(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】収穫方法及び収穫方法を用いた作業機
(51)【国際特許分類】
A01D 25/04 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
A01D25/04
(21)【出願番号】P 2021004898
(22)【出願日】2021-01-15
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000171746
【氏名又は名称】株式会社ササキコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100086184
【氏名又は名称】安原 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】保土澤 定廣
(72)【発明者】
【氏名】甲地 重春
(72)【発明者】
【氏名】戸田 勉
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-000035(JP,A)
【文献】特開平09-121640(JP,A)
【文献】特開2000-270640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中内に埋まっている作物の周囲を覆う土壌を膨軟にすることができる膨軟化工程と、
前記作物に紐状体を括り付けて前記作物を上方から支えて補助することができる補助工程と、
を含むことを特徴とする収穫方法。
【請求項2】
前記作物に順次紐状体を取り付けて、順次作物を吊り上げることを特徴とする請求項1記載の収穫方法。
【請求項3】
前記補助工程は、前記膨軟化工程の後に行われる、
ことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の収穫方法。
【請求項4】
前記補助工程の後に行われ、前記作物を地中から引抜くことができる引き抜き工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2又は3のいずれかに記載の収穫方法。
【請求項5】
地中内に埋まっている作物の周囲を覆う土壌を膨軟にすることができる膨軟化手段と、
前記作物に一端側を括り付けることが可能な紐状体を有し、前記紐状体の他方を引き上げることによって前記作物を上方から支えて補助することができる補助手段と、
を備えることを特徴とする収穫機。
【請求項6】
紐状体を連続して設けることを特徴とした請求項5記載の収穫機。
【請求項7】
前記補助手段は、進行方向に対する側面視で、前記膨軟化手段とほぼ同一あるいは進行方向後方側に配置されている、
ことを特徴とする請求項5又は6のいずれかに記載の収穫機。
【請求項8】
前記膨軟化手段及び前記補助手段の後方に配置され、前記補助手段によって補助された前記作物を土上から引抜くことができる引き抜き手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項6又は7のいずれかに記載の収穫機。
【請求項9】
前記作物に取り付けることが可能な環状部を紐状体の一端部に設けることを特徴とする請求項6又は7又は8のいずれかに記載の収穫機。
【請求項10】
紐状体を支える支持体と、引き抜かれた作物を搬送する搬送手段の相対距離は、搬送方向下流に向かうにつれて距離が縮まるように配置することを特徴とする請求項6又は7又は8又は9のいずれかに記載の収穫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は地下に埋まっている作物である根菜の収穫方法及び、この方法を用いた収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
牛蒡等の地下に埋まっている長尺の根菜を掘り上げて収穫する収穫機として、特許文献1に開示された長根菜収穫機が知られている。特許文献1による長根菜収穫機は、牛蒡等の長根菜を掘りあげる両せりあげ板からなる前方の掘りあげ部と、この後方に設けた長根菜を引き抜き、後方へ搬送する引き抜き搬送部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明のように収穫期を構成した場合、掘りあげ部で掘りあげた長根菜はその後、引き抜き搬送部に引き渡されるように移動し、引き抜き搬送が行われる。
しかし、この構成の場合、作物である長根菜は、引き抜き搬送部の左右一対の両挟持ベルトの挟持可能な始端部に到達しないと適正に搬送することができない問題があった。また、作物である長根菜は回転偏心クランク装置によって上下動する掘りあげ部で、作物上部の周囲の土壌がほぐされる。
しかし、掘りあげ部の上下動のみで、作物周囲に付着した土壌まで完全に落とすことは容易ではなく、作物の付着した土壌の重みで作物の上部が側方に傾くことがあり、両挟持ベルトでの挟持ができない問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、
地中内に埋まっている作物の周囲を覆う土壌を膨軟にすることができる膨軟化工程と、
前記作物に紐状体を括り付けて前記作物を上方から支えて補助することができる補助工程と、
を含むことを特徴とする収穫方法、
に係る。
【0006】
この発明は、更に、
前記作物に順次紐状体を取り付けて、順次作物を吊り上げることを特徴とする収穫方法、
に係る。
【0007】
この発明は、更に、
前記補助工程は、前記膨軟化工程の後に行われる、
ことを特徴とする収穫方法、
に係る。
【0008】
この発明は、更に、
前記補助工程の後に行われ、前記作物を地中から引抜くことができる引き抜き工程と、
をさらに含むことを特徴とする収穫方法。
に係る。
【0009】
この発明は、
地中内に埋まっている作物の周囲を覆う土壌を膨軟にすることができる膨軟化手段と、
前記作物に一端側を括り付けることが可能な紐状体を有し、前記紐状体の他方を引き上げることによって前記作物を上方から支えて補助することができる補助手段と、
を備えることを特徴とする収穫機、
に係る。
【0010】
この発明は、更に、
紐状体を連続して設けることを特徴とした収穫機、
に係る。
【0011】
この発明は、更に、
前記補助手段は、進行方向に対する側面視で、前記膨軟化手段とほぼ同一あるいは進行方向後方側に配置されている、
ことを特徴とする収穫機、
に係る。
【0012】
この発明は、更に、
前記膨軟化手段及び前記補助手段の後方に配置され、前記補助手段によって補助された前記作物を土上から引抜くことができる引き抜き手段と、
をさらに備えることを特徴とする収穫機、
に係る。
【0013】
この発明は、更に、
前記作物に取り付けることが可能な環状部を紐状体の一端部に設けることを特徴とする収穫機、
に係る。
【0014】
この発明は、更に、
紐状体を支える支持体と、引き抜かれた作物を搬送する搬送手段の相対距離は、搬送方向下流に向かうにつれて距離が縮まるように配置することを特徴とする収穫機、
に係る。
【発明の効果】
【0015】
この発明は、上記課題に着眼してなされたものであり、両挟持ベルトでの挟持を円滑とし、作物周囲に付着した土壌まで完全に落とすことが可能な収穫機を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明の実施例に係る収穫機の正面図である。図中左が進行方向前方であり、走行機体(トラクタ)は図示省略する。
【
図2】この発明の実施例に係る収穫機の平面図である。図中左が進行方向前方側である。支持体は、移動フレームに固着している。
【
図3】この発明の実施例に係る収穫機の側面図である。膨軟化手段の進行方向後方側から前方側を見た様子である。引き抜き手段は二点鎖線であらわす。
【
図4】この発明の実施例に係る収穫機の説明図であって、膨軟化手段の駆動及び作物の引き抜きまでの様子をあらわす断面図である。
【
図5】この発明の実施例に係る環状部を作物に取り付け、取り外しの様子をあらわした説明図である。
【
図6】この発明の実施例に係る環状部を作物に取り付け、取り外しの様子をあらわした説明図である。
【
図7】この発明の実施例に係る環状部を作物に取り付け、取り外しの様子をあらわした説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の一形態を、
図1ないし
図7に基づいて説明する。本実施の形態は、作物Rである根菜がゴボウである場合の実施例である。
【0018】
図1は、根菜収穫機である収穫機101の正面図である。収穫機101は、圃場に形成された栽培畝Wに列状に栽培されているゴボウ等の根菜である作物Rを収穫するためのものである。
収穫機101は、走行機体であるトラクタ(図示せず)の後方側に設けられた三点リンク機構52に連結される。収穫機101は、へらあるいは掘上部としての膨軟化手段102と引き抜き手段103とストッカ104と補助手段131を備える。補助手段131は、支持体132とレール133と取外手段136とを備える。膨軟化手段102により作物Rとともに浮き上がった作物R上部の側部の土Sを、崩すとともに排除する土除去体(図示せず)を備えてもよい。
【0019】
走行機体であるトラクタ(図示せず)が栽培畝Wに沿って前進走行すると、膨軟化手段102が作物Rと作物Rの周辺の土Sとを地表面GLに向けて浮き上がらせる。
図1に図示するGL1は、膨軟化して盛り上がった土壌である。
膨軟化手段102により作物Rともに浮き上がった土Sを土除去体(図示せず)により崩して柔らかくするとともに排除して、地中内に埋まっている作物Rの周囲を覆う土壌を膨軟にすることができる。
【0020】
引き抜き手段103は、膨軟化手段102の後方かつ上方に配置し、膨軟化手段102によって浮き上がった作物Rの上部を把持し、作物Rを栽培畝Wから引き抜いて収穫機101の後方側に搬送する。更に、引き抜き手段103は、後述する補助手段131によって補助されて、前記作物Rを土上から引抜くことができる
ストッカ104は、引き抜き手段103の後方かつ下方に配置し、引き抜き手段103により搬送された作物Rを収納する。ストッカ104に収納された作物Rの重量が所定以上になると、ストッカ104の底部が開き、収納された作物Rがまとまった状態で地表面GLに落下する。
【0021】
収穫機101は、固定フレーム111を備える。固定フレーム111は、三点リンク機構52に連結される。
固定フレーム111には、車幅方向Aに延びる横パイプ112が含まれる。横パイプ112の外周には、支持パイプ112aが摺動自在に取付けられる。この支持パイプ112aは、移動フレーム113の一部をなしている。
移動フレーム113の後端部には、支軸113aを介して回動フレーム113bが回動自在に設けられる。支持パイプ112aは、固定フレーム111に固着された油圧シリンダ112bによって車幅方向Aに動かされる。支持パイプ112aの摺動に伴って、支持パイプ112aと移動フレーム113と回動フレーム113bとが一緒に車幅方向Aにスライドする。
【0022】
回動フレーム113bには、ビーム114が取付けられる。ビーム114は、上下方向に延びる長尺をなす。ビーム114は、その下方部分が上方部分に対して前方かつ車幅方向Aの内側に位置するように傾斜し、回動フレーム113bに対し固定される。
膨軟化手段102は、ビーム114の下端に取付ける。膨軟化手段102は、後方に向かうにつれて上昇するよう傾斜し、平面視において前後方向に延び、
図3に示す側面視において逆八字状をなしている。膨軟化手段102の前方側の端部には、刃状部102aが形成されている。
【0023】
移動フレーム113の上方には、入力軸115aや上下移動体115b、ユニバーサルジョイント115c等の、動力を伝達したり分岐したりする機構が配置される。この機構は、カバー115に覆われる。上下移動体115bは、入力軸115aの回転力を受けて上下に動く。
【0024】
入力軸115aは、平面視において、カバー115から収穫機101の前方側に突出している。入力軸115aは、ユニバーサルジョイント(図示せず)を介して、トラクタ(図示せず)に備わるPTO軸(図示せず)に取付ける。トラクタ(図示せず)から入力軸115aには、動力が入力伝達される。この動力の一部により、上下移動体115bを介して、回動フレーム113bが、支軸113aを中心に上下方向(
図1や
図4に示される矢印R1の方向)に回動する。回動フレーム113bの回動に伴って、ビーム114や膨軟化手段102も矢印R1の方向に回動する。
【0025】
ユニバーサルジョイント115cは、入力軸115aに入力された動力の一部を引き抜き手段103に伝達し、引き抜き手段103を駆動する。ユニバーサルジョイント115cは、所望の長さに伸縮できるようになっている。
入力軸115aの下方には、ゲージホイール(図示せず)及び椀状の排土ディスク120が配置される。ゲージホイールも排土ディスク120も、固定フレーム111に取付けられる。ゲージホイールは、地表面GL上を走行し、収穫機101の姿勢を一定にする。ゲージホイールによって、地表面GLに対し排土ディスク120が突き刺さる深さが調整される。排土ディスク120は、下部を栽培畝Wに突き刺しながら、走行機体の進行とともに転動する。排土ディスク120の転動によって、栽培畝Wに埋まっている作物Rの上部の左右両脇の土を切断するとともに、切断した土を左右外側方向に押し退ける。
【0026】
移動フレーム113の後方部分は上方に延びていて、そこからは、保持フレーム118が延びている。保持フレーム118は、引き抜き手段103を保持し、移動フレーム113とともに車幅方向A方向にスライド移動する。
詳細には、引き抜き手段103は、車幅方向Aに並んで対向する一対の挟持ベルト122を含む。挟持ベルト122は、無端であり、前方に位置する従動プーリ123と後方に位置する駆動プーリ124とに掛け渡され、
図1に示す進行方向に対する側面視において後方に向け次第に上昇するよう延びている。また、挟持ベルト122は、従動プーリ123と駆動プーリ124との間に位置する複数の支持プーリ125により張られている。従動プーリ123と駆動プーリ124と支持プーリ125とは、保持フレーム118に保持されている。
引き抜き手段103を構成する搬送手段である挟持ベルト122は、挟持ベルト122の終端に至った後は、再度、膨軟化手段102の上方に位置するように返送される。
【0027】
駆動プーリ124は、ユニバーサルジョイント115cに連結されており、入力軸115aから入力されユニバーサルジョイント115cを介して伝達される動力により回転し、
図2に示す方向R2に向けて従動プーリ123を回転させる。作物Rは、周回駆動する後方側に移動搬送される。
保持フレーム118は、引き抜き手段103の後端部に位置させたストッカ104も保持している。ストッカ104は、籠状をなしていて、ガイド輪127と、複数の受杆128と、スプリング(図示せず)とを備える。受杆128は、ストッカ104の短手方向に延び、下方に動くように回動自在になっていて、スプリングによって略水平方向に向けられ、ストッカ104の底部として機能している。
【0028】
ガイド輪127は、ストッカ104の前方に配置される。ガイド輪127は、引き抜き手段103により搬送される作物Rに当接し、鉛直にぶら下がる作物Rを傾ける。引き抜き手段103の終端で作物Rの上部が放出されると、作物Rは、ストッカ104内に貯留され、受杆128上に載置される。貯留された作物Rが一定量貯留されると、受杆128が貯留された作物Rの重さによって下方に回動する。これにより、ストッカ104からは、貯留された作物Rが、一定量ずつまとめて地表面GL上に放出される。
【0029】
ここで、本実施の形態では、挟持ベルト122が、
図2に示すように、平面視において、収穫機101の後方端が、前方端に対して車幅方向Aに所定距離(例えば、栽培畝W一個分)だけ偏位するよう、収穫機101の進行方向に対して斜め側方に延びている。そして、ストッカ104は、平面視において、挟持ベルト122の長さ方向に延びるよう、収穫機101の進行方向に対して斜め(例えば、略40度)側方に向けられている。
【0030】
土除去体を設ける場合は、土除去体(図示せず)は、ビーム114に固定的に取付けられて引き抜き手段103よりも進行方向前方側に位置し、ビーム114から収穫機101の後方かつ下方に延び、屈曲して鉛直に下方に延びる部材として設けてもよい。土除去体は、金属等の剛体により形成され、栽培畝Wから浮き上がった土壌を崩して排土するために充分な強度を有する。
【0031】
131は、補助手段である。以下、補助手段131について説明する。補助手段131は、引き抜き手段103の作用を補助するものである。
補助手段131は、支持体132とレール133と取外手段136と紐状体134と環状部135とを有する。補助手段131の前端部は、
図1に示す進行方向に対する側面視で、膨軟化手段102とほぼ同一あるいは進行方向後方側の上方に配置する。補助手段131の後端部は、
図1に示す進行方向に対する側面視で、引き抜き手段103のほぼ中間部あるいは進行方向後方側の上方に配置する。
補助手段131による補助工程は、膨軟化手段102による膨軟化工程の後に行われる。
【0032】
支持体132は、金属製の角材からなり、紐状体134が膨軟化手段102の後方に位置する引き抜き手段103からなる搬送工程に向かうように配置する。支持体132は、少なくとも一部は、地中から膨軟化工程を経て搬送工程の終端に至るまでの作物Rの上方に位置していればよい。
支持体132は、上部からレール133を支持する。支持体132は、
図1に図示するように進行方向に対する側面視く字状に曲げられ、前方側は後方に向かって高くなるように傾斜し、中間部からは地表面GLとほぼ平行となる。
紐状体134を支える支持体132と、引き抜かれた作物Rを搬送する引き抜き手段103を構成する搬送手段である挟持ベルト122の相対距離は、搬送方向下流に向かうにつれて距離が縮まるように配置する。
【0033】
レール133は、
図1に示すように支持体132下部に、支持体132のほぼ側面視形状に沿って取り付ける。
レール133を取り付ける支持体132の地上面Lに対する傾斜面の角度は、膨軟化手段102の傾斜面と同じかそれ以上にする。又は、支持体132の地上面Lに対する傾斜面の角度は、膨軟化手段102によって作物Rが膨軟化手段102と相対的に後方且つ上方に向けて徐々に持ち上がってくる角度と同じかそれ以上にする。このようにすることで、支持体132に取り付けるレール133に吊り下げられる紐状体134が、膨軟化手段102の後端部に差し掛かかり、土中から作物Rを引き抜く、あるいは膨軟化手段102の後端部に差し掛かったときに、この後端部から作物Rが落下する又は倒れることなく引き上げることができる。
【0034】
レール133は、実施例では、
図2に平面図を示すように、四隅は円弧状となった、く字型に曲げた変形長円形からなる。レール133は、支持体132に取り付け、支持体132はレール133を支持する。
レール133は、
図1に示すように、前方側から後方に行くほど位置が高くなる。そして、中間部から後端部にかけて、地表面GLと平行に設ける。すなわち、中間部から後端部にかけてのレール133は、引き抜き手段103の挟持ベルト122との相対距離を、搬送方向下流に向かうにつれて縮まるように配置する。また、
図2に示すように、レール133の一部は、膨軟化手段102、及び、引き抜き手段103の対向する一対の挟持ベルト122間の上方に亘って配置している。レール133は、図示した形状に限らない。図示するように、紐状体134が膨軟化手段102の上方に位置し、根菜収穫機101の進行方向と平行に移動できる区間を有し、この区間が膨軟化手段102の後端より後方に達することができれば、作物Rを上方に引き抜く補助をすることができる。
【0035】
レール133は、補助手段131を構成する紐状体134を支持し、紐状体134の他端部を支持する。レール133には、紐状体134を複数取り付ける。レール133は、吊り下げられた紐状体134をレール133の周に沿って移動させることができる。
レール133は、モータで駆動して補助手段131である紐状体134をレール133の周に沿って回転してもよい。あるいは、ビーム114の駆動源と同一の駆動源により駆動してもよい。
【0036】
紐状体134は、ビーム114の進行方向に対する後方側に、紐状体134を等間隔に、連続して吊り下げて設ける。
紐状体134は、膨軟化手段102の進行方向に対する後方側に向かって、等間隔に、連続して吊り下げて設ける。紐状体134を周回移動させるレール133は、
図2に示す平面視のように、少なくとも一部を、膨軟化手段102の進行方向の左右に対する中間部の上方に位置させるように設ける。レール133を周回移動する紐状体134を、作物Rの上方に位置させることができる。作物Rの上方に位置した紐状体134は、平面視における、地上面L及び作物Rとの相対速度が同じになるように、レール133を駆動させる。
【0037】
紐状体134は、断面平状で、金属製ワイア、樹脂製糸あるいはプラスチック製糸等からなる繊維を編み込んで柔軟性を高くしている。紐状体134は、基部をレール134に取り付け、根菜収穫機101の進行方向に対する後方側に等間隔に吊り下げて、連続して設ける。
紐状体134は、作物Rに順次紐状体134を取り付けて、順次作物Rを吊り上げる。
紐状体134は、作物Rに一端側を括り付けることが可能で、前記紐状体134の他方を引き上げることによって前記作物Rを上方から支えて、引き抜き手段103の引き抜き作業を補助することができる。
【0038】
環状部135は、環状からなり、紐状体134の一端部に設け、補助工程を行う補助手段131の一部を構成する。
環状部135は、
図5乃至
図7に図示するように、紐状体134の一端部を環状に巻くことで形成する。環状部135は、紐状体134の他端側に引くことで、環状部135が窄(つぼ)むように構成している。環状部135は、しなやかに湾曲可能であり且つ断面が平状に構成している。
【0039】
環状部135を、
図5に図示するように作物Rの上部に位置させて取り付け、
図6に図示するように環状部135を窄(つぼ)ませ、紐状体134の他端部を引き上げることで、作物Rと環状部135が一体となって上方に引くことができる。
作物Rの上部に環状部135を位置させて、紐状体134の他端部を引き上げると、作物R上部の環状部135が窄(つぼ)み、作物Rと紐状体134が一体となり、紐状体134の他端部を引き上げることで作物Rの側方への倒れを防止する補助手段、補助工程となる。
実施例で示す環状部135は一例であり、紐状体134の一端部に窄(つぼ)むことが可能な環状部135を形成できる構成であればよい。例えば、洗濯鋏などにあるように鋏部に環状部を有し、この環状部135を拡径及び縮径が自在なものを用いてもよい。環状部135は紐状に限らない。
【0040】
取外手段136は、搬送手段122の搬送中間部に設ける。支持体132と搬送手段122の相対距離は、搬送方向下流に向かうにつれて距離が縮まるように配置している。そのため、作物Rが搬送方向下流に向かうにつれて、紐状体134はたるむ。紐状体134がたるむと、作物R上部に取りついている環状部135の窄(つぼ)みが自然と緩む。取外手段136は、
図1に図示するように、作物R上部から環状部135を抑えて、緩んだ環状部135を取り外す。
【0041】
このような収穫機101を用いて栽培畝Wで栽培されている作物Rを収穫する際、トラクタ(図示せず)の操作によって、収穫機101に備わる膨軟化手段102の刃状部102aを、栽培畝Wに植わっている作物Rの根際の近傍に位置付ける。
続いて、トラクタ(図示せず)が走行すると、収穫機101がトラクタ(図示せず)に牽引されて前方に進み、膨軟化手段102が作物Rの根際の地中を進行し、周囲の土Sとともに作物Rを浮き上がらせる。浮き上がった作物Rには土Sが付着しており、作物Rと土Sとからなる土塊が膨軟化手段102の上に載る。
土除去体を設けた場合は、作物Rの周囲の土Sの一部は、土除去体により崩されて柔らかくなるとともに排除される。
【0042】
膨軟化手段102で膨軟化工程を経た作物Rは、土壌の膨軟化と共に、地中から膨軟化した土壌とともに上方に移動する。膨軟化手段102は振動あるいは揺動する構成であるため、上部の土がふるい落とされ、作物R上部が露出する。
そこで、
図5に図示するように、紐状体134先端に設けた環状部135を作物R上部に近接させる。
ついで、
図6に図示するように、紐状体134先端に設けた環状部135を作物R上部に嵌めて固定する。
複数の作物Rに順次、紐状体134先端に設けた環状部135を、作物R上部に近接させ、作物R上部に嵌めて固定していく。
【0043】
作物Rに順次取り付けて窄む(つぼむ)ことが可能な環状体を、紐状体134に取り付けて、環状部135で作物Rを窄んで紐状体134を引き上げることで引き上げ、作物Rを地中から順次引き抜き、作物Rを順次吊上げる。
紐状体134に作物を取り付け、根菜収穫機101が進むと、作物Rは地面に引かれ、紐状体134はレール133に沿って相対的に後方に移動する。
【0044】
レール133は、前端側から後方に行くに従い、膨軟化手段102に対して位置が高くなるので、レール133に取り付けられた紐状体134が後方に送られるに従い、作物Rの上部は、地中から上方に向けて引かれる。すなわち、作物Rが引き抜き手段103に達するまで、作物Rの上部は起立した姿勢を維持することができ、作物Rの上部が倒れることなく挟持ベルト122間に位置することができる。
作物Rが引き抜き手段103に達し、引き抜き手段103による作物Rの引き抜き工程を開始すると、作物Rの上方にあるレール133は引き抜き手段103との相対距離を、搬送方向下流に向かうにつれて縮まるように配置している。したがって、作物R上部に取り付けた紐状体134は引き抜き手段103の搬送方向下流に向かうにつれて徐々に弛んでゆく。紐状体134が弛むことによって、環状部135の窄みが緩み、作物Rの上部から環状部135を取り外し可能な状態になる。レール133の後端に達した紐状体134は、取外手段136によって環状部135を作物Rから取り除き、レール133を周回し、再度、膨軟化手段102の上方に移動する。また、レール133には、紐状体134を複数設けるとともに、順次レール133を周回するので、根菜収穫機101の進行に伴い、作物Rを連続的に引き抜く補助をすることができる。
作物Rを周囲の土Sとともに揺動させて土を膨軟化させて、作物Rを上方に浮かせる膨軟化工程の途中あるいは終了後において、土除去体による土除去工程を設けてもよい。土除去工程によって、持ち上げられた作物Rの上方部の土壌を崩して、作物Rの上方部を、膨軟化工程のみのときと比較すると、より露出させることができる。
【0045】
引き抜き工程は、前記膨軟化工程の後に行われる。膨軟化工程終了後、作物Rの上方部は、地上面Lより高く持ち上げられているので、補助工程で行う、環状部135を作物Rに取り付ける工程を容易にできる。補助工程によって、膨軟化工程後に地上面Lより高く持ち上げられた作物Rの起立した姿勢を維持できる。
作物R上部の露出した部分に環状部135を取り付けるとともに上方に引くことで、膨軟化した土壌中の作物Rが側方に倒れることを防止する補助手段131、補助工程となる。
【0046】
作業者は紐状体134の環状部135を作物Rの上部に位置させて、括り付けるあるいは取り付けるのみでよく、紐状体134を結ぶあるいは縛る作業が不要となる。
紐状体134先端に設けた環状部135を作物R上部から取り外すときは、
図7に図示するように、紐状体134がたるむと、作物R上部に取りついている環状部135の窄(つぼ)みが自然と緩み、紐状体134は緩められており、取外手段136は、
図1に図示するように、作物R上部から環状部135を抑えて、環状部135を取り外す。
【0047】
図1に図示するように、挟持ベルト122での搬送中間部には、緩んだ環状部135の取外手段136が設けられている。取外手段136で、作物R上部から環状部135を取り外す。作物Rはそのまま搬送方向終端部に達して落下する。作物Rのみが下方に落下する。実施例の場合は、搬送手段の終端部下方に貯留部であるストッカ104を設置していて、落下した作物Rは、ここに一時的に貯留する。紐状体134及び環状部135は再度、膨軟化工程を行う膨軟化手段102の上部に位置するようにレール133によって返送され、補助工程を繰り返す。
【0048】
実施例のように紐状体134で環状部135を構成した場合、環状部135が作物Rより大きくなっていても、紐状体134の他端部側を引くことで、環状部135を窄(つぼ)ませて、環状部135を作物Rに密着させることが容易である。したがって、紐状体134の他端部を引き上げた時に、作物Rの上部から環状部135が上方に抜けることがない。
【0049】
環状部135は、しなやかに湾曲可能であり且つ断面が平状に構成している。そのため、作物Rと密着可能であるとともに環状部135と作物Rとの接触面積を広くできる。このため、紐状体134を上方に引き上げる際に、環状部135が作物Rに対して局部的に圧迫することがなく、作物Rを傷めることがない。また、作物Rとの接触面積が広いので、引き上げ時に作物Rとの摩擦力を適度に持たせることができる。作物Rの自重はもちろん、作物Rに土壌が付着しても、安定して紐状体134で吊り下げることができる。
【0050】
紐状体134の他端部は、できるだけ地面より大きく上方に離間した位置にあることが好ましい。紐状体134の他端部が作物Rの直上にない状態で紐状体134と共に環状部135を引き上げた時でも、補助工程中の作物Rに対し側方方向へ力がかかりにくく、折損させることを抑止できる。
紐状体134の他端部は、補助する作物Rの上方に位置できるように構成する。つまり、図示する膨軟化工程を行う膨軟化手段102の進行とともに、相対的に膨軟化手段102から後退する作物Rと共に紐状体134の他端部も後退するように移動するように構成する。言い換えれば、作物Rに取り付く環状部135も作物Rと共に移動することができる。これによって、紐状体134の他端部が可能な限り、作物Rの上部に位置することができるので、作物Rに対し側方方向に力をかけずに引き抜くことができる。
【0051】
補助工程を行う補助手段131が有する紐状体134の他端部を支持する支持体132は、紐状体134が膨軟化手段102の後方に位置する搬送工程に向かうように配置する。したがって、膨軟化手段102によって浮き上がるとともに上部を補助された作物Rは、側方に倒れることなく搬送手段である挟持ベルト122に引き込まれる。
続いて、膨軟化手段102によって浮き上がり、土除去体を設けた場合は土除去体によって更に土Sを排除された作物Rの上部が、引き抜き手段103の挟持ベルト122に把持される。上部を把持された作物Rは、引き抜き手段103によって後方に搬送され、ストッカ104に投入される。
【0052】
トラクタ(図示せず)が進行するに従って、作物Rは、上記のように次々と引き抜かれストッカ104に貯留される。作物Rがストッカ104に一定量貯留されると、作物Rはまとまって地表面GLに落下する。トラクタ(図示せず)に追従する作業者は、地表面GL上の作物Rを拾い上げて伴走車(図示せず)に積み込む。
このように、本実施の形態の収穫機101では、膨軟化手段102により浮き上がった作物Rに付着した土Sが膨軟化され排除され、続いて、補助手段131により、作物R上部の露出した部分に環状部135を取り付けるとともに上方に引かれ、続いて、作物Rの上部が挟持ベルト122に把持される。
【0053】
なお、本実施の形態では、膨軟化手段102がビーム114に取付けられて揺動するようになっているが、別の実施の形態として、膨軟化手段102が固定フレーム111に固定取付されていて揺動しないようになっていてもよい。
また、本実施の形態では、根菜がゴボウである場合について示したが、本実施の形態の収穫機101を、他の長根植物を列状に栽培させた栽培畝に適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0054】
101 根菜収穫機
102 膨軟化手段(ヘラ、堀上部)
103 引き抜き手段
122 挟持ベルト(搬送手段)
131 補助手段
132 支持体
133 レール
134 紐状体
135 環状部
136 取外手段
A 車幅方向
C 車幅方向に交差する面
GL 地表面
R 作物(ゴボウ、根菜)
S 土