(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】光学及び/又は電子顕微鏡による生体試料の画像化のための生体試料の包埋液
(51)【国際特許分類】
G01N 1/36 20060101AFI20240123BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
G01N1/36
G01N1/28 F
G01N1/28 J
(21)【出願番号】P 2020572626
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(86)【国際出願番号】 EP2019056584
(87)【国際公開番号】W WO2019175407
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-03-14
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520355149
【氏名又は名称】クライオカプセル
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ハイリゲンシュタイン,ザビエル
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-026794(JP,A)
【文献】特開平01-187457(JP,A)
【文献】特開昭56-154418(JP,A)
【文献】特開2014-233281(JP,A)
【文献】特開2016-194022(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0707560(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- 1/44
G01N 33/48-33/98
H01J 37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料のための導電性包埋液であって、
-60%~99%wt.の、エチレングリコールジメタクリラート、ジエチレングリコールジメタクリラート、トリエチレングリコールジメタクリラート、プロピレングリコールジメタクリラート及びブチレングリコールジメタクリラートから選択されるグリコールジメタクリラートと;
-ポリアルキレングリコールジアクリラートと;
-ラジカル重合開始剤と、
を含む、導電性包埋液。
【請求項2】
前記導電性包埋液が、少なくとも1つの重金属塩又はランタニド塩
を更に含む、請求項
1に記載の導電性包埋液。
【請求項3】
前記グリコールジメタクリラートが、トリエチレングリコールジメタクリラートである、請求項1または請求項2に記載の導電性包埋液。
【請求項4】
前記ポリアルキレングリコールジアクリラートが、ポリエチレングリコールジアクリラート、ポリプロピレングリコールジアクリラート及びポリブチレングリコールジアクリラートから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の導電性包埋液。
【請求項5】
-60%~99%wt.のトリエチレングリコールジメタクリラートと;
-0%超~38%wt.のポリプロピレングリコールジアクリラートと;
-0.1%~2%wt.のラジカル重合開始剤と、
を含む、請求項1、および
4のいずれか一項に記載の導電性包埋液。
【請求項6】
-79%wt.のトリエチレングリコールジメタクリラートと;
-20%wt.のポリプロピレングリコールジアクリラートと;
-1%wt.のベンゾインメチルエーテルと、
を含む、請求項1、および
4のいずれか一項に記載の導電性包埋液。
【請求項7】
前記少なくとも1つの重金属塩が、オスミウム及び/又は酢酸ウラニルを含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の導電性包埋液。
【請求項8】
少なくとも1つの生体試料をさらに含む、請求項1~
7のいずれか一項に記載の導電性包埋液。
【請求項9】
前記少なくとも1つの生体試料はガラス化、化学的固定化、又は脱水した生体試料である、請求項
8に記載の導電性包埋液。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか一項に記載の包埋液の重合から生じるポリマーマトリクスに包埋される少なくとも1つの生体試料を含む、導電性イメージング材料。
【請求項11】
包埋された生体試料の内部蛍光、タンパク質活性及び/又は抗原特異性を保持する、請求項
10に記載の導電性材料。
【請求項12】
顕微鏡によって生体試料を画像化するための方法であって、次の段階:
(i-1)前記生体試料を固定及び/又は脱水し;
(ii)請求項1~
9の何れか1項に記載の導電性包埋液を段階(i-1)の前記生体試料に浸透させ;
(iii)段階(ii)で得られた混合物を重合化して、導電性イメージング材料を生じさせ;
(iv)光学顕微鏡及び/又は電子顕微鏡により段階(iii)の導電性イメージング材料を画像化すること
を含む方法。
【請求項13】
前記導電性イメージング材料における顕微鏡切片作製又は超薄切片作製の段階をさらに含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
顕微鏡において画像化しようとする生体試料を調製するためのキットであって、
-(a)エチレングリコールジメタクリラート、ジエチレングリコールジメタクリラート、トリエチレングリコールジメタクリラート、プロピレングリコールジメタクリラート及びブチレングリコールジメタクリラートから選択されるグリコールジメタクリラート;及び(b)ポリアルキレングリコールジアクリラートを含む第1の容器と;
-ラジカル重合開始剤を含む第2の容器と、
を含むか、又は
(a)エチレングリコールジメタクリラート、ジエチレングリコールジメタクリラート、トリエチレングリコールジメタクリラート、プロピレングリコールジメタクリラート及びブチレングリコールジメタクリラートから選択されるグリコールジメタクリラート;(b)ポリアルキレングリコールジアクリラート;及び(c)ラジカル重合開始剤を含む容器と;
混合手段と、
を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡の分野、好ましくは光学及び/又は電子顕微鏡の分野に関する。特に、本発明は、顕微鏡により生体試料を画像化するための包埋液に関する。本発明の包埋液は、(i)グリコールジメタクリラートと、(ii)ポリアルキレングリコールジアクリラート及び/又はポリアルキレングリコールメタクリラートと、(iii)開始剤との混合物を含むか又はそれらから構成される組成物を指す。本発明は、本発明の包埋液の重合により得られる導電性及び/又は生体保存材料及びその調製の工程及びキットも指し;この材料は少なくとも1つの生体試料を包埋する。
【0002】
本発明は、本発明の包埋液及び/又は導電性材料の使用を含む、生体試料を顕微鏡により画像化するための方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
顕微鏡は、肉眼により達成され得ない対象及び対象領域を観察するための一連の技術を指す。周知の顕微鏡技術の中でも、電子顕微鏡は、生体物質の観察に有用である。この技術は、観察しようとする試料と直接相互作用する、電子ビーム又は電磁放射線の何れかの回折、反射又は屈折により、振幅又は位相差画像を生じさせる。
【0004】
現在のところ、基本的に重金属塩及び固定液(アルデヒドなど)からなる造影剤を添加しなければ良好な振幅コントラストが得られない。
【0005】
何らかの試料の高解像度電子顕微鏡による可視化は、電子顕微鏡の高真空から保護され続けながら、顕微鏡分析中に試料が未変性の状態に最も近くなるように、固定のような複雑な調製段階も包含する。
【0006】
生体物質の固定は、化学的(アルデヒドなどの固定液の添加)に、又は物理的(生体物質の水分の透化又はアモルファス・イモビリゼーション(amorphous immobilization)を達成するための超高速凍結アプローチ)に、の何れかで達成され得る。
【0007】
特に、未変性の生体物質の観察を達成するため、固定後、固定した生体試料を補強しながら真空から保護して、超薄切片作製法により薄切可能にするために、固定した生体試料の水分をポリマー樹脂で置き換えるための包埋方法が開発されてきた。
【0008】
しかし、固定液及び造影剤を使用することにより、1)試料調製中の汚染廃棄物再処理問題、2)生物学的特性の変化及び3)画像化中の電荷の排出不良が起こる。実際に、固定液及び重金属塩は、毒性であり、変異原性であり、発癌性であり、及び/又は放射性である。これらは部分的又は全体的に、刺激時の蛍光発光の生物学的特性又はタンパク質活性を変化させるか、又は免疫検出のための抗原を遮蔽する。さらに、重金属塩は、画像化中に電子しか捕捉しないが、顕微鏡クリシェ(cliche)の実現中に試料表面上の電荷蓄積を放電させない。結果として試料表面上で電荷が局所的に蓄積するが、これは試料周囲でのハローの形成につながり、適正な画像化が妨害されることになる。結果として、クリシェ(cliche)の解釈が困難になる。
【0009】
例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)又は電子断層撮影において、このハイパー・ローディング(hyper-loading)は、焦点面を劇的に変化させ、画像の焦点が不適切になる。走査型電子顕微鏡(SEM)において、電子の過負荷は試料の表面上で白色のハローをもたらす。
【0010】
代替的な解決策が開発されてきた。ある解決策は、過剰な重金属塩の使用により、及び低電子イメージングパラメーターを精緻化することにより生じる荷電効果を低下させるものである(Deerinck et al.,2010)。しかし、この方法は非常に強烈であり、多岐にわたる生体試料に適応せず、室温での作業を強いるものであり、低温固定による最良の超微細構造保護の達成が妨げられる。特に、この方法により、主に膜又は細胞壁を強調することが可能になるが、激しい抽出を引き起こし、生体内容物の残りに関連する全ての情報が排除される。
【0011】
別の解決策は、薄い炭素フィルムとの重金属塩の使用又は蒸発による金属蒸着を付随することに存し、後者は電子放射を提供することを可能にする。しかし、この方法は、試料を調製するためのさらなる段階を必要とし、試料の周辺でのみ電荷を排除する。さらに、重金属塩の量は、依然として、その後の廃棄物再処理を引き起こす。
【0012】
従って、電子顕微鏡画像化用の生体試料を調製するためのより効率的な工程を提供することが必要である。特に、可能な最高品質の画像を得るために電子顕微鏡によるその画像化中に試料のコントラストを最大化しながら、造影剤の必要性及び/又はそれらの生物学的影響を減らすことが可能なより効率的な生体物質包埋液を提供することが必要である。
【0013】
市販の樹脂の中で、Lowicryl(登録商標)樹脂は、電子ビームの作用下であまり昇華しないという長所を有する。さらに、これらの樹脂の前駆溶液(即ち重合前)は、生成物に依存して、-35℃又は-70℃に至るまでの温度で流体のままであり、従ってそれらがガラス化生体試料の分析のために使用される急速冷凍及び凍結置換法と適合するようになる。急速冷凍は、現在まで、生体物質のネイティブ固定手順に最も近いと考えられており、定性的及び定量的分析で広く使用されている。
【0014】
しかし、Lowicryl(登録商標)樹脂は、導電性ではなく、電子顕微鏡による分析中、特に試料調製中に使用される造影剤の量が過少である場合、試料の観察は不満の残るものとなる。
【0015】
従って、室温で又は低温での包埋後の電子顕微鏡における画像化中、試料及び/又は包埋液の表面の蓄積電荷を効果的に排出可能な生体物質包埋液を提供することも必要である。その電子顕微鏡画像化中に良好な安定性及び/又は物理的完全性を維持可能な、より効率的な生体物質包埋液を提供することも必要である。重金属塩又はランタニド塩の使用量を劇的に減少させることが可能な包埋液を提供することも必要である。従って、顕微鏡分析の間に最良の超微細構造を保護可能な生体物質包埋液を提供することも必要である。
【0016】
生物学的研究において電子顕微鏡の使用をさらに最適化するために、蛍光顕微鏡により生体試料の効率的な標的化が可能になる。固定液及び/又は造影剤の使用によって、樹脂中に包埋されるタンパク質の蛍光及びネイティブ特性が著しく低下する。エポキシ樹脂は、例えばタンパク質のアミン基と相互作用し、タンパク質としてのそれらのさらなる作用能を妨害する。Lowicryl(登録商標)樹脂又はアクリラート樹脂は、生体物質と交差反応せず、それらの共鳴特性を保護する。
【0017】
従って、可能性がある電子顕微鏡(EM)に対するコントラストを維持しながら包埋された生体試料の生来の蛍光を効率的に保護する非生体相互作用包埋液を提供する必要がある。
【0018】
驚くべきことに、出願者は、グリコールジメタクリラート、ポリアルキレングリコールジアクリラート及び/又はポリアルキレングリコールメタクリラートから選択される単量体混合物の重合から得られる親水性樹脂が上記の先行技術の問題を解決する効率的な包埋液を提供することを明らかにした。
【0019】
有利に、本発明の包埋液中に含まれる生体試料の超微細構造並びに蛍光が維持される。有利に、本発明の包埋液を用いて得られるイメージングコントラストは、市販の樹脂の使用により達成されるものよりも大きい。
【発明の概要】
【0020】
従って、本発明は、
-60%~99%wt.の、アルキレングリコールジメタクリラート及び/又はオリゴ(アルキレングリコール)ジメタクリラートから選択されるグリコールジメタクリラートと;
-ポリアルキレングリコールジアクリラート又はポリアルキレングリコールメタクリラート(このポリアルキレングリコールジアクリラート又はポリアルキレングリコールメタクリラートは、場合によってはヒドロキシル、アミノ又はオキソ基などの少なくとも1つの親水性基により置換される)と;
-好ましくは少なくとも1つの重金属塩又はランタニド塩を含む、少なくとも1つの添加剤と;
-ラジカル重合開始剤と、
を含む生体試料のための導電性包埋液に関する。
【0021】
一実施形態によれば、生体試料のための導電性包埋液は、
-60%~99%wt.の、アルキレングリコールジメタクリラート及び/又はオリゴ(アルキレングリコール)ジメタクリラートから選択されるグリコールジメタクリラートと;
-0%~38%wt.のポリアルキレングリコールジアクリラート又はポリアルキレングリコールメタクリラート(このポリアルキレングリコールジアクリラート又はポリアルキレングリコールメタクリラートは、場合によってはヒドロキシル、アミノ又はオキソ基などの少なくとも1つの親水性基により置換される)と;
-0.1%~2%wt.のラジカル重合開始剤と、
を含む。
【0022】
一実施形態によれば、グリコールジメタクリラートは、エチレングリコールジメタクリラート、ジエチレングリコールジメタクリラート、トリエチレングリコールジメタクリラート、プロピレングリコールジメタクリラート及びブチレングリコールジメタクリラートから選択され;好ましくは、グリコールジメタクリラートはトリエチレングリコールジメタクリラートである。
【0023】
一実施形態によれば、ポリアルキレングリコールジアクリラートは、ポリエチレングリコールジアクリラート、ポリプロピレングリコールジアクリラート及びポリブチレングリコールジアクリラートから選択され;好ましくは、ポリアルキレングリコールジアクリラートはポリプロピレングリコールジアクリラートである。
【0024】
一実施形態によれば、ポリアルキレングリコールメタクリラートは、ポリエチレングリコールメタクリラート、ポリプロピレングリコールメタクリラート及びポリブチレングリコールメタクリラートから選択され;このポリアルキレングリコールメタクリラートは、場合によってはヒドロキシル、アミノ又はオキソ基などの少なくとも1つの親水性基により置換され;好ましくはこのポリアルキレングリコールメタクリラートは、ヒドロキシルポリエチレングリコールメタクリラートである。
【0025】
一実施形態によれば、ラジカル重合開始剤は、光開始剤又は熱開始剤であり、好ましくは、ラジカル重合開始剤は、光開始剤、より好ましくはベンゾインメチルエーテル又は2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オンである。
【0026】
一実施形態によれば、本導電性包埋液は、
-60%~99%wt.のトリエチレングリコールジメタクリラートと;
-0%超~38%wt.のポリプロピレングリコールジアクリラートと;
-0.1%~2%wt.のラジカル重合開始剤と、
を含む。
【0027】
一実施形態によれば、本導電性包埋液は、
-60%~99%wt.のトリエチレングリコールジメタクリラートと;
-0%超~38%wt.のヒドロキシルポリエチレングリコールメタクリラートと;
-0.1%~2%wt.のラジカル重合開始剤と、
を含む。
【0028】
一実施形態によれば、本導電性包埋液は、少なくとも1つの重金属塩を含み、より好ましくはオスミウム及び/又は酢酸ウラニルを含む。
【0029】
一実施形態によれば、本導電性包埋液は、少なくとも1つの生体試料、好ましくはガラス化及び/又は化学的に固定された及び/又は脱水された生体試料をさらに含む。
【0030】
本発明は、上記で定められるような包埋液の重合から生じるポリマーマトリクスに包埋される少なくとも1つの生体試料を含む、導電性イメージング材料にも関する。
【0031】
一実施形態によれば、本導電性材料は、包埋された生体試料の内部蛍光、タンパク質活性及び/又は抗原特異性を保持する。
【0032】
本発明はまた、次の段階:
(i-1)生体試料を固定及び/又は脱水し;
(ii)上記で定められるような導電性包埋液を段階(i-1)の生体試料に浸透させ;
(iii)段階(ii)で得られた混合物を重合化して、導電性イメージング材料を生じさせ;
(iv)光学顕微鏡及び/又は電子顕微鏡により段階(iii)の導電性イメージング材料を画像化すること
を含む、顕微鏡によって生体試料を画像化するための方法にも関する。
【0033】
一実施形態によれば、本方法は、導電性イメージング材料における顕微鏡切片作製又は超薄切片作製の段階をさらに含む。
【0034】
本発明はまた、顕微鏡により、好ましくは光学及び/又は電子顕微鏡により生体試料を画像化するための、上記で定められるような包埋液又は上記で定められるような導電性イメージング材料の使用にも関する。
【0035】
本発明は、
-(a)アルキレングリコールジメタクリラート及び/又はオリゴ(アルキレングリコール)ジメタクリラートから選択されるグリコールジメタクリラート;及び(b)ポリアルキレングリコールジアクリラート又はポリアルキレングリコールメタクリラート(このポリアルキレングリコールジアクリラート又はポリアルキレングリコールメタクリラートは、場合によってはヒドロキシル、アミノ又はオキソ基などの少なくとも1つの親水性基により置換される)を含む第1の容器と;
-ラジカル重合開始剤を含む第2の容器と;
を含むか、又は
(a)アルキレングリコールジメタクリラート及び/又はオリゴ(アルキレングリコール)ジメタクリラートから選択されるグリコールジメタクリラート;(b)ポリアルキレングリコールジアクリラート又はポリアルキレングリコールメタクリラート(このポリアルキレングリコールジアクリラート又はポリアルキレングリコールメタクリラートは、場合によってはヒドロキシル、アミノ又はオキソ基などの少なくとも1つの親水性基により置換される)及び;(c)ラジカル重合開始剤を含む容器と;
混合手段と、
を含む、
顕微鏡において画像化しようとする生体試料を調製するためのキットにも関する。
【0036】
定義
本発明において、次の用語は次の意味を有する:
-「約」:数値の前に付け、その数値の値の±10%を意味する。
-「アクリラート」:少なくとも1つのCH2=CH-COO-基を有するビニル単量体を指す。
-「アミノ」:有機基での1個以上の水素原子の置換によるアンモニアのNH3由来の何らかの化合物を指す。アミノは、好ましくは-NH2、-NHR及び-NRR’を指す(式中、R及びR’は好ましくはアルキル基である)。従って「アミノ」はモノアルキルアミノ及びジアルキルアミノ基を含む。
-「生体試料」:動物又は植物又は生きているヒト身体、例えば細胞抽出物、細胞、組織又は器官など、から回収される何らかの生体物質を指す。生体試料は移植物を指さない。
-「包埋液」は、直接的に、又はミクロトーム若しくはウルトラミクロトームを使用することにより削切した後、得られる材料が顕微鏡により画像化され得るように生体試料を入れる液を指す。包埋液は、移植物として使用される物体又は金属を指さない。
-「グリコール」:少なくとも1つのジオール基を有し、各ヒドロキシル基が異なる炭素原子上に置かれる、何らかの有機化学化合物を指す。一実施形態によれば、グリコール化合物の各ヒドロキシル基は、このグリコール化合物の一方の末端に位置する。一実施形態によれば、グリコールは、少なくとも1つの近接ジオールを有し、即ち2個のヒドロキシル基が隣接する炭素原子に連結される。グリコール化合物としては、アルキレングリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール又はブチレングリコールなど;オリゴ(アルキレングリコール)、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール又はテトラエチレングリコールなど;及びポリアルキレングリコール、例えばポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)又はポリ(ブチレングリコール)などが挙げられる。
-「グリコールアクリラート」:このグリコールの2個のヒドロキシル官能基のうち1個が、ヒドロキシル官能基及びアクリラート基の両方を有する化合物を提供するためのアクリル酸又はアクリロイルハロゲン化物との反応に関与している、何らかのグリコール化合物を指す。「グリコールアクリラート」という用語は、アルキレングリコールアクリラート、オリゴ(アルキレングリコール)アクリラート及びポリアルキレングリコールアクリラートを含む。
-「グリコールジアクリラート」:このグリコールの2個のヒドロキシル官能基が2個のアクリラート基を有する化合物を提供するためのアクリル酸又はアクリロイルハロゲン化物との反応に関与している、何らかのグリコール化合物を指す。「グリコールジアクリラート」という用語は、アルキレングリコールジアクリラート、オリゴ(アルキレングリコール)ジアクリラート及びポリアルキレングリコールジアクリラートを含む。
-「グリコールジメタクリラート」:このグリコールの2個のヒドロキシル官能基が、2個のメタクリラート基を有する化合物を提供するための、メタクリル酸又はメタクリロイルハロゲン化物との反応に関与している何らかのグリコール化合物を指す。「グリコールジメタクリラート」という用語は、アルキレングリコールジメタクリラート、オリゴ(アルキレングリコール)ジメタクリラート及びポリアルキレングリコールジメタクリラートを含む。
-「グリコールメタクリラート」:このグリコールの2個のヒドロキシル官能基のうち1個が、ヒドロキシル官能基及びメタクリラート基の両方を有する化合物を提供するためのメタクリル酸又はメタクリロイルハロゲン化物との反応に関与している、何らかのグリコール化合物を指す。「グリコールメタクリラート」という用語は、アルキレングリコールメタクリラート、オリゴ(アルキレングリコール)メタクリラート及びポリアルキレングリコールメタクリラートを含む。
-「重金属塩」:重金属(即ち比較的高い密度、原子量又は原子番号の金属)を含む何らかの塩を指す。一実施形態によれば、重金属は、鉄、コバルト、亜鉛、ルテニウム、銀、インジウム、カドミウム、水銀、鉛、ウラン、オスミウム及び銅から選択される。
-「親水性」:一般的には電荷極性化しており、水素結合が可能であり、油又は他の溶媒中よりも水中で容易に溶解可能である分子又は分子の一部を定義する。
-「ヒドロキシル」:化学官能基-OHを指す。
-「開始剤」:重合反応、好ましくはラジカル重合、を開始可能な何らかの化学化合物を指す。本発明において、開始剤は、ポリマー鎖の成長を開始させるための第1のビニル単量体単位と反応可能なラジカル部分を提供する。
-「Lowicryl(登録商標)」:アクリラート及び/又はメタクリラート樹脂に基づく市販の包埋液を指す。Lowicryl(登録商標)HM 20は、2-プロペン酸-2-メチル-1,2-エタンジイルビス(オキシ-2,1-エタンジイル)エステル(CAS106-16-0);2-プロペン酸-2-メチルエチルエステル(CAS97-63-2);n-ヘキシルメタクリラート及び場合によっては4-メトキシフェノール及び/又はアセトフェノン-2-メトキシ-2-フェニル(CAS3524-62-7)を含むか、又はそれにより構成される非極性包埋液を指す。一実施形態によれば、「Lowicryl」という用語は、市販製品Lowicryl(登録商標)HM 20、Lowicryl(登録商標)HM 21及びLowicryl(登録商標)HM 23を含む。
-「マクロ単量体」:単量体として作用可能な少なくとも1つの末端基を有するポリマー鎖を指す。一実施形態によれば、用語。
-「マトリクス」:化学的ネットワーク、好ましくは有機化学ネットワーク、より好ましくは有機ポリマーネットワークを指す。一実施形態によれば、このネットワークは共有結合により架橋される。
-「イメージング材料」:生体試料を包埋する、及び顕微鏡による分析での使用に適切な固体又は半固体を指す。
-「メタクリラート」:少なくとも1つのCH2=C(CH3)-COO-基を有するビニル単量体を指す。
-「顕微鏡」:顕微鏡を使用して物体を画像化するための技術を包含する一般的分野を指す。
-「顕微鏡切片作製法」:その顕微鏡研究のために物体を調製するための方法を指し、この方法は、ミクロトーム又はウルトラミクロトーム(即ち顕微鏡により分析しようとする試料を薄切するために適切な装置)を使用することを含む。一実施形態によれば、「顕微鏡切片作製法」という用語は、集束イオンビーム加工技術を包含する。
-「電子顕微鏡」:試料の光源として加速電子のビームを使用し、拡大画像を提供する顕微鏡を指す。
-「光学顕微鏡」:試料の光源として波長が調節される光子ビームを使用し、拡大画像を提供する顕微鏡を指す。
-「導電性」:電子を伝導可能な何らかの材料又は化合物を指す。一実施形態によれば、「導電性」という用語は、その表面上に蓄積した電子を排出可能な材料又は化合物を指す。
-「凍結置換」:氷晶の形成を回避するのに十分に低い温度で行われ、同試料の周囲温度での脱水後に観察される損傷を与える影響を回避する、生体試料の脱水の工程を指す。本発明において、凍結置換工程は、最初に、試料の凍結水を有機溶媒により溶解させ、場合によっては化学固定液を含む工程を指し;次に、この試料を樹脂中に包埋し;最後に顕微鏡によるその画像化のために徐々に試料を温める。
-「高圧凍結」:高圧下での、好ましくは2000bar~2700barの範囲の圧力での、より好ましくは約2048barの圧力での、生体試料の低温固定法を指す。
-「オキソ」:化学官能基-C(O)-を指す。
-「ポリマー」:反復単位(単量体)からなる巨大分子化合物を指す。一実施形態によれば、「ポリマー」という用語は、反復単位からなる有機巨大分子化合物を指す。
-「光開始剤」:放射線(UV又は可視光線)に曝露した場合に、重合反応、好ましくはラジカル重合を開始可能な何らかの化学化合物を指す。本発明において、放射線に曝露される場合、光開始剤は、ポリマー鎖の成長を開始させるように第1のビニル単量体単位と反応可能なラジカル部分を提供する。
-「ラジカル重合」は、ポリマー鎖の成長は、フリーラジカル単量体の連続的な付加により実行される、何らかの重合反応技術を指す。本発明において、「ラジカル重合」という表現は、当業者にとって周知である3つの次の段階:(1)開始、(2)生長反応及び(3)終結を含むポリマーを提供するための工程を指す。
-「熱開始剤」:熱に曝露された場合に、重合反応、好ましくはラジカル重合を開始可能な何らかの化学化合物を指す。本発明において、熱に曝露された場合、熱開始剤は、ポリマー鎖の成長を開始させるように第1のビニル単量体単位と反応可能なラジカル部分を提供する。
-「超薄切片作製法」:その顕微鏡研究のために物体を調製するための方法を指し、この方法は、ウルトラミクロトーム(即ち顕微鏡により分析しようとする試料の非常に薄い切片を作るために適切なダイアモンドナイフ又はガラスナイフの何れかを備える装置)を使用することを含む。
-「ガラス化」:全ての細胞構成成分を生きている状態に近い状態に維持する非晶質水を含有する固体に生体物質を変換する工程を指す。本発明において、「ガラス化生体試料」という表現は、ガラス化後に得られる生体試料を指す。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、透過型電子顕微鏡(TEM)により得られる、本発明の包埋液中(
図1A)又はLowicryl(登録商標)樹脂中(
図1B)に包埋されるHeLa細胞のクリシェ(cliche)である。
【
図2】
図2は、集束イオンビーム走査型電子顕微鏡(FIB-SEM)により得られる、本発明の包埋液中に包埋されるHeLa細胞のクリシェ(cliche)である。
【
図3】
図3は、凍結置換中に0.01%酢酸ウラニルで対比させたカエノラビディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)を含む、本発明のイメージング材料の2つの走査型電子顕微鏡(SEM 3View)クリシェ(cliche)の比較である。Aは本発明の液中に包埋し、BはLowicryl(登録商標)樹脂中に包埋する。第1のクリシェ(cliche)は、明瞭で均一なコントラストを示す。第2のクリシェ(cliche)は、白色スポットとして見られる著しい荷電と、クリシェ(cliche)に焦点を合わせるために使用される正方形の領域とを示す。電子は、ブロックの表面に蓄積し、明瞭な画像化を妨げる。
【
図4】
図4は、本発明の包埋液中に包埋されるカエノラビディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)の顕微鏡クリシェ(Cliche)である。クリシェ(Cliche)4Aは走査型電子顕微鏡(SEM)により得て;クリシェ(cliche)4Bは緑色蛍光タンパク質(GFP)により得て;クリシェ(Cliche)4Cは赤色蛍光タンパク質(RFP)により得て;クリシェ(Cliche)4Dは透過光により得て;クリシェ(Cliche)4EはMultiCanal画像である。
【
図5】
図5は、
図4の蛍光顕微鏡クリシェ(cliche)のズームである。クリシェ(Cliche)5Aは走査型電子顕微鏡(SEM)により得て;クリシェ(Cliche)5Bは緑色蛍光タンパク質(GFP)により得て;クリシェ(Cliche)5Cは赤色蛍光タンパク質(RFP)により得て;クリシェ(Cliche)5DはMultiCanal画像である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
包埋液
本発明は、包埋液、好ましくは生体試料用の包埋液、さらにより好ましくは生体試料に浸透し、含浸させるための包埋液に関する。一実施形態によれば、本発明は、好ましくは顕微鏡により、より好ましくは電子顕微鏡により、生体試料を画像化するための包埋液に関する。一実施形態によれば、包埋液は導電性である。
【0039】
一実施形態によれば、包埋液は、有機化合物を含むか又はそれから構成される組成物である。
【0040】
一実施形態によれば、本包埋液は、ポリマー前駆体処方物を含むか又はそれから構成される。一実施形態によれば、本包埋液は、単量体混合物及び場合によっては開始剤を含むか又はそれから構成される。
【0041】
一実施形態によれば、本包埋液は、単量体混合物を含むか又はそれから構成され、少なくとも1つの単量体は、式(I):
【化1】
(式中、
R
1は、H、直鎖状又は分岐状アルキルを表し、好ましくは、R
1は、H又はメチルを表し;
R
2は、H、メタクリロイル、アクリロイル、直鎖状又は分岐状アルキルを表し、好ましくは、R
1は、H、メタクリロイル又はアクリロイル基を表し;
R
a、R
b、R
c及びR
dは、それぞれ独立に、H、直鎖状又は分岐状アルキル、好ましくはH又はメチルから選択され;
nは正の整数である)を有する。
【0042】
一実施形態によれば、本包埋液は、
-式(II-A)の単量体:
【化2】
-式(II-B)の単量体:
【化3】
及び/又は
-式(II-C)の単量体
【化4】
(式中、
R
1は、H、直鎖状又は分岐状アルキルを表し、好ましくは、R
1は、H又はメチルを表し;
R
2は、H、メタクリロイル、アクリロイル、直鎖状又は分岐状アルキルを表し、好ましくは、R
1は、H、メタクリロイル又はアクリロイル基を表し;
R
aは、H、直鎖状又は分岐状アルキルを表し;好ましくはH又はメチルからであり;
n
1は、1~5の範囲の正の整数、好ましくは3であり;
n
2及びn
3は、それぞれ独立に5より大きい正の整数、好ましくは10~100の範囲、より好ましくは10~40の範囲を表す)
を含む単量体混合物を含むか又はそれから構成される。
【0043】
一実施形態によれば、単量体混合物は、少なくとも1つの単量体、好ましくは少なくとも1つのラジカル重合可能な単量体、より好ましくは少なくとも1つの親水性のラジカル重合可能な単量体を含むか又はそれから構成される。一実施形態によれば、この単量体混合物は、少なくとも1つの親水性単量体を含むか又はそれから構成される。一実施形態によれば、この単量体混合物は、2つのラジカル重合可能な単量体の混合物を含むか又はそれから構成される。
【0044】
一実施形態によれば、このラジカル重合可能な単量体は、アクリラート、メタクリラート、ジアクリラート及び/又はジメタクリラートの群から選択され、これらの基は場合によってはヒドロキシル、アミノ又はオキソ基などの少なくとも1つの親水性基により置換される。
【0045】
一実施形態によれば、本包埋液は、
-ポリアルキレングリコール(ジ)アクリラート及び/又はポリアルキレングリコール(ジ)メタクリラート(このポリアルキレングリコールジアクリラート又はポリアルキレングリコールメタクリラートは、場合によってはヒドロキシル、アミノ又はオキソ基などの少なくとも1つの親水性基により置換される)と;
-開始剤と、
を含む。
【0046】
一実施形態によれば、本包埋液は、
-アルキレングリコールジメタクリラートと;
-ポリアルキレングリコールジアクリラート又はポリアルキレングリコールメタクリラート(このポリアルキレングリコールジアクリラート又はポリアルキレングリコールメタクリラートは場合によってはヒドロキシル、アミノ又はオキソ基などの少なくとも1つの親水性基により置換される)と;
-開始剤と、
を含む。
【0047】
一実施形態によれば、包埋液は、ジメチルアミノエチルメタクリラート(DEMA)、ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)、ポリメチルメタクリラート(PMMA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)又はポリエチレングリコール(PEG)を含まない。
【0048】
一実施形態によれば、本単量体混合物は、1つのジアクリラート及び1つのジメタクリラート、好ましくは1つのグリコールジアクリラート及び1つのグリコールジメタクリラートを含むか又はそれから構成され;このグリコールジアクリラート及び/又はグリコールジメタクリラートは、場合によってはヒドロキシル、アミノ又はオキソ基などの少なくとも1つの親水性基により置換される。
【0049】
一実施形態によれば、本単量体混合物は、1つのアルキレングリコールジメタクリラート及び1つのポリアルキレングリコールジアクリラートを含むか又はそれから構成され、このアルキレングリコールジメタクリラート及び/又はポリアルキレングリコールジアクリラートは場合によってはヒドロキシル、アミノ又はオキソ基などの少なくとも1つの親水性基により置換される。
【0050】
一実施形態によれば、本単量体混合物は、1つのアルキレングリコールジメタクリラート及び1つのポリアルキレングリコールメタクリラートを含むか又はそれから構成され、このアルキレングリコールジメタクリラート及び/又はポリアルキレングリコールメタクリラートは場合によってはヒドロキシル、アミノ又はオキソ基などの少なくとも1つの親水性基により置換される。
【0051】
一実施形態によれば、アルキレングリコールジメタクリラートは、エチレングリコールジメタクリラート、プロピレングリコールジメタクリラート及びブチレングリコールジメタクリラートから選択され;好ましくは、アルキレングリコールジメタクリラートはエチレングリコールジメタクリラートである。
【0052】
一実施形態によれば、ポリアルキレングリコールジアクリラートは、ポリエチレングリコールジアクリラート、ポリプロピレングリコールジアクリラート及びポリブチレングリコールジアクリラートから選択され;好ましくは、ポリアルキレングリコールジアクリラートはポリプロピレングリコールジアクリラートである。
【0053】
一実施形態によれば、ポリアルキレングリコールメタクリラートは、ポリエチレングリコールメタクリラート、ポリプロピレングリコールメタクリラート及びポリブチレングリコールメタクリラートから選択され、このポリアルキレングリコールメタクリラートは場合によってはヒドロキシル、アミノ又はオキソ基などの少なくとも1つの親水性基により置換され;好ましくは、このポリアルキレングリコールメタクリラートはヒドロキシルポリエチレングリコールメタクリラートである。
【0054】
一実施形態によれば、本単量体混合物は、トリエチレングリコールジメタクリラート(TGdMA)及びポリプロピレングリコールジアクリラート(PPGdA)を含むか又はそれから構成される。一実施形態によれば、本包埋液は、トリエチレングリコールジメタクリラート、ポリプロピレングリコールジアクリラート及び開始剤を含むか又はそれから構成される。
【0055】
一実施形態によれば、本開始剤はラジカル重合開始剤である。一実施形態によれば、本開始剤は光開始剤である。一実施形態によれば、本開始剤は熱開始剤である。
【0056】
一実施形態によれば、本光開始剤は、2-tert-ブチルアントラキノン、カンファーキノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、9,10-フェナントレンキノン、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、3,6-ビス(2-メチル-2-モルホリノプロピオニル)-9-オクチルカルバゾール、4’-tert-ブチル-2’,6’-ジメチルアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、4’-エトキシアセトフェノン、3’-ヒドロキシアセトフェノン、4’-ヒドロキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルセトン(hydroxycyclohexylphenylcetone)、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン、4’-フェノキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、4,4’-ジメチルベンゾイン、4,4’-ジメチルベンジル、ベンゾフェノン、ベンゾイルビフェニル、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4-ジメチルベンゾフェノン、3-ヒドロキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、ベンゾイルギ酸メチル、ミヒラーのケトン、1-クロロ-4-プロポキシ-9H-チオキサンテン-9-オン、2-クロロチオキサンテン-9-オン、2,4-ジエチル-9H-チオキサンテン-9-オン、イソプロピル-9H-チオキサンテン-9-オン、10-メチルフェノチアジン、チオキサンテン-9-オン、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロリン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩及びトリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩から選択される。
【0057】
一実施形態によれば、熱開始剤は、アゾ化合物、例えば2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、4,4’-アゾビス-(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)など;及び有機過酸化物、例えば過酸化ベンゾイル(BPO)などから選択される。
【0058】
一実施形態によれば、アルキレングリコールジメタクリラート又はその何らかの誘導体は、本包埋液の総重量に対する重量で、60%~99%wt.、好ましくは65%~99%、70%~99%、75%~99%、80%~99%、85%~99%、90%~99%の範囲である。一実施形態によれば、アルキレングリコールジメタクリラートは、本包埋液の総重量に対する重量で、60%~99%wt.、好ましくは60%~90%、60%~85%、60%~80%、60%~75%、60%~70%の範囲である。一実施形態によれば、アルキレングリコールジメタクリラートは、本包埋液の総重量に対する重量で、約60、61、62、63、64、65、66、67、6、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%である。一実施形態によれば、アルキレングリコールジメタクリラート又はその何らかの誘導体は、本包埋液の総重量に対する重量で、70%~90%、75%~85%の範囲であり、より好ましくは80%である。
【0059】
一実施形態によれば、アルキレングリコールジメタクリラート又はその何らかの誘導体は、本包埋液の総重量に対する重量で、0.1%~100%;好ましくは0.1%~90%;1%~90%;10%~90%;15%~90%;20%~90%;25%~90%;30%~90%;35%~90%;40%~90%;45%~90%;50%~90%;55%~90%;60%~90%;65%~90%;70%~90%;75%~90%;80%~90%;又は85%~90%の範囲である。一実施形態によれば、アルキレングリコールジメタクリラートは、本包埋液の総重量に対する重量で、0.1%~99%;好ましくは0.1%~95%、0.1%~90%、0.1%~85%、0.1%~80%、0.1%~75%、0.1%~70%、0.1%~65%、0.1%~60%、0.1%~55%、0.1%~50%、0.1%~45%、0.1%~40%、0.1%~35%、0.1%~30%、0.1%~25%、0.1%~20%、0.1%~15%、0.1%~10%又は0.1%~5%の範囲である。
【0060】
一実施形態によれば、ポリアルキレングリコールジアクリラート又はその何らかの誘導体は、本包埋液の総重量に対する重量で、0%超~38%wt.、好ましくは1%~38%、5%~38%、10%~38%、15%~38%、20%~38%、25%~38%、30%~38%の範囲である。一実施形態によれば、ポリアルキレングリコールジアクリラート又はその何らかの誘導体は、本包埋液の総重量に対する重量で、0%超~38%wt.、好ましくは1%~35%、1%~30%、1%~25%、1%~20%、1%~15%、1%~10%、1%~5%の範囲である。
【0061】
一実施形態によれば、ポリアルキレングリコールジアクリラート及びその何らかの誘導体は、本包埋液の総重量に対する重量で、0%超~50%、好ましくは0.1%~50%、5%~50%、10%~50%、15%~50%、20%~50%、25%~50%、30%~50%、35%~50%、40%~50%又は45%~50%の範囲である。一実施形態によれば、ポリアルキレングリコールジアクリラートは、本包埋液の総重量に対する重量で、0%超~50%、好ましくは0.1%~45%、0.1%~40%、0.1%~35%、0.1%~30%、0.1%~25%、0.1%~20%、0.1%~15%、0.1%~10%又は0.1%~5%の範囲である。一実施形態によれば、ポリアルキレングリコールジアクリラートは、本包埋液の総重量に対する重量で、0%超~50%、好ましくは1%~40%、5%~30%、より好ましくは10%~25%の範囲、より好ましくは20%である。
【0062】
一実施形態によれば、ポリアルキレングリコールメタクリラート又はその何らかの誘導体は、本包埋液の総重量に対する重量で、0%超~38%wt.、好ましくは1%~38%、5%~38%、10%~38%、15%~38%、20%~38%、25%~38%、30%~38%の範囲である。一実施形態によれば、ポリアルキレングリコールメタクリラート又はその何らかの誘導体は、本包埋液の総重量に対する重量で、0%超~38%wt.、好ましくは1%~35%、1%~30%、1%~25%、1%~20%、1%~15%、1%~10%、1%~5%の範囲である。
【0063】
一実施形態によれば、アルキレングリコールジアクリラート又はその何らかの誘導体は、100~500kDa;好ましくは100~400kDa、100~300kDa、100~200kDaの範囲の分子量を有する。一実施形態によれば、アルキレングリコールジアクリラート又はその何らかの誘導体の分子量は、約150kDa、好ましくは150kDaである。一実施形態によれば、トリエチレングリコールジメタクリラート(TGdMA)の分子量は約150kDa、好ましくは150kDaである。
【0064】
一実施形態によれば、ポリアルキレングリコールジアクリラート又はその何らかの誘導体は、500~1500kDa、好ましくは500~100kDa、700~900kDa、750~850kDaの範囲の分子量を有する。一実施形態によれば、ポリアルキレングリコールジアクリラート又はその何らかの誘導体は約800kDaの分子量を有する。一実施形態によれば、ポリアルキレングリコールジアクリラート又はその何らかの誘導体の分子量は800kDaである。一実施形態によれば、ポリプロピレングリコールジアクリラートの分子量は、約800kDa、好ましくは800kDaである。
【0065】
一実施形態によれば、本包埋液は、
-79%wt.の1つのアルキレングリコールジメタクリラート、好ましくはトリエチレングリコールジメタクリラートと;
-20%wt.の1つのポリアルキレングリコールジアクリラート、好ましくはポリプロピレングリコールジアクリラートと;
-1%wt.のラジカル重合開始剤、好ましくはラジカル重合光開始剤、より好ましくはベンゾインメチルエーテルと、
を含むか又はそれから構成される。
【0066】
一実施形態によれば、本包埋液は、
-60%~99%wt.のトリエチレングリコールジメタクリラートと;
-0%超~38%wt.のポリプロピレングリコールジアクリラートと;
-0.1%~2%wt.のラジカル重合開始剤;好ましくはベンゾインメチルエーテルと、
を含む。
【0067】
一実施形態によれば、本包埋液は、
-98%~99.9%wt.のトリエチレングリコールジメタクリラートと;
-0.1%~2%wt.のラジカル重合開始剤;好ましくはベンゾインメチルエーテルと、
を含む。
【0068】
一実施形態によれば、本包埋液は、
-60%~99%wt.のトリエチレングリコールジメタクリラートと;
-0%超~38%wt.のヒドロキシルポリエチレングリコールメタクリラートと;
-0.1%~2%wt.のラジカル重合開始剤;好ましくはベンゾインメチルエーテルと、
を含む。
【0069】
一実施形態によれば、本包埋液は、溶媒、好ましくは揮発性溶媒、より好ましくはアルコール、例えばエタノールなどをさらに含む。一実施形態によれば、本包埋液は、アセトンをさらに含む。
【0070】
一実施形態によれば、本包埋液は、造影剤、及び/又は固定剤及び/又は溶媒、好ましくは少なくとも1つの重金属塩を含むもの、より好ましくは硝酸銀、オスミウム及び/又は酢酸ウラニルを含むものなどの凍結置換に有用な化合物から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む。一実施形態によれば、本包埋液は、包埋液の総重量に対して0%超~5重量%の範囲の少なくとも1つの添加剤をさらに含む。一実施形態によれば、本包埋液は、包埋液の総重量に対して0.5重量%を含む。一実施形態によれば、本包埋液は、包埋液の総重量に対して0.01重量%を含む。一実施形態によれば、凍結置換に有用な化合物は、アセトン、無水アセトン、酢酸ウラニル、タンニン酸、アルデヒド、例えばグルタルアルデヒド又はパラホルムアルデヒドなど;及びそれらの何らかの組み合わせから選択される。一実施形態によれば、固定剤は、オスミウム、四酸化オスミウム、酢酸ウラニル、グルタルアルデヒド、パラホルムアルデヒド又はそれらの何らかの組み合わせから選択される。一実施形態によれば、造影剤は、酢酸ウラニル、鉛誘導体、銀誘導体、オスミウム誘導体、ランタニド塩、ポリフェノール、好ましくはタンニン中に含有されるポリフェノール、没食子酸及びタンニン酸から選択される。
【0071】
一実施形態によれば、本包埋液は親水性化合物をさらに含む。
【0072】
一実施形態によれば、本包埋液は、少なくとも1つの生体試料、好ましくはガラス化生体試料及び/又は化学的に固定された生体試料及び/又は脱水された生体試料をさらに含む。一実施形態によれば、生体試料は細胞抽出物である。一実施形態によれば、生体試料は細胞である。一実施形態によれば、生体試料は組織である。一実施形態によれば、生体試料は器官である。一実施形態によれば、生体試料はHeLa細胞である。一実施形態によれば、生体試料はメラニン細胞である。
【0073】
一実施形態によれば、本包埋液は液体である。一実施形態によれば、本包埋液は半固体である。一実施形態によれば、本包埋液は、低温で、好ましくは0℃を下回る温度で、好ましくは-90℃~-10℃の範囲の温度で、より好ましくは-40℃~-20℃の範囲の温度で、重合可能である。一実施形態によれば、本包埋液は、-70℃~-20℃の範囲の温度、好ましくは-35℃で、-40℃で又は-45℃で重合可能である。一実施形態によれば、本包埋液は、-90℃~-10℃、好ましくは-80℃~-10℃、-70℃~-10℃、-70℃~-10℃、-60℃~-10℃、-50℃~-10℃、-40℃~-10℃、-30℃~-10℃又は-20℃~-10℃の範囲の温度で重合可能である。一実施形態によれば、本包埋液は、-90℃~-10℃、好ましくは-90℃~-20℃、-90℃~-30℃、-90℃~-40℃、-90℃~-50℃、-90℃~-60℃、-90℃~-70℃又は-90℃~-80℃の範囲の温度で重合可能である。
【0074】
一実施形態によれば、本包埋液はLowicryl(登録商標)樹脂ではないか又はそれを含まない。一実施形態によれば、本包埋液は、フェノール又はその誘導体を含まない。一実施形態によれば、本包埋液はメトキシフェールを含まない。一実施形態によれば、本包埋液は、アルキルメタクリラートを含まない。一実施形態によれば、本包埋液は、ヘキシルメタクリラートを含まない。一実施形態によれば、本包埋液は、ビスフェノールA又はその誘導体を含まない。一実施形態によれば、本包埋液は、エトキシル化ビスフェノールAジメタクリラートを含まない。
【0075】
イメージング材料
本発明はまた、顕微鏡用の支持物質にも関する。一実施形態によれば、本支持物質は、好ましくは画像化しようとする試料のための包埋材料としての、顕微鏡でのその使用のための物質である(「イメージング材料」と呼ばれる)。一実施形態によれば、本発明のイメージング材料は、上記で定義されるような包埋液の重合から生じる。
【0076】
一実施形態によれば、本発明のイメージング材料は導電性である。一実施形態によれば、本イメージング材料は、顕微鏡分析中、その表面上に電子を全く蓄積しない。一実施形態によれば、本発明のイメージング材料は帯電防止物質である。
【0077】
一実施形態によれば、本発明のイメージング材料は透明である。一実施形態によれば、本発明のイメージング材料は、半固体又は固体である。一実施形態によれば、本発明のイメージング材料は、架橋ポリマーマトリクス及び場合によっては少なくとも1つの生体試料を含むか又はそれから構成される。一実施形態によれば、本発明のイメージング材料は、包埋された生体試料の物理学的特性、例えばその蛍光及び/又はそのタンパク質超微細構造の保持などを保持する。一実施形態によれば、本発明のイメージング材料は、免疫検出のための抗体の検出が顕微鏡により画像化可能となるように、包埋された生体試料のタンパク質超微細構造を保持する。
【0078】
一実施形態によれば、本イメージング材料は、上記で定義されるような包埋液の重合から生じるポリマーマトリクスに包埋される少なくとも1つの生体試料を含む。
【0079】
一実施形態によれば、本イメージング材料はエポキシ樹脂を含まない。一実施形態によれば、本イメージング材料はエポキシ基を含まない。一実施形態によれば、本イメージング材料はポリアリーレンエーテルを含まない。
【0080】
包埋液を製造するための工程
本発明は、上記で定義されるような包埋液を製造するための工程にも関する。
【0081】
一実施形態によれば、本工程は、
-上記で定義されるような少なくとも1つの単量体、好ましくは少なくとも1つのラジカル重合可能な単量体、より好ましくは少なくとも1つの親水性のラジカル重合可能な単量体と;
-上記で定義されるような開始剤と、
を混合することを含むか又はそれにより構成される。
【0082】
一実施形態によれば、本工程は、
-単量体混合物を得るための、上記で定義されるような2つの単量体、好ましくは2つのラジカル重合可能な単量体、より好ましくは2つの親水性のラジカル重合可能な単量体と;
-場合によっては上記で定義されるような開始剤と、
を混合することを含むか又はそれにより構成される。
【0083】
一実施形態によれば、本工程は、
-アルキレングリコールジメタクリラートと;
-ポリアルキレングリコールジアクリラート又はポリアルキレングリコールメタクリラート(このポリアルキレングリコールジアクリラート又はポリアルキレングリコールメタクリラートは場合によってはヒドロキシル、アミノ又はオキソ基などの少なくとも1つの親水性基により置換される)と;
-上記で定義されるような開始剤と、
を混合することを含むか又はそれにより構成される。
【0084】
一実施形態によれば、本工程は、細胞抽出物、細胞、組織及び/又は器官などの生体試料を添加すること;好ましくはガラス化生体試料及び/又は脱水された生体試料を添加することをさらに含む。一実施形態によれば、本工程は、重金属塩などの添加剤を添加することをさらに含む。一実施形態によれば、本工程は、硝酸銀及び/又は酢酸ウラニルを添加することをさらに含む。
【0085】
一実施形態によれば、本包埋液を調製するための工程は、0℃~40℃;好ましくは5℃~30℃、10℃~30℃、15℃~30℃、20℃~30℃、25℃~30℃の範囲の温度で行い;より好ましくは本包埋液を調製するための工程は約25℃の温度で行う。
【0086】
本イメージング材料を製造するための工程
本発明はまた、上記で定義されるようなイメージング材料を製造するための工程にも関する。
【0087】
一実施形態によれば、本工程は、
(a)上記で定義されるような包埋液を提供し;
(c)本包埋液を重合化すること
を含む。
【0088】
一実施形態によれば、本工程は、生体試料に対して包埋液を浸透させることをさらに含む。一実施形態によれば、本工程は、
(a)上記で定義されるような包埋液を提供し;
(b)包埋された生体試料を提供するために生体試料に対して本包埋液を浸透させ;
(c)段階(b)の包埋された生体試料を重合化すること
を含む。
【0089】
一実施形態によれば、本工程は、生体試料をガラス化することをさらに含む。一実施形態によれば、本工程は、
(a-0)ガラス化生体試料を得るために生体試料をガラス化し;
(a)上記で定義されるような包埋液を提供し;
(b)包埋された生体試料を提供するために、段階(a-0)のガラス化生体試料に対して本包埋液を浸透させ;
(c)段階(b)の包埋された生体試料を重合化すること
を含む。
【0090】
一実施形態によれば、本工程は、段階(a-0)のガラス化生体試料を固定し、脱水することをさらに含む。一実施形態によれば、本工程は、
(a-0)ガラス化生体試料を得るために生体試料をガラス化し;
(a-1)段階(a-0)のガラス化生体試料を固定し、脱水し;
(a)上記で定義されるような包埋液を提供し;
(b)包埋された生体試料を提供するために、段階(a-1)の生体試料に対して包埋液を浸透させ;
(c)段階(b)の包埋された生体試料を重合化すること
を含む。
【0091】
別の実施形態によれば、本工程は、生体試料を固定し、脱水することをさらに含む。一実施形態によれば、本工程は、
(a-1)生体試料を固定し、脱水し;
(a)上記で定義されるような包埋液を提供し;
(b)包埋された生体試料を提供するために、段階(a-1)の生体試料に対して本包埋液を浸透させ;
(c)段階(b)の包埋された生体試料を重合化すること
を含む。
【0092】
一実施形態によれば、段階(a-0)は、当業者にとって周知の低温法により、好ましくは高圧凍結工程により行う。
【0093】
一実施形態によれば、段階(a-1)は、当業者にとって周知の何らかの方法により、好ましくは凍結置換工程により行う。一実施形態によれば、段階(a-1)は、好ましくはオスミウム、四酸化オスミウム、酢酸ウラニル、パラホルムアルデヒド及びアルデヒド、例えばグルタルアルデヒドなど、又はそれらの何らかの組み合わせから選択される少なくとも1つの固定剤を使用することにより行う。一実施形態によれば、段階(a-1)は、好ましくは重金属塩から選択される少なくとも1つの造影剤を使用することにより行う。一実施形態によれば、段階(a-1)は、好ましくはランタニド塩から選択される少なくとも1つの造影剤を使用することにより行う。一実施形態によれば、本造影剤は、酢酸ウラニル、鉛誘導体、銀誘導体、オスミウム誘導体、ランタニド塩、ポリフェノール、好ましくはタンニン中に含有されるポリフェノール、没食子酸及びタンニン酸から選択される。一実施形態によれば、段階(a-1)は-90℃~-30℃の範囲の温度で行う。一実施形態によれば、段階(a-1)は、-70℃~-20℃の範囲の温度、好ましくは-35℃、-40℃又は-45℃で行う。一実施形態によれば、段階(a-1)は、-90℃~-30℃、好ましくは-80℃~-40℃又は-60℃~-50℃の範囲の温度で行う。
【0094】
一実施形態によれば、段階(a)は、上記で定義されるような包埋液を調製するための工程に従い行う。
【0095】
一実施形態によれば、重合は、-90℃~-10℃の範囲の温度、好ましくは-40℃~-20℃の範囲の温度で行う。一実施形態によれば、重合は、-70℃~-20℃の範囲の温度、好ましくは-35℃、-40℃又は-45℃で行う。一実施形態によれば、重合は、-90℃~-10℃、好ましくは-80℃~-10℃、-70℃~-10℃、-70℃~-10℃、-60℃~-10℃、-50℃~-10℃、-40℃~-10℃、-30℃~-10℃又は-20℃~-10℃の範囲の温度で行う。一実施形態によれば、重合は、-90℃~-10℃、好ましくは-90℃~-20℃、-90℃~-30℃、-90℃~-40℃、-90℃~-50℃、-90℃~-60℃、-90℃~-70℃又は-90℃~-80℃の範囲の温度で行う。
【0096】
一実施形態によれば、重合は、熱により、及び/又は照射により、好ましくはUV又は可視光線照射により開始される。
【0097】
一実施形態によれば、本造影剤は、本イメージング材料の総重量に対する重量で、0.005~0.1%、好ましくは0.005~0.05%、0.005~0.015%の範囲である。一実施形態によれば、本造影剤は、本イメージング材料の総重量に対する重量で約0.01%である。一実施形態によれば、本造影剤は、本イメージング材料の総重量に対する重量で0.01%である。
【0098】
(電子)顕微鏡により生体試料を画像化するための方法
本発明はまた、顕微鏡により、好ましくは光学及び/又は電子顕微鏡により、生体試料を画像化するための方法にも関する。
【0099】
一実施形態によれば、本発明の方法は、次の段階:
-好ましくは上記で定義されるようなイメージング材料を製造するための工程により、上記で定義されるようなイメージング材料を提供し;
-好ましくは顕微鏡によって、より好ましくは光学顕微鏡及び/又は電子顕微鏡によってイメージング材料を画像化すること
を含むか又はそれらから構成される。
【0100】
一実施形態によれば、本発明の方法は次の段階:
(i-0)好ましくは高圧凍結工程、プランジ凍結、ジェット凍結及び/又はスラム凍結(slam freezing)により実行して、生体試料をガラス化し;
(ii)好ましくは凍結置換プロトコールを使用することによって、上記で定義されるような包埋液を段階(i-0)のガラス化生体試料に浸透させ;
(iii)段階(ii)で得られる混合物を重合化し、その結果、導電性イメージング材料を得て;
(iv)段階(iii)の導電性イメージング材料を光学顕微鏡及び/又は電子顕微鏡により画像化すること
を含むか又はそれらから構成される。
【0101】
一実施形態によれば、本発明の方法は、次の段階:
(ii)好ましくは凍結置換プロトコールを使用することによって上記で定義されるような包埋液を生体試料に浸透させ;
(iii)段階(ii)で得られる混合物を重合化し、その結果、導電性イメージング材料を得て;
(iv)段階(iii)の導電性イメージング材料を光学顕微鏡及び/又は電子顕微鏡により画像化すること
を含むか又はそれらから構成される
【0102】
一実施形態によれば、本方法は、本導電性イメージング材料における、顕微鏡切片作製又は超薄切片作製の段階をさらに含む。
【0103】
一実施形態によれば、本方法は、好ましくは段階(i-0)後に生体試料(段階i-1)を固定及び/又は脱水する段階をさらに含む。一実施形態によれば、本方法は、好ましくは段階(i-0)後にガラス化生体試料(段階i-1)を固定及び/又は脱水する段階をさらに含む。一実施形態によれば、段階(i-1)は、溶媒、好ましくはアセトン及び/又はエタノールを使用することを含み;この溶媒は固定剤及び/又は造影剤を含有する。一実施形態によれば、段階(i-1)は-90℃~-30℃の範囲の温度で行う。
【0104】
一実施形態によれば、段階(iv)は、顕微鏡;好ましくは光学顕微鏡、光学的顕微鏡、蛍光顕微鏡及び/又は電子顕微鏡により;より好ましくは電子顕微鏡により実行する。一実施形態によれば、段階(iv)は相関顕微鏡により実行する。一実施形態によれば、段階(iv)は走査型電子顕微鏡(SEM)により実行する。一実施形態によれば、段階(iv)は透過型電子顕微鏡(TEM)により実行する。一実施形態によれば、段階(iv)は光-電子相関顕微鏡(CLEM)により実行する。一実施形態によれば、段階(iv)は、エピ蛍光、共焦点、超解像又は構造化照明顕微鏡(SIM)により実行する。
【0105】
使用
本発明はまた、顕微鏡における、好ましくは光学的顕微鏡、蛍光顕微鏡及び/又は電子顕微鏡における;より好ましくは電子顕微鏡における、上記で定義されるような包埋液又はイメージング材料の使用にも関する。一実施形態によれば、上記で定義されるような包埋液又はイメージング材料は相関顕微鏡において有用である。
【0106】
一実施形態によれば、上記で定義されるような包埋液及び/又はイメージング材料は、生体試料、例えば細胞抽出物、細胞、組織及び/又は器官などを画像化するために;好ましくはガラス化生体試料を画像化するために有用である。
【0107】
一実施形態によれば、上記で定義されるような包埋液及び/又はイメージング材料は、特異的に細胞構造及び/又はメラニンを標的化するために有用である。一実施形態によれば、上記で定義されるような包埋液及び/又はイメージング材料及び硝酸銀などの銀塩を含むことは、特異的に細胞構造を標的化するため、好ましくは特異的に、金カップリング抗体及び/又はメラニンを使用して標識される細胞構造を標的化するために有用である。一実施形態によれば、上記で定義されるような包埋液及び/又はイメージング材料及び硝酸銀などの銀塩を含むことは、低温、好ましくは0℃を下回る、より好ましくは-90℃~-10℃の範囲の温度で、細胞構造及び/又はメラニンを特異的に標的化するために有用である。
【0108】
一実施形態によれば、上記で定義されるような包埋液及び/又はイメージング材料は、抗体、好ましくはナノサイズ金ナノ粒子にカップリングされる抗体を特異的に標的化するために有用である。一実施形態によれば、上記で定義されるような包埋液及び/又はイメージング材料は、この包埋液及び/又はイメージング材料中に包含される硝酸銀を凝集させることによりナノサイズ金ナノ粒子にカップリングされる抗体を特異的に標的化するために有用である。一実施形態によれば、上記で定義されるような包埋液及び/又はイメージング材料は、低温で、好ましくは0℃を下回る温度で銀促進反応を生じさせるために有用である。
【0109】
キット
本発明はまた、好ましくは顕微鏡により画像化しようとする生体試料を調製するためのキットにも関する。
【0110】
一実施形態によれば、本キットは、上記で定義されるような少なくとも1つの単量体を含む第1の容器と;開始剤を含む第2の容器と、を含む。一実施形態によれば、本キットは、上記で定義されるような親水性単量体混合物を含む第1の容器と;開始剤を含む第2の容器と、を含む。
【0111】
一実施形態によれば、本キットは、
-(a)アルキレングリコールジメタクリラート及び(b)ポリアルキレングリコールジアクリラート又はポリアルキレングリコールメタクリラート(このポリアルキレングリコールジアクリラート又はポリアルキレングリコールメタクリラートは場合によってはヒドロキシル、アミノ又はオキソ基などの少なくとも1つの親水性基により置換される)を含む第1の容器と;
-ラジカル重合開始剤を含む第2の容器と、
を含む。
【0112】
一実施形態によれば、本キットは、
-(a)トリエチレングリコールジメタクリラート及び(b);ポリ(プロピレングリコール)ジアクリラートを含む第1の容器と;
-ベンゾインメチルエーテル又はヒドロキシル-2-メチルプロプリオフェノン(methylpropriophenone)を含む第2の容器と、
を含む。
【0113】
一実施形態によれば、本発明はまた、上記で定義されるような少なくとも1つの単量体及び開始剤を含む容器と;混合手段と、を含むキットも指す。
【0114】
一実施形態によれば、本発明は、
-(a)アルキレングリコールジメタクリラート、(b)ポリアルキレングリコールジアクリラート又はポリアルキレングリコールメタクリラート(このポリアルキレングリコールジアクリラート又はポリアルキレングリコールメタクリラートは場合によってはヒドロキシル、アミノ又はオキソ基などの少なくとも1つの親水性基により置換される);及び(c)ラジカル重合開始剤を含む容器と;
-混合手段と、
を含むキットも指す。
【0115】
一実施形態によれば、混合手段は、例えば容器、カプセル、ミキサー及び/又はスパーテルであるが限定されない。
【0116】
実施例
次の実施例を参照して、本発明がより良好に理解されよう。これらの実施例は、本発明の具体的な実施形態の代表であるものとし、本発明の範囲を限定するようなものではないものとする。
略語
℃:摂氏度
CDCl3:重水素化クロロホルム
CLEM:光-電子相関顕微鏡
Eq.:当量
PEG:ポリエチレングリコール
PPGdA:ポリ(プロピレングリコール)ジアクリラート
g:グラム
h:時間数
mmol:ミリモル
mol:モル
NMR:核磁気共鳴
TGdMA:トリエチレングリコールジメタクリラート
UV:紫外線
【0117】
材料及び方法
試薬、溶媒及び出発材料は、Sigma Aldrichから購入し、さらに精製することなく使用した。
【0118】
UV照射
試料のUV照射は、凍結置換プロトコール(自動凍結置換 自動化)に対して、Fusion UVからのUVランプシステムF300S Heraeus Noblelight(登録商標)又はLeicaからのAFS-1又はAFS-2を使用することにより行う。
【0119】
パートI-包埋液の調製
実施例1:ポリ(プロピレングリコール)ジアクリラート(PPGdA)の合成
アクリロイル化によりPPGdAを合成した:800g/mol(20g、25mmol)のポリ(プロピレングリコール)及びトリエチルアミン(11.7g、115mmol)を140mLのジクロロメタンとともに丸底フラスコに導入する。この混合物を5℃に冷却し、磁気撹拌下で塩化アクリロイル(9.5g、105mmol)を滴下して添加した。
【0120】
使用するポリ(プロピレングリコール)の分子量に依存して、トリメチルアミン及び塩化アクリロイルの割合を調整しなければならない(ヒドロキシル官能基に対してそれぞれ2.3eq.及び2.1eq.)。
【0121】
この反応は2時間後に完了した。トリエチルアミン塩をろ過により除去し、塩基性、酸性及び中性水で生成物を数回洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過した。減圧下での溶媒除去後に最終産物を得た(20.7g、収率:91%)。
1H NMR(CDCl3,300MHz):6.43-6.35(2H,d,H-CH=CH-);6.15-3.06(2H,d,H-CH=CH-),5.81-5.78(2H,d,H-CH=CH-),5.18-5.02(2H,m,-C(O)-O-CH-CH2-),3.83-3.18(42H,m,-CH(CH3)-CH2-),3.83-3.18(42H,m,-CH(CH3)-CH2-O-),1.39-0.99(42H,m,-CH(CH3)-CH2-O-).
【0122】
実施例2:本発明の包埋液の調製
2.1.ワンポット溶液
処方1
質量比79/20/1で、フラスコ中に室温でトリエチレングリコールジメタクリラート(TGdMA)、ポリ(プロピレングリコール)ジアクリラート(PPGdA)及び開始剤、好ましくはベンゾインメチルエーテル及び/又はヒドロキシル-2-メチルプロピオフェノンを導入し、撹拌する。光及び/又は熱を避けて最終包埋液1を保管する。
【0123】
処方2
質量比99/1で、フラスコ中に室温で、トリエチレングリコールジメタクリラート(TGdMA)及び開始剤、好ましくはベンゾインメチルエーテル及び/又はヒドロキシル-2-メチルプロピオフェノンを導入し、撹拌する。光及び/又は熱を避けて最終包埋液2を保管する。
【0124】
処方3
質量比74/25/1で、フラスコ中に室温で、トリエチレングリコールジメタクリラート(TGdMA)、ヒドロキシルPEGメタクリラート及び開始剤、好ましくはベンゾインメチルエーテル及び/又はヒドロキシル-2-メチルプロピオフェノンを導入し、撹拌する。光及び/又は熱を避けて最終包埋液3を保管する。
【0125】
処方4
質量比72.4/18.1/9/0.5で、フラスコ中に室温で、トリエチレングリコールジメタクリラート(TGdMA)、ポリ(プロピレングリコール)ジアクリラート(PPGdA)、硝酸銀溶液(1.4mM)及び開始剤、好ましくはベンゾインメチルエーテル及び/又はヒドロキシル-2-メチルプロピオフェノンを導入し、撹拌する。光及び/又は熱を避けて最終包埋液4を保管する。
【0126】
2.2.本発明の包埋液を含むキット
質量比79/20で、第1の容器に室温でトリエチレングリコールジメタクリラート(TGdMA)及びポリ(プロピレングリコール)ジアクリラート(PPGdA)を導入し、撹拌する。
【0127】
第2の容器において、開始剤、好ましくはベンゾインメチルエーテル及び/又はヒドロキシル-2-メチルプロピオフェノンを保管する。
【0128】
第1及び第2の容器の内容物を混合した後、マトリクス前駆体溶液を得るが、好ましくはこの混合は光及び/又は熱を避けて行う。
【0129】
パートII-導電性イメージング材料の調製及び電子顕微鏡によるその画像化
実施例3:顕微鏡分析用の生体試料を調製するための工程
目的は、電子顕微鏡用の蛍光及び/又は導電性生体イメージング材料を提供するために生体試料を包埋することである。この目的において、出願者は、実施例2のエンベデッドメディウム(embedded medium)1を使用した工程を実施する。
【0130】
一般的工程
段階1-生体試料のガラス化及び/又は固定/脱水
最初に、当業者にとって周知の何らかの低温法によって生体試料をガラス化し、次いでエタノール、メタノール又はアセトンであり得る溶媒中に-90℃で導入する(溶媒中の生体試料は「凍結置換カクテル」と呼ぶ)。場合によっては、化学固定液及び/又は造影剤を添加し得る。化学固定液の例はオスミウム、四酸化オスミウム、酢酸ウラニル、グルタルアルデヒド及びパラホルムアルデヒドであり得る。造影剤の例は、酢酸ウラニル、鉛誘導体、銀誘導体、オスミウム誘導体又はタンニン酸であり得る。
【0131】
-90℃で1分~数日の範囲の期間中、生体試料を維持する。次に、-40℃まで温度をゆっくりと上昇させ、純粋な溶媒での連続洗浄によって凍結置換カクテルを除去する。脱水された生体試料が得られる。
【0132】
段階2-エンベデッドメディウム(embedded medium)1の浸透
第2に、混合包埋液/溶媒を、包埋液の溶液のみが浸透するまで、段階1で得た脱水された生体試料に連続的に浸透させる。本発明のマトリクス前駆体溶液中で包埋される脱水された生体試料を含む組成物を得る。
【0133】
段階3-重合-導電性生体イメージング材料の調製
次に、光重合によるか又は熱重合によるかの何れかで、段階2で得た組成物を重合化する。
【0134】
光重合の場合、24h~48hの範囲の期間中、UV照射によって本組成物を-40℃で開始させる。次に、常にUV照射下で、温度を室温までゆっくりと上昇させる。生体試料内部の完全重合を達成するために、室温でのさらなる24hのUV照射を適用する。
【0135】
導電性及び蛍光保存イメージング材料を得る。
【0136】
段階4b(任意)-顕微鏡切片作製又は超薄切片作製
電子顕微鏡によるその観察前に、導電性イメージング材料を場合によっては顕微鏡切片作製及び/又は超薄切片作製により調製する。
【0137】
任意のさらなる段階-光学顕微鏡
この工程において、電子顕微鏡によるその観察前に、段階1~4の何れか1つにおいて導電性イメージング材料の光学顕微鏡分析を行い得る。
【0138】
パートIII-電子顕微鏡による観察
実施例4:顕微鏡分析
本発明のイメージング材料の優越性を示すために、電子顕微鏡で使用する場合、凍結カクテルが0.05%酢酸ウラニル、0.01%グルタルアルデヒド、1%水を含み、-90℃~-45℃の範囲の温度で行われる実施例3に記載のプロトコールに従い、生体試料を調製した。
【0139】
コントラスト
目的は、同じ凍結置換プロトコール(即ち0.05%酢酸ウラニル、0.01%グルタルアルデヒド及び1%水を含む凍結カクテルを使用して、-60℃~-45℃の範囲の温度)を両方とも使用して、HeLa細胞において、Lowicryl(登録商標)HM 20樹脂と、本発明の包埋液から得られるコントラストの向上を比較することである。
【0140】
透過型電子顕微鏡(TEM)によりHeLa細胞の観察を実施した。
【0141】
図1は、Lowicryl(登録商標)HM 20樹脂から得られたもの(
図1B)よりも、本発明の材料でより良好なコントラストが達成される(
図A参照)ことを示す。
【0142】
本発明の材料中で包埋されるHeLa細胞の分析も走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。
図2は、本発明の材料により、この材料の内側に包埋される細胞の構造を精密に可視化可能となることを示す。
【0143】
メラニン標的化
この実験において、MNT1細胞(不死化メラニン細胞株、MNT1株)を試験した。
【0144】
メラノソーム及び銀塩凝集体を含む本発明のイメージング材料の観察を電子顕微鏡により実行した。
【0145】
驚くべきことに、対応するクリシェ(cliche)(
図3A)は、生体構造で銀塩が特異的に蓄積することを示す。
【0146】
何らかの理論により縛られることを望むものではないが、出願者は、本発明のイメージング材料中に組み込まれる銀塩とメラノソームのアミロイド繊維に蓄積するメラニンとの間で顕微鏡研究中に特異的な反応が起こることを提示する。
【0147】
この特異的な反応を証明するために、メラニンを発現しないHeLa細胞によりメラノソームを置き換えることによって同じ実験を実行した。
【0148】
対応するクリシェ(cliche)(
図3B)は、材料中で銀塩が分散するが、生体試料中で特異的に位置しないことを示す。
【0149】
結果的に、本発明のイメージング材料、特に包埋液は、銀塩を含む場合、メラニンを含有する生体試料を特異的に標的化可能となる。
【0150】
蛍光保持
構造化照明顕微鏡(SIM)(光学顕微鏡)によりイメージング材料におけるMNT1細胞の蛍光保持の分析も実行した。
【0151】
図4及び
図5は、本発明のイメージング材料からのHeLa細胞の内部蛍光の効率的検出を示す。