全て確定して薬剤A群についての鑑別作業を終えたときには、「報告書作成」ボタン96とともに、第2検出ボタン99が押下可能になる。
同時に、全ての薬剤が確定された段階で、第1検出ボタン98は押下することができなくなることが望ましい。
このように、第1検出ボタン98の押下可能なタイミングと、第2検出ボタン99の押下可能なタイミングとを異ならせることで、操作者が薬剤A群の検知不良によって再検知を行うのか、薬剤A群とは異なる薬剤B群の検知を行うのかを明示的に分離することができるので、操作ミスなどが生じ難い。
【0028】
操作者は、薬剤トレイ10に載置された薬剤について鑑定を終えると、その他の薬剤群についての鑑定があるかどうかを選択する(ステップS110)。
操作者は、薬剤A群の鑑定報告書を作成したい場合には「報告書作成」ボタン96を押下する(ステップS201)。しかしながら、例えば用法の異なる薬剤群Bが別にある場合や、薬剤トレイ10に入りきらなかった場合等、薬剤A群に加えて他の薬剤についても鑑定作業を行いたいような場合には、操作者は、ステップS108と同様に薬剤トレイ10を取り出して、新たな薬剤B群(
図8で表示された薬剤B1~B6とする)を薬剤トレイ10に投入し、第2検出ボタン99を押下する(ステップS111)。
ステップS111において第2検出ボタン99が押下されると、制御部90は、
図7に示すように、新規タブとして薬剤トレイ10に載置された薬剤群を1まとまりの薬剤A群として異なるタブに保存した上で、新規なタブに
図8に示す薬剤B群として第1表示部91に新たな撮影画像Q1,Q2を表示する。
第2検出ボタン99は、押下されることで薬剤A群として管理された薬剤の候補薬を保存するとともに、新たに撮影された撮影画像Qを新たな薬剤B群としてユーザーインターフェース上のタブ群911に表示する。
【0029】
さて、このように薬剤A群と薬剤B群とを区別された1まとまりの薬剤群として扱う場合としては、例えば朝、昼、夕、就寝前の用法別に1包ごとに分包された薬剤等が考えられる。
かかる用法の異なる薬剤を同時に鑑別する場合には、薬剤判別装置100が投入された薬剤群がどの用法の薬剤であるかを認識可能にすることが好ましい。
具体的には、
図6、7、8に示すように薬剤トレイ10として用いられるシャーレの側壁の上面あるいは下面等の薬剤1と重ならない位置に、カラーマーカーや2次元コード、バーコードその他の識別子11を設けることが望ましい。識別子11には例えば色分けによって、黄色=朝、緑=昼、赤=夕、青=就寝前、等の薬剤の用法についての情報が紐づけられている。特に
図6、
図7においては黄色の識別子11を斜線で、
図8においては緑色の識別子11を交差線で示した。
なお、本実施形態では説明を簡単にするために色分けによる用法の紐づけを行ったが、かかる構成に限定されるものではなく、任意の用法について薬剤判別装置100に予め記憶しておくとしても良い。
【0030】
上述のような識別子11を用いた場合には、制御部90は、識別子11の色に基づいて、撮影画像Qに写っている薬剤B群を、識別子11に対応した用法の薬剤として記憶する。
すなわち、制御部90は、
図8においては緑色を表す交差線で示された識別子11によって、薬剤B群は昼に服用する薬剤群であると認識する。また、
図6、
図7においては黄色を表す斜線で示された識別子11に基づいて、薬剤A群を朝に服用する薬剤群であると認識する。
その際、制御部90は、第1表示部91における撮影画像Q1、Q2の識別子11に対応する領域を色分けて図示しても良い。
【0031】
薬剤トレイ10は、薬剤を入れる容量確保のために
図6~
図8等に示すように1つの薬剤トレイに対して1つの識別子11を有するとしても良いし、
図16に参考図として示すように、薬剤トレイ10にそれぞれ黄色、緑、赤、青に対応する複数の識別子11y、11g、11r、11bと、各識別子11y、11g、11r、11bの領域を区別するための仕切り12とを設けても良い。
なお、
図16においては説明のため、仕切り12で区切られたそれぞれの区域について、識別子11y、11g、11r、11bの各色に対応した塗りつぶしによって制御部90によって認識される各領域を表現しているが、実際には透明なシャーレを透明もしくは半透明もしくは不透明な仕切り12によって区切られた形態である。制御部90は、単色の識別子11を備えたシャーレを用いたときと同様に、撮影画像Q1、Q2に対応する各領域について各識別子11y、11g、11r、11bの各色で色分けて図示しても良い。
図16に示すように複数の識別子11y、11g、11r、11bと仕切り12とを設けることとすれば、薬剤トレイ10の1回の取付け及び鑑別操作によって、任意の複数の用法(例えば朝、昼、夕、就寝前)の薬剤を同時に薬剤A群、薬剤B群として認識することができる。
例えば制御部90は、撮影ステップS101やステップS111において第2検出ボタン99が押下され撮影画像Qが取得された時に、複数の識別子11y、11g、11r、11bが撮影画像Q中にあれば、仕切り12に切り分けられて識別子11yを有する区域に載置された薬剤について、朝に服用される薬剤A群として認識し、タブAの第1表示部91及び第3表示部93に表示するとともに、仕切り12に切り分けられて識別子11gを有する区域に載置された薬剤について、昼に服用される薬剤B群として認識し、タブBの第1表示部91及び第3表示部93に表示する。さらに、かかるタブA、タブBをタブ群911の中に表示する。
【0032】
なお、本実施形態においては、タブ群911は第1表示部91の近傍に配置され、タブ群911の該当するタブ(例えばタブA)を押下することで、第1表示部91及び第3表示部93の表示が、タブ群に対応する薬剤A群の表示へと切り替わる。
このように、タブ群911は、本実施形態において、第1表示部91及び第3表示部93の表示を制御部90によって管理された薬剤群毎の表示に切り替える切替手段としての機能を有している。
なお、本実施形態においては第1表示部91の近傍にあるとしたが、第3表示部93の近傍にあっても良いし、独立して配置されていても良い。
【0033】
このように、タブ群911は、判別が行われた第1表示部91に表示された全ての薬剤A1~A7の候補を群として管理可能であるとともに、タブ群911の押下によって第1表示部91及び/または第3表示部93に表示される薬剤群を切り替えることができる。
【0034】
図8にも示すように、新たに設けられたタブも、
図6に示したのと同様の画面構成を備えたユーザーインターフェースである。
なお、
図6~
図8において説明の簡素化のために
図2、
図4で示された構成については同一の番号を付して説明を適宜省略する。また
図8の第2表示部92には薬剤B5が選択された状態を示している。
操作者は、ステップS111で作成された新たなタブ及び薬剤B群についても同様に、ステップS101からの鑑別作業を順次行う。なお、このときステップS101で撮影された撮影画像Qは、タブ群911のうち操作者が現在使用しているタブ(例えば
図8ならばタブB)の第1表示部91に表示される。
なお、薬剤B群に加えて新たな薬剤C群についての鑑別作業を行う場合には、再度ステップS110において第2検出ボタン99を押下することで、薬剤C群についての新たなタブが生成される。
【0035】
本発明の実施形態では、制御部90は、少なくとも1つ以上の薬剤を含む領域を撮影するステップS101と、第1表示部91に、薬剤を含む領域を撮影した画像を表示するステップS102と、領域内に表示された薬剤のうち、選択された薬剤を第2表示部92に表示するステップと、判別の結果、選択された薬剤の候補となる薬剤の情報を、第3表示部に表示するステップS104と、判別の結果を確定する確定ステップS106と、をコンピューターに行わせることで薬剤の判別を行う薬剤判別ソフトウェアを備えている。
制御部90は、判別が行われた第1表示部91に表示された全ての薬剤の候補を少なくとも1つ以上の群911として管理可能であって、操作者の指示に基づいて撮影するステップを実行する第1検出ボタン98と、第2検出ボタン99と、を有している。
第1検出ボタン98は、押圧されることでタブ群911として管理された薬剤の候補及び第1表示部91に表示される画像を更新し、第2検出ボタン99は、押圧されることでタブ群911として管理された薬剤の候補を保存するとともに、新たに撮影された第1表示部91に表示される撮影画像Qに含まれる薬剤を新たな群として第1表示部91及び/または第3表示部93に登録することを特徴とする。
かかる構成によれば、第1検出ボタン98と第2検出ボタン99との押し分けによって、新規タブを作成するか既存タブの更新を行うのかを選択的に実行することができるので、簡易で誤操作を生じ難い。
【0036】
また本実施形態では、第1検出ボタン98は、確定ステップS107によって領域内に表示された薬剤が全て確定される前において操作可能であって、第2検出ボタン99は、確定ステップS107によって領域内に表示された薬剤が全て確定された後において操作可能となることを特徴とする。
かかる構成によれば、第1検出ボタン98と第2検出ボタン99との押し分けが、確定ステップS107においてどのような操作を行ったかによって操作できるボタンが異なるため、より簡易で誤操作を生じ難い構成とすることができる。
【0037】
また本実施形態では、制御部90は、薬剤の候補を文字入力によって検索する文字入力部942を備える。
かかる構成によれば、拡大した撮影画像Qの刻印情報に基づいて薬剤の検索ができるので、より高速に鑑定操作を行うことができる。
【0038】
さて、ステップS201において全ての候補薬について確定された状態で、「報告書作成」ボタン96を押下すると、画面が
図9に示すように鑑別報告書作成画面へと遷移する(ステップS201)。なお、「報告書作成」ボタン96は、全てのタブにおいて同様の場所に配置されており、それぞれのタブに保存された薬剤群の撮影画像Qと対応した報告書を作成することが可能である。また、特に複数のタブを有している場合には、本実施形態においては「報告書作成」ボタン96は、各タブの薬剤群の全てが確定状態であることを条件として押下可能であるように設定されている。
鑑別報告書作成画面では、
図4、
図6、
図7、
図8等において鑑別作業が終了した薬剤1の薬剤情報がそれぞれ並んで表示された報告書内容表示部201と、報告書内容表示部201において選択された薬剤1の薬剤情報が編集可能に複製される報告書内容編集部202と、が表示されている。
また、鑑別報告書作成画面では、患者名と、ID、性別、病棟等の患者情報203が表示されている。
このとき、鑑別報告書作成画面における患者情報203は、「報告書作成」ボタン96が押下された時点での患者情報に対応している。
【0039】
鑑別報告書作成画面では、撮影ステップにおいて撮影された薬剤1の撮影画像Qが記憶されており、報告書内容表示部201において特定の薬剤1を選択すると、
図9における右端に対応する撮影画像Qが表示される。
報告書内容表示部201には、薬剤1の用法、薬品名、薬効、規格単位等の薬剤情報と、院内採用薬であるか否かを表示する採用薬表示部204と、当該患者の薬剤1の服用量を表示する用量表示部205と、が表示されている。このように、報告書内容表示部201には、薬剤の薬剤情報に加えて、院内採用薬であるかどうかや用量などを付加情報として表示可能である。
【0040】
用量表示部205の内容は、薬剤師等の操作者によって、報告書内容編集部202において編集可能であり、鑑別報告書作成画面において、操作者は、薬剤1の1日当たりの個数である日量を確認しながら、起床時、朝昼夜、就寝前等の時間の区別とともにそれぞれの用量を入力することができる。
あるいは、操作者は、時間の区別をすることなく日量のみを入力するような場合も有り得る。
さらに、既に述べたように薬剤トレイ10に識別子11を設けた場合には、かかる用量表示部205には、黄=朝、緑=昼、赤=夕、青=就寝前のような対応する用法が自動で記載可能である。このように、薬剤トレイ10に識別子11を設けることによって、鑑別操作時における操作者の入力の手間をさらに低減することができる。
【0041】
採用薬表示部204は、薬剤1の刻印情報から読み取られたYJコードを元に、類似の薬効を持った薬剤1とは異なる薬剤であって、医療機関内に在庫がある薬剤を院内採用薬2として表示する表示欄である。
かかる採用薬表示部204は、薬剤1に対応する例えば院内採用薬2がある場合には〇の表示を出すとともに、報告書作成画面において「院内採用薬選択」のボタンを選択可能に表示することができる。
「院内採用薬選択」ボタンを押下すると、鑑別報告書作成画面に新たな表示画面として、採用薬追加画面が表出して、操作者は、薬剤1と院内採用薬2とのどちらかを選択することができる。
かかる院内採用薬選択操作によって、医療機関に特定の薬剤1の在庫が無かった場合にも、同等の薬効の院内採用薬2を代替手段として患者に提示可能となるので、例えば患者が院内採用薬2の採用を望んだ場合には医療機関で薬剤1の確保をする手間を省くことができる。
【0042】
操作者が用量表示部205の編集や、院内採用薬2の選択の可否などの操作を終え、薬剤トレイ10に載置された、当該患者が用いている薬剤1の鑑別操作が終了すると、鑑別報告書作成画面において「印刷」ボタンを押下する。
制御部90は、かかる「印刷」ボタンが押下された場合には、印刷装置等にかかる鑑別報告書作成画面の入力内容を送信する。このように、鑑別報告書作成画面の入力内容に応じて鑑別報告書が印刷される。
【0043】
また、
図2に示した錠剤判別画面において、刻印情報から薬剤1の判別を行う際には、刻印情報を検索することができる。
このような検索を行いたい場合には、操作者が候補薬検索部942に撮影画像Qから読み取った刻印情報を入力することで
図10に示すような薬品検索結果表示画面へと画面が遷移する。
【0044】
具体的には刻印情報として、識別コード「MH」と薬剤1の表面に刻印の記載があったときには、操作者はかかる刻印情報を
図2における候補薬検索部942に入力し、検索ボタンを押下する。
図10の薬品検索結果表示画面へと画面が遷移し、識別コード「MH」の検索条件が検索条件欄9421に表示されるとともに、検索結果が検索表示欄9423に表示される。さらに検索条件として、YJコード、品名、メーカー名、薬種を示す大系統、中系統、小系統の種別、等の追加条件がある場合には、検索条件欄9421に追加で入力して検索ボタン9422を押下すると、追加した検索条件を含んだ検索結果が検索表示欄9423に表示される。なお、入力に誤りがあった場合には、条件クリアボタン9424を押下すると初期状態に戻る。
薬品検索結果表示画面では、識別コード「MH」の入力に基づいてデータベース95から情報を検索して、薬剤1の候補薬を複数並べて表示する。薬品検索結果表示画面では、
図10からも明らかなように、検索結果として識別コード「MH」を有する薬剤が列記される。
かかる薬剤1の薬品検索結果表示画面においては、候補薬となる薬剤1の品名や薬効、メーカー、YJコード等が表示される他、薬剤1の形状や院内採用薬かどうか等が表示される。
なお、ここでは識別コードの入力によって薬剤1の候補を検索する方法についてのみ説明したが、識別コード以外にも、YJコード、品名、メーカー名を用いて検索を行っても良い。
また、院内採用薬確認窓にチェックを入れることで、データベース95内に記憶されている薬剤の情報のうち、医療機関内で取り扱いのある所謂院内採用薬についてのみチェックをかけることができるので、検索結果の表示を高速に行うことができる。
【0045】
操作者は、かかる薬品検索結果表示画面から、
図10に斜線で塗りつぶして示したように1つを選択することで、薬剤1の判別を容易に行うことができる。
かかる候補薬検索部942を備えることで、操作者は、例えば刻印の一部が読み取れなかった場合や、外箱から薬品の名称を直接入力・検索を行う方が効率的な場合等にも、薬剤1の判別をより高速に行うことができる。
なお、薬剤1の判別を行った後の操作については、鑑別報告書作成画面に移行する等、既に述べた操作と共通するため説明を省略する。
【0046】
次に、薬剤判別装置100の操作として、同一薬チェックについての説明を行う。
なお、本実施形態では、同一薬チェックは、既に述べた薬剤1の鑑別とは異なる操作として、後述する
図11で示すような薬剤判別装置100の初期画面において鑑別操作と同一薬チェック操作とのどちらの操作を行うか選択可能に設定されているが、かかる構成に限定されるものではない。
【0047】
同一薬チェックを行う場合の薬剤判別装置100の動作について
図12を用いて説明する。同一薬チェック操作においても鑑別操作と同様に、まず複数の薬剤1を薬剤トレイ10に載置して、薬剤トレイ10ごと薬剤判別装置100の内部に格納する。
撮像部20は、薬剤トレイ10に載置された薬剤1を含む領域を撮影して、撮影画像Qを取得する(撮影ステップS101)。
【0048】
撮像部20によって撮影された画像は、撮影画像Qとして制御部90に送信されて、
図13に示すように、第1表示部91に表示される(第1表示ステップS102)。
なお、
図13は
図2と同様に制御部90によって実行されるプログラムのユーザーインターフェース(UI)を示す図であり、制御部90に接続された任意のディスプレイ等の表示装置に表示される。
さらに、制御部90は、第1表示ステップにおいて表示した撮影画像Qの画像解析を行い、複数の薬剤1のそれぞれの形状と、刻印情報とを読み取る(画像解析ステップS103)。
【0049】
以降の説明においては、仮に10個の薬剤1が薬剤トレイ10に載置されており、9個の同一の薬剤Aと、1個の薬剤Aとは異なる薬剤A’とが混在してしまった場合の同一薬チェック操作について説明する。
図13においては説明のため特に薬剤A’を網掛けで示している。
なお、同一薬チェック操作を行う場合には、例えば
図11に示したような制御部90上で動作するソフトウェアのトップ画面において「同一薬チェック」のボタンを押下する等、操作者が明示的に同一薬チェック操作に入るように選択可能であることが望ましい。
同一薬チェック操作は、例えば医療機関内において一度払い出したものの、返却されてきた薬剤Aについて、保管容器や保管場所に返納する際に薬剤Aと異なる薬剤A’が混入してしまう虞を極力減らすために行われる処理であるためである。
このように明示的に同一薬チェック操作に入ることによって、鑑別操作においては重要であった薬剤1の同定を、医療機関内において用いられている薬剤に限定して検索することができるため、データベースの照会を高速に行うことができる。
【0050】
図13、
図14に示した同一薬チェック画面においても、第1表示部91と、第2表示部92と、第3表示部93と、を備えている。
第1表示部91に表示された複数の薬剤Aが数え上げられるとともに、鑑別操作において説明したのと同様の画像解析によって検知されて、第2表示部92に示された「選択された薬剤A」の候補薬として、薬剤Aである「××××××錠60mg」が挙げられた状態を示している。
【0051】
また、本実施形態では、第1表示部91において、薬剤Aと判別されたものについては所定の色として縁線が緑色で表示され、薬剤Aとは異なる薬剤A’と判別されたものについては縁線が赤色で表示される。
なお、
図13、
図14においては、「所定の色」たる緑色で表示されているものと、「所定の色とは異なる色」である赤色で表示されているものとを既に述べたように、「所定の色とは異なる色」としての薬剤A’を網掛けで表示することで表現している(判定ステップS304)。
かかる判定ステップS304において、制御部90は、薬剤トレイ10に載置された薬剤のうち、特定の(本実施形態では特に最も多い薬剤とする)薬剤Aに対して、他の薬剤が薬剤Aと同一であるかどうかをチェックし、薬剤Aである場合には所定の色で表示し、薬剤Aと異なる薬剤A’である場合には異なる色によって強調表示する。
このように、薬剤トレイ10に載置された薬剤が薬剤Aであるかどうかを第1表示部91において強調表示し、判別を容易にすることで、操作者は薬剤トレイ10に載置された薬剤が全て同一であるかどうかを高速にチェック可能である。なお、かかる判定ステップにおける強調表示は、色分けによって行われることが最も好ましいが、かかる構成に限定されるものではなく、例えば薬剤Aの方を目立つように強調表示しても良い。
さらに、このような色分けを、第1表示部91及び第2表示部92において操作者の選択に基づいて行う場合の他、制御部90が自動的に行う事としても良い。
具体的には、制御部90は、第1表示部91に表示された複数の薬剤1のうち、最も多い薬剤である薬剤Aについて自動的に選択されることとしても良い。
かかる構成とすることで、薬剤トレイ10を薬剤判別装置100に収納し、検出ボタンを押下すると、撮影画像Qに撮影された薬剤のうち、最も多い薬剤Aが自動的に選択されることとなるので、操作者は複数の操作を必要とすることなくより高速に薬剤Aの同定を行うことができる。
【0052】
また、第3表示部93は、かかる自動判定の結果に基づいて薬剤Aが全て同一かどうかを判定する判定欄931を有していても良い。かかる判定欄931は、例えば検出ボタンを押下されたときに薬剤Aが自動的に選択され、全てが薬剤Aであったときには「良」、少なくとも1つの異なる薬剤A’を発見したときには「不良」となるように判定ステップにおける判定結果をそれぞれ表示する。
【0053】
候補薬として薬剤Aが第3表示部93に表示された際には、それぞれの画像解析結果に対応する候補薬が並べて表示されており、さらに右側端部には、個々の薬剤について「確定」の表示がなされた確定ボタン932が配置されている。
操作者は、例えば薬剤トレイ10の撮影領域内の薬剤Aが第3表示部93に表示された薬剤Aと同一であると確認した上で確定ボタン932を押下する(確定ステップS305)。
かかる確定ステップにおいて、第3表示部93における当該薬剤の表示は暗色となり、第2表示部92及び第3表示部93における画像が第1表示部91に表示されている薬剤のうち新たな薬剤へと切り替わることとなる。
このように、操作者は、薬剤トレイ10の撮影領域内に配置された1つ1つの薬剤1について、候補薬である薬剤Aであるかどうかを判定していくこともできる。
【0054】
薬剤Aとは異なる薬剤A’が薬剤トレイ10に混入してしまっていた場合には、操作者は薬剤トレイ10を薬剤判別装置100から取り出して、混入してしまった薬剤A’を取り除く。
第1表示部91には、薬剤トレイ10の撮影した領域がそのまま上から見た撮影画像Q1として表示されているから、取り除くべき薬剤A’の判別も容易である。
【0055】
このように、混入した薬剤A’を取り除き、再度検出ボタンを押下して薬剤Aが検出された状態を
図14に示す。
図14においては、薬剤トレイ10上の全ての薬剤が薬剤Aとして認識されている状態を示している。
第1表示部91には、画像解析の結果が薬剤Aであることを示すように、所定の色たる緑色で表示されている。
薬剤トレイ10の撮影領域内において、全ての薬剤が薬剤Aである(=同一である)と判別されると、第2表示部92には「全て確定」ボタン933が押下可能に変更される。当然、混入してしまった薬剤A’がある
図13に示したような場合には、かかる「全て確定」ボタン933は押下できないように暗色に制御される。
「全て確定」ボタン933が押下されると、薬剤トレイ10上に配置された薬剤が全て薬剤Aであるとの判別が確定される(確定ステップS306)。
【0056】
制御部90は、「全て確定」ボタン933が押された際の撮影画像Q1、撮影画像Q2の両方あるいは何れか1方から、それぞれの薬剤の拡大写真を記録する。具体的には
図15に示すように、錠剤分別シート97として、薬剤Aの各拡大写真971と、薬剤Aの錠数と、検出された薬剤名称972と、を記載した形式で印刷等の出力を行う(出力ステップS307)。
操作者は、かかる錠剤分別シート97を薬剤判別装置100から出力すると、薬剤トレイ10を取り出して、内部に配置された薬剤Aをカセット等、薬剤Aの保管容器へと返却する。
このように、同一薬チェック操作において、それぞれの薬剤について拡大写真と、薬剤Aの錠数と、薬剤名称と、を記録しておくこととすれば、仮に後日保管容器へと返却された薬剤Aの中から、異なる薬剤A’が発見されてしまったとき等にも、錠剤分別シート97の記録から、拡大写真971や薬剤名称972を再度見返すことができるから、再発防止策を設ける際にも役立つ。
また、これらの錠剤分別シート97の情報を、データベース95に保管し、
図11に示したトップ画面における「分別履歴」ボタンから再度参照可能なように記憶しておいても良い。さらにラベルなどのシール状で印刷して、薬剤Aの保管容器に薬剤名や撮像画像、日時、バーコード等の識別標識を表示して貼るようにしても良い。そうすることで保管した薬剤Aを再利用する際に便利である。
【0057】
以上、本発明を上述した実施形態により説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された内容において適宜変更等が可能である。
例えば、識別子11を複数設ける際には、
図16においては色を用いたカラーマーカー等による識別方法を用いたが、撮像部20で画像認識可能であれば、〇、△、□、×等の模様による識別方法を用いても良いし、その他の二次元コードやバーコード等の識別方法を用いて良い。
【符号の説明】
【0058】
11 識別子
20 撮像部
90 制御部(制御端末)(コンピューター)
91 第1表示部
92 第2表示部
93 第3表示部
95 データベース
98 第1検出ボタン
99 第2検出ボタン
100 薬剤判別装置
101 パソコン(制御端末)(コンピューター)
S304 判定ステップ
911 タブ群(切替手段)
942 文字入力部(候補薬検索部)